JP5393172B2 - 石灰岩の不純物除去方法 - Google Patents
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その一例として、石灰石原料鉱石を100メッシ以下の微粒状に粉砕し、アルコール系の起泡剤を用いてアルカリ性パルプで浮選し、不純物を浮鉱として分離することを特徴とする炭素系不純物の浮遊除去による石灰石微粉の高純度化方法が、提案されている(特許文献1)。この文献の実施例では、浮選の際に、薬剤として分散剤(ケイ酸ソーダ)、活剤(IAA)、捕集剤(ケロシン)および起泡剤(MIBC)を用いている。
一方、古紙からインキを剥離し、再生パルプを得て、再生紙を製造するための古紙再生技術において、古紙からインキを剥離する作用を有する脱墨剤を用いることが知られている。
古紙再生用脱墨剤の一例として、特定の化学式で表される化合物を含有することを特徴とする古紙再生用脱墨剤が提案されている(特許文献2)
本発明者の実験によると、石灰石微粉を対象とする浮遊選鉱の際に、薬剤としてアルコール系の起泡剤(MIBC)のみを用いた場合には、炭素分を浮鉱として分離させることができず、沈鉱である炭酸カルシウム含有物質の白色度は、石灰石微粉の白色度とほぼ同程度であった。
そのため、本発明者は、浮遊選鉱の際に1種の薬剤のみを用いた場合であっても、石灰岩から着色原因物質である炭素分を高い除去率で除去して、製紙用フィラー等として用いうる炭酸カルシウムを主成分とする物質(以下、炭酸カルシウム含有物質ともいう。)を得ることのできる方法を検討した。
その結果、浮遊選鉱処理の際に添加する薬剤として、古紙再生用脱墨剤の一種であるアルコール系脱墨剤を用いれば、石灰岩粉砕物から不純物である炭素分を高い除去率で除去しうることを見出した。
しかし、アルコール系脱墨剤を用いた場合であっても、未処理の石灰岩の白色度が非常に小さかったり、あるいは、最終的に得られる炭酸カルシウム含有物質に要求される白色度が非常に大きい場合には、炭酸カルシウム含有物質の白色度が、所望の値に達しないことがある。
そこで、本発明は、石灰岩から着色原因物質である炭素分を非常に高い除去率で除去して、製紙用フィラー等として用いうる、炭酸カルシウムを主成分とする白色度の高い物質を得ることのできる方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] (A)炭素分を不純物として含む石灰岩を、湿式粉砕して、ブレーン比表面積が14,000〜30,000cm2/gの石灰岩微粉砕物を含むスラリーを得る微粉砕工程と、(B)工程(A)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る浮選剤添加工程と、(C)工程(B)で得たスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、炭酸カルシウムを含む沈鉱を得る浮遊選鉱処理工程と、を含むことを特徴とする石灰岩の不純物除去方法。
[2] 工程(A)の前工程として、(X)炭素分を不純物として含む石灰岩を湿式粉砕、または乾式粉砕後に水を加えて、ブレーン比表面積が5,000〜13,000cm2/gの石灰岩粗粉砕物を含むスラリーを得る粗粉砕工程と、(Y)工程(X)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る浮選剤添加工程と、(Z)工程(Y)で得たスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、工程(A)の被処理物である上記石灰岩を含む沈鉱を得る浮遊選鉱処理工程と、を含む上記[1]に記載の石灰岩の不純物除去方法。
[3] 未処理の石灰岩と工程(C)で得られる炭酸カルシウムを含む沈鉱とのハンター白色度の差が、1.0以上である上記[1]又は[2]に記載の石灰岩の不純物除去方法。
本発明で沈鉱として得られる炭酸カルシウム含有物質は、製紙用フィラー、プラスチック・ゴムの顔料、塗料、食品添加物、高級ガラス材料等として用いることができる。
本発明の石灰岩の不純物除去方法は、工程(A)の前工程として、(X)炭素分を不純物として含む石灰岩を湿式粉砕、または乾式粉砕後に水を加えて、ブレーン比表面積が5,000〜13,000cm2/gの石灰岩粗粉砕物を含むスラリーを得る粗粉砕工程と、(Y)工程(X)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る浮選剤添加工程と、(Z)工程(Y)で得たスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、工程(A)の被処理物である上記石灰岩を含む沈鉱を得る浮遊選鉱処理工程と、を含むことができる。
