次に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
(1).コンバインの全体構造
図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。図1〜図3に示す如く、コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、昇降アクチュエータとしての単動式の昇降用油圧シリンダ4によって、横軸である刈取入力ケース16(詳細は後述する)回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀物タンク7とが横並び状に搭載される。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀物タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀物タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀物タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー43と、副変速スイッチ44と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り切りする作業クラッチレバー45とが配置されている。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップ(図示省略)と、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラム46と、前記各レバー43,45及びスイッチ44等を設けたレバーコラム47とが配置されている。走行機体1における運転座席12の下方には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
図1及び図3に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置する。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
図1に示す如く、刈取装置3の骨組みを構成する刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置される。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取る。
(2).刈取装置の構造
次に、図4及び図5を参照して刈取装置3の構造を説明する。図4及び図5に示す如く、刈取フレーム221は、走行機体1の前部左側にある軸受台15に回動可能に支持された刈取入力ケース16と、刈取入力ケース16から前方に向けて延長する縦伝動ケース18と、縦伝動ケース18の前端側で左右方向に向けて延長する横伝動ケース19と、横伝動ケース19に連結する6条分の分草フレーム20とによって構成されている。分草フレーム20の前端側に6条分の分草体225が配置されている。機体左右方向に水平に横架した刈取入力ケース16内には、エンジン14からの動力が伝達される刈取り入力軸17が組込まれている。
穀稈引起装置223は、分草板225によって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン128を有する6条分の引起ケース129を有する。穀稈搬送装置224は、右側2条分の引起ケース129から導入される右側2条分の穀稈の株元側を掻込む右スターホイル130R及び右掻込ベルト131Rと、左側2つの引起ケース129から導入される左側2条分の穀稈の株元側を掻込む左スターホイル130L及び左掻込ベルト131Lと、中央2つの引起ケース129から導入される中央2条分の穀稈の株元側を掻込む中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cとを有する。
刈刃装置222は、右スターホイル130R及び右掻込ベルト131R、左スターホイル130L及び左掻込ベルト131L、中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cによって掻込まれた6条分の穀稈の株元を切断するバリカン形の左右の刈刃132を有する。
また、穀稈搬送装置224は、右スターホイル130R及び右掻込ベルト131Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン133Rと、左スターホイル130L及び左掻込ベルト131Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈の株元側を右株元搬送チェン133Rの搬送終端部に合流させる左株元搬送チェン133Lと、中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cによって掻込まれた中央2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送して右株元搬送チェン133Rの搬送途中に合流させる中央株元搬送チェン133Cを有する。左右及び中央の株元搬送チェン133R,133L,133Cによって、右株元搬送チェン133Rの搬送終端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を合流させる。
