以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1には、本実施の形態に係る車両10の前部の概略構成が示されている。また、図2には、車室内を空調する車両空調装置として車両10に設けられたエアコン12の概略構成が示されている。なお、図1では、車両前後方向の前方側が矢印Fr、車両上下方向の上方側が矢印Upで示されている。
図2に示されるように、エアコン12には、圧縮機(コンプレッサ14)、凝縮器(コンデンサ16)、膨張弁(エキスパンションバルブ18)及び放熱器(エバポレータ20)を含む一般的構成の冷凍サイクルが形成されている。
この冷凍サイクルでは、コンプレッサ14の回転駆動により圧縮されて高温高圧となった冷媒がコンデンサ16へ送られる。コンデンサ16では、この冷媒とコンデンサ16に導入される空気との間で熱交換が行われることにより、冷媒が冷却されて液化される。この冷媒は、エキスパンションバルブ18によって急激に減圧されてエバポレータ20へ送られ、エバポレータ20で気化される。
これにより、エアコン12では、エバポレータ20を通過する冷媒と空気との間で熱交換が行われ、エバポレータ20を通過する空気が冷却及び除湿される。エアコン12では、エバポレータ20を通過した空気により、車室内を空調する空調風が生成される。
エアコン12は、エアコンユニット22を備え、このエアコンユニット22にエバポレータ20が配置されている。また、エアコンユニット22には、空気の導入口24として内気導入口24A及び外気導入口24Bが形成されると共に、内気導入口24Aと外気導入口24Bとを選択的に開閉する切換ドア26及び、ブロワファン28が設けられている。これにより、エアコン12では、ブロワファン28の作動により、内気ないし外気が導入されてエバポレータ20へ送られる。
また、エアコンユニット22には、他端側に複数の空気吹出し口30が形成されると共に、空気吹出し口30を選択的に開閉するモード切換ドア32が設けられている。また、エアコンユニット22内には、加熱手段とされるヒータコア34及び、ヒータコア34へ導入される空気量を制御するエアミックスドア36が配置されている。
エアコン12では、エアミックスドア36の開度に応じてヒータコア34を通過する空気がヒータコア34で加熱される。また、エアコン12では、ヒータコア34で加熱された空気と、ヒータコア34をバイパスされることによりエバポレータ20を通過したままの温度の空気が混合され、吹出しモードに応じて選択された吹出し口30から車室内へ吹き出される。
なお、本実施の形態では、車両10として、走行用の駆動源としてエンジンを備えたコンベンショナル車又はハイブリッド車を適用し、このエンジンのエンジン冷却水を用いるヒータコア34を設けているが、ヒータコア34に加えてPCTヒータなどの電気ヒータを設けたものであっても良い。また、車両10として電気自動車などに適用するときには、ヒータコア34に換えて電気ヒータなどの加熱手段を用いれば良い。
図3に示されるように、エアコン12は、エアコンECU40を備えている。このエアコンECU40は、CPU、ROM、RAM等がバスによって接続された一般的構成のマイクロコンピュータ、各種の入出力インターフェイス、駆動回路などを備えた構成となっている(何れも図示省略)。
エアコン12では、一例として、エンジンの駆動力によってコンプレッサ14を駆動するようになっており、エアコンECU40は、電磁クラッチ42によってコンプレッサ14へのエンジンの駆動力を断続する。また、エアコンECU40は、コンプレッサ14の冷媒吐出圧を制御することにより所望の冷房能力が得られるようにしている。なお、コンプレッサ14は、コンプレッサモータによって駆動されるものであっても良く、このときには、要求される冷房能力に応じてエアコンECU40がコンプレッサモータの回転数を制御するものであれば良い。
エアコンECU40には、ブロワファン28を駆動するブロワモータ44が接続されていると共に、切換ドア26、モード切換ドア32及びエアミックスドア36を駆動するアクチュエータ46A、46B、46Cが接続されている。エアコンECU40は、ブロワモータ44の駆動電圧を制御することによりブロワファン28の回転数(ブロワ風量)を制御し、アクチュエータ46A〜46Cを作動することにより切換ドア26、モード切換ドア32の開閉、及びエアミックスドア36の開度を制御する。
一方、エアコンECU40には、車室内の温度(室温)を検出する室温センサ48、車外の温度(外気温)を検出する外気温センサ50、日射量を検出する日射センサ52、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ54、エバポレータ20を通過した空気の温度を検出するエバポレータ後温度センサ56等が接続されている。また、エアコンECU40には、冷凍サイクル中の高圧側の冷媒圧力を検出する圧力センサ58A及び、低圧側の冷媒圧力を検出する圧力センサ58Bが接続されている。
エアコンECU40は、図示しない操作パネルのスイッチ操作によって設定温度などの運転条件が設定されて空調運転の開始が指示されると、室温、外気温などの環境条件を検出し、検出した環境条件と運転条件とに基づいて空調運転を行う。
例えば、エアコンECU40は、車室内を設定温度とするための空調風の目標吹出し温度を演算し、演算した目標吹出し温度及び運転条件の設定等に基づいて車室内を空調する。このときに、エアコンECU40は、圧力センサ58A、58Bによって検出される冷媒圧力が、所定の冷房能力が得られる圧力となるように制御する。ここで、高圧側の冷媒圧力を検出する圧力センサ58Aは、コンプレッサ14の吐出側とコンデンサ16の間の圧力を検出するものであれば良く、また、低圧側の冷媒圧力を検出する圧力センサ58Bは、コンプレッサ14の入側とエバポレータ20の間の圧力を検出するものであれば良い。なお、このようなエアコン12及びエアコン12の空調運転制御の基本的構成は、公知の一般的構成を適用することができる。
ところで、図1に示されるように、車両10には、前部のエンジンコンパートメント60内にエアコン12のコンデンサ16が配置されている。また、車両10には、前端部にグリル開口部62、64が形成されている。なお、グリル開口部62、64は、フロントバンパ66の上方側がグリル開口部62とされ、下方側がグリル開口部64とされている。
