(実施の形態1)
まず、本発明において用いる「単位セル」という概念について、図1を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る左手系共振器における左手系伝送線路の等価回路図である。図1において、単位セル3は、コンデンサ1Aとインダクタ1Bとからなる直列体1と、この直列体の一端と接地導体との間に接続されたコンデンサ2Aとインダクタ2Bとからなる並列体2と、により構成される。この単位セル3がメタマテリアルと呼ばれる右手系・左手系複合線路の最小単位構造となる。なお、コンデンサ1Aとインダクタ1Bの前後関係は逆でも構わない。
続いて、このメタマテリアルについて説明する。通常、自然界に存在する物質は正の誘電率と正の透磁率を持ち、これを右手系媒質と呼ぶ。ここで、「右手系」とは、電磁波の電界方向、磁界方向、波の進む方向(位相伝搬方向)の三つが、右手の親指、人差し指、中指の位置関係になっていることを意味する。
これに対し、誘電率、透磁率の両方が同時に負になる媒質のことを、左手系物質、あるいはメタマテリアルと呼ぶ。ここで、「左手系」とは、電磁波の電界方向、磁界方向、波の進む方向(位相伝搬方向)の三つが、左手の親指、人差し指、中指の位置関係になっていることを意味する。
これまでに、誘電率のみが負である物質、あるいは透磁率のみが負になる物質の存在は発見されてきた。例えば、前者はプラズマ、後者はフェライトが挙げられる。しかし、誘電率と透磁率の両方が同時に負になる物質は自然界で発見されていない。そこで人工的に微細構造を使って作りこみ、見かけ上の誘電率と透磁率を負にすることで、このような媒質を作り出している。これを人工媒質と呼んでいる。
次に、伝送線路型メタマテリアルの動作原理について説明する。
図2は右手系伝送線路の等価回路である。図2において、通常の右手系の伝送線路の電気的特性は、直列に接続されたインダクタ1Bとシャントに接地接続されたコンデンサ2Aとからなる無限微小区間が無限個数連なった等価回路で考えることができる。この構造を純粋な右手系伝送線路(Pure right−handed transmission line; PRH TL)という。
これに対し、図3は左手系伝送線路の等価回路である。図3において、左手系の伝送線路の電気的特性は、直列のコンデンサ1Aとシャントに接地接続されたインダクタ2Bとからなる無限微小区間が無限個数連なった等価回路で考えることができる。この構造を純粋な左手系伝送線路(Pure left−handed transmission line; PLH TL)という。
しかし、図3に示すような直列のコンデンサ1Aを作ろうとすると、物理的な体積を有することから、必然的に寄生成分として図1に示すような右手系の直列インダクタ1Bが発生する。また、図3に示すような並列のインダクタ2Bを作ろうとすると、物理的な体積を有することから、必然的に寄生成分として図1に示すような右手系の並列コンデンサ2Aが発生する。
従って、実際に実現可能な人工媒質のメタマテリアルは、図1に示すように、インダクタ1Bとコンデンサ1Aを直列に接続した直列体1と、インダクタ2Bとコンデンサ2Aを並列接続した並列体2とを備え、直列体1の一方と並列体2の一方が接続されていると共に並列体2の他方は接地された構成である複合右手系左手系伝送線路(Composite right/left−handed transmission line; CRLH TL)となる。
このCRLH伝送線路は、左手系と右手系の両方の性質を併せ持つ。すわわち、周波数が高い領域では右手系の性質を持ち、周波数が低い領域では左手系の性質を持つ。そして、図1に示す左手系のコンデンサ1A(CL)と右手系のインダクタ1B(LR)とからなる直列体1が角周波数ωse=1/(CL*LR)で共振する直列共振回路となり、左手系のインダクタ2B(LL)と右手系のコンデンサ2A(CR)とからなる並列体2が角周波数ωsh=1/(LL*CR)で反共振する並列共振回路となる。ここで、ωse=ωshの場合をバランス・ケースと言い、右手系の周波数領域と左手系の周波数領域が連続的につながる。一方、ωse≠ωshの場合をアンバランス・ケースと言い、右手系の周波数領域と左手系の周波数領域の間にギャップが生じ、その領域では電磁波が伝播できない減衰帯域となる。
CRLH伝送線路の入出力端に微小ギャップなどを構成し入出力結合容量を形成すると、CRLHは右手系の有限長線路と同じように共振器として動作する。右手系の有限長線路共振器では、2分の1波長となる最低次の共振とその整数倍の高調波の共振が認められる。
これに対して、一般的な左手系共振器では、セル数により固有の共振周波数の数が決まってくる。例えば、図1に示す単位セル3を図60に示す単位セル103で実現して、それを7個接続し、微小ギャップ104、105で挟んだセル数n=7の一般的な左手系共振器101を考える。
図4は一般的な左手系共振器の周波数特性図である。図4において、2分の1波長の定在波がのる+1次の共振から+6次の共振が右手系の共振として存在する。また、後進波の共振として、2分の1波長の定在波がのる−1次の共振から−6次の共振が左手系の共振として存在する。さらに、全てのセルが同電位で同期して振動する0次モードというものが存在する。
図5は一般的な左手系共振器の電圧定在波を示す特性図である。図5において、0次モードでは定在波が立たないが、このモードは波長が無限大になった特殊な共振モードと考えることができる。一般的な左手系共振器において、+1次と−1次の共振モードは、図5に示すように定在波の分布を見ると同じである。よって、右手系の前進波と左手系の後進波の位相速度の絶対値は、左手系のほうが低い周波数で同じになり、左手系の共振周波数は必ず低くなる。
そこで、本願発明は、この点に着目した超小型共振器である。一般的に、左手系共振を持つ共振器を構成するためには、ある特定の左手系共振モードの1/2波長の定在波を励振させるために必要な数だけ単位セル3を配置する必要があった。しかし、本願発明の構成では、段間結合素子を用いて、共振器を複数個持つ多段左手系フィルタを構成する。
図6は本発明の実施の形態1における−1次のモードを使った左手系共振器の構成図である。図6において、本実施の形態1における左手系共振器7は、インダクタ1Bとコンデンサ1Aを直列に接続した直列体1と、インダクタ2Bとコンデンサ2Aを並列接続した並列体2とを備え、直列体1の一方と並列体2の一方とが接続されていると共に、並列体2の他方は接地され、直列体1の他方は接地された構成である。
この構成により、左手系の最低次数共振である0次のモードを励振する場合と同じ単位セル数で−1次のモードを励振することができる。これにより、実施の形態1の左手系共振器7を構成するセル数が、従来の−1次のモードを励振させるために必要であったセル数の半分となり、その結果、無負荷Q値を向上させ、形状を小型化することができる。
一般的な左手系共振器では、図60に示す単位セル103を7個接続することで、図5に示すような1/2波長の左手系共振が−1次から−7次まで得られている。この左手系共振の数は、単位セルの個数に等しい。故に、例えば、−1次の共振を得るためには、最低、単位セルが2つ必要であった。
−1次共振においては、2つの単位セルの共振器上に、1/2波長の電界分布(電圧定在波)が分布する。そして、2つの単位セルの接続点において、電界分布の振幅が0となる。よって、この点を短絡し、1つのセルのみで共振器を構成しても、−1次の共振が発生することが、今回、発明者の検討により明らかになった。
さらに、一端を短絡した左手系共振器7は1/4波長のモードを励振するため、すべてのセルが同電位で同期して振動する0次モードを抑圧することができ、左手系共振では−1次のモードをもつ左手系共振器を提供する事が出来る。よって、この共振器を用いて−1次の共振周波数を通過帯域としたフィルタを作成すれば、0次の共振周波数では、信号の通過を抑圧できる。
図7は本発明の実施の形態1に係る左手系共振器の構造を示す分解斜視図である。図7において、単位セル3(図6参照)は、互いに対向するよう配置された接地導体8、9間が誘電体10で満たされた構造を有する。また、導体パターン11は、図1に示したインダクタ1Bに対応する。さらに、導体パターン11はビア導体13を介して導体パターン14、15に接続されており、これら導体パターン14、15に挟まれるように導体パターン12が配置されている。この導体パターン12と導体パターン14間の結合と、導体パターン12と導体パターン15間の結合により、図1に示したコンデンサ1Aが構成される。
導体パターン11はビア導体16を介して接地導体9に接続される。この導体パターン12により、図1に示したインダクタ2Bが構成される。さらに、主に導体パターン14と、この導体パターン14に対向する接地導体8、導体パターン15と、この導体パターン15に対向する接地導体9とにより、図1に示したコンデンサ2Aが構成される。なお、導体パターン11、12と接地導体8、9による結合もコンデンサ2Aに寄与している。
また、図6に示す単位セル3の一端6の接地は、図7において導体パターン12がビア導体17を介して接地導体9に接続されることにより実現している。この際、接地導体8、9は同電位とするために側面電極22、23を介して接続されていることが好ましい。
また、誘電体10の誘電正接は0.1%以下が好ましい。これにより、左手系共振子7の無負荷Q値を向上させることができる。さらに、誘電体10の比誘電率は10〜100が好ましい。これにより、左手系共振器7の形状を小型化することができる。
なお、本実施の形態1では共振現象を明瞭に抽出するため、導体パターン18と導体パターン11を導体パターン19、20で挟み、導体パターン18をビア導体21を介して端子電極22Aに接続する構造を示している。
図8は本発明の実施の形態1に係る左手系共振器の別の構造を示す分解斜視図である。図8において、図7の導体パターン12に対応する導体パターン24を側面電極25を介して接地導体9と接続しても構わない。このような構造で左手系共振器7を実現した場合、図7で示したビア導体17の持つインダクタンス成分が無くなるため、図1に示したインダクタ1Bが小さくなり、1次のモードを高周波側へシフトさせることができる。
たとえば、図6に示す左手系共振器7の共振周波数が約2.5GHzになるように設計した場合、コンデンサ1Aは約4.45pF、インダクタ2Bは約0.33nHとなる。一方、右手系のコンデンサとインダクタの並列共振器における共振周波数が約2.5GHzになるように設計した場合、その値はそれぞれ約12pF、約0.33nHとなる。
このように、この右手系共振器における素子値を本願の左手系共振器7の素子値と比較した場合、左手系共振器7のコンデンサは小さくて済む。
(実施の形態2)
図9は実施の形態2における左手系フィルタの等価回路図である。図9において、本実施の形態2における左手系フィルタは、入力端27と出力端28とを有するフィルタであって、入力端27と出力端28との間には段間結合素子31が介在する。そして、入力端27と段間結合素子31との間には左手系共振器7Aの一端29が電気的に接続され、出力端28と段間結合素子31の間には左手系共振器7Bの一端30が電気的に接続される。なお、左手系共振器7A、7Bの構成は実施の形態1で示した左手系共振器7と同様の構成である。また、左手系フィルタは、左手系共振器7Aの一端29と入力端27との間は入力結合素子32を、左手系共振器7Bの一端30と出力端28との間には出力結合素子33を介在させる構成である。
この構成により、左手系共振器7A、7Bが共振する周波数、すなわち−1次のモードの時に通過帯域を作る左手系フィルタとして動作する。その結果、右手系フィルタよりも小型なフィルタを実現することができる。
なお、入力結合素子32、出力結合素子33はコンデンサで図示しているが、これら入力結合素子32、出力結合素子33の値が例えば8pFであって、通過帯域が2GHzの時、コンデンサのインピーダンスはほぼ0Ωと考えられるほど小さくなるので、各結合素子32、33は取り除いても構わない。即ち、通過帯域とコンデンサの値に応じて結合素子32、33を取り除くことが可能である。
図10は本発明の実施の形態2の左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図10において、この左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体34、35間が誘電体36で満たされた構造を有する。左手系共振器7Aは導体パターン37、38及び導体パターン38と接地導体35とを接続するビア導体39で構成される。また、左手系共振器7Bは導体パターン39、40及び導体パターン40と接地導体35とを接続するビア導体41で構成される。
段間結合素子31は導体パターン42と導体パターン38、40との結合で構成され、入力端27、出力端28はそれぞれ端子電極43、44で構成される。入力結合素子32、出力結合素子33は上記したように大きな容量値を必要とし、コンデンサのインピーダンスはほぼ0Ωと考えられるほど小さくなるのでそれぞれビア導体45、46を直接導体パターン38、40に接続させることにより、左手系フィルタは実現される。
なお、本願に係る左手系フィルタを電子機器(図示せず)等の信号処理回路(図示せず)に接続することにより、電子機器の小型化を実現することができる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における左手系アンテナについて図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に示す左手系アンテナは、実施の形態1において示した左手系共振器7と同様の構成で表現できるため、等価回路の説明は省略する。実施の形態1に示す左手系共振器7を使ってアンテナを構成することにより、小型なアンテナを提供することができる。
図11は本発明の実施の形態3に係る左手系アンテナの構造を示す分解斜視図である。図11において、下面に接地導体48を配置した誘電体基板47の上面に櫛型に導体パターンを配置されたコンデンサ49が、図6に示したコンデンサ1Aに対応する。また、このコンデンサ49が持つ寄生インダクタが、図6に示したインダクタ1Bに対応する。さらに、このコンデンサ49と接地導体48との間に持つ寄生コンデンサとが、図6に示したコンデンサ2Aに対応する。また、コンデンサ49に電気的に接続された導体パターン50と接地導体48とをビア導体51を介して接続することによって、図6に示したインダクタ2Bが構成される。そして、コンデンサ49の一方に接続された導体パターン52と接地導体48とを、ビア導体53を介して接続することにより、左手系アンテナが実現される。なお、本実施の形態3では、上記の構成により実現される左手系アンテナと信号源との整合を取るために、コンデンサ54を介して左手系アンテナと信号源とを接続している。
また、本願の左手系アンテナを電子機器(図示せず)等の信号処理回路(図示せず)に組み込むことにより、電子機器の小型化を実現することができる。
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4に係る左手系フィルタの等価回路図である。図12において、本実施の形態4における左手系フィルタ100は、入力端13と第1出力端14Aと、入力端13および第1出力端14Aと電気的に接続した段間結合素子15と、を備える。そして、入力端13と段間結合素子15との間に接続した第1左手系共振器10Aと、第1出力端14Aと段間結合素子15との間に接続した第2左手系共振器10Bと、第2出力端14Bに接続した第3左手系共振器10Cと、を備える。
第1左手系共振器10Aは、一端が入力端13および段間結合素子15の一端に接続され、他端が接地される。また、第2左手系共振器10Bは、一端が第1出力端14Aおよび段間結合素子15の他端に接続され、他端が接地される。また、第3左手系共振器10Cは、一端が第2出力端14Bに接続され、他端が接地される。なお、第1左手系共振器10A、第2左手系共振器10B、第3左手系共振器10Cはそれぞれ1つの左手系共振器で構成されているが、複数の左手系共振器が直列接続されて構成されてもよい。
第1左手系共振器10Aは、並列接続されたコンデンサ121Aとインダクタ121Bとからなる第1並列体121と、直列接続されたコンデンサ111Aとインダクタ111Bとからなる第1直列体111と、を備える。第1並列体121は、一端が入力端13および段間結合素子15の一端に接続される。第1直列体111は、一端が入力端13、段間結合素子15、および、第1並列体121の他端に接続され、他端が接地される。
第2左手系共振器10Bは、並列接続されたコンデンサ122Aとインダクタ122Bとからなる第2並列体122と、直列接続されたコンデンサ112Aとインダクタ112Bとからなる第2直列体112と、を備える。第2並列体122は、一端が第1出力端14Aおよび段間結合素子15の他端に接続される。第2直列体112は、一端が第1出力端14A、段間結合素子15の他端、および、第2並列体122の他端に接続され、他端が接地される。
第3左手系共振器10Cは、並列接続されたコンデンサ123Aとインダクタ123Bとからなる第3並列体123と、直列接続されたコンデンサ113Aとインダクタ113Bとからなる第3直列体113と、を備える。第3並列体123は、一端が第2出力端14Bに接続される。第3直列体113は、一端が第2出力端14B、および、第3並列体123の他端に接続され、他端が接地される。
なお、本実施の形態4では、第1左手系共振器10Aが有する第1直列体111は、インダクタ111Bが第1並列体121と接続され、コンデンサ111Aが接地される構成となっている。しかし、コンデンサ111Aが第1並列体121と接続され、インダクタ111Bが接地される構成となってもよい。また、第2左手系共振器10B、第3左手系共振器10Cについても同様に、直列体が有するインダクタとコンデンサの順序が逆の構成となってもよい。
第1並列体121が有するインダクタ121Bと第3並列体123が有するインダクタ123Bとが磁界結合できるように、配置関係が調整される。すなわち、インダクタ121Bとインダクタ123Bとの間隔が近接すると、インダクタ121Bとインダクタ123Bの磁界結合度は大きくなる。一方、インダクタ121Bとインダクタ123Bとが離れていると、インダクタ121Bとインダクタ123Bとの磁界結合の結合度は小さくなる。
これにより、段間結合素子15を介して結合した第1左手系共振器10Aと第2左手系共振器10Bからなるフィルタから第1出力端14Aに出力される信号と、インダクタ121Bとインダクタ123Bとを介して磁界結合した第1左手系共振器10Aと第3左手系共振器10Cからなるフィルタから第2出力端14Bに出力される信号との位相差は、180度となり、差動出力を得ることができる。
ここで、本実施の形態4の左手系フィルタ100の特性について説明する。
図13は本実施の形態4に係る左手系フィルタ100の周波数特性図である。図14は、図13における左手系フィルタ100の通過特性が0dB近傍の領域を表した領域Xの拡大図である。図13、図14からわかるように、無線LANに利用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域において、良好な通過特性を得ることができる。
なお、入力端13と段間結合素子15との間に入力結合素子が設けられてもよい。この場合、第1出力端と段間結合素子15との間には第1の出力結合素子が設けられ、第2出力端と第3左手系共振器10Cとの間は第2の出力結合素子が設けられる。
図15A〜図15Gは本発明の実施の形態4に係る左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30を誘電体基板ごとに分解して、上から順に誘電体基板のパターンを示した分解図である。図15A〜図15Gにおいて、各誘電体基板のパターンは、互いに平行に設けられている。以下、便宜上、図15A〜図15Gに示される誘電体基板には、上から順に30a〜30gの符号を付す。
誘電体基板30a〜30gは、入力端31、第1出力端32a、第2出力端32b、側面電極33a、33bを備える。図15Aに示されるように、誘電体基板30aは、第1のグランド電極34を備える。図15Gに示されるように、誘電体基板30gは、第2のグランド電極35を備える。第1のグランド電極34、第2のグランド電極35は、側面電極33a、33bと接続されて等電位を保っている。入力端31、第1出力端32aは、第1のグランド電極34、第2のグランド電極35、側面電極33a、33bから絶縁されている。