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン133Rから6条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ穀稈搬送手段としての縦搬送チェン134と、縦搬送チェン134の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助搬送手段としての補助株元搬送チェン135とを有する。縦搬送チェン134から、補助株元搬送チェン135を介して、フィードチェン6の搬送始端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する。
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン133Rにて搬送される右側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン137Rと、左株元搬送チェン133Lにて搬送される左側2条分の刈取穀稈の穂先側を後方に搬送して右穂先搬送タイン137Rの搬送途中に合流させる左穂先搬送タイン137Lと、中央株元搬送チェン133Cにて搬送される中央2条分の刈取穀稈の穂先側を後方に搬送して右穂先搬送タイン137Rの搬送途中に合流させる中央穂先搬送タイン137Cとを有する。脱穀装置5の扱胴226設置室内に、刈取装置3で刈取った6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する。
(3).脱穀装置の構造
次に、図1及び図2を参照して脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230を備えている。なお、扱胴226の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
図1に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。前述した揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、排塵ファン230並びに選別ファン241等によって、穀物選別機構245を構成している。
図1に示す如く、揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀物タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀物タンク7に搬入され、穀物タンク7に収集される。
また、図1に示す如く、揺動選別盤227は、揺動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下する。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀物タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の後部(チャフシーブ239の前部)の上面側に連通接続され、二番物を揺動選別盤227の上面側に戻して再選別するように構成している。
一方、図1及び図2に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234と排藁カッタ235が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後部に設けられた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
(4).コンバインの駆動構造
次に、図6を参照しながら、コンバインの駆動構造(刈取装置3、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン234、排藁カッタ235等の駆動構造)について説明する。図6に示す如く、エンジン14の左側にその出力軸150を突出する。エンジン14の出力軸150に走行駆動ベルト151を介してミッションケース88の走行入力軸152を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸150からミッションケース88に伝達されて変速された後、左右の車軸153を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14の回転力によって駆動されるように構成している。
図6に示す如く、エンジン14を冷却するラジエータ等のための冷却ファン154が、エンジン14の右側に突出した出力軸150に設けられている。また、エンジン14の右側の出力軸150に排出オーガ駆動軸157を連結し、エンジン14の回転駆動力によって排出オーガ駆動軸157を介して排出オーガ8が駆動され、穀物タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
また、図6に示す如く、脱穀装置5の各部にエンジン14の回転駆動力を伝える脱穀選別作業入力軸165と、扱胴226及び処理胴230に脱穀選別作業入力軸165の回転駆動力を伝える脱穀駆動軸160を備える。エンジン14の左側の出力軸150には、テンションローラ形脱穀クラッチ161及び脱穀駆動ベルト162を介して、脱穀選別作業入力軸165を連結する。脱穀駆動軸160上に、扱胴低速ギヤ及び扱胴高速ギヤを配置する。脱穀選別作業入力軸165の回転力が、扱胴低速ギヤ又は扱胴高速ギヤを介して脱穀駆動軸160に伝達される。
