JP5390265B2 - 真空断熱材およびそれを用いた断熱箱体並びに機器 - Google Patents
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例えば、グラスウールと熱可塑性樹脂の繊維とを含有する真空断熱材用のコア材で、熱可塑性樹脂の繊維がポリプロピレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレンを加熱溶融および加圧によりグラスウールと接着させる構成とすることで吸着剤を封入せずに、耐圧性が高く形状維持の優れた断熱性能を示す真空断熱材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリエステル繊維を含有する芯材を収容する内包材が減圧状態の外包材に収容した真空断熱材であり、ポリエステル繊維の太さが1〜6デニール、内包材がポリエチレンテレフタレート、芯材の密度が150〜300Kg/m3とすることで製造時およびリサイクル時の環境負荷が低く、取り扱い性や生産効率に優れる良好な断熱性の真空断熱材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、融点の異なる2種のポリエステル繊維を含む繊維集合体をシート状の真空断熱材の芯材として、繊維集合体がサーマルボンド法、ニードルパンチ法でシート状に加工され、低融点のポリエステル繊維が110〜170℃、高融点のポリエステル繊維がさらに20℃以上高く、繊維太さが1〜6デニールで配合割合が10:90〜30:70とすることにより、製造時やリサイクル時の環境負荷が低く作業性に優れる良好な断熱性の真空断熱材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、芯材が繊維太さ1〜6デニールのポリエステル繊維を50重量%以上含有するシート状繊維集合体であり、平均繊維径が9〜25μm、繊維集合体がニードルパンチ法によりシート状に加工され、芯材の密度が150〜300Kg/m3とすることにより、製造時およびリサイクル時の環境負荷が低く、取り扱い性や生産効率に優れる良好な断熱性の真空断熱材が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、芯材が有機繊維からなるシート状繊維集合体であり、芯材の真空引き後の真空断熱材厚みが0.1〜5mm、ガス吸着物質がポリエステル繊維不織布で覆われ、目付けが30〜200g/m2で芯材がポリエステル繊維とすることにより、製造時およびリサイクル時の取り扱い性が容易で真空引き後の曲面加工性および断熱性に優れる真空断熱材が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
図5に従来の真空断熱材6の断面模式図を示す。グラスウールの芯材やポリエステル単繊維の芯材5をゲッター剤4と共に外包材2で減圧封止する構成の真空断熱材である。
即ち、グラスウールおよび熱可塑性樹脂の繊維では、芯材が混合繊維の積層体と各々繊維の積層体では熱伝導率が異なり、記載されるような混合の場合には断熱性が低い。また、真空断熱材の折り曲げ性は述べられていないが、グラスウールの芯材では被取り付け部の形状に沿う曲げが困難で、無理に曲げるとグラスウールの切断と曲げ部で芯材厚みが減少して断熱性能が劣化する。さらに、グラスウール含有の芯材では、人体への粉塵影響、CO2排出量の増加、循環型リサイクルの困難性等、環境負荷が大きい。
これに対して、特許文献1に係るグラスウールを用いた真空断熱材では、平均繊維径が3〜5μmの極細繊維で熱伝導率が約2mW/m・Kと優れる。しかしながら、グラスウールを用いた真空断熱材の場合、上述したように環境負荷が高い。従って、グラスウールを用いた真空断熱材の使用はなるべく控えた方が良い。
また、真空断熱材としての真空引き後の厚みが0.1〜5mmの場合、厚みが不十分であり、断熱性の効果が低い。その結果、上述したように、熱伝導率がいずれも4mW/m・K以上と高い値である。これに対して、グラスウールを用いた真空断熱材では、真空引き後の厚みが約10mmであり、上述したように、高い断熱性能が得られる。
このように、グラスウールの芯材を用いた真空断熱材の場合、断熱性は良いが環境負荷が高い。また、ポリエステル単繊維の芯材を用いる場合、環境負荷は低いが、断熱性が低い。即ち、断熱性能が高く且つ環境負荷の低い芯材を提供することが困難であり、環境負荷の低い有機繊維であって且つグラスウール並みの断熱性能を備えた真空断熱材が求められる。
