JP5389128B2 - 放電加工装置 - Google Patents

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本発明は放電加工装置に関し、特に、半導体からなるワークを放電加工する放電加工装置に関する。
放電加工は、硬さに影響されることなく自由自在の形状に金属を加工することができ、大口径化されたウェハを半導体インゴットから切り出す方法としても用いられている。この放電加工では、放電が1箇所に集中して加工精度が劣化するのを防止するために、放電点を移動させながらパルス状に放電が行われることから、加工速度が遅くなる。このため、特許文献1には、複数のワイヤを並列に並べた状態で半導体インゴットのスライス加工を行うことで、加工速度を向上させる方法が提案されている。
また、特許文献2には、良質の加工面が得られるなどの優れた加工特性を実現するために、交流高周波を電極に印加し、平均加工電圧を0にしてチッピングを防止するとともに、一発の半波放電ごとに極性を交替させ放電ごとの放電点を異ならせる方法が開示されている。
特開平9−248719号公報 特開昭61−260917号公報
しかしながら、上記従来の技術によれば、ワークが半導体の場合、ワークとワークを固定している金属の定盤との界面でショットキーバリア障壁が形成され、電流が一方向にしか流れず、ワークが正に、ワイヤが負になるように電圧を印加すると、ワークからワイヤに電流が流れて放電が生じるが、逆にワークが負、ワイヤが正になるように電圧を印加すると、電流が流れることができず、放電が非常に生じにくい、あるいは生じても加工特性を悪化させる。このため、ワークが半導体の場合には、通常は単極性のパルス電源が用いられ、交流波形で加工することができなくなることから、良質の加工面が得られるなどの優れた加工特性を実現することが困難であるという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ワークが半導体の場合においても、交流波形を印加しながらワークを加工することが可能な放電加工装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の放電加工装置は、ワークとの間で放電を発生させる電極と、前記ワークと前記電極との間に交流電圧を印加する交流電源と、前記電極と前記交流電源のワーク側の端子との間に接続されたダイオードと、前記交流電源に直列に接続された抵抗器と、前記抵抗器に並列に接続されたスイッチング素子と、前記ワークに正電圧が印加される期間は前記スイッチング素子をオンさせ、前記ワークに負電圧が印加される期間は前記スイッチング素子をオフさせる制御回路と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、ワークが半導体の場合においても、交流波形を印加しながらワークを加工することが可能という効果を奏する。
図1は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態1の概略構成を示す平面図である。 図2は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態2の概略構成を示す平面図である。 図3は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態3の概略構成を示す平面図である。 図4は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態4の概略構成を示す平面図である。 図5は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態5の概略構成を示す平面図である。
以下に、本発明に係る放電加工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態1の概略構成を示す平面図である。図1において、放電加工装置には、電極Eと、交流電源Gと、ダイオードDが設けられている。ここで、電極Eは、ワークWとの間で放電間隙を形成することができ、この放電間隙を介してワークWとの間で放電を発生させることができる。
なお、電極Eとしては、例えば、互いに並列に配置されたワイヤ電極を用いるようにしてもよいし、形彫加工などに用いられる分割電極などを用いるようにしてもよい。また、ワークWとしては、半導体インゴットや半導体ウェハなどの半導体を用いることができる。
また、交流電源Gは、交流電圧を発生し、電極Eに印加することができる。なお、交流電源Gにて発生される交流電圧波形としては、電圧が正負に現れるパルス的な波形であってもよいし、正弦波状の波形であってもよいし、三角波状の波形であってもよいし、高周波状の波形であってもよい。
また、ダイオードDは、電極Eにアノードが接続されるとともに、交流電源GのワークW側の端子にカソードが接続されている。すなわち、ダイオードDは、電極Eから交流電源GのワークW側の端子に電流が流れるように、ワークWと電極Eとの間に形成される放電間隙に対して並列に接続されている。
ここで、ワークWが半導体であるものとする。この場合、ワークWとワークWを固定している金属の定盤との界面でショットキーバリア障壁が形成され、ワークW側から金属の定盤側に電流が流れなくなったり、金属の定盤側からワークW側に電流が流れなくなったりするダイオード特性が生じる。どちらの向きにダイオード特性が生じるかは、金属と半導体の特性(金属の仕事関数と半導体の電子親和力)に依存し、場合によっては半導体特性が生じることなく、単なる抵抗特性(オーミック接合)を示すこともある。
ここで、半導体側から金属側、つまりワークW側から定盤側に電流が流れなくなるようなショットキーバリア障壁が形成されるものとする。この場合、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加されると、ワークWから電極Eに電流が流れ、電極EとワークWとの間の放電間隙に放電が発生する。
一方、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加されると、ワークWとワークWを固定している金属の定盤との界面に形成されるショットキーバリア障壁によって、電極EからワークWに電流が流れることができなくなるため、ダイオードDを介して電流が流れる。このため、電極EとワークWとの間には、ダイオードDの電圧降下分しか電圧がかからず、電極EとワークWとの間の放電間隙には放電が発生しない。また、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加された時の半周期分の電力は、ダイオードDまたは交流電源Gにて消費される。
以下、交流電源Gの極性が正負に反転するごとに、以上の動作が繰り返され、電極EとワークWとの間の放電間隙には、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加されるごとに電圧が印加され、放電が発生される。
これにより、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加された場合においても、ダイオードDを介して電流を流すことが可能となる。このため、ワークWが半導体である場合においても、交流電源Gにて交流波形を印加しながらワークWを加工することが可能となり、良質の加工面が得られるなどの優れた加工特性を実現することが可能となる。
また、半導体インゴットのスライス加工する場合などにおいて、加工速度を早めるために、互いに並列に配置されたワイヤ電極を電極Eとして用いた場合、一つの電源で複数のワイヤを駆動することができる。この場合、どれか一つのワイヤで放電が生じると、残りのワイヤにかかる電圧が低下し、残りのワイヤには放電を生じさせることができなくなる。このため、ワークWと複数のワイヤとの間にそれぞれ形成される放電間隙に対して直列にそれぞれ接続された複数のコンデンサを設け、各コンデンサと放電間隙との直列回路を交流電源Gに対して並列に接続するようにしてもよい。
これにより、ワークWが半導体である場合においても、ワークWの放電加工を安定に行うことができ、ワークWの加工特性の劣化を抑制しつつ、多数のワイヤで同時に半導体インゴットをスライス加工することが可能となる。
実施の形態2.
