上記の特許文献1に開示されている式(1)の評価指標に基づいて車体の傾斜角目標値を決定すると、次のような問題が発生する。
第1に、式(1)に示された評価関数F(φ(t))の変数には傾斜制御装置やアクチュエータ特性を含む車両ダイナミクス(動力学)が考慮されていないので、鉄道車両の走行時に当該評価関数に基づいて得られた目標値が用いられたとしても、必ずしも乗り心地を満足するような車体の傾斜角制御が実現できるとは限らない。特に、空気バネや空気圧シリンダ等の如く、応答が遅く、かつアクチュエータの操作部の変位量に比例した操作量の可変範囲に制限のあるアクチュエータが用いられた鉄道車両の場合、当該アクチュエータの遅い応答が傾斜角制御において支配的になるので、乗り心地が著しく悪化する可能性がある。
第2に、式(1)に示された評価関数に対して上記の操作量に関する制約条件が何ら規定されていないので、上記のアクチュエータにとって非現実的な目標値が決定される可能性がある。特に、空気バネや空気圧シリンダ等の如く、応答が遅く、かつアクチュエータの操作部の変位量に比例した操作量の可変範囲に制限を有したアクチュエータが用いられた鉄道車両の場合、当該アクチュエータの能力を超える目標値が決定された場合(例えば、空気バネに対して当該空気バネの能力を超える空気量を消費した場合)、安全性確保のために鉄道車両を徐行させる等の処置をとる必要があり、問題となる。
一方、上記の特許文献2に開示されている式(6)の評価関数を用いて車体の傾斜角の目標値を決定すると、操作量に対する制約を考慮することはできるが、走行速度や線路形状に応じて式(6)中の重みh1,α,ωn1,h2,β,ωn2を適宜調整する必要が生じるので、最良な解を得るための設計が困難であるという問題がある。
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、の両方を考慮に入れた車体の傾斜角目標値を決定することである。
上記課題を解決するための本発明の傾斜制御装置の製造方法は、台車と、当該台車上に設けられた車体と、当該台車と当該車体との間に設けられ、かつ当該車体を当該台車に対して傾斜させるアクチュエータを備えた車体傾斜機構と、当該車体の傾斜角を検出するセンサとを備える車体傾斜車両の傾斜制御装置の製造方法であって、前記車体の傾斜角を設計変数とし、かつ前記車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標又は前記アクチュエータの出力を決める操作量のうち一方を制約条件にするとともに他方を評価関数とし、当該制約条件を満たす当該設計変数の解空間の中から当該評価関数に従った最適解を探索する制約条件付き最適化問題を予め定式化しておき、所定のアルゴリズムにより前記制約条件付き最適化問題を解くことで得られた前記評価関数に従った最適解を傾斜角目標値として決定するステップと、記憶部と演算部とを備えた傾斜制御装置の当該記憶部に、前記決定した傾斜角目標値を前記車体傾斜車両の走行予定線路情報と関連付けて記憶させるステップと、を含み、前記傾斜制御装置は、前記演算部が前記記憶部に前記走行予定線路情報と関連付けて記憶された前記傾斜角目標値と前記センサにおいて検出された傾斜角検出値とに基づいて、前記走行予定線路において当該傾斜角検出値が当該傾斜角目標値に近づくように前記アクチュエータに前記操作量を出力するよう構成されている、ものである。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、の両方を考慮に入れた車体の傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記指標は、乗客の乗り心地を表した指標である、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、車体の揺れに伴い乗客が感受する乗り心地を表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、の両方を考慮に入れた車体の傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式のとおり表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記制約条件が0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、乗り心地を満たした上で、最低限の操作量を実現するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式のとおり表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記制約条件が0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、アクチュエータの仕様による操作量の制約を満たした上で、最良の乗り心地を実現するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記指標は、乗客の乗り物酔いを表した指標である、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、車体の揺れに伴い乗客が感受する乗り物酔いを表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