(第1実施形態)
図1〜5により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置をヒートポンプ式給湯機10に適用しており、図1は、本実施形態のヒートポンプ式給湯機10の全体構成図である。このヒートポンプ式給湯機10では、後述する蒸発器17の着霜時に、蒸発器17に着いた霜を融解させて取り除く除霜運転を行うことができる。
ヒートポンプ式給湯機10は、貯湯タンク11内の給湯水を循環させる水循環回路12、および、給湯水を加熱するための冷凍サイクル装置であるヒートポンプサイクル13を備えている。まず、水循環回路12において、給湯水を貯留する貯湯タンク11は、耐食性に優れた金属(例えば、ステンレス)で形成され、断熱構造を有し、高温の給湯水を長時間保温することができる温水タンクである。
貯湯タンク11に貯留された給湯水は、貯湯タンク11の上部に設けられた出湯口から出湯され、図示しない温調弁において水道からの冷水と混合されて温度調節された後、台所や風呂等に給湯される。また、貯湯タンク11内の下部に設けられた給水口からは水道水が給水されるようになっている。
水循環回路12には、給湯水を循環させる水圧送手段としての電動水ポンプ12aが配置されている。電動水ポンプ12aは、貯湯タンク側制御装置20から出力される制御信号によって、その作動が制御される。さらに、水循環回路12の構成機器のうち、貯湯タンク11、電動水ポンプ12a等については、図1の細破線に示すように、1つの筐体内に収容されてタンクユニット200として一体的に構成され、室外に配置されている。
そして、貯湯タンク側制御装置20が電動水ポンプ12aを作動させると、給湯水は、貯湯タンク11の下方側に設けられた給湯水出口11a→電動水ポンプ12a→後述する水−冷媒熱交換器15の水通路15a→貯湯タンク11の上方側の給湯水入口11bの順に循環する。
ヒートポンプサイクル13は、圧縮機14、水−冷媒熱交換器15、電気式膨張弁16、蒸発器17等を順次配管で接続した冷凍サイクルである。このヒートポンプサイクル13では、冷媒として二酸化炭素を採用しており、圧縮機14から吐出された高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成している。
さらに、冷媒には圧縮機14を潤滑するためのオイルが混入されており、このオイルの一部は液相冷媒に溶け込んで、冷媒とともにサイクルを循環している。また、残余のオイルは、図示しない油分離器(オイルセパレータ)にて圧縮機14吐出冷媒から分離され、圧縮機14吸入口側へ供給される。
圧縮機14は、ヒートポンプサイクル13において冷媒を吸入し、臨界圧力以上となるまで圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機14aを電動モータ14bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機14aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ14bは、後述するヒートポンプ側制御装置21から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機14の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ14bが圧縮機14の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機14の冷媒吐出口には、水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15b入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器15は、給湯水が通過する水通路15aと圧縮機14から吐出された高温高圧冷媒が通過する冷媒通路15bとを有して構成される熱交換器であって、圧縮機14から吐出された高温高圧冷媒の有する熱量を給湯水に放熱させる放熱器である。
なお、本実施形態のヒートポンプサイクル13では、前述の如く、超臨界冷凍サイクルを構成しているので、水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15bを通過する冷媒は、凝縮することなく超臨界状態のまま放熱する。
水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15b出口側には、電気式膨張弁16の入口側が接続されている。電気式膨張弁16は水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15bから流出した高圧冷媒を減圧膨張させる減圧手段であるとともに、圧縮機14吐出口側から電気式膨張弁16入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力Phを制御する圧力制御手段でもある。
