===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
即ち、流体を噴射するヘッドから流体を噴射させるためのデータを受信すると、前記データの周波数を解析し、受信した前記データを前記周波数に応じて処理し、処理した前記データに基づいて前記ヘッドから流体を噴射させる制御部を、有することを特徴とするヘッド駆動装置である。
このようなヘッド駆動装置によれば、ヘッド駆動装置を汎用化することができ、受信したデータの処理を自動に切替えることができる。
かかるヘッド駆動装置であって、前記制御部は、比較回路と差動回路を備え、受信した前記データの前記周波数に応じた制御信号を決定し、前記制御信号によって前記比較回路と前記差動回路の何れか一方を動作させて、受信した前記データを処理すること。
このようなヘッド駆動装置によれば、ヘッド駆動装置を汎用化することができ、受信したデータを正しい回路にて処理することができる。
かかるヘッド駆動装置であって、前記制御部は、(1)受信した前記データの前記周波数が第1の周波数である場合に、(2)受信した前記データを比較回路に入力することによって、受信した前記データの電位が第1の基準電位以上である時は第1電位を出力し、受信した前記データの電位が前記第1の基準電位未満である時は前記第1電位とは異なる第2電位を出力する出力データを取得し、(3)前記出力データに基づいて前記ヘッドから流体を噴射させること。
このようなヘッド駆動装置によれば、受信したデータのデータレベルを判断できる出力データに変換できる。
かかるヘッド駆動装置であって、前記制御部は、(1)受信した前記データの前記周波数が第2の周波数である場合に、(2)差動回路の第1入力部に受信した前記データを入力し、前記差動回路の第2入力部に一定電位を入力することによって、前記第1入力部に入力した前記データの電位と前記第2入力部に入力した前記一定電位との差に基づく電位が第2の基準電位以上である時は第1電位を出力し、前記差に基づく電位が前記第2の基準電位未満である時は前記第1電位とは異なる第2電位を出力する出力データを取得し、(3)前記出力データに基づいて前記ヘッドから流体を噴射させること。
このようなヘッド駆動装置によれば、受信したデータのデータレベルを判断できる出力データに変換できる。
かかるヘッド駆動装置であって、前記制御部は、(1)受信した前記データの前記周波数が第3の周波数である場合に、(2)差動回路の第1入力部に受信した前記データのうちの非反転信号を入力し、前記差動回路の第2入力部に受信した前記データのうちの反転信号を入力することによって、前記第1入力部に入力した前記非反転信号の電位と前記第2入力部に入力した前記反転信号の電位との差に基づく電位が第3の基準電位以上である時は第1電位を出力し、前記差に基づく電位が前記第3の基準電位未満である時は前記第1電位とは異なる第2電位を出力する出力データを取得し、(3)前記出力データに基づいて前記ヘッドから流体を噴射させること。
このようなヘッド駆動装置によれば受信したデータのデータレベルを判断できる出力データに変換できる。
かかるヘッド駆動装置であって、差動伝送によって伝送されたデータを受信した場合には、差動回路の第1入力部に受信した前記データのうちの非反転信号を入力し、前記差動回路の第2入力部に受信した前記データのうちの反転信号を入力して処理し、Lレベルの電位をグランド電位から所定の電位にシフトしたデータであって、シングルエンド伝送によって伝送されたデータを受信した場合には、同じ前記差動回路の前記第1入力部に受信した前記データを入力し、同じ前記差動回路の前記第2入力部に一定電位を入力して処理すること。
このようなヘッド駆動装置によれば、回路構成を簡略化できる。
かかるヘッド駆動装置であって、前記ヘッドは、流体を噴射する複数のノズルである第1ノズル群と、流体を噴射する複数のノズルである第2ノズル群と、前記第1ノズル群の流体噴射に関する前記データを記憶する第1データ記憶部と、前記第2ノズル群の流体噴射に関する前記データを記憶する第2データ記憶部と、受信した前記データの前記周波数に応じて処理された前記データが入力される入力部と、を備え、前記制御部は、受信した前記データの前記周波数に応じて、前記入力部に入力した前記データを、前記第1データ記憶部と前記第2データ記憶部のうちの一方に記憶させる第1処理と、前記入力部に入力した前記データを、前記第1データ記憶部と前記第2データ記憶部に記憶させる第2処理とを、選択して行うこと。
このようなヘッド駆動装置によれば、正しく対応するデータにてノズルから流体を噴射させることができる。
また、(1)流体を噴射するヘッドと、前記ヘッドから流体を噴射させるためのデータを受信すると、前記データの周波数を解析し、受信した前記データを前記周波数に応じて処理し、処理した前記データに基づいて前記ヘッドから流体を噴射させる制御部と、を有するヘッド駆動装置と、(2)前記ヘッド駆動装置と通信可能に接続された主制御部であって、前記ヘッドから流体を噴射させるための前記データを前記ヘッド駆動装置に伝送する主制御部と、(3)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、主制御部からのデータの伝送方式に応じて、ヘッド駆動装置は受信したデータの処理を自動に切替えることができる。
===インクジェットプリンターの構成===
以下、流体噴射装置をインクジェットプリンター(プリンター1)とし、プリンター1とコンピューターCPを接続した印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
図1は印刷システムを示すブロック図である。プリンター1は、用紙搬送機構10、キャリッジ移動機構20、駆動信号生成回路30、ヘッドユニット40、各種のセンサー50、及び、プリンター側コントローラー60を有する。
用紙搬送機構10は、用紙を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構20は、ヘッドユニット40を所定の移動方向に移動させる。駆動信号生成回路30は、ヘッドユニット40が有するピエゾ素子431(図3を参照)を動作させるための駆動信号COMを生成する。ヘッドユニット40は、インクを用紙に向けて噴射する。各センサー50は、プリンター1の状況を監視する。各センサー50による検出結果は、プリンター側コントローラー60に出力され、プリンター1における全体的な制御を行う。プリンター側コントローラー60(主制御部に相当)は、ASIC61と本体側メモリー62とを有し、ASIC61、本体側メモリー62、及び、駆動信号生成回路30は、本体側基板CBに実装されている。
<ヘッドユニット40について>
図2はヘッドユニット40を説明するブロック図であり、図3Aはヘッドユニット40の一部の断面図であり、図3Bはノズル列を示す。ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HC(制御部に相当)と、ヘッドHD(ヘッド側ケーブル46、中継基板47)を有する。なお、本体側基板CBとヘッドユニット40とは、可撓性を有するフラットケーブルFCによって電気的に接続されている。
図3Aに示すように、ヘッドHDは、ケース41と、流路ユニット42と、ピエゾ素子群43を有する。ケース41は、ピエゾ素子群43を収容空部411に収容して固定する。また、収容空部411には、ヘッド制御部HCやヘッド側ケーブル46も収容されている。ケース41の先端面には、流路ユニット42が接合される。流路ユニット42には、共通インク室421からインク供給路422及び圧力室423を通ってノズル424に至る一連のインク流路が設けられている。プリンター1の使用時において、インク流路はインクで満たされている。そして、圧力室423で与えられるインクの圧力変化により、ノズル424からはインク滴が噴射される。
図3Bに示すように、ノズル424は、所定の方向に所定ピッチDで設けられており、ノズル列を構成している。インク流路はノズル毎に設けられている。ここでは、ヘッドHDは、368個のノズルでノズル列が構成されている。これらのノズル424のうち、1番目から4番目のノズル、及び、365番目から368番目のノズルはダミーノズル群を構成する。各ピエゾ素子431は、駆動信号COMの印加によって変形し、対応する圧力室423の容積を変化させる。これにより、圧力室423内のインクに圧力変化が与えられる。
ヘッド制御部HCは、制御IC44とメモリーIC45とを有し、ヘッド側ケーブル46に実装されている。ヘッド側ケーブル46は、ヘッドHDが有する各ピエゾ素子431と中継基板47とを電気的に接続する。このヘッド側ケーブル46は、可撓性を有するフィルム状の配線部材、例えば電気的な絶縁性を有するフィルムで芯線を挟んだ配線部材によって構成されている。なお、ヘッド側ケーブル46が有する各芯線は、ヘッド制御部HC(制御IC44,メモリーIC45)にも接続されている。中継基板47は、ヘッド側ケーブル46とフラットケーブルFCとの間に設けられており、ヘッド側ケーブル46とフラットケーブルFCを電気的に接続する。これにより、プリンター側コントローラー60及び駆動信号生成回路30とヘッド制御部HC及び各ピエゾ素子431との間は、電気的に接続されている。
