JP5386869B2 - 反応容器、反応装置と反応容器の閉塞方法 - Google Patents
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Description
このような小型の生体反応用器具として、マイクロタイタープレート等の多数の微少なウェルを有する反応容器が利用されている。生体反応では、同じ試料に対して複数の試薬や異種の試薬を作用させ、同時に分析することが通常行われている。このような場合、反応容器における複数のウェルにそれぞれ異なる試薬を入れておき、このウェルにサンプルを流路を通して導入する。そして、反応が開始する前に流路を閉塞することで反応容器の各ウェルを独立させ、所望の反応を各ウェル毎に行わせるようにしている。
このような反応容器として、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された反応容器では、変形可能なシールを有するウェルの集合体にサンプルを導入した後に、治具を用いてシールを永久変形させて流路を閉塞することで各ウェルを独立させて、ウェル毎に所望の反応を起こさせるサンプル処理装置が開示されている。
本発明によれば、本体と蓋体を閉じて弾性体を押圧することで弾性体を弾性変形させて反応室を液密に封止することができるから、他の反応室にサンプルが流入してコンタミネーションを起こすことを確実に防止することができて所望の反応を行うことができる。
なお、反応室は窪み形状のウェルでもよいし、単に試薬等を載置する平面等の面でもよく、いずれも含む。
また、反応室には反応試液の流路が接続されている。
この場合でも、本体と蓋体の閉塞によって弾性体を弾性変形させることで流路を液密に閉塞できて反応室の分離独立性を確保できる。
また、弾性体は疎水性であってもよく、サンプル等に含まれる水分の吸収を妨げて弾性体の弾性特性の劣化を抑制できる。
また、本体と蓋体の少なくともいずれかに反応試液の導入口または/及び空気抜きのための空気口を備えていてもよい。導入口から反応試液を導入して内部に残留する空気を空気口から排出できる。
加熱・冷却手段を用いて外部から反応容器を加熱することで、弾性変形した弾性体と両側の本体及び蓋体とのなじみを良好にして一層密着性を向上できる。また、加熱・冷却手段によって反応容器を加熱または冷却することで反応室での反応を促進できる。
本発明によれば、本体と蓋体を閉じて弾性体を押圧することで弾性体を弾性変形させて反応室を液密に封止でき、他の反応室にサンプル等が流入してコンタミネーションを起こすことを確実に防止できて所望の反応を行うことができる。しかも、弾性体を弾性変形させて流路を液密に閉塞することで反応室の独立性を確保できる。
まず、本発明の第一の実施の形態による反応容器について図1乃至図5により説明する。図1は反応容器の平面図と側面図、図2は図1の反応容器を開いた状態の説明図、図3は図1のA−A線部分断面図であって(a)は開いた状態、(b)は閉塞した状態の図、図4は加重部材に反応容器を載置した状態の斜視図、図5は加重部材で反応容器に荷重をかけて固定した押圧固定状態を示す斜視図である。
図1に示す反応容器1は、互いに積層された例えば略四角形板状の本体2及び蓋体3と、これら本体2及び蓋体3の間に挟持された弾性体としての弾性シート11とで構成されている。本体2と蓋体3とはその連結部がヒンジ部4を形成しており、本体2と蓋体3を各内面を内側にして開閉可能とされている。なお、本体2と蓋体3は連結されずに互いに分離していてもよい。
なお、反応容器1において本体2と蓋体3は便宜上の呼び名であり、本体2と蓋体3の構成または名称を互いに入れ替えてもよい。
各列のウェル6の両側には例えば本体2の裏面に貫通する導入口7と空気口8がそれぞれ形成されている。各列のウェル6において、導入口7から各ウェル6及び空気口8にかけて凹溝状の流路9が延びて接続されている。導入口7には、例えば図示しないマイクロポンプ、或いは手動式定量分注器(ピペットマン(R))や自動式定量分注器等の強制的な送液装置が挿入され、この送液装置によって導入口7から流路9及び各ウェル6に反応試液が導入される。2本の流路9、9はほぼ平行に配列されている。
空気口8では、ウェル6や流路9内の空気を外部に放出できるようになっている。
なお、図2に示す例では、ウェル6の各列毎に導入口7と空気口8が流路9の両端にそれぞれ形成されているが、2本の流路9を両端でそれぞれ合流させて各1つの導入口7,空気口8を設けて接続させてもよい。