図15C〜図15Gに示されるように、入力端31は、ビア導体36を介して誘電体基板30e上の導体パターン37、および誘電体基板30c上の導体パターン38と接続されている。導体パターン37は、ビア導体39を介して第2のグランド電極35に接続されている。また、導体パターン37は、第1のグランド電極34および第2のグランド電極35と対向して配置されている。導体パターン40は、導体パターン38が配置された誘電体基板と同一の誘電体基板上で接続されている。導体パターン41は、導体パターン40が配置された誘電体基板と異なる誘電体基板30d上に配置され、導体パターン40と誘電体を介して対向して配置されている。
第1出力端32aは、ビア導体42を介して誘電体基板30f上の導体パターン43と接続されている。導体パターン43は、ビア導体44を介して誘電体基板30e上の導体パターン45、およびこの導体パターン45が配置された誘電体基板と誘電体基板30c上の導体パターン46と接続されている。導体パターン45は、ビア導体47を介して第1のグランド電極34に接続されている。また、導体パターン45は、第1のグランド電極34および第2のグランド電極35と対向して配置されている。導体パターン48は、導体パターン46が配置された誘電体基板と同一の誘電体基板30c上で接続している。導体パターン49は、導体パターン48が配置された誘電体基板と異なる誘電体基板30d上に配置され、導体パターン48と誘電体を介して対向して配置されている。
第2出力端32bは、ビア導体50を介して誘電体基板30d上の導体パターン51、およびこの導体パターン51が配置された誘電体基板と異なる誘電体基板30b上の導体パターン52と接続されている。導体パターン51は、ビア導体53を介して第1のグランド電極34と接続されている。また、導体パターン51は、第1のグランド電極34および第2のグランド電極35と対向して配置されている。導体パターン54は、導体パターン52が配置された誘電体基板と同一の誘電体基板30b上で接続している。導体パターン55は、導体パターン54が配置された誘電体基板と異なる誘電体基板30c上に配置され、導体パターン54と誘電体を介して対向して配置されている。
図15B、図15Cに示されるように、導体パターン56は、誘電体基板30b上に配置され、導体パターン38および導体パターン46と対向して配置されている。
次に、図15A〜図15Gにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30と、図12に示された左手系共振器10Aの構成との対応関係について説明する。
図12に示された第1左手系共振器10Aが有する第1直列体111に含まれるコンデンサ111Aは、導体パターン40と、この導体パターン40に対向して配置された導体パターン41とによって構成される。第1左手系共振器10Aが有する第1直列体111に含まれるインダクタ111Bは、主として導体パターン38および導体パターン40と導体パターン41の長さ成分によって構成される。第1左手系共振器10Aが有する第1並列体121に含まれるコンデンサ121Aは、主として、導体パターン37と、この導体パターン37と対向して配置された第1のグランド電極34および第2のグランド電極35とによって構成される。第1左手系共振器10Aが有する第1並列体121に含まれるインダクタ121Bは、ビア導体36と導体パターン37の長さ成分によって構成される。
次に、図15A〜図15Gにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30と、図12に示された第2左手系共振器10Bの構成との対応関係について説明する。
図12に示された第2左手系共振器10Bが有する第2直列体112に含まれるコンデンサ112Aは、導体パターン48と、この導体パターン48に対向して配置された導体パターン49とによって構成される。第2左手系共振器10Bが有する第2直列体112に含まれるインダクタ112Bは、主として導体パターン48と導体パターン49の長さ成分によって構成される。第2左手系共振器10Bが有する第2並列体122に含まれるコンデンサ122Aは、主として、導体パターン45と、この導体パターン45と対向して配置された第1のグランド電極34および第2のグランド電極35とによって構成される。第2左手系共振器10Bが有する第2並列体122に含まれるインダクタ122Bは、ビア導体47と導体パターン45の長さ成分によって構成される。
次に、図15A〜図15Gにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30と、図12に示された第3左手系共振器10Cの構成との対応関係について説明する。
図12に示された第3左手系共振器10Cが有する第3直列体113に含まれるコンデンサ113Aは、導体パターン54と、この導体パターン54に対向して配置された導体パターン55とによって構成される。第3左手系共振器10Cが有する第3直列体113に含まれるインダクタ113Bは、主として導体パターン54と導体パターン55の長さ成分によって構成される。第3左手系共振器10Cが有する第3並列体123に含まれるコンデンサ123Aは、主として、導体パターン51と、この導体パターン51と対向して配置された第1のグランド電極34および第2のグランド電極35とによって構成される。図4に示された第3左手系共振器10Cが有する第3並列体123に含まれるインダクタ123Bは、ビア導体53と導体パターン51の長さ成分によって構成される。
したがって、左手系フィルタは、第1左手系共振器10A、第2左手系共振器10B、第3左手系共振器10Cが誘電体積層基板30に内蔵された構造に形成されている。
次に、図15A〜図15Gにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30と、図12に示された段間結合素子15の構成、および、インダクタ121Bとインダクタ123Bによる磁界結合との対応関係について説明する。
図12に示された段間結合素子15は、導体パターン56が、導体パターン38および導体パターン46と誘電体を介して対向した構造によって構成される。インダクタ121Bとインダクタ123Bの磁界結合は、積層された導体パターン37の長さ成分と導体パターン51の長さ成分とが磁界結合することに対応する。そして、その結合度は誘電体基板30dと誘電体基板30e間の厚みを調整して積層することによって、制御可能となる。
以上より、無線LANに用いられる2.4〜2.5GHzの周波数帯域において、良好な平衡不平衡フィルタの通過特性を得ることができる。
(実施の形態5)
図16A〜図16Lは、本発明の実施の形態4に係る別の左手系フィルタを構成する誘電体積層基板130を誘電体基板ごとに分解して、誘電体基板のパターンを上から順に示した分解図である。図16A〜図16Lにおいて、各誘電体基板のパターンは、互いに平行に設けられている。以下、便宜上、図16A〜図16Lに示される誘電体基板には、上から順に130a〜130Lの符号を付す。
図16A〜図16Lに示されるように、誘電体基板130a〜130Lは、入力端131、第1出力端132a、第2出力端132b、側面電極133a、133b、133c、133d(133a、133b、133dは、互いに絶縁されている)を備える。
図16Aにおいて、誘電体基板130aは、第1のグランド電極134aを備える。また、図16Bにおいて、誘電体基板130bは、第2のグランド電極134bを備える。更に、図16Kにおいて、誘電体基板130kは、第3のグランド電極134kを備え、図16Lにおいて、誘電体基板130Lは、第4のグランド電極134Lを備える。
第1のグランド電極134a、第2のグランド電極134b、第3のグランド電極134k、第4のグランド電極134Lは、それぞれ側面電極133c、133dと電気的に接続されており、等電位を保っている。また、第1出力端132aと側面電極133aとは電気的に接続されており、第2出力端132bと側面電極133bとは電気的に接続されている。
図16A〜図16Lに示されるように、入力端131は、ビア導体135を介して誘電体基板130b上の導体パターン136へ接続され、導体パターン136は導体ビア137を介して誘電体基板130c上の導体パターン138と接続されている。そして、導体パターン138は、側面電極133cを介して第1のグランド電極134a、第2のグランド電極134b、第3のグランド電極134k、第4のグランド電極134Lに接続されると共には、ビア導体139を介して誘電体基板130e上の導体パターン140に接続されている。
導体パターン140は誘電体基板130d上の導体パターン141と対向しており、導体パターン141は側面電極133cと接続されている。また、導体パターン140は誘電体基板130f上の導体パターン142とも対向しており、導体パターン142は側面電極133cと接続されている。
更に、導体パターン140は、誘電体基板130f上の導体パターン143の一方と対向しており、導体パターン143の他方は誘電体基板e上の導体パターン144と対向している。そして、導体パターン144は、誘電体基板130d上の導体パターン145と対向しており、導体パターン145は側面電極133cと接続されている。また、導体パターン144は誘電体基板130f上の導体パターン146とも対向しており、導体パターン146は側面電極133cと接続されている。
導体パターン144はビア導体147を介して誘電体基板130c上の導体パターン148に接続され、導体パターン148は側面電極133cと接続されている。更に、導体パターン148は、ビア導体149を介して誘電体基板130b上の導体パターン150と接続されており、導体パターン150は、ビア導体151を介して第2出力端132bへ接続される。
導体パターン142に対向して配置された誘電体基板130g上の導体パターン152は、誘電体基板130k上の導体パターン153とも対向していると共に、導体パターン152の一端は側面電極133cと接続されている。更に、導体パターン153は、誘電体基板130i上の導体パターン154とも対向しており、導体パターン154の一端は側面電極133cと接続されている。
導体パターン153は、ビア導体155を介して誘電体基板130j上の導体パターン156に接続され、導体パターン156はその端部で側面電極133cと接続されている。また、導体パターン156はビア導体157を介して誘電体基板130k上の導体パターン158と接続されており、導体パターン158は側面電極133aと接続されている。更に、導体パターン158は、ビア導体159を介して第1出力端132aに接続されている。
第1のグランド電極134aと第2のグランド電極134bとは、ビア導体160を介して接続されると共に、第3のグランド電極134kと第4のグランド電極134Lとは、ビア導体161を介して接続される。
次に、図16A〜図16Lにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板130と、図12に示された左手系共振器10Aの構成との対応関係について説明する。
図12に示された第1左手系共振器10Aが有する第1直列体111に含まれるコンデンサ111Aは、導体パターン140と、この導体パターン140に対向して配置された導体パターン141、142とによって構成される。第1左手系共振器10Aが有する第1直列体111に含まれるインダクタ111Bは、主として導体パターン140の長さ成分によって構成される。第1左手系共振器10Aが有する第1並列体121に含まれるコンデンサ121Aは、主として、導体パターン138と、この導体パターン138と対向して配置された第2のグランド電極134bとによって構成される。第1左手系共振器10Aが有する第1並列体121に含まれるインダクタ121Bは、導体パターン138の長さ成分によって構成される。
次に、図16A〜図16Lにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30と、図12に示された第2左手系共振器10Bの構成との対応関係について説明する。
図12に示された第2左手系共振器10Bが有する第2直列体112に含まれるコンデンサ112Aは、導体パターン144と、この導体パターン144に対向して配置された導体パターン145、146とによって構成される。第2左手系共振器10Bが有する第2直列体112に含まれるインダクタ112Bは、主として導体パターン144の長さ成分によって構成される。第2左手系共振器10Bが有する第2並列体122に含まれるコンデンサ122Aは、主として、導体パターン148と、この導体パターン148と対向して配置された第2のグランド電極134bとによって構成される。第2左手系共振器10Bが有する第2並列体122に含まれるインダクタ122Bは、導体パターン148の長さ成分によって構成される。
次に、図16A〜図16Lにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板30と、図12に示された第3左手系共振器10Cの構成との対応関係について説明する。
図12に示された第3左手系共振器10Cが有する第3直列体113に含まれるコンデンサ113Aは、主として、導体パターン153と、この導体パターン153に対向して配置された導体パターン152、154とによって構成される。第3左手系共振器10Cが有する第3直列体113に含まれるインダクタ113Bは、主として導体パターン153の長さ成分によって構成される。第3左手系共振器10Cが有する第3並列体123に含まれるコンデンサ123Aは、主として、導体パターン157と、この導体パターン157と対向して配置された第3のグランド電極134kとによって構成される。第3左手系共振器10Cが有する第3並列体123に含まれるインダクタ123Bは、主として、導体パターン156の長さ成分によって構成される。
したがって、左手系フィルタは、第1左手系共振器10A、第2左手系共振器10B、第3左手系共振器10Cが誘電体積層基板30に内蔵された構造に形成されている。
次に、図16A〜図16Lにおいて示された左手系フィルタを構成する誘電体積層基板130と、図12に示された段間結合素子15の構成、および、インダクタ121Bとインダクタ123Bによる磁界結合との対応関係について説明する。
図12に示された段間結合素子15は、導体パターン143が、導体パターン140および導体パターン144と誘電体を介して対向した構造によって構成される。インダクタ121Bとインダクタ123Bの磁界結合は、導体パターン138の長さ成分と導体パターン156の長さ成分とが磁界結合することに対応する。そして、その結合度は誘電体基板30dと誘電体基板30e間の厚みを調整して積層することによって、制御可能となる。
また、図12の入力端13は、図16Aの入力端131と対応し、図12の第1出力端14Aは、図16Aの第1出力端132aと対応し、更に、図12の第2出力端14Bは、図16Aの第2出力端132bと対応している。
図16A〜図16Lに示した左手系フィルタは、第1左手系共振器10Aの上方に第3左手系共振器10Cが配置された構成であるため、小型な左手系フィルタを実現可能である。
なお、図16A〜図16Lに示した左手系フィルタにおいては、図12のコンデンサ111Aとコンデンサ113Aとが上下に積層された構成を採用している。コンデンサ111Aとコンデンサ113Aとが結合すると、入力端13に供給される信号に対して、第1出力端14Aから出力される信号が−90度の位相差で出力され、第2出力端14Bから出力される信号が+90度の位相差で出力されるように設計することが困難となる。
しかし、本願発明に係る本実施の形態5においては、図4のコンデンサ111Aは、図16Eの導体パターン140が、側面電極133c(グランドと接続されている電極)と接続された導体パターン141、142で挟み込んだ構成で実現されており、同様に、図12のコンデンサ113Aは、図16Eの導体パターン144が、側面電極133c(グランドと接続されている電極)と接続された導体パターン145、146で挟み込んだ構成で実現されているため、コンデンサ間の結合を小さくでき、設計の容易な左手系フィルタを実現できる。
以上より、無線LANに用いられる2.4〜2.5GHzの周波数帯域において、良好な平衡不平衡フィルタの通過特性を得ることができる。
(実施の形態6)
図17は本実施の形態6に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図17において、本実施の形態7における左手系フィルタは、入力端613と出力端614とを有するフィルタであって、入力端613と出力端614との間には段間結合素子617が介在する。入力端613と段間結合素子617との間にはコンデンサ611Aとインダクタ611Bとからなる第1直列体611の一端が接続点615にて電気的に接続される。出力端614と段間結合素子617の間にはコンデンサ6110Aとインダクタ6110Bとからなる第2直列体6110の一端が接続点616にて電気的に接続される。第1直列体611の他端にはコンデンサ612Aとインダクタ612Bとからなる第1並列体612の一端が電気的に接続される。第2直列体6110の他端にはコンデンサ6120Aとインダクタ6120Bとからなる第2並列体6120の一端が電気的に接続される。第1並列体612の他端はグランドに電気的に接続されている。第2並列体6120の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第1直列体611と第1並列体612とにより第1セル610Aを構成し、第2直列体6110と第2並列体6120とにより第2セル610Bを構成している。また、段間結合素子617と入力端613との間には入力結合素子618を、段間結合素子617と出力端614との間には出力結合素子619を介在させる構成としている。そして、この単位セル610A及び610Bがお互いに電磁界結合する構成としている。
さらに、第1並列体612の一端が第1の寄生成分としてのインダクタ653を介してグランドに接続されており、第2並列体6120の一端が第2の寄生成分としてのインダクタ654を介してグランドに接続されている。
このような構成により、段間結合素子617と、電磁界結合した第1セル610A、第2セル610Bとが等価的に並列共振回路を構成する。従って、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となり信号がグランドに流れる周波数が存在することとなり、通過帯域内に1つ極を増やすことができ、その結果として、減衰特性を向上させることができる。
本発明の実施の形態6に係る左手系フィルタの第1並列体612、第2並列体6120は、グランドと直接接続されたインダクタ612B、612Bを有しているため、それらインダクタ612B、6120Bには右手系フィルタと比較して大きな高周波電流が流れる。その結果、右手系フィルタと比較して、単位セル610A、610B間の電磁界結合の強さを大きくでき、通過帯域内に減衰極を増やすと共に、その周波数を制御することが容易となる。
さらに、入力結合素子618と段間結合素子617、出力結合素子619の容量値を調整することで容易に2個の単位セル610A、610Bの0次の共振の結合を制御することができる。よって、0次の共振で通過域を形成した左手系フィルタを構成することができる。また、単位セル610A、610Bの電磁界結合と段間結合素子617とにより生じる減衰極を配置・制御することができるので、一般的な左手系フィルタよりもフィルタ特性の優れた左手系フィルタを提供することができる。なお、入力結合素子618、段間結合素子617、出力結合素子619はキャパシタではなく、インダクタを用いても構わない。
図18は本発明の実施の形態6に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図18において、左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体620、621間を誘電体622で満たされた構造を有する。導体パターン623は図17に示したインダクタ611Bに対応する。さらに導体パターン623及び導体パターン627はビア導体626を介して接続された導体パターン624、625に挟まれるように構成される。これにより図17に示したキャパシタ611Aが構成される。
