JP5383534B2 - 点火プラグ - Google Patents

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本発明は、火花点火式内燃機関用の点火プラグに関し、特に、点火コイルによる誘導電圧と電界生成回路による高周波電界とを重ね合わせて点火プラグの電極に印加する点火方法を実施するものに適用する点火プラグに関する。
火花点火式内燃機関に実装されている点火装置では、イグナイタが消弧した際に点火コイルに発生する高電圧を点火プラグの中心電極に印加することで、点火プラグの中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起、点火する。
点火プラグの接地電極は、主としてニッケルからなっている。ニッケル材料は必ずしも耐熱性に秀でておらず、酸化による劣化や高熱による溶損を招くきらいがある。そこで、従来より、火花点火による初期燃焼にさらされる接地電極の先端部の一部に、イリジウムや白金、モリブデン等の貴金属を使用した耐熱コートを施すことが通例となっている(例えば、下記特許文献1を参照)。
近時では、燃焼室内の混合気に確実に着火させ、安定した火炎を得ることができるようにするために、電界生成回路、換言すれば高周波発振器が出力する高周波電圧を中心電極に印加しつつ、点火コイルによる誘導電圧を以て火花点火する「アクティブ着火」法が試みられている(例えば、下記特許文献2を参照)。
ところが、既製の点火プラグを使用してアクティブ着火法を実施すると、比較的早期に燃焼の不安定化をもたらすことがあった。
その原因を究明するべく、本願発明者が研究を進めた結果、以下の事実が判明した。
アクティブ着火法によれば、中心電極と接地電極との間の空間に高周波電界が形成される。そして、高周波電界中で発生したプラズマが成長して、火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きな火炎核を生成することができる。だが、既製の点火プラグの接地電極は、先端部が中心電極に向けて伸長した直方体状をなしていることが多い。従って、アクティブ着火法を実施した場合に、火炎核が接地電極の先端部を飲み込むように大きく膨らみ、耐熱コートを施しているにもかかわらずその先端部を損ない、中心電極と接地電極との間のギャップ(離間距離)を変動させてしまうということが分かった。
特開2004−165165号公報 特願2009−255843号明細書
本発明は、アクティブ着火法を実施する場合における早期の燃焼の不安定化を回避することを所期の目的とする。
本発明では、上記の判明事実に鑑み、火花放電を惹起する高電圧を印加する点火コイル及び燃焼室内に電界を生成する電界生成回路の双方と電気的に接続する中心電極と、前記中心電極の軸心と交わらないように外側方にオフセット配置され、その先端縁に中心電極から離反する方向に凹んだ凹曲面が形成されている接地電極とを備えた点火プラグを構成した。
即ち、球状または塊状に成形されるラジカルプラズマ火炎核の形状に合わせるように、予め接地電極の先端縁を削り込んでおくようにしたのである。
より好ましくは、前記凹曲面に、耐熱材料によるコーティングを施しておく。耐熱材料は、例えばイリジウム、白金、モリブデン等の貴金属を用いてなる。
本発明によれば、アクティブ着火法を実施する場合における早期の燃焼の不安定化を回避することができる。
本発明の一実施形態における点火装置及び電界生成回路を示すブロック図。 同実施形態における点火装置の回路図。 同実施形態の点火プラグの中央縦断面図。 同実施形態の点火プラグの下面図。 同実施形態における電界生成回路の具体的構成を説明する図。 同実施形態における電界生成回路の要素であるHブリッジの回路図。 本発明の変形例の一を示す下面図。 本発明の変形例の一を示す要部を拡大した中央縦断面図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、点火装置1について述べる。この点火装置1は、車両等に搭載される内燃機関に用いられるものである。点火装置1は、図1及び図2に示すように、電子制御装置3から発される点火信号を受けるイグナイタ11と、イグナイタ11が点火信号を受けた際に火花点火をもたらす高い誘導電圧を発生させる点火コイル12と、点火コイル12で発生した誘導電圧の印加を受ける点火プラグ13とを要素とする。
イグナイタ11は、点火コイル12を収めたコイルケースに一体的に内蔵した半導体スイッチング素子である。
点火コイル12は、一次コイル及び二次コイルを主体とする。コイルケースの下端部位には、点火プラグ13を挿入して装着するためのプラグ装着部を設けてある。
本実施形態にあって、点火プラグ13は、図3及び図4に示すように、コイルケースのプラグ装着部に挿入して装着された状態で点火コイル12に接続するターミナル131と、接地電極133との間で火花放電を行う中心電極132と、中心電極132とターミナル131とを接続する導体134と、この導体134の周囲を取り囲むように配置したノイズ低減部材135と、導体134及びノイズ低減部材135を被覆して絶縁する絶縁碍子136と、絶縁碍子136を外方から支持するとともに下端部に接地電極133を取り付けたハウジング137と備える。
