ところで、上述した種々の蛇腹は、長期間の使用により、又は蛇腹本体が装着された機械器具の高速駆動或いは振動等に伴って、上記特定の山部(又は特定の谷部)と上記他の山部(又は他の谷部)との間の距離が、設計段階で予定されている距離を超えて互いに離間してしまう場合がある。上述した特許文献1に開示された蛇腹に基づいて説明すれば、上記保護板が蛇腹本体から脱落した場合がこれに当たり、また、特許文献2に開示された蛇腹に基づいて説明すれば、上記制限テープが切断された場合である。前者の例では、保護板の基端は、上記蛇腹本体の内側であって各山部に上端が当接した支持板の上端側にリベット等により固定されている場合が多く、このリベット等は山部の頂部よりも若干下側において蛇腹本体を構成するシートを両側から摘まんだ状態で固定されていることから、リベットが蛇腹本体から脱落しその結果保護板が蛇腹本体から脱落した場合には、摘ままれていた部位が伸び、これによって特定の山部と上記他の山部との間の距離が、設計段階で予定されている距離を超えて互いに離間する。また、後者の例では、制限テープそのものが特定の山部(又は特定の谷部)と上記他の山部(又は他の谷部)との間の距離を制限する機能を果たす部材であることから、この制限テープが切断された場合には、設計段階で予定されている距離を超えて、特定の山部(又は特定の谷部)と上記他の山部(又は他の谷部)との間が離間することとなる。
しかし、これまでの蛇腹や該蛇腹が装着された(該蛇腹を構成要素とする)機械器具では、上述したように、上記特定の山部(又は特定の谷部)と上記他の山部(又は他の谷部)との間の距離が、設計段階で予定されている距離を超えて互いに離間してしまう事態を招いたとしても、該機械器具を使用する作業者は、その事態に気付かない場合が殆どである。作業者が不具合に気付くのは、こうした事態から更に蛇腹本体が損傷し又は焼失し、若しくは、該蛇腹本体が装着された機械器具の動作や精度に不具合が生じた場合、更には装置が停止した場合である。
そこで、本発明は、上述した従来の蛇腹や該蛇腹が装着された機械器具が有する課題を解決するために提案されたものであって、特定の山部(又は特定の谷部)と上記他の山部(又は他の谷部)との間の距離が、設計段階で予定されている距離を超えて互いに離間した場合、上記機械器具と共働してその事実を作業者に認識することができる蛇腹及びその蛇腹を備えた機械器具を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、蛇腹に係るものであって、電源又はランプやブザー等の報知手段と接続されてなる一方及び他方の接続端子を有する機械器具に装着される蛇腹であって、山部と谷部とが交互に形成されたシート体からなる蛇腹本体と、この蛇腹本体に配置され、上記一方の接続端子に接続される一方の蛇腹側端子と、上記他方の接続端子に接続される他方の蛇腹側端子と、一端は、上記一方の蛇腹側端子に接続され、他端は上記他方の蛇腹側端子に接続されてなるとともに、上記蛇腹本体の伸長に伴い互いに離間する隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えた場合に断線され、上記一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間における導通状態が解除されるように配線された単一の導電体、又は上記蛇腹本体の伸長に伴い互いに離間する隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えた場合に、上記一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間における導通状態が解除されるようそれぞれ互いに接続された複数の導電体群と、を備えてなることを特徴とするものである。
上記第1の発明に係る蛇腹では、蛇腹本体の伸長に伴い互いに離間する隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えると、それまで一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間において電気的に導通状態にあった単一の導電体又はそれぞれ互いに接続された複数の導電体群の該導通状態が解除される。つまり、こうした電気的導通状態が解除された場合、電源に接続された機械器具にこの蛇腹が装着されている場合には、該機械器具は停止し、ランプ又はブザー等の報知手段と接続されている場合には、それまで点灯していたランプが消灯し又はそれまで消灯していたランプが点灯し、若しくは、ブザーが駆動する等して報知される。したがって、作業者は、上記単一の導電体又は複数の導電体群の導通状態が解除されることにより、隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えたことを認識することができ、ひいては、機械器具の破損その他の不具合が発生することを事前に防止することができる。