導体パターン627はビア導体628を介して接地導体621に接続される。これにより図17に示したインダクタ612Bが構成される。さらに導体パターン627と接地導体620、621によりキャパシタ612Aが構成される。以上が単位セル610Aに対応する。
図17に示した単位セル610Bと単位セル610Aとは、図18において線分A−A’において鏡面対称に構成され、導体パターン629がインダクタ6110Bに対応する。さらに導体パターン629及び導体パターン633はビア導体632を介して接続された導体パターン630、631に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ6110Aが構成される。導体パターン633はビア導体634を介して接地導体621に接続される。これによりインダクタ6120Bが構成される。さらに導体パターン633と接地導体620、621によりキャパシタ6120Aが構成される。以上が単位セル610Bに対応する。
図17に示した入力結合素子618は、入力端子635よりビア導体636を介して接続される導体パターン637と、インダクタ611Bに対応する導体パターン623とにより構成される。そして、段間結合素子617は、単位セル610Aの一部を構成する導体パターン623と単位セル610Bの一部を構成する導体パターン629と導体パターン638とにより構成される。また、出力結合素子619は、出力端子639よりビア導体640を介して接続される導体パターン641と、インダクタ611Bに対応する導体パターン629とにより構成される。
さらに、ビア664が導体パターン627と接地導体621との間に設けられると共に、ビア671が導体パターン633と接地導体621との間に設けられる構成となっている。
このような構成により、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となり信号がグランドに流れる周波数が存在することとなり、通過帯域内に1つ極を増やすことができ、その結果として、減衰特性を向上させることができる。また、図17のインダクタ653と単位セル610Aとで1/4波長のモードを励振させてやることで、0次のモードを励振する場合と同じ単位セル数で−1次のモードを励振することができる。これにより、従来の半分のセル数で−1次のモードを励振させることが可能となり、その結果、無負荷Q値を向上させることが出来ると共に小型化を図ることができる。
なお、今回入力結合素子618、出力結合素子619は図17に示すようにキャパシタで表現した。しかし、それぞれの容量が10pF以上となる場合は、入力結合素子618、出力結合素子619は取り除いて直接接続しても構わない。
なお、本発明の左手系フィルタは、減衰特性を向上させることができるという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態7)
図19は本実施の形態7に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図19において、本実施の形態7における左手系フィルタは、入力端713と出力端714とを有するフィルタであって、入力端713と出力端714との間には段間結合素子717が介在する。入力端713と段間結合素子717との間にはコンデンサ712Aとインダクタ712Bとからなる第1並列体712の一端が電気的に接続される。出力端714と段間結合素子717の間にはコンデンサ7120Aとインダクタ7120Bとからなる第2並列体7120の一端が電気的に接続される。第1並列体712の一端にはコンデンサ711Aとインダクタ711Bとからなる第1直列体711の一端が電気的に接続される。第2並列体7120の一端にはコンデンサ7110Aとインダクタ7110Bとからなる第2直列体7110の一端が電気的に接続される。第1並列体712の他端はグランドに電気的に接続されている。第2並列体7120の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第1並列体712と第1直列体711とにより第1セル710Aを構成し、第2並列体7120と第2直列体7110とにより第2セル710Bを構成し、第1セル710Aと第2セル710Bとが電磁界結合をしている構成としている。また、段間結合素子717と入力端713との間には入力結合素子718を、段間結合素子717と出力端714との間には出力結合素子719を介在させる構成としている。
さらに、第1直列体711の他端が第1の寄生成分としてのインダクタ753を介してグランドに接続されており、第2直列体7110の他端が第2の寄生成分としてのインダクタ754を介してグランドに接続されている。
このような構成により、入力側から出力側を見たフィルタのインピーダンスが無限大となり、通過帯域内に1つ極を増やすことができる。その結果、減衰特性を向上させることができる。また、図19のインダクタ753と単位セル710Aとで1/4波長のモードを励振させてやることで、0次のモードを励振する場合と同じ単位セル数で−1次のモードを励振することができる。これにより、従来の半分のセル数で−1次のモードを励振させることができる。その結果、無負荷Q値を向上させることが出来ると共に小型化を図ることができる。
さらに、このような構成により、第1並列体712と第1直列体711、第2並列体7120と第2直列体7110がそれぞれ並列回路を成す構成となる。よって、フィルタの通過帯域を低域側にシフトさせることができ、より小型なフィルタを構成することができる。
また、このような構成により、段間結合素子717と、電磁界結合した第1セル710A、第2セル710Bとが等価的に並列共振回路を構成する。従って、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となり信号がグランドに流れる周波数が存在することとなり、通過帯域内に1つ極を増やすことができ、その結果として、減衰特性を向上させることができる。
さらに、入力結合素子718と段間結合素子717、出力結合素子719の容量値を調整することで容易に2個の単位セル710A、710Bの0次の共振の結合を制御することができる。よって、0次の共振で通過域を形成した左手系フィルタを構成することができる。また、単位セル710A、710Bの電磁界結合と段間結合素子717とにより生じる減衰極を配置・制御することができるので、一般的な左手系フィルタよりもフィルタ特性の優れた左手系フィルタを提供することができる。
本発明の実施の形態7に係る左手系フィルタの第1並列体712、第2並列体7120は、グランドと直接接続されたインダクタ712B、712Bを有しているため、それらインダクタ712B、7120Bには右手系フィルタと比較して大きな高周波電流が流れる。その結果、右手系フィルタと比較して、単位セル710A、710B間の電磁界結合の強さを大きくでき、通過帯域内に減衰極を増やすと共に、その周波数を制御することが容易となる。なお、入力結合素子718、段間結合素子717、出力結合素子719はキャパシタではなく、インダクタを用いて構成しても構わない。
図20は本発明の実施の形態7に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図20において、左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体720、721間が誘電体722で満たされた構造を有する。導体パターン723は図19に示したインダクタ711Bに対応する。さらに導体パターン723及び導体パターン727はビア導体726を介して接続された導体パターン724、725に挟まれるように構成される。これにより図19に示したキャパシタ711Aが構成される。
導体パターン727はビア導体728を介して接地導体721に接続される。これにより図19に示したインダクタ712Bが構成される。さらに導体パターン727と接地導体720、721によりキャパシタ712Aが構成される。以上が単位セル710Aに対応する。
図19に示した単位セル710Bと単位セル710Aとは、図20において線分A−A’において鏡面対称に構成され、導体パターン729がインダクタ7110Bに対応する。さらに導体パターン729及び導体パターン733はビア導体732を介して接続された導体パターン730、731に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ7110Aが構成される。導体パターン733はビア導体734を介して接地導体721に接続される。これによりインダクタ7120Bが構成される。さらに導体パターン733と接地導体720、721によりキャパシタ7120Aが構成される。以上が単位セル710Bに対応する。
図19に示した入力結合素子718は、入力端子735よりビア導体736を介して接続される導体パターン737と、インダクタ712Bに対応する導体パターン727より構成される。そして、段間結合素子717は、単位セル710Aの一部を構成する導体パターン727と単位セル710Bの一部を構成する導体パターン733と導体パターン738とにより構成される。また、出力結合素子719は、出力端子739よりビア導体740を介して接続される導体パターン741と、インダクタ712Bに対応する導体パターン733とにより構成される。
さらに、ビア764が導体パターン723と接地導体721との間に設けられると共に、ビア771が導体パターン729と接地導体721との間に設けられる構成となっている。
このような構成により、ビア764と図19に示したインダクタ711Bをなす導体パターン723と、キャパシタ711Aをなす導体パターン723、724、725、727及びビア導体726と、インダクタ712Bをなす導体パターン727及びビア導体728と、キャパシタ712Aをなす導体パターン727と接地導体720、721により構成された単位セル710Aが並列共振回路を作る。また、ビア771とインダクタ7110Bをなす導体パターン729と、キャパシタ7110Aをなす導体パターン729、730、731、733及びビア導体32と、インダクタ7120Bをなす導体パターン733及びビア導体734と、キャパシタ7120Aをなす導体パターン723と接地導体720、721により構成された単位セル710Bが並列共振回路を作る。従って、フィルタの通過帯域を低域側にシフトさせることができ、より小型なフィルタを構成することができる。
なお、今回入力結合素子718、出力結合素子719は図4に示すようにキャパシタで表現したが、それぞれの容量が10pF以上となる場合は、入力結合素子718、出力結合素子719は取り除いて直接接続しても構わない。
(実施の形態8)
図21は本発明の実施の形態8に係る左手系フィルタの等価回路図である。図21において、本実施の形態8における左手系フィルタ8100は、入力端813と出力端814と、入力端813および出力端814と電気的に接続した段間結合素子817と、段間結合素子817と接続した共振器810Aおよび共振器810Bと、を備える。また、入力端813と段間結合素子817と共振器810Aとの間に接続された第1インダクタ818と、出力端814と段間結合素子817と共振器810Bとの間に接続された第2インダクタ819と、を備える。
共振器810Aは、一端が段間結合素子817の一端に接続され、他端が接地される。ここで、共振器810Aの一端と段間結合素子817の一端とが接続する点を接続点815と定義する。また、共振器810Bは、一端が段間結合素子817の他端に接続され、他端が接地される。ここで、共振器810Bの一端と段間結合素子817の他端とが接続する点を接続点816と定義する。
なお、本実施の形態8では、共振器810A、810Bの他端はそれぞれ接地されているが、開放されていてもよい。また、共振器810A、810Bはそれぞれ1つの共振器で構成されているが、複数の共振器が直列接続されて構成されてもよい。
共振器810Aは、並列接続されたコンデンサ812Aとインダクタ812Bとからなる並列体812と、直列接続されたコンデンサ811Aとインダクタ811Bとからなる直列体811とを備える。直列体811は、一端が段間結合素子817の一端815に接続される。並列体812は、一端が直列体811の他端に接続され、他端が接地される。共振器810Bは共振器810Aと同じ構造であるため、ここでは説明を省略する。
なお、本実施の形態8では、共振器810Aが有する直列体811は、インダクタ811Bが並列体812と接続され、コンデンサ811Aが接続点815と接続される構成となっている。しかし、コンデンサ811Aが並列体812と接続され、インダクタ811Bが接続点815と接続される構成となってもよい。共振器810Bについても同様の構成となってもよい。
第1インダクタ818は、接続点815と入力端813との間に接続される。第2インダクタ819は、接続点816と出力端814との間に接続される。第1インダクタ818と第2インダクタ819とは、第1インダクタ818と第2インダクタ819とが磁界結合できるように、配置関係を調整される。すなわち、第1インダクタ818と第2インダクタ819との間の間隔が近づけられている。第1インダクタ818と第2インダクタ819とがある一定の距離以下に近づくと、第1インダクタ818と第2インダクタ819とは磁界結合する。一方、第1インダクタ818と第2インダクタ819とがある一定の距離より離れていると第1インダクタ818と第2インダクタ819とは磁界結合しない。
ここで、第1インダクタ818と第2インダクタ819とが磁界結合する場合の左手系フィルタ8100の特性について説明する。
図22は本発明の実施の形態8に係る左手系フィルタにおける第1インダクタ818と第2インダクタ819とが磁界結合しない場合の周波数特性図である。図23は本発明の実施の形態8に係る左手系フィルタにおける第1インダクタ818と第2インダクタ819とが磁界結合する場合の周波数特性図である。図22、図23において、第1インダクタ818と第2インダクタ819とが磁界結合する場合、左手系フィルタ8100には、通過帯域内に減衰極が新たに生じる。したがって、第1インダクタ818と第2インダクタ819とが磁界結合することで、左手系フィルタ8100に生じる減衰極を増やすことができる。さらに、第1インダクタ818と第2インダクタ819との間の間隔を調整することによって、左手系フィルタ8100が本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を任意の周波数に配置することができる。したがって、本実施形態8の左手系フィルタによれば、減衰特性の向上と減衰特性の調整を両立させることができる。
なお、本実施の形態8では、入力端813と出力端814との間に並列接続された左手系共振器は、共振器810Aと共振器810Bの2つであるが、並列接続された左手系共振器は、3つ以上であってもよい。この場合、各左手系共振器の間には、段間結合素子がそれぞれ1つずつ接続される。そして、第1インダクタ818は、入力端813と、入力端813に最も近い側の左手系共振器と、入力端813に最も近い側の段間結合素子との間に接続される。また、第2インダクタ819は、出力端814と、出力端814に最も近い側の左手系共振器と、出力端814に最も近い側の段間結合素子との間に接続される。
図24は本発明の実施の形態8に係る別の左手系フィルタの等価回路図である。図24において、左手系フィルタ8200は、実施の形態8を示す図21の構成に加え、第1インダクタ818と接続点815との間に接続された入力結合素子820と、第2インダクタ819と接続点816との間に接続された出力結合素子821と、をさらに備える。このような構成により、減衰特性の向上と減衰特性の調整を容易に両立させることができる。
図25は本発明の実施の形態8に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図25において、左手系フィルタ8300は、互いに対向するよう配置された接地導体822、823間が誘電体824で満たされた構造となっている。接地導体823と同一平面上には、接地導体823と絶縁された入力端825および出力端826とが設けられている。また、入力端825と出力端826とは、互いに絶縁されている。入力端825には、ビア導体827を介して導体パターン828が接続される。導体パターン828は、導体パターン829と導体パターン830とそれぞれ接続され、互いに同一平面上に配置されている。導体パターン828は、誘電体824を介して導体パターン831と対向している。導体パターン829は、誘電体824を介して導体パターン32と対向している。導体パターン30は、ビア導体33を介して接地導体823と接続されている。出力端826には、ビア導体834を介して導体パターン835が接続される。導体パターン835は、導体パターン836と導体パターン837とそれぞれ接続され、互いに同一平面上に配置されている。すなわち、導体パターン828、829、830、835、836、837はそれぞれ同一平面上に配置されている。導体パターン835は、誘電体824を介して導体パターン831と対向している。導体パターン836は、誘電体824を介して導体パターン838と対向している。導体パターン837は、ビア導体839を介して接地導体823と接続されている。また、導体パターン831、832、838はそれぞれ同一平面上に配置されている。接地導体822、823は、側面電極840、841に接続される。したがって、接地導体822の電位と、接地導体823の電位とは同電位に保たれる。
次に、図25に示された左手系フィルタ8300の構造と、図21に示された共振器810Aの構成との対応関係について説明する。
図21コンデンサ811Aは、導体パターン829と、この導体パターン829に対向して配置された導体パターン832とによって構成される。また、インダクタ811Bは、これらの導体パターン829、832が有する寄生インダクタによって構成される。インダクタ812Bは、接地導体823に接続されるビア導体833が有する寄生インダクタによって構成される。また、コンデンサ812Aは、主に導体パターン829、830、832と、これらの導体パターン829、830、832に対向して配置された接地導体822、823とによって構成される。共振器810Bは線分A−A’において共振器810Aと線対称に配置され、その構成は共振器810Aと同様であるので、ここでは省略する。
次に、図25に示された左手系フィルタ8300の構造と、図21に示された段間結合素子817の構成との対応関係について説明する。
段間結合素子817は、導体パターン828と導体パターン831とが誘電体824を介して対向した構造、および、導体パターン835と導体パターン831とが誘電体824を介して対向した構造によって構成される。
次に、図25に示された左手系フィルタ8300の構造と、図21に示された第1インダクタ818の構成および第2インダクタ819の構成との対応関係について説明する。
第1インダクタ818は、ビア導体827が有する寄生インダクタで構成される。また、第2インダクタ819は、ビア導体834が有する寄生インダクタで構成される。このビア導体827とビア導体834との間の間隔を調整して積層することによって、左手系フィルタ8300が本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を任意の周波数に配置することができる。
このような構成で左手系フィルタ8300が積層構造を実現した場合、すでに設計された左手系フィルタの構成素子を調節する必要がなくなる。そして、インダクタを新たに設けるだけで通過帯域を確保しながら、左手系フィルタ8300に生じる減衰極を増やすことができる。さらに、ビア導体間の距離を調整するだけで、左手系フィルタ8300が本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を任意の周波数に配置することができる。したがって、新たに設計をやり直す必要が無くなる。さらに、ビア導体によるインダクタを、すでに設計によって定められたスペース内に収めることができるので、新たにスペースを確保する必要が無くなる。以上より、製造コストを抑え、左手系フィルタの小型化を維持したまま通過帯域を確保しながら、生じる減衰極を増やし、左手系フィルタが本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を制御することができる。