[工程(X);粗粉砕工程]
工程(X)は、炭素分を不純物として含む石灰岩を、湿式で粉砕、または乾式で粉砕後に水を加えて混合し、ブレーン比表面積が5,000〜13,000cm2/gの石灰岩粗粉砕物を含むスラリーを得る工程である。
工程(X)で用いる石灰岩は、着色原因物質である炭素分を不純物として含むものである。
本発明の好適な処理対象物としては、灰色結晶質石灰岩が挙げられる。灰色結晶質石灰岩は、ハンター白色度が89〜93程度であるため、本発明の方法によって白色度を高めることによって製紙用フィラー等の各種の用途に好適に用いることができる。
なお、白色結晶質石灰岩は、ハンター白色度が95〜97程度であるため、灰色結晶質石灰岩に比べて本発明を適用する必要性に乏しい。
乾式の粉砕手段としては、例えば、ボールミル、竪型ローラミル等が挙げられる。
湿式の粉砕手段としては、例えば、湿式粉砕装置、媒体撹拌ミル等が挙げられる。
湿式で粉砕する場合の固液比(水1リットル当たりの石灰岩の量)は、好ましくは500〜2,000g/リットル、より好ましくは1,000〜1,500g/リットルである。該値が500g/リットル未満では、石灰岩の単位量当たりの水量が過大となり、水量の節減および処理効率の観点から好ましくない。該値が2,000g/リットルを超えると、所望の粒度の粗粉砕物を得るための処理効率が低下する。
粗粉砕後、工程(Z)における浮遊選鉱処理のために、固液比(水1リットル当たりの石灰岩の量)を調整する。
該固液比は、好ましくは100〜1,500g/リットル、より好ましくは300〜1,200g/リットル、特に好ましくは500〜1,000g/リットルである。該値が100g/リットル未満では、石灰岩の単位量当たりの水量が過大となり、水量の節減および処理効率の観点から好ましくない。該値が1,500g/リットルを超えると、本発明で得られる炭酸カルシウム含有物質の白色度が低下するばかりか、浮遊選鉱処理の際に浮鉱の割合が多くなり、沈鉱の回収率が低下するので、好ましくない。
工程(X)においては、固液比の調整時に十分に撹拌することが好ましい。撹拌時間は、好ましくは5〜60分間である。
なお、固液比の調整は、工程(Y)の後に行ってもよい。
工程(Y)は、工程(X)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る工程である。
高級アルコール系脱墨剤としては、例えば、高級アルコールにアルキレンオキサイドを付加した構造を有する非イオン性界面活性剤が挙げられる。
このような特定の非イオン性界面活性剤である高級アルコール系脱墨剤の一例としては、一般式:R1−[O−(CxH2xO)k(AO)m(CyH2yO)n−H]p(式中、pは1〜16の整数である。R1は、pが1の場合には、炭素数8〜24の1価高級アルコール又は炭素数6〜16の直鎖もしくは分岐のアルキル基もしくはアルケニル基を有するアルキルフェノールから水酸基を除いた残基であり、pが2〜16の場合には、p個の水酸基を有する化合物から水酸基を除いた残基である。AOは、エチレンオキサイド基を必須として含む炭素数2〜4の1種類以上のアルキレンオキサイド基がブロックまたはランダムに配列する基である。x、yは、各々3または4で、同一でも異なっていてもよい。kは、1以上、300以下の整数である。mは、pが1の場合には、50を超え、300以下の整数であり、pが2〜16の場合には、1以上、300以下の整数である。nは、1以上、300以下の整数である。)で表される化合物(特開平7−3681号公報参照)が挙げられる。
なお、高級アルコール系脱墨剤は、通常の使用条件下において液状である。
高級アルコール系脱墨剤の市販品としては、「DI−767」、「DI−7020」(以上、花王社製)、「リプトール」(以上、ライオン社製)等が挙げられる。
工程(Y)においては、浮選剤を含むスラリーの調製後に十分に撹拌して養生することが好ましい。養生時間は、好ましくは5〜60分間である。
工程(Z)は、工程(Y)で得られた浮選剤を含むスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、炭酸カルシウムを含む沈鉱を得る工程である。
浮遊選鉱とは、疎水性の表面を有する粒子及び親水性の表面を有する粒子を含む水中にガス(例えば、空気)を供給して、このガスの泡の表面に、疎水性の表面を有する粒子を付着させ、該粒子が付着している泡を、水中で浮力により浮上させることによって、沈鉱である親水性の表面を有する粒子と、浮鉱である疎水性の表面を有する粒子とに分離するものである。
浮遊選鉱の手段としては、ファーレンワルド型浮選機(FW型浮選機)、MS型浮選機、フェジャーグレン型浮選機、アジテヤ型浮選機、ワーマン型浮選機等の浮遊選鉱装置(浮選機ともいう。)が挙げられる。