グリル開口部62には、複数の整流フィン68が設けられている。また、グリル開口部64には、整流フィン70が設けられている。これにより、車両10には、車両前方側の空気がグリル開口部62、64からエンジンコンパートメント60内に導入されるフロントグリル72が形成されている。
一方、車両10には、車両用グリル装置とするグリル装置74及び、車両用冷却装置とする冷却装置76が設けられている。冷却装置76は、一例としてエアコン12のコンデンサ16を冷却対象となる熱交換器とし、コンデンサ16に導入される空気量を制御することにより、コンデンサ16での冷媒の冷却能力を制御する。
コンデンサ16は、車両後方側の全面がファンシュラウド78によって覆われている。このファンシュラウド78には、冷却ファン80が取り付けられている。冷却装置76では、この冷却ファン80を回転駆動することにより、コンデンサ16への空気の導入が促進される。また、冷却ファン80の回転数に応じてコンデンサ16に導入される空気量が変化することから、冷却装置76では、冷却ファン80の回転数によりコンデンサ16への導入空気量を制御する。
なお、ファンシュラウド78及び冷却ファン80は、コンデンサ16の車両後方側ではなく、車両前方側に設けても良い。また、冷却ファン80の数は、任意でよいが本実施の形態では、一例として二つの冷却ファン80A、80Bを車幅方向(図1の紙面表裏方向)に配列している。
フロントグリル72では、グリル開口部62に設けている整流フィン68が、例えば、車幅方向(図1の紙面表裏方向)に沿う軸82を中心に回動可能とされている。グリル開口部62に設けられている整流フィン68は、図示しないリンク機構により連結されており、各整流フィン68が軸82を回動中心として回動される。
グリル装置74では、整流フィン68の回動を制御することにより、グリル開口部62、64のうちのグリル開口部62を開閉する。なお、グリル開口部62を開いたときは、図1に実線で示されるように、整流フィン68が水平状態となり、車両前方側から見た開口面積が最大となる状態とする。また、グリル開口部62の閉止は、図1に二点鎖線で示されるように、グリル開口部62が整流フィン68により塞がれた状態としている。また、本実施の形態では、グリル開口部62の開閉を行うものとしているが、これに限らず、グリル開口部64を開閉しても良く、グリル開口部62、64を開閉するものであっても良い。
車両10では、グリル装置74によりグリル開口部62が閉止されることにより、走行中にグリル開口部62からエンジンコンパートメント60内への空気の導入が阻止される。これにより、車両10では、グリル開口部62が開かれている状態よりも、グリル開口部62が閉じられている状態であるときに、走行中の空気抵抗が低減される。
図3に示されるように、グリル装置74には、整流フィン68を回動するアクチュエータ84が設けられ、冷却装置76には、冷却ファン80を駆動するファンモータ86が設けられている。なお、前記した如く、本実施の形態では、2つの冷却ファン80A、80Bを設けており、冷却装置76には、冷却ファン80を駆動するファンモータ86A及び、冷却ファン80Bを駆動するファンモータ86Bを備えている。また、以下では、特に区別しない場合、冷却ファン80及びファンモータ86として説明する。
車両10には、グリル装置74と冷却装置76を制御する制御手段としてコントローラ88が設けられている。このコントローラ88は、CPU、ROM、RAM等がバスによって接続された一般的構成のマイクロコンピュータ、各種の入出力インターフェイス、駆動回路を含む一般的構成とされている。
このコントローラ88には、グリル装置74のアクチュエータ84及び、冷却装置76のファンモータ86A、86Bが接続されている。コントローラ88は、アクチュエータ84の作動を制御することによりグリル開口部62の開閉を制御し、ファンモータ86の駆動を制御することによりコンデンサ16への空気の導入を促進する。
コントローラ88には、車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ90、外気温を検出する外気温センサ92が接続されている。また、コントローラ88には、エアコンECU40が接続されている。なお、外気温センサ92を設けずに、エアコンECU40が外気温センサ50によって検出する外気温を取得するものであっても良い。
ここで、予め設定された車両10のモデルにおけるグリル開口部62の開閉、冷却ファン80の作動及び、これらに伴うエアコン12の消費動力の変化のシミュレーション結果を以下に示す。なお、以下のシミュレーションでは、ファンモータ86(86A、86B)の定格出力を100wとしている。
図4(A)及び図4(B)には、車速V、冷却ファン80の回転数及びグリル開口部62の開閉に応じたコンデンサ16への空気導入量として、風速(以下、コンデンサ風速Wv(m/sec)とする)の変化が示されている。なお、冷却ファン80のファンモータ86(以下、総称して冷却ファン80とする)が駆動電圧Dvにより回転数が変化するようになっており、冷却ファン80の回転数に換えて駆動電圧Dvを適用している。このとき、駆動電圧Dvを0、4、6、8、10、12(v)の6段階とし、車速Vを0、40、60(km/h)の3段階としている。
図4(A)には、グリル開口部62が開かれている場合の駆動電圧Dv及び車速Vに対するコンデンサ風速Wvが示され、図4(B)には、グリル開口部62が閉じられている場合の駆動電圧Dv及び車速Vに対するコンデンサ風速Wvが示されている。
図4(A)に示されるように、グリル開口部62が開かれて、車両10が停止している場合(車速V=0km/h)、コンデンサ風速Wvは、駆動電圧Dvの上昇に伴って増加する。
これに対して、図4(A)及び図4(B)に示されるように、車両10の走行中は、駆動電圧Dvが低くてもコンデンサ風速Wvが高くなるが、駆動電圧Dvが高くなっても、コンデンサ風速Wvの増加は僅かとなっている。また、車両10の走行中のコンデンサ風速Wvは、グリル開口部62が開かれている場合の方が、グリル開口部62を閉止している場合に比べて僅かに多くなっている。すなわち、冷却ファン80の駆動電圧Dvが同じであると、グリル開口部62を閉じることにより、コンデンサ風速Wvが低下する。