また、左手系フィルタ8300の構造には、図24に示される入力結合素子820や出力結合素子821に相当する構成がない。入力結合素子820や出力結合素子821は、一般的に大きなスペースを必要とする素子であり、小型化を妨げる構成である。したがって、図6に示されるように、入力結合素子820や出力結合素子821に相当する構成を除いた左手系フィルタ8300によって、製造コストを抑え、左手系フィルタの小型化を維持したまま通過帯域を確保しながら、生じる減衰極を増やし、左手系フィルタ8100が本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を制御することができるだけでなく、さらなる小型化を実現することもできる。
本発明の実施の形態8に係る左手系フィルタは、製造コストを抑え、左手系フィルタの小型化を維持し、通過帯域を確保しながら、生じる減衰極を増やし、左手系フィルタが本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を制御することができ、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態9)
図26は本発明の実施の形態9に係る左手系フィルタを示す等価回路である。図26において、本実施の形態9における左手系フィルタは、入力端915と出力端916とを有するフィルタであって、入力端915と出力端916との間には段間結合素子919が介在し、入力端915と段間結合素子919との間にはコンデンサ911Aとインダクタ911Bとからなる第1直列体911の一端が接続点917にて電気的に接続されている。また、出力端916と段間結合素子919の間にはコンデンサ9110Aとインダクタ9110Bとからなる第2直列体9110の一端が接続点918にて電気的に接続されている。第1直列体911の他端にはコンデンサ912Aとインダクタ912Bとからなる第1並列体912の一端が電気的に接続されている。第2直列体9110の他端にはコンデンサ9120Aとインダクタ9120Bとからなる第2並列体9120の一端が電気的に接続されている。第1並列体912の他端はグランドに電気的に接続されている。第2並列体9120の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第1直列体911と第1並列体912とにより第1セル910Aを構成し、第2直列体9110と第2並列体9120とにより第2セル9100Aを構成している。さらに、第1直列体911の他端はコンデンサ913Aとインダクタ913Bとからなる第3直列体913の一端と接続されている。第2直列体9110の他端はコンデンサ9130Aとインダクタ9130Bとからなる第4直列体9130の一端と接続されている。第3直列体913の他端にはコンデンサ914Aとインダクタ914Bとからなる第3並列体914の一端が電気的に接続されている。第4直列体9130の他端にはコンデンサ9140Aとインダクタ9140Bとからなる第4並列体9140の一端が電気的に接続されている。第3並列体914の他端はグランドに電気的に接続されている。第4並列体9140の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第3直列体913と第3並列体914とにより第3セル910Bを構成し、第4直列体9130と第4並列体9140とにより第4セル9100Bを構成している。
また、段間結合素子919と入力端915との間には入力結合素子920を、段間結合素子919と出力端916との間には出力結合素子921を介在させる構成としている。そして、単位セル910A及び910Bからなる第1のCRLH共振器922と単位セル9100A及び9100Bからなる第2のCRLH共振器923がお互いに電磁界結合する構成としている。
このような構成により、段間結合素子919と、第1のCRLH共振器922と第2のCRLH共振器923との電磁界結合により、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となり信号がグランドに流れる周波数が存在することとなり、通過帯域内に1つ極を増やすことができ、その結果として、減衰特性を向上させることができる。
さらに、入力結合素子920と段間結合素子919、出力結合素子921の容量値を調整することで容易に2個のCRLH共振器922、923の−1次の共振の結合を制御することができる。よって、−1次の共振で通過域を形成した左手系フィルタを構成することができる。また、CRLH共振器922、923の電磁界結合と段間結合素子915とにより生じる減衰極を配置・制御することができるので、一般的な左手系フィルタよりもフィルタ特性の優れた左手系フィルタを提供することができる。
本発明の実施の形態9に係る左手系フィルタの第1並列体912、第2並列体9120、第3並列体914、第4並列体9140は、グランドと直接接続されたインダクタ912B、9120B、914B、9140Bを有している。よって、それらインダクタ912B、9120B、914B、9140Bには右手系フィルタと比較して大きな高周波電流が流れる。その結果、右手系フィルタと比較して、CRLH共振器922、923間の電磁界結合の強さを大きくでき、通過帯域内に減衰極を増やすと共に、その周波数を制御することが容易となる。なお、入力結合素子920、段間結合素子919、出力結合素子921はキャパシタではなく、インダクタを用いて構成しても構わない。
図27は本発明の実施の形態9に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図27において、左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体924、925間が誘電体926で満たされた構造を有し、導体パターン927は図26に示したインダクタ911Bに対応する。さらに導体パターン927及び導体パターン928はビア導体929を介して接続された導体パターン930、931に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ912Aが構成される。導体パターン928はビア導体932を介して接地導体925に接続される。これによりインダクタ912Bが構成される。さらに導体パターン928と接地導体924、925によりキャパシタ912Aが構成される。以上が単位セル910Aに対応する。
導体パターン928は図26に示したインダクタ913Bにも対応する。さらに導体パターン928及び導体パターン933はビア導体934を介して接続された導体パターン935、936に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ913Aが構成される。導体パターン933はビア導体937を介して接地導体925に接続される。これによりインダクタ914Bが構成される。さらに導体パターン933と接地導体924、925により図26に示したキャパシタ914Aが構成される。以上が単位セル910Bに対応する。この単位セル910Aと910Bは第1のCRLH共振器922をなす。
図26に示した第1のCRLH共振器922と第2のCRLH共振器923とは、図27において線分A−A’において鏡面対称に構成され、導体パターン938がインダクタ9110Bに対応する。さらに導体パターン938及び導体パターン939はビア導体940を介して接続された導体パターン941、942に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ9110Aが構成される。導体パターン939はビア導体943を介して接地導体925に接続される。これによりインダクタ9120Bが構成される。さらに導体パターン939と接地導体924、925によりキャパシタ9120Aが構成される。以上が単位セル9100Aに対応する。
導体パターン939は図26に示したインダクタ9130Bにも対応する。さらに導体パターン939及び導体パターン947はビア導体944を介して接続された導体パターン945、946に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ9130Aが構成される。導体パターン947はビア導体948を介して接地導体925に接続される。これによりインダクタ9140Bが構成される。さらに導体パターン947と接地導体924、925によりキャパシタ9140Aが構成される。以上が単位セル9100Bに対応する。この単位セル9100Aと9100Bは第2のCRLH共振器923をなす。
図26に示した入力結合素子920は、入力端子949よりビア導体950を介して接続される導体パターン951と、インダクタ911Bに対応する導体パターン927とにより構成される。段間結合素子919は、単位セル910Aの一部を構成する導体パターン927と単位セル9100Aの一部を構成する導体パターン938と導体パターン952とにより構成される。出力結合素子921は、出力端子953よりビア導体954を介して接続される導体パターン955と、インダクタ9110Bに対応する導体パターン938とにより構成することで表現される。
本実施の形態9のように誘電体926内に内蔵することで第1のCRLH共振器922、第2のCRLH共振器923同士を電磁界結合させることができる。その場合、その電磁界結合と段間結合素子919の共振により図9に示すように新たに減衰極を設けることができ、減衰特性を向上させることができる。この際、接地導体924、925は側面電極956、957で接続されていることが好ましい。
なお、今回入力結合素子920、出力結合素子921は図26に示すようにキャパシタで表現したが、それぞれの容量が10pF以上となる場合は、入力結合素子920、出力結合素子921は取り除いて直接接続しても構わない。
(実施の形態10)
図28は本発明の実施の形態10に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図28において、本実施の形態10に示す左手系フィルタは、第3並列体1014の一端が第1の寄生成分としてのインダクタ1058を介してグランドに接続されており、第4並列体10140の一端が第2の寄生成分としてのインダクタ1059を介してグランドに接続されている点において実施の形態9と異なっている。なお、実施の形態9と同様の構成に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図29は本発明の実施の形態10に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図29において、ビア導体1060が導体パターン1033と接地導体1025との間に設けられると共に、ビア導体1061が導体パターン1047と接地導体1025との間に設けられる構成となっている。このような構成により、不要な通過帯域を形成する0次共振を高周波側にシフトさせることができる。
本発明の左手系フィルタは、減衰特性を向上させることができるという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態11)
図30は本実施の形態11に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図30において、本実施の形態30における左手系フィルタは、入力端1115と出力端1116とを有するフィルタであって、入力端1115と出力端1116との間には段間結合素子1119が介在し、入力端1115と段間結合素子1119との間にはコンデンサ1112Aとインダクタ1112Bとからなる第1並列体1112の一端が接続点1117にて電気的に接続されている。また、出力端1116と段間結合素子1119の間にはコンデンサ11120Aとインダクタ11120Bとからなる第2並列体11120の一端が接続点1118にて電気的に接続されている。第1並列体1112の一端にはコンデンサ1111Aとインダクタ1111Bとからなる第1直列体1111の一端が電気的に接続されている。第2並列体11120の一端にはコンデンサ11110Aとインダクタ11110Bとからなる第2直列体11110の一端が電気的に接続されている。第1並列体1112の他端はグランドに電気的に接続されている。第2並列体11120の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第1直列体1111と第1並列体1112とにより第1セル1110Aを構成し、第2直列体11110と第2並列体11120とにより第2セル11100Aを構成している。さらに、第1直列体1111の他端はコンデンサ1114Aとインダクタ1114Bとからなる第3並列体1114の一端と接続されている。第2直列体11110の他端はコンデンサ11140Aとインダクタ11140Bとからなる第4並列体11140の一端と接続されている。第3並列体1114の一端にはコンデンサ1113Aとインダクタ1113Bとからなる第3直列体1113の一端が電気的に接続されている。第4並列体11140の一端にはコンデンサ11130Aとインダクタ11130Bとからなる第4直列体11130の一端が電気的に接続されている。第3並列体1114の他端はグランドに電気的に接続されている。第4並列体11140の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第3直列体1113と第3並列体1114とにより第3セル1110Bを構成し、第4直列体11130と第4並列体11140とにより第4セル11100Bを構成している。
また、段間結合素子1119と入力端1115との間には入力結合素子1120を、段間結合素子1119と出力端1116との間には出力結合素子1121を介在させる構成としている。そして、単位セル1110A及び1110Bからなる第1のCRLH共振器1122と単位セル11100A及び11100Bからなる第2のCRLH共振器1123がお互いに電磁界結合する構成としている。
このような構成により、段間結合素子1119と、電磁界結合した第1のCRLH共振器1122、第2のCRLH共振器1123とが等価的に並列共振回路を構成するため、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となり信号がグランドに流れる周波数が存在する。よって、通過帯域内に1つ極を増やすことができ、その結果として、減衰特性を向上させることができる。
さらに、入力結合素子1120と段間結合素子1119、出力結合素子1121の容量値を調整することで容易に2個のCRLH共振器1122、1123の−1次の共振の結合を制御することができる。よって、−1次の共振で通過域を形成した左手系フィルタを構成することができる。また、CRLH共振器1122、1123の電磁界結合と段間結合素子1119とにより生じる減衰極を配置・制御することができるので、一般的な左手系フィルタよりもフィルタ特性の優れた左手系フィルタを提供することができる。
本発明の実施の形態11に係る左手系フィルタの第1並列体1112、第2並列体11120、第3並列体1114、第4並列体11140は、グランドと直接接続されたインダクタ1112B、1112Bを有しているため、それらインダクタ1112B、11120B、1114B、11140Bには右手系フィルタと比較して大きな高周波電流が流れる。その結果、右手系フィルタと比較して、CRLH共振器1122、1123間の電磁界結合の強さを大きくでき、通過帯域内に減衰極を増やすと共に、その周波数を制御することが容易となる。なお、入力結合素子1120、段間結合素子1119、出力結合素子1121はキャパシタではなく、インダクタで構成しても構わない。
図31は本発明の実施の形態11に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図31において、左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体1124、1125間が誘電体1126で満たされた構造を備え、導体パターン1127はビア導体1132を介して接地導体1125に接続される。これは図30に示したインダクタ1112Bに対応する。さらに導体パターン1127は接地導体1124、1125によりキャパシタ1112Aが構成される。導体パターン1127及び導体パターン1128はビア導体1129を介して接続された導体パターン1130、1131に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ1111Aが構成される。また、導体パターン1128は図30に示したインダクタ1111Bにも対応する。以上が単位セル1110Aに対応する。
導体パターン1128はビア導体1137を介して接地導体1125に接続される。これにより図30に示したインダクタ1114Bが構成される。導体パターン1128はさらに導体パターン1133と接地導体1124、1125によりキャパシタ1114Aが構成される。導体パターン1128及び導体パターン1133はビア導体1134を介して接続された導体パターン1135、1136に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ1113Aが構成される。導体パターン1133はインダクタ1113Bにも対応する。以上が単位セル1110Bに対応する。この単位セル1110Aと1110Bは第1のCRLH共振器1122をなす。
図30に示した第1のCRLH共振器1122と第1のCRLH共振器1123とは、図31において線分A−A’において鏡面対称に構成され、導体パターン1138はビア導体1143を介して接地導体1125に接続される。これはインダクタ11120Bに対応する。さらに導体パターン1138は接地導体1124、1125によりキャパシタ11120Aが構成される。導体パターン1138及び導体パターン1139はビア導体1140を介して接続された導体パターン1141、1142に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ11110Aが構成される。また、導体パターン1139はインダクタ11110Bにも対応する。以上が単位セル11100Aに対応する。
導体パターン1139はビア導体1148を介して接地導体1125に接続される。これにより図30に示したインダクタ11140Bが構成される。さらに導体パターン1139と接地導体1124、1125によりキャパシタ11140Aが構成される。導体パターン1139及び導体パターン1147はビア導体1144を介して接続された導体パターン1145、1146に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ11130Aが構成される。導体パターン1147はインダクタ11130Bにも対応する。以上が単位セル11100Bに対応する。この単位セル11100Aと11100Bは第2のCRLH共振器1123をなす。
図30に示した入力結合素子1120は、入力端子1149よりビア導体1150を介して接続される導体パターン1151と、インダクタ1112Bに対応する導体パターン1127とにより構成される。段間結合素子1119は、単位セル1110Aの一部を構成する導体パターン1127と単位セル11100Aの一部を構成する導体パターン1138と導体パターン1152とにより構成される。図30に示した出力結合素子1121は、出力端子1153よりビア導体1154を介して接続される導体パターン1155と、インダクタ11120Bに対応する導体パターン1138とにより構成することで表現される。
図32は本実施の形態11に係る左手系フィルタの周波数特性図である。図32において、誘電体1126内に内蔵することで第1のCRLH共振器1122、第2のCRLH共振器1123同士を電磁界結合させると、その電磁界結合と段間結合素子1119の共振により新たに減衰極を設けることができ、減衰特性を向上させることができる。この際、接地導体1124、1125は側面電極1156、1157で接続されていることが好ましい。