浮鉱は、石灰岩に由来する炭素分を含む物質である。浮鉱は、スラリーの液中の上部領域(特に液面付近)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、沈鉱)から分離することができる。
沈鉱は、石灰岩に由来する炭酸カルシウムを主成分とする物質である。沈鉱は、スラリーの液中の下部領域(特に底面上)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、浮鉱)から分離することができる。
浮遊選鉱処理で生じる沈鉱は、次工程である工程(A)での処理対象物である石灰岩(炭酸カルシウム含有物質)として用いられる。
なお、浮鉱は、炭素分を含むものの、炭酸カルシウムを主成分とするため、水洗し、ろ過し、乾燥させることによって、高い白色度を要求されない用途における炭酸カルシウム含有物質(炭酸カルシウム粉末)として利用することができる。
沈鉱と浮鉱の合計量100質量部(乾燥状態のもの)中の沈鉱の量は、通常、65〜95質量部である。
工程(A)は、工程(Z)で得られた沈鉱(浮鉱として除去されなかった残余の炭素分を不純物として含む石灰岩)を、湿式粉砕して、ブレーン比表面積が14,000〜30,000cm2/gの石灰岩微粉砕物を含むスラリーを得る工程である。
工程(A)における粉砕後の石灰岩微粉砕物のブレーン比表面積は、14,000〜30,000cm2/g、好ましくは15,000〜24,000cm2/g、より好ましくは16,000〜20,000cm2/gである。該値が14,000 cm2/g未満では、本発明で沈鉱として得られる炭酸カルシウム含有物質の白色度が低下する傾向がある。該値が30,000cm2/gを超えると、本発明で沈鉱として得られる炭酸カルシウム含有物質の回収率が低下するばかりか、粉砕に要する手間および時間が増大し、処理効率及び処理コストの面で不利である。
粉砕時の固液比(水1リットル当たりの石灰岩の量)は、好ましくは100〜1,500g/リットル、より好ましくは300〜1,500g/リットル、特に好ましくは500〜1,000g/リットルである。該量が100g/リットル未満では、石灰岩の単位量当たりの水量が過大となり、水量の節減および処理効率の観点から好ましくない。該量が1,500g/リットルを超えると、本発明で沈鉱として得られる炭酸カルシウム含有物質の白色度が低下する傾向が見られるばかりか、浮遊選鉱処理の際に浮鉱の割合が多くなり、沈鉱の回収率が低下するので、好ましくない。
該固液比は、好ましくは0.1〜1,000g/リットル、より好ましくは0.5〜700g/リットル、さらに好ましくは1〜500g/リットル、特に好ましくは50〜400g/リットルである。該値が0.1g/リットル未満では、石灰岩の単位量当たりの水量が過大となり、水量の節減および処理効率の観点から好ましくない。該値が1,000g/リットルを超えると、工程(C)で沈鉱として得られる炭酸カルシウム含有物質の白色度が低下する傾向が見られるばかりか、浮遊選鉱処理の際に浮鉱の割合が多くなり、沈鉱の回収率が低下するので、好ましくない。
固液比の調整時に、スラリーを十分に撹拌することが好ましい。撹拌時間は、好ましくは5〜60分間である。
なお、固液比の調整は、工程(B)の後に行ってもよい。
工程(B)は、工程(A)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る工程である。
浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤の詳細は、工程(Y)と同様である。
浮選剤の添加量は、工程(A)で得られたスラリー1リットル当たり、好ましくは0.0001〜5ミリリットル、より好ましくは0.001〜1ミリリットル、特に好ましくは0.01〜0.1ミリリットルである。該量が0.0001ミリリットル未満では、浮鉱と沈鉱の分離が不十分となることがある。該量が5ミリリットルを超えると、薬剤コストが増大するので、好ましくない。
工程(B)においては、浮選剤を含むスラリーの調製後に十分に撹拌して養生することが好ましい。養生時間は、好ましくは5〜60分間である。
工程(C)は、工程(B)で得られた浮選剤を含むスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、炭酸カルシウムを含む沈鉱を得る工程である。
浮遊選鉱手段の種類などについては、工程(Z)と同様である。
工程(C)で得られる浮鉱は、石灰岩に由来する炭素分を含む物質である。沈鉱は、石灰岩に由来する炭酸カルシウムを主成分とする物質である。
沈鉱を回収して乾燥させることによって、目的物である白色の粉末状の炭酸カルシウム含有物質を得ることができる。沈鉱中の炭酸カルシウムの割合は、通常、90質量%以上である。
