JP5386767B2 - Lpgエンジンの空燃比制御方法及び空燃比制御装置 - Google Patents

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本発明は、液化石油ガス(以下「LPG」という)を燃料とするLPGエンジンの空燃比制御方法及び空燃比制御装置に関し、殊に、使用するLPGの組成を判定することにより、最適な燃料噴射量に調整して理論空燃比を実現するためのLPGエンジンの空燃比制御方法及び空燃比制御装置に関する。
従来の一般的なLPGエンジンにおいては、オートガス(プロパン20%、ブタン80%)を用いることを前提に空燃比制御や点火時期制御が行われているが、LPGは、製造者、製造した季節、製造ロット等により、その燃料成分(プロパンとブタンの組成比率等)が異なるのが一般的であり、LPGの燃料成分の違いはプロパンとブタンの発熱量及びオクタン価等が異なり、このことが原因で動力性能の低下や燃費の悪化に繋がることがある。
そこで、LPGエンジンにおいては、使用しているLPGの組成をその都度判定することが、燃料噴射時期・点火時期及び空燃比制御の最適化を図る観点から必要不可欠とされている。
そこで、例えば、特開平8−5596号公報には、混合割合の不明なガス燃料を使用する際に気体熱伝導式センサを使用し、主成分として炭素数4以下の炭化水素が既知の割合で混合された複数の基準混合ガスに対するセンサ出力と、その基準混合ガスの理論空燃比との関係指標を予め求めておくことにより、この指標に従って使用ガス燃料の理論空燃比を求めるとともに、求められた理論空燃比を基にしてエンジンの空燃比制御を実行するものとした技術が提案されている。
しかしながら、この公報に提示されている技術は、新たにセンサ類等の部品を追加して使用ガス燃料の組成を判定し判定結果に応じて的確な空燃比のフィードバック制御を実行するものであり、新たな部品を追加することからどうしてもコスト高となってしまうという問題がある。そのため、一般的なLPGエンジン車に標準的に搭載されている部品・装置を用いて、コストの高騰を伴うことなく使用LPGの組成を判定して良好な空燃比制御を実行できるようにする技術の開発が望まれていた。
特開平8−5596号公報
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、LPGエンジンについて、コストの高騰を伴うことなく使用するLPGの組成をその都度判定して、良好な空燃比制御を実行できるようにすることを課題とする。
本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、LPGエンジンの排気管に設けた排気性状検出手段により連続的に検出した排気ガスの特定の性状における検出信号を用いて空燃比制御装置がフィードバック制御により燃料噴射量を調整する空燃比制御方法において、前記空燃比制御装置が、前記排気性状検出手段からの出力信号に変化を生じさせ、この変化を基に所定の判定方法により現在使用しているLPGの燃料組成を判定して、その後の制御に反映させることを特徴とする。
LPGエンジンには、排気管に配置した酸素センサ等の排気性状検出手段による出力信号を基にしてLPGエンジンの空燃比制御方法。燃料噴射量を調整しながら空燃比のフィードバック制御を実行する空燃比制御装置が装備されているのが通常であるが、このように空燃比制御装置が意図的に操作を行なって排気性状検手段の出力信号を変化させることにより、その変化の内容からLPGの組成を判定することが可能となるため、新たに高価な部品を追加することなく、使用LPGの組成に応じて的確な空燃比制御を実行することができる。
この場合、前記排気性状検出手段を、前記LPGエンジンと三元触媒との間に配設される排気管に配置された酸素センサとして、前記空燃比制御装置が前記LPGエンジンの定常運転時に空燃比のフィードバック制御を停止し、その後、前記酸素センサの出力信号を観測し、その出力信号が予め設定した基準電圧の近傍であれば理論空燃比であると判断し、前記出力信号が予め設定した前記基準電圧よりも低い場合は空燃比を希薄側と判断して、吸入空気量を検知しながら前記出力信号が前記基準電圧に略一致するように燃料噴射量を調整して前記基準電圧にほぼ一致したときの燃料噴射量と吸入空気量から、所定の算出方法により使用LPGの理論空燃比を求め、その理論空燃比を基に所定の判定方法により使用LPGの燃料組成を判定することで、比較的簡易な手順で使用LPGの燃料組成が的確に判定できるようになる。この場合、判定した燃料組成を基に、予め設定した燃料組成とH/C比(原子比)の関係を示すマップ又は関係式を用いて使用LPGのH/C比を求めるものとすれば、さらに的確な制御が実行しやすいものとなる。