より具体的には、この電気式膨張弁16は、絞り開度を変更可能に構成された弁体16aと、この弁体16aの絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータ16bとを有して構成される可変絞り機構である。さらに、電動アクチュエータ16bは、ヒートポンプ側制御装置21から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
電気式膨張弁16の出口側には、蒸発器17が接続されている。蒸発器17は、電気式膨張弁16にて減圧された低圧冷媒と送風ファン17aにより送風された外気(室外空気)とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用の熱交換器である。送風ファン17aは、ヒートポンプ側制御装置21から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
なお、本実施形態では蒸発器17として、周知のフィンアンドチューブ構造の熱交換器を採用している。また、蒸発器17の出口側には、圧縮機14の冷媒吸入口が接続されている。さらに、上述のヒートポンプサイクル13の各構成機器14〜17は、図1の一点鎖線に示すように、1つの筐体内に収容されてヒートポンプユニット300として一体的に構成され、タンクユニット200と隣接するように室外に配置されている。
次に、本実施形態の電気制御部の概要を説明する。貯湯タンク側制御装置20およびヒートポンプ側制御装置21は、それぞれ、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
貯湯タンク側制御装置20の出力側には、上述の電動水ポンプ12a等が接続され、ヒートポンプ側制御装置21の出力側には、圧縮機14の電動モータ14b、電気式膨張弁16の電動アクチュエータ16b、送風ファン17a等が接続されている。さらに、貯湯タンク側制御装置20およびヒートポンプ側制御装置21は、それぞれ接続された機器の作動を制御する。
なお、ヒートポンプ側制御装置21は、圧縮機14の電動モータ14b、電気式膨張弁16の電動アクチュエータ16b等を制御する制御手段が一体に構成され、これらのアクチュエータの作動を制御するものであるが、本実施形態では、ヒートポンプ側制御装置21のうち、電動モータ14bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段21aとし、電動アクチュエータ16bの作動(絞り開度)を制御する構成を可変絞り制御手段21bとする。
もちろん、吐出能力制御手段21aおよび可変絞り制御手段21bをヒートポンプ側制御装置21に対して別体の制御装置として構成してもよい。
一方、貯湯タンク側制御装置20の入力側には、貯湯タンク11内に上下方向に並んで配置された複数個のタンク内水温センサ(図示せず)等が接続され、これらのセンサの検出信号が貯湯タンク側制御装置20へ入力される。従って、貯湯タンク側制御装置20では、タンク内水温センサの出力信号によって、貯湯タンク11内の水位レベルに応じた給湯水の温度および温度分布を検出できるようになっている。
また、ヒートポンプ側制御装置21の入力側には、圧縮機14から吐出された吐出冷媒圧力Phを検出する高圧側圧力検出手段としての高圧センサ22、蒸発器17における低圧側冷媒温度Teに相関を有する物理量を検出する蒸発器温度検出手段としての蒸発器温度センサ23、蒸発器17にて低圧冷媒と熱交換する外気の外気温Tamを検出する外気温検出手段としての外気温センサ24等が接続されている。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ23は、具体的に蒸発器17の熱交換フィン温度を検出している。従って、蒸発器温度センサ23は、蒸発器17そのものの温度を検出する機能を兼ねる。
さらに、ヒートポンプ側制御装置21の入力側には、水−冷媒熱交換器15の水通路15a入口側の給湯水温度である入水温度Twiを検出する入水温度検出手段としての入水温度センサ25、水−冷媒熱交換器15の水通路15a出口側の給湯水温度である沸上温度Twoを検出する沸上温度検出手段としての沸上温度センサ26等が接続され、これらのセンサ群の検出信号がヒートポンプ側制御装置21へ入力される。