なお、上記単一の導電体に対する電気的導通状態が解除される場合とは、蛇腹本体を構成し互いに隣り合う山部と山部との距離、又は谷部と谷部との距離が所定の距離(最大離間許容長さ)以上に離間した場合に、上記単一の導電体が断線される場合を含む。また、互いに接続された複数の導電体群の電気的導通状態が解除される場合とは、例えば、複数の導電体が互いにクリップ等の器具を介して、又は導電性接着剤を介して、或いはこれら器具や接着剤等を介さず互いの端部同士を撚る等して接続されており、上述したように、隣り合う山部と山部との距離又は隣り合う谷部と谷部との距離が所定の距離(最大離間許容長さ)以上に離間した場合に、それまで接続されていた導電体が上記接続された部位、すなわち、クリップ等を介して接続された部位、導電性接着剤を介して接続された部位、又は互いの導電体を撚ることにより接続された部位から離間・分離され接続状態ないしは導通状態が解除される場合を含む。但し、上記単一の導電体又は導電体群は、それぞれ上記蛇腹本体を構成する各山部自体又は谷部自体に直接固定されている場合も含むが、そうした場合以外に、請求項2記載の蛇腹のように、山部に固定された支持板に対して、上記導電体又は導電体群が固定されているものであっても良い。
また、上記導電体は、導電性を有する素材により線状に成形されたものであれば良く、多数の金属線が撚られて1本とされたものばかりではなく、多数の金属線からなる織布又は不織布により帯状に成形されたもの(帯状導電体)であっても良い。また、上記蛇腹本体に配置された一方の蛇腹側端子と、他方の蛇腹側端子は、この蛇腹が装着される機械器具に配置された一方の接続端子と他方の接続端子の配置位置に対応していれば良く、したがって、一方の蛇腹側端子が、蛇腹本体の一端側に配置され、他方の蛇腹側端子が蛇腹本体の他端側に配置されたものであっても良いし、該一方及び他方の蛇腹側端子の両方が、それぞれ蛇腹本体の一端側又は他端側のみに配置されているものであっても良い。
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、前記第1の発明において、前記蛇腹本体には、前記各山部の内側に支持板が固定され、前記単一の導電体の中途部がこれら各支持板に固定されてなるか、又は、上記支持板には、それぞれ導電性クリップが配置され、前記導電体群を構成する個々の導電体は、上記導電性クリップを介して電気的に接続されてなることを特徴とするものである。
上記第2の発明に係る蛇腹では、蛇腹本体には、前記各山部の内側に支持板が固定され、前記単一の導電体の中途部がこれら各支持板に固定されてなるか、又は、上記支持板には、それぞれ導電性クリップが配置され、前記導電体群を構成する個々の導電体は、上記導電性クリップを介して電気的に接続されてなることから、該導電体又は導電体群は蛇腹の外側に露出しない。したがって、機械器具にこの蛇腹が装着された場合、蛇腹本体を構成する山部と山部との距離が所定の最大離間許容長さ以上に離間されない場合であっても、外力等により不用意に導電体が脱落する等して断線し(通電状態が解除され)、機械器具が停止する等の不都合を防止することができる。
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第2の発明において、前記導電体群は、導電性素材により帯状に成形された複数の帯状導電体からなり、前記導電性クリップは、前記支持板を両側から挟持する挟持片部を備えてなり、上記帯状導電体の端部は、上記支持板とともに導電性クリップを構成する上記挟持片部により挟持され、隣り合う支持板が前記最大離間許容長さを超えた場合には、上記帯状導電体の端部が上記導電性クリップから外れるよう構成されてなることを特徴とするものである。
上記第3の発明に係る蛇腹では、隣り合う支持板が前記最大離間許容長さを超えた場合には、上記帯状導電体の端部が上記導電性クリップから外れるよう構成されてなることから、(他の構成要素の全てを再度使用することができる限りにおいて)一旦帯状導電体が導電性クリップから外れた場合には、全ての配線を再度行ったり、或いは新たな蛇腹を製造したりする必要はなく、再度該導電性クリップにより挟持させることにより再び蛇腹として使用することが可能となる。
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1、第2又は第3の発明において、前記蛇腹本体又は該蛇腹本体に固定された支持板には、隣り合う山部と山部との最大離間許容長さを決定する制限テープが固定されてなることを特徴とするものである。