脱穀駆動軸160には、扱胴駆動ベルト117を介して、扱胴226を軸支した扱胴軸163と処理胴230を軸支した処理胴軸164とを連結する。エンジン14の略一定回転数の回転力によって、扱胴226及び処理胴230が所定回転数(低速回転数又は高速回転数)で回転するように構成している。また、エンジン14の略一定回転数の回転力によって、脱穀選別作業入力軸165を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が略一定回転数で回転するように構成している。
図6〜図8に示す如く、ミッションケース88には、1対の直進用第1油圧ポンプ55及び直進用第1油圧モータ56を有する直進(走行主変速)用の油圧式無段変速機構53と、1対の旋回用第2油圧ポンプ57及び旋回用第2油圧モータ58を有する旋回用の油圧式無段変速機構54とを設けている。第1油圧ポンプ55と第2油圧ポンプ57とに、ミッションケース88の走行入力軸152をそれぞれ連結させて駆動するように構成している。ミッションケース88にPTO軸99を配置する。PTO軸99は第1油圧モータ56によって駆動される。ミッションケース88からこの左外側にPTO軸99の一端側を突設させている。
走行機体1上のうちエンジン14の左側方で且つ脱穀装置5の前側方に、カウンタギヤケース89(図5、図9、図11及び図15参照)を設けている。カウンタギヤケース89には、上述した脱穀駆動軸160と、脱穀駆動軸160に連結する脱穀選別作業入力軸165と、PTO軸99に連結する車速同調軸100と、脱穀選別作業入力軸165又は車速同調軸100に連結する刈取伝動軸101と、刈取り入力軸17に連結する刈取駆動軸102と、フィードチェン6及び受継用補助株元搬送チェン136を駆動するフィードチェン駆動軸103とを配置している。
カウンタギヤケース89内の車速同調軸100上に、車速同調軸100の車速同調回転力を伝える一方向クラッチを設ける。車速同調軸100に、刈取変速機構と一方向クラッチとを介して刈取伝動軸101を連結する。刈取変速機構は低速側変速ギヤと高速側変速ギヤとを有する。低速及び中立(零回転)及び高速の各刈取変速を行う刈取変速操作手段によって低速側変速ギヤ又は高速側変速ギヤを刈取伝動軸101に択一的に係合させ、車速同調軸100から刈取変速機構を介して刈取伝動軸101に刈取変速出力を伝えるように構成している。
脱穀選別作業入力軸165に一定回転機構を介して刈取伝動軸101を連結する。一定回転機構は低速側一定回転ギヤと高速側一定回転ギヤとを有する。刈取伝動軸101にトルクリミッタを介して刈取駆動軸102を連結する。刈取駆動軸102に、刈取駆動プーリ124及び刈取駆動ベルト125を介して刈取り入力軸17を連結させ、刈取装置3に刈取駆動軸102から刈取駆動力を伝達させる。刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力が低速側一定回転ギヤを介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。従って、走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤからの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。
また、車速同調軸100及び高速側変速ギヤからの車速同調出力の最高速よりも速い一定回転数の回転出力が高速側一定回転ギヤを介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。従って、車速同調出力の最高速よりも速い高速側一定回転ギヤからの一定回転数で刈取り入力軸17を駆動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。なお、トルクリミッタにて設定したトルク以下の回転力で刈取り入力軸17を駆動させることによって、刈刃132等が損傷するのを防止している。
カウンタギヤケース89には、脱穀選別作業入力軸165にフィードチェン駆動軸103を連結する遊星ギヤ形変速構造のフィードチェン同調機構が設けられている。脱穀選別作業入力軸165の回転出力が、フィードチェン同調機構によって刈取伝動軸101の回転数に比例して変速されて、フィードチェン駆動軸103に伝達される。即ち、フィードチェン同調機構を介してフィードチェン6及び受継用補助株元搬送チェン136を作動することによって、穀稈の搬送に必要な最低回転数(低速側一定回転ギヤからの一定回転数)を確保しながら、フィードチェン6及び受継用補助株元搬送チェン136の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
図6に示す如く、刈取り入力軸17に、縦伝動軸140及び横伝動軸141及び左搬送駆動軸142を介して引起横伝動軸143を連結する。引起横伝動軸143は、6条分の各引起ケース29の引起タイン駆動軸144にそれぞれ連結している。分草体225の後方で且つ分草フレーム20の上方に引起ケース129が立設され、引起ケース129の背面上部側から引起タイン駆動軸144を突出させている。引起タイン駆動軸144及び引起横伝動軸143を介して、複数の引起タイン128を設けた引起タインチェン128aが駆動するように構成されている。
図6に示す如く、横伝動軸141に左右のクランク軸145を介して左右の刈刃132を連結する。横伝動軸141を介して左右の刈刃132を連動させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置222は、6条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃132を形成し、左右の刈刃132を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃132の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