図5(A)及び図5(B)には、冷却ファン80の駆動電圧Dv及び車速Vに対する冷却ファン80の消費電力Wf(w)の変化が示されている。なお、図5(A)は、グリル開口部62が開かれている場合を示し、図5(B)は、グリル開口部62を閉止された場合を示している。
図5(A)及び図5(B)に示されるように、冷却ファン80の消費電力Wfは、グリル開口部62の開/閉の何れにおいても駆動電圧Dvの上昇に伴って増加するが、車速Vの変化における差、及び、グリル開口部62が開かれた場合と閉じられた場合とでの差は僅かとなっている。
図6(A)及び図6(B)には、駆動電圧Dv及び車速Vに対するコンデンサ16の前方の空気の温度(前方空気温Tfとする)の変化が示されている。なお、前方空気温Tfは、外気温Ta=40°C、日射有の環境下での測定値である。
図6(A)に示されるように、車両10が停止している場合(車速V=0km/h)は、冷却ファン80が停止されていると、前方空気温Tfが極めて高くなる(Tf>60°C)。しかし、冷却ファン80が駆動されると、前方空気温Tfは、駆動電圧Dvの上昇に伴って低下する。
これに対して、図6(A)及び図6(B)に示されるように、車両10が走行していると、車両走行中は、停車中よりも前方空気温Tfが低くなる。このとき、車速Vが同じであれば、グリル開口部62が閉じられている場合より、グリル開口部62が開かれている場合の方が、前方空気温Tfが低くなる。また、グリル開口部62の開閉にかかわらず、車速Vが低い場合より、車速Vの高い場合の方が、前方空気温Tfが低くなるが、何れの場合においても、駆動電圧Dvが高くなるにつれて、前方空気温Tfが高くなる。
一方、図7には、駆動電圧Dv及び車速Vに応じたコンプレッサ14の冷媒圧力Pが示され、図8には、駆動電圧Dvと車速Vに応じたコンプレッサ14の消費動力Wcの演算結果が示されている。なお、消費動力Wcは、コンプレッサ14の駆動に必要とされる動力としている。また、冷媒圧力Pは、コンプレッサ14の入側となる低圧側冷媒圧力(以下、冷媒圧力PLとする)及び、コンプレッサ14の出側となる高圧側冷媒圧力(以下、冷媒圧力PHとする)を示しており、冷媒圧力PHが、コンデンサ16の入側の冷媒圧力Pとなっている。
図7では、エアコン12の冷房能力を最大(Max Cool)としたときの冷媒圧力PH、PLを示し、コンプレッサ14の回転数は、車速V=0(km/h)でエンジン回転数が800rpm、V=40(km/h)、60(km/h)ではエンジン回転数が1200rpmとされて、このエンジンの回転が伝達比1.22で伝達されるものとしている。
図7に示されるように、駆動電圧Dv及び車速Vが低い場合、冷媒圧力PHは高くなる。また、駆動電圧Dvないし車速Vが高くなるにしたがって、冷媒圧力PHは低くなる。
ここで、図4(A)及び図4(B)に示されるように、駆動電圧Dvないし車速Vが高い場合、コンプレッサ風速Wvも高くなり、これにより、コンデンサ16の冷却能力も高くなっていると判断される。
このときには、図7に示されるように、コンプレッサ14の冷媒圧力PL及び冷媒圧力PH、特に冷媒圧力PHが低くなる。一般に、冷凍サイクルでは、コンデンサ16の冷媒圧力P(冷媒圧力PH)が高くなることにより、効率が低下し、コンプレッサ14の冷媒圧力P(冷媒圧力PH)が低くなっている場合、コンプレッサ14の駆動に要する消費動力Wpは、冷媒圧力PHが高い場合に比べて低くなる。
これに対して、図4(A)及び図4(B)に示されるように、駆動電圧Dv及び車速Vが低い場合、コンプレッサ風速Wvが低くなり、コンデンサ16の冷却能力も低くなっていると判断される。このときに、エアコン12では、コンプレッサ14の冷媒圧力P(冷媒圧力PH)が高くなる。
図7に示されるように、コンプレッサ14の冷媒圧力Pは、同じ車速Vでは、冷媒圧力PLの変化は少ないが、コンデンサ16の冷却能力が低くなると、冷媒圧力PHが高くなる。
ここで、図9には、駆動電圧Dv及び車速Vに応じてエアコン12に要求される消費動力Waが示されている。なお、この消費動力Waは、コンプレッサ14による消費動力Wpと、冷却ファン80による消費電力Wfに基づいた消費動力と、の和としている。また、図9で「グリル開」はグリル開口部62を開いた場合を示し、「グリル閉」はグリル開口部62を閉止した場合を示している。
コンデンサ16に導入される空気量の指標となるコンデンサ風速Wvが低い場合(図4(A)及び図4(B)参照)には、消費動力Waが高くなり、コンデンサ風速Wvが高い場合に、消費動力Waが低くなる。
一方、単位時間当たりの燃料消費量を燃料消費量M(ml/sec)とした場合、車両10では、グリル開口部62の開閉及び車速Vに応じて燃料消費量Mが変化する。また、エアコン12が動作することにより、エアコン12の消費動力Waによって燃料消費量Mが変化する。このとき、エアコン12で消費動力Waは、エアコン12に要求される冷房能力に応じた消費動力Waとなり、かつ、エアコン12に要求される冷房能力は、外気温Taなどの環境条件に応じて異なる。
図8(A)〜図8(E)には、グリル開口部62の開閉、エアコン12のオン/オフ(運転/停止)、外気温Ta及び車速Vに応じた定常走行時の燃料消費量Mのシミュレーション結果を示している。なお、図8(A)は、エアコン12がオフされている場合を示し、図8(B)〜図8(E)は、エアコン12がオンされている場合を示している。
図8(B)は、外気温Ta=35°Cで、エアコン12が最大能力(Max Cool)で動作している場合を示し、このときのエアコン12の消費動力を2Kw、これに伴うエアコン12での燃料消費量を0.23(ml/sec)としている。また、図8(C)では、外気温Ta=30°C、エアコン12の冷房能力が最大時(Max Cool)を100%としたときの50%の冷房能力で動作し、そのときの消費動力を0.95kw、燃料消費量を0.109(ml/sec)、図8(D)では、外気温Ta=20°C、冷房能力が40%で動作し、そのときの消費動力を0.68kw、燃料消費量を0.078(ml/sec)、図8(E)では、外気温Ta=10°C、冷房能力が30%で動作し、そのときの消費動力を0.48kw、燃料消費量を0.055(ml/sec)としている。