この第4の発明に係る蛇腹では、蛇腹本体を構成する個々の(隣り合う)山部と山部との最大離間許容長さは、特定の山部に固定された部位から該特定の山部に隣り合う他の山部に固定された部位までにおける上記制限テープの長さによって決定される。すなわち、上記制限テープが緊張状態とされた状態が、上記山部と山部との最大離間許容長さであり、この最大離間許容長さを超えた場合とは、上記制限テープの中途部が各山部と山部との間の内の何れかの部位で千切れた(切断された)場合である。このように、第4の発明では、制限テープが千切れた(切断された)場合、前述した導電体が断線し、又は導電体群の接続状態が解除されることにより、一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子間の通電状態が解除される。
なお、この第4の発明では、構成要素とされる導電体が単一である場合には、少なくとも各山部や谷部に固定される範囲内は、上記制限テープと該単一の導電体とが一体化され、互いに隣り合う山部と山部とが最大離間許容長さを超えた場合には、該制限テープも千切れるとともに導電体も千切れる構造であっても良い。
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第2又は第3の発明において、前記蛇腹本体に形成された各山部の上部には、該蛇腹本体の上面を保護する金属製の保護板の基端が固定され、この保護板の基端の固定状態は、該保護板の基端側と、前記支持板の上端側と、該支持板の正面側又は背面側の何れか一方の面に位置する前記蛇腹本体を構成するシート体の一部と、がそれぞれ結束部材を介して一体化された状態とされてなり、上記結束部材の脱落に伴う該結束部材により固定されていた保護板の脱落により、該保護板が固定されていた支持板に対応する山部とこの山部に隣り合う山部との最大離間許容長さを超えて互いに離間されることを特徴とするものである。
上記第5の発明に係る蛇腹によれば、保護板の基端の固定状態は、該保護板の基端側と、前記支持板の上端側と、該支持板の正面側又は背面側の何れか一方の面に位置する前記蛇腹本体を構成するシート体の一部と、がそれぞれ結束部材を介して一体化された状態とされてなることから、結束部材を介して上記保護板の基端が蛇腹本体に固定されている場合において、隣り合う支持板と支持板との最大離間許容長さ(各支持板は各山部の内側に固定されていることから、隣り合う山部と山部との最大離間許容長さと同じ)は、少なくとも、保護板と保護板とが少なくとも離間して蛇腹本体が露出しない範囲とされるところ、上記結束部材が脱落すると、それまで該結束材により支持板の正面側又は背面側との何れか一方に固定されていたシート体の一部は、少なくとも支持板の正面側又は背面側から離間することとなるとともに、上記隣り合う支持板と支持板とが離間可能な長さは、上記結束部材が脱落する以前の最大離間許容長さを超える。この結果、単一の導電体が千切れ、或いは、第3の発明(請求項3記載の発明)のように、上記帯状導電体の端部が上記導電性クリップから外れる。説明するまでもなく、上記結束部材が脱落することにより、保護板は蛇腹本体から脱落し又はその一部が外れた状態となる。したがって、この第5の発明によれば、結果的には、保護板が蛇腹本体から脱落し又はその一部が外れた状態を検出する機能を備えた蛇腹である。
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第1ないし第5の発明に係る蛇腹の何れか(請求項1〜5記載の発明の何れか)が装着されてなり、該蛇腹を構成する蛇腹本体に形成され互いに隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えた場合に単一の導電体が断線され、上記一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間における導通状態が解除されることにより、又は、互いに隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えた場合に、一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間における導通状態が解除されることにより駆動が停止し、又はランプ又はブザー等の報知手段により上記何れかの通電状態の解除が報知されることを特徴とする機械器具。