また、透明な材料を利用する場合、ガラス、ジルコン等の無機材料、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の各種の樹脂材料を利用できる。
いずれにしても、本反応容器1で利用する試料や試薬やその反応に悪影響を与えない材料から適宜選択することができる。
本体2には、反応阻害性の低減や組み立て時の作業性等に必要なコーティング、表面改質、表面加工等を施すことができる。例えば、親水性や撥水性を持たせるためのコーティング剤の塗布やコーティング層の形成(コーティングフィルム等の貼り付けや表面加工等)を行うことや、接着剤、溶着層の形成(当該層の挟み込み、接着等)を含む。
なお、導入口7や空気口8は本体2の裏面に開口する構成に代えて側面に開口するように構成してもよい。
図に示す蓋体3では、本体2に設けた流路9、導入口7、空気口8は設けられていないが、これらを設けてもよく、その場合にヒンジ部4に対して略線対称に形成してもよい。
なお、本体2や蓋体3について異質の材料を用いるものとしてもよいし、同一材料を用いても良い。熱伝導率の向上を期待して一方を金属製としたり、反応を蛍光等の電磁波で測定するために透明な本体2及び/または蓋体3を使用することもできる。
弾性シート11の材質として、例えばシリコンゴム、フッ素樹脂ゴム、PDMS(ポリジメチルシロキサン:シリコン樹脂)等の適宜に弾性を備えた材料を選択することができる。しかも、弾性シート11は反応試薬と反応試液の反応に対して反応阻害がない材料を選択する必要がある。反応阻害のない適切な材料が得られない場合には、上述したように材料表面にコーティングしたり、表面加工や表面改質等を行うことで反応阻害のない所要の特性を確保する。
反応容器1の組み立てに際し、本体2のウェル6の開口を有する内面に弾性シート11を重ねて、各ウェル6に孔部12が重なるように載置する。このとき、弾性シート11は本体2の流路9に重ねて載置する。そして、蓋体3をヒンジ部4で折り返し、弾性シート11の上に重ねる。このとき、各ウェル6′が弾性シート11の各孔部12に重なるように閉鎖させる。
なお、反応容器1の一体化に際して、本体2、弾性シート11、蓋体3をそれぞれ互いに接着、溶着してもよいし、ピン等で固定してもよい。或いは弾性シート11を挟んで本体2と蓋体3を互いに接着等してもよい。
加重部材15は、ヒンジ部で開閉可能な台16と押さえ部材17とで構成されている。これら台16と押さえ部材17は反応容器1よりも縦及び横寸法が若干大きい板状に形成されている。図4に示す押さえ部材17は例えば略四角形平板に形成され、その内面には本体2または蓋体3の外面から外側に突出する各ウェル6、6′の湾曲突出部を収容する窓部18が形成されている。
また、台16も押さえ部材17と略同一形状を有しており、その内面から外面にかけて蓋体3または本体2のウェル6′、6の湾曲突出部を収容する貫通孔(または凹部)が形成されている(図示せず)。
なお、加重部材15において、加重を反応容器1にかける手段として、バネや流体圧によるもの、モータ等の動力源によるもの、或いはその併用によるもの等、適宜選択して設計することができる。加重は反応容器1の両側からかけても片側からかけてもよい。押さえ部材17は板状でも棒状でもよい。固定部材20は加重部材15の対向する側面にそれぞれ係合して固定してもよい。
加重部材15で加重をかけることで、図3(b)に示すように、反応容器1は弾性シート11が本体2と蓋体3との間で弾性変形させられ、各ウェル6,6′の周囲を液密に封止すると共にウェル6に連通する流路9も押さえ刃19によって弾性変形した弾性シート11で液密封止される。
先ず図2に示すように、反応容器1を開放した状態で、例えば本体2の各ウェル6内(蓋体3のウェル6′でもよい)に反応試薬を載置する。
反応試薬として、例えば酵素、緩衝液、蛍光剤、薬品、オリゴヌクレオチド等を用いることができる。また、反応試薬を載置したウェル6(またはウェル6′)内に固定するために、ワックスや樹脂等、温度変化に反応して液状に性状が変化する物質を更に投入することができる。或いは、反応試薬に粘性がある場合には、温度変化で性状が変化する物質に代えて、反応試薬自体の粘性を利用してウェル6内に固定保持することもできる。その他、光、圧力等の物理変化で性状が変化するものや、化学的、生物学的に性状が変化するものを利用してもよい。
次に、例えば本体2の裏面に開口した導入口7から反応試液を投入して、内部の流路9を通して各ウェル6(または6′)に供給する。なお、反応試薬は本体2と蓋体3を閉じる前に導入口7から供給させてもよい。反応試薬として、例えばヒトゲノムを含むサンプル溶液を用いるものとする。