なお、今回入力結合素子1120、出力結合素子1121は図30に示すようにキャパシタで表現したが、それぞれの容量が10pF以上となる場合は、入力結合素子20、出力結合素子21は取り除いて直接接続しても構わない。
(実施の形態12)
図33は本発明の実施の形態12に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図33において、本実施の形態12に示す左手系フィルタは、第3直列体1213の他端が第1の寄生成分としてのインダクタ1258を介してグランドに接続されており、第4直列体12130の他端が第2の寄生成分としてのインダクタ1259を介してグランドに接続されている点において、実施の形態11と異なっている。なお、実施の形態11と同様の構成に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図34は本発明の実施の形態12に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図34において、ビア導体1260が導体パターン1233と接地導体1225との間に設けられると共に、ビア導体1261が導体パターン1247と接地導体1225との間に設けられる構成となっている。
このような構成により、実施の形態11の特性を兼ね備えるとともに不要な通過帯域を形成する0次共振を高周波側にシフトさせることができる。
(実施の形態13)
図35は本発明の実施の形態13に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図35において、本実施の形態13における左手系フィルタは、入力端1315と第1出力端1316Aと第2出力端1316Bとを有するフィルタであって、入力端1315と第1出力端1316Aとの間には段間結合素子1319Aが介在し、入力端1315と段間結合素子1319Aとの間にはコンデンサ1311Aとインダクタ1311Bとからなる第1直列体1311の一端が接続点1317にて電気的に接続されている。また、第1出力端1316Aと段間結合素子1319Aの間にはキャパシタ13110Aとインダクタ13110Bとからなる第2直列体13110の一端が接続点1318にて電気的に接続されている。第1直列体1311の一端にはコンデンサ1312Aとインダクタ1312Bとからなる第1並列体1312の一端が電気的に接続されている。第2直列体13110の一端にはコンデンサ13120Aとインダクタ13120Bとからなる第2並列体13120の一端が電気的に接続されている。第1並列体1312の他端はグランドに電気的に接続されている。第2並列体13120の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第1直列体1311と第1並列体1312とにより第1セル1310Aを構成し、第2直列体13110と第2並列体13120とにより第2セル13100Aを構成している。
さらに、第1直列体1311の他端はコンデンサ1313Aとインダクタ1313Bとからなる第3直列体1313の一端と接続されている。また、第2直列体13110の他端はコンデンサ13130Aとインダクタ13130Bとからなる第4直列体13130の一端と接続されている。第3直列体1313の一端にはコンデンサ1314Aとインダクタ1314Bとからなる第3並列体1314の一端が電気的に接続されている。第4直列体13130の一端にはコンデンサ13140Aとインダクタ13140Bとからなる第4並列体13140の一端が電気的に接続されている。第3並列体1314の他端はグランドに電気的に接続されている。第4並列体13140の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第3直列体1313と第3並列体1314とにより第3セル1310Bを構成し、第4直列体13130と第4並列体13140とにより第4セル13100Bを構成している。
また、段間結合素子1319Aと入力端1315との間には入力結合素子1320を介在させている。さらに、段間結合素子1319Aと第1出力端1316Aとの間には出力結合素子1321Aを介在させている。第3セル1310Bの他端と第4セル13100Bの他端との間には段間結合素子1319Bを介在させている。そして、第4セル13100Bの他端と第2出力端1316Bとの間には出力結合素子1321Bを介在させる構成としている。
このような構成により、CRLH共振器を構成するセル数が2セルとなるので、0次と−1次の左手系の共振が発生する。その結果として、差動で信号を取り出すと同電位で振動する0次の共振は打ち消しあい、共振器の両端で電位の振幅が逆相となるように振動する−1次の共振のみ取り出すことができる。
加えて、単位セル1310A及び1310Bからなる第1のCRLH共振器1322と単位セル13100A及び13100Bからなる第2のCRLH共振器1323がお互いに電磁界結合する構成としている。段間結合素子1319A、1319Bと、電磁界結合した第1のCRLH共振器1322、第2のCRLH共振器1323と、が等価的に並列共振回路を構成するため、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となる。よって、信号がグランドに流れる周波数が存在することとなり、通過帯域内に1つ極を増やすことができる。その結果として、減衰特性を向上させることができる。
さらに、入力結合素子1320と段間結合素子1319A、1319B、出力結合素子1321A、1321Bの容量値を調整することにより、容易に2個のCRLH共振器1322、1323の−1次の共振の結合を制御することができる。よって、−1次の共振で通過域を形成した左手系フィルタを構成できる。また、CRLH共振器1322、1323の電磁界結合と段間結合素子1315とにより生じる減衰極を配置・制御することができる。従って、一般的な左手系フィルタよりもフィルタ特性の優れた左手系フィルタを提供することできる。
本発明の実施の形態13に係る左手系フィルタの第1並列体1312、第2並列体13120、第3並列体1314、第4並列体13140は、グランドと直接接続されたインダクタ1312B、1312Bを有している。よって、それらインダクタ1312B、13120B、1314B、13140Bには右手系フィルタと比較して大きな高周波電流が流れる。その結果、右手系フィルタと比較して、CRLH共振器1322、1323間の電磁界結合の強さを大きくでき、通過帯域内に減衰極を増やすと共に、その周波数を制御することが容易となる。なお、入力結合素子1320、段間結合素子1319A、1319B、出力結合素子1321A、1321Bはキャパシタではなく、インダクタで構成しても構わない。
図36は本発明の実施の形態13に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図36において、左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体1324、1325間が誘電体1326で満たされた構造を有し、導体パターン1327は図35に示したインダクタ1311Bに対応する。また、導体パターン1327及び導体パターン1328はビア導体1329を介して接続された導体パターン1330、1331に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ1311Aが構成される。導体パターン1328はビア導体1332を介して接地導体1325に接続される。これはインダクタ1312Bに対応する。さらに導体パターン1328は接地導体1324、1325により図35に示したキャパシタ1312Aが構成される。以上が単位セル1310Aに対応する。
導体パターン1328は図35に示したインダクタ1313Bにも対応する。導体パターン1328及び導体パターン1333はビア導体1334を介して接続された導体パターン1335、1336に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ1313Aが構成される。導体パターン1333はビア導体1337を介して接地導体1325に接続される。これによりインダクタ1314Bが構成される。さらに導体パターン1333と接地導体1324、1325によりキャパシタ1314Aが構成される。以上が単位セル1310Bに対応する。この単位セル1310Aと1310Bは第1のCRLH共振器1322をなす。
図35に示した第1のCRLH共振器1322と第1のCRLH共振器1323とは、図36において線分A−A’において鏡面対称に構成され、導体パターン1338はインダクタ13110Bに対応する。また、導体パターン1338及び導体パターン1339はビア導体1340を介して接続された導体パターン1341、1342に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ13110Aが構成される。導体パターン1339はビア導体1348を介して接地導体1325に接続される。これはインダクタ13120Bに対応する。さらに導体パターン1339は接地導体1324、1325によりキャパシタ13120Aが構成される。以上が単位セル13100Aに対応する。
導体パターン1339は図35に示したインダクタ13130Bにも対応する。導体パターン1339及び導体パターン1347はビア導体1344を介して接続された導体パターン1345、1346に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ13130Aが構成される。導体パターン1347はビア導体1348を介して接地導体1325に接続される。これによりインダクタ13140Bが構成される。さらに導体パターン1347と接地導体1324、1325によりキャパシタ13140Aが構成される。以上が単位セル13100Bに対応する。この単位セル13100Aと13100Bは第2のCRLH共振器1323をなす。
図35に示した入力結合素子1320は、入力端子1354よりビア導体1355を介して接続される導体パターン1356と、インダクタ13120Bに対応する導体パターン1338とにより構成される。段間結合素子1319Aは、単位セル1310Aの一部を構成する導体パターン1327と単位セル13100Aの一部を構成する導体パターン1338と導体パターン1352とにより構成される。段間結合素子1319Bは、インダクタ1314Bに対応する導体パターン1333とインダクタ13140Bに対応する導体パターン1347と導体パターン1353とにより構成される。出力結合素子1321Aは、第1出力端子1349よりビア導体1350を介して接続される導体パターン1351と、インダクタ1312Bに対応する導体パターン1327とにより構成される。出力結合素子1321Bは、第2出力端子1357よりビア導体1358を介して接続される導体パターン1359と、インダクタ13140Bに対応する導体パターン1347とにより構成することで表現される。
図37は本発明の実施の形態13に係る左手系フィルタの周波数特性図である。図37において、誘電体1326内に内蔵することで第1のCRLH共振器1322、第2のCRLH共振器1323同士を電磁界結合させると、その電磁界結合と段間結合素子1319の共振により新たに減衰極を設けることができ、減衰特性を向上させることができる。この際、接地導体1324、1325は側面電極1360、1361で接続されていることが好ましい。
なお、今回入力結合素子1320、出力結合素子1321A、1321Bは図35に示すようにキャパシタで表現したが、それぞれの容量が10pF以上となる場合は、入力結合素子1320、出力結合素子1321A、1321Bは取り除いて直接接続しても構わない。
本発明の左手系フィルタは、減衰特性を向上させることができるという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態14)
図38は本発明の実施の形態14に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図38において、本実施の形態14における左手系フィルタは、入力端1415と第1出力端1416Aと第2出力端1416Bとを有するフィルタであって、入力端1415と第1出力端1416Aとの間には段間結合素子1419Aが介在し、入力端1415と段間結合素子1419Aとの間にはコンデンサ1411Aとインダクタ1411Bとからなる第1直列体1411の一端が接続点1417にて電気的に接続されている。また、第1出力端1416Aと段間結合素子1419Aの間にはコンデンサ14110Aとインダクタ14110Bとからなる第2直列体14110の一端が接続点1418にて電気的に接続されている。第1直列体1411の一端にはコンデンサ1412Aとインダクタ1412Bとからなる第1並列体1412の一端が電気的に接続されている。第2直列体14110の一端にはコンデンサ14120Aとインダクタ14120Bとからなる第2並列体14120の一端が電気的に接続されている。第1並列体1412の他端はグランドに電気的に接続されている。第2並列体14120の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第1直列体1411と第1並列体1412とにより第1セル1410Aを構成し、第2直列体14110と第2並列体14120とにより第2セル14100Aを構成している。
さらに、第1直列体1411の他端はコンデンサ1413Aとインダクタ1413Bとからなる第3直列体1413の一端と接続されている。第2直列体14110の他端はコンデンサ14130Aとインダクタ14130Bとからなる第4直列体14130の一端と接続されている。第3直列体1413の一端にはコンデンサ1414Aとインダクタ1414Bとからなる第3並列体1414の一端が電気的に接続されている。第4直列体14130の一端にはコンデンサ14140Aとインダクタ14140Bとからなる第4並列体14140の一端が電気的に接続されている。第3並列体1414の他端はグランドに電気的に接続されている。第4並列体14140の他端はグランドに電気的に接続されている。そして、第3直列体1413と第3並列体1414とにより第3セル1410Bを構成し、第4直列体14130と第4並列体14140とにより第4セル14100Bを構成している。
また、段間結合素子1419Aと入力端1415との間には入力結合素子1420を介在させている。段間結合素子1419Aと第1出力端1416Aとの間には出力結合素子1421Aを介在させている。第3セル1410Bの他端と第4セル14100Bの他端との間には段間結合素子1419Bを介在させている。そして、第4セル14100Bの他端と第2出力端1416Bとの間には出力結合素子1421Bを介在させる構成としている。
このような構成により、CRLH共振器を構成するセル数が2セルとなるので、0次と−1次の左手系の共振が発生する。その結果として、差動で信号を取り出すと同電位で振動する0次の共振は打ち消しあい、共振器の両端で電位の振幅が逆相となるように振動する−1次の共振のみ取り出すことができる。
加えて、単位セル1410A及び1410Bからなる第1のCRLH共振器1422と単位セル14100A及び14100Bからなる第2のCRLH共振器1423がお互いに電磁界結合する構成とすると、段間結合素子1419A、1419Bと、電磁界結合した第1のCRLH共振器1422、第2のCRLH共振器1423とが等価的に並列共振回路を構成する。よって、入力側、あるいは出力側から見たフィルタのインピーダンスが0となり信号がグラウンドに流れる周波数が存在する。これにより通過帯域内に1つ極を増やすことができ、その結果として、減衰特性を向上させることができるのである。
さらに、入力結合素子1420と段間結合素子1419A、1419B、出力結合素子1421A、1421Bの容量値を調整することにより、容易に2個のCRLH共振器1422、1423の−1次の共振の結合を制御することができる。よって、−1次の共振で通過域を形成した左手系フィルタを構成することができる。また、CRLH共振器1422、1423の電磁界結合と段間結合素子1419A、1419Bとにより生じる減衰極を配置・制御することができるので、一般的な左手系フィルタよりもフィルタ特性の優れた左手系フィルタを提供することができる。
本発明の実施の形態14に係る左手系フィルタの第1並列体1412、第2並列体14120、第3並列体1414、第4並列体14140は、グランドと直接接続されたインダクタ1412B、1412Bを有しているため、それらインダクタ1412B、14120B、1414B、14140Bには右手系フィルタと比較して大きな高周波電流が流れる。その結果、右手系フィルタと比較して、CRLH共振器1422、1423間の電磁界結合の強さを大きくでき、通過帯域内に減衰極を増やすと共に、その周波数を制御することが容易となる。なお、入力結合素子1420、段間結合素子1419A、1419B、出力結合素子1421A、1421Bはキャパシタではなく、インダクタで構成しても構わない。
図39は本発明の実施の形態14に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図39において、左手系フィルタは互いに対向するよう配置された接地導体1424、1425間が誘電体1426で満たされた構造を有し、導体パターン1427はビア導体1432を介して接地導体1425に接続される。これは図38に示したインダクタ1412Bに対応する。さらに導体パターン1427は接地導体1424、1425によりキャパシタ1412Aが構成される。導体パターン1427及び導体パターン1428はビア導体1429を介して接続された導体パターン1430、1431に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ1411Aが構成される。また、導体パターン1428はインダクタ1411Bにも対応する。以上が単位セル1410Aに対応する。
導体パターン1428はビア導体1437を介して接地導体1425に接続される。これにより図38に示したインダクタ1414Bが構成される。導体パターン1428はさらに導体パターン1433と接地導体1424、1425によりキャパシタ1414Aが構成される。導体パターン1428及び導体パターン1433はビア導体1434を介して接続された導体パターン1435、1436に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ1413Aが構成される。導体パターン1433はインダクタ1413Bにも対応する。以上が単位セル1410Bに対応する。この単位セル1410Aと1410Bは第1のCRLH共振器1422をなす。
図38に示した第1のCRLH共振器1422と第1のCRLH共振器1423とは、図39において線分A−A’において鏡面対称に構成され、導体パターン1438はビア導体1443を介して接地導体1425に接続される。これはインダクタ14120Bに対応する。さらに導体パターン1438は接地導体1424、1425によりキャパシタ14120Aが構成される。導体パターン1438及び導体パターン1439はビア導体1440を介して接続された導体パターン1441、1442に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ14110Aが構成される。また、導体パターン1439はインダクタ14110Bにも対応する。以上が単位セル14100Aに対応する。
導体パターン1439はビア導体1448を介して接地導体1425に接続される。これにより図38に示したインダクタ14140Bが構成される。さらに導体パターン1439と接地導体1424、1425によりキャパシタ14140Aが構成される。導体パターン1439及び導体パターン1447はビア導体1444を介して接続された導体パターン1445、1446に挟まれるように構成される。これによりキャパシタ14130Aが構成される。導体パターン1447はインダクタ14130Bにも対応する。以上が単位セル14100Bに対応する。この単位セル14100Aと14100Bは第2のCRLH共振器1423をなす。
