JP2008142646A - 石灰石焼成ダストの処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
石灰石またはドロマイトの焼成により生石灰または焼成ドロマイトを製造したときに副生する、未燃焼の炭素粉末(未燃C)を含有する焼成ダストを処理し、未燃Cを分離除去することによりCaO分またはCaO+MgO分を回収し、焼成ダストの再資源化を可能にする方法を提供すること。
【解決手段】
未燃Cを含む焼成ダストを、起泡剤を加えた水に加え、空気を吹き込んで浮遊させる浮遊選鉱処理により炭素粉末を浮上させ、沈降した水酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを回収する。空気に代えて二酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガスを含有する空気を吹き込めば、炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを回収することができる。
【選択図】 図1
石灰石またはドロマイトの焼成により生石灰または焼成ドロマイトを製造したときに副生する、未燃焼の炭素粉末(未燃C)を含有する焼成ダストを処理し、未燃Cを分離除去することによりCaO分またはCaO+MgO分を回収し、焼成ダストの再資源化を可能にする方法を提供すること。
【解決手段】
未燃Cを含む焼成ダストを、起泡剤を加えた水に加え、空気を吹き込んで浮遊させる浮遊選鉱処理により炭素粉末を浮上させ、沈降した水酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを回収する。空気に代えて二酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガスを含有する空気を吹き込めば、炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを回収することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、石灰石を焼成して生石灰(すなわち酸化カルシウム)を製造したときに発生する、未燃焼の炭素を含む焼成ダストを処理して炭素を除去し、白色度を高めた消石灰(すなわち水酸化カルシウム)を回収する石灰石焼成ダストの処理方法に関する。本発明の方法は、石灰石に代えてドロマイトを焼成し、焼成ドロマイト(酸化カルシウムと酸化マグネシウムの複合物)を製造する場合に発生する、未燃焼の炭素を含む焼成ダストに対しても適用することができ、白色度を高めた消化ドロマイト(水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとの複合物)を回収する方法としても実施できる。以下の説明は、石灰石、生石灰および消石灰について述べるが、これらの語はそれぞれ、ドロマイト、焼成ドロマイトおよび消化ドロマイトを包含する意味に用いる。
石灰石やドロマイトの焼成は、ロータリーキルンまたはシャフトキルン等を使用して行なうが、どの焼成炉を使用しても、CaO(ドロマイトを原料とする場合はCaO+MgO、以下CaOで代表させる)を主成分とする、「焼成ダスト」と呼ばれる細粉状のものが、製品に対して3〜5%(重量%、以下同じ)程度副生することが避けられない。
焼成炉で発生した焼成ダストは、集塵機により回収されているが、使用したコークス、微粉炭、廃プラスチックなどの固形燃料の未燃焼炭素粉末(以下「未燃C」という)が焼成ダストとともに回収されるから、焼成ダストはCaO分の純度が低く、しかも、混在する未燃Cのために焼成ダストが灰色ないし黒色となっていて外観が劣り、商品化の妨げになっている。この副生品は、未燃焼の炭素粉末を含んでいてもさしつかえない用途がみつからない限り、廃棄処分するほかない。石灰石やドロマイトを有効に活用して資源の延命を図るとともに、廃棄物の発生量を低減して処分場の問題を軽減するという観点から、焼成ダストの商品化ないし再資源化が強く求められている。
焼成ダストから未燃Cを効率よく分離することは、困難とされてきた。フルイやエア・セパレータのような既知の分級手段によっても、ある程度の分離はできる。しかし、未燃Cの含有量が低くなった焼成ダストに対して、未燃Cの含有量が高い焼成ダストがほぼ同量発生してしまい、後者は利用価値がないから、効果的な解決策とはいえない。
一方、石灰石の鉱石の中には、炭素質の不純物を含有するものがある。このような石灰石を、不純物を含まないものと同じ用途に向けることができるようにするため、炭素質の不純物を浮遊選鉱法により除去することが提案された(特許文献1)。その方法は、石灰石原料鉱石を100メッシュ以下の微粉状に粉砕し、アルコール系の起泡剤を用いてアルカリ性パルプで浮遊し、不純物を浮鉱として分離することからなる。この浮遊選鉱は、パルプの温度を高くすると効果が高まり、60℃以上であると、石灰石中の不純物は40%浮遊し、沈下物としてのカルサイトの実収率は90%以上になるという。