図8(B)から図8(E)に示されるように、燃料消費量Mは、車速Vが高くなるにしたがって増加する。また、燃料消費量Mは、グリル開口部62が閉じられることにより、グリル開口部62が開かれている場合より増加する。また、外気温Taが高く、エアコン12に要求される冷房能力が大きい場合、車速Vが高くなければ、グリル開口部62を閉じることによる燃料消費量Mの低減効果が得られない。
これに対して、外気温Taが低く、エアコン12に要求される冷房能力が小さい場合は、外気温Taが高く冷房能力が大きい場合に比べ、車速Vが低くても燃料消費量Mの低減効果が得られる。
このように、コンデンサ16の冷却能力は、外気温Ta、車速V、駆動電圧Dv(冷却ファン80の回転数)及び、グリル開口部62の開閉状態に応じて変化する。エアコン12では、要求される冷房能力が外気温Taに応じて変化し、外気温Taが高い場合には、大きな冷房能力が要求される。
ここから、コントローラ88では、外気温Ta、車速V、エアコン12の動作状態に応じて、グリル装置74Bのグリル開口部62の開閉を制御すると共に、冷却ファン80の作動、すなわちファンモータ86の作動を制御する。
ここで、コントローラ88によるグリル装置74及び冷却装置76の作動制御を説明する。
エアコン12では、外気温Taが低く、冷房運転が要求されない環境下であっても、車室内の湿度を下げるための除湿を行う必要がある。特に、外気温Taが低くウインドガラスが閉められていると、乗員の発する呼気等によって車室内の湿度が上昇し易く、このときに車室内の空気の除湿が要求される。このため、エアコン12では、例えば、外気温Taが0°C以上である場合(Ta≧0°C)に、空調運転が指示されると、コンプレッサ14が駆動される。
このとき、コントローラ88は、車速Vを判定し、この判定結果に基づいて、冷却ファン80を作動する。図10(A)には、このときの車速Vの判定の一例を示している。コントローラ88には、車速Vが、予め基準としている車速Vsを超えている場合、車速Vの判定を車速Hiとし、車速Vsより低くなっていると車速Loと判定する。このとき、車速Vsにヒシテリシスを持たせ、車速Vが、車両停止状態から車速Vs1(例えば、Vs1=20km/h)まで上昇することにより車速Hiと判定し、車速Hiと判定されている状態で、車速Vが、車速Vs2(Vs2<Vs1、例えばVs2=15km/h)まで下がると車速Loと判定する。
また、コントローラ88は、車速Vの判定結果と、コンデンサ16の入側の冷媒圧力PHに基づいて、冷却ファン80の駆動電圧Dvを設定する。このときに、コントローラ88では、複数の変節ポイントとなる冷媒圧力P(冷媒圧力PH)が設定され、変節ポイントで駆動電圧Dvを変更する。
図10(B)には、その一例を示している。ここでは、一例として、冷媒圧力Pが0.5(MPa)〜3.0(MPa)の間で、冷媒圧力Pに対して、冷媒圧力P1〜P6までの6個の変節ポイント(P1<P2<P3<P4<P5<P6)が設定されている。この、コントローラ88は、冷媒圧力Pが変節ポイントに達すると、そのときの車速Vの判定と車速Vの変化に基づいて駆動電圧Dvを切換る。
なお、車速Vの判定が車速Loであり、車速Vが上昇している場合はLo−UP、車速Vの判定が車速Loであり、車速Vがさらに下降している場合はLo−DOWN、車速Vの判定が車速Hiであり、車速Vが上昇している場合はHi−UP、車速Vの判定が車速Hiであり、車速Vがさらに下降している場合はHi−DOWNとして、駆動電圧Dvが設定される。
このとき、駆動電圧Dvは、4v〜12vの範囲のみではなく、必要に応じて、車両10の図示しないバッテリの端子電圧(例えば、13.5v)までの電圧が適用される。
図4(A)及び図(B)に示されるように、グリル開口部62が閉じられている場合、駆動電圧Dvが低い領域では、グリル開口部62が開かれている場合より、コンデンサ風速Wvが低くなる。ここから、コントローラ88は、グリル開口部62が閉じられていると、予め設定されている設定電圧DL(例えばDL=8v)を駆動電圧Dvの最低電圧に設定する。
コントローラ88は、車速Vの判定状態及び車速Vの変化、冷媒圧力PHに基づいて駆動電圧Dvを設定する。このとき、グリル開口部62が閉じられ、かつ、図10(B)に示されるように、冷媒圧力PHが、冷媒圧力P3以下であれば、駆動電圧Dvとして設定電圧DLが設定される(Dv=DL)。これにより、駆動電圧Dvは、設定電圧DL以上となるように設定される。
一方、コントローラ88は、エアコン12が停止されている場合、車速Vが、予め設定されている車速(動作車速Va、例えば、Va=40km/h)以上となる(V≧Va)と、グリル開口部62が閉止されるようにアクチュエータ84を作動させる。また、コントローラ88は、グリル開口部62を閉じた状態で、車速Vが、動作車速Vaより低くなると(V<Va)、グリル開口部62が開かれるようにアクチュエータ84を作動する。
ここで、前記した如く、エアコン12では、要求される冷房能力が外気温Taに応じて変化し、外気温Taが高い場合には、大きな冷房能力が要求され、コンデンサ16には、エアコン12の冷房能力に応じた冷却能力が要求される。また、外気温Taが低い場合、コンデンサ16の冷却能力が高くなり、車速Vが高いと、コンデンサ16の冷却能力も高くなる。
ここから、コントローラ88では、エアコン12が運転されている場合、外気温Taを複数の領域に分割し、それぞれの領域で、消費動力の低減効果が得られる車速Vが動作車速として設定されている。
ここで、本実施の形態では、一例として、温度領域を、T1以下(0°C以上、T1以下、0≦Ta≦T1、例えば、T1=15°C)、T1を超えてT2以下(T1<Ta≦T2、例えば、T2=30°C)、T2を超えた領域(T2<Ta)の3領域に分割し、それぞれの領域での動作車速Va1、Va2、Va3(Va1<Va2<Va3、例えば、Va1=40km/h、Va2=70km/h、Va3=100km/h)が設定されている。
この動作車速Va1〜Va3は、外気温Taがそれぞれの温度領域にある場合に、グリル開口部62を閉じることにより、燃料消費量Mの向上効果が得られる下限の車速Vに設定されている。すなわち、エアコン12がオンされている場合、車速Vが外気温Taに応じた動作車速Vaに達していなければ、グリル開口部62を閉止しても、燃料消費効果が得られず、逆に、グリル開口部62を閉止したために、エアコン12の消費動力を大きくしてしまい、グリル開口部62を閉止する効果が得られない車速Vとなっている。なお、ここでは、動作車速Va1〜Va3を、少なくとも消費動力が増加しない車速に設定するが、これに限らず、予め設定している許容範囲以内である車速に設定されるものであっても良い。