或いは、前記排気性状検出手段を、排気管における三元触媒の上流側及び下流側にそれぞれ配置した酸素センサとして、前記空燃比制御装置が前記LPGエンジンの定常運転時に空燃比フィードバック制御を停止し、その後、基本燃料噴射信号に所定の波形信号を重畳させることで空燃比変動を生じさせて前記三元触媒を活性化させ、さらに前記基本噴射量に所定の噴射量を加算又は減算する操作を繰り返すことにより、前記三元触媒の下流側の前記酸素センサの出力信号において燃料が完全燃焼するときの電圧値に停留する現象を生じさせて停留時間を計測し、前記停留時間を基に所定の判定方法により使用LPGの燃料組成を判定する手段も、上記手段と同様に的確に燃料組成を判定できるようになる。
或いはまた、前記排気性状検出手段を、排気管における三元触媒の下流側に配置した空燃比センサとして、前記空燃比制御装置が前記LPGエンジンの定常運転時に空燃比フィードバック制御を停止し、その後、基本燃料噴射信号に所定の波形信号を重畳させることで空燃比変動を生じさせて前記三元触媒を活性化させ、さらに基本噴射量に所定の噴射量を加算又は減算する操作を繰り返すことにより、前記三元触媒の下流側における前記空燃比センサの出力信号において燃料が完全燃焼するときに示す出力信号に停留する現象を生じさせて計測した停留時間を基に所定の判定方法により使用LPGの理論空燃比を算定し、その理論空燃比を基に予め設定した理論空燃比と燃料組成の関係を示すマップ又は関係式を用いて前記使用LPGの燃料組成を判定する手段としても、上記各手段と同様に的確に燃料組成を判定できるものとなる。この場合、判定した燃料組成を基に予め設定した燃料組成とH/C比の関係を示すマップまたは関係式を用いて使用LPGのH/Cを求めるようにすれば、さらに的確な制御が実行しやすいものとなる。
さらに、排気管に三元触媒及び排気性状検出手段を備えるエンジンシステムに配設され、排気性状検出手段を介して排気の状態を連続的に検知することによりフィードバック制御で燃料噴射量を調整するLPGエンジンの空燃比制御装置において、吸入空気量検知手段及び燃料噴射量調整手段を備えており、上述したLPGエンジンの空燃比制御方法を実施することを特徴とする、LPGエンジンの空燃比制御装置とすれば、これを一般的なLPGエンジンのシステムに搭載するだけで、新たに高価なセンサ類を追加することなく使用LPGの組成を的確に判定可能となり、良好な空燃比制御を容易に実行できるものとなる。
空燃比制御装置により意図的に操作を行なって排気性状検出手段の出力信号を変化させることで燃料組成を判定するものとした本発明によると、一般的なLPGエンジンに標準的に備えられている装置や部品によってコストの高騰を伴うことなく使用LPGの燃料組成を判定して、良好な空燃比制御を実行できるものである。
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。尚、本発明の空燃比制御方法を実施する空燃比制御装置は、三元触媒を備えた排気管に設けた排気性状検出手段を介して排気の状態を連続的に検知することでフィードバック制御により燃料噴射量を調整するLPGエンジンの空燃比制御装置であって、燃料組成判定装置を兼ねたものである。
本発明は、燃料が完全燃焼するときの吸気量と燃料噴射量の混合割合(理論空燃比)において、酸素センサ等の排気性状検出手段による出力信号が変化する特性、及び三元触媒に流入する排気ガスが燃料希薄域と燃料過濃域の間を変動するとき三元触媒を通過した排気ガスは理論空燃比に一定時間停留する特性に着目して、高価なセンサ類等の部品を追加することなく、LPGエンジンを搭載した車両の路上走行時等においてLPGの燃料組成を検出可能として、低コストで使用LPGの組成に応じて最適な空燃比制御を実行できるようにする手段を提供するものである。
図1(a)は本発明の第1の実施の形態を示すものであり、LPGエンジン1の排気管2に備えられたプレ三元触媒3のLPGエンジン1側に酸素センサである排気性状検出手段4とプレ三元触媒3の下流側にリヤ三元触媒5を配設し、前記排気性状検出手段4により連続的に検出した排気の状態をフィードバック制御によりLPGエンジン1の燃料噴射量を調整するものである。先ず、LPGエンジン1が例えば車両搭載エンジンの場合、比較的安定した定常走行時に空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を停止する操作を行う。