図6に示す如く、刈取り入力軸17に縦伝動ケース18内の縦伝動軸140の一端側を連結する。縦伝動軸140の他端側に横伝動ケース19内の横伝動軸141を連結する。縦伝動軸140及び横伝動軸141から、穀稈搬送装置224の各駆動部に刈取り入力軸17の回転力を伝える。すなわち、縦伝動軸140には右搬送駆動軸146を連結している。縦伝動軸140及び右搬送駆動軸146を介して、右株元搬送チェン133Rと、右スターホイル130R及び右掻込ベルト131Rと、縦搬送チェン134とを駆動するように構成している。また、縦伝動軸140のうち右搬送駆動軸146より後方には後搬送駆動軸147を連結している。縦伝動軸140及び後搬送駆動軸147を介して、補助株元搬送チェン135及び右穂先搬送タイン137Rを駆動するように構成している。
また、横伝動軸141の左端側に左搬送駆動軸142を連結している。左搬送駆動軸142を介して、左株元搬送チェン133L及び左穂先搬送タイン137Lと、左スターホイル130L及び左掻込ベルト131Lとを駆動するように構成している。また、横伝動軸141に中央搬送駆動軸148を連結し、中央搬送駆動軸148を介して、中央株元搬送チェン133C及び中央穂先搬送タイン137Cと、中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cとを駆動するように構成している。
(5).ミッションケースの動力伝達構造の詳細
次に、図6及び図7を参照して、ミッションケース88等の動力伝達構造を説明する。図6及び図7に示す如く、ミッションケース88に、1対の直進用第1油圧ポンプ55及び直進用第1油圧モータ56を有する直進(走行主変速)用の油圧式無段変速機構53と、1対の旋回用第2油圧ポンプ57及び旋回用第2油圧モータ58を有する旋回用の油圧式無段変速機構54とを設ける。第1油圧ポンプ55と、第2油圧ポンプ57に、ミッションケース88の走行入力軸152をそれぞれ連結させて駆動するように構成している。走行入力軸152上に走行入力プーリ155を設け、走行入力プーリ155に走行駆動ベルト151を掛け回している。ミッションケース88にPTO軸99を配置している。PTO軸99は、直進用モータ軸60及び主変速出力用カウンタ軸70を介して、第1油圧モータ56によって駆動される。ミッションケース88からこの左外側にPTO軸99の一端側を突設させている。PTO軸99上にPTOプーリ119を設け、PTOプーリ119にPTOベルト120を掛け回している。
図7に示す如く、エンジン14の出力軸150から出力される駆動力は、走行駆動ベルト151及び走行入力軸152を介して、第1油圧ポンプ55のポンプ軸59及び第2油圧ポンプ57のポンプ軸59にそれぞれ伝達される。直進用油圧式無段変速機構53では、ポンプ軸59に伝達された動力にて、第1油圧ポンプ55から第1油圧モータ56に向けて作動油が適宜送り込まれる。同様に、旋回用油圧式無段変速機構54では、ポンプ軸59に伝達された動力にて、第2油圧ポンプ57から第2油圧モータ58に向けて作動油が適宜送り込まれる。なお、ポンプ軸59には、油圧ポンプ55,57及び油圧モータ56,58に作動油を供給するためのチャージポンプ251が取付けられている。
直進用油圧式無段変速機構53は、運転キャビン10に配置された主変速レバー43や操縦ハンドル11の操作量に応じて、第1油圧ポンプ55における斜板55aの傾斜角度を変更調節して、第1油圧モータ56への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第1油圧モータ56から突出した直進用モータ軸60の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
図7に示す如く、直進用モータ軸60の回転動力は、直進伝達ギヤ機構50から副変速ギヤ機構51に伝達される。副変速ギヤ機構51は、副変速シフタ64によって切換える副変速低速ギヤ62及び副変速高速ギヤ63を有する。レバーコラム47に配置された副変速スイッチ44の操作にて、直進用モータ軸60の出力回転数を低速又は高速という2段階の変速段に切換えるように構成している。なお、副変速の低速と高速との間には、中立位置(副変速の出力が零になる位置)を有している。副変速スイッチ44には、低速切換釦と中立切換釦と高速切換釦とにより構成されている。低速切換釦、中立切換釦又は高速切換釦の押し操作によって、副変速出力が超低速出力、低速出力、中立又は高速出力に択一的に切り換わる。
図7に示す如く、副変速ギヤ機構51の出力側に設けられた駐車ブレーキ軸65(副変速出力軸)には、湿式多板ディスク式の駐車ブレーキ66が設けられている。副変速ギヤ機構51からの回転動力は、駐車ブレーキ軸65に固着された副変速出力ギヤ67から左右の差動機構52に伝達される。左右の差動機構52は、遊星ギヤ機構68をそれぞれ備えている。また、駐車ブレーキ軸65上に直進用パルス発生回転輪体92を設け、直進用パルス発生回転輪体92に直進用ピックアップ回転センサ93(直進車速センサ)を対向させて配置し、直進用ピックアップ回転センサ93によって、直進出力の回転数(直進車速、副変速出力ギヤ67出力)を検出するように構成している。
図7に示す如く、左右各遊星ギヤ機構68は、1つのサンギヤ71と、サンギヤ71に噛合う複数の遊星ギヤ72と、遊星ギヤ72に噛合うリングギヤ73と、複数の遊星ギヤ72を同一円周上に回転可能に配置するキャリヤ74とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構68のキャリヤ74は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右のサンギヤ71が設けられたサンギヤ軸75にセンタギヤ76を固着している。