===ヘッドHDからのインク噴射について===
図4はヘッド制御部HCを説明するためのブロック図であり、図5はヘッド制御部HCにおける印刷データの流れを示す。ヘッド制御部HCが有する制御IC44は、制御ロジック441と、シフトレジスタ群442と、ラッチ回路群443と、デコーダ群444と、スイッチ群445を有する。
制御ロジック441は、スイッチ群445が有する各スイッチ445aの動作を定めるためのスイッチ動作データSPを記憶する。このプリンター1におけるスイッチ動作データSPは、例えば4種類のデータq0〜q3によって構成される。これらのデータq0〜q3は、デコーダ群444が有する各デコーダ444aへ出力される。そして、デコーダ444aで選択されたデータが、対応するスイッチ445aへ出力される。
また、制御ロジック441はデータ処理部446を有する。データ処理部446において、伝送方式の異なる印刷データ(例えば振幅の異なるデータ)を所定の振幅(例えばHレベルが3.3V、Lレベルが0Vの信号)を出力する。
シフトレジスタ群442には、ノズル424毎に定められるドット形成データSIがセットされる。なお、ドット形成データSIは、インク滴の噴射量をノズル424毎に定めるためのデータであり、液体の噴射を制御する際に用いられる制御データの一種である。このプリンター1において、ドット形成データSIは2ビットデータで構成されている。このため、インク滴の噴射量を4段階で定めることができる。例えば、データ[00]はインク滴の非噴射を示し、データ[01]は小ドットの形成に適した量のインク滴を噴射させることを示す。同様に、データ[10]は中ドットの形成に適した量、データ[11]は大ドットの形成に適した量のインク滴を噴射させることをそれぞれ示す。
そして、シフトレジスタ群442は、ドット形成データSIの上位ビットを記憶する上位側シフトレジスタ442aとドット形成データSIの下位ビットを記憶する下位側シフトレジスタ442bの組を、複数のノズル424のそれぞれについて有する。
ラッチ回路群443は、複数のラッチ回路を有しており、シフトレジスタ群442が有する各シフトレジスタにセットされたドット形成データSIをラッチする。このラッチ回路群443は、シフトレジスタ群442と同様に、上位側ラッチ回路443aと下位側ラッチ回路443bの組を、複数のノズル424のそれぞれについて有している。そして、上位側ラッチ回路443aは、上位側シフトレジスタ442aにセットされたドット形成データSIの上位ビットを、プリンター側コントローラー60から送られるラッチ信号で規定されるタイミングでラッチする。下位側ラッチ回路443bは、下位側シフトレジスタ442bにセットされたドット形成データSIの下位ビットをラッチ信号で規定されるタイミングでラッチする。これらの上位側ラッチ回路443a及び下位側ラッチ回路443bでラッチされることにより、シフトレジスタ群442にセットされたドット形成データSIはノズル424毎の組とされる。そして、ラッチされたドット形成データSIは、各デコーダ444aに入力される。
デコーダ群444は複数のデコーダ444aを有する。デコーダ444aは、ノズル424毎に設けられており、制御ロジック441からのスイッチ動作データSP(q0〜q3)を、対応するラッチ回路の組443a,443bでラッチされたドット形成データSIに基づいて選択する。例えば、デコーダ444aは、ドット形成データSIがデータ[00]のときにスイッチ動作データSPとしてデータq0を選択するなど設定されている。そして、デコーダ444aは、選択したスイッチ動作データSPを対応するスイッチ445aに出力する。このため、デコーダ444aは、スイッチ動作データ出力部の一種である。
スイッチ群445もノズル424毎に設けられた複数のスイッチ445aを有する。各スイッチ445aは、スイッチ動作データSPに基づいてオンオフが制御される。そして、スイッチ445aがオン状態のとき、駆動信号COMはピエゾ素子431に印加される。また、スイッチ445aがオフ状態のとき、駆動信号COMはピエゾ素子431に印加されない。これにより、駆動信号COMの駆動波形がピエゾ素子431に印加されたり遮断されたりする。ピエゾ素子431は、印加された駆動波形の電位変化に応じて、圧力室423内のインクに圧力変化を与える。その結果、ドット形成データSIの内容に応じてインク滴の噴射制御が行われる。
また、ヘッド制御部HCが有するメモリーIC45は、図2に示すように、ヘッド側ケーブル46、中継基板47、及び、フラットケーブルFC等を通じてプリンター側コントローラー60と電気的に接続されている。また、メモリーIC45は、ヘッド側ケーブル46を介して制御IC44と通信可能に接続されている。なお、メモリーIC45は、後述する周波数解析部451を有する。
===印刷データの伝送方法について===
<コントローラーのデータ伝送部651について>
図1に示すように、コントローラー60の制御ユニット65は、各ノズルのインク噴射に関するデータであるドット形成データSIをヘッドHDに伝送する「データ伝送部651」を有する。
図6Aは、データ伝送部651が有する出力バッファ652を説明するための図である。データ伝送部651は、図1に示すように、出力バッファ652と書込伝送制御部653とを有する。プリンター1がコンピューターCPから受信して、本体側メモリー62に記憶しているドット形成データSIを、書込伝送制御部653は読み出し、その読み出したドット形成データSIを出力バッファ652に書き込んだりする。そして、書込伝送制御部653は、出力バッファ652に書き込んだドット形成データSIを所定のデータ量(単位データ量)ごとにヘッドHDに伝送する。
書込伝送制御部653からヘッドHDに伝送されるドット形成データSIの単位データ量(ビット数,DataLength)は、出力バッファ652の構成に応じて定められる。この出力バッファ652では、図6Aに示すように、データ上にてノズル列方向に対応する方向(以下ノズル列方向)に「Nワード(画素)」、データ上にてノズル列と交差する方向に対応する方向(以下、交差方向)に「8ワード(画素)」、合計「N×8ワード(画素)」のデータを記憶することができる。
1ワード(1画素)のデータが1つのノズルNzに割り当てられる。前述のように、ここでは、1ワード(1画素)当たりのドット形成データSIを「2ビット」とするため、出力バッファ652は合計「N×16ビット」のデータを記憶することができる。ここで説明のため、図示するように、出力バッファ652に記憶されるデータを、ノズル列方向の先端側から順に、2ビットごとに、「SI(1)、SI(2)、…SI(N)」と付し、交差方向の左側から順に、2ビットごとに、「1列、2列、…8列」と付し、2ビットのデータのうちの上位ビットを「H」、下位ビットを「L」と付す。
そして、書込伝送制御部653は、出力バッファ652で定められる単位ごとにドット形成データSIを読み出して、ヘッドHDに伝送する。図6Aの例において書込伝送制御部653は、ノズル列方向の先端側から順に1列目のN個の上位ビットHを出力バッファ652から読み出してヘッドHDへ伝送する(SI(H,1)、SI(H,2)…SI(H,N))。即ち、書込伝送制御部653は、出力バッファ652からN個のデータを読み出し、ヘッドHDへ伝送する。次に、書込伝送制御部653は、ノズル列方向の先端側から順に1列目のN個の下位ビットLをヘッドHDへ伝送する伝送する(SI(L,1)、SI(L,2)…SI(L,N))。
こうして1列目のデータが伝送し終わったら、書込伝送制御部653は、列ごとの上位ビットHまたは下位ビットLをN個ずつ伝送し、最終的に8列目のN個の下位ビットLまで伝送する。つまり、書込伝送制御部653からヘッドHDに伝送されるドット形成データSIの単位データ量は「N個」となる。
なお、列ごとに並ぶN個のデータ(SI(1)〜SI(N))は、媒体上において交差方向の位置が等しい画素に対応するドット形成データSIである。ここでは、出力バッファ652に記憶されるデータのうち、同じ列(例えば1列目)におけるN個のドット形成データ(SI(1)〜SI(N))は、同じノズル列に属するノズルに割り当てられ、ドット形成データSI(1)〜SI(N)により同じタイミングのインク噴射が制御される。つまり、書込伝送制御部653からヘッドユニット40に伝送されるドット形成データSIの単位データ量は「N個」であるため、1つの書込伝送制御部653にてインク噴射を制御できるノズル数は「N個」であると言える。
図6Bは単位データ量Nが180個であるデータ伝送部651から伝送されるデータを示す図であり、図6Cでは単位データ量Nが360個であるデータ伝送部651から伝送されるデータを示す図である。プリンター1の機種ごと、即ち、コントローラー60の種類によってデータ伝送部651の単位データ量Nが異なる。また、ダミーノズルにドット形成データSIを伝送するプリンター1もあれば、伝送しないプリンター1もある。