工程(X)の対象物である未処理の石灰岩と、工程(C)で得られる沈鉱(白色の炭酸カルシウム含有物質)とのハンター白色度の差は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは2.0以上である。
沈鉱(白色の炭酸カルシウム含有物質)のハンター白色度は、好ましくは94以上、より好ましくは95以上である。
ここで、ハンター白色度とは、ハンター白色度計を用いてJIS P8123に準拠して得られる数値をいう。ハンター白色度が大きいほど、白色性に優れ、好ましい。
沈鉱として得られる白色の炭酸カルシウム含有物質は、製紙用フィラー、プラスチック・ゴムの顔料、塗料、食品添加物、高級ガラス材料等として用いることができる。なお、ハンター白色度が94以上である炭酸カルシウム含有物質は、製紙用フィラーとして好適に用いることができる。
なお、浮鉱は、炭素分を含むものの、炭酸カルシウムを主成分とするため、水洗し、ろ過し、乾燥させることによって、高い白色度を要求されない用途における炭酸カルシウム含有物質(炭酸カルシウム含有粉末)として利用することができる。
沈鉱と浮鉱の合計量100質量部(乾燥状態のもの)中の沈鉱の量は、通常、65〜95質量部である。
未処理の石灰岩からの工程(C)で得られる沈鉱(炭酸カルシウム含有粉末)の回収率は、好ましくは65質量%以上である。
図2中、本発明の石灰岩の不純物除去システムは、炭素分を不純物として含む石灰岩を粗粉砕するための粗粉砕手段(例えば、ボールミル)1と、粉砕手段1で得られた粗粉砕物を含むスラリーの固液比を調整するための第一のスラリー濃度調整手段(例えば、撹拌翼付きの水槽、及び該水槽への水供給装置)2と、第一のスラリー濃度調整手段2で得られたスラリーに浮選剤を添加して、浮選剤を含むスラリーを得るための第一の浮選剤添加手段(例えば、撹拌翼付きの水槽、及び該水槽への浮選剤供給装置)3と、第一の浮選剤添加手段3で得られたスラリーを浮遊選鉱処理するための第一の浮遊選鉱装置4と、第一の浮遊選鉱装置4で得られた沈鉱を微粉砕するための微粉砕手段(例えば、湿式粉砕装置)5と、微粉砕手段5で得られた微粉砕物を含むスラリーの固液比を調整するための第二のスラリー濃度調整手段(例えば、撹拌翼付きの水槽、及び該水槽への水供給装置)6と、第二のスラリー濃度調整手段6で得られたスラリーに浮選剤を添加して、浮選剤を含むスラリーを得るための第二の浮選剤添加手段(例えば、撹拌翼付きの水槽、及び該水槽への浮選剤供給装置)7と、第二の浮選剤添加手段7で得られたスラリーを浮遊選鉱処理するための第二の浮遊選鉱装置8を含むものである。
なお、本発明の石灰岩の不純物除去システムにおいて、工程(A)の前工程である工程(X)〜工程(Z)を含まない場合、粗粉砕手段1から第一の浮遊選鉱装置4までの各部を省略すればよい。
本発明においては、連続式とバッチ式のいずれのシステムを採用してもよいが、実用化に際しての処理効率の観点からは、連続式のシステムが好ましい。
灰色結晶質石灰岩の破砕物(粒径:1mm以下、質量:500g)を、湿式粉砕装置(製造元:三井鉱山社、製品名:アトライタ)によって粉砕して、ブレーン比表面積が20,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を含むスラリーを調製した。粉砕時の固液比は、700g/リットルであった。
なお、このスラリーを乾燥して得た粉体について、ハンター白色度計(商品名:NW−1、マイセック社製)を用いて、JIS P8123に準拠して、ハンター白色度を測定した。その結果、ハンター白色度は、93.5であった。
次いで、固液比が200g/リットルとなるように、石灰石微粉砕物を含むスラリーと水を撹拌翼付の混合槽内に投入して、5分間、撹拌して混合し、スラリーを得た。
次に、この混合槽内に、スラリー1リットル当たりの浮選剤の量が0.035ミリリットルとなるように、浮選剤として、高級アルコール系脱墨剤である「DI−7020(商品名)」(花王社製)を添加して、10分間、撹拌して混合した。
得られたスラリーを、浮遊選鉱装置(太平洋セメント社の中央研究所内の試作機)内に収容し、15分間、液中に空気を供給しつつ浮遊選鉱処理を行った。
浮遊選鉱処理後、沈鉱を回収して、乾燥させ、炭酸カルシウムを主成分とする粉末(炭酸カルシウム含有粉末)を得た。
この炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、96.0であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、2.5であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、75質量%であった。