左右の各リングギヤ73は、その内周面の内歯を複数の遊星ギヤ72に噛合わせた状態で、サンギヤ軸75に同心状に配置されている。また、左右の各リングギヤ73は、その外周面の外歯を左右旋回出力ギヤ86に噛合わせて、中継軸85に連結させている。各リングギヤ73は、キャリヤ74の外側面から左右外向きに突出した左右の強制デフ出力軸77に回転可能に軸支されている。左右の強制デフ出力軸77に、ファイナルギヤ78a,78bを介して左右の車軸153が連結されている。左右の車軸153には左右の駆動スプロケット22が取付けられている。従って、副変速ギヤ機構51から左右の遊星ギヤ機構68に伝達された回転動力は、左右の車軸153から各駆動スプロケット22に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の走行クローラ2を同方向の同一回転数にて駆動して、走行機体1を直進(前進、後退)移動させる。
旋回用油圧式無段変速機構54は、運転キャビン10に配置された主変速レバー43や操縦ハンドル11の回動操作量に応じて、第2油圧ポンプ57における斜板57aの傾斜角度を変更調節して、第2油圧モータ58への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第2油圧モータ58から突出した旋回用モータ軸61の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。また、後述する操向カウンタ軸80上に旋回用パルス発生回転輪体94を設け、旋回用パルス発生回転輪体94に旋回用ピックアップ回転センサ95を対向させて配置し、旋回用ピックアップ回転センサ95(旋回車速センサ)によって、第2油圧モータ58の操向出力の回転数(旋回車速)を検出するように構成している。
また、ミッションケース88内には、旋回用モータ軸61(操向入力軸)上に設ける操向ブレーキ79(旋回ブレーキ)と、旋回用モータ軸61に減速ギヤ81を介して連結する操向カウンタ軸80と、操向カウンタ軸80に減速ギヤ86を介して連結する操向出力軸85と、左リングギヤ73に逆転ギヤ84を介して操向出力軸85を連結する左入力ギヤ機構82と、右リングギヤ73に操向出力軸85を連結する右入力ギヤ機構83とを設けている。旋回用モータ軸61の回転動力は、操向カウンタ軸80に伝達される。操向カウンタ軸80に伝達された回転動力は、左の入力ギヤ機構82の左中間ギヤ87及び逆転ギヤ84を介して逆転回転動力として、左リングギヤ73に伝達され、右の入力ギヤ機構83の右中間ギヤ87を介して正転回転動力として、右リングギヤ73に伝達される。
副変速ギヤ機構51を中立にした場合は、第1油圧モータ56から左右の遊星ギヤ機構68への動力伝達が阻止される。副変速ギヤ機構51から中立以外の副変速出力時に、副変速低速ギヤ62又は副変速高速ギヤ63を介して第1油圧モータ56から左右の遊星ギヤ機構68へ動力伝達される。一方、第2油圧ポンプ57の出力をニュートラル状態とし、且つ操向ブレーキ79を入り状態とした場合は、第2油圧モータ58から左右の遊星ギヤ機構68への動力伝達が阻止される。第2油圧ポンプ57の出力をニュートラル以外の状態とし、且つ操向ブレーキ79を切り状態とした場合は、第2油圧モータ58の回転動力が、左入力ギヤ機構82及び逆転ギヤ84を介して左リングギヤ73に伝達される一方、右入力ギヤ機構83を介して右リングギヤ73に伝達される。
その結果、第2油圧モータ58の正回転(逆回転)時は、互いに逆方向の同一回転数で、左リングギヤ73が逆転(正転)し、右リングギヤ73が正転(逆転)する。即ち、各モータ軸60,61からの変速出力は、副変速ギヤ機構51又は差動機構52をそれぞれ経由して、左右の走行クローラ2の駆動スプロケット22にそれぞれ伝達され、走行機体1の車速(走行速度)及び進行方向が決定される。
すなわち、第2油圧モータ58を停止させて左右リングギヤ73を静止固定させた状態で、第1油圧モータ56が駆動すると、直進用モータ軸60からの回転出力は左右サンギヤ71に左右同一回転数で伝達され、遊星ギヤ72及びキャリヤ74を介して、左右の走行クローラ2が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体1が直進走行する。
逆に、第1油圧モータ56を停止させて左右サンギヤ71を静止固定させた状態で、第2油圧モータ58を駆動させると、旋回用モータ軸61からの回転動力にて、左のリングギヤ73が正回転(逆回転)し、右のリングギヤ73は逆回転(正回転)する。その結果、左右の走行クローラ2の駆動スプロケット22のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体1はその場で方向転換(信地旋回スピンターン)される。
また、第1油圧モータ56によって左右サンギヤ71を駆動しながら、第2油圧モータ58によって左右リングギヤ73を駆動することによって、左右の走行クローラ2の速度に差が生じ、走行機体1は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ2の速度差に応じて決定される。
(6).コンバインの油圧回路構造