また、真空断熱材を各種の製品に適用する際、夫々の製品の形態に合わせた形状に変形させる必要がある。例えば、断熱箱体の角部に真空断熱材を適用する場合、角部にそって真空断熱材を折り曲げる。ここで、グラスウールやポリエステル単繊維の芯材を用いた真空断熱材の場合、繊維切断や曲げ部の厚みが減少し、真空断熱材への断熱性能が低下する。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、有機繊維では不十分であった真空断熱材の高性能化および発泡ウレタン充填時の反応温度にも耐えることが可能な、環境負荷に優れる真空断熱材を提供することを目的とする。
有機繊維集合体からなる芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、前記外包材の内部を真空封止した真空断熱材において、前記芯材は、アモルファスからなるポリマーブレンド材を溶融紡糸で形成した長繊維ウェブによって形成されている構成とする。さらに、前記ポリマーブレンド材は、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート並びに長鎖炭化水素基を含有するポリイミド、ポリイミドシロキサン、ポリアミドイミドのうち少なくとも2種を用いて形成されている構成とする。さらに、前記長繊維ウェブは、前記溶融紡糸の方法としてメルトブローン法またはスパンボンド法により形成される構成とする。さらに、前記長繊維ウェブは、繊維同士が未接着の状態である構成とする。さらに、前記長繊維ウェブの平均繊維径が6〜20μmである構成とする。さらに、前記長繊維ウェブの密度が150〜300Kg/m3である構成とする。さらに、前記外包材は内部に内袋が設けられており、前記長繊維ウェブが前記内袋に収納され、前記内袋を含む前記外包材の内部が減圧密封されている構成とする。
また、真空断熱材を含む断熱箱体であって、真空断熱材として上述した構成のいずれかを含む構成とする。さらに、前記真空断熱材が、前記断熱箱体において着脱可能な空間内に収容されている構成とする。さらに、前記真空断熱材が、前記断熱箱体の角部に沿って折り曲げて配設されている構成とする。さらに、断熱箱体を含む機器であって、断熱箱体として上述した構成のいずれかを含む構成とする。
その一例として、樹脂の熱伝導率から判断すると、例えば、結晶性のポリプロピレンが約240mW/m・Kであるのに対し、アモルファスのポリスチレンが約150mW/m・K、ポリカーボネートが約200mW/m・K、ポリイミド系が約100mW/m・Kと低くなる。本実施形態に係るポリマーブレンド材に用いる熱可塑性樹脂は、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートの市販品および冷蔵庫棚板等の粉砕物であるポリスチレンのリサイクル再生材やPETボトルやPETフィルム等の粉砕物であるポリエチレンテレフタレートのリサイクル再生材やコンパクトディスク等の粉砕物であるポリカーボネートのリサイクル再生材も使用できる。
ポリスチレンとポリイミド前駆体のブレンド樹脂は、押出し温度が約250〜300℃でポリスチレン/ポリイミドのブレンド繊維に紡糸される。その際、温度が低いと押し出しトルクが増大し、温度が高いとゲル化しやすく繊維化されにくい。ポリマーブレンド長繊維としては、接着結合されていない芯材であり、配向した長繊維ウェブが生ずるように形成捕集される。具体的には、溶融紡糸法のメルトブローンやスパンボンドで異なる2種の熱可塑性樹脂からなるポリマーブレンド材をノズル先端から押出して空気の噴射により繊維を延伸しコレクター上に付着させて、繊維同士が未接着である長繊維ウェブを形成する。
また、グラスウールやポリエステル単繊維の芯材では吸湿性が高いため、外包材へ挿入する前に約300℃や約70℃の乾燥処理が必要である。それに対し、ブレンド繊維のアモルファス樹脂は、吸湿性が低く乾燥処理が特に必要ない。これにより、製造時の工程数を削減できるため、生産性を向上することができる。
外包材は、内部に気密部を設け芯材が覆う材料構成であり、減圧封止において芯材形状が反映される材質が好ましい。外包材はラミネートフィルムを袋状とするものが用いられ、衝撃対応の最外層とガスバリア性確保の中間層と熱融着によって密閉する最内層を有する。例えば、最外層にポリアミドフィルムで耐突き刺し性を向上し、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレンービニルアルコール共重合体フィルムを設け、最内層に高密度ポリエチレンが挙げられる。
本実施形態に係る真空断熱材は、アモルファスのポリマーブレンド長繊維であり、実施例1〜6として製作したものについて、熱伝導率および熱伝導率の経時劣化、耐熱性(発泡ウレタン反応時の耐温度)、折り曲げ性、環境負荷(粉塵、CO2排出量、エコリサイクル性)を確認した。また、ブレンド長繊維以外の芯材を用いたものを比較例1〜4で作製して、同様に確認した。その結果を図3に示し、夫々の実施例及び比較例について、以下に説明する。