ここで、図11を参照しながら、第1の実施の形態に係るグリル開口部62の開閉制御及び、開閉制御に伴う冷却制御を説明する。
図11のフローチャートは、車両10の図示しないイグニッションスイッチがオンされ、車両10が走行可能な状態となると開始され、イグニッションスイッチがオフされて、車両10の走行が終了により終了される。
このフローチャートでは、最初のステップ100で、エアコン12が運転(オン)されているか否かを確認する。ここで、エアコン12が冷凍サイクルを用いた空調運転が行われていない場合(オフされている場合)、ステップ100で否定判定されてステップ102へ移行する。なお、エアコン12が暖房運転のみを行う場合には、コンデンサ16の冷却が不要であるので、オフと見なされる。
ステップ102では、車速センサ90によって検出される車速Vを読み込み、次のステップ104では、車速Vが空気抵抗の低減のみを目的として設定された設定読度Va以上であるか否かを確認する。
ここで、車速Vが動作車速Va未満(V<Va)であると、ステップ104で否定判定して、ステップ106へ移行し、グリル開口部62を開く。すなわち、グリル開口部62が閉じられていれば、アクチュエータ84を作動させてグリル開口部62を開き、グリル開口部62が開かれている場合、開いた状態を継続する。また、このステップ106では、冷却ファン80の作動が不要であるため、ファンモータ86を停止状態とする。
車速Vが動作車速Va以上(V≧Va)である場合、ステップ104で肯定判定してステップ108へ移行する。このステップ108では、グリル開口部62を閉止状態とする。すなわち、グリル開口部62が開かれている場合、アクチュエータ84を作動させてグリル開口部62を閉じ、グリル開口部62が閉止されている場合、グリル開口部62の閉止状態が継続されるようにする。また、このステップ108においても、冷却ファン80の作動が不要であるので、ファンモータ86を停止状態とする。
これにより、車両10では、空気抵抗の低減が図られ、燃料消費量Mの増加が抑えられる。
一方、エアコン12が運転(オン)されている場合、ステップ100で肯定判定してステップ110へ移行する。このステップ110では、外気温センサ92によって検出される外気温Taを読み込む。
この後、ステップ112では、外気温Taが、設定温度T2を超えているか否かを確認し、ステップ114では、外気温Taが、設定温度T1を超えているか否かを確認する。
コントローラ88には、外気温Taの領域が、設定温度T1、T2で、低温領域、中間領域及び高温領域の3つの分割領域に分割され、それぞれ分割領域に対して動作車速Va(Va1〜Va3)が設定されている。ステップ112、114では、外気温Taが分割領域の何れに属する温度であるかを確認する。
外気温Taが、設定温度Ta2を超えている場合(Ta>T2)、すなわち、ステップ112で肯定判定されてステップ116へ移行する。また、外気温Taが設定温度T1を越え、設定温度T2以下(T1<Ta≦T2)であると、ステップ114で肯定判定され、ステップ118へ移行する。
また、エアコン12では、外気温Taが0°C以上であると、コンプレッサ14が駆動されている。ここから、外気温Taが、設定温度T1以下であれば、外気温Taが、0≦Ta≦T1であるので、ステップ114で否定判定されてステップ120へ移行する。
外気温Taが、高温領域であると移行されるステップ116では、車速センサ90によって検出される車速Vを読み込み、ステップ122では、車速Vが、この温度領域に対して設定されている動作車速Va3以上か否かを確認する。このとき、車速Vが動作車速Va3以上であれば(V≧Va3)、ステップ122で肯定判定されてステップ124へ移行する。また、車速Vが動作車速Va3に達していなければ(V<Va3)、ステップ122で否定判定されてステップ126へ移行する。
外気温Taが、中間領域であると移行されるステップ118では、車速センサ90によって検出される車速Vを読み込み、ステップ128では、車速Vが、この温度領域に対して設定されている動作車速Va2以上か否かを確認する。このとき、車速Vが動作車速Va2以上であれば(V≧Va2)、ステップ128で肯定判定されてステップ124へ移行し、車速Vが動作車速Va2に達していなければ(V<Va2)、ステップ128で否定判定されてステップ126へ移行する。
外気温Taが、低温領域であると移行されるステップ120では、車速センサ90によって検出される車速Vを読み込み、ステップ130では、車速Vが、この温度領域に対して設定されている動作車速Va1以上か否かを確認する。このとき、車速Vが動作車速Va1以上であれば(V≧Va1)ステップ130で肯定判定されてステップ124へ移行し、車速Vが動作車速Va1に達していなければ(V<Va1)、ステップ130で否定判定されてステップ126へ移行する。
ここで、外気温Taがその温度領域に対して設定されている動作車速Va(Va1、Va2、Va3)に達していないことにより移行するステップ126では、グリル開口部62を開いた状態として、冷却ファン80を駆動する。
このときに、コントローラ88では、図10(A)の車速判定、エアコン12で検出される冷媒圧力P(冷媒圧力PH)及び、図10(B)に示される冷媒圧力PHに基づいて駆動電圧Dvを設定し、設定した駆動電圧Dvでファンモータ86を駆動する。
これに対して、外気温Taがその温度領域に対して設定されている動作車速Va(Va1、Va2、Va3)以上となることにより移行するステップ124では、グリル開口部62を閉止し、冷却ファン80を駆動する。
車両10では、グリル開口部62が閉じられることにより、走行中における空気抵抗が低減され、燃費が向上される。また、車両10では、冷却ファン80が駆動されることにより、グリル開口部62が閉じられることによりコンデンサ16に導入される空気量の低減が抑えられる。
コントローラ88は、図10(A)の車速判定の結果、エアコン12で検出される冷媒圧力P(冷媒圧力PH)及び図10(B)に示される冷媒圧力に基づいて駆動電圧Dvを設定し、設定した駆動電圧Dvでファンモータ86を駆動する。