、の両方を考慮に入れた車体の傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式のとおり表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記制約条件が0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、乗り物酔いの発生を抑制した上で、最低限の操作量を実現するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式のとおり表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記制約条件が0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、アクチュエータの仕様による操作量の制約を満たした上で、乗り物酔いを最大限抑制するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記指標は、乗客の乗り心地と乗り物酔いの両方を表した指標である、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、車体の揺れに伴い乗客が感受する乗り心地を表した指標と、車体の揺れに伴い乗客が感受する乗り物酔いを表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、を考慮に入れた車体の傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式の2つで表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記2つの制約条件が両方とも0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、乗り物酔いの発生と乗り心地の悪化を抑制した上で、最低限の操作量を実現するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式の2つで表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記2つの制約条件が両方とも0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、アクチュエータの仕様による操作量の制約と乗り心地を満たした上で、乗り物酔いを最大限抑制するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記制約条件は、次式の2つで表され、
前記評価関数は、次式のとおり表され、
前記制約条件付き最適化問題は、前記2つの制約条件が両方とも0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で前記評価関数が最小となる当該傾斜角目標値φr(t)を探索することを定式化したものである、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、アクチュエータの仕様による操作量の制約と乗り物酔いを満たした上で、乗り心地を最大限抑制するような傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記傾斜制御装置は、所定時間内に前記車体傾斜車両が走行する走行予定区間毎の走行予定線路情報及び走行予定速度情報を予め記憶しておき、前記記憶した走行予定線路情報及び走行予定速度情報が入力された前記傾斜制御装置や前記アクチュエータの特性を含む車両ダイナミクスの運動方程式を解くステップを含み、前記指標は、前記車両ダイナミクスの運動方程式を解いて得られる変数の値を用いて表される、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記車両ダイナミクスの運動方程式は、次式のとおり表される、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、に加えて、アクチュエータを含む車両ダイナミクスを考慮に入れて、傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を製造することができる。
上記の傾斜制御装置の製造方法において、前記設計変数は、アクチュエータへの操作量である、としてもよい。
上記の傾斜制御装置の製造方法によれば、車体の傾斜角を検出するためのセンサが必要なく、制約条件付き最適化問題を解くことで得られた評価関数に従った最適解をアクチュエータの操作量として直接出力し、フィードフォワード制御を行なうことができる。
また、上記課題を解決するための車体傾斜車両の傾斜制御方法は、台車と、当該台車上に設けられた車体と、当該台車と当該車体との間に設けられ、かつ当該車体を当該台車に対して傾斜させるアクチュエータを備えた車体傾斜機構と、当該車体の傾斜角を検出するセンサと、当該車体傾斜機構を制御する傾斜制御装置と、を備えた車体傾斜車両の傾斜制御方法において、前記傾斜制御装置は、前記車体の傾斜角を設計変数とし、かつ前記車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標又は前記アクチュエータの出力を決める操作量のうち一方を制約条件にするとともに他方を評価関数とし、当該制約条件を満たす当該設計変数の解空間の中から当該評価関数に従った最適解を探索する制約条件付き最適化問題を予め定式化しておき、所定のアルゴリズムにより前記制約条件付き最適化問題を解くことで得られた前記評価関数に従った最適解を傾斜角目標値として決定するステップと、前記決定した傾斜角目標値と前記センサにおいて検出された傾斜角検出値と基づいて、当該傾斜角検出値が当該傾斜角目標値に近づくように前記アクチュエータに前記操作量を出力するステップと、を遂行する、ものである。