次に、図8を参照して、コンバインの油圧回路構造について説明する。図8に示す如く、コンバインの油圧回路250には、直進用の第1油圧ポンプ55及び第1油圧モータ56と、旋回用の第2油圧ポンプ57及び第2油圧モータ58と、チャージポンプ251とを備える。第1油圧ポンプ55と第1油圧モータ56とが閉ループ状直進油路252によって接続される。第2油圧ポンプ57と第2油圧モータ58とが閉ループ状旋回油路253によって接続される。エンジン14によって第1油圧ポンプ55及び第2油圧ポンプ57が駆動され、第1油圧ポンプ55の斜板角制御又は第2油圧ポンプ57の斜板角制御によって、第1油圧モータ56又は第2油圧モータ58を正転又は逆転作動するように構成している。
一方、前記操縦ハンドル11の手動操作に対応して電気的に切換える電磁油圧形操向バルブ270と、前記チャージポンプ251に電磁油圧形操向バルブ270を介して接続させる操向シリンダ271を備える。操舵角センサ(図示省略)にて検出された操縦ハンドル11の操舵角に対応して電磁油圧形操向バルブ270を切換えると、操向シリンダ271が作動して第2油圧ポンプ57の斜板57a角度を変更させ、第2油圧モータ58の旋回用モータ軸61の回転数を無段階に変化させたり、逆転させる左右操向動作を行わせ、走行方向を左右に変更して圃場枕地で方向転換したり進路を修正する。また、操向用の油圧サーボ機構275を備えており、斜板57aの角度調節動作によって電磁油圧形操向バルブ270が中立復帰するフィードバック動作を油圧サーボ機構275にて行わせ、操縦ハンドル11の操作量に比例させて斜板57a角度を変化させ、第2油圧モータ58の旋回用モータ軸61の回転数を変更させるように構成している。
また、図8に示す如く、前記主変速レバー43の手動操作に対応して電気的に切換える電磁油圧形変速バルブ272と、前記チャージポンプ251に電磁油圧形変速バルブ272を介して接続させる変速シリンダ273を設ける。主変速センサ(図示省略)にて検出された主変速レバー43の操作量に対応して電磁油圧形変速バルブ272を切換えると、変速シリンダ273が作動して第1油圧ポンプ55の斜板55a角度を変更させ、第1油圧モータ56の直進用モータ軸60の回転数を無段階に変化させたり逆転させたりする走行変速動作が行われる。また、走行変速用の油圧サーボ機構277を備えており、斜板55aの角度調節動作によって電磁油圧形変速バルブ272が中立復帰するフィードバック動作を油圧サーボ機構277に行わせ、主変速レバー43の操作量に比例させて斜板55a角度を変化させ、第1油圧モータ56の直進用モータ軸60の回転数を変更させ、主変速レバー43の操作によって直進用モータ軸60を前後進回転させるように構成している。
更に、図8に示す如く、刈取装置3の作動速度を切換える油圧刈取変速シリンダ280と、刈取装置3を一定回転速度にて作動させる油圧刈取定速シリンダ281を備える。油圧刈取変速シリンダ280及び油圧刈取定速シリンダ281は、カウンタギヤケース89の上面蓋(油路ベース)に配置する。刈取変速シリンダ280を作動させる刈取変速バルブ282と、刈取定速シリンダ281を作動させる刈取定速バルブ283を、前記チャージポンプ251に並列にそれぞれ油圧接続させる。
(7).エンジン、ミッションケース及びカウンタギヤケースの動力伝達構造
次に、図1、図2、図6及び図9〜図12を参照しながら、エンジン14、ミッションケース88及びカウンタギヤケース89の動力伝達構造について説明する。図1、図2及び図9〜図12に示すように、走行機体1の上面右側にエンジン14が搭載され、走行機体1における左右幅中央の前方にミッションケース88が設置され、走行機体1の上面左側にカウンタギヤケース89が配置されている。エンジン14において左右方向に延長された出力軸150の左側端部に出力プーリ149を軸支し、ミッションケース88の左側上部の走行入力プーリ155と出力プーリ149との間に走行駆動ベルト151を掛け回している。その構成により、ミッションケース88の各油圧式無段変速機構53,54にエンジン14の出力がそれぞれ伝達される。
一方、排出オーガ8を収納(非作業)位置に支持する柱状フレーム290が走行機体1の上面に立設され、その柱状フレーム290の基端部の前面に軸受体291を介してPTOカウンタ軸121が回転自在に軸支されている。PTOカウンタ軸121上のPTOカウンタプーリ122aと、ミッションケース88の左側上部のうち走行入力プーリ155より下側のPTOプーリ119との間に、PTOベルト120を掛け回している。また、PTOカウンタ軸121上のPTOカウンタプーリ122bと、カウンタギヤケース89の車速同調軸100に固定された車速同調プーリ104との間に、車速同調ベルト123を掛け回している。かかる構成により、PTO軸99から車速同調軸100にミッションケース88の車速同調駆動力が伝達される。
さらに、エンジン14における出力軸150上の出力プーリ149と、カウンタギアケース89の脱穀選別作業入力軸165に固定された脱穀駆動プーリ118との間に、脱穀駆動ベルト162を掛け回している。また、脱穀クラッチ161を切り換える脱穀入力アクチュエータとしての脱穀クラッチ用電動モータ175を備える。脱穀クラッチ用電動モータ175を作動させて、脱穀クラッチ161を入り作動させることによって脱穀駆動ベルト162が緊張状態に維持され、カウンタギヤケース89にエンジン14の出力が伝達される一方、脱穀クラッチ161の切り作動によって脱穀駆動ベルト162が弛緩状態に維持され、エンジン14からカウンタギヤケース89への出力伝達が遮断される。
走行機体1上のうちエンジン14の後方にクラッチユニットシャーシ176を配置し、クラッチユニットシャーシ176に脱穀クラッチ入り切り機構177を組付けると共に、クラッチユニットシャーシ176に脱穀クラッチ用電動モータ175を設ける。脱穀クラッチ161を支持したテンションアーム(図示省略)に、脱穀クラッチ入り切り機構177を介して、脱穀クラッチ用電動モータ175が連結されている。カウンタギヤケース89に軸支された脱穀選別作業入力軸165上の脱穀駆動プーリ118を挟んで、カウンタギヤケース89と反対側に脱穀クラッチ用電動モータ175が配置される。