図6Bに示すように、単位データ量Nが180個であり、ダミーノズルにデータを伝送しないコントローラー60であれば、所定の伝送期間Tの間に、まず、180ノズル分の上位ビット(SI(H,1)〜SI(H,180))がヘッドユニット40に伝送された後に、180ノズル分の下位ビット(SI(L,1)〜SI(L,180))がヘッドユニット40に伝送される。そのため、1ノズル列分(360個)のデータを伝送するためには、2本の信号線が必要となる。なお、所定の伝送期間Tとは、あるタイミングで同時にノズルからインク滴を噴射させるためのデータを伝送する期間である。
一方、図6Cに示すように、単位データ量が360個であり、ダミーノズルにデータを伝送しないコントローラー60であれば、所定の伝送期間Tの間に、まず、360ノズル分の上位ビット(SI(H,1)〜SI(H,360))がヘッドユニット40に伝送された後に、360ノズル分の下位ビット(SI(L,1)〜SI(L,360))がヘッドユニット40に伝送される。そのため、1ノズル列分のデータを伝送するためには1本の信号線で足りる。ただし、図6Cでは図6Bに比べて、所定の伝送期間Tに2倍のデータ量をヘッドユニット40に伝送するため、1ビットデータ(例えばSI(H,1))の伝送時間が短くなる。
このようにコントローラー60の出力バッファ652の記憶容量に応じて、データ伝送部651からヘッドユニット40に伝送する単位データ量Nが異なり、データを伝送する信号線の数や1ビットデータの伝送時間が異なってくる。
<印刷データの伝送方式について>
図7Aから図7Cは、コントローラー60からヘッドユニット40への印刷データの伝送方式の違いを示す図である。プリンター1の機種によってコントローラー60の種類が異なり、コントローラー60の種類が異なるとヘッドユニット40への印刷データの伝送方式が異なることが多い。ここでは3種類の伝送方式を例に挙げて実施形態を説明する。また、以下に示す伝送方式は、印刷データの中のドット形成データSIおよびクロック信号SCLK(ヘッドから流体を噴射させるためのデータに相当)に関する伝送方式とする。
図7Aは、第1伝送方式を説明するための図である。第1伝送方式を用いるコントローラー60では、図6Bに示すようにデータ伝送部651の単位データ量が180個であり、ダミーノズルのドット形成データSIは伝送しないとする。即ち、第1伝送方式では、伝送周期T内に180ノズル分のデータを送信し、この時のクロック信号SCLKの周波数を「第1周波数f1(Hz)」とする。
そのため、第1伝送方式では、1ノズル列分(360個のノズル分)のドット形成データSIを伝送するために2つの信号線が必要となる。また、ヘッドHDには図3Bに示すノズル列が4つ設けられているとする。例えば、イエローインクを噴射するイエローノズル列Yとマゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列とシアンインクを噴射するノズル列CとブラックインクKを噴射するノズル列Kが設けられているとする。そのため、コントローラー60からヘッドユニット40にドット形成データSIを伝送するために必要な信号線は8本(=2×4)となる。
そして、第1伝送方式により伝送されるドット形成データ信号SIでは、ドット形成データ信号SIの示す電位が「3.3V」である場合、ドット形成データSIのデータレベルを「1=Hレベル」とし、ドット形成データ信号SIの示す電位が「0V(GND・グラウンド)」である場合、ドット形成データSIのデータレベルを「0=Lレベル」とする。即ち、第1伝送方式によりヘッドユニット40に伝送されるドット形成データ信号SI(及びクロック信号SCLK)は、図7Aに示すように、GND基準の3.3V振幅の信号である。
なお、クロック信号SCLKで発生するパルスの立上りタイミング又は立下りタイミングにおけるドット形成データ信号SIの電位によって、ドット形成データSIのデータレベルHLを判断する。例えば、図7Aのドット形成データ信号SIは、ブラックノズル列Kのドット形成データSIに関する信号である。そして、クロック信号SCLKの最初のパルスの立上りタイミングにおけるドット形成データ信号SIの電位が3.3Vであるため、ブラックノズル列Kの先端ノズルに割り当てられる画素の上位ビットSI(H,K1)が「1(Hレベル)」であると判断できる。同様に、クロック信号SCLKの最初のパルスの立下りタイミングにおけるドット形成データ信号SIの電位が0Vであるため、ブラックノズル列Kの先端から2番目のノズルに割り当てられる画素の上位ビットSI(H,K2)が「0(Lレベル)」であると判断できる。
図7Bは、第2伝送方式を説明するための図である。第2伝送方式を用いるコントローラー60では、図6Cに示すようにデータ伝送部651の単位データ量が360個であり、ダミーノズルのドット形成データSIは伝送しないとする。即ち、第2伝送方式では、伝送周期T内に360ノズル分のドット形成データSIを送信し、この時のクロック信号SCLKの周波数を「第2周波数f2(Hz)」とする。なお、第2伝送方式の方が第1伝送方式に比べて伝送周期T内に伝送するドット形成データSIの数が多く、クロック信号SCLKに発生するパルス数も多くなるため、第2周波数f2の方が第1周波数f1よりも高い周波数となる。
第2伝送方式では、1ノズル列分のドット形成データSIを1本の信号線で伝送するため、コントローラー60からヘッドユニット40にドット形成データSIを伝送するために必要な信号線は4本となる。このため、第2伝送方式では第1伝送方式に比べて信号線を少なくすることができる。
ただし、第2伝送方式では第1伝送方式に比べて、伝送期間T内に2倍のデータ量をヘッドヘッドユニット40に伝送するため、1ビットデータの伝送時間が短くなる。そのため、仮に、第2伝送方式のドット形成データ信号SIを、第1伝送方式と同様にGND基準の3.3V振幅の信号とすると、1ビットデータ分の短い伝送期間に電位変化が追随できず、ノイズ発生や波形のなまりの原因になってしまう。特に、コントローラー60からヘッドユニット40へフレキシブルケーブルFCを介してドット形成データ信号SIを伝送する際に、ドット形成データ信号SIがノイズ発生源となり、プリンター1内の他の機器に影響を及ぼしてしまう。
そこで、第2伝送方式では、第1伝送方式よりも、ドット形成データ信号SIの振幅を例えば「1.6V」と小さくする。振幅が小さければ1ビットデータの伝送時間が短くとも電位変化に追随することができ、ノイズの発生を抑え、外部へのノイズの影響を小さくすることが出来る(EMI対策)。逆に言えば、第1電送方式では、伝送期間Tにて伝送するドット形成データ数が少なく、1ビットデータの伝送時間を長く確保できるため、ドット形成データ信号SIの振幅を3.3Vと大きく出来る。
また、第1伝送方式にて伝送されるドット形成データ信号SI(及びクロック信号SCLK)では、GND(0V)を基準に3.3V振幅のパルスを発生させているのに対して、第2伝送方式にて伝送されるドット形成データ信号SIでは、1.7Vを基準に1.6V振幅のパルスを発生させている。このように、GNDよりも高い電位を基準にパルスを発生させることによって、ノイズの発生を抑え、外部へのノイズの影響も小さくすることが出来る。そのため、第2伝送方式により伝送されるドット形成データ信号SIでは、ドット形成データ信号SIの示す電位が「3.3V」である場合、ドット形成データSIのデータレベルを「1=Hレベル」とし、ドット形成データ信号SIの示す電位が「1.7V」である場合、ドット形成データSIのデータレベルを「0=Lレベル」とする。
図7Cは、第3伝送方式を説明するための図である。第3伝送方式を用いるコントローラー60では、伝送周期T内に2ノズル列分のドット形成データSI(ダミーノズルを除く)を伝送する。図7Cのドット形成データ信号SIでは、ブラックノズル列Kのドット形成データ(例えばSI(H,K1))とシアンノズル列のドット形成データ(例えばSI(H,CI))が交互に伝送される。この時のクロック信号SCLKの周波数を「第3周波数f3(Hz)」とする。第3周波数f3は第1周波数f1及び第2周波数f2よりも高い周波数となる。
第3伝送方式では、伝送周期T内に伝送するドット形成データSIの数が多いため、第2伝送方式と同様に、ドット形成データ信号SIの振幅を「1.6V」と小さくする。そうすることで、ノイズの発生を抑え、外部へのノイズの影響を小さくすることが出来る(EMI対策)。
また、第3伝送方式では「差動伝送」にてドット形成データSIを伝送する。差動伝送では図7Cに示すように逆位相の信号(非反転信号・反転信号)を伝送する。差動伝送を行うことで、非反転信号と反転信号に共通に発生するノイズを後の処理にて打ち消すことができ、ノイズの影響を除去したデータを取得することが出来る。なお、第1伝送方式および第2伝送方式は、非反転信号のみが伝送される所謂シングルエンド伝送である。シングルエンド伝送に比べて差動伝送では共通ノイズを相殺でき、伝送期間に多くのデータ数を伝送できる。ただし、差動伝送ではシングルエンド伝送に比べて2倍の信号線が必要となる。そのため、第3伝送方式では、伝送周期T内に2ノズル列分のドット形成データSIを伝送するが、非反転信号と反転信号の信号線が必要となるため、コントローラー60からヘッドユニット40にドット形成データSIを伝送するために必要な信号線は4本となる。