[実施例1]
実施例1に係る真空断熱材は、以下のように作製されたものである。アモルファスからなるポリマーブレンド樹脂として、汎用のポリスチレンと長鎖炭化水素基を含有するポリイミド前駆体を用いた。上記汎用のポリスチレンとしては、PSジャパン社製のPSJ−ポリスチレン(登録商標)を用いた。
前駆体の合成法は、撹拌機を付与した容器に長鎖炭化水素基を有するジアミン成分として、1,7−ジアミノヘプタンおよび酸無水物成分として、過剰の3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドンの溶剤中で窒素ガス雰囲気下により6時間撹拌して重縮合後、得られた溶液をメタノール等の貧溶剤に滴下し形成した粉末樹脂をブレンド材に用いた。
得られた真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)の熱伝導率は、英弘精機(株)製のAUTO−Λを用いて10℃で測定した。熱伝導率が2.4mW/m・K、さらに、真空断熱材を60℃の恒温槽中に30日間放置後、熱伝導率を再測定したところ3.8mW/m・Kであった。上記から、アモルファス樹脂のポリスチレンとポリイミドからなるブレンド長繊維を用いた真空断熱材では、熱伝導率が低く断熱性能と環境負荷に優れる。即ち、発泡ウレタン充填時の反応温度にも耐えられる真空断熱材を提供できる。
実施例2に係る真空断熱材は、曲げ形状を有し、以下のように作製されたものである。冷蔵庫のトレー等から回収されるアモルファスのリサイクル材である再生ポリスチレンと長鎖炭化水素基を含有するポリイミドシロキサン前駆体を用いた。前駆体の合成法は、撹拌機を付与した容器に、長鎖炭化水素基を有するジアミン成分として、1,9−ジアミノノナンとビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンおよび酸無水物成分として、過剰の3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドンの溶剤中で、窒素ガス雰囲気下で8時間撹拌して重縮合させ、得られた溶液をメタノール等の貧溶剤に滴下して得られた粉体樹脂をブレンド材に用いた。
実施例3に係る真空断熱材は、以下のように作製されたものである。アモルファスからなるポリマーブレンド樹脂として、ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートを10:90の重量比で、2軸押し出し混練機を用いて260℃で溶融混練および閉環してポリマーブレンドを生成する。ここで、上記ポリエチレンテレフタレートとしては、三菱化学社製のノバペックス(登録商標)を用いた。また、上記ポリカーボネートとしては、帝人化成社製のパンライト(登録商標)を用いた。
このように生成されたポリマーブレンド材をスパンボンドにより、紡糸温度約280℃で溶融して紡糸ノズルを通すことにより、ブレンド長繊維が作製される。具体的には、紡糸ノズルから紡糸された繊維を空気噴射で冷却制御されるエジェクターから繊維をコレクター上に付着させ、略円形状の長繊維ウェブを形成した。その平均繊維径は、約20.0μmで密度が約300Kg/m3である。さらに、ガスバリア性フィルムからなる外包材の中に、形成した未接着の長繊維ウェブの芯材を重ねて入れ、ガス吸着のゲッター剤を挟め、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れチャンバーの内部圧力が1.3Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールにより真空封止した。上記ゲッター剤としては、モレキュラーシーブス13Xを用いた。
得られた真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)の熱伝導率は、英弘精機(株)製のAUTO−Λを用いて10℃で測定した。熱伝導率が2.9mW/m・K、さらに、真空断熱材を60℃の恒温槽中に30日間放置後、熱伝導率を再測定したところ4.8mW/m・Kであった。上記から、アモルファス樹脂のポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートからなるブレンド長繊維を用いた真空断熱材では、熱伝導率が低く断熱性能と環境負荷に優れる。即ち、発泡ウレタン充填時の反応温度にも耐えられる真空断熱材を提供できる。