図38に示した入力結合素子1420は、入力端子1449よりビア導体1450を介して接続される導体パターン1451と、インダクタ1412Bに対応する導体パターン1427とにより構成される。また、段間結合素子1419Aは、単位セル1410Aの一部を構成する導体パターン1427と単位セル14100Aの一部を構成する導体パターン1438と導体パターン1452とにより構成される。段間結合素子1419Bは、インダクタ1413Bに対応する導体パターン1433とインダクタ14130Bに対応する導体パターン1447と導体パターン1453とにより構成される。出力結合素子1421Aは、第1出力端子1454よりビア導体1455を介して接続される導体パターン1456と、インダクタ14120Bに対応する導体パターン1438とにより構成される。出力結合素子1421Bは、第2出力端子1457よりビア導体1458を介して接続される導体パターン1459と、インダクタ14130Bに対応する導体パターン1447とにより構成することで表現される。
図40は本発明の実施の形態14に係る左手系フィルタの周波数特性図である。図40において、誘電体1426内に内蔵することで第1のCRLH共振器1422、第2のCRLH共振器1423同士を電磁界結合させると、その電磁界結合と段間結合素子1419の共振により新たに減衰極を設けることができ、減衰特性を向上させることができる。この際、接地導体1424、1425は側面電極1460、1461で接続されていることが好ましい。
なお、今回入力結合素子1420、出力結合素子1421A、1421Bは図38に示すようにキャパシタで表現したが、それぞれの容量が10pF以上となる場合は、入力結合素子1420、出力結合素子1421A、1421Bは取り除いて直接接続しても構わない。
本発明の左手系フィルタは、減衰特性を向上させることができるという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態15)
図41は本発明の実施の形態15に係る左手系フィルタの等価回路図である。図41において、本実施の形態15における左手系フィルタ15100は、入力端1513と出力端1514と、入力端1513および出力端1514と電気的に接続した第1の段間結合素子1517と、第2の段間結合素子1520と、第3の段間結合素子1521と、を備える。また、第1の段間結合素子1517および第2の段間結合素子1520と接続した第1左手系共振器1510Aと、第1の段間結合素子1517および第3の段間結合素子1521と接続した第2左手系共振器1510Bと、第2の段間結合素子1520と第3の段間結合素子1521と接続した第3左手系共振器1510Cと、を備える。さらに、入力端1513と第1の段間結合素子1517と第2の段間結合素子1520と第1左手系共振器1510Aとの間に接続された第1インダクタ1518と、出力端1514と第1の段間結合素子1517と第3の段間結合素子1521と第2左手系共振器1510Bとの間に接続された第2インダクタ1519と、を備える。
第1左手系共振器1510Aは、一端が第1の段間結合素子1517の一端および第2の段間結合素子1520の一端に接続され、他端が接地される。ここで、第1左手系共振器1510Aの一端と第1の段間結合素子1517の一端および第2の段間結合素子1520の一端とが接続する点を接続点1515と定義する。また、第2左手系共振器1510Bは、一端が第1の段間結合素子1517の他端および第3の段間結合素子1521の一端に接続され、他端が接地される。ここで、第2左手系共振器1510Bの一端と第1の段間結合素子1517の他端および第3の段間結合素子1521の一端とが接続する点を接続点1516と定義する。また、第3左手系共振器1510Cは、一端が第2の段間結合素子1520の他端および第3の段間結合素子1521の他端に接続され、他端が接地される。
なお、本実施の形態15では、第1左手系共振器1510A、第2左手系共振器1510B、第3左手系共振器1510Cの他端はそれぞれ接地されているが、開放されていてもよい。また、第1左手系共振器1510A、第2左手系共振器1510B、第3左手系共振器1510Cはそれぞれ1つの左手系共振器で構成されているが、複数の左手系共振器が直列接続されて構成されてもよい。
第1左手系共振器1510Aは、並列接続されたコンデンサ15121Aとインダクタ15121Bとからなる並列体15121と、直列接続されたコンデンサ15111Aとインダクタ15111Bとからなる直列体15111とを備える。直列体15111は、一端が第1の段間結合素子1517の一端、および第2の段間結合素子1520の一端に接続される。並列体15121は、一端が直列体15111の他端に接続され、他端が接地される。
第2左手系共振器1510Bは、並列接続されたコンデンサ15122Aとインダクタ15122Bとからなる並列体15122と、直列接続されたコンデンサ15112Aとインダクタ15112Bとからなる直列体15112とを備える。直列体15112は、一端が第1の段間結合素子1517の他端、および第3の段間結合素子1521の一端に接続される。並列体15122は、一端が直列体15112の他端に接続され、他端が接地される。
第3左手系共振器1510Cは、並列接続されたコンデンサ15123Aとインダクタ15123Bとからなる並列体15123と、直列接続されたコンデンサ15113Aとインダクタ15113Bとからなる直列体15113とを備える。直列体15113は、一端が第2の段間結合素子1520の他端、および第3の段間結合素子1521の他端に接続される。並列体15123は、一端が直列体15113の他端に接続され、他端が接地される。
なお、本実施の形態15では、第1左手系共振器1510Aが有する直列体15111は、インダクタ15111Bが並列体15121と接続され、コンデンサ15111Aが接続点1515と接続される構成となっている。しかし、コンデンサ15111Aが並列体15121と接続され、インダクタ15111Bが接続点1515と接続される構成となってもよい。第2左手系共振器1510B、第3左手系共振器1510Cについても同様の構成となってもよい。
第1インダクタ1518は、接続点1515と入力端1513との間に接続される。第2インダクタ1519は、接続点1516と出力端1514との間に接続される。第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bは、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとがそれぞれ磁界結合できるように、配置関係を調整される。第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとがそれぞれ近接すると、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとのそれぞれの磁界結合度は大きくなる。一方、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとが離れて配置されると、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとは磁界結合度は小さくなる。
図42は本発明の実施の形態15に係る左手系フィルタにおいて磁界結合しない場合の周波数特性図である。図43は本発明の実施の形態15に係る左手系フィルタにおいて磁界結合する場合の周波数特性図である。図42、図43において、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとが磁界結合する場合、左手系フィルタ15100には、通過帯域内に減衰極が新たに生じる。したがって、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとが磁界結合することにより、左手系フィルタ15100に生じる減衰極を増やすことができる。
さらに、第1インダクタ1518と第2インダクタ1519と第3左手系共振器1510Cの並列体15123のインダクタ15123Bとの間の間隔をそれぞれ調整することによって、左手系フィルタ15100が本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を任意の周波数に配置することができる。したがって、本実施の形態15の左手系フィルタによれば、減衰特性の向上と減衰特性の調整を両立させることができる。特に、図43の領域Xで示されるように、W−LANで利用される2.4GHz〜2.5GHzの周波数帯域においては30dB以上減衰させ、携帯電話の送受信用の1.9GHz〜2.2GHzの周波数帯域においては減衰させないようにすることができる。よって、互いに周波数領域が近いW−LANと携帯電話の送受信とで混信を起こさないようにすることができる。
なお、本実施の形態15では、入力端1513と出力端1514との間に並列接続された左手系共振器は、第1左手系共振器1510A、第2左手系共振器1510B、第3左手系共振器1510Cとの3つであるが、並列接続された左手系共振器は、3つ以上であってもよい。この場合、各左手系共振器の間には、段間結合素子がそれぞれ1つずつ接続される。そして、第1インダクタ1518は、第1の段間結合素子の一端と、第2の段間結合素子の一端に接続される。また、第2インダクタ1519は、第1の段間結合素子の他端と、第3の段間結合素子の一端に接続される。また、本実施の形態15では、さらに第1インダクタ1518と接続点1515との間に接続された入力結合素子、第2インダクタ1519と接続点1516との間に接続された出力結合素子とをさらに備えてもよい。
図44A〜図44Jは本発明の実施の形態15に係る左手系フィルタにおける誘電体積層基板を構成する誘電体基板のパターンを上から順に示した分解図である。図44A〜図44Jにおいて、各誘電体基板のパターンは、互いに平行に設けられている。以下、便宜上、図44A〜図44Jで示される誘電体基板には、上から順に1530a〜1530jの符号を付す。
誘電体基板1530a〜1530jは、入力端1531、出力端1532、側面電極1533a、1533bを備える。図44A、図44Jに示されるように、入力端1531と出力端1532は、誘電体積層基板1530の側面に沿って誘電体積層基板1530の上面と下面に伸びている。図44Aに示されるように、誘電体基板1530aは、第1のグランド電極1534を備える。図44Jに示されるように、誘電体基板1530jは、第2のグランド電極1535を備える。第1のグランド電極1534、第2のグランド電極1535は、側面電極1533a、1533bと接続して等電位を保っている。入力端1531、出力端1532は、第1のグランド電極1534、第2のグランド電極1535、側面電極1533a、1533bから絶縁されている。
図44H〜図44Jに示されるように、入力端1531は、ビア導体1536を介して導体パターン1537と接続されている。出力端1532は、ビア導体1538を介して導体パターン1539と接続されている。導体パターン1537は、ビア導体1540を介して導体パターン1541と接続されている。導体パターン1539は、ビア導体1542を介して導体パターン1543と接続されている。
図44G〜図44Iに示されるように、導体パターン1541は、ビア導体1544を介して導体パターン1545に接続される。また、導体パターン1543は、ビア導体1546を介して導体パターン1547に接続される。導体パターン1545の一端と、導体パターン1547の一端は、側面電極1533bに接続されている。また、導体パターン1545と、導体パターン1547とは、第1のグランド電極1534、および、第2のグランド電極1535と対向して配置されている。
図44E〜図44Gに示されるように、導体パターン1545は、ビア導体1548を介して導体パターン1549と接続されている。また、導体パターン1547は、ビア導体1550を介して導体パターン1551と接続されている。導体パターン1549は、同じ誘電体基板上で、別の導体パターン1552と接続されている。また、導体パターン1551は、同じ誘電体基板上で、別の導体パターン1553と接続されている。
図44E、図44Fに示されるように、導体パターン1554は、導体パターン1552と対向して配置されている。また、導体パターン1555は、導体パターン1553と対向して導体パターン1554と同じ誘電体基板上に配置されている。また、導体パターン1556は、導体パターン1554、1555と同じ誘電体基板上に配置されている。図44D、図44Eに示されるように、導体パターン1557は、導体パターン1549、1551と対向して配置されている。図44A、図44B、図44D、図44Jに示されるように、導体パターン1558は、導体パターン1557、第1のグランド電極1534、第2のグランド電極1535と対向して配置されている。図44B、図44Cに示されるように、導体パターン1559は、導体パターン1558と対向して配置されている。図44B〜図44Jに示されるように、導体パターン1558は、ビア導体1560を介して第2のグランド電極1535と接続されている。
図41に示された第1左手系共振器1510Aの直列体15111に含まれるコンデンサ15111Aは、導体パターン1552と、この導体パターン1552に対向して配置された導体パターン1554とによって構成される。また、第1左手系共振器1510Aの直列体15111に含まれるインダクタ15111Bは、主に、導体パターン1552と導体パターン1554の奥行き方向成分によって構成される。第1左手系共振器1510Aの並列体15121に含まれるコンデンサ15121Aは、主に、導体パターン1545と、この導体パターン1545と対向して配置された第1のグランド電極1534および第2のグランド電極1535とによって構成される。第1左手系共振器1510Aの並列体15121に含まれるインダクタ15121Bは、導体パターン1545の奥行き成分によって構成される。
図41に示された第2左手系共振器1510Bの直列体15112に含まれるコンデンサ15112Aは、導体パターン1553と、この導体パターン1553に対向して配置された導体パターン1555とによって構成される。また、第2左手系共振器1510Bの直列体15112に含まれるインダクタ15112Bは、主に、導体パターン1553と導体パターン1555の奥行き方向成分によって構成される。第2左手系共振器1510Bの並列体15122に含まれるコンデンサ15122Aは、主に、導体パターン1547と、この導体パターン1547と対向して配置された第1のグランド電極1534および第2のグランド電極1535とによって構成される。第2左手系共振器1510Bの並列体15122に含まれるインダクタ15122Bは、導体パターン1547の奥行き成分によって構成される。
図41に示された第3左手系共振器1510Cの直列体15113に含まれるコンデンサ15113Aは、導体パターン1558と、この導体パターン1558に対向して配置された導体パターン1559とによって構成される。また、第3左手系共振器1510Cの直列体15113に含まれるインダクタ15113Bは、主に、導体パターン1558と導体パターン1559の奥行き方向成分によって構成される。第3左手系共振器1510Cの並列体15123に含まれるコンデンサ15123Aは、主に、導体パターン1558と、この導体パターン1558と対向して配置された第1のグランド電極1534および第2のグランド電極1535とによって構成される。第3左手系共振器1510Cの並列体15123に含まれるインダクタ15123Bは、ビア導体1560によって構成される。
第1の段間結合素子1517は、導体パターン1556および導体パターン1557が、導体パターン1549および導体パターン1551と誘電体を介して対向した構造によって構成される。第2の段間結合素子1520は、主に、導体パターン1557が、導体パターン1549および導体パターン1558と誘電体を介して対向した構造によって構成される。第3の段間結合素子1521は、主に、導体パターン1557が、導体パターン1551および導体パターン1558と誘電体を介して対向した構造によって構成される。
第1インダクタ1518は、導体パターン1537と、この導体パターン1537に接続されたビア導体1540と、このビア導体1540とに接続された導体パターン1541と、この導体パターン1541とに接続されたビア導体1544とが有する寄生インダクタによって構成される。第2インダクタ1519は、導体パターン1539と、この導体パターン1539に接続されたビア導体1542と、このビア導体1542とに接続された導体パターン1543と、この導体パターン1543とに接続されたビア導体1546とが有する寄生インダクタによって構成される。
導体パターン1537、1539、1541、1543、および、ビア導体1544、ビア導体1546、ビア導体1560の間隔を調整して積層することによって、左手系フィルタが本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を任意の周波数に配置することができる。
このような構成で左手系フィルタが積層構造を実現した場合、すでに設計された左手系フィルタの構成素子を調節することなく、左手系フィルタに新たに減衰極を増やし、この減衰極を制御することが可能となる。つまり、インダクタとして動作する導体パターン及びビア導体間の距離を調整するだけで、左手系フィルタが本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を任意の周波数に配置することができる。さらに、類似した構造の第1左手系共振器1510Aと第2左手系共振器1510Bに対して、ビア導体1560によってインダクタを表現した第3左手系共振器1510Cを使用することにより、第1左手系共振器1510Aと第2左手系共振器1510Bに積層して第3左手系共振器1510Cを配置できる。よって、平面上に新たにスペースを確保する必要が無くなる。
以上より、製造コストを抑え、左手系フィルタの小型化を維持したまま通過帯域を確保しながら、生じる減衰極を増やし、左手系フィルタが本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を制御することができる。
本発明の左手系フィルタは、製造コストを抑え、左手系フィルタの小型化を維持し、通過帯域を確保しながら、生じる減衰極を増やし、左手系フィルタが本来有する減衰極も含めたすべての減衰極を制御することができ、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態16)
図45は本発明の実施の形態16に係る左手系共振器の左手系伝送線路の等価回路図である。図45において、本実施の形態16における左手系共振器16100は、第1セル16101と、この第1セル16101に接続された第2セル16102とから構成される。第1セル16101は、コンデンサ16110aとインダクタ16110bとからなる第1直列体16110と、コンデンサ16120aとインダクタ16120bとからなる第1並列体16120とから構成される。第1並列体16120の一端は、入出力端16170に接続され、第1並列体16120の他端は、グランドに接続される。すなわち、コンデンサ16120aの一端と、インダクタ16120bの一端とは、入出力端16170に接続される。そして、コンデンサ16120aの他端と、インダクタ16120bの他端とは、グランドに接続される。また、第1並列体16120の一端には、第1直列体16110の一端が接続される。すなわち、コンデンサ16120aの一端とインダクタ16120bの一端とには、コンデンサ16110aの一端とインダクタ16110bの一端とが接続される。なお、入出力端16170には、先に第1並列体16120の一端が接続され、この第1並列体16120の一端に第1直列体16110の一端が接続されている。しかし、逆の順序で接続されてもよい。