また、第3伝送方式により伝送される非反転のドット形成データ信号SIでは、非反転のドット形成データ信号SIの示す電位が「1.6V」である場合、ドット形成データSIのデータレベルを「1=Hレベル」とし、非反転のドット形成データ信号SIの示す電位が「0V(GND)」である場合、ドット形成データSIのデータレベルを「0=Lレベル」とする。なお、図7Cでは説明の簡略のためクロック信号SCLKは非反転信号のみを示しているが、クロック信号SCLKも差動伝送されるとする。
以上をまとめると、第1伝送方式は高振幅(3.3V)のシングルエンド伝送であり、第2伝送方式はLレベル電位をGNDからレベルシフトさせた低振幅(1.6V)のシングルエンド伝送であり、第3伝送方式は低振幅(1.6V)の差動伝送(LVDS)である。プリンターの機種ごと、即ち、コントローラー60の種類ごとにより、コントローラー60からのドット形成データ信号SIおよびクロック信号SCLKの伝送方式(図7A〜図7C)が異なる。そうすると、ドット形成データ信号SIおよびクロック信号SCLKを受信したヘッドユニット40側の処理(後述)も異なってくる。
仮に、コントローラー60の種類ごと(プリンター1の機種ごと)に専用のヘッドユニット40を製造すると、多品種のプリンターを製造するプリンターメーカーでは、多くの専用品となるヘッドヘッドユニット40を製造しなければならず、製造コストがかかってしまう。そこで、本実施形態ではヘッドユニット40の汎用化を目的とする。
===ヘッドユニット40における受信信号処理について===
図8Aは、コントローラー60から伝送されたドット形成データ信号SI及びクロック信号SCLKをヘッドユニット40が受信した後の処理の流れを示す図である。図7に示すように、コントローラー60の種類に応じて、ドット形成データ信号SI及びクロック信号SCLKの伝送方式が異なる。伝送方式が異なると、図8Aに示すように、ヘッドユニット40が受信するドット形成データ信号SI及びクロック信号SCLKの形状が異なる。
具体的には、第1伝送方式(図7A)で伝送されたドット形成データ信号SI及びクロック信号SCLK(以下、第1受信信号SI(1)・SCLK(1))は、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の信号である。第2伝送方式(図7B)で伝送されたドット形成データ信号SI及びクロック信号SCLK(以下、第2受信信号SI(2)・SCLK(2))は、GNDに対してLレベル電位がレベルシフトした1.6V振幅の信号である。第3伝送方式(図7C)で伝送されたドット形成データ信号SI及びクロック信号SCLK(以下、第3受信信号SI(3)・SCLK(3))は、Lレベル電位がGNDである1.6V振幅の逆位相信号(非反転信号・反転信号)である。
このようにヘッドユニット40がコントローラー60から受信する信号SI・SCLKは、コントローラー60の種類によって、振幅が異なったり、Lレベル電位がGNDからレベルシフトしたり、逆位相の2つの信号であったりするため、そのままの受信信号SI・SCLKでシフトレジスタ群442(図4)にドット形成データSIのデータレベルHLを判断させることは難しい。
そのため、制御ロジック441内のデータ処理部446において受信信号SICK・SCLKを処理して同じ形状の出力信号SI’・SCLK’に変換する。ここでは、受信信号SI・SCLKを、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の出力信号SI’・SCLK’に変換する。即ち、受信信号SI・SCLKがHレベルの時に3.3V(第1電位に相当)を出力し、受信信号SI・SCLKのレベルがLレベルの時に0V(第2電位に相当)を出力する出力信号SI’・SCLK’(出力データに相当)に変換する。そうすることで、シフトレジスタ群442がドット形成データSIのデータレベルHLを容易に判断することができる。例えば、図5に示すように、出力信号SI’・SCLK’がシフトレジスタ442a,442bに入力されることによって、各シフトレジスタ442a,442bはクロック信号SCLK’の立上り又は立下りのタイミングにおけるドット形成データ信号SI’の電位(3.3Vか0V)に基づきドット形成データSIのデータレベルHLを判断する。
また、コントローラー60から伝送された受信信号SI・SCLKは、長い伝送経路の間に(FCを通過する期間に)、ノイズが発生したり、波形がなまったりしてしまう。そのため、ノイズが発生したりなまったりしている受信信号SI,SCLKでは、シフトレジスタ群442が誤ってドット形成データSIのデータレベルHLを判断してしまう虞がある。そのため、受信信号SI・SCLKをデータ処理部446において出力信号SI’・SCLK’に変換することで、シフトレジスタ群442はノイズの発生や波形のなまりが抑えられた出力信号に基づいてドット形成データSIのデータレベルHLを正確に判断することが出来る。即ち、データ処理部446は受信信号SI・SCLKをきれいな波形に整形する役割を担う。
データ処理部446が受信信号SI・SCLKを出力信号SI’・SCLK’に変換する処理(後述)は、受信信号SI・SCLKの種類により異なる。即ち、異なる伝送方式でヘッドユニット40に伝送された受信信号SI(1)〜(3)・SCLK(1)〜SCLK(3)によって、データ処理部446での処理が異なる。そのため、ヘッドユニット40を汎用化させるためには、各伝送方式(図7)による受信信号SI・SCLKの種類に応じて、受信信号SI・SCLKを出力信号SI’・SCLK’に変換するためのデータ処理部を備える必要がある。
図8Bは、クロック信号SCLKの周波数に対応する制御信号DSW(1)・DSW(2)を示す制御信号テーブルであり、図9は、受信信号SI・SCLKを出力信号SI’・SCLK’に変換するデータ処理部446を説明する図である。図8Aのテーブルは、コントローラー60から受信したクロック信号SCLKの周波数と制御信号DSWを対応付けた制御信号テーブルであり、制御信号テーブルはヘッドユニット40内のメモリーIC45内に記憶されている。また、このヘッドユニット40では、第1伝送方式による第1受信信号SI(1)・SCLK(1)は第1データ処理部70で処理し、第2伝送方式による第2受信信号SI(2)・SCLK(2)、及び、第3伝送方式による第3受信信号SI(3)・SCLK(3)は共通の第2第3データ処理部71で処理する。そのため、受信信号SI・SCLKの種類に応じて、受信信号SI・SCLKを処理するデータ処理部70・71を変更する必要がある。
ところで、図7に示す3つの伝送方式によって伝送された受信信号SI・SCLKではそれぞれ周波数f1〜f3が異なる。そこで、本実施形態のヘッドユニット40は、コントローラー60から受信したクロック信号SCLKの周波数に基づいて、受信信号SI・SCLKを、第1データ処理部70に入力するのか、それとも、第2第3データ処理部71に入力するのかを決定する。そのために、ヘッドユニット40のメモリーIC45(図8A)には周波数解析部451を設け、コントローラー60から受信したクロック信号SCLKをメモリーIC45にも入力する。ヘッドユニット40はコントローラー60からデータを受信すると、周波数解析部451にクロック信号SCLKの周波数を解析させる。そして、メモリーIC45が、その周波数と制御信号テーブル(図8B)に基づいて、制御信号DSWを決定し、制御信号DSWを制御ロジック441に出力する。なお、クロック信号SCLKの周波数を解析するに限らず、ドット形成データ信号SIの周波数を解析し、制御信号DSWを決定してもよい。
制御信号テーブル(図8B)では、各伝送方式におけるクロック信号SCLKの周波数f1〜f3に対して2つの制御信号DSW(1)・DSW(2)が対応付けられている。一方の第1制御信号DSW(1)は、受信信号SI・SCLKを図9に示す第1データ処理部70に入力するのか、それとも第2データ処理部71に入力するのか、を決定するための制御信号である。他方の第2制御信号DSW(2)は、第2第3データ処理部71内の動作を制御するための制御信号である(後述)。
図8Bの制御信号テーブルによると、第1伝送方式によるクロック信号SCLK(1)の周波数f1に対して第1制御信号DSW(1)は「1(=Hレベル)」が設定されており、第2伝送方式によるクロック信号SCLK(2)の周波数f2および第3伝送方式によるクロック信号SCLK(3)の周波数f3に対して第1制御信号DSW(1)は「0(=Lレベル)」が設定されている。
データ処理部446(図9)では、メモリーIC45からの第1制御信号DSW(1)に応じて、コントローラー60からの受信信号SI,SCLKを、第1データ処理部70か第2第3データ処理部71の何れかに入力する。また、第1データ処理部70と第2第3データ処理部71の出力側には、それぞれトランスミッションゲート72(1)〜72(3)が設けられている。このトランスミッションゲート72にも第1制御信号DSW(1)が入力される。なお、本実施形態ではドット形成データ信号SIを処理するデータ処理部446とクロック信号SCLKを処理するデータ処理部446が設けられ、ドット形成データ信号SIもクロック信号SCLKも同じ処理が行われるとする。以下では説明の簡略のため、2つの受信信号を代表してドット形成データ信号SIの処理について説明する。