さらに、ヒートポンプ側制御装置21の入力側には、操作パネル30が接続され、ヒートポンプ式給湯機10の作動・停止の操作信号、給湯機の給湯温度設定信号等がヒートポンプ側制御装置21へ入力される。
また、貯湯タンク側制御装置20およびヒートポンプ側制御装置21は、互いに電気的に接続されて、互いに通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号および操作信号に基づいて、他方の制御装置が上述の各種アクチュエータ12a、14b、16b、17a等の作動を制御することもできる。従って、貯湯タンク側制御装置20およびヒートポンプ側制御装置21を1つの制御装置として一体的に構成してもよい。
次に、上記の構成における本実施形態のヒートポンプ式給湯機10の作動を図2〜4に基づいて説明する。まず、図2、3は、ヒートポンプ側制御装置21が実行する制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、ヒートポンプ式給湯機10に外部から電源が供給された状態で、操作パネル30の給湯機作動信号がヒートポンプ側制御装置21に入力されるとスタートする。
まず、ステップS1ではフラグ、タイマ等の初期化がなされ、次のステップS2でセンサ群22〜26等により検出された検出信号および操作パネル30から出力された操作信号を読み込んでステップS3へ進む。ステップS3では、除霜運転を行う必要があるか否かを判定する。
ここで、本実施形態のヒートポンプサイクル13のように、外気を熱源として給湯水を加熱する冷凍サイクル装置では、蒸発器17における冷媒蒸発温度が着霜温度(具体的には、0℃)以下になってしまうと蒸発器17に着霜が生じる。そして、蒸発器17に着霜が生じてしまうと、蒸発器17における外気の空気通路が霜によって閉塞されてしまうので、蒸発器17の熱交換能力が著しく低下してしまう。
そこで、本実施形態のステップS3では、蒸発器温度センサ23によって検出された低圧側冷媒温度Teが0℃以下になっており、かつ、低圧側冷媒温度Teが外気温センサ24によって検出された外気温Tamから予め定めた所定温度α(本実施形態では、α=10℃)を減算した値以下になっている場合に除霜運転を行う必要があると判定している。
つまり、ステップS3では、Te≦0、かつ、Te≦Tam−αとなっている場合は除霜運転を行う必要があると判定して、ステップS4へ進み、除霜運転フラグdffg=1としてステップS5へ進む。一方、ステップS3にて、Te≦0、かつ、Te≦Tam−αとなっていない場合は除霜運転を行う必要がないと判定して、除霜運転フラグdffgを変化させることなくステップS5へ進む。
ステップS5では、除霜運転フラグdffg=1になっているか否かを判定する。ステップS5にて、除霜運転フラグdffg=1になっている場合は、ステップS6へ進み除霜運転時における各種アクチュエータの制御状態が決定される。なお、ステップS6の詳細については後述する。一方、ステップS5にて、除霜運転フラグdffg=1になっていない場合は、ステップS7へ進む。
ステップS7では、給湯水を加熱する通常運転時における各種アクチュエータの制御状態が、ステップS2にて読み込んだ検出信号および操作信号に基づいて決定される。
例えば、圧縮機14の電動モータ14bに出力される制御信号については、低圧側冷媒温度Teが目標低圧温度に近づくように決定される。この目標低圧温度は、入水温度センサ25によって検出された入水温度Twi、沸上温度センサ26によって検出された沸上温度Two、外気温Tam、操作パネル30により設定された設定給湯温度等に基づいて算出される。
電動水ポンプ12aに出力される制御信号については、沸上温度Twoが、操作パネル30により設定された設定給湯温度に近づくように決定される。電気式膨張弁16の電動アクチュエータ16bに出力される制御信号については、サイクルの高圧側冷媒圧力(具体的には、吐出冷媒圧力Ph)が通常運転時の目標高圧圧力となるように決定される。
この通常運転時の目標高圧圧力は、水−冷媒熱交換器15から流出した高圧冷媒の温度に基づいて、予めヒートポンプ側制御装置21に記憶された制御マップを参照して、ヒートポンプサイクル13の成績係数(COP)が略最大となるように決定される。なお、水−冷媒熱交換器15から流出した高圧冷媒の温度は、沸上温度Twoから推定することができる。
続くステップS8では、貯湯タンク側制御装置20およびヒートポンプ側制御装置21より各種アクチュエータに対して制御信号が出力されて、ステップS9へ進む。
ステップS9では、操作パネル30からの給湯機停止信号がヒートポンプ側制御装置21へ入力されている場合は、各種アクチュエータの作動を停止させて、ヒートポンプ式給湯機10のシステム全体を停止させる。一方、給湯機停止信号が入力されていない場合は、予め定めた制御周期の間待機した後、ステップS2に戻るようになっている。