上記第6の発明に係る機械器具によれば、該機械器具の動作の不具合その他の原因により、蛇腹本体に形成され互いに隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えた場合に単一の導電体が断線され、上記一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間における導通状態が解除されることにより、又は、互いに隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えた場合に、一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子との間における導通状態が解除されることにより駆動が停止し、又はランプ又はブザー等の報知手段により上記何れかの通電状態の解除が報知されることから、例えば、蛇腹本体が損傷又は燃焼することを防止することができ、或いは該蛇腹本体により保護されている機械要素の不具合が発生することを事前に防止することができる。
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る蛇腹及びこの蛇腹が装着された機械器具(第6の発明:請求項6記載の発明)によれば、作業者は、上記単一の導電体又は複数の導電体群の導通状態の解除により、隣り合う山部同士の距離又は隣り合う谷部同士の距離が、所定の最大離間許容長さを超えたことを認識することができ、ひいては、機械器具の破損その他の不具合が発生することを事前に防止することができる。
また、第2の発明(請求項2記載の発明)に係る蛇腹及びこの蛇腹が装着された機械器具(第6の発明:請求項6記載の発明)では、蛇腹本体には、前記各山部の内側に支持板が固定され、前記単一の導電体の中途部がこれら各支持板に固定されてなるか、又は、上記支持板には、それぞれ導電性クリップが配置され、前記導電体群を構成する個々の導電体は、上記導電性クリップを介して電気的に接続されてなることから、該導電体又は導電体群は蛇腹の外側に露出しない。したがって、機械器具にこの蛇腹が装着された場合、蛇腹本体を構成する山部と山部との距離が所定の最大離間許容長さ以上に離間されない場合であっても、外力等により不用意に導電体が脱落する等して断線し(通電状態が解除され)、機械器具が停止する等の不都合を防止することができる。
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る蛇腹及びこの蛇腹が装着された機械器具(第6の発明:請求項6記載の発明)では、隣り合う支持板が前記最大離間許容長さを超えた場合には、上記帯状導電体の端部が上記クリップから外れるよう構成されてなることから、(他の構成要素の全てを再度使用することができる限りにおいて)一旦帯状導電体がクリップから外れた場合には、全ての配線を再度行ったり、或いは新たな蛇腹を製造したりする必要はなく、再度該クリップにより挟持させることにより再び蛇腹として使用することが可能となる。
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係る蛇腹及びこの蛇腹が装着された機械器具(第6の発明:請求項6記載の発明)では、蛇腹本体を構成する個々の(隣り合う)山部と山部との最大離間許容長さは、特定の山部に固定された部位から該特定の山部に隣り合う他の山部に固定された部位までにおける上記制限テープの長さによって決定され、上記制限テープが緊張状態とされた状態が、上記山部と山部との最大離間許容長さであり、この最大離間許容長さを超えた場合とは、上記制限テープの中途部が各山部と山部との間の内の何れかの部位で千切れた(切断された)場合であることから、制限テープが千切れた(切断された)場合、前述した導電体が断線し、又は導電体群の接続状態が解除されることにより、一方の蛇腹側端子と他方の蛇腹側端子間の通電状態が解除される。
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係る蛇腹及びこの蛇腹が装着された機械器具(第6の発明:請求項6記載の発明)によれば、保護板の基端の固定状態は、該保護板の基端側と、前記支持板の上端側と、該支持板の正面側及び背面側の両側に位置する前記蛇腹本体を構成するシート体の一部とが結束部材を介して一体化された状態とされていることから、結束部材を介して上記保護板の基端が蛇腹本体に固定されている場合において、隣り合う支持板と支持板との最大離間許容長さ(各支持板は各山部の内側に固定されていることから、隣り合う山部と山部との最大離間許容長さと同じ)は、必然的に決定されるところ、上記結束部材が脱落すると、それまで該結束材により支持板の正面側と背面側との両方に固定されていたシート体の一部は、少なくとも支持板の正面側と背面側から離間することとなるとともに、上記隣り合う支持板と支持板とが離間可能な長さは、上記結束部材が脱落する以前の最大離間許容長さを超える結果、第3の発明(請求項3記載の発明)のように、上記帯状導電体の端部が上記クリップから外れ、こうした状態を作業者は認識することができる。また、この第5の発明によれば、結果的には、保護板が蛇腹本体から脱落し又はその一部が外れた状態を検出する機能を備えた蛇腹であり、こうした蛇腹及びこの蛇腹が装着された機械器具によれば、先に説明した各発明と同じように、蛇腹本体が損傷又は燃焼することを防止することができ、或いは該蛇腹本体により保護されている機械要素の不具合が発生することを事前に防止することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態に係る蛇腹について図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、第1の実施の形態に係る蛇腹について説明する。