第1制御信号DSW(1)が「1(Hレベル)」であれば、データ処理部446は、図9に示すM入力部にドット形成データ信号SIを入力する。また、第1制御信号DSW(1)が「1」であるとき、第1データ処理部70の出力側のトランスミッションゲート72(1)はオンとなり、第1データ処理部70から出力された信号を通過させる。一方、第2第3データ処理部71の出力側のトランスミッションゲート72(2)・72(3)はオフとなり、第2第3データ処理部71が動作しないように設定されている。
これに対して、第1制御信号DSW(1)が「0(Lレベル)」であれば、データ処理部446は、M入力部とP入力部に信号を入力する(詳細は後述)。そして、第1制御信号DSW(1)が「0」であるとき、第1データ処理部70の出力側のトランスミッションゲート72(1)はオフとなり、第1データ処理部70は動作しないように設定されている。一方、第2第3データ処理部71の出力側のトランスミッションゲート72(2)・72(3)はオンとなり、第2第3データ処理部71からの出力された信号を通過させる。
なお、第2第3データ処理部71の出力側には2つのトランスミッションゲート72(2)・73(3)が設けられている。これは図7Cの第3伝送方式のように2つのノズル列に関するドット形成データSIが同じ信号で伝送された場合に、第2第3データ処理部71から各ノズル列用のドット形成データ信号SIに分かれて出力されるためである。即ち、一方のトランスミッションゲート72(2)から出力されたドット形成データ信号SIはノズル列Xに対応するシフトレジスタ群442に出力され、他方のトランスミッションゲート72(3)から出力されたドット形成データ信号SIはノズル列Yに対応するシフトレジスタ群442に出力される。
このように本実施形態のヘッドユニット40では、コントローラー60から受信したクロック信号SCLKの周波数に応じて(第1制御信号DSW(1)に応じて)、受信信号SI・SCLKを第1データ処理部70にて処理するのか、それとも第2第3データ処理部71にて処理するのかを、切替えることができる。こうすることで、コントローラー60の種類ごと(プリンター1の機種ごと)にコントローラー60からの受信信号SI・SCLKの形状が異なり、ヘッドユニット40における受信信号SI・SCLKの処理が異なるとしても、ヘッドユニット40の汎用化を実現できる。
また、受信信号(クロック信号SCLK)の周波数に応じて、第1データ処理部70と第2第3データ処理部71の何れに受信信号SI・SCLKを入力するのかを決定することで、例えばプリンターの製造工程やヘッドユニット40の交換時において、コントローラー60とヘッドユニット40を対応付ける作業を減らすことが出来る。具体的には、コントローラー60が組み込まれたプリンター1本体部に汎用化のヘッドユニット40を取り付けた後、そのコントローラー60の伝送方式に応じてヘッドユニット40が受信信号SIをどのデータ処理部70・71にて処理するのかを規定する必要がない。例えば、ヘッドユニット40のメモリーIC45などに、受信信号SI・SCLKの処理方法を決定するための制御信号(ここではDSW(1))を記憶させる作業を必要としない。つまり、本実施形態のヘッドユニット40では、受信信号(クロック信号SCLK)の周波数に応じて第1制御信号DSW(1)が決定し、その第1制御信号DSW(1)に応じて受信信号SI・SCLKの処理方法が自動に切り替わる。
以下、各伝送方式による受信信号SI・SCLKの各データ処理部70,71での処理方法について説明する。
<第1受信信号SI(1)の処理について>
図10は、第1受信信号SI(1)・SCLK(1)の処理方法を説明する図である。図7Aの第1伝送方式にて伝送された第1受信信号SI(1)は(以下、クロック信号SCLK(1)は省略)、図示するようにLレベル電位がGNDの3.3V振幅の信号である。コントローラー60からヘッドユニット40に伝送されてきた受信信号SI(1)にはノイズが発生したり波形がなまったりしている。そのため、第1データ処理部70にて波形を整える。そうすることで、シフトレジスタ群442がドット形成データSIのデータレベルHLを正確に判断することができる。
なお、前述の図9に示すように、クロック信号SCLK(1)の周波数f1(第1の周波数に相当)に応じてメモリーIC45がデータ処理部446に第1制御信号DSW(1)=[1]を出力すると、データ処理部446は、第1データ処理部70のM入力部に第1受信信号SI(1)を入力する。また、トランスミッションゲート72にも第1制御信号DSW(1)が入力され、第1データ処理部70は動作し、第2第3データ処理部71は動作しない。
第1データ処理部70は比較回路(例えばシュミットトリガ回路)とする。図10の第1データ処理部70では、M入力部からの信号が、抵抗Rを介してCMOSに入力される。CMOSはPチャンネルトランジスタPtとNチャンネルトランジスタNtが接続された回路である。CMOSに入力される信号がHレベルの時にNチャネルトランジスタNtがオンとなり、図10ではGND電位が出力される。一方、CMOSに入力される信号がLレベルの時にPチャンネルトランジスタPtがオンとなり、図10では3.3Vが出力される。
そして、この第1データ処理部70では、受信信号SI(1)の示す電位がGNDから3.3V振幅の35%(約1.2V)以上である時(t0〜t1)、出力信号SI’(1)の電位が「3.3V」となり、受信信号SI(1)の示す電位がGNDから3.3V振幅の35%未満である時、出力信号SI’の電位が「0V」となるように設定されている。即ち、第1データ処理部70では、GNDから3.3V振幅の35%の電位を基準電位(第1の基準電位に相当)とし、受信信号SI(1)の電位が基準電位以上であればHレベルの電位(3.3V)が出力され、受信信号SI(1)の電位が基準電位未満であればLレベルの電位(0V)が出力される。その結果、第1データ処理部70からは、受信信号SI(1)のデータレベルに応じて、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の信号が出力信号SI’(1)として出力される。
このように受信信号SI(1)を第1データ処理部70にて処理することによって、コントローラー60からの受信信号SI(1)のノイズや波形のなまりを除去することができ、シフトレジスタ群442はきれいに整形された出力信号SI(1)によって、ドット形成データSIのデータレベルHLを正確に判断することが出来る。
なお、第1データ処理部70内のCMOSでは、入力信号がLレベルの時に3.3Vが出力され、入力信号がHレベルの時に0Vが出力され、ドット形成データ信号SI(1)のデータレベルと逆位相になるため、CMOSの出力側に反転部73を設ける。また、第1受信信号SI(1)のデータレベルHLを判断する基準電位は、GNDから3.3V振幅の35%の電位地点(1.2V)に限らず、例えば振幅の50%の電位地点でもよい。
<第2受信信号SI(2)の処理について>
図11Aは第2受信信号SI(2)(以下SCLK(2)は省略)の処理方法を説明する図であり、図11BはM入力部(第1入力部に相当)に入力される電位Vm(受信信号SI(2))とP入力部(第2入力部に相当)に入力される電位Vp(一定電位)を示す図であり、図11Cは第1制御信号がHレベル(1)の時の差動回路74の動きを示す図である。図7Bの第2伝送方式にて伝送された第2受信信号SI(2)は、図11Aに示すようにGNDに対して電位が1.7Vレベルシフトした1.6V振幅の信号である。この受信信号SI(2)を、第2第3データ処理部71によって、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の出力信号SI’(2)に変換する。
第2第3データ処理部71は、差動回路74とCMOSと反転部73を有する。差動回路74は、対称配置されたNチャンネルトランジスタNt(1)(2)と同じく対象配置されたPチャンネルトランジスタPt(1)(2)を有する。一方のNチャンネルトランジスタNt(1)のベース部分がM入力部であり、他方のNチャンネルトランジスタNt(2)のベース部分がP入力部である。そして、一方側のPチャンネルトランジスタPtとNチャンネルトランジスタNt(2)の接合部が出力部である。差動回路74から出力された信号はCMOSに入力される。また、図10の差動回路74では、対称配置のNチャンネルトランジスタNt(1)(2)の接合部から別のNチャンネルトランジスタNt(3)を介してGND(又は一定電位VSS)に接続されている。
前述のように(図9)、クロック信号SCLK(2)の周波数f2(第2の周波数に相当)に応じてメモリーIC45がデータ処理部446に第1制御信号DSW(1)=[0]を出力すると、データ処理部446は第2受信信号SI(2)を第2第3データ処理部71にて処理する。更に、メモリーIC45は、クロック信号SCLK(2)の周波数f2に応じて、第2受信信号SI(2)と第3受信信号SI(3)を区別するための第2制御信号DSW(2)を、制御信号テーブル(図8B)を参照し、データ処理部446に出力する。図8Bの制御信号テーブルによると、第2伝送方式のクロック信号SCLK(2)の周波数f2に対応する第2制御信号DSW(2)は「1(Hレベル)」に設定されており、第3伝送方式のクロック信号SCLK(3)の周波数f3に対応する第2制御信号DSW(2)は「0(Lレベル)」に設定されている。