即ち、脱穀クラッチ用電動モータ175又は脱穀クラッチ入り切り機構177が設置されるスペースをカウンタギヤケース89側に確保する必要がないから、カウンタギヤケース89の右側に近接させて脱穀駆動プーリ118を支持できる。脱穀クラッチ用電動モータ175又は脱穀クラッチ入り切り機構177等に規制されることなく、脱穀選別作業入力軸165の延長に伴う軸受構造の高剛性化などを不要にして、大きな変速比(減速比)が設定可能な大径の脱穀駆動プーリ118を簡単に設置できる。
(8).エンジン及びその周辺の構造
次に、主として図9〜図16を参照しながら、エンジン14及びその周辺の構造について説明する。図9〜図14に示すように、走行機体1の上面右側に搭載されたエンジン14は、その前面が排気側に、後面が吸気側に設定されており、燃料噴射システムとしてのコモンレール装置321と、排気ガス再循環用のEGR装置322と、ターボ過給器323とを備えている。エンジン14の右側面には、ラジエータ326といった熱交換器用の冷却ファン154が設けられている。出力軸150の右端側からVベルト(図示省略)を介して冷却ファン154に回転力を伝達するように構成している。エンジン14のうち左右に延びる出力軸150の左側端部に出力プーリ149が軸支されていて、エンジン14の出力部を構成している。図9〜図14から明らかなように、エンジン14は、出力プーリ149が走行機体1の左右中央側に、冷却ファン154が走行機体1の右側に位置するようにして、走行機体1のうち運転座席12の下方(運転キャビン10の下方)に配置されている。すなわち、エンジン14における出力軸150の向きが左右方向に延びるように、エンジン14が配置されている。
図3、図10、図11、図13及び図14に示すように、冷却ファン154を挟んでエンジン14とは反対側(実施形態ではエンジン14の右側方)に、除塵スクリーン325付き外気導入カバー324が配置されている。外気導入カバー324は中空状の筐体に構成されていて、回転駆動して吸い込み面の塵埃を除去するように構成した除塵スクリーン325は、外気導入カバー324の内外に連通するように設けられている。図3に示すように、外気導入カバー324は運転キャビン10の下方に位置することになる。
冷却ファン154と外気導入カバー324との間には、複数の熱交換器326〜328が配置されている。実施形態では、冷却ファン154寄りに、エンジン14水冷用のラジエータ326が配置されている。ラジエータ326にエンジン14の冷却ファン154を対峙させている。そして、ラジエータ326と外気導入カバー324との間に、ターボ過給器323用のインタークーラ327と作動油冷却用のオイルクーラ328とが配置されている。除塵スクリーン325、外気導入カバー324内の風路及び熱交換器群326〜328を介して、冷却ファン154にて外部の空気を取り込むことによって、前述の熱交換器326〜328群が冷却される。なお、外気導入カバー324はヒンジ329を介して開閉回動可能に構成されている。外気導入カバー324を開き回動させると、図13に示すようにインタークーラ327及びオイルクーラ328が外向きに露出することになる。
図15及び図16に示すように、ターボ過給器323用のインタークーラ327と作動油冷却用のオイルクーラ328とは、横並びの状態で(共に重ならないように)、矩形枠状の取付フレーム枠346の内径側にボルト締結にて組み付けられている。そして、取付フレーム枠346内のインタークーラ327及びオイルクーラ328に重なるようにして、ラジエータ326が取付フレーム枠にボルト締結にて組み付けられている。すなわち、ラジエータ326とインタークーラ327とオイルクーラ328とは、取付フレーム枠346を介して1つの部材(熱交換器ユニット348)としてユニット化されている。走行機体1において冷却ファン154と外気導入カバー324との間に、側面視門形の支持フレーム347が立設されている。支持フレーム347の内径側に冷却ファン154を臨ませている。ユニット化されたラジエータ326、インタークーラ327及びオイルクーラ328が、側面視で冷却ファン154に重なるようにして支持フレーム347に取り付けられている。この場合、ラジエータ326が支持フレーム347における複数のブラケットにボルト締結されている。走行機体1の右外側から中央側に向けて、除塵スクリーン325付き外気導入カバー324、インタークーラ327及びオイルクーラ328、ラジエータ326、冷却ファン154の順に並べられている。
上記の記載並びに図15〜図16から明らかなように、前記熱交換器326〜328群は、取付フレーム枠346を介して1つの部材348としてユニット化されておリ、前記ユニット化された熱交換器326〜328群を、前記冷却ファン154と前記外気導入カバー324との間に位置する支持フレーム347に組み付けるように構成されているから、コンバインの製造に際して、前記熱交換器326〜328群を先行して1つの部材(熱交換器ユニット348)に組み立てておいてから、前記熱交換器326〜328群をユニットで、前記冷却ファン154と前記外気導入カバー324との間に位置する支持フレーム347に組み付けできる。このため、コンバインの製造ライン中において、エンジン周辺部品の組付け工数を低減でき、製造コストの低減に寄与するという効果を奏する。また、前記熱交換器326〜328群の組み付け・取り外し作業の手間が著しく軽減され、エンジン周辺の清掃や整備等のメンテナンス作業がし易いという効果も奏する。