この蛇腹1は、図1に示すように、マシニングセンタを構成する垂直固定板部Pと、図示しないワークが載置され、上記垂直固定板部Pから離間し接近するよう駆動する駆動テーブルTとの間に装着されるものであり、この蛇腹1が装着された位置の下方には、上記駆動テーブルを駆動する図示しない駆動機構が設けられている。なお、上記マシニングセンタには、後述するように、一方及び他方の接続端子が設けられている。
そして、上記蛇腹1は、蛇腹本体2と、この蛇腹本体2の正面に固定された一方の固定板3と、上記蛇腹本体2の背面に固定された他方の固定板4とを備えている。上記一方の固定板3は、上記マシニングセンタを構成する駆動テーブルTの側面に固定される部材であり、上記他方の固定板4は、上記垂直固定板部Pの側面に固定される部材である。また、上記蛇腹本体2は、単一のシート体(又は複数のシート又はフィルムを積層してなるシート体)を折曲し、図2及び図3に示すように、山部2aと谷部2bとを交互に形成したものであり、これら多数の山部2aと谷部2bとが形成され上記マシニングセンタの駆動機構の上方に位置することとなる天井部2cと、この天井部2cの左側から垂下してなる左脚部2dと、上記天井部2cの右側から垂下してなる右脚部2eとを備えている(図1参照)。言うまでもなく、上記左脚部2d及び右脚部2eにも上記多数の山部2aと谷部2bとが形成されている。
そして、図4に示すように、上記蛇腹本体2の内側であって、上記各山部2aが形成されている部位には、それぞれ支持板5が固定(溶着)されている。これらの支持板5はそれぞれ樹脂を素材とするものである。なお、この実施の形態に係る蛇腹1を構成する支持板5は、図5に示すように、蛇腹本体2の幅よりも僅かに短い長さを有し、該蛇腹本体2に形成された(天井部2cに形成された)山部2aから谷部2bまでの長さよりも長尺とされた幅を有する長方形状の横板部5aと、この横板部5aの左側から下方に形成された左縦板部5bと、上記横板部5aの右側から下方に形成された右縦板部5cとから構成されている。なお、上記横板部5aの中央下端には、略長方形状の切欠き部5dが形成され、この切欠き部5dが形成された部位における該横板部5aの幅は、(天井部2cに形成された)上記山部2aから谷部2bまでの長さと同じものとされている。また、上記左縦板部5bと右縦板部5cの幅は、それぞれ蛇腹本体2を構成する左脚部2d及び右脚部2eに形成された山部2aから(該山部2aの隣に形成された)谷部2bまでの長さと同じ長さとされている。また、この実施の形態に係る蛇腹1は、上記支持板5の高さは、略蛇腹本体2の高さと同じ高さとされ、該支持板5の下端と蛇腹本体2の下端とは同一位置となるように構成されている。
そして、上述した形状に成形された上記支持板5の上端(上記横板部5aの上端)は、図4に示すように、蛇腹本体2に形成された上記山部2aの頂点の裏面に上端が溶着されているとともに、該山部2aの頂点の左右両側も一部溶着されている。また、上記各支持板5を構成する左縦板部5bの左端(外側端)は、上記左脚部2dに形成された山部2aの内側に固定(溶着)され、上記右縦板部5cの右端(外側端)は、上記右脚部2eに形成された山部2aの内側に固定(溶着)されている。したがって、このように蛇腹本体2を構成する各山部2aに支持板5が固定(溶着)された蛇腹1では、後述するように、特定の山部2aとこの特定の山部2aに隣り合う他の山部2aとが接近する場合は、必ず該2つの山部2a,2aにそれぞれ固定された支持板5,5が互いに接近することとなる。
そして、上記蛇腹1の内側には、図2に多数の点の集合で示すように、本発明を構成する帯状導電体群6が配置されており、該帯状導電体群6の一端は、一方の蛇腹側端子7にリード線8を介して接続され、該帯状導電体群6の他端は、他方の蛇腹側端子9にリード線10を介して接続されている。なお、上記一方の蛇腹側端子7は、マシニングセンタに設けられた一方の接続端子に接続される部材であり、上記他方の蛇腹側端子9は、上記他方の接続端子に接続される部材である。すなわち、上記一方の蛇腹側端子7と他方の蛇腹側端子9間は、電気的に導通可能な状態とされている。