次に、図3のフローチャートにより、ステップS6の除霜運転時の各種アクチュエータの制御状態の決定について説明する。まず、ステップS61では、電動水ポンプ12aに出力される制御信号については、電動水ポンプ12aを給湯水圧送能力が0となるように決定される。すなわち、電動水ポンプ12aを停止させるように制御状態が決定される。
次のステップS62では、圧縮機14の電動モータ14bの制御状態を決定する。具体的には、電動モータ14bに出力される制御信号については、圧縮機14の冷媒吐出能力が予め定めた除霜運転時用の基準冷媒吐出能力となるように決定される。この基準冷媒吐出能力は、通常運転時にサイクルが安定して作動している時の冷媒吐出能力に対して高い値に決定される。
次のステップS63では、除霜運転時における高圧側冷媒圧力(具体的には、吐出冷媒圧力Ph)の目標高圧圧力TPhを決定する。従って、本実施形態の制御ステップS63は、除霜運転時における目標高圧圧力TPhを決定する機能実現手段としての目標高圧決定手段を構成している。
この除霜運転時の目標高圧圧力TPhは、前述した通常運転時にサイクルが安定して作動している時に決定される目標高圧圧力に対して低い値に決定されるとともに、除霜運転時に、蒸発器17出口冷媒の乾き度が予め定めた基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態となるように決定される。
なお、圧縮機14の液圧縮の問題を回避するためには、蒸発器17出口冷媒が気相冷媒して圧縮機14吸入冷媒を気相冷媒とすることが望ましいものの、蒸発器17出口冷媒が僅かな液相冷媒を含んでいても、圧縮機14の液圧縮の問題は生じない。そこで、本実施形態では、圧縮機14吸入口側へ流れ込んでしまう液相冷媒の量を圧縮機14の液圧縮の問題が生じない量とするために、基準乾き度KDR=0.9としている。
具体的には、ステップS63では、ステップS2で読み込んだ低圧側冷媒温度Teに基づいて、予めヒートポンプ側制御装置21に記憶された制御マップを参照して、目標高圧圧力TPhを決定する。この制御マップには、低圧側冷媒温度Teに応じて、蒸発器17出口冷媒の乾き度が基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態になることが実験的に確認された目標高圧圧力TPhを決定可能な情報が記憶されている。
さらに、本実施形態では、この制御マップを参照することによって、低圧側冷媒温度Teが低くなるに伴って、除霜運転時の目標高圧圧力TPhが高くなるように決定される。もちろん、ステップS63にて決定される除霜運転時の目標高圧圧力TPhは最大値となっても、通常運転時の目標高圧圧力より低い値となる。
次に、ステップS64では、電気式膨張弁16の電動アクチュエータ16bの制御状態を決定する。具体的には、電動アクチュエータ16bに出力される制御信号については、フィードバック制御手法によって、サイクルの高圧側冷媒圧力(具体的には、吐出冷媒圧力Ph)がステップS63にて決定された除霜運転時の目標高圧圧力TPhとなるように決定される。
なお、本実施形態の除霜運転では、前述のステップS62で説明したように圧縮機14の冷媒吐出能力が通常運転時よりも高い値に決定されるので、除霜運転時の目標高圧圧力TPhが通常運転時の目標高圧圧力よりも低い値に設定されることで、電気式膨張弁16の絞り開度は、通常運転時よりも増加する。
また、ステップS64にて、電気式膨張弁16の絞り開度を増加させるように電動アクチュエータ16bの制御状態が決定されたとしても、既に、電気式膨張弁16の絞り開度が最大値となっている場合は、電動アクチュエータ16bの開度を変更することなくステップS65へ進む。
続く、ステップS65では、除霜運転を終了するか否かを判定する。具体的には、低圧側冷媒温度Teが、着霜温度より所定値β℃(本実施形態では、β=3)以上高くなっているか否かを判定する。そして、Te≧βとなっている場合は、除霜運転を終了すると判定してステップS66へ進み、除霜運転フラグdffg=0としてステップS8へ戻る。一方、ステップS65にて、Te≧βとなっていない場合は、除霜運転フラグdffgを変化させることなくステップS8へ戻る。
従って、本実施形態のヒートポンプ式給湯機10では、制御ステップS3にて除霜運転を行う必要がないと判定され、かつ、制御ステップS5にて除霜運転フラグdffg=1になっていないと判定された場合は、給湯水を加熱する通常運転が実行される。一方、制御ステップS5にて除霜運転フラグdffg=1になっていると判定された場合は、除霜運転が実行される。