第2制御信号DSW(2)が「1」である時データ処理部446は、第2第3データ処理部71の差動回路74のM入力部に第2受信信号SI(2)を入力し、差動回路74のP入力部に一定電位を入力する。ここでは、P入力部に入力する一定電位を2.5Vに設定する。P入力部に入力される電位Vpは、図11Bに示すように、M入力部に入力される第2受信信号SI(2)の振幅の中央部の電位に相当する。
第2第3データ処理部71では、M入力部に入力された第2受信信号SI(2)の電位Vmと、P入力部に入力された一定電位Vp=2・5Vの差分電位「Vm−Vp」に基づく電位(差に基づく電位に相当)が基準電位(第2の基準電位に相当)以上であればHレベルの電位(3.3V)が出力され、差分電位「Vm−Vp」に基づく電位が基準電位未満であればLレベルの電位(0V)が出力される。
具体的には、差動回路74の出力部から、M入力部に入力された第2受信信号SI(2)の電位VmとP入力部に入力された一定電位Vp(=2.5V)の差分電位に基づく電位(図中の(Vm−Vp)α)が出力される。図11Aに示す差動回路74では上段の対称配置のPチャンネルトランジスタがカレントミラー回路の働きをして電流を増幅するため、差動回路74からの出力部から差分電位「Vm−Vp」が電力増幅された信号が出力される。そして、差動回路74から出力された電位(Vm−Vp)αはCMOSに入力され、閾値電位に基づきオンオフ制御される(第1データ処理部70と同様)。その結果、第2受信信号SI(2)は、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の信号が出力信号SI’(2)として出力される。
こうすることで、GNDからLレベル電位がレベルシフトした低振幅(1.6V)の受信信号SI(2)を、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の出力信号SI’(2)に変換できる。その結果、シフトレジスタ群442はドット形成データSIのデータレベルHLを判断することができる。また、出力信号SI’ではノイズや波形のなまりが除去されるため、シフトレジスタ群442はドット形成データSIのデータレベルHLを正確に判断することが出来る。
なお、図11Cに示すように本実施形態の差動回路74には第1制御信号DSW(1)が入力される。ヘッドユニット40が第1受信信号SI(1)を受信し、第1データ処理部70にて処理する場合、第1制御信号DSW(1)は「1(Hレベル)」となる。この時、差動回路74の対称配置のNチャンネルトランジスタNt(1)Nt(2)の接合部とGNDの間のNチャンネルトランジスタNt(3)に第1制御信号「1(Hレベル)」が入力されることによって、NチャンネルトランジスタNt(3)がオンとなり、M入力部およびP入力部の入力信号がGNDに流れてしまう(又は所定電位VSSに落ち着いてしまう)。このように、第1制御信号DSW(1)が「1」のとき、差動回路74が動作しないように設定されている。
即ち、第1受信信号SI(1)が第2第3データ処理部71によって処理されてしまうことを防止できる。こうすることで、ヘッドユニット40が受信した信号SIを、伝送方式に応じた処理形式(データ処理部70,71)によって処理することができる。また、図9にて説明しているように、各データ処理部70・71の出力側に設けられたトランスミッションゲート72にも第1制御信号DSW(1)が入力され、どちらか一方が動作するように設定されており、受信信号SIの種類に応じて正しいデータ処理部70,71が使用されるように2重に設定されている。
<第3受信信号SI(3)の処理について>
図12Aは、第3受信信号SI(3)(以下、クロック信号SI(3)は省略)の処理方法を説明する図であり、図12Bは、受信信号SI(3)のデータレベルを判断する際の基準電位Vxを示す図である。図7Cの第3伝送方式で伝送された第3受信信号SI(3)は、Lレベル電位がGNDである1.6V振幅の信号であり、逆位相の2つの信号(非反転信号と反転信号)である。この受信信号SI(3)を第2第3データ処理部71によって、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の非反転出力信号SI’(3)に変換する。まず、コントローラー60からのクロック信号SCLK(3)の周波数f3(第3周波数に相当)に応じてメモリーIC45がデータ処理部446に第1制御信号DSW(1)=[0]を出力し、データ処理部446は、第3受信信号SI(3)を第2第3データ処理部71にて処理する。
また、メモリーIC45は、クロック信号SCLK(3)の周波数f3に応じて第2制御信号DSW(2)=[0]もデータ処理部446に出力する。そうすると、データ処理部446は、図12Aに示すように第2第3データ処理部71の差動回路74のM入力部に非反転の受信信号SI(3)を入力し、差動回路74のP入力部に反転の受信信号SI(3)を入力する。第2第3データ処理部71では、図12Bに示すように、M入力部に入力された非反転信号の電位Vm(実線)と、P入力部に入力された反転信号の電位Vp(点線)の差分電位「Vm−Vp」が閾値Vx以上であればHレベルの電位(3.3V)が出力され、差分電位「Vm−Vp」が閾値Vx未満であればLレベルの電位(0V)が出力されるように設定されている。
具体的には、M入力部に非反転受信信号SI(3)が入力され、P入力部に反転受信信号SI(3)が入力されると、第2受信信号SI(2)の処理時と同様に、差動回路74から非反転受信信号SI(3)の電位Vmと反転受信信号SI(3)の電位Vpの差(Vm―Vp)に基づく電位(図中では(Vm−Vp)α)が出力される。そして、非反転信号と反転信号の電位差(Vm−Vp)に基づく電位はCMOSに入力され、基準電位(第3の基準電位に相当)に基づきオンオフ制御される。
その結果、コントローラー60から伝送された低振幅(1.6V)の逆位相の受信信号SI(3)を、受信信号SI(3)のデータレベルHLに応じて、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の出力信号SI’(3)に変換できる。そうすることで、シフトレジスタ群442がドット形成データSI’のデータレベルHLを判断することが出来る。また、図12Bに示すように、差動回路74から非反転信号の電位Vmと反転信号の電位Vpの差に基づく電位が出力され、その際に非反転信号と反転信号に共通に発生するノイズが相殺される。即ち、差動回路74から出力される信号はノイズが除去されるため、多数のドット形成データSIを伝送する場合に適している。また、第3伝送方式では、2ノズル列分のドット形成データSI(図7Cではブラックノズル列Kとシアンノズル列C)が同じ信号にて伝送されるため、第2第3データ処理部71において、2ノズル列分のドット形成データSIを1ノズル列分ごとのドット形成データSIに分ける作業を行う(不図示)。
<第2受信信号と第3受信信号の処理の共通化について>
図13は、第2受信信号SI(2)と第3受信信号SI(3)の切り替え方法を説明するための図である。本実施形態のヘッドユニット40では、第2受信信号SI(2)(GNDからレベルシフトした1.6V振幅の受信信号)と、第3受信信号SI(3)(Lレベル電位がGNDである1.6V振幅の逆位相信号)を、同じ第2第3データ処理部71(差動回路74)で処理している。一方、第1受信信号SI(1)(Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の信号)は、第1データ処理部70(比較回路)で処理を行っている。
即ち、シングルエンド伝送された第1受信信号SI(1)と第2受信信号SI(2)を異なるデータ処理部70,71にて処理し、シングルエンド伝送された第2受信信号SI(2)と差動伝送された第3受信信号SI(3)を同じ第2第3データ処理部71にて処理している。
これは、第2受信信号SI(2)は、第1受信信号SI(1)に比べて振幅が小さく、EMI対策のためにLレベル電位がGNDからレベルシフトしているため、第2受信信号SI(2)を第1データ処理部70にて処理することが出来ないからである。具体的には、第1データ処理部70では、図10に示すように、M入力部に入力された受信信号SI(1)を、GNDから3.3V振幅の35%地点(約1.2V)を基準にデータレベルHLを判断している。そのため、第2受信信号SI(2)では、Lレベル電位がGNDから1.7V(所定の電位に相当)にレベルシフトされているため、全てHレベルと判定されてしまう。そのため、第2受信信号SI(2)を第1データ処理部70にて処理することが出来ない。