そして、上記多数の支持板5の内で最も上記一方の固定板3の近接した部位に位置する支持板5には、図6に示すように、上記帯状導電体群6を構成する長尺帯状導電体6aが固定(接着)されている。この長尺帯状導電体6aは、上記横板部5aの長さ方向に長さを有する部位と、この部位の両端から下方に折曲されてれなる部位とを有し、この下方に折曲された部位は、それぞれ導電性クリップ11により固定されている。そして、上記最も上記一方の固定板3の近接した部位に位置する支持板5から、この支持板5の配置位置よりも上記他方の固定板4側に位置する支持板5までには、図2に示すように、短尺帯状導電体6bが配置(配線)され、この支持板5から、該支持板5よりも更に他方の固定板4側に位置する支持板5までには、同じ短尺帯状導電体6bが配置されている。つまり、上記一方の固定板3に近接した支持板5から最も他方の支持板5に接近した支持板5までの間には、互いに電気的な導通が図られるように導電性クリップ11を介して接続されており、最も他方の固定板4に近接した短尺帯状導電体6bの端部は、上記リード線8を介して一方の蛇腹側端子7に接続されている。この実施の形態では、一方の固定板3側から他方の固定板4方向に向かって右側には、全部で10枚の短尺帯状導電体6bが配置されている。
また、上記他方の蛇腹端子9に接続されたリード線10の端部は、図2に示すように、上記最も他方の固定板4に近接した位置に配置された支持板5から次の支持板5に、またその支持板5から次の支持板5に、というように順に短尺帯状導電体6bが配置されている。一方の固定板3側から他方の固定板4方向に向かって左側には、全部で10枚の短尺帯状導電体6bが配置されている。
そして、上記各短尺帯状導電体6bの一端側は、図4に示すように、支持板5を構成する横板部5aの下端に配置された導電性クリップ11により、該支持板5とともに挟持され、他端側は、上記一端側が挟持された支持板5に隣り合う支持板5の下端に配置された導電性クリップ11により挟持されている。この導電性クリップ11は、銅や鉄等の導電性金属を素材とするものであり、後にこの蛇腹1の作用効果に関する説明で参照する図8に示されるように、上記短尺帯状導電体6bの端部を支持板5とともに挟持する一方の挟持片部11a及び他方の挟持片部11bとが基端側で連続してなるものであって、この例では、上記一方の挟持片部11a及び他方の挟持片部11bの内側に、それぞれ先端がやや先鋭状となされた返し片部11c,11dが形成され、上記短尺帯状導電体6bの端部側が不用意に脱落することが防止されている。
そして、上記導電性クリップ11により支持板5に挟持された状態において、該導電性クリップ11に挟持された位置から隣の支持板5において導電性クリップ11に挟持された部位までの長さは、該導電性クリップ11が固定された支持板5が固定された山部2aと該山部2aに隣り合う山部2aとの最大離間許容長さと同じ長さとされている。この最大離間許容長さとは、少なくとも、隣り合う山部2aと山部2aとの間が水平となり間の谷部2bが存在しない状態となるまで離間する長さよりも短い長さであり、上記垂直固定板Pに対する駆動テーブルTの最大離間距離に基づき、蛇腹本体2の長さや山部2aの数、或いは山部2aから谷部2bまでの距離に応じて、決定されたものである。
そして、上述した構成からなる蛇腹1は、冒頭で説明したマシニングセンタに装着されるとともに、例えば、図7に示すように、該マシニングセンタ20に設けられた一方の接続端子21に、上記一方の蛇腹側端子7を接続し、他方の接続端子22には他方の蛇腹側端子9を接続して使用される。すなわち、この図7に示す例では、スイッチ23のオン操作によりランプとしてのLED24が点灯するように構成されたものであって、上述した短尺帯状導電体6bの何れかが後述するように脱落した場合には、該LED24が消灯されるように構成されたものであって、作業者はこのLED24の消灯により、蛇腹1に不具合が生じたことが確認されるようにしたものである。なお、このように、蛇腹1を構成する短尺帯状導電体6bの何れかが脱落した場合、上記LED24が消灯するのとは反対に、通常の適正な動作がされている状態においては該LED24が消灯しており、後述する異常が生じた場合には、該LED24が点灯する回路構成とされているものであっても良い。
そこで、以下、上述した短尺帯状導電体6bの何れかが脱落し、通電状態が解除される場合の動作に関し説明する。