次に、図4のモリエル線図を用いて、通常運転時および除霜運転時におけるヒートポンプサイクル13の冷媒の状態の変化を説明する。なお、図4(a)は通常運転時におけるに冷媒の状態の変化を示し、図4(b)は除霜運転時における冷媒の状態の変化を示し、さらに、図4(c)は従来技術のヒートポンプサイクル(冷凍サイクル装置)において通常運転から除霜運転に切り替えた直後における冷媒の状態の変化を示している。
まず、通常運転時には、図4(a)に示すように、圧縮機14から吐出された高温高圧冷媒(図4(a)の1a点)は、水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15bに流入して、電動水ポンプ12aによって貯湯タンク11の下方側から水通路15aに流入した給湯水と熱交換する(図4(a)の1a点→2a点)。これにより、給湯水が加熱され、加熱された給湯水は、貯湯タンク11の上方側に貯留される。
この際、本実施形態のヒートポンプサイクル13では、冷媒として二酸化炭素を採用し、超臨界冷凍サイクルを構成しているので、冷媒としてフロン系冷媒等を採用する場合に対して、高圧冷媒の温度を上昇させることができる。その結果、水−冷媒熱交換器15において給湯水に放熱する熱量を増加させて給湯水の温度を高温化することができる。
一方、水−冷媒熱交換器15から流出した高圧冷媒は、電気式膨張弁16にて減圧される(図4(a)の2a点→3a点)。電気式膨張弁16にて減圧された冷媒は、蒸発器17へ流入し、送風ファン17aから送風された外気から吸熱して蒸発する(図4(a)の3a点→4a点)。
この際、電気式膨張弁16では、ヒートポンプサイクル13のCOPが略最大となるように絞り開度が調整されるので、高いCOPを発揮させながら、ヒートポンプサイクル13を運転することができる。そして、蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機14へ吸入されて再び圧縮される(図4(a)の4a点→1a点)。
次に、除霜運転時には、図4(b)に示すように、圧縮機14から吐出された高温高圧気相冷媒(図4(b)の1b点)は、水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15bに流入する。除霜運転時には電動水ポンプ12aが停止しているので、冷媒通路15bに流入した冷媒は水−冷媒熱交換器15の外部に僅かに放熱しながら、冷媒通路15bの圧力損失分だけ圧力を低下させて、冷媒通路15bから流出する(図4(b)の1b点→2b点)。
水−冷媒熱交換器15から流出した高温高圧気相冷媒は、電気式膨張弁16にて減圧されて、蒸発器17へ流入する(図4(b)の2b点→3b点)。この際、除霜運転時には、電気式膨張弁16の絞り開度は、吐出冷媒圧力Phが除霜運転時の目標高圧圧力TPhとなるように制御されて通常運転時よりも増加するので、電気式膨張弁16における減圧量は通常運転時よりも少なくなる。
蒸発器17へ流入した高温気相冷媒は、蒸発器17にて放熱して、そのエンタルピを低下させる(図4(b)の3b点→4b点)。これにより、蒸発器17に着いた霜が融解されて蒸発器17の除霜がなされる。そして、蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機14へ吸入されて再び圧縮される(図4(b)の4b点→1b点)。
この際、電気式膨張弁16の絞り開度は、吐出冷媒圧力Phが除霜運転時の目標高圧圧力TPhとなるように制御されるので、蒸発器17出口冷媒の乾き度が基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態となる。
上記の如く、本実施形態の除霜運転では、蒸発器17に着いた霜を取り除くことができるだけでなく、蒸発器17出口冷媒の乾き度が基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態となるように、電気式膨張弁16の絞り開度を増加させるので、除霜運転時に圧縮機14の保護を図ることができる。
つまり、除霜運転時に蒸発器17出口冷媒を予め定めた基準乾き度KDR以上とすることで、圧縮機14吸入口側へ流れ込んでしまう液相冷媒の量を圧縮機14の液圧縮の問題が生じない程度の僅かな量とすることができる。さらに、蒸発器17出口冷媒を気相状態とすることで、圧縮機14の液圧縮の問題を回避できる。その結果、除霜運転時における圧縮機14の保護を図ることができる。
ここで、図4および図5を用いて、本実施形態のヒートポンプサイクル13による効果を、従来技術のヒートポンプサイクルと比較して説明する。なお、図5は、除霜運転時における蒸発器17出口冷媒の乾き度等の経時変化を示すタイムチャートである。