図2は理論空燃比(λ=1)近傍における酸素(O2)センサ出力(電圧V)を示すグラフであり、空燃比制御装置が、そのときの酸素センサの出力信号を検知・観測し、出力信号が予め設定した基準電圧(例えば0.45V)よりも高ければ排気ガスによる空燃比が過濃側であると判断する。同様に、出力信号がその基準電圧よりも低い場合には空燃比が希薄側であると判断する。一方、出力信号が基準電圧近傍であれば、理論空燃比であると判断する。
次に、空燃比制御装置は、吸入空気量を計測又は算出した上で、上記判断により排気ガスによる空燃比が過濃側であれば燃料噴射量を減量し、希薄側であれば増量して、酸素センサによる出力信号が予め設定した基準電圧の近傍となるように繰り返し燃料噴射量を調節する。
そして、この調節により定まった燃料噴射量とそのときの吸入空気量から、空燃比制御装置が使用LPGの理論空燃比を算出する。この算出した理論空燃比を、例えば予め設定した図3のグラフ(マップ等)またはグラフ右上に記載した関係式に当てはめることにより、空燃比制御装置は使用LPGの燃料組成を判定する。
さらに、空燃比制御装置はこの判定した燃料組成を基に、例えば予め定めた図3に示す燃料組成とH/C比の関係グラフ(マップ等)又はグラフ右上に記載した関係式に当てはめることにより、使用LPGのH/C比を求めることができる。空燃比制御装置がこのような手順を実行することで、使用するLPGの燃料組成に応じて良好な空燃比制御を実行できるようになるとともに、その他の制御も的確に行いやすいものとなる。
図1(b)は本発明の第2の実施の形態を示すものであり、排気管2のプレ三元触媒3の上流側と、前記プレ三元触媒3の下流側とリヤ三元触媒5の上流側の間に各々酸素センサからなる排気性状検出手段4A,4Bを配設したものである。先ず、LPGエンジン1が例えば車両搭載エンジンの場合、前記第1の実施と同様に比較的安定した定常走行時に空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を停止する操作を行う。
次に、空燃比制御装置は、基本燃料噴射信号に所定の波形信号を重畳させることにより空燃比を過濃側から希薄側あるいは希薄側から過濃側へと比較的大きな空燃比変動を発生させてプレ三元触媒3を活性化させ、その後、基本噴射量に所定の噴射量を加算又は減算する操作を行うことにより空燃比に過濃側から希薄側あるいは希薄側から過濃側へとステップ状の変動を発生させる。このとき、プレ三元触媒3の下流側とリヤ三元触媒5の上流側の間に取り付けた酸素センサである排気性状検出手段4Bの出力信号において燃料が完全燃焼するときに示す電圧値(理論空燃比における酸素センサの出力電圧)に停留する現象が生じることから、この停留時間を検知して計測する。
この停留時間は、使用するLPGのH/C比に依存する性質があるため、空燃比制御装置は理論空燃比における酸素センサ電圧の停留時間と燃料組成の関係等を基に使用LPGの燃料組成を判定する。そして、このような手順を実行することにより、空燃比制御装置は上記同様に使用LPGの燃料組成に応じて良好な空燃比制御を実行することができる。
図1(c)は本発明の第3の実施の形態を示すものであり、前記図1(b)に示した第2の実施形態におけるプレ三元触媒3の下流側とリヤ三元触媒5の上流側の間の酸素センサからなる排気性状検出手段4Cを空燃比センサとしたものである。先ず、LPGエンジン1が例えば車両搭載エンジンの場合、上記同様に比較的安定した定常走行時に空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を停止する操作を行う。
次に、空燃比制御装置は、基本燃料噴射信号に所定の波形信号を重畳させることにより空燃比を過濃側から希薄側あるいは希薄側から過濃側へと比較的大きな空燃比変動を発生させてプレ三元触媒3を活性化させ、その後、基本噴射量に所定の燃料噴射量を加算又は減算する操作を行うことにより空燃比に過濃側から希薄側あるいは希薄側から過濃側へとステップ状の変動を発生させる。このとき、プレ三元触媒3の下流側とリヤ三元触媒5の上流側の間に取り付けた空燃比センサである排気性状検出手段4Cの出力信号において、図5に示すような燃料が完全燃焼するときに示す出力信号に停留する現象が生じることから、この停留時間を検知して計測する。