そこで、Lレベル電位がGNDからレベルシフトされたシングルエンド伝送の第2受信信号SI(2)を、第2第3データ処理部71、即ち、差動回路74を用いて処理する。第2受信信号SI(2)の電位(Vm)と第2受信信号SI(2)の振幅の中間電位(2.5V=Vp)の差に基づく電位((Vm−Vp)α)によって、第2受信信号SI(2)のデータレベルHLを判定する。そのために、第2受信信号SI(2)を処理する際には、差動回路74のM入力部に第2受信信号SI(2)を入力し、差動回路74のP入力部に一定電位(2.5V)を入力する。そうすることで、Lレベル電位がレベルシフトされたシングルエンド伝送の第2受信信号SI(2)のデータレベルHLを差動回路74によって判断することが出来る。
なお、図13に示すように第2受信信号SI(2)を処理する際には、電源VDD(3.3V)から抵抗Rを介した一定電位(2.5V)がP入力部に入力される。そして、第2受信信号SI(2)を処理する際には(DSW(2)=1)P入力部に一定電位(2.5V)が入力され、第3受信信号SI(3)を処理する際には(DSW(2)=0)P入力部に反転受信信号SI(3)が入力されるように、第2制御信号DSW(2)に基づきスイッチ75が切り換えられる。
このように、シングルエンド伝送でレベルシフトされた受信信号SI(2)と差動伝送された受信信号SI(3)を同じ差動回路74で処理することによって、回路構成を簡略化することができ、コストも削減できる。仮に、第2受信信号SI(2)の振幅に応じた基準電位と比較する比較回路を別に設けると、回路構成が複雑になってしまう。また、差動回路74のP入力部に入力する一定電位(ここでは2.5V)を抵抗Rの定数を変更するなどして変化させることによって、GNDからのレベルシフト量や振幅の異なるレベルシフト信号の処理を行うことが出来る。そのため、より多種類のコントローラー60からの受信信号SIを処理することができる。即ち、一定電位を変化させることによって、本実施形態のヘッドユニット40を種々のプリンター1に組み込むことが出来る(コントローラー60と対応付けることが出来る)。
<変形例>
図14は、第2第3データ処理部71の変形例を示す図である。図11・12では特性の揃ったトランジスタを対照的に組み合わせた差動回路74を使用しているが、これに限らない。例えば、差動回路として、図14に示すようにオペアンプ76を用いてもよい。この場合にも、第2制御信号DSW(2)が「0」の時に、オペアンプ76のプラス(+)の入力端子に非反転受信信号SI(3)を入力し、マイナス(−)の入力端子に反転受信信号SI(3)を入力する。一方、第2制御信号DSW(2)が「1」時には、オペアンプ76のプラス(+)の入力端子に第2受信信号SI(2)を入力し、マイナス(−)の入力端子に一定電位(2.5V)を入力するとよい。
<まとめ>
以上をまとめると、本実施形態のヘッドユニット40は、コントローラー60からの伝送方式が異なったとしても、受信信号SI・SCLKの種類に応じた処理を行うことが出来る。そのため、コントローラー60の種類ごと(プリンター1の機種ごと)に専用のヘッドユニット60を設計する必要がなく、ヘッドユニット40の汎用化を実現できる。
更に、本実施形態のヘッドユニット40は、受信信号SCLKの周波数を解析し、その周波数に応じて各伝送方式に合ったデータ処理に自動に切り換えることができる。そのため、製造工程などにおいてコントローラー60とヘッドユニット40の対応付け(例えばメモリーICに制御信号を記憶させる作業)を行う必要がなく、製造工程を容易にすることが出来る。
また、本実施形態のヘッドユニット40では、第2受信信号SI(2)のように、Lレベル電位がGNDからレベルシフトしたり、振幅が小さかったりする信号を差動回路74の一方側の入力し、差動回路74の他方側の入力部には一定電位を入力する。そうすることで、振幅の小さいレベルシフトされた受信信号を差動回路にて処理することができ、回路構成を簡略化することが出来る。
===周波数に応じたシフトレジスタ群の動きについて===
図15はメモリーIC45に記憶しているシフトレジスタ群442の処理を規定する第3制御信号DSW(3)に関する制御信号テーブルを示し、図16Aおよび図16Bは受信信号SIのデータ数の違いによるシフトレジスタ群442の動作の違いを示す図である。ここまで、受信信号SIの周波数の違いに応じて、受信信号SIを出力信号SI’に変換する処理を異ならせる実施例について説明している。しかし、これに限らず、以下では、1本の信号線によってコントローラー60から伝送されるドット形成データSIの数によって、シフトレジスタ群442におけるドット形成データ信号SI’の伝送経路が異なる実施例について説明する。
本実施形態のヘッドユニット40では汎用化の実現のために、コントローラー60から伝送されるドット形成データSIの数に応じて、シフトレジスタ群442におけるドット形成データ信号SI’の伝送経路を可変とする。また、受信信号(ここではクロック信号SCLKとする)の周波数に応じて、1本の信号線にて伝送されるドット形成データSIの数を判断することが出来る。そのため、クロック信号SCLKの周波数に応じて、シフトレジスタ群442におけるドット形成データ信号SI’の伝送経路を規定する。
以下の説明のため、図5に示すように、上位側シフトレジスタ442a(SR(H))と下位側シフトレジスタ442b(SR(L))を複数のグループに分ける。上位側シフトレジスタ442aにおいて、上位側ダミーノズル#1〜#4の上位ドット形成データSIを記憶する「第1ダミー上位グループDH1」と、前半側のノズル#5〜#184(第1ノズル群に相当)の上位ドット形成データSIを記憶するシフトレジスタ(第1データ記憶部に相当)である「第1上位グループSH1」と、後半側のノズル#185〜#364(第2ノズル群に相当)の上位ドット形成データSIを記憶するシフトレジスタ(第2データ記憶部に相当)「第2上位グループSH2」と、後半側のダミーノズル#365〜#368の上位ドット形成データSIを記憶する「第2上位ダミーグループSD2」とする。
同様に、下位側シフトレジスタ442bにおいて、ダミーノズル#1〜#4の下位ドット形成データSIを記憶する「第1ダミー下位グループDL1」とし、ノズル#5〜#184の下位ドット形成データSIを記憶する「第1下位グループSL1」とし、ノズル#185〜#364の下位ドット形成データSIを記憶する「第2下位グループSL2」とし、ダミーノズル#365〜#368の下位ドット形成データSIを記憶する「第2下位ダミーグループSL2」とする。
複数のシフトレジスタから構成される各グループ(DH1・DL1・SH1・SL1・DH2・DL2・SH2・SL2)はマルチプレクサMX1〜MX13を介して繋がっており、マルチプレクサMX1〜MX13によりドット形成データ信号SI’の伝送経路が可変となる。また、データ処理部446の処理を経たドット形成データ信号SI’が入力される第1データ入力部SI_1(入力部に相当)、第2データ入力部SI_2が設けられている。
以下、図6Bに示すように1本の信号線で180ノズル分のドット形成データSIを伝送し、1ノズル列に対して2本の信号線にてドット形成データSIが伝送される場合(図16A・第1処理に相当)と、図6Cに示すように1本の信号線で360ノズル分のドット形成データSIを伝送し、1ノズル列に対して1本の信号線にてドット形成データSIが伝送される場合(図16B・第2処理に相当)を例に挙げて説明する。
まず、コントローラー60から印刷データSI・SCLKがヘッドユニット40に伝送されると、図8に示すようにクロック信号SCLKがメモリーIC45に入力される。そして、周波数解析部451がクロック信号SCLKの周波数を解析し、メモリーIC45はその周波数に基づいて図15に示す制御信号テーブルを参照し、第3制御信号DSW(3)を決定する。メモリーIC45は決定した第3制御信号DSW(3)をシフトレジスタ群442(マルチプレクサMX1〜MX13)に入力する(不図示)。そうすることで、ドット形成データ信号SI’は、第3制御信号DSW(3)に応じた伝送経路にて、シフトレジスタ群442内に伝送される(シフトレジスタに記憶される)。
まず、図16Aの伝送経路について説明する。図16Aは1本の信号線でのデータ伝送数が180ノズル分の場合を示し、周波数がf1(Hz)である場合の伝送経路を示す。この場合、メモリーIC45は、制御信号テーブル(図15)より第3制御信号DSW(3)を「0」に決定し、第3制御信号DSW(3)をシフトレジスタ群442(マルチプレクサMX1〜MX13)に伝送する。また、1ノズル列分のドット形成データSIが2本の信号線によって伝送されるため、一方の信号線で伝送されたドット形成データ信号SI’は前半側のノズル(#5〜#184)に対応するドット形成データSIであり、他方の信号線で伝送されたドット形成データ信号SI’は後半側のノズル(#185〜#364)に対応するドット形成データSIである。なお、シフトレジスタ群442に入力されるドット形成データ信号SI’はデータ処理部446の処理を経た後の信号である。
図16Aに太い実線で示すように、第1データ入力部SI_1に入力されたドット形成データ信号SI’は、第1下位グループSL1、第1上位グループSH1の順に伝送され、第1ダミー下位グループDL1や第1ダミー上位グループDH1にはドット形成データSIが伝送されない。そのために、第3制御信号DSW(3)=[0]に基づき、第1入力部SI_1に入力されたドット形成データ信号SI’を第1マルチプレクサMX1は第1下位グループSL1に入力する。また、第3マルチプレクサMX3及び第6マルチプレクサMX6は、第1下位グループSL1からシフトされたドット形成データ信号SI’を第1上位グループSH1に入力する。