具体的には、図5では、本実施形態のヒートポンプサイクル13の除霜運転時における高圧側冷媒圧力(吐出冷媒圧力Ph)、低圧側冷媒温度Te、電気式膨張弁16の絞り開度、圧縮機14の冷媒吐出能力(圧縮機14の回転数)、蒸発器17出口冷媒の乾き度の経時変化を実線で示し、従来技術における同様のパラメータの変化を破線で示している。
従来技術のヒートポンプサイクルでは、除霜運転が開始されると開始直前のサイクルバランスを考慮することなく、電気式膨張弁16の絞り開度を増加させてしまう。従って、図4(c)に示すように、除霜運転の開始時にサイクルの高圧側冷媒圧力が急激に低下するとともに、低圧側冷媒圧力が急激に上昇してしまうことがある。
換言すると、従来技術のヒートポンプサイクルにおける除霜運転の開始時のサイクルの高低圧差(図4(c)の1c点と3c点との圧力差)は、本実施形態のヒートポンプサイクル13における除霜運転時の高低圧差(図4(b)の1b点と3b点との圧力差)よりも大きく急激に縮小してしまうことがある。このようなサイクルの高低圧差の急激な縮小は、サイクルの高圧側の冷媒が、電気式膨張弁16出口側から圧縮機14吸入口側へ至るサイクルの低圧側へ急激に流れ込んでしまう要因となる。
従って、除霜運転の開始時に蒸発器内に残存していた液相冷媒が圧縮機14吸入口側へ流出して、蒸発器17出口冷媒の乾き度を低下させてしまう(図4(c)の4c点)。その結果、従来技術のヒートポンプサイクルでは、図5の破線で示すように、蒸発器17出口冷媒の乾き度が基準乾き度KDRよりも低下して、圧縮機14の液圧縮の問題を生じさせてしまう。
これに対して、本実施形態では、図5の実線に示すように、蒸発器17出口冷媒の乾き度が予め定めた基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態となるように、電気式膨張弁16の絞り開度を増加させるので、圧縮機14の液圧縮を回避できる。その結果、除霜運転時における圧縮機14の保護を図ることができる。
このように、圧縮機14の液圧縮を回避できることは、本実施形態のように冷媒として二酸化炭素を採用して超臨界冷凍サイクルを構成するヒートポンプサイクル13では、極めて有効である。
その理由は、超臨界冷凍サイクルでは、通常運転時のサイクルの高低圧差が、圧縮機14の吐出冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)が冷媒の臨界圧力未満となる亜臨界冷凍サイクルよりも大きくなるので、除霜運転の開始時に蒸発器内に残存していた液相冷媒が大量に圧縮機14吸入口側へ流出しやすいからである。
さらに、サイクルの高圧側冷媒圧力が除霜運転時の目標高圧圧力TPhとなるように、電気式膨張弁16の絞り開度を変化させているので、蒸発器17出口冷媒の乾き度が予め定めた基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態となるように、電気式膨張弁16の絞り開度を容易に変化させることができる。
その理由は、目標高圧決定手段を構成する制御ステップS63にて決定される目標高圧圧力TPhが高く決定されるに伴って、電気式膨張弁16の絞り開度の増加度合を容易に小さくすることができ、目標高圧圧力TPhを低く決定するに伴って、電気式膨張弁16の絞り開度の増加度合を容易に大きくできるからである。
さらに、本実施形態では、制御ステップS3にて、除霜運転を行う必要があると判定されると制御ステップS4にて除霜運転フラグdffg=1とし、操作パネル30からの給湯機停止信号がヒートポンプ側制御装置21へ入力されていなければ、この除霜運転フラグdffgが1でなくなるまで、ステップS5→S6→S8→S9→S2→S3(→S4)→S5のルーチンを繰り返す。
これにより、除霜運転の開始時、すなわち除霜運転フラグdffg=1となった直後には、制御ステップS63にて、除霜運転の開始直前の低圧側冷媒温度Teに基づいて、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定することができる。さらに、制御ステップS63では、低圧側冷媒温度Teが低くなるに伴って、除霜運転時の目標高圧圧力TPhが高くなるように決定している。
除霜運転の開始直前における低圧側冷媒温度Teが低くなっているということは、除霜運転の開始直前に、サイクルの高圧側の冷媒圧力と低圧側の冷媒圧力との高低圧差が拡大したサイクルバランスになっていることを意味している。従って、本実施形態のヒートポンプサイクル13では、除霜運転の開始時に、除霜運転の開始直前のサイクルバランスを考慮して、電気式膨張弁16の絞り開度を適切に増加させることができる。