一方、携帯機器の電源として利用されているリチウムイオン二次電池は、その使用量が増大するにつれて、電池に含まれているリチウムやコバルトのような稀少資源を再資源化する必要が生じてきた。この必要に答えるため、浮遊選鉱法により廃棄物を選別することが試みられた(特許文献2)。この選別法は、リチウムイオン二次電池を破砕し、セパレータおよび金属を分離した残り、つまりコバルト酸リチウム(LiCoO3)とグラファイトとの混合物を、350℃以上、好ましくは500℃以上に加熱したのち、水中で浮遊選別するというものである。実施に当たっては、浮遊選鉱技術で使用する起泡剤や捕集剤が有用であるとのことである。
発明者は、上記したような浮遊選鉱の技術を、石灰石焼成により発生する焼成ダストから未燃Cを分離するのに応用することを着想し、実験の結果、CaOと未燃Cとを効果的に分離して、焼成ダストを消石灰として回収できることを確認して、本発明に至った。
本発明の目的は、上記した発明者の知見を利用し、石灰石の焼成により生石灰を製造したときに発生する焼成ダストを処理し、焼成ダストに含まれる未燃Cを分離除去することによりCaO分を回収し、焼成ダストの再資源化を可能にする方法を提供することにある。
本発明の焼成ダストの処理方法は、石灰石の焼成により生石灰を製造したときに副生する、未燃C(未燃焼の炭素粉末)を含む焼成ダストを、起泡剤を加えた水に加え、空気を吹き込んで浮遊させる浮遊選鉱処理により炭素粉末を浮上させ、沈降した水酸化カルシウムを分離回収することからなる。
上記の処理方法の変更態様においては、空気に代えて二酸化炭素ガスまたは空気と二酸化炭素ガスの混合ガスを吹き込む。それにより、石灰石焼成ダストの水和により生成した消石灰が炭酸カルシウムとして沈降するから、沈降性炭酸カルシウムを回収することができる。石灰石に代えてドロマイトを焼成原料とした場合は、沈降した炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを分離回収することができる。
本発明の方法によって石灰石焼成ダストを処理すれば、ダストに4%内外含まれていた未燃Cの量を1%以下に、好ましい態様では0.5%またはそれ以下に低減して、焼成ダストの白色度を、たとえば漆喰等の壁材に使用する消石灰に要求される、60またはそれ以上の値に高めることができるから、従来は廃棄するか、または白色度を要求されない限られた用途にしか向けることができなかった、石灰石焼成ダストの利用価値を高めることができる。
本発明の変更態様に従って、空気に代えて二酸化炭素ガスまたは空気と二酸化炭素ガスの混合ガスを吹き込んだ場合は、白色度の高い沈降性の炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの複合物を得ることができる。
後記する実施例にみるように、本発明において処理の対象とする焼成ダストは、できるだけ微粉末である方が、沈降物が浮遊物に巻き込まれることが少なくて未燃Cとの分離効率が高く、しかも、処理時間も短くて済むから有利である。そこで、浮遊選鉱処理に先だって焼成ダストを粉砕し、その粒子径を100μm以下にしておくことが推奨される。好ましくは、70μm以下であってd50粒子径が10μm以下、かつ、d90粒子径が25μm以下の微粉末である。
焼成ダストの粉砕は、乾式粉砕によっても、湿式粉砕によっても実施できる。乾式粉砕の手段としては、ジェットミル、ロッドミル、振動ミル、ボールミルなどが使用でき、湿式粉砕には、湿式ボールミルが使用できる。とくに湿式粉砕が好ましい。その理由は、機械的な粉砕と焼成ダストのCaOの消化反応とが同時に進行するため、乾式粉砕よりも細かい被処理物が容易に得られるからである。また、粉砕後の回収物は水スラリーとして得られ、そのままの状態で浮遊選鉱機にかけることができ、粉末をあらためて水に分散させる必要がない。本発明において、「未燃Cを含む焼成ダストを、起泡剤を加えた水に加え」とは、このような、すくなくとも一部がすでに消化された焼成ダストの水スラリーを、浮遊選鉱処理の対象とする場合を包含する。
焼成ダストと水との重量割合(焼成ダスト/水)×100を「固液比」とすると、この値は50%以下が好ましい。いうまでもなく、固液比が高い方が処理効率は高くなり、コスト面でも有利であるが、50%を超す固液比になると、スラリーの粘度が極端に高まって、輸送・処理に当たり配管の閉塞や撹拌装置の過負荷という問題を引き起こす。トラブルが少なく安定した操業ができるのは、固液比が5〜30%の範囲である。
浮遊選鉱においては一般に、起泡剤を使用する。適切な起泡剤は、MIBC(メチルイソブチル・カルビノール)のようなアルコール系の非イオン浮選剤や、不飽和炭化水素系のパイン油などである。その添加量は、浮遊選鉱を効果的に行なうのに不可欠な厚さをもった泡沫層を形成するという観点から、十分である量を目安として決定すればよい。具体的な量は、焼成ダストに含まれる未燃Cの量によって異なるが、水1トンあたり100g〜1kgである。
浮遊選鉱処理に当たっては、水に、未燃Cの捕集剤として、液状の炭化水素を添加して実施することが好ましい。未燃Cは、炭化水素との親和性が高く、浮遊成分として炭化水素捕集剤によく捕集される。具体的な捕集剤は、ディーゼル油、ケロシン、タール油などである。その使用量も、焼成ダスト中の未燃Cの量によって左右されるが、水1トンあたり500g〜5kgの範囲にある。