実施例4に係る真空断熱材は、以下のように作製されたものである。アモルファスからなるポリマーブレンド樹脂として、汎用のポリスチレンと長鎖炭化水素基を含有するポリアミドイミド前駆体を用いた。汎用のポリスチレンとしては、PSジャパン社製のPSJ−ポリスチレン(登録商標)を用いた。前駆体の合成法は、撹拌機を付与した容器に長鎖炭化水素基を有するジアミン成分として、1,7−ジアミノヘプタンとアジピン酸ジヒドラジドおよび酸無水物成分として、過剰の3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物と3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドンの溶剤中において、窒素ガス雰囲気下で8時間撹拌して重縮合後、得られた溶液をメタノール等の貧溶剤に滴下し形成した粉末樹脂をブレンド材に用いた。
得られた真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)の熱伝導率は、英弘精機(株)製のAUTO−Λを用いて10℃で測定した。熱伝導率が2.7mW/m・K、さらに、真空断熱材を60℃の恒温槽中に30日間放置後、熱伝導率を再測定したところ4.6mW/m・Kであった。上記から、アモルファス樹脂のポリスチレンとポリアミドイミドからなるブレンド長繊維を用いた真空断熱材では、熱伝導率が低く断熱性能と環境負荷に優れる。即ち、発泡ウレタン充填時の反応温度にも耐えられる真空断熱材を提供できる。
実施例5に係る真空断熱材は、曲げ形状を有し、以下のように作製されたものである。アモルファスからなるポリマーブレンド樹脂として、ポリカーボネートと長鎖炭化水素基を含有するポリイミドシロキサン前駆体を用いた。ポリカーボネートしては、帝人化成社製のパンライト(登録商標)を用いた。前駆体の合成法は、撹拌機を付与した容器に長鎖炭化水素基を有するジアミン成分として、1,9−ジアミノノナンと1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサンおよび酸無水物成分として、過剰の3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドンの溶剤中で窒素ガス雰囲気下により7時間撹拌して重縮合後、得られた溶液をメタノール等の貧溶剤に滴下し形成した粉体樹脂をブレンド材に用いた。
その後、曲げ試験機の支持台圧子に真空断熱材を挟み、約60〜80℃の温度で加温しながら曲げ形状の真空断熱材を作製し、英弘精機(株)製のAUTO−Λを用いて10℃で熱伝導率を測定したところ、2.4mW/m・Kであった。また、折り曲げ性を曲げ試験機を用い、試験条件(速度が10mm/min、支点間距離が100mmで支持台および圧子がφ20mmの丸棒を加温)で変位量40mmの最大曲げ荷重(N)を測定した。その結果、折り曲げ性は74.4Nと低く、60℃の恒温槽中に30日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、4.5mW/m・Kであった。上記から、アモルファス樹脂ポリカーボネートとポリイミドシロキサンからなるブレンド長繊維を用いた真空断熱材では、熱伝導率が低く断熱性能と環境負荷に優れる。即ち、発泡ウレタン充填時の反応温度にも耐えられる真空断熱材を提供できる。
実施例6に係る真空断熱材は、以下のように作製されたものである。アモルファスからなるポリマーブレンド樹脂として、PETボトル等からリサイクルした再生ポリエチレンテレフタレートと長鎖炭化水素基を含有するポリイミド前駆体を用いた。前駆体の合成法は、撹拌機を付与した容器に長鎖炭化水素基を有するジアミン成分として、1,9−ジアミノノナンおよび酸無水物成分として、過剰の3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物と3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドンの溶剤中で窒素ガス雰囲気下により6時間撹拌して重縮合後、得られた溶液をメタノール等の貧溶剤に滴下し形成した粉末樹脂をブレンド材に用いた。
このようにして得られた真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)の熱伝導率は、英弘精機(株)製のAUTO−Λを用いて10℃で測定した。熱伝導率が2.8mW/m・K、さらに、真空断熱材を60℃の恒温槽中に30日間放置後、熱伝導率を再測定したところ4.9mW/m・Kであった。上記から、アモルファス樹脂の再生ポリエチレンテレフタレートとポリイミドからなるブレンド長繊維を用いた真空断熱材では、熱伝導率が低く断熱性能と環境負荷に優れ、発泡ウレタン充填時の反応温度にも耐えられる真空断熱材を提供できる。