しかも、それ以降は、制御ステップS63にて、除霜運転の開始後の低圧側冷媒温度Teに基づいて、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定している。従って、除霜運転の開始後の低圧側冷媒温度Teに基づいて目標高圧圧力TPhを適切に調整して、速やかに蒸発器17の除霜を完了することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、目標高圧決定手段を構成する制御ステップS63にて、低圧側冷媒温度Teに基づいて除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定した例を説明したが、本実施形態では、外気温Tamに基づいて除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定している。
具体的には、本実施形態の制御ステップS63では、除霜運転の開始直後、すなわち除霜運転フラグdffg=1となった直後は、ステップS2で読み込んだ除霜運転の開始直前の外気温Tamに基づいて、予めヒートポンプ側制御装置21に記憶された制御マップを参照して、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定する。
この制御マップには、第1実施形態と同様に、外気温Tamに応じて、蒸発器17出口冷媒の乾き度が基準乾き度KDR以上、あるいは、蒸発器17出口冷媒が気相状態になることが実験的に確認された目標高圧圧力TPhを決定可能な情報が記憶されている。本実施形態では、この制御マップを参照することによって、外気温Tamが低くなるに伴って、除霜運転時の目標高圧圧力TPhが高くなるように決定される。
それ以降は、制御ステップS63にて、第1実施形態と同様に、除霜運転の開始後の低圧側冷媒温度Teに基づいて、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定する。その他の制御態様およびヒートポンプサイクル13の構成は、第1実施形態と全く同様である。
従って、本実施形態のヒートポンプサイクル13においても、第1実施形態と同様に、除霜運転時に、蒸発器17に着いた霜を取り除くことができるだけでなく、圧縮機14の保護を図ることができる。
つまり、本実施形態では、除霜運転の開始直後、すなわち除霜運転フラグdffg=1となった直後には、制御ステップS63にて、除霜運転の開始直前の外気温Tamに基づいて、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定することができる。さらに、制御ステップS63では、外気温Tamが低くなるに伴って、除霜運転時の目標高圧圧力TPhが高くなるように決定している。
除霜運転の開始直前における外気温Tamが低くなっているということは、除霜運転の開始直前に、サイクルの高圧側の冷媒圧力と低圧側の冷媒圧力との高低圧差が拡大したサイクルバランスになっていることを意味している。従って、本実施形態のヒートポンプサイクル13では、除霜運転の開始時に、除霜運転の開始直前のサイクルバランスを考慮して、電気式膨張弁16の絞り開度を適切に増加させることができる。
しかも、それ以降は、制御ステップS63にて、除霜運転の開始後の低圧側冷媒温度Teに基づいて、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定している。従って、除霜運転の開始後の低圧側冷媒温度Teに基づいて目標高圧圧力TPhを適切に調整して、速やかに蒸発器17の除霜を完了することができる。
なお、本実施形態の制御ステップS63では、除霜運転の開始直後には、外気温Tamに基づいて、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定し、それ以降は、低圧側冷媒温度Teに基づいて目標高圧圧力TPhを決定している。従って、制御ステップS63にて、除霜運転の開始直後に参照する制御マップと、それ以降に参照する制御マップは異なる制御マップとなる。
このように除霜運転の開始直後に参照する制御マップと、それ以降に参照する制御マップとを変更することは、速やかに蒸発器17の除霜を完了できる点で有効である。従って、上述の第1実施形態でも、除霜運転の開始直後に参照する制御マップと、それ以降に参照する制御マップとを変更してもよい。
(第3実施形態)
上述の第1、第2実施形態では、目標高圧決定手段を構成する制御ステップS63にて、制御周期毎に、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定した例を説明したが、本実施形態では、制御ステップS63では、除霜運転の開始直後に、すなわち除霜運転フラグdffg=1となった直後に、除霜運転時の目標高圧圧力TPhを決定してしまう例を説明する。