図2は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態2の概略構成を示す平面図である。図2において、この放電加工装置には、図1の放電加工装置の構成に加え、抵抗器Rが設けられている。ここで、抵抗器Rは、ダイオードDに直列接続されている。
すなわち、ダイオードDと抵抗器Rとの直列回路は、ワークWと電極Eとの間に形成される放電間隙に対して並列に接続されている。
そして、ワークWが半導体であるものとし、半導体側から金属側、つまりワークW側から定盤側に電流が流れなくなるようなショットキーバリア障壁が形成されるものとする。この場合、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加されると、ワークWから電極Eに電流が流れ、電極EとワークWとの間の放電間隙に放電が発生する。
一方、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加されると、ワークWとワークWを固定している金属の定盤との界面に形成されるショットキーバリア障壁によって、電極EからワークWに電流が流れることができなくなるため、ダイオードDおよび抵抗器Rを介して電流が流れる。このため、電極EとワークWとの間には、ダイオードDおよび抵抗器Rの電圧降下分しか電圧がかからず、電極EとワークWとの間の放電間隙には放電が発生しない。また、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加された時の半周期分の電力は抵抗器Rにて消費される。
これにより、ダイオードDを介して電流を流すことで、ワークWと金属の定盤との界面に形成されたショットキーバリア障壁をバイパスさせた場合においても、交流電源GがダイオードDを介してショートされるのを防止することが可能となる。このため、ワークWが半導体である場合においても、交流電源Gの動作に不具合が発生するのを防止しつつ、交流波形を印加しながらワークWを加工することが可能となる。
実施の形態3.
図3は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態3の概略構成を示す平面図である。図3において、この放電加工装置には、図1の放電加工装置の構成に加え、抵抗器R0、スイッチング素子SWおよび制御回路Pが設けられている。ここで、抵抗器R0は、交流電源Gに直列に接続され、スイッチング素子SWは、抵抗器R0に並列に接続されている。
すなわち、交流電源Gと抵抗器R0との直列回路は、ワークWと電極Eとの間に形成される放電間隙に対して並列に接続されている。
また、制御回路Pは、ワークWに正電圧が印加される半周期はスイッチング素子SWをオンさせ、ワークWに負電圧が印加される半周期はスイッチング素子SWをオフさせることができる。
そして、ワークWが半導体であるものとし、半導体側から金属側、つまりワークW側から定盤側に電流が流れなくなるようなショットキーバリア障壁が形成されるものとする。この場合、ワークWに正電圧が印加される半周期には、スイッチング素子SWがオンされる。そして、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加されると、ワークWから電極Eに電流が流れ、電極EとワークWとの間の放電間隙に放電が発生する。
一方、ワークWに負電圧が印加される半周期には、ワークWとワークWを固定している金属の定盤との界面に形成されるショットキーバリア障壁によって、電極EからワークWに電流が流れることができなくなるため、スイッチング素子SWがオフされる。そして、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加されると、ダイオードDを介して電流が流れた後、抵抗器R0に流れる。このため、電極Eには、ダイオードDの電圧降下分しか電圧がかからず、電極EとワークWとの間の放電間隙には放電が発生しない。また、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加された時の半周期分の電力は抵抗器R0にて消費される。
これにより、ダイオードDを介して電流を流すことで、ワークと金属の定盤との界面に形成されたショットキーバリア障壁をバイパスさせた場合においても、交流電源GがダイオードDを介してショートされるのを防止することが可能となる。このため、ワークWが半導体である場合においても、交流電源Gの動作に不具合が発生するのを防止しつつ、交流波形を印加しながらワークWを加工することが可能となる。
また、互いに並列に配置されたワイヤ電極を電極Eとして用いた場合においても、1個の抵抗器R0を設けることで、半周期分の電力を消費させることが可能となり、図2の抵抗器Rをワイヤ電極ごとに設ける必要がなくなることから、放電加工装置を小型化することができる。
実施の形態4.