また、上記課題を解決するための制御プログラムは、台車と、当該台車上に設けられた車体と、当該台車と当該車体との間に設けられ、かつ当該車体を当該台車に対して傾斜させるアクチュエータを備えた車体傾斜機構と、当該車体の傾斜角を検出するセンサと、当該車体傾斜機構を制御する傾斜制御装置としてのコンピュータと、を有した車体傾斜車両の車体傾斜角を制御するための制御プログラムであって、前記コンピュータに、前記車体の傾斜角を設計変数とし、かつ前記車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標又は前記アクチュエータの出力を決める操作量のうち一方を制約条件にするとともに他方を評価関数とし、当該制約条件を満たす当該設計変数の解空間の中から当該評価関数に従った最適解を探索する制約条件付き最適化問題を予め定式化しておき、所定のアルゴリズムにより前記制約条件付き最適化問題を解くことで得られた前記評価関数に従った最適解を傾斜角目標値として決定するステップと、前記決定した傾斜角目標値と前記センサにおいて検出された傾斜角検出値とに基づいて、当該傾斜角検出値が当該傾斜角目標値に近づくように前記アクチュエータに前記操作量を出力するステップと、を遂行させるものである。
本発明によれば、車体の揺れに伴い乗客が感受する体感を表した指標と、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの出力を決める操作量と、の両方を考慮に入れた車体の傾斜角目標値を決定可能な車体傾斜車両の傾斜制御装置を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[鉄道車両の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る空気バネ車体傾斜と振子傾斜とを組み合わせた車体傾斜鉄道車両(車体傾斜車両)の概略構成を模式的に示した図である。
図1に示される鉄道車両1は、台車2と、振子装置3と、アクチュエータ4と、車体10と、を有する。なお、振子装置3と、アクチュエータ4と、車体10に搭載される作動媒体供給装置41とは、本発明に係る「車体傾斜機構」に対応したものである。
台車2は、2つの車輪20を連結した車軸21を複数有しており、線路上を同図中に示される進行方向X(図1の紙面表から紙面裏への方向)に走行する。車軸21の上部かつ左右1対に軸ばね22が配設されている。軸ばね22は、車軸21の振動を緩和させた状態で台車枠23を支持するように構成されている。台車枠23の上には車体10が配設されている。車体10は、振子装置3によって同図中に示される左右方向Y(図1の紙面横方向)に傾斜可能な状態となっている。
振子装置3は、コロ30と、振子梁31とを有する。
コロ30は、台車枠23の上に左右一対に配設されている。コロ30は、振子梁31を支持するとともに、進行方向Xを法線方向とする平面内で回転可能であり、つまり振子梁31を台車2に対して左右方向Yに傾斜させることが可能なように構成されている。
振子梁31は、コロ30の上に配設されており、かつ車体10を支持する略半円柱状の部材である。詳述すると、振子梁31は、その曲面部が下側となり、当該曲面部において下方に存するコロ30と当接している。よって、コロ30が回転すると、振子梁31は左右方向Yに傾斜する。
アクチュエータ4は、振子梁31と車体10との間に配設されており、進行方向Xを法線方向とする平面内において振子梁31に対して車体10を傾斜させる。本実施の形態では、アクチュエータ4として、空気ばねが用いられている。空気ばねは、振子梁31と車体10との間に左右一対に介在しており、左右の空気ばねの高さに差を持たせることで車体10の傾斜角を調整するように構成されている。なお、空気ばね以外に、振子梁31を直接駆動するために、空気圧シリンダ、油圧式シリンダ等が用いられてもよい。
車体10は、作動媒体供給装置41と、傾斜制御装置42と、センサ43と、を有する。
作動媒体供給装置41は、アクチュエータ4にアクチュエータ4の作動媒体を供給する装置であり、例えば、作動媒体を貯蔵するタンクと、当該タンクからアクチュエータ4を連結する配管と、当該配管の所定位置に設けられた弁と、により構成されている。本実施の形態では、アクチュエータ4として空気ばねが用いられているので、作動媒体供給装置41は、空気ばねの内部の作動媒体、つまり空気を移動させて空気ばねをそれぞれ膨張・収縮させる。この結果、振子梁31に対して車体10を左右方向Yに傾斜させることができる。