そして、図4に示すように、加重部材15の台16上に、反応容器1を例えば本体2を上側に向けて載置させ、本体2に押さえ部材17を被せて所定の加重で押圧させる。この状態で加重部材15の台16と押さえ部材17との自由端部または自由端部及び対向する他端部を固定部材20で固定する。
また、反応容器1を加熱・冷却手段22で加熱することで、例えばワックスや樹脂等の物質を温度変化によって液状に変化させることができ、ウェル6、6′に収容された反応試薬と反応試液の主反応を促進させることができる。
また、反応容器1の温度測定や温度調整のために熱電対等の温度測定機構を備えるようにしてもよい。これらの温度調整や温度測定を行うために、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)や制御ソフト等を搭載したコンピュータを利用することもできる。
このように、反応容器1内の各ウェル6、6′は、加重部材15による所定の加重を受けて弾性変形した弾性シート11によって周囲を液密に封止される。そのため、主反応中に反応試薬や反応試液が隣接するウェル6,6′に拡散することを防止してコンタミネーションの発生を防止できる。
しかも、反応容器1のウェル6,6′の封止に際し、治具を用いて手動でシールを永久変形させて閉塞するものと比較して、加重部材15で反応容器1を挟持して固定部材20で所定の加重が反応容器1にかかった状態に保持できるから、確実で安定した閉塞と封止を達成できる。
図6及び図7は、本発明の第二実施形態による反応容器26を示すものである。
図6(a)、(b)には、反応容器26の本体27と蓋体28が開示されている。図6(a)において、例えば板状の本体27には中央に例えば断面略三角形で細長い凹溝30が形成され、凹溝30は板状の仕切り弾性材31によって複数、例えば三つのウェル32に仕切られており、その両側に反応試液を投入する導入口33と空気抜けの空気口34が配設され、それぞれ外部に連通している。
また、図6(b)に示す蓋体28は例えば略板状に形成されているが、本体27の凹溝30と略同様に凹部が形成されていてもよい。そして、蓋体28には凹溝30の各仕切り弾性材31と対向する位置に例えば蓋体28と同一材質からなる剛性の凸部36が突出して形成されている。
そして、図7に示すように、本体27と蓋体28を位置合わせして閉塞した状態で、凹溝30の各ウェル32は仕切り弾性材31が凸部36と圧接されて弾性変形することで液密に区画されることになる。なお、図6及び図7に示すように蓋体28には、本体27と閉塞させた状態で導入口33、空気口34に連通する貫通孔37a、37bが形成されている。これにより、反応容器26の本体26と蓋体28を閉じた状態で貫通孔37aから反応試液を導入することができ、反対側の貫通孔37bから空気を排出可能である。
全てのウェル32に反応試薬が満たされると、蓋体28で本体27を加圧して閉塞し、各ウェル32間は仕切り弾性材31と凸部36によって液密に区画される。
そして、この反応容器26を加重部材15で挟持して加圧状態にし、加熱・冷却手段22で加熱または冷却することで反応を促進させることができる。
本実施形態による反応容器26によっても各ウェル32間のコンタミネーションを防止できる。
本実施形態による反応容器38は第二実施形態による反応容器26とほぼ同一構成を備えており、相違点についてのみ説明する。
図8において、本体27の内面に形成した凹溝30の開口を仕切る稜線に沿ってパッキン状の弾性部材39が全周に取り付けられている。そのため、反応試薬と反応試液を本体27の各ウェル32に投入した状態で蓋体28で閉塞すると、凹溝30は弾性部材39で液密に封止されると共に各ウェル32は仕切り弾性材31によって液密に仕切られる。
また、第一実施形態において本体2にウェル6に連通する流路9を設けたが、流路9は本体2に代えて蓋体3のウェル6′に設けてもよく、或いは両方に設けてもよい。また、第二、第三実施形態による反応容器26、38に示すように流路9を全く設けなくてもよい。
また、弾性シート11、仕切り弾性材32、弾性部材39は弾性体を構成する。弾性体である弾性シート11は必ずしもシート状の部材にウェル6,6′の数に応じた孔部12を設けた構成に限定されるものではなく、弾性体の形状は任意であり、例えば第二、第三実施形態における弾性部材39と仕切り弾性材32等で示すように線状の弾性材を格子状に形成して弾性体を構成するようにしてもよい。また、ウェル32を全周に液密封止しなくてもよく、第二実施形態のように隣接するウェル32間を液密に仕切ることでコンタミネーションが生じないようにしてもよい。