具体的には、本実施形態の制御ステップS63では、除霜運転の開始直後に、除霜運転の開始直後から除霜運転時の目標高圧圧力TPhの変化を開始させる迄の待ち時間、目標高圧圧力TPhの時間経過による変更パターンを決定する。
このような待ち時間や変更パターンの決定は、第1、第2実施形態と同様に、低圧側冷媒温度Teあるいは外気温Tamに基づいて、予めヒートポンプ側制御装置21に記憶された制御マップを参照して決定することができる。その他の制御態様およびヒートポンプサイクル13の構成は、第1実施形態と全く同様である。
従って、本実施形態のヒートポンプサイクル13においても、第1、第2実施形態と同様に、除霜運転時に、蒸発器17に着いた霜を取り除くことができるだけでなく、圧縮機14の保護を図りながら、速やかに蒸発器17の除霜を完了できる。しかも、制御周期毎に、低圧側冷媒温度Teあるいは外気温Tamをセンシングする必要がなく、制御プログラムの複雑化を回避できる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、高圧側圧力検出手段として、圧縮機14吐出冷媒の圧力を直接検出する高圧センサ22を採用しているが、高圧側圧力検出手段は、圧縮機14吐出口側から電気式膨張弁16入口側へ至るサイクルの高圧側の冷媒の圧力に相関を有する物理量を検出できるものを幅広く採用できる。
例えば、水−冷媒熱交換器15の冷媒通路15bから流出した冷媒の圧力を検出する圧力センサを採用してもよいし、圧縮機14吐出冷媒の温度検出する高圧側温度検出手段を採用してもよい。高圧側温度センサを採用すれば、高圧センサ22を採用する場合に対して、冷凍サイクル装置全体としての低コスト化を図ることができる。
また、上述の核実施形態では、蒸発器温度検出手段として、蒸発器17の熱交換フィン温度を検出する蒸発器温度センサ23を採用しているが、蒸発器温度検出手段は、蒸発器17における低圧側冷媒温度Teに相関を有する物理量を検出できるものを幅広く採用できる。
例えば、蒸発器17のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器17を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。さらに、蒸発器17内部あるいは蒸発器17出口から圧縮機14吸入口へ至る冷媒の圧力を検出する圧力検出手段を採用してもよい。
(2)上述の各実施形態では、除霜運転時の送風ファン17aの作動について言及していないが、除霜運転時には、送風ファン17aの送風能力を通常運転時に対して低下させる、あるいは、送風ファン17aを停止させてもよい。これにより、蒸発器17へ流入した高温気相冷媒の有する熱量が外気に放熱されてしまうことを抑制して、効率的に蒸発器17な除霜を行うことができる。
(3)上述の各実施形態では、冷媒として二酸化炭素を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。通常のフロン系冷媒、炭化水素系冷媒等を採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル13が、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上とならない亜臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
(4)上述の各実施形態では、圧縮機14として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機14の形式はこれに限定されない。例えば、エンジン等を駆動源とするエンジン駆動式圧縮機を採用してもよい。また、圧縮機構として、固定容量型圧縮機構のみならず、可変容量型圧縮機構を採用してもよい。
(5)上述の各実施形態では、可変絞り機構として電気式膨張弁16を採用した例を説明したが、可変絞り機構はこれに限定されない。例えば、可変絞り機構として、冷媒を減圧膨張させるノズル部から噴射する高速度の冷媒流により冷媒を内部に吸引して、吸引された冷媒と高速度の冷媒流を混合して昇圧させるエジェクタを採用してもよい。
(6)上述の各実施形態では、本発明の冷凍サイクル装置をヒートポンプ式給湯機10に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されず、低圧冷媒が吸熱した熱量を高圧冷媒に放熱させる冷凍サイクル装置に広く適用可能である。例えば、室内空気を加熱する室内暖房装置、ヒートポンプ式床暖房装置等にも適用できる。