図10(B)に示されるように、通常、コントローラ88は、冷媒圧力PHが低ければ、駆動電圧Dvを低くして、冷却ファン80を駆動するときの電力消費を抑え、過冷却が生じるのを防止する。しかし、グリル開口部62が閉じられると、コンデンサ16の冷却能力が低下する。
ここで、コントローラ88は、冷却ファン80の駆動電圧Dvの下限となる設定電圧DLが設定されている。コントローラ88は、冷媒圧力PHが低く、駆動電圧Dvが設定電圧DLより低くなっているとき、グリル開口部62が閉じられていると、駆動電圧Dvを設定電圧DLに設定して冷却ファン80を駆動する。
これにより、冷却ファン80が、グリル開口部62が開かれているときよりも、高い回転数で駆動されるので、グリル開口部62が閉じられることによるコンデンサ風速Wf、すなわち、コンデンサ16への空気の導入量の低下が抑えられる。したがって、コンデンサ16に導入される空気量が減少して、エアコン12の冷房能力が低下したり、この冷房能力の低下を抑えるために、コンプレッサ14の駆動に要する負荷が上昇してしまうのを抑えることができる。
このように、グリル装置74は、エアコン12が空調運転している場合に、コンデンサ16の冷却能力に影響する外気温Taに基づいて、グリル開口部62を開閉するときの動作車速Vaが設定されている。したがって、車両10では、グリル開口部62が閉止してしまうことにより、コンデンサ16の冷却能力が低下し、動力消費が増加してしまうのを抑えることができる。
なお、ここでは、エアコン12がコンプレッサ14を駆動する外気温Taの温度範囲を、3領域となるようにしているが、これに限らず、少なくとも2分割するなど、複数の温度領域に分割し、それぞれの温度領域において、グリル開口部62の開閉を切換えるしきい値とする動作車速Vaを設定するものであれば良い。
また、冷却装置76では、グリル開口部62が閉止されたときに、冷却ファン80の駆動電圧Dvを設定電圧DL以上とすることにより、コンデンサ16に導入される空気量が低下して、エアコン12の消費動力が増加してしまうのを抑えることができる。
したがって、車両10では、グリル装置74によってグリル開口部62を開閉して燃費向上を図るときに、熱交換器であるコンデンサ16の冷却能力が低下してしまうことによる燃費悪化が抑えられる。
〔第2の実施の形態〕
以下に、第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図12に示されるように、エアコン12のエアコンECU40Aには、ファンモータ86(ファンモータ86A、86B)が接続されており、これにより、冷却装置76Aが形成されている。また、第2の実施の形態に適用したコントローラ88Aには、アクチュエータ84、車速センサ90及び外気温センサ92が接続され、これにより、グリル装置74Aが形成されている。
グリル装置74Aのコントローラ88Aは、エアコン12がオンされていると、外気温Taに基づいて動作車速Va(動作車速Va1〜Va3)を設定し、車速センサ90により検出される車速Vと、動作車速Vaとに基づいてグリル開口部62の開閉を行う。すなわち、図11のフローチャートに対して、ステップ124、126のそれぞれにおいて、冷却ファン80の制御を除き、アクチュエータ84の操作を行う。
また、エアコンECU40Aでは、空調運転を行いながら、グリル開口部62の開閉に応じて冷却ファン80の作動を制御する。このとき、エアコンECU40Aには、コントローラ88Aから車速Vが読み込まれ、エアコンECU40Aは、車速Vと運転状態に基づいて冷却ファン80を制御する。
図13には、このときの冷却ファン80の作動制御の一例が示されている。このフローチャートは、エアコン12の空調運転が行われているときに、グリル開口部62の開閉制御と並行して実行され、最初のステップ150で、車速センサ90によって検出される車速Vを読み込む。なお、車速Vはコントローラ88Aから読み込むのではなく、別に車速センサを設けても良く、また、エンジンの作動を制御するエンジンECUから取得するものであっても良い。
次のステップ152では、車速V及び車速Vの変化から、図10(A)に基づいた車速判定を行なう。また、ステップ154では、圧力センサ58Aによって検出される冷媒圧力PHを読み込み、ステップ156では、図10(B)のマップを用い、車速判定と冷媒圧力PHから駆動電圧Dvを設定する。
この後、ステップ158では、グリル装置74Aにおいて、グリル開口部62が開かれているか否かを判定する。このときに、グリル開口部62が開かれていれば、ステップ158で肯定判定されてステップ160へ移行し、設定した駆動電圧Dvで冷却ファン80を駆動する。
これに対して、グリル開口部62が閉じられていると、ステップ158で否定判定してステップ162へ移行する。このステップ162では、駆動電圧Dvが予め設定された設定電圧DLより低いか否かを確認する。このときに、駆動電圧Dvが設定電圧DL以上(Dv≧DL)であれば、ステップ162で否定判定してステップ160へ移行し、設定された駆動電圧Dvで冷却ファン80を駆動する。
また、設定された駆動電圧Dvが予め設定されている設定電圧DLより低い(Dv<DL)と、ステップ162で肯定判定してステップ164へ移行する。このステップ164では、設定電圧DLを駆動電圧Dvに設定する。この後、ステップ160へ移行して、設定された駆動電圧Dv(設定電圧DL)で冷却ファン80を駆動する。
これにより、エアコン12のコンデンサ16では、要求される冷却能力が低いときに、グリル開口部62が閉じられることにより、所望の冷却能力が得られなくなってしまうのが防止される。
なお、ここでは、車速Vと冷媒圧力PHに基づいて駆動電圧Dvを設定し、グリル開口部62が閉じられているときに、この駆動電圧Dvを調整するようにしたが、これに限らず、グリル開口部62が閉じられているときに、設定電圧DL以上の駆動電圧Dvで冷却ファン80を駆動するものであれば良い。
なお、第1の実施の形態では、コントローラ88によって冷却ファン80の駆動を制御し、第2の実施の形態では、エアコンECU40Aによって冷却ファン80の駆動を制御したが、これに限らず、冷却装置76(76A)用のコントローラ(ファン制御手段)を設けて、エアコン12及びグリル装置74の動作状態に応じて冷却ファン80が回転駆動されるものであっても良い。