図示例では、ターミナル131、中心電極132及び導体134を一体に形成している。但し、ターミナル131と導体134とを別体として両者を導電接続した構造としてもよいし、中心電極132と導体134とを別体として両者を導電接続した構造としてもよい。
既製の点火プラグでは、中心電極132とターミナル131との間にノイズ低減用の抵抗を介設していることが多いが、本実施形態の点火プラグ13はそうではない。点火プラグ13が抵抗を包有していないのは、後述する電界生成回路2から出力され中心電極132に印加される高周波電圧を抵抗にて減衰させないようにするためである。
抵抗の代替として設けているノイズ低減部材135は、例えばNi−Znフェライトを利用して形成した略円筒状の部材である。このノイズ低減部材135の複素透磁率の虚数成分は、2MHz以下の周波数帯域において略一定であり、少なくとも2MHz〜60MHzの周波数帯域では周波数が高くなるにつれて大きくなる。
点火プラグ13の接地電極133は、ハウジング137から下方に垂下し、中途で内側方に屈曲して中心電極132に向かって伸長する正面視略L字型をなす。この接地電極133は、中心電極132の軸心Lと交わらないよう、軸心Lから見て外側方にオフセットしている。図4に示しているように、下面視接地電極133の先端部は中心電極132に重なっておらず、接地電極133の先端部と中心電極132との間には内外方向に沿って間隙が存在している。
接地電極133における、中心電極132に臨む先端縁には、中心電極132から離反する方向に凹む凹曲面133aを形成してある。この凹曲面133aは、中心電極132の先端部を中心とした凹球面状をなしており、凹曲面133a上の各所が中心電極132の先端部から略等距離となっている。凹曲面133aには、耐熱材料によるコーティングを施す。耐熱材料の例としては、イリジウム、白金、モリブデン等の貴金属を含有した材料を挙げることができる。
点火装置1による火花点火の原理は、以下の通りである。電子制御装置3からの点火信号をイグナイタ11が受けると、まずイグナイタ11が点弧して点火コイル12の一次側に電流が流れ、その直後の点火タイミングでイグナイタ11が消弧してこの電流が遮断される。さすれば、自己誘導作用が起こり、一次側に高電圧が発生する。そして、一次側と二次側とは磁気回路及び磁束を共有するので、二次側にさらに高い誘導電圧が発生する。この高い誘導電圧が点火プラグ13の中心電極132に印加され、中心電極132と接地電極133との間で火花放電が発生する。
その上で、点火装置1には電界生成回路2を付設しており、電界生成回路2による高周波電界と点火コイル12による高誘導電圧とを重ね合わせて点火プラグ13のターミナル131ひいては中心電極132に印加するようにしている。
電界生成回路2としては、交流電圧を印加する交流電圧発生回路や、脈流電圧を印加する脈流電圧発生回路等を挙げることができる。脈流電圧発生回路を採用する場合、周期的に電圧が変化する直流電圧を発生させるものであればよく、その波形も任意であってよい。脈流電圧は、基準電圧(0Vであることがある)から一定周期で一定電圧まで変動するパルス電圧、交流電圧を半波整流した電圧、交流電圧に直流バイアスを加味した電圧等をおしなべて含む。電界生成回路2が発振する高周波電圧は、周波数が200kHz〜1000kHz程度、振幅が3kVp−p〜10kVp−p程度であることが好ましい。
本実施形態にあって、電界生成回路2は、図5及び図6に示すように、バッテリ4を電源とし、低圧直流を高圧交流に変換する回路である。この電界生成回路2は、約12Vのバッテリ4電圧を300V〜500Vに昇圧するDC−DCコンバータ21と、DC−DCコンバータ21が出力する直流を交流に変換するHブリッジ回路22と、Hブリッジ回路22が出力する交流をさらに高い電圧に昇圧する昇圧トランス23とを要素とする。
また、電界生成回路2の出力端に、第一ダイオード24及び第二ダイオード25を介設している。第一ダイオード24は、カソードが昇圧トランス23の二次側巻線の信号ラインに接続し、アノードが点火コイル12との結節点であるミキサ5に接続している。第二ダイオード25は、アノードが昇圧トランス23の二次側巻線のグランドラインに接続し、カソードが接地している。これら第一ダイオード24及び第二ダイオード25は、点火タイミングにおいて点火コイル12の二次側から流れ込む負の高圧パルス電流を遮る役割を担う。
電界生成回路2が発振する高周波電圧は、火花放電開始と略同時、火花放電開始直前または火花放電開始直後に、点火プラグ13の中心電極132に印加される。これにより、中心電極132と接地電極133との間の空間に、高周波電界が形成される。そして、高周波電界中で火花放電を行うことによりプラズマが発生し、このプラズマが火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きなラジカルプラズマ火炎核を生成する。