実施例と対比すべき例である比較例1に係る真空断熱材として、実施例で用いた前記のポリマーブレンド長繊維の代りに、ポリスチレン単繊維を用いサーマルボンド法で熱接着して、シート状のポリスチレン芯材(平均繊維径:約12.5μm、密度:約180Kg/m3)を作製した。その芯材をガスバリア性の外包材に、ガス吸着のゲッター剤と共に入れ真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内で内部圧力が1.3Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールで真空封止して、真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)を作製した。上記ゲッター剤としては、モレキュラーシーブス13Xを用いた。
このようにして得られた真空断熱材は、熱伝導率が4.8mW/m・Kで、60℃の恒温槽中に30日間放置した熱伝導率を再測定したところ、8.5mW/m・Kと大きく劣化した。従って、図3に示すように、ポリスチレン単繊維をサーマルボンドで接着した芯材は環境負荷が小さく、繊維同士の融着により熱伝導率が高く断熱性能の劣化が大きくなる。また、真空断熱材に発泡ウレタンを充填したところ反応時の温度に耐えられずパネル変形が発生した。
比較例2に係る真空断熱材として、実施例で用いた前記のポリマーブレンド長繊維の代りに、ポリエチレンテレフタレートの単繊維集合体を芯材(平均繊維径:約17.2μm、密度:約210Kg/m3)に用いた。上記ポリスチレンテレフタレートとしては、三菱化学社製のノバペックス(登録商標)を用いた。その芯材をガスバリア性の外包材に、ガス吸着のゲッター剤と共に入れ真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内で内部圧力が1.3Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールで真空封止して、真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)を作製した。上記ゲッター剤としては、モレキュラーシーブス13Xを用いた。
このようにして得られた真空断熱材は、熱伝導率が4.5mW/m・Kと高く、60℃の恒温槽中に30日間放置した熱伝導率を再測定したところ、8.2mW/m・Kと大きく劣化した。従って、図3に示すように、ポリエチレンテレフタレート単繊維の芯材は環境負荷が小さく、吸湿による水分付着で熱伝導率が高く断熱性能の劣化が大きい。また、真空断熱材に発泡ウレタンを充填したところ、反応時の温度に耐えられずパネル変形が発生した。
比較例3に係る真空断熱材においては、芯材として実施例で用いた前記のポリマーブレンド長繊維の代りに、平均繊維径が4.1μmで、密度が250Kg/m3である極細のグラスウールを用いた。この場合、吸湿性が高いため、300℃で1時間乾燥させることにより水分除去処理した。芯材とガスバリア性の外包材にガス吸着のゲッター剤を共に入れ、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れ、チャンバーの内部圧力が1.3Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールして真空封止により真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)を作製した。上記ゲッター剤としては、モレキュラーシーブス13Xを用いた。
このようにして得られた、曲げ形状の真空断熱材は折り曲げ性を実施例2と同様に測定をしたところ、最大曲げ荷重が144Nと高く曲げ難く、さらに、真空断熱材を60℃の恒温槽中に30日間放置後、熱伝導率を再測定したところ、外包材に歪みが生じ内部真空度の低下により断熱性能が5.4mW/m・Kまで劣化した。表3に示すように、グラスウールの芯材は環境負荷が大きく初期の熱伝導率は低いが、曲げ形状の真空断熱材を60℃の恒温槽中に30日間放置すると外包材の歪みにより熱伝導率が劣化する。
[比較例4]
比較例4に係る真空断熱材においては、芯材として実施例で用いた前記のポリマーブレンド長繊維の代りに、平均繊維径が16.5μmで、密度が180Kg/m3である結晶性のポリプロピレン単繊維の芯材を用いた。この芯材をガスバリア性の外包材にガス吸着のゲッター剤と共に入れ、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れチャンバーの内部圧力が1.3Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールで真空封止により真空断熱材(大きさ:500mm×500mm×10mm)を作製した。上記ゲッター剤としては、モレキュラーシーブス13Xを用いた。