分散剤の使用もまた、効果的である。ケイ酸ソーダ、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸ナトリウムなどが好適に使用できる。これらは、スラリーや泡沫層の適正な性状が保たれるように、必要に応じて適量を添加する。本発明の変更態様に従って、空気に代えて二酸化炭素ガスまたは空気と二酸化炭素ガスの混合ガスを吹き込む場合、つまり沈降性炭酸カルシウムを製造する場合、生成物の粒子径や形状をコントルールするために、種々の添加剤を加えるのが常である。そのような添加剤は、浮遊選鉱による分離を妨げないものであれば、任意に添加することができる。
浮選機は、ファーレンワルド型、フェジャーグレン型、アジテア型、ワーマン型、コラム型などさまざまな形式があるが、いずれを用いてもよい。
表1に示す分析値(重量%)をもつ焼成ダストをポットミルに入れ、3時間、湿式粉砕した。
得られたスラリーを、表2のように、気泡剤としてMIBCを、捕集剤として灯油を使用し、つぎの2水準の条件で、空気吹き込みによる浮遊選鉱処理した。
浮上物と沈降物とを別個に濾過、洗浄および乾燥し、それぞれ分析して、つぎの結果を得た。ここで、白色度は、JIS P8148に規定される、紙、板紙およびパルプのISO白色度(拡散青色光反射率)である。条件1および2のどちらの場合も、未燃Cは浮上物に集中し、沈殿物にはほとんど含まれないことがわかる。捕集剤を添加した条件1の場合、沈殿物の回収率は80%以上という高い値であるのに対し、捕集剤を添加しなかった条件2の場合、60%であることから、捕集剤の効果が高いことが確認された。沈殿物の白色度は72〜74であって、処理対象の焼成ダストの白色度が51であったのにくらべれば、顕著な改善である。
浮遊選鉱処理の時間と沈殿物中の未燃C量および白色度との関係をしらべるため、処理時間60分までの範囲内で、種々の処理時間においてサンプリングし、図1に示す結果を得た。このグラフから、処理時間を長くすれば沈殿物中の未燃C量は減少し、白色度が向上することが、明らかである。近似式から外挿したところによれば、浮遊選鉱の処理時間を300分間(5時間)とれば、未燃C量はほぼゼロになり、白色度は80まで上昇する。しかし、そのような長時間の処理は現実的ではない。漆喰や壁材など、消石灰の通常の用途に向けるには、未燃C量が1%以下、白色度が60以上であれば足りる。
処理対象とする焼成ダストの粒子径と、得られる消石灰の未燃C量および白色度との関係を調べるため、ポットミルによる焼成ダストの粉砕を、30分間、1時間または3時間行なった。それぞれの条件で粉砕した焼成ダストの粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。得られた累積粒度曲線における積算値が、50%および90%に達するときの粒子径(それぞれ「d50粒子径」および「d90粒子径」と称する)を記録した。結果は、表4に示すとおりである。この粉砕した焼成ダストを、実施例1の条件1の処理条件で浮遊選鉱処理して、沈降物の未燃C量および白色度を測定した。その結果を、あわせて表4に掲げるとともに、図2に示した。
表4および図2の結果から、d50粒子径が10μm以下またはd90粒子径が25μm以下になると、未燃Cが減少して白色度が向上し、回収された焼成ダストの品質は著しくよくなることがわかる。これは、焼成ダストを浮遊選鉱法で処理する場合、単体分離が重要であることを示している。
Claims (5)
- 石灰石またはドロマイトの焼成により生石灰または焼成ドロマイトを製造したときに副生する、未燃焼の炭素粉末を含む焼成ダストを、起泡剤を加えた水に加え、空気を吹き込んで浮遊させる浮遊選鉱処理により炭素粉末を浮上させ、沈降した水酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムを分離回収することからなる焼成ダストの処理方法。
- 石灰石またはドロマイトの焼成により生石灰または焼成ドロマイトを製造したときに副生する、未燃焼の炭素粉末を含む焼成ダストを、起泡剤を加えた水に加え、二酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガスを含有する空気を吹き込んで浮遊させる浮遊選鉱処理により炭素粉末を浮上させ、沈降した炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムを分離回収することからなる焼成ダストの処理方法。
- 浮遊選鉱処理に当たり、水に、未燃焼炭素の捕集剤として液状の炭化水素を添加して実施する請求項1または2の焼成ダストの処理方法。
- 浮遊選鉱処理に先だって焼成ダストを粉砕し、その粒子径を100μm以下として実施する請求項1ないし3のいずれかの焼成ダストの処理方法。
- 焼成ダストの粉砕を、d50粒子径が10μm以下またはd90粒子径が25μm以下となるように行なって実施する請求項4の焼成ダストの処理方法。
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