第2セル16102は、コンデンサ16130aとインダクタ16130bとからなる第2直列体16130と、コンデンサ16140aとインダクタ16140bとからなる第2並列体16140とから構成される。第2並列体16140の一端は、第1直列体16110の他端に接続され、第2並列体16140の他端は、グランドに接続される。すなわち、コンデンサ16140aの一端と、インダクタ16140bの一端とは、コンデンサ16110aの他端とインダクタ16110bの他端に接続される。そして、コンデンサ16140aの他端と、インダクタ16140bの他端とは、グランドに接続される。また、第2並列体16140の一端には、第2直列体16130の一端が接続される。すなわち、コンデンサ16140aの一端とインダクタ16140bの一端とには、コンデンサ16130aの一端とインダクタ16130bの一端とが接続される。なお、第1セル16101の他端に相当する第1直列体16110の他端には、先に第2並列体16140の一端が接続され、この第2並列体16140の他端に第2直列体16130の一端が接続されている。しかし、逆の順序で接続されてもよい。
コンデンサ16150は、一端が入出力端16170を介して第1セル16101に接続され、他端がグランド16160に接続される。左手系共振器16100に並列にコンデンサ16150を接続することにより、このコンデンサ16150のサセプタンス成分が左手系共振器16100のサセプタンス成分に加えられる。その結果、左手系共振器16100のもつサセプタンス成分のゼロ点は低周波数側へシフトし、その近傍での左手系共振器16100のもつサセプタンス成分の変化量は小さい値となる。
なお、第2直列体16130の他端が、寄生成分としてのインダクタを介してグランドに接続されてもよい。このような構成により、共振器は左手系及び右手系の奇数次共振のみを励振する。このため、周波数に対する共振器のサセプタンス成分の変化量を緩やかにすることができる。
図46は本発明の実施の形態16に係る左手系共振器の構造を示す分解斜視図である。図47は、図46の線47-47に沿う断面を矢印Bの方向から見たときの断面図である。図46、図47に示される左手系共振器16200の接続関係について説明する。
左手系共振器16200は、互いに対向するよう配置された接地導体16201、16202間が誘電体16203で満たされた構造となっている。接地導体16202と同一平面上に、接地導体16202と絶縁された入出力端16204が設けられている。この入出力端16204には、ビア導体16205を介して導体パターン16206が接続されている。この導体パターン16206に誘電体16203を介して対向する導体パターン16207が設けられている。また、導体パターン16208は、導体パターン16207と誘電体16203を介して対向している。この導体パターン16208は、ビア導体16209を介して接地導体16201と接続されている。また、導体パターン16208は、ビア導体16210を介して導体パターン16211に接続されている。また、導体パターン16208は、ビア導体16212を介して導体パターン16213に接続されている。この導体パターン16213と誘電体16203を介して対向する導体パターン16214は、ビア導体16215を介して接地導体16202と接続されている。また、導体パターン16216が、誘電体16203を介して導体パターン16211と導体パターン16213とに挟まれている。この導体パターン16216は、ビア導体16217を介して接地導体16201に接続されている。導体パターン16216には、ビア導体16218を介して導体パターン16219が接続される。また、導体パターン16216には、ビア導体16220を介して導体パターン16221が接続される。導体パターン16222は、誘電体16203を介して導体パターン16219と導体パターン16221とに挟まれている。なお、導体パターン16206、16207、16208によって、左手系共振器16200が共振したときの出力の減衰を大きくすることができ、出力の変化を明瞭にすることができる。また、接地導体16201、16202は、側面電極16223、16224で接続される。したがって、接地導体16201の電位と、接地導体16202の電位を同電位に保つことができる。
次に、図46、図47に示された左手系共振器16200の構造と、図45に示された左手系共振器16100の構成との対応関係について説明する。
図45に示されたキャパシタ16110aは、導体パターン16211と導体パターン16216とが誘電体16203を介して対向した構造、および、導体パターン16213と導体パターン16216とが誘電体16203を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16110bは、主として導体パターン16216の奥行き方向によって構成される。キャパシタ16120aは、主として導体パターン16211と接地導体16201とが誘電体16203を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16120bは、ビア導体16209によって構成される。
図45に示されたキャパシタ16130aは、導体パターン16219と導体パターン16222とが誘電体16203を介して対向した構造、および、導体パターン16221と導体パターン16222とが誘電体16203を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16130bは、主として導体パターン16216の奥行き方向によって構成される。キャパシタ16140aは、主として導体パターン16219と接地導体16201とが誘電体16203を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16140bは、ビア導体16217によって構成される。
図45に示されたコンデンサ16150は、導体パターン16213と導体パターン16214とが誘電体16203を介して対向した構造によって構成される。このように、左手系共振器16200を積層構造とした場合、左手系共振器16200の一部を使ってコンデンサ16150を設けることができるため、コンデンサ16150を設けるために新たにスペースを確保する必要がない。したがって、少ない製造コストで、左手系共振器の大きさを変えずに帯域幅を広くできる。
図48は本発明の実施の形態16に係る別の左手系共振器の構造を示す分解斜視図である。図49は図48の線49-49に沿う断面を矢印Dの方向から見たときの断面図である。図48、図49に示される左手系共振器16300の接続関係について説明する。
左手系共振器16300は、互いに対向するよう配置された接地導体16301、16302間が誘電体16303で満たされた構造となっている。接地導体16302と同一平面上に、接地導体16302と絶縁された入出力端16304が設けられている。この入出力端16304には、ビア導体16305を介して導体パターン16306が接続されている。この導体パターン16306に誘電体16303を介して対向する導体パターン16307が設けられている。また、導体パターン16308は、導体パターン16307と誘電体16303を介して対向している。この導体パターン16308は、ビア導体16309を介して接地導体16301と接続されている。また、導体パターン16308は、ビア導体16310を介して導体パターン16311に接続されている。また、導体パターン16308は、ビア導体16312を介して導体パターン16313に接続されている。また、導体パターン16308は、ビア導体16314を介して導体パターン16315と接続されている。また、導体パターン16316が、誘電体16303を介して導体パターン16313と導体パターン16315とに挟まれている。この導体パターン16316は、ビア導体16317を介して接地導体16301に接続されている。また導体パターン16316には、ビア導体16318を介して導体パターン16319が接続される。また、導体パターン16316には、ビア導体16320を介して導体パターン16321が接続される。導体パターン16322は、誘電体16303を介して導体パターン16319と導体パターン16321とに挟まれている。なお、導体パターン16306、16307、16308によって、左手系共振器16300が共振したときの出力の減衰を大きくすることができ、出力の変化を明瞭にすることができる。
次に、図48、図49に示された左手系共振器16300の構造と、図45に示された左手系共振器16100の構成との対応関係について説明する。
図45に示されたキャパシタ16110aは、導体パターン16313と導体パターン16316とが誘電体16303を介して対向した構造、および、導体パターン16315と導体パターン16316とが誘電体16303を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16110bは、主として導体パターン16316の奥行き方向によって構成される。キャパシタ16120aは、主として導体パターン16313と接地導体16301とが誘電体16303を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16120bは、ビア導体16309によって構成される。
図45に示されたキャパシタ16130aは、導体パターン16319と導体パターン16322とが誘電体16303を介して対向した構造、および、導体パターン16321と導体パターン16322とが誘電体16303を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16130bは、主として導体パターン16316の奥行き方向によって構成される。キャパシタ16140aは、主として導体パターン16319と接地導体16301とが誘電体16303を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16120bは、ビア導体16317によって構成される。
図45に示されたコンデンサ16150は、導体パターン16311と左手系共振器16300の一部ではない接地導体16302とが誘電体16303を介して対向した構造によって構成される。接地導体16302は、面積が広く、左手系共振器16300の一部ではない。したがって、コンデンサ16150を構成するときに、導体パターン16311の面積がほぼそのままコンデンサ16150の面積になり、導体パターン16311の配置は左手系共振器16300のサイズに影響されない。したがって、コンデンサ16150を左手系共振器16300に大きな面積で形成することができる。なお、接地導体16301、16302は側面電極16323、16324で接続されていることが好ましい。
次に、本実施の形態16に係る左手系フィルタの全体構成について説明する。図50は本発明の実施の形態16に係る左手系フィルタを示す等価回路図である。図50において、左手系フィルタ1620は、入力端1613と、出力端1614と、入力端1613および出力端1614と接続した結合素子群1615と、結合素子群1615と接続したセル群1616と、結合素子群1615と接続したコンデンサ群1617と、コンデンサ群1617と接続したグランド群1618とを備える。結合素子群1615は、一端が入力端1613と接続した入力結合素子1615aと、一端が入力結合素子1615aの他端と接続した段間結合素子1615bと、一端が段間結合素子1615bの他端と接続し、他端が出力端1614と接続した出力結合素子1615cと、を備える。セル群1616は、第1セルの集合体1616aと、第2セルの集合体1616bとを備える。
第1セルの集合体1616aは、一端が入力結合素子1615aと段間結合素子1615bとの間に設けられた第1の接続点1619aに接続される。第2セルの集合体1616bは、一端が段間結合素子1615bと出力結合素子1615cとの間に設けられた第2の接続点1619bに接続される。なお、第1セルの集合体1616aの他端は開放、または、接地されている。また、第2セルの集合体1616bの他端は、開放、または、接地されている。
図51は本発明の実施の形態16に係る左手系フィルタのセルを示す等価回路図である。図51において、第1セルの集合体1616aは、一端が第1の接続点1619aに接続されたセル16401と、一端がこのセル16401の他端に直列接続されたセル16402とを備える。なお、本実施の形態16では、第1セルの集合体1616aは、直列接続された2つのセル16401、16402で構成されているが、少なくとも1つ以上のセルが直列接続されて構成されてもよい。なお、例えば、−1次の共振モードが用いられる場合であって、第1セルの集合体1616aが1つのセルで構成された場合、第1セルの集合体1616aの他端は、接地されている。また、第1セルの集合体1616aが2つ以上のセルで構成された場合、第1セルの集合体1616aの他端は、開放されている。
セル16401は、一端が第1の接続点1619aに接続された第1直列体16410と、一端が第1の接続点1619aに接続され他端がグランド16420cに接続された第1並列体16420と、を備える。第1直列体16410は、一端が第1の接続点1619aに接続されたインダクタ16410bと、一端がインダクタ16410bの他端に接続されたコンデンサ16410aと、を備える。なお、コンデンサ16410aとインダクタ16410bの配置は逆であってもよい。
第1並列体16420は、一端が第1の接続点1619aに接続され、他端がグランド16420cに接続されたコンデンサ16420aと、一端が第1の接続点1619aに接続され、他端がグランド16420cに接続されたインダクタ16420bと、を備える。セル16402は、一端がコンデンサ16410aの他端に接続された第2直列体16430と、一端がコンデンサ16410aの他端に接続され、他端がグランド16440cに接続された第2並列体16440とを備える。
第2直列体16430は、一端がコンデンサ16410aの他端に接続されたインダクタ16430bと、一端がインダクタ16430bの他端に接続されたコンデンサ16430aとを備える。なお、コンデンサ16430aとインダクタ16430bの配置は逆であってもよい。
第2並列体16440は、一端がコンデンサ16410aの他端に接続され、他端がグランド16440cに接続されたコンデンサ16440aと、一端がコンデンサ16410aの他端に接続され、他端がグランド16440cに接続されたインダクタ16440bと、を備える。
図52は本発明の実施の形態16に係る左手系フィルタのセルを示す別の等価回路図である。図52において、第2セルの集合体1616bは、一端が第2の接続点1619bに接続されたセル16403と、一端がこのセル16403の他端に直列接続されたセル16404とを備える。なお、第2セルの集合体1616bは、直列接続された2つのセル16403、16404で構成されるが、少なくとも1つ以上のセルが直列接続されて構成されてもよい。
セル16403は、一端が第2の接続点1619bに接続された第1直列体16450と、一端が第2の接続点1619bに接続され、他端がグランド16460cに接続された第1並列体16460とを備える。第1直列体16450は、一端が第2の接続点1619bに接続されたインダクタ16450bと、一端がインダクタ16450bの他端に接続されたコンデンサ16450aとを備える。なお、コンデンサ16450aとインダクタ16450bの配置は逆であってもよい。
第1並列体16460は、一端が第2の接続点1619bに接続され、他端がグランド16460cに接続されたコンデンサ16460aと、一端が第2の接続点1619bに接続され、他端がグランド16460cに接続されたインダクタ16460bとを備える。
セル16404は、一端がコンデンサ16450aの他端に接続された第2直列体16470と、一端がコンデンサ16450aの他端に接続され、他端がグランド16480cに接続された第2並列体16480とを備える。
第2直列体16470は、一端がコンデンサ16450aの他端に接続されたインダクタ16470bと、一端がインダクタ16470bの他端に接続されたコンデンサ16470aとを備える。なお、コンデンサ16470aとインダクタ16470bの配置は逆であってもよい。
第2並列体16480は、一端がコンデンサ16450aの他端に接続され、他端がグランド16480cに接続されたコンデンサ16480aと、一端がコンデンサ16450aの他端に接続され、他端がグランド16480cに接続されたインダクタ16480bとを備える。
なお、図50に示すコンデンサ群1617は、一端が第1の接続点1619aと接続され他端が第1のグランド1618aと接続された第1コンデンサ1617aと、一端が第1の接続点1619bと接続され他端が第2のグランド1618bと接続された第2コンデンサ1617bと、を備える。
図53は本発明の実施の形態16に係る左手系フィルタのサセプタンスの周波数特性図である。図53の実線に示されるように、各周波数帯域で左手系共振器である第1セルの集合体1616a、第2セルの集合体1616bのアドミタンスのうちサセプタンス成分が上がり、サセプタンス成分がゼロになる近傍での周波数変化がなだらかになる。よって、左手系共振器である第1セルの集合体1616a、第2セルの集合体1616bは広い帯域幅をとることができる。したがって、従来よりも少ない数の共振器で同じ帯域幅の左手系フィルタを構成することができ、左手系フィルタの小型化や、部品点数の削減が可能になる。
図54は、本発明の実施の形態16に係る左手系フィルタの構造を示す分解斜視図である。図55は図54において線55−55に沿う断面図を矢印Fの方向から見たときの断面図である。図54、図55において、左手系フィルタ16500の接続関係について説明する。左手系フィルタ16500は、互いに対向するよう配置された接地導体16501、16502間が誘電体16503で満たされた構造となっている。
接地導体16502と同一平面上に、接地導体16502と絶縁された入力端16504aが設けられている。この入力端16504aには、ビア導体16505aを介して導体パターン16506aが接続されている。この導体パターン16506aに誘電体16503を介して対向する導体パターン16507が設けられている。また、導体パターン16506aは、ビア導体16508aを介して接地導体16501に接続されている。導体パターン16506aは、ビア導体16509aを介して導体パターン16510aに接続されている。導体パターン16506aは、ビア導体16511aを介して導体パターン16512aに接続されている。導体パターン16506aは、ビア導体16513aを介して導体パターン16514aに接続されている。
導体パターン16515aは、導体パターン16512aと誘電体16503を介して対向している。導体パターン16515aは、導体パターン16514aと誘電体16503を介して対向している。導体パターン16515aは、ビア導体16516aを介して接地導体16501と接続されている。導体パターン16515aは、ビア導体16517aを介して導体パターン16518aと接続されている。導体パターン16515aは、ビア導体16519aを介して導体パターン16520aと接続されている。
導体パターン16521aは、導体パターン16518aと誘電体16503を介して対向している。導体パターン16521aは、導体パターン16520aと誘電体16503を介して対向している。なお、接地導体16501、16502は側面電極16522、16523で接続されていることが好ましい。
また、接地導体16502と同一平面上に、接地導体16502と絶縁された出力端16504bが設けられている。この出力端16504bには、ビア導体16505bを介して導体パターン16506bが接続されている。この導体パターン16506bと導体パターン16507とは、誘電体16503を介して対向している。また、導体パターン16506bは、ビア導体16508bを介して接地導体16501に接続されている。導体パターン16506bは、ビア導体16509bを介して導体パターン16510bに接続されている。導体パターン16506bは、ビア導体16511bを介して導体パターン16512bに接続されている。導体パターン16506bは、ビア導体16513bを介して導体パターン16514bに接続されている。
導体パターン16515bは、導体パターン16512bと誘電体16503を介して対向している。導体パターン16515bは、導体パターン16514bと誘電体16503を介して対向している。導体パターン16515bは、ビア導体16516bを介して接地導体16501と接続されている。導体パターン16515bは、ビア導体16517bを介して導体パターン16518bと接続されている。導体パターン16515bは、ビア導体16519bを介して導体パターン16520bと接続されている。