傾斜制御装置42は、演算部と記憶部とを有し、本実施の形態では、例えば、オフライン時において、走行予定区間毎の線路形状に関する走行予定線路情報及び当該走行予定区間毎の走行予定速度に基づいて、アクチュエータ4に対する傾斜角目標値をそれぞれ決定して、これらの決定した傾斜角目標値を鉄道車両1の走行予定線路情報と関連付けて上記記憶部に記憶させるように構成されている。さらに、傾斜制御装置42は、鉄道車両1の現実の走行時(オンライン時)に、上記演算部が上記記憶部に走行予定線路情報と関連付けて記憶された傾斜角目標値とセンサ43において検出された検出値より得られる傾斜角検出値とに基づいて、走行予定線路において当該傾斜角検出値が当該傾斜角目標値に近づくようにアクチュエータ4にそれぞれ操作量を出力するよう構成されている。このように、傾斜角目標値を決定してこれを記憶部に記憶するように構成したのは、現実に入手可能な傾斜制御装置42(コンピュータで構成される)の演算速度では、リアルタイムで傾斜角目標値を得る演算(後述する)を遂行することが困難であるからである。従って、十分高速な演算速度を有する傾斜制御装置42が入手可能であれば、リアルタイムで傾斜角目標値を演算して決定し、この決定した傾斜角目標値を用いて車体10の傾斜角をフィードバック制御してもよい。なお、本実施の形態のように、オフラインで、傾斜角目標値を決定してこれを記憶部に記憶する場合には、この工程が傾斜角制御装置42の製造方法における最終的な製造工程に相当することとなる。よって、以下ではこの工程のことを傾斜角制御装置42の製造方法という。また、傾斜角目標値を他のコンピュータで演算して決定し、これを傾斜角制御装置42の記憶部に記憶してもよい。さらに、以下では、傾斜制御装置42は、本実施の形態の製造方法に従って製造された後に車体10の内部に搭載されるものとして説明するが、その他に遠方の中央監視室に配置されるものであってもよい。なお、中央監視室に配置される場合には、車体10の傾斜角制御は遠隔監視制御方式が採用され、当該方式に従った通信手段が車体10内に設けられる。
センサ43は、例えば車体10の下面に配設されており、車体10の左右加速度、左右加速度の時間変化率、振子梁31に対する車体10の左右方向Yの傾斜角、傾斜角速度、傾斜角速度の時間変化率、台車枠23に対する車体10の左右方向Yの傾斜角、傾斜角速度、傾斜角速度の時間変化率等を検出する。本実施の形態では、センサ43として、空気ばね高さ検出器又は車体ロール角検出器と、が用いられている。
[傾斜制御装置の構成]
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る傾斜制御装置の機能ブロックの構成を示した図である。
図2に示される傾斜制御装置42は、運転データベース421と、傾斜角目標値決定手段422と、制御手段423とを有する。
運転データベース421は、鉄道車両1が走行すべき走行予定区間毎の線路の形状に関する走行予定線路情報(η、ρ)や当該走行予定区間毎の走行速度に関する走行予定速度情報(V)を格納するデータベースである。ここで、走行予定線路とは、ある時刻t0から所定時間T0経過後の時刻t1までの間に鉄道車両1が走行すべき走行予定区間の線路のことである。運転データベース421は、かかる走行予定線路情報(η、ρ)として、次の式(7)の走行予定線路のカントC(t)及びその時間変化率(一階微分値、二階微分値)と、次の式(8)の走行予定線路の曲線半径R(t)及びその時間変化率(一階微分値)と、を格納している。なお、運転データベース421は、傾斜制御装置42の内部に設けられてもよいし、その外部に設けられても良い。
傾斜角目標値決定手段422は、運転データベース421に格納されている走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、走行予定区間を走行する前に、振子梁31に対する車体10の傾斜角目標値を決定するとともに、制御手段423において設定するように構成されている。
制御手段423は、傾斜角目標値決定手段422により設定された傾斜角目標値と、センサ43により検出された振子梁31に対する車体10の傾斜角検出値(例えば、左右の空気ばねの高さの偏差)と、の偏差に基づいて、当該傾斜角検出値が当該傾斜角目標値に近づくように、アクチュエータ4をフィードバック制御するものである。なお、制御手段423は、上記の偏差に応じた操作量を作動媒体供給装置41に供給する。ここで、操作量とは、アクチュエータ4の出力を決定する量のことであり、本実施の形態の場合、空気ばねの空気消費量、空気流量(吸入量)、作動媒体供給装置41の空気蓄積量などに該当する。
なお、傾斜制御装置42は、上記のとおり演算部と記憶部とを有して構成される。上記演算部は例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成され、上記記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等によって構成される。また、運転データベース421は、例えば、上記ROMに格納されるテーブル又は補助記憶装置として実施される。さらに、傾斜角目標値決定手段422と、制御手段423とは、上記CPUが実行する上記ROMに格納された制御プログラムによって実現される。なお、傾斜制御装置42は、一のCPUによる集中型の構成としてもよいし、複数のCPUによる分散型の構成としてもよい。
[乗り心地を満たしつつ操作量を最小化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第1の実施の形態に係る傾斜制御装置の製造方法の工程として、乗り心地を満たした上で、空気ばねの空気消費量などの操作量を最小化するような傾斜角目標値を生成する方法について図3を用いて説明する。なお、図3は、かかる傾斜角目標値の決定方法を説明するためのフローチャートである。