上記マシニングセンタを構成する駆動テーブルTが図示しない駆動機構により駆動し、これに伴い上記蛇腹1が伸縮動作を繰り返す際、上記蛇腹本体2の中途部に形成された山部2aが他の部材や作業者等に当接すると、その当接した山部2aの隣の山部2aとは大きく離間し、その間に配置された短尺帯状導電体6bが、図8に示すように伸びきるとともに、それまで該短尺帯状導電体6bの端部を挟持していた導電性クリップ11が支持板5から脱落し、又は、導電性クリップ11は上記支持板5を挟持したままの状態で上記短尺帯状導電体6bの端部が外れ、或いは、図9に示すように、該短尺帯状導電体6bは、その中途部で千切れる。すると、それまでの通電状態が解除され、上述したように、マシニングセンタを構成するLED24が消灯し又は点灯する。
したがって、上述した実施の形態に係る蛇腹1又は機械器具としてのマシニングセンタによれば、蛇腹1を構成する蛇腹本体2が正常な伸縮動作をしている状態から、何らかの外力その他の原因により、山部2aと山部2aとが最大離間許容長さを超えて離間した場合には、上記短尺帯状導電体6bの脱落、千切れ又は導電性クリップ11の脱落により、上記LED24が消灯し又は点灯することにより、作業者は蛇腹本体2の異常な状態を確認することができる。
なお、上述した実施の形態に係る蛇腹1では、導電性クリップ11を使用して個々の短尺帯状導電体6bを支持板5にそれぞれ配置し、それぞれの短尺帯状導電体6bを機械的・電気的に接続したもの挙げたが、本発明は、図10に示すように、単一の帯状導電体26を構成要素とし、該蛇腹本体2に配線されたものであっても良い。すなわち、この単一の帯状導電体26は、上記支持板5の下端にステイプラー等を用いて打たれた針部材27によって中途部が固定されたものであり、該針部材27と針部材27との間における帯状導電体26の長さは、該針部材27が固定された支持板5が固定された山部2aと、その山部2aの隣に位置する山部2aとの最大離間許容長さと同じ長さとされている。
したがって、この図10に示す蛇腹1であっても、最初に説明した蛇腹1と同じ作用効果を奏することができ、山部2aと、その山部2aの隣に位置する山部2aとが、上記最大離間許容長さを超えて離間した場合には、図11に示すように、単一の帯状導電体26の中途部が千切れ、上記LED24が消灯し又は点灯することにより、作業者は蛇腹本体2の異常な状態を確認することができる。
次に、第2の実施の形態に係る蛇腹30について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態に係る蛇腹30は、図13に示すように、冒頭で説明した第1の実施の形態に係る蛇腹1を構成する蛇腹本体2に、(図12中、破線で示す)一方及び他方の制限テープ31,32を配置したものである。
上記一方及び他方の制限テープ31,32は、それぞれ単一のテープであり、その中途部は図13又は図14に示すように、支持板35に固定されている。なお、この第2の実施の形態に係る蛇腹30を構成する支持板35は、先に説明した支持板5の構成要素と同じ構成要素である横板部35a,左縦板部35b,右縦板部35c及び切欠き部35dに加えて、上記導電性クリップ11,11が取り付けられる部位よりもやや下方に垂下した一方及び他方の制限テープ取付部35e,35fが形成され、上記一方の制限テープ31の中途部は、上記一方の制限テープ取付部35eに固定され、他方の制限テープ32の中途部は、上記他方の制限テープ取付部35fに固定されている。すなわち、上記他方の制限テープ32(及び一方の制限テープ31)は、図14に示すように、導電性クリップ11の取付位置よりも下方に位置する他方の制限テープ取付部35fの下端及び該下端からやや正面及び背面の上方までに溶着(固定)されてなり、支持板35と該支持板35に隣り合う支持板35までにおける各制限テープ31,32の長さは、上記蛇腹本体2に形成された山部2aと互いに隣り合う山部2aとの最大離間許容長さとされており、こうした一方及び他方の制限テープ31,32の中途部の長さと、上記個々の短尺帯状導電体6bの(導電性クリップ11により固定された部位間の)長さとは、同じ長さかやや短尺帯状導電体6bの(導電性クリップ11により固定された部位間の)長さが長いものとされている。
したがって、蛇腹30を構成する蛇腹本体2が正常な伸縮動作をしている状態から、何らかの外力その他の原因により、山部2aと山部2aとが最大離間許容長さを超えて離間した場合には、先ず、図15に示すように、上記一方及び他方の制限テープ31,32が千切れ、これら一方及び他方の制限テープ31,32が千切れるとともにそれまで短尺帯状導電体6bの端部同士を挟持していた導電性クリップ11が支持板35から外れ、この結果、それまで一方の蛇腹側端子7から他方の蛇腹側端子9間における導通状態が解除される。或いは、図16に示すように、上記一方及び他方の制限テープ31,32が千切れることにより、短尺帯状導電体6bの中途部が千切れ、この結果、それまで一方の蛇腹側端子7から他方の蛇腹側端子9間における導通状態が解除される。そして、こうした短尺帯状導電体6bの脱落や中途部の千切れにより、上記LED24が消灯又は点灯に伴い、作業者は蛇腹本体2の異常な状態を確認することができる。