〔第3の実施の形態〕
以下に、第3の実施の形態を説明する。なお、第3の実施の形態の基本的構成は、前記した第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
図14に示されるように、第3の実施の形態では、コントローラ88に換えて用いるコントローラ170が示されている。このコントローラ170には、エアコンECU40が接続されている。また、コントローラ170には、アクチュエータ84が接続されていると共に、ファンモータ86(86A、86B)が接続され、これにより、グリル装置74B及び冷却装置76Bを形成している。
このコントローラ170には、動力演算部172が設けられている。この動力演算部172は、エアコンECU40から、冷媒圧力PH、冷媒圧力PLを取得する。
また、このコントローラ170には、図示しないエンジンの駆動を制御するエンジンECU174が接続されている。本実施の形態では、コンプレッサ14をエンジンによって駆動しており、コンプレッサ14の回転数Nは、エンジン回転数と伝達比率とから得られる。コントローラ170は、エンジンECU174からエンジンの回転数を取得することによりコンプレッサ14の回転数Nを算出する。
動力演算部172では、冷媒圧力PH、冷媒圧力PL及びコンプレッサ14の回転数Nから、コンプレッサ14の駆動に要する動力Lを演算する。この動力Lがコンプレッサ14の駆動に要している消費動力であり、本実施の形態では、この消費動力を、実質的なエアコン12の消費動力と見なしている。また、コンプレッサ14がコンプレッサモータによって駆動される場合、エアコンECU40からコンプレッサモータの回転数又はコンプレッサ14の回転数Nを取得するものであれば良い。
コントローラ170には、予測動力演算部176、動作車速演算部178及び動作制御部180が設けられている。予測動力演算部176は、アクチュエータ84を操作して、グリル開口部62を閉じた場合のエアコン12の動力(消費動力)Lcを演算し、動作車速演算部168は、グリル開口部62を閉じて車両10の空気抵抗を低減することにより得られる消費動力の低減量と、エアコン12の消費動力の増加量から、グリル開口部62を開閉する動作車速Vaを設定する。
動作制御部180は、車速センサ90によって検出される車速Vと、動作車速演算部168で設定した動作車速Vaに基づいてグリル開口部62の開閉(アクチュエータ84の制御)を行う。また、動作制御部180は、エアコン12の運転状態に基づいて冷却ファン80の駆動を行う。なお、動作制御部160での冷却ファン80の制御は、第1の実施の形態(図10(A)及び図10(B)と同等の構成が適用される。また、動作制御部180は、主にグリル開口部62の開閉を制御し、冷却ファン80の制御は、第2の実施の形態に示されるに、エアコンECU40(エアコンECU40A)で行うものであってもよい。
図15には、冷凍サイクルに適用されるモリエル線図の概略が示されている。冷凍サイクルでは、コンプレッサ14が回転駆動されることにより、冷媒圧力Pが冷媒圧力PLから冷媒圧力PHへ変化する。このときのエンタルピiは、エンタルピiaからエンタルピibに変化し、このエンタルピ差Δi(Δi=ib−ia)が、コンプレッサ14の仕事量となり、コンプレッサ14を駆動する動力Lが得られる。このときの動力Lは、
L=(ib−ia)・Gr
となる。Grは冷媒の循環量であり、冷媒の循環量Grは、コンプレッサ吸入容積Vc(m3/h)、吸入ガスの比容積vs(m3/kg)から得られる。
Gr=Vc/vs(kg/h)
また、コンプレッサ吸入容積Vcは、コンプレッサシリンダ体積V1(ml)、コンプレッサ回転数N(rpm)、体積効率ηvから以下となる。
Vc=(V1×N×60)・×10−6×ηv
このようにして定まる動力Lを軸馬力に換算することにより、コンプレッサ14を駆動するのに要する消費動力Wpが得られる。また、この消費動力Wpからエアコン12の消費動力Waが得られる。
グリル開口部62を閉じることにより、コンデンサ16に導入される空気量が低下して、コンデンサ16での空気側の放熱能力が低下する。一般に、冷凍サイクルでは、コンデンサ16での空気側の放熱能力が低下することにより、冷媒側の放熱能力とのバランスが取られるように冷媒圧力PHが増加する。
これにより、図15に一点鎖線で示されるように、冷媒圧力PH1に増加すると、エンタルピicがエンタルピic1となる。これにより、エンタルピibがエンタルピib1に増加し、コンプレッサ14の仕事量がエンタルピ差Δi1に増加する。これによるコンプレッサ14のエンタルピ差(ib1−ib)が、グリル開口部62を閉じたときのコンプレッサ14の消費動力の増加量に対応する。
また、グリル開口部62が閉じられている場合、グリル開口部62が開かれていることにより、コンデンサ16に導入される空気量が増加し、これに伴って、コンデンサ16の入側の冷媒圧力Pである冷媒圧力PHが減少し、コンプレッサ14の動力も減少される(図示省略)。
予測演算部176では、グリル開口部62の開閉が切換えられることによるコンプレッサ14の動力を予測動力Lcとして演算する。これにより、グリル開口部62の開閉に応じたコンプレッサ14の動力の増減が得られる。エアコン12の消費動力Waの増減量が、コンプレッサ14の動力の増減量(Lc−L)に対応する。
一方、車両10では、グリル開口部62の開閉により空気抵抗(抗力係数)が変化する。また、車両10の空気抵抗は、車速Vの二乗に比例して増加し、この空気抵抗に応じて車両10の消費動力も変化する。
ここから、動作車速演算部178は、グリル開口部62を開いたときより、グリル開口部62を閉じたときに消費動力が低減される車速Vである動作車速Vaを設定する。なお、以下では、動作車速Vaは、グリル開口部62を閉じたときに、消費動力の増加量が、空気抵抗と車速による消費動力の減少量で相殺される車速Vに設定されるものとするが、少なくとも、グリル開口部62を閉じたときの消費動力の増加量が予め設定された許容範囲(許容量)に収まる車速Vを適用しても良い。また、動作車速演算部178としては、グリル開口部62の開閉に応じた車速Vごとの消費動力の低減量をマップとして記憶し、このマップと、グリル開口部62の開閉に応じたエアコン12の消費動力Waの増減量とから、動作車速Vaを設定するものであっても良い。