まず、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)が読み出され、これらの情報に基づいて次式の車両ダイナミクス(運動力学)の運動方程式が定義される(ステップ:S301)。
なお、x(t)は時刻tにおける鉄道車両1の状態変数ベクトルを表している。式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって、次の車体10に関する各変数の値が求められる(ステップ:S302)。
つぎに、乗り心地に関する制約条件H(φr(t))として、例えば、特許文献1に開示された評価関数F(φ(t))に式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことで得られた変数を当てはめることで、次式のとおり定義する。
なお、φr(t)は時刻tにおける傾斜角目標値を、αは乗り心地レベルを、a,b,c,d,eは係数をそれぞれ表している。
つぎに、操作量に関する評価関数Jc(φr(t))として、例えば、空気ばねの空気消費量を表した次式を定義する。
なお、u+(φr(t), θ(t))は空気ばねの正の空気流量(吸入量)を表している。
つぎに、式(11)の制約条件H(φr(t))と式(12)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(13)は、制約条件H(φr)が0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(t))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を表している。この式(13)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等の最適化アルゴリズムを用いて解探索することにより、傾斜角目標値φr(t)が求められる(ステップS303)。傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、空気消費量の上限を満たした上で、乗客にとって可能な限り良好な乗り心地を実現することができる。
ところで、式(11)において、係数(a,b,c,d,e)は特許文献1に開示された数値(例えば、立位状態の場合:0.6,0.3,0.03,0.12,0.5、座位状態の場合:0.4,0.4,0.02,0.04,0.8)を流用すればよく、乗り心地レベルαは同様に特許文献1に開示された「2未満(全く問題ない乗り心地)」を採用すればよい。このため、式(12)の評価関数Jc(φr(t))は、空気流量のみの関数となっているので、式(6)のh1,α,ωn1,h2,β,ωn2のように、走行条件等に応じた重みの調整を行う必要がないので、傾斜制御装置の設計が容易であるという利点も奏する。
[操作量の制約を満たしつつ乗り心地を最適化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第1の実施の形態に係るその他の傾斜制御装置の製造方法の工程として、空気ばねの空気消費量などの操作量に関する制約を満たしつつ、乗り心地を最良化するような傾斜角目標値(ここでは、第2傾斜角目標値)を生成する方法について図4を用いて説明する。なお、図4は、かかる傾斜角目標値の決定方法を説明するためのフローチャートである。
まず、上記の乗り心地を満たしつつ操作量を最小化する場合と同様に、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、式(9)の車両ダイナミクス(運動力学)が定義されるとともに(ステップ:S401)、式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって車体10に関する5つの変数の値が求められる(ステップS402)。
つぎに、操作量に関する制約条件H(φr)として、例えば空気ばねの空気消費量が上限値未満に制限されることを次式のとおり表する。
ここで、βは空気ばねの空気消費量の上限を表している。つぎに、評価関数Jc(φr(t))として、例えば特許文献1に開示された評価関数F(φ(t))に式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことで得られた変数を当てはめることにより、次式のとおり定義する。
そして、式(14)の制約条件H(φr(t))と式(15)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(16)は、制約条件H(φr(t))が0未満となる傾斜角目標値φrの解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(0))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を意味している。この式(16)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等のアルゴリズムを用いて解探索することにより、傾斜角目標値φr(t)が求められる(ステップ:S403)。傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、空気消費量の上限を満たした上で、乗客にとって可能な限り良好な乗り心地を実現することができる。