また、図9は第二、第三実施形態に示す反応容器26,38の変形例を示すものである。第二、第三実施形態に示す反応容器26,38では、本体27に設けた凹溝30には複数のウェル32、…の両側に導入口33と空気口34を設けたが、変形例として図9に示すように、凹溝30の両側に導入口33及び空気口34に代えてウェル32、32を設けることでウェル数を増大させるようにしてもよい。この場合、反応試薬を貫通孔37aから各ウェル32に供給した後で、両側の貫通孔37a、37bを塞ぐ必要がある。
実施例は、本発明の第一実施形態による反応容器1に適用したものである。
反応容器1の各材質として、本体2はアルミニウム、蓋体3は透明なポリプロピレン、弾性シート11はシリコーンゴムで製造した。本体2と蓋体3は反応阻害を除去すると共に、閉塞した本体2と蓋体3を接着させるために厚さ70μmのポリプロピレン製のシーラント層を設けてレーザで溶着する。
この反応容器1の本体2には、ウェル6として反応試薬を保持するために深さ0.5mmの凹部(窪み)を形成した。反応試薬として、PCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)に使用するバッファ(緩衝液)、プライマー、酵素と、インベーダ反応(R)に使用する酵素、バッファ、蛍光標識等を含む。ウェル6内で反応試薬を被覆して固定する物質として、融点65℃程度のAmpliWax(アプライドバイオシステム社製)を用いた。反応試薬は、ヒトゲノムを含むサンプル溶液を採用した。
そして、加重部材15の台16に反応容器1を載置して押さえ部材17で挟んで、反応容器1の上下方向から10kgの荷重を加えて固定部材20で固定した。これによって、弾性シート11が弾性変形して各流路9と各ウェル6、6′を液密に封止し、各ウェル6、6′毎に個別に独立して閉塞した。加重部材15の外側に加熱・冷却手段22を配設して加熱する。
そして、PCR条件(即ち95℃で1分30秒、60℃で30秒、90℃で30秒とし、60℃、90℃でそれぞれ30回)でDNAの増幅を行った。その後、引き続いて温度を60℃に保ち、インベーダ反応を行い、蛍光強度を正しく測定することができた。そのため、反応容器1内のウェル6、6間でコンタミネーションが生じなかったことを確認できた。
2、27 本体
3、28 蓋体
6、6′、32 ウェル
7、33 導入口
9 流路
11 弾性シート
12 孔部
15 加重部材
16 台
17 押さえ部材
20 固定部材
22 加熱・冷却手段
31 仕切り弾性材
39 弾性部材
Claims (6)
- 互いに閉塞可能な本体と蓋体を有していて、これら本体と蓋体の少なくとも一方に反応試薬を設置する反応室を有していて、前記本体と蓋体の間に弾性体を介在させ、前記弾性体は反応室を囲うように配設されており、
前記本体、弾性体及び蓋体を重ねて、台と押さえ部材とを含む加重部材で加重をかけ、前記弾性体を弾性変形させて前記反応室の周囲を封止した状態で、前記台と押さえ部材とが固定部材で固定されると共に、
前記押さえ部材には、前記反応室を収容する窓部及び該窓部の両側で突出する押さえ刃が形成され、
前記反応室には反応試液の流路が接続され、
前記加重部材で加重をかけた状態で、前記押さえ刃によって弾性変形した前記弾性体で前記流路が封止されることを特徴とする反応容器。 - 前記弾性体は疎水性である請求項1に記載された反応容器。
- 前記本体と蓋体の少なくともいずれかに反応試液の導入口または/及び空気抜きのための空気口を備えた請求項1または2に記載された反応容器。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載された反応容器を加熱または冷却させる加熱・冷却手段を備えたことを特徴とする反応装置。
- 本体と蓋体の少なくとも一方に反応試薬を設置する反応室を有していて、前記反応室を囲うように弾性体が配設されており、前記弾性体を挟んで前記本体と蓋体を閉塞し、台と押さえ部材とを含む加重部材で加重をかけ、前記弾性体を弾性変形させることによって前記反応室を液密に封止した状態で、前記台と押さえ部材とを固定部材で固定すると共に、前記押さえ部材には、前記反応室を収容する窓部及び該窓部の両側で突出する押さえ刃を形成し、前記加重部材で加重をかけた状態で、前記押さえ刃によって弾性変形した前記弾性体で、前記反応室に接続した反応試液の流路を封止することを特徴とする反応容器の閉塞方法。
- 閉塞された前記反応容器を加熱または冷却させるようにした請求項5に記載された反応容器の閉塞方法。
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