動作制御部180は、車速センサ90によって検出される車速Vと、動作車速演算部178で設定された動作車速Vaに基づいて、アクチュエータ84を作動することにより、グリル開口部62を開閉する。
図16には、第3の実施の形態に係るグリル開口部62の開閉制御及び、開閉制御に伴う冷却制御が示されている。なお、ここでは、第1の実施の形態と同等の処理を行うステップには、そのステップ番号を括弧内に併記している。
このフローチャートでは、最初のステップ200でエアコン12がオンされているか否かを確認し、このときに、エアコン12がオフされていると、ステップ200で否定判定されてステップ202へ移行する。このステップ202では、動作車速Vaを予め設定されている速度(例えば、40km/h)に設定する。
次のステップ204では、車速センサ90によって検出される車速Vを読み込み、ステップ206では、車速Vが動作車速Va以上となっているか否かを確認する。
このときに、車速Vが動作車速Vaに達していなければ(V<Va)、ステップ206で否定判定してステップ208へ移行し、グリル開口部62を開いた状態とする。また、車速Vが動作車速Va以上(V≧Va)であれば、ステップ206で肯定判定してステップ210へ移行し、グリル開口部62を閉止状態とする。なお、ステップ208、210では、コンデンサ16の冷却が不要であるので、コンデンサ16の冷却のみを目的とした冷却ファン80の駆動を停止する。
一方、エアコン12がオンされていると、ステップ200で肯定判定されてステップ212へ移行する。このステップ212では、エアコン12の冷媒圧力PH、PL及びコンプレッサ14の回転数Nを、取得あるいは算出し、エアコン12に設けられているコンプレッサ14の動力Lを演算する。
また、ステップ214では、グリル開口部62を開くか又は閉じたときの予測動力Lcを演算する。すなわち、グリル開口部62が開かれていれば、グリル開口部62が閉じられた場合の予測動力Lcを演算し、グリル開口部62が閉じられていれば、グリル開口部62が開かれた場合の予測動力Lcを演算する。
なお、ここでは、動力L及び予測動力Lcを分けて演算しているが、これに限らず、例えば、グリル開口部62が開かれているか否か及び、冷媒圧力PH、PL、エンジン回転数Nから、グリル開口部62と閉じた場合の動力と、グリル開口部62を開いた場合の動力を演算するようにしても良い。
この後、ステップ216では、グリル開口部62を閉じたときに、消費動力の低減効果が得られる動作車速Vaを設定する。すなわち、グリル開口部62を閉じて空気抵抗の低減を図ることより、消費動力が抑えられる。特に空気抵抗は、車速Vの自乗に比例するので、グリル開口部62を閉止することにより、車速Vが高くなるほど大きな消費動力の抑制効果が得られる。しかし、グリル開口部62を閉じることによりコンデンサ16の冷却能力が下がると、エアコン12の消費動力が上昇する。
ここから、ステップ216では、グリル開口部62による車両走行に係る消費動力の差と、グリル開口部62の開閉による消費動力Waの差を演算し、グリル開口部62を閉じることによりその消費動力の差を相殺することができる車速Vを演算し、演算により得られた車速Vを動作車速Vaに設定する。なお、空気抵抗に対する車両10の消費動力は、予めマップとして記憶されるものであれば良く、また、そのマップ上の消費動力ごとに、消費動力Waの差に応じた車速Vが予め設定されている構成などを適用することができる。
このようにして動作車速Vaが設定されると、ステップ218では、車速センサ90が検出する車速Vを読み込み、次のステップ220では、車速Vが動作車速Va以上か否かを確認する。このとき、車速Vが設定車速Vaに達していなければ(V<Va)、ステップ220で否定判定してステップ222へ移行し、グリル開口部62を開いて、グリル開口部62を開いている状態に対応した冷却ファン80の駆動を行う。
これに対して、車速Vが動作車速Va以上(V≧Va)となっているときには、ステップ220で肯定判定してステップ224へ移行する。このステップ224では、グリル開口部62を閉じ、グリル開口部62を閉じた状態に対応した冷却ファン80の駆動を行う。
このようにしてグリル開口部62の開閉を行うことにより、車速Vが低い状態でグリル開口部62を閉じてしまったために、逆に消費動力が増加してしまうのを防止することができる。また、消費動力を減少させる車速Vに達しているにもかかわらず、グリル開口部62が閉じられていないために、消費動力の低減効果が得られない事態が生じるのを防止することができる。
なお、以上の説明では、駆動電圧Dvに応じた回転速度で駆動する冷却ファン80(ファンモータ86)を用いて説明したが、この駆動電圧Dvは、デューティ制御された電圧を適用しても良い。また、冷却ファン80としては、駆動電圧が一定とされて供給される電力の周波数が制御されるものであっても良い。
また、以上説明した本実施の形態では、冷却装置76の冷却対象となる熱交換器をコンデンサ16として説明したが、本発明で冷却対象となる熱交換器は、これに限らず、エンジンの冷却液が循環されるエンジンラジエータを適用しても良い。また、冷却対象となる熱交換器は、走行用の駆動源とされる電気モータ、電気モータへ駆動用の電力を供給する蓄電池、インバータ装置などが設けられているとき、それぞれの冷却用冷媒が循環されるラジエータを適用しても良く、さらに、それぞれが異なる冷媒を冷却する複数の熱交換器を冷却対象としても良い。
何れの場合においても、グリル開口部62の開閉に応じた消費動力の差を、グリル開口部62を閉じることにより相殺することができる車速Vを、設定車速Vaとし、この設定車速Vaに基づいてグリル開口部62の開閉制御を行えば良い。
また、本実施の形態では、グリル開口部64を開いた状態として、グリル開口部62の開閉をおこなうように説明したが、これに限らず、グリル開口部62、64のそれぞれの開閉が行われるものであっても良い。このとき、例えば、グリル開口部62を先に閉じ、その後に、車速などに応じてグリル開口部64を閉じるようにしても良い。
さらに、本発明は、エンジンの駆動力によって走行する車両のみならず、エンジンに加えて電気モードを備えたハイブリッド車、電気モータの駆動により走行する電気自動車などの任意の構成の車両に適用することができる。