ところで、式(14)の変数βは空気ばねの仕様から定めることができ、さらに式(14)の係数(a,b,c,d,e)は特許文献1に開示された数値(例えば、立位の場合:0.6,0.3,0.03,0.12,0.5、座位の場合:0.4,0.4,0.02,0.04,0.8)を流用すればよい。このため、走行条件等に応じた重み係数の調整を行う必要がないので、設計が容易であるという利点も奏する。
[シミュレーション結果]
本出願人は、本発明の第1の実施の形態に係るシミュレーションを行なった。なお、本シミュレーションにおいて、乗り心地の評価指標としては、特許文献1に開示されている立位状態の場合の係数a〜eを用いた評価指標Jc(φr(t))を採用し、操作量は空気ばねの空気消費量を採用した。表1はそのシミュレーション結果を纏めた表である。
表1に示される結果1は、空気消費量を考慮せずに(制約条件とはせずに)乗り心地に関する評価関数を最適化した結果を表している。結果2は、式(11)により表された乗り心地に関する制約条件H(φr(t))と、式(12)により表された空気消費量に関する評価関数Jc(φr(t))と、を用いた式(13)の制約条件付き最適化問題のシミュレーション結果を表している。なお、乗り心地に関する制約条件H(φr(t))の値として、乗り心地レベルαを、特許文献1において全く問題ないとされる「2」未満に設定した。結果3は、式(14)により表された空気消費量に関する制約条件H(φr(t))と、式(15)により表された乗り心地に関する評価関数Jc(φr(t))と、を用いた式(16)の制約条件付き最適化問題のシミュレーション結果を表している。なお、空気消費量に関する制約条件の値として、空気ばねの空気消費量の上限βは、空気ばねの仕様に基づいて定められるが、ここでは比較を容易にするために、結果1及び結果2それぞれの空気消費量の略中間値に定めた。
図5は、表1に示される結果1乃至3における主要変数の時間変化を示した図である。なお、図5(a)は、ある線路の曲率を示しており、図5(b)〜(e)は、図5(a)に示した線路についての走行シミュレーションを実施したときの、車体のロール角速度(θ(t)の一階微分)、車体のロール角加速度(θ(t)の二階微分)、車体の左右加速度(y(t)の二階微分)、車体の左右加速度の変化率(y(t)の三次微分)の各時間変化である。図5(f)は、結果3における制約条件の値を100(%)とした割合によって表された空気消費量u(t)の時間変化である。
表1及び図5によれば、結果1の場合には最良の乗り心地となるように傾斜制御が行われているが、空気消費量は大きい結果となることが分かる。一方、結果2の場合には、乗り心地の制約条件として乗り心地レベルαが「2」未満となることを満たした上で、空気消費量u(t)が最小となるように傾斜制御が行われていることが分かる。また、結果3の場合には、空気消費量u(t)が100(%)未満であるという空気消費量に関する制約条件を満たした上で、乗り心地がより向上するように傾斜制御が行われていることが分かる。従って、本出願人は、本シミュレーション結果により、本発明の第1の実施の形態の有効性を定量的かつ定性的に確認することができた。
(第2の実施の形態)
[乗り物酔いについて]
車両がカーブに入る前から車体を傾斜し始め、カーブが終了しても直ぐに水平に戻さずに徐々に車体の傾斜を戻すように制御すると、乗り心地が良い反面、乗り物に酔い易い乗客にとっては、車体が傾斜している時間が長く、その結果乗り物酔いが引き起こされる可能性がある。このため、車両の傾斜角制御に際し、乗り心地の面よりも乗り物酔いの面について最適化した方が良い場合がある。
そこで、本発明の第2の実施の形態は、乗り物酔いを考慮したものであり、本発明の第1の実施の形態において「乗り心地」を「乗り物酔い」に代えたものである。なお、乗り物酔いの評価指標としては、例えば特開2008−265692号公報に開示されたyf(t)等を採用することができる。
以下では、本発明の第2の実施の形態の説明として、車体傾斜鉄道車両の構成及び傾斜制御装置の構成については本発明の第1の実施の形態と同一であるので、それらの説明を省略し、2通りの傾斜制御装置の製造方法について説明する。
[乗り物酔いを抑えつつ操作量を最小化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第2の実施の形態に係る傾斜制御装置の製造方法の工程として、乗客の乗り物酔いを抑えた上で、空気ばねの空気消費量などの操作量を最小化するような傾斜角目標値を生成する方法について説明する。
まず、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、式(9)の車両ダイナミクス(動力学)の運動方程式が定義されるとともに、式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって、車体10に関する5つの変数の値が求められる。
つぎに、乗り物酔いに関する制約条件Hとして、例えば、上記のとおり特開2008−265692号公報に開示された評価関数yf(t)に上記の変数を当てはめることにより、次式のとおり定義する。