図4は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態4の概略構成を示す平面図である。図4において、この放電加工装置には、図1の放電加工装置の構成に加え、電力回収回路Kが設けられている。ここで、電力回収回路Kは、交流電源Gに直列に接続されている。
すなわち、交流電源Gと電力回収回路Kとの直列回路は、ワークWと電極Eとの間に形成される放電間隙に対して並列に接続されている。
また、電力回収回路Kは、ワークWに負電圧が印加される半周期に電力を回収して再利用することができる。例えば、ワークWに負電圧が印加される半周期分の電力を蓄電池に貯蔵し、その蓄電池に貯蔵した直流を交流に変換することで、交流電源Gの補助電源として用いることができる。
そして、ワークWが半導体であるものとし、半導体側から金属側、つまりワークW側から定盤側に電流が流れなくなるようなショットキーバリア障壁が形成されるものとする。この場合、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加されると、ワークWから電極Eに電流が流れ、電極EとワークWとの間の放電間隙に放電が発生する。
一方、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加されると、ダイオードDを介して電流が流れた後、電力回収回路Kに流れる。このため、電極Eには、ダイオードDの電圧降下分しか電圧がかからず、電極EとワークWとの間の放電間隙には放電が発生しない。また、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加された時の半周期分の電力は電力回収回路Kにて回収され、次の半周期で電極Eを駆動するために利用することができる。
これにより、ワークWが半導体である場合においても、交流電源Gの動作に不具合が発生するのを防止しつつ、交流波形を印加しながらワークWを加工することが可能となるとともに、半周期分の電力が図3の抵抗R0で無駄に消費されるのを防止することが可能となり、放電加工用電源の効率を向上させることができる。
実施の形態5.
図5は、本発明に係る放電加工装置の実施の形態5の概略構成を示す平面図である。図5において、図1の放電加工装置に対してダイオードDが逆向きに接続されている。すなわち、図5の放電加工装置では、ダイオードDは、電極Eにカソードが接続されるとともに、交流電源GのワークW側の端子にアノードが接続されている。すなわち、図5の放電加工装置では、ダイオードDは、交流電源GのワークW側の端子から電極Eに電流が流れるように、ワークWと電極Eとの間に形成される放電間隙に対して並列に接続されている。
そして、ワークWが半導体であるものとし、金属側から半導体側、つまり定盤側からワークW側に電流が流れなくなるようなショットキーバリア障壁が形成されるものとする。この場合、ワークWに負電圧、電極Eに正電圧が印加されると、電極EからワークWに電流が流れ、電極EとワークWとの間の放電間隙に放電が発生する。
一方、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加されると、ワークWとワークWを固定している金属の定盤との界面に形成されるショットキーバリア障壁によって、ワークWから電極Eに電流が流れることができなくなるため、ダイオードDを介して電流が流れる。このため、電極EとワークWとの間には、ダイオードDの電圧降下分しか電圧がかからず、電極EとワークWとの間の放電間隙には放電が発生しない。また、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加された時の半周期分の電力は、ダイオードDまたは交流電源Gにて消費される。
これにより、ワークWに正電圧、電極Eに負電圧が印加された場合においても、ダイオードDを介して電流を流すことが可能となる。このため、ワークWが半導体である場合においても、交流電源Gにて交流波形を印加しながらワークWを加工することが可能となり、良質の加工面が得られるなどの優れた加工特性を実現することが可能となる。
なお、実施の形態5では、定盤側からワークW側に電流が流れなくなるようなショットキーバリア障壁が形成される場合、図1のダイオードDを逆向きに接続する方法について説明したが、図2〜図4のダイオードDを逆向きに接続するようにしてもよい。
また、ワークWが半導体である場合においても、ワークWとワークWを固定している金属の定盤との界面はショットキー接合が形成されることなく、オーミック接合が形成される場合がある。この場合には、特に、ダイオードDによるバイパス経路を設けることなく、ワークWと電極Eとの間に交流を印加するようにしてもよい。
以上のように本発明に係る放電加工装置は、交流波形を印加しながら半導体インゴットのスライス加工を行う方法などに適している。
W ワーク
G 交流電源
E 電極
D ダイオード
R、R0 抵抗器
SW スイッチング素子
K 電力回収回路
P 制御回路

Claims (3)

  1. ワークとの間で放電を発生させる電極と、
    前記ワークと前記電極との間に交流電圧を印加する交流電源と、
    前記電極と前記交流電源のワーク側の端子との間に接続されたダイオードと、
    前記交流電源に直列に接続された抵抗器と、
    前記抵抗器に並列に接続されたスイッチング素子と、
    前記ワークに正電圧が印加される期間は前記スイッチング素子をオンさせ、前記ワークに負電圧が印加される期間は前記スイッチング素子をオフさせる制御回路と、
    を備えることを特徴とする放電加工装置。
  2. 前記ワークは半導体である
    ことを特徴とする請求項1記載の放電加工装置。
  3. 前記電極は、互いに並列に配置されたワイヤ電極である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電加工装置。
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