一方、浮鉱の鉱物解析を行った結果、浮鉱の主成分は炭酸カルシウムおよび炭素分(カーボン)であることがわかった。また、着色物質である浮鉱と、白色物質である沈鉱とでは、微量成分(銀、鉄、マグネシウム、ストロンチウム等)の含有率に大きな差がないことも確認した。これらの解析によって、着色原因物質が炭素分であることがわかった。
石灰岩微粉砕物のブレーン比表面積が16,000cm2/gになるように粉砕したこと以外は実施例1と同様にして、実験した。
その結果、浮遊選鉱処理によって沈鉱として得られた炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、95.5であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、2.0であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、78質量%であった。
[比較例1]
石灰岩微粉砕物のブレーン比表面積が11,000cm2/gになるように粉砕したこと以外は実施例1と同様にして、実験した。
その結果、浮遊選鉱処理によって沈鉱として得られた炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、94.2であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、0.7であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、86質量%であった。
実施例1で用いたものと同じ石灰岩破砕物500gを、ボールミル(製造元:日本特殊陶業社、製品名:アルミナ製ポットミル)によって乾式粉砕して、ブレーン比表面積が9,000cm2/gである石灰岩粗粉砕物を調製した。
得られた石灰岩粗粉砕物と水を、撹拌翼付きの混合槽内で混合して、10分間撹拌し、固液比が700g/リットルであるスラリーを得た。
次に、この混合槽内に、スラリー1リットル当たりの浮選剤の量が0.035ミリリットルとなるように、浮選剤として、高級アルコール系脱墨剤である「DI−7020(商品名)」(花王社製)を添加して、10分間、撹拌して混合した。
得られたスラリーを、浮遊選鉱装置(太平洋セメント社の中央研究所内の試作機)内に収容し、15分間、液中に空気を供給しつつ浮遊選鉱処理を行った。
浮遊選鉱処理後、沈鉱を回収した。この沈鉱は、炭素分の含有率が減少した石灰岩である。
得られた沈鉱を湿式粉砕装置(製造元:三井鉱山社、製品名:アトライタ)によって粉砕して、ブレーン比表面積が20,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を含むスラリーを調製した。粉砕時の固液比は、700g/リットルであった。
次いで、固液比が200g/リットルとなるように、石灰石微粉砕物を含むスラリーと水を撹拌翼付の混合槽内に投入して、10分間、撹拌して混合し、スラリーを得た。
次に、この混合槽内に、スラリー1リットル当たりの浮選剤の量が0.035ミリリットルとなるように、浮選剤として、高級アルコール系脱墨剤である「DI−7020(商品名)」(花王社製)を添加して、15分間、撹拌して混合した。
得られたスラリーを、浮遊選鉱装置(太平洋セメント社の中央研究所内の試作機)内に収容し、10分間、液中に空気を供給しつつ浮遊選鉱処理を行った。
浮遊選鉱処理後、沈鉱を回収して、乾燥させ、炭酸カルシウムを主成分とする粉末(炭酸カルシウム含有粉末)を得た。
この炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、96.1であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、2.6であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、82質量%であった。
ボールミルによる乾式粉砕によって、ブレーン比表面積が6,000cm2/gである石灰岩粗粉砕物を調製し、かつ、湿式粉砕装置によって、ブレーン比表面積が16,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を含むスラリーを調製したこと以外は実施例3と同様にして、実験した。
その結果、最終的に沈鉱として得られた炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、95.7であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、2.2であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、84質量%であった。