この停留時間は、触媒層への酸化性物質あるいは還元性物質の吸着量に依存し、空燃比ステップ状変動の始点空燃比が理論空燃比に近づくほど短くなる性質があるため、空燃比制御装置は始点空燃比を徐々に変化させる操作を行い前記停留時間が0秒となる始点空燃比を探索し、そのときの始点空燃比を使用LPGの理論空燃比として判定する。そして、この理論空燃比を例えば予め設定した図2の理論空燃比と燃料組成の関係グラフ(マップ等)またはグラフ右上の関係式に当てはめることにより、空燃比制御装置は使用LPGの燃料組成を判定する。
さらに、空燃比制御装置は、その燃料組成を予め設定した例えば図4の燃料組成とH/C比の関係グラフ(マップ等)又はグラフ右上の関係式に当てはめることにより、使用LPGのH/C比を求めることができる。このような手順を実行することにより、空燃比制御装置は上記同様に使用するLPGの燃料組成に応じて良好な空燃比制御を実行することができる。
上述した3つの実施の形態は、一般的なLPGエンジンのシステムに標準的に搭載されている装置や部品を用いてほぼ実施することができ(第2の実施の形態は酸素センサが2つ必要)、空燃比制御装置である電子制御ユニットにおけるソフト面のみの変更でほぼ済むことから、新たに高価な部品を追加する必要がないため、比較的低コストで使用LPGの燃料組成に的確に対応して優れた空燃比制御を実行することができる。
さらに、図6のLPG燃料組成検出フローに示すように、第1の実施の形態と第2の実施の形態、あるいは第1の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせることによって、より燃料組成検出の精度を上げることができる。
以上、述べたようにLPGエンジンについて、本発明により、コストの高騰を伴うことなく使用するLPGの組成を的確に判定して、良好な空燃比制御を実行することができる。
本発明の実施の形態を示す説明図であり、(a)は第1の実施の形態を、(b)は第2の実施の形態を、(c)は第3の実施の形態を示す説明図。 理論空燃比(λ=1)近傍におけるO2センサ出力信号のグラフ。 理論空燃比と燃料組成の関係を示すグラフ。 燃料組成とH/C比の関係を示すグラフ。 図1(c)の第3の実施の形態での空燃比ステップ変動時における触媒後空 燃比センサ電圧の停留現象を示す説明図。 LPG燃料組成検出手順の一例を示す説明図。
1 LPGエンジン、 2 排気管、 3 プレ三元触媒、 5 リヤ三元触媒、 4
,4A,4B,4C 排気性状検出手段

Claims (2)

  1. LPGエンジンの排気管に設けた排気性状検出手段により連続的に検出した排気ガスの特定の性状における検出信号を用いて空燃比制御装置がフィードバック制御により燃料噴射量を調整する空燃比制御方法において、前記空燃比制御装置が、前記排気性状検出手段からの出力信号に変化を生じさせ、この変化を基に所定の判定方法により現在使用しているLPGの燃料組成を判定して、その後の制御に反映させるLPGエンジンの空燃比制御方法において、前記排気性状検出手段が、排気管における三元触媒の上流側及び下流側にそれぞれ配置した酸素センサであり、前記空燃比制御装置が前記LPGエンジンの定常運転時に空燃比フィードバック制御を停止し、その後、基本燃料噴射信号に所定の波形信号を重畳させることで空燃比変動を生じさせて前記三元触媒を活性化させ、さらに前記基本噴射量に所定の噴射量を加算又は減算する操作を繰り返すことにより、前記三元触媒の下流側の前記酸素センサの出力信号において燃料が完全燃焼するときの電圧値に停留する現象を生じさせて停留時間を計測し、前記停留時間を基に所定の判定方法により使用LPGの燃料組成を判定することを特徴とするLPGエンジンの空燃比制御方法。
  2. 前記排気管に前記三元触媒及び前記酸素センサを備えるエンジンシステムに配設され、前記酸素センサを介して排気の状態を連続的に検知することによりフィードバック制御で燃料噴射量を調整するLPGエンジンの空燃比制御装置において、吸入空気量検知手段及び燃料噴射量調整手段を備えており、請求項1に記載したLPGエンジンの空燃比制御方法を実施する、ことを特徴とするLPGエンジンの空燃比制御装置。
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