このようにして得られた、曲げ形状の真空断熱材は折り曲げ性を実施例2と同様に測定をしたところ、最大曲げ荷重が85.5Nとやや曲げ難く、初期熱伝導率が3.8mW/m・Kで60℃の恒温槽中に30日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、空隙率の低下により6.2mW/m・Kまで劣った。図3に示すように、ポリプロピレン単繊維の芯材は環境負荷が小さく、熱伝導率の劣化が大きく、発泡ウレタンを充填したところ反応時の温度でパネルがやや変形した。
[実施例7]
実施例7は、図4に示すように、本発明の真空断熱材を冷蔵庫に用いた例である。冷蔵庫は、真空断熱材およびその他の断熱材により断熱されている。冷蔵庫において、外気温との温度差が特に大きいのは、コンプレッサー周辺部と、冷蔵庫背面の内箱の外面側である。この部位に本実施形態に係る真空断熱材1を使用することが有効である。
実施例8は、真空断熱材と発泡ウレタンを併用させた車両の断熱材として使用する例である。車両においては、軽量化と耐圧性向上を図るため、その側面および屋根構造体には曲面を有する構造体もある。従来の真空断熱材ではグラスウールの芯材が用いられているが、グラスウールの芯材は環境負荷が大きく、また、曲げると外包材に歪みが生じ内部真空度の低下で断熱性能が劣化する。
実施例9は、真空断熱材と発泡ウレタンを併用させた自動販売機の断熱材として使用する例である。自動販売機においては、消費電量低減と空間容積の向上を図るため、平板形状および曲げ形状の真空断熱材を有する構造となっている。従来の真空断熱材では、グラスウールの芯材は環境負荷が大きく、また、曲げると外包材に歪みが生じ内部真空度の低下で断熱性能が劣化する
また、有機繊維のポリエチレンテレフタレート単繊維の芯材は環境負荷に優れるが、発泡ウレタンと併用させる断熱材とすると、反応温度で真空断熱材がやや変形してしまう。そこで、本発明のアモルファスからなるポリマーブレンド材を溶融紡糸で形成する長繊維ウェブの芯材を用いた真空断熱材は、構造体の曲面に沿っても貼り付けることが可能で、発泡ウレタンを充填させても耐えられる真空断熱材であり、空間容積向上の断熱材としても有効である。
2 外包材
3 アモルファスのブレンド長繊維芯材
3´ 折り曲げ部
4 ゲッター剤
5 グラスウール又はポリエステル単繊維
6 従来真空断熱材
7 断熱箱体
8 発泡ウレタン
9 箱体
10 冷蔵庫
11 冷蔵庫内箱
12 冷蔵庫外箱
Claims (10)
- 有機繊維集合体からなる芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、前記外包材の内部を真空封止した真空断熱材において、
前記芯材が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートのうちの1種並びに長鎖炭化水素基を含有するポリイミド、ポリイミドシロキサン、ポリアミドイミドのうちの1種の少なくとも2種を用いて形成されているアモルファスからなるポリマーブレンド材を溶融紡糸で形成した長繊維ウェブによって構成されていることを特徴とする真空断熱材。 - 請求項1において、
前記長繊維ウェブは、メルトブローン法またはスパンボンド法の溶融紡糸により形成されていることを特徴とする真空断熱材。 - 請求項1または2において、
前記長繊維ウェブは、繊維同士がバインダーで固められていないことを特徴とする真空断熱材。 - 請求項1、2または3において、
前記長繊維ウェブの平均繊維径が6〜20μmであることを特徴とする真空断熱材。 - 請求項1、2、3または4において、
前記長繊維ウェブの密度が150〜300Kg/m 3 であることを特徴とする真空断熱材。 - 請求項1、2、3、4、または5において、
前記外包材の内部に内袋が設けられており、前記長繊維ウェブが前記内袋に収納され、前記内袋を含む前記外包材の内部が減圧密封されていることを特徴とする真空断熱材。 - 請求項1乃至6いずれかに記載の真空断熱材が設置された空間に発泡断熱材を充填してなる断熱箱体。
- 請求項7において、
前記真空断熱材が、前記断熱箱体において着脱可能な空間内に収納されていることを特徴とする断熱箱体。 - 請求項7または8において、
前記真空断熱材が、前記断熱箱体の角部に沿って折り曲げて配置されていることを特徴とする断熱箱体。 - 請求項7乃至9のいずれかに記載の断熱箱体を含むことを特徴とする機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009131220A JP5390265B2 (ja) | 2009-05-29 | 2009-05-29 | 真空断熱材およびそれを用いた断熱箱体並びに機器 |
Applications Claiming Priority (1)
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