[実施例5]
ボールミルによる乾式粉砕によって、ブレーン比表面積が12,000cm2/gである石灰岩粗粉砕物を調製し、かつ、湿式粉砕装置によって、ブレーン比表面積が20,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を含むスラリーを調製したこと以外は実施例3と同様にして、実験した。
その結果、最終的に沈鉱として得られた炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、96.2であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、2.7であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、80質量%であった。
ボールミルによる乾式粉砕によって、ブレーン比表面積が9,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を調製し、かつ、湿式粉砕装置によって、ブレーン比表面積が16,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を含むスラリーを調製したこと以外は実施例3と同様にして、実験した。
その結果、最終的に沈鉱として得られた炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、95.6であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、2.1であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、83質量%であった。
[比較例2]
ボールミルによる乾式粉砕によって、ブレーン比表面積が9,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を調製し、かつ、湿式粉砕装置によって、ブレーン比表面積が11,000cm2/gである石灰岩微粉砕物を含むスラリーを調製したこと以外は実施例3と同様にして、実験した。
その結果、最終的に沈鉱として得られた炭酸カルシウム含有粉末のハンター白色度は、94.3であった。未処理の石灰岩と炭酸カルシウム含有粉末とのハンター白色度の差は、0.8であった。
未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率は、88質量%であった。
また、実施例3〜6の結果から、粉砕及び浮遊選鉱処理の一連の操作を2段階に分けて行なえば、該操作が1段階である実施例1、2に比べて、白色度、及び未処理の石灰岩からの炭酸カルシウム含有粉末の回収率を向上させうることがわかる。
一方、比較例1〜2の結果から、本発明の方法に該当しない場合には、白色度が劣ることがわかる。
2 第一のスラリー濃度調整手段
3 第一の浮選剤添加手段
4 第一の浮遊選鉱装置
5 微粉砕手段(湿式粉砕装置)
6 第二のスラリー濃度調整手段
7 第二の浮選剤添加手段
8 第二の浮遊選鉱装置
Claims (3)
- (A)炭素分を不純物として含む石灰岩を、湿式粉砕して、ブレーン比表面積が14,000〜30,000cm2/gの石灰岩微粉砕物を含むスラリーを得る微粉砕工程と、
(B)工程(A)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る浮選剤添加工程と、
(C)工程(B)で得たスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、炭酸カルシウムを含む沈鉱を得る浮遊選鉱処理工程と、
を含むことを特徴とする石灰岩の不純物除去方法。 - 工程(A)の前工程として、
(X)炭素分を不純物として含む石灰岩を湿式粉砕、または乾式粉砕後に水を加えて、ブレーン比表面積が5,000〜13,000cm2/gの石灰岩粗粉砕物を含むスラリーを得る粗粉砕工程と、
(Y)工程(X)で得たスラリーと、浮選剤としての高級アルコール系脱墨剤を混合して、浮選剤を含むスラリーを得る浮選剤添加工程と、
(Z)工程(Y)で得たスラリーを浮遊選鉱処理して、炭素分を含む浮鉱と、工程(A)の被処理物である上記石灰岩を含む沈鉱を得る浮遊選鉱処理工程と、
を含む請求項1に記載の石灰岩の不純物除去方法。 - 未処理の石灰岩と工程(C)で得られる炭酸カルシウムを含む沈鉱とのハンター白色度の差が、1.0以上である請求項1又は2に記載の石灰岩の不純物除去方法。
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