導体パターン16521bは、導体パターン16518bと誘電体16503を介して対向している。導体パターン16521bは、導体パターン16520bと誘電体16503を介して対向している。なお、接地導体16501、16502は側面電極16522、16523で接続されていることが好ましい。
次に、図54、図55に示された左手系フィルタ16500の構造と、図50に示された左手系フィルタ1620の構成との対応関係について説明する。まず、図54、図55に示された左手系フィルタ16500の構造のうちどの構造が図51に示された第1セルの集合体1616aに対応するかについて説明する。
図51に示されたキャパシタ16410aは、導体パターン16512aと導体パターン16515aとが誘電体16503を介して対向した構造、および、導体パターン16514aと導体パターン16515aとが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16410bは、主として導体パターン16515aの奥行き方向によって構成される。キャパシタ16420aは、主として導体パターン16512aと接地導体16501とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16420bは、ビア導体16508aによって構成される。キャパシタ16430aは、導体パターン16518aと導体パターン16521aとが誘電体16503を介して対向した構造、および、導体パターン16520aと導体パターン16521aとが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16430bは、主として導体パターン16515aの奥行き方向によって構成される。キャパシタ16440aは、主として導体パターン16518aと接地導体16501とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16440bは、ビア導体16516aによって構成される。
次に、図54、図55に示された左手系フィルタ16500の構造のうちどの構造が図51に示された第2セルの集合体1616bに対応するかについて説明する。
図52に示されたキャパシタ16450aは、導体パターン16512bと導体パターン16515bとが誘電体16503を介して対向した構造、および、導体パターン16514bと導体パターン16515bとが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16450bは、主として導体パターン16515bの奥行き方向によって構成される。キャパシタ16460aは、主として導体パターン16512bと接地導体16501とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16460bは、ビア導体16508bによって構成される。キャパシタ16470aは、導体パターン16518bと導体パターン16521bとが誘電体16503を介して対向した構造、および、導体パターン16520bと導体パターン16521bとが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16470bは、主として導体パターン16516bの奥行き方向によって構成される。キャパシタ16480aは、主として導体パターン16518bと接地導体16501とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。インダクタ16480bは、ビア導体16516bによって構成される。
次に、図54、図55に示された左手系フィルタ1620の構造のうちどの構造が図50に示された結合素子群1615に対応するかについて説明する。
図50に示された入力結合素子1615aは、ビア導体16505aによって構成される。また、出力結合素子1615cはビア導体16505bによって構成される。これら入力結合素子1615a、出力結合素子1615cの値が例えば8pF程度であって、通過帯域が2GHz程度のとき、入力結合素子1615a、出力結合素子1615cのインピーダンスはほぼ0Ωと考えられるほど小さくなる。よって、通過帯域とコンデンサの値に応じて入力結合素子1615a、出力結合素子1615cを取り除いてもよい。これをタップ給電とよび、本実施の形態ではこのタップ給電が用いられている。したがって、入力結合素子1615aを構成するコンデンサは除かれて、入力端16504aと導体パターン16506aとを直接接続したビア導体16505aによって構成される。また、出力結合素子1615cを構成するコンデンサは除かれて、出力端16504bと導体パターン16506bとを直接接続したビア導体16505bによって構成される。さらに、段間結合素子1615bは、導体パターン16506aと導体パターン16507とが誘電体16503を介して対向した構造、および、導体パターン16506bと導体パターン16507とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。
次に、図54、図55に示された左手系フィルタ1620の構造のうちどの構造が図50に示されたコンデンサ群1617に対応するかについて説明する。
図50に示されたコンデンサ1617aは、導体パターン16510aと接地導体16502とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。また、コンデンサ1617bは、導体パターン16510bと接地導体16502とが誘電体16503を介して対向した構造によって構成される。グランド群1618は、接地導体16502で構成される。なお、接地導体16501、16502は側面電極16522、16523で接続されていることが好ましい。
このような構成により、左手系共振器である第1セルの集合体1616aと第2セルの集合体1616bとが並列に接続されてなる左手系フィルタ1620を積層構造で実現できる。そして、左手系共振器に導体パターン16510aと接地導体16502とが誘電体16503を介して対向した構造であるコンデンサ1617aと、導体パターン16510bと接地導体16502とが誘電体16503を介して対向した構造であるコンデンサ1617bとを設けることによって、共振周波数のスロープを緩やかにすることができる。したがって、より少ない数の左手系共振器によって左手系フィルタを設計することが可能となり、左手系フィルタの小型化に適している。
なお、本実施の形態16では、入力結合素子1615a、出力結合素子1615cは図54、図55に示されるようにビア導体で直接接続するように表現した。しかし、これはそれぞれの容量が10pF以上となる、すなわち通過帯域において接地状態に見える場合である。よって、入力結合素子1615a、出力結合素子1615cが上記の値より小さい場合は実際にコンデンサを設けることが望ましい。
なお、図50に示される第1セルの集合体1616aの他端が、寄生成分としてのインダクタを介してグランドに接続されてもよい。また、第2セルの集合体1616bの他端が、寄生成分としてのインダクタを介してグランドに接続されてもよい。このような構成により、共振器は、左手系及び右手系の奇数次共振のみを励振する。これにより、共振器は、これまで不要波として存在していた偶数次(ここでは0次)の共振を励振しないため、通過帯域外の減衰特性が改善される。
本発明によれば、左手系共振器を通過する帯域幅を向上させることができ、左手系フィルタのフィルタ特性を向上させることができるという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
(実施の形態17)
図56は、本発明の実施の形態17に係る左手系共振器の等価回路図である。図56において、本実施の形態17における左手系共振器17100は、第1並列体17111と、1ポート端子17101および第1並列体17111に接続した第1直列体17121と、この第1直列体17121に接続したインダクタ17131と、インダクタ17131と接続した第2直列体17122と、第2直列体17122に接続した第2並列体17112と、第2並列体17112および第2直列体17122に接続した開放端17141と、を備える。
この共振器の特性を確認する方法としては、例えば、入力と出力の機能を持つ1ポート端子17101と、1ポート端子17101と電気的に接続した入出力結合素子17102と、入出力結合素子17102と接続した第1並列体17111に接続する方法が挙げられる。
第1並列体17111は、並列接続された第1コンデンサ17111Aおよび第1インダクタ17111Bと、を備える。第1コンデンサ17111Aおよび第1インダクタ17111Bは、一端が1ポート端子17101および第1直列体17121の一端に接続し、他端が接地される。
第1直列体17121は、直列接続された第2コンデンサ17121Aおよび第2インダクタ17121Bと、を備える。第2インダクタ17121Bは、一端が1ポート端子17101および第1並列体17111に接続され、他端が第2コンデンサ17121Aの一端に接続されている。また、第2コンデンサ17121Aの他端は、インダクタ17131の一端に接続されている。
第2並列体17112は、並列接続された第3コンデンサ17112Aおよび第3インダクタ17112Bと、を備える。第3コンデンサ17112Aおよび第3インダクタ17112Bは、一端が開放端17141および第2直列体17122の他端に接続し、他端が接地される。
第2直列体17122は、直列接続された第4コンデンサ17122Aおよび第4インダクタ17122Bと、を備える。第4コンデンサ17122Aは、一端がインダクタ17131の他端に接続され、他端が第4インダクタ17122Bの一端に接続されている。また、第4インダクタ17122Bの他端は、第2並列体17112の一端および開放端17141に接続されている。
第1直列体17121と第2直列体17122とは、容量結合ができるように、配置関係が調整される。すなわち、第1直列体17121と第2直列体17122との間隔が近づけられている。第1直列体17121と第2直列体17122とが所定の距離以下に近づくと、第1直列体17121と第2直列体17122とは容量結合する。ここで、少なくとも、第1直列体17121が有する第2コンデンサ17121Aと第2直列体17122が有する第4コンデンサ17122Aとが容量結合する。また、第1直列体17121が有する第2コンデンサ17121Aおよび第2インダクタ17121Bと、第2直列体17122が有する第4コンデンサ17122Aおよび第4インダクタ17122Bとが磁界結合してもよい。
これにより、第1並列体17111および第1直列体17121と、第2並列体17112と第2直列体17122とを異なる平面上に配置することが可能になるので、左手系共振器の小型化を図ることができる。
図57は、本発明の実施の形態17に係る左手系共振器の全体斜視図である。すなわち、左手系共振器17200を導体パターンと導体ビアの層ごとに分解した分解斜視図である。図57において、左手系共振器17200は、互いに対向するよう配置された第1のグランド電極17201、第2のグランド電極17202間が積層された誘電体17203で満たされた構造となっている。第1のグランド電極17201と第2のグランド電極17202は、図示しない側面電極によって接続され、等電位に保たれている。
第1のグランド電極17201と同一平面上には、第1のグランド電極17201と絶縁された端子17204が設けられている。この端子17204は、入力端と出力端の機能を果たす1ポート端子として用いられる。端子17204には、ビア導体17205を介して導体パターン17206が接続される。
この導体パターン17206と対向配置された導体パターン17207には、導体パターン17208が接続されている。導体パターン17208は、ビア導体17209を介して第1のグランド電極17201と接続されている。
導体パターン17207は、ビア導体17210を介して導体パターン17211および導体パターン17212と接続されている。また、導体パターン17207は、導体パターン17211と導体パターン17212との間に、導体パターン17211と導体パターン17212と対向配置されている。
さらに、導体パターン17213が、導体パターン17211と導体パターン17212との間に、導体パターン17211と導体パターン17212と対向配置されている。導体パターン17213は、ビア導体17214を介して導体パターン17215と接続されている。
この導体パターン17215は、導体パターン17216と導体パターン17217との間に、導体パターン17216と導体パターン17217と対向配置されている。導体パターン17216と導体パターン17217とは、ビア導体17218を介して接続されている。導体パターン17217は、導体パターン17212から絶縁され、導体パターン17212と対向配置されている。また、導体パターン17219は、ビア導体17218を介して導体パターン17216と導体パターン17217と接続されている。そして、導体パターン17219は、導体パターン17216と導体パターン17217との間に、導体パターン17216と導体パターン17217と対向配置されている。また、導体パターン17219には、導体パターン17220が接続されている。この導体パターン17220は、ビア導体17221を介して第2のグランド電極17202と接続されている。
図56に示された1ポート端子17101は、端子17204によって構成される。入出力結合素子17102は、対向配置され導体パターン17206および導体パターン17207によって構成される。開放端17141は、導体パターン17219の先端部分17222によって構成される。
図56に示された第1コンデンサ17111Aは、導体パターン17207と導体パターン17208に対向配置された第1のグランド電極17201、および、導体パターン17207と導体パターン17208に対向配置された第2のグランド電極17202によって構成される。また第1インダクタ17111Bは、導体パターン17207と導体パターン17208とビア導体17209の長さ成分とによって構成される。
図56に示された第2コンデンサ17121Aは、導体パターン17213に対向配置された導体パターン17211、および、導体パターン17213に対向配置された導体パターン17212によって構成される。また、第2インダクタ17121Bは、導体パターン17211と導体パターン17212の長さ成分によって構成される。
図56に示された第3コンデンサ17112Aは、導体パターン17219と導体パターン17220に対向配置された第1のグランド電極17201、および、導体パターン17219と導体パターン17220に対向配置された第2のグランド電極17202によって構成される。また、第3インダクタ17112Bは、導体パターン17219と導体パターン17220とビア導体17221の長さ成分とによって構成される。
図56に示された第4コンデンサ17122Aは、導体パターン17215に対向配置された導体パターン17217、および、導体パターン17215に対向配置された導体パターン17216によって構成される。また、第4インダクタ17122Bは、導体パターン17217と導体パターン17216の長さ成分によって構成される。
図56に示されたインダクタ17131は、ビア導体17214の長さ成分によって構成される。第2コンデンサ17121Aを構成する導体パターン17212と、第4コンデンサ17122Aを構成する導体パターン17217とを、誘電体17203を介して導体パターン17212と導体パターン17217の間隔を調整して積層することによって、導体パターン17212と導体パターン17217の容量結合量を制御することができる。
図58は本発明の実施の形態17に係る左手系共振器の共振特性図である。図58において、共振特性を示す曲線X、Y、Zに示されるように、導体パターン17212と導体パターン17217との間隔を離すにつれて曲線Xから曲線Yへ、さらに、曲線Yから曲線Zへとシフトする。言い換えると、図57に示された左手系共振器17200の構造の共振特性は、導体パターン17212と導体パターン17217との間隔を離すにつれて、高周波数帯域側にシフトする。
このような構造にすることにより、左手系共振器17200の面積を単純に従来の半分程度にすることができるだけでなく、導体パターン17212と導体パターン17217との容量結合によって波長の短縮効果が得られ、さらに左手系共振器17200の面積を小さくすることができる。したがって、左手系共振器17200の小型化が可能になる。
また、この左手系共振器17200を用いて平衡不平衡変換左手系フィルタを構成した場合、従来の平衡不平衡変換左手系フィルタに用いられている左手系共振器よりも左手系共振器の占有面積が狭くなるため、左手系フィルタの小型化が可能になる。また、この左手系フィルタを搭載した携帯電話等の電子機器は、高集積化により処理速度等の性能を向上させることができる。
なお、導体パターン17212と導体パターン17217とインダクタ17131の間隔を調整して積層し、導体パターン17212と導体パターン17217とインダクタ17131とを磁界結合させてもよい。この場合、さらに、波長の短縮効果が得られ、左手系共振器17200をさらに小型化することができる。
なお、本実施の形態17では、導体パターン17207から導体パターン17208を接続し、ビア導体17209と導体パターン17207との間隔をあけて、ビア導体17209を第1のグランド電極17201に接地した。しかし、導体パターン17208を設けず、導体パターン17207にビア導体17210を直接接続して第1のグランド電極17201に接地してもよい。この場合、信号の損失を抑えることができる。さらに、導体パターン17219から導体パターン17220を接続し、導体パターン17219とビア導体17221との間隔をあけて、ビア導体17221を第2のグランド電極17202に接地した。しかし、導体パターン17220を設けず、導体パターン17219にビア導体17221を直接接続して第2のグランド電極17202に接地してもよい。この場合も信号の損失を抑えることができる。
なお、本実施の形態17では、1ポート入力端子17101を用いたが、入力端と出力端とを別に設けてもよい。この場合、図57に示される左手系共振器17200には、第1のグランド電極17201と同一平面上に、第1のグランド電極17201と絶縁された入力端、出力端が設けられ、この入力端と出力端とには、導体パターン17207にそれぞれ対向配置された2つの導体パターンがそれぞれビア導体を介して接続される。
また、本実施の形態17では、第2コンデンサ17121Aを形成するために、導体パターン17213に対向配置された導体パターン17211、および、導体パターン17213に対向配置された導体パターン17212を用いた。しかし、導体パターン17213に対向配置された導体パターン17212のみを用いてもよい。さらに、第4コンデンサ17122Aを形成するために、導体パターン17215に対向配置された導体パターン17217、および、導体パターン17215に対向配置された導体パターン17216を用いた。しかし、導体パターン17215に対向配置された導体パターン17217のみを用いてもよい。これにより、さらなる小型化と、コスト削減が可能になる。
図59は本発明の実施の形態17に係る別の左手系共振器の全体斜視図である。図59において、導体パターン17213は、ビア導体17214を介して導体パターン17219と接続する。そして、導体パターン17219と接続した導体パターン17220は、ビア導体17221を介して第2のグランド電極17202と接続する。したがって、導体パターン17213は、第2のグランド電極17202と接続する。また、導体パターン17215は、他の導体パターンやビア導体から絶縁されている。なお、図56に示される開放端17141は、この導体パターン17215によって構成される。
本発明のフィルタは、小型化とフィルタに設定された規格のインピーダンスを得ることとの両立を図ることができるという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。