ここで、h(t)はローパスフィルタの特性を示した関数を、γは乗り物酔いレベルをそれぞれ表している。つぎに、操作量に関する評価関数Jc(φr(t))として、例えば空気ばねの所定時間内における空気消費量を意味する次式を定義する。
つぎに、式(17)の制約条件H(φr(t))と式(18)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(19)は、制約条件H(φr)が0未満となる傾斜角目標値φr(t)の解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(t))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を意味している。この式(19)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等のアルゴリズムを用いて解くことで、傾斜角目標値φr(t)が求められる。そして、傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、空気消費量の上限を満たした上で、可能な限り乗り物酔いを抑えることが可能となる
[操作量の制約を満たしつつ乗り物酔いを最適化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第2の実施の形態に係る傾斜角目標値のその他の決定方法として、空気ばねの空気消費量などの操作量に関する制約条件を満たしつつ、乗り物酔いを最適化するような傾斜角目標値を生成する方法について説明する。
まず、上記の乗り物酔いを抑えつつ操作量を最小化する場合と同様に、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、式(9)の車両ダイナミクス(運動力学)の運動方程式が定義されるとともに、式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって、車体10に関する5つの変数の値が求められる。
つぎに、操作量に関する制約条件H(φr)として、例えば空気ばねの空気消費量がその上限未満であることを表した次式により定義する。なお、次式中のβは空気ばねの空気消費量の上限を表している。
つぎに、評価関数Jc(φr(t))として、例えば、上記のとおり特開2008−265692号公報に開示された評価関数yf(t)に式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解いて得られた変数を当てはめて、次式のとおり定義する。
そして、式(14)の制約条件H(φr(t))と式(15)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(22)は、制約条件H(φr(t))が0未満となる傾斜角目標値φrの解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(0))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を意味している。式(22)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等の最適化アルゴリズムを用いて解くことで、傾斜角目標値φr(t)が求められる。傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、空気消費量の上限を満たした上で、可能な限り乗り物酔いを抑えることが可能となる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態は、乗り心地と乗り物酔いの両方を考慮したものであり、本発明の第1の実施の形態と第2の実施の形態を組み合わせたものである。
以下では、本発明の第3の実施の形態の説明として、車体傾斜鉄道車両の構成及び傾斜制御装置の構成については本発明の第1の実施の形態と同一であるので、それらの説明を省略し、3通りの傾斜制御装置の製造方法について説明する。
[乗り物酔いと乗り心地を抑えつつ操作量を最小化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第3の実施の形態に係る傾斜制御装置の製造方法の工程として、乗客の乗り物酔いと、乗客の乗り心地を抑えた上で、空気ばねの空気消費量などの操作量を最小化するような傾斜角目標値を生成する方法について説明する。
まず、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、式(9)の車両ダイナミクス(動力学)の運動方程式が定義されるとともに、式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって、車体10に関する5つの変数の値が求められる。
つぎに、乗り物酔いに関する制約条件H1、乗り心地に関する制約条件H2として、次式の2つを定義する。
つぎに、操作量に関する評価関数Jc(φr(t))として、例えば空気ばねの所定時間内における空気消費量を意味する次式を定義する。