上記は、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになるとともに、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体も電離した状態、即ちプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎核も大きくなるのである。この結果、火花放電のみによる二次元的な着火から三次元的な着火に増幅され、燃焼が燃焼室内に急速に伝播、高い燃焼速度で拡大することとなる。
しかして、本実施形態の点火プラグ13においては、球状または塊状に成形されるラジカルプラズマ火炎核の形状に合わせるように、予め接地電極133の先端縁を削り込んで凹曲面133aを形成してある。このため、ラジカルプラズマによって接地電極133の先端部が早期に損耗することが抑えられ、電極132、133間のギャップが長期に亘り維持される。
因みに、中心電極132と接地電極133との間の火花放電時には高周波ノイズが発生するが、そのノイズの主成分は概ね60MHz帯にある。既述の通り、ノイズ低減部材135の透磁率の虚数成分は、火花放電時に発生するノイズが属する周波数帯、具体的には60MHz帯において大きな値をとる。従って、火花放電に由来するノイズが点火プラグ13内のノイズ低減部材135に取り囲まれた部位を通過すると、ノイズ低減部材135がノイズの磁界成分に作用し、ノイズのエネルギーの大部分を熱に変換する(透磁損失)。このようにして、電子制御装置3その他の電装系を誤動作させ得る火花放電由来のノイズを減衰せしめている。
他方、電界生成回路2から出力される高周波電圧の周波数帯は、200kHz〜1000kHzの間にある。この周波数帯におけるノイズ低減部材135の透磁率の虚数成分は、60MHz帯におけるそれよりも十分に小さい。故に、高周波電圧の減衰は少なく、プラズマ雰囲気の生成は妨げられない。
本実施形態によれば、火花放電を惹起する高電圧を印加する点火コイル12及び燃焼室内に電界を生成する電界生成回路2の双方と電気的に接続する中心電極132と、前記中心電極132の軸心Lと交わらないように外側方にオフセット配置され、その先端縁に中心電極132から離反する方向に凹んだ凹曲面133aが形成されている接地電極133とを備える点火プラグ13を構成したため、ラジカルプラズマによる接地電極133の先端部の溶融を抑制することができ、電極132、133間ギャップの維持、プラグ13の寿命の延長、失火率上昇の予防を実現できる。また、溶けた電極材料(ニッケル酸化物等)が燃焼室に混入して内燃機関の性能を損なうおそれも小さくなる。加えて、火花点火タイミングの都度、中心電極132と接地電極133の凹曲面133aとの間の空間領域に適確にプラズマを生成することができる、つまりは点火時にプラズマが発生する場所を一定化することが可能であって、火炎核の安定化即ち初期燃焼の安定化を図り得るのである。
さらに、前記凹曲面133aに、耐熱材料によるコーティングを施しているため、電極132、133間ギャップをより長期に亘って維持することができる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、接地電極132の先端縁の略全域に凹曲面133aが拡張していたが、図7に示すように、先端縁の一部分(中央部位)に凹曲面133aを形成する態様であってもよい。
図8に示すように、耐熱材料のコーティングにより、接地電極133の凹曲面133aの一部から中心電極132に向かい近づく方向に突き出す突出部133bを形成するようにしてもよい。この場合、突出部133bと中心電極132とを結ぶ経路上で火花放電する確率が高くなり、ニッケルを主体とする接地電極の溶損のおそれをいっそう低減できる。
上記実施形態では、ターミナルと中心電極とを連接する導体の周りにノイズ低減部材を配置していたが、これに替えて、ターミナルと中心電極との間にノイズ低減用のチョークコイルを内挿した点火プラグを構成してもよい。
あるいは、点火コイルと点火プラグのターミナルとの間(例えば、コイルケースのプラグ装着部内)にノイズ低減用のチョークコイルを挟み込むということも考えられる。この場合には、点火プラグ内にノイズ低減部材を設けることも、チョークコイルを設けることも不要となる。
また、中心電極とターミナルとの間にノイズ低減用の抵抗を介設した従来型の点火プラグに、本発明に係る接地電極の形状を適用したとしても、上述した作用効果を奏し得ることは言うまでもない。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される火花点火式内燃機関に利用することができる。
12…点火コイル
13…点火プラグ
132…中心電極
133…接地電極
133a…凹曲面
2…電界生成回路
L…中心電極の軸心

Claims (2)

  1. 火花点火式内燃機関用の点火プラグであって、
    火花放電を惹起する高電圧を印加する点火コイル及び燃焼室内に電界を生成する電界生成回路の双方と電気的に接続する中心電極と、
    前記中心電極の軸心と交わらないように外側方にオフセット配置され、その先端縁に中心電極から離反する方向に凹んだ凹曲面が形成されている接地電極と
    を備えた点火プラグ。
  2. 前記凹曲面に耐熱材料によるコーティングを施した請求項1記載の点火プラグ。
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