一方、第2データ入力部SI_2に入力されたドット形成データ信号SI’は、第2下位グループSL2、第2上位グループSH2の順に伝送され、第2ダミー下位グループDL2や第2ダミー上位グループDH2にはドット形成データSIが伝送されない。そのために、第3制御信号DSW(3)=[0]に基づき、第7マルチプレクサMX7および第9マルチプレクサMX9は、第2データ入力部SI_2に入力されたドット形成データSI’を第2下位グループSL2に入力する。また、第11マルチプレクサMX11及び第13マルチプレクサMX13は、第2下位グループSL2からシフトされたドット形成データ信号SI’を第2上位グループSH2に入力する。
こうすることで、各ノズル(#5〜#364)に対応したドット形成データSIを各ノズル(#5〜#364)に対応したシフトレジスタに入力することができ、正しく対応したドット形成データSIに基づきノズルからインクを噴射させることが出来る。
次に、図16Bの伝送経路について説明する。図16Bは1本の信号線でのデータ伝送数が360ノズル分である場合を示し、周波数がf2(Hz)である場合の伝送経路を示す。この場合、メモリーIC45は、第3制御信号DSW(3)を「1」に決定し、第3制御信号DSW(3)をシフトレジスタ群442(マルチプレクサMX1〜MX13)に伝送する。この場合、1ノズル分のドット形成データSIが1本の信号線によって伝送されるため、ドット形成データ処理部446の処理を経た後に、第1入力部SI_1にのみドット形成データ信号SI’が入力される。
図16Bに太い実線で示すように、第1データ入力部SI_1に入力されたドット形成データSIは、第2下位グループSL2、第1下位グループSL1、第2上位グループSH2、第1上位グループSH1、の順に伝送される。そのために、第3制御信号DSW(3)=[1]に基づき、第7マルチプレクサMX7及び第9マルチプレクサMX9は、第1データ入力部SI_1に入力されたドット形成データ信号SI’を第2下位グループSL2に入力する。そして、第1マルチプレクサMX1は、第2下位グループSL2からシフトされたドット形成データ信号SI’を第1下位グループSL1に入力する。また、第3マルチプレクサMX3、第11マルチプレクサMX11及び第13マルチプレクサMX13は、第1下位グループSL1からシフトされたドット形成データ信号SI’を第2上位グループSH2に入力し、第6マルチプレクサMX6は第2上位グループSH2からシフトされたドット形成データ信号SI’を第1上位グループSH1に入力する。
このように、コントローラー60の種類によって伝送方式が異なり、1本の信号線にて伝送されるドット形成データSIの数が異なる場合、シフトレジスタ群442の伝送経路を異ならせる必要がある。仮に、1本の信号線にて伝送されるドット形成データSIの数に応じてシフトレジスタ群442の伝送経路を切り替えられない場合、コントローラー60に対応した専用品のヘッドユニット40を製造する必要がある。これに対して、本実施形態のヘッドユニット40では、シフトレジスタを複数のグループに分け、各グループを、マルチプレクサMX1〜MX13を介して繋ぐことにより、コントローラー60からの伝送方式に応じてドット形成データ信号SI’の伝送経路を変更することができ、ヘッドユニット40を汎用化できる。
更に、本実施形態のヘッドユニット40では、メモリーIC45がコントローラー60からの受信信号(クロック信号SCLK)の周波数を解析し、シフトレジスタ群442(マルチプレクサMX1〜MX13)に第3制御信号DSW(3)を入力することで、シフトレジスタ群442の伝送経路を自動に切替えることが出来る。そのため、プリンター1の製造工程やヘッドユニット40交換時などにおいて、プリンター1とヘッドユニット40の対応付けの作業(例えばメモリーICにシフトレジスタ群442の伝送経路を規定する制御信号を記憶させる作業)を行う必要がなく、作業を容易にすることが出来る。なお、クロック信号SCLKの周波数を解析するに限らず、ドット形成データ信号SIの周波数を解析して、第3制御信号DSW(3)を決定してもよい。
なお、図16ではダミーノズルに対応するドット形成データSIがコントローラー60から伝送されない例を示しているが、コントローラー60からダミーノズルに対応するドット形成データSIが伝送される場合には、第1ダミー下位グループDL1・第1ダミー上位グループDH1・第2ダミー下位グループDL2・第2ダミー上位グループDH2にドット形成データ信号SIを伝送するようにマルチプレクサMXを制御する。また、図15の制御信号テーブルでは、180ノズル分のドット形成データSIが伝送される場合の周波数f1と360ノズル分のドット形成データSIが伝送される場合の周波数f2に第3制御信号DSW(3)を対応付けている。しかし、これに限らず、ダミーノズルのドット形成データSIが伝送される場合にも(184ノズル・368ノズル)、クロック信号SCLKの周波数が異なるため、その周波数に応じた第3制御信号DSW(3)を制御信号テーブルにて設定するとよい。
また、ノズル列方向の前半側のノズル(#1〜、#5〜)のドット形成データSIから伝送される場合に限らず、ノズル列の後半側のノズル(#368〜、#364〜)のドット形成データSIから伝送される場合がある。この場合には、先のドット形成データSIが後半側ノズルのシフトレジスタ(第2下位グループSL2・第2上位グループSH2)に入力されるようにマルチプレクサMXを制御するとよい。
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、ヘッドユニットの処理等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<印刷データの伝送方式について>
前述の実施形態では、図7に示すように3つの伝送方式により伝送された受信信号SIを周波数に応じて処理するヘッドユニット40を例示しているが、これに限らない。例えば、第2第3データ処理部71(差動回路74)のみを有し、周波数に応じて第2伝送方式による第2受信信号SI(2)と第3伝送方式による第3受信信号SI(3)の処理を異ならせるヘッドユニット40でもよい。また、周波数に応じて、第1伝送方式による第1受信信号SI(1)と第3伝送方式による受信信号SI(3)の処理を異ならせるヘッドユニット40でもよいし、周波数に応じて、第1伝送方式による第1受信信号SI(1)と第2伝送方式による第2受信信号SI(2)の処理を異ならせるヘッドユニット40でもよい。
<印刷モードによる処理変更について>
前述の実施形態では、プリンター1の機種ごと(コントローラー60の種類ごと)にヘッドユニット40へのデータの伝送方式が異なるとしているがこれに限らない。例えば、同じプリンター1であっても、印刷モードなどによって、印刷データの伝送方式が異なる場合がある。例えば、早いモードであれば図7Bに示すように所定の伝送期間Tに伝送されるデータ数を多くし、きれいモードであれば図7Aに示すように所定の伝送期間Tに伝送されるデータ数を少なくしてノイズなどが少なくなるようにする場合がある。このような場合には、同じプリンター1で行うデータ処理であっても、ヘッドユニット40は受信信号(SCLK)の周波数を解析し、その周波数に応じたデータ処理を行わせる。
<差動回路の共通化について>
前述の実施形態では、第2伝送方式(図7B)によってGNDから電位がレベルシフトされた受信信号SI(2)と第3伝送方式(図7C)によって差動伝送された受信信号SI(3)を共通の差動回路74に入力し、Lレベル電位がGNDである3.3V振幅の信号に変換しているが、これに限らない。例えば、第2伝送方式により電位がレベルシフトされた受信信号SI(2)に応じた基準電位を設定した比較回路を別に設け、第2受信信号SI(2)の電位が基準電位以上であれば3.3Vを出力し、第2受信信号SI(2)の電位が基準電位未満であれば0Vを出力するようにしてもよい。ただし、前述の実施形態のように、第2受信信号SI(2)と第3受信信号SI(3)を共通の差動回路74にて処理することで、回路構成を簡略化できる。
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。流体は液体(インク)に限らず例えば粉体でもよい。
また、流体の噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
<ヘッドユニット40について>
前述の実施形態では、流体を噴射するヘッド部分(ノズルやピエゾ素子など)と、周波数を解析するメモリーIC45及び制御IC44(データ処理部46)を同一のヘッドユニット40としているが、これに限らない。流体を噴射するヘッド部分と、メモリーIC45及び制御IC44を別体としてもよい。この場合、メモリーIC45及び制御IC44がヘッド駆動装置に相当し、流体を噴射するヘッド部分はヘッドに相当する。