次に、第3の実施の形態に係る蛇腹40について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態に係る蛇腹40は、図17に示すように、冒頭で説明した第1の実施の形態に係る蛇腹1を構成する蛇腹本体2の上部に、金属製の保護板41が固定され、他端には、L字状に成形された他方の固定板43が固定されたものである。
上記保護板41は、図18又は図19に示すように、蛇腹本体2を挟んで各支持板5の上端側に固定される固定板部41aと、この固定板部41aの上端から略L字状に折曲されてなり蛇腹本体2の上部を覆う保護板部41bとからなり、この保護板部41bの先端側には、やや下方に折曲された折曲板部41cが形成されている。そして、上記固定板部41aには、図示しない開口が左右両側に穿設され、蛇腹本体2にも該開口に対応した開口が形成されており、同じように、各支持板5を構成する横板部5aにも左右両側に開口5g(図21参照)が形成されている。そして、上記保護板41は、上記固定板部41aに形成された開口や蛇腹本体2に形成された開口及び支持板5に形成された開口5gに挿通される左右一対の結束材45,46により結束されて固定されている。なお、上記結束材45,46は、図20に示す位置にて固定され、先に説明した導電性クリップ11,11の配置位置の上方とされている。
なお、上記各保護板41を構成する保護板部41bの幅は、先に説明した例を用いれば、上記垂直固定板部Pから駆動テーブルTが最も離間した際においても、図19に示すように、該保護板部41bの先端側は、該保護板41が固定された部位の隣に固定された保護板41の基端側の上部に重ねられた状態とされている。すなわち、図19に示す状態は、最も蛇腹本体2が伸長された状態を示すものであり、この状態においては、それぞれ両端が導電性クリップ11,11により挟持された上記短尺帯状導電体6bは緊張状態とはなっていない。
そして、この第3の実施の形態に係る蛇腹40が長期間使用されることにより、上記一対の結束材45,46が脱落し、これによって特定の位置で蛇腹本体2に固定されていた保護板41が脱落すると、それまで支持板5の上端から該保護板41を構成する固定板部41aの幅と同じ幅分、支持板5に密着されていた蛇腹本体2(のシート体)は、その密着状態が解除されることから、駆動テーブルTが駆動することにより蛇腹本体2が伸長されると、上記保護板41が脱落した部位における特定の山部2aと、この特定の山部2aに隣り合う(この例では、図21に示す一対の結束材45,46が脱落した部位に該当する山部2aの左側に位置する)山部2aまでの離間長さは、それまでの長さに比べて長いものとなる結果、短尺帯状導電体6bは緊張状態を超える(最大離間許容長さを超える)こととなる。こうした動作により、上記保護板41が脱落した部位に対応する支持板5よりも図21中左側に位置する支持板5に挟持されていた導電性クリップ11は脱落し、或いは、図22に示すように、短尺帯状導電体6bは中途部で千切れ、それまで行われていた通電状態が解除される。
したがって、上記第3の実施の形態に係る蛇腹40では、各山部2aに対応して固定された保護板41の何れかが脱落すると、それにより先の例を用いて説明すれば、上記LED24が消灯し又は点灯することにより、作業者は蛇腹本体2の異常な状態を確認することができ、該保護板41の脱落により、例えばマシニングセンタの駆動中に生じたスパッタ等により蛇腹本体2に穴が開いてしまったり燃えたり、或いは、さらに蛇腹本体2により覆われている内部の駆動機構に塵埃等が付着して制御が不能になる等の事態を事前に防止することができる。
なお、上記各実施の形態の説明では、工作機械であるマシニングセンタに各蛇腹1,30,40を装着した例を挙げて説明したが、本発明に係る蛇腹は、工作機械に限らず三次元測定装置等の測定装置や器具に装着したものであっても良い。また、上述した各蛇腹1,30,40では、本発明を構成する導電体である単一の帯状導電体26や個々の短尺帯状導電体6bを蛇腹本体2の内側に配置したものを説明したが、これら単一の導電体26や個々の短尺帯状導電体6bは、蛇腹本体2の外側に露出した状態で配置されているものであっても良い。また、上記各実施の形態に係る蛇腹1,30,40を構成する一方の蛇腹側端子7が接続される(機械器具に設けられた)一方の接続端子21や、他方の蛇腹側端子9が接続される(機械器具に設けられた)他方の接続端子22は、上述したように必ずしもランプであるLED24に接続されている必要はなく、該機械器具の電源や或いはブザー等に接続され、単一の導電体26や個々の短尺帯状導電体6bが千切れたり脱落した場合には、該機械器具が停止されたり、ブサーが作動するようにされたものであっても良い。