つぎに、式(23)の制約条件H1(φr(t))と、式(24)の制約条件H2(φr(t))と、式(25)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(26)は、制約条件H1(φr(t))とH2(φr(t))が両方とも0未満となる傾斜角目標値φrの解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(t))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を意味している。この式(26)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等のアルゴリズムを用いて解くことで、傾斜角目標値φr(t)が求められる。そして、傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、乗り物酔いの上限と乗り心地の上限を満たした上で、可能な限り空気消費量を抑えることが可能となる。
[操作量と乗り心地の制約を満たしつつ乗り物酔いを最適化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第3の実施の形態に係る傾斜角目標値のその他の決定方法として、空気ばねの空気消費量などの操作量に関する制約条件と乗り心地の制約条件を満たしつつ、乗り物酔いを最適化するような傾斜角目標値を生成する方法について説明する。
まず、上記の乗り物酔いと乗り心地を抑えつつ操作量を最小化する場合と同様に、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、式(9)の車両ダイナミクス(運動力学)の運動方程式が定義されるとともに、式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって、車体10に関する5つの変数の値が求められる。
つぎに、操作量に関する制約条件H1(φr)と乗り心地に関する制約条件H2(φr)として次の2つの式を定義する。
つぎに、評価関数Jc(φr(t))として、例えば、上記のとおり特開2008−265692号公報に開示された評価関数yf(t)に式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解いて得られた変数を当てはめて、次式のとおり定義する。
そして、式(27)の制約条件H1(φr(t))と、式(28)の制約条件H2(φr(t))と、式(29)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(30)は、式(27)の制約条件H1(φr(t))と式(28)のH2(φr(t))が両方とも0未満となる傾斜角目標値φrの解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(0))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を意味している。式(30)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等の最適化アルゴリズムを用いて解くことで、傾斜角目標値φr(t)が求められる。傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、空気消費量の上限と乗り心地の上限を満たした上で、可能な限り乗り物酔いを抑えることが可能となる。
[操作量と乗り物酔いの制約を満たしつつ乗り心地を最適化する傾斜制御装置の製造方法]
以下では、本発明の第3の実施の形態に係る傾斜角目標値のその他の決定方法として、空気ばねの空気消費量などの操作量に関する制約条件と、乗り物酔いの制約条件を満たしつつ、乗り心地を最適化するような傾斜角目標値を生成する方法について説明する。
まず、上記の乗り物酔いと乗り心地を抑えつつ操作量を最小化する場合と同様に、運転データベース421に格納された走行予定線路情報(η、ρ)及び走行予定速度情報(V)に基づいて、式(9)の車両ダイナミクス(運動力学)の運動方程式が定義されるとともに、式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことによって、車体10に関する5つの変数の値が求められる。
つぎに、操作量に関する制約条件H1(φr)と乗り物酔いに関する制約条件H2(φr)として次の2つの式を定義する。
つぎに、評価関数Jc(φr(t))として、例えば特許文献1に開示された評価関数F(φ(t))に式(9)の車両ダイナミクスの運動方程式を解くことで得られた変数を当てはめることにより、次式のとおり定義する。
そして、式(31)の制約条件H1(φr(t))と、式(32)の制約条件H2(φr(t))と、式(33)の評価関数Jc(φr(t))とを用いて制約条件付最適化問題を次式のとおり定式化する。
なお、式(34)は、式(31)の制約条件H1(φr(t))と式(32)のH2(φr(t))が両方とも0未満となる傾斜角目標値φrの解空間を決定した上で、当該決定した解空間の中で評価関数Jc(φr(0))を最小化する傾斜角目標値φr(t)を探索するという制約条件付最適化問題を意味している。式(34)の制約条件付最適化問題を例えばメタヒューリスティック手法等の最適化アルゴリズムを用いて解くことで、傾斜角目標値φr(t)が求められる。傾斜制御装置42は、この求められた傾斜角目標値φr(t)を傾斜角制御に用いることで、空気消費量の上限と乗り物酔いの上限を満たした上で、可能な限り乗り心地を抑えることが可能となる。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。