走行機体1上のうちエンジン14と穀粒タンク7との間には、排出オーガ駆動軸157を有するオーガ駆動機構330が配置されている。オーガ駆動機構330上に設けられたファンケース331には、オーガ駆動機構330からの分岐動力にて回転駆動する塵埃排出ファン332が内蔵されている。ファンケース331の排風口は、走行機体1の左右幅中央の下向きに開放されている。ファンケース331の吸風口は、エンジン14の後方で走行機体1の左右幅中央向きに延びる排塵ダクト333の排気口に連通接続されている。排塵ダクト333の吸気口は、外気導入カバー324における内側面の後部側に形成された排塵口に連通接続されている。このように構成すると、穀粒タンク7前方の限られたスペースと、エンジン14後方のスペースとを有効利用して、排塵ダクト333等の付属部品をコンパクト且つ機能的に配置できる。また、できるだけ排塵ダクト333等の付属部品をエンジン14後方側に寄せておけば、穀粒タンク7容量の拡大を図れ、収穫作業の連続時間の延長が可能になる。
除塵スクリーン325にて除去された塵埃は、塵埃排出ファン332の回転駆動にて、外気導入カバー324内の風路から排塵ダクト333を経由し、ファンケース331の排風口から走行機体1の左右幅中央の下側へ排出される。従って、除塵スクリーン325の目詰りを防止でき、熱交換器群326〜328及びエンジン14の冷却に必要な外気が供給不足となるのを抑制している。
図9〜図11及び図14に示すように、エンジン14の上部前方には、当該エンジン14における排気側からの排気ガスにて駆動するターボ過給器323が配置されている。つまり、エンジン14を挟んだ前後両側方に、ターボ過給器323と外気導入カバー324に連通する排塵ダクト333とがそれぞれ振り分けて配置されている。このように構成すると、冷却ファン154による冷却風の冷却作用にて、熱交換器群326〜328を効率よく冷却できるものでありながら、エンジン14の周辺空間(前後のスペース)を有効利用して、熱交換器群326〜328の配置位置に制約を受けることなく、ターボ過給器323及び排塵ダクト333をコンパクト且つ機能的に配置できる。すなわち、エンジン14前後のスペースをターボ過給器323及び排塵ダクト333の配置空間として有効利用でき、エンジン14搭載スペース(運転座席12下方のスペース)の利用効率を向上できる。
ターボ過給器323は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース335と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース336とを備えている。コンプレッサケース336の吸気取入れ側は、吸気管337を介してエアクリーナ338の吸気排出側に接続されている。エアクリーナ338の吸気取入れ側は、吸気ダクト339(図3参照)を介してプリクリーナ340(図1〜図3参照)に接続されている。
コンプレッサケース336の吸気排出側は、入口側配管341を介してインタークーラ327の過給気入口側に接続され、インタークーラ327の過給気出口側が、出口側配管342を介してエンジン14の吸気側に接続されている。この場合、インタークーラ327の入口側配管341及び出口側配管342はエンジン14の上面側に延出しており、エンジン14の上方前側に入口側配管341が、エンジン14の上方後側に出口側配管342がそれぞれ振り分けて配置されている。このように構成すると、エンジン14の上面側スペースを活用してインタークーラ327の太い配管群341,342を比較的短い距離で簡単に組み付けできる。従って、エンジン14周りの組み付け作業性やメンテナンス作業性の向上を図れる。プリクリーナ340からエアクリーナ338に吸い込まれた新気(外部空気)は、エアクリーナ338にて除塵・浄化されたのち、コンプレッサケース336及びインタークーラ327を介して、エンジン14の吸気側に送られ、当該エンジン14の各気筒に供給される。
タービンケース335の排気ガス取入れ側はエンジン14の排気側に接続されている。タービンケース335の排気ガス排出側には、消音器343の排気ガス取入れ側が接続されている。消音器の排気ガス排出側にはテールパイプ344(図1参照)が接続されている。テールパイプ344は、エンジン14の上方に位置する消音器343から後方上側に向けて延びていて、走行機体1のうち脱穀装置5の上面より高い位置で、テールパイプ344の後端側を後方に向けて開口させている。エンジン14の各気筒から排出された排気ガスは、ターボ過給器323のタービンケース335及び消音器343を経由して、テールパイプ344から機外に放出されることになる。
上記の記載並びに図9〜図14から明らかなように、走行機体1における運転座席12の下方に搭載された過給器323付きエンジン14の左右一側に、冷却ファン154が配置されており、前記冷却ファン154を挟んで前記エンジン14とは反対側に、除塵スクリーン325付き外気導入カバー324が配置されており、前記冷却ファン154と前記外気導入カバー324との間に、複数の熱交換器326〜328が配置されているコンバインであって、前記エンジン14を挟んだ前後両側方に、前記過給器323と前記外気導入カバー324に連通する排塵ダクト333とがそれぞれ振り分けて配置されているから、前記冷却ファン154による冷却風の冷却作用を有効利用して、前記熱交換器群326〜328を効率よく冷却できるものでありながら、前記エンジン14の周辺空間(前後のスペース)を有効利用して、前記熱交換器群326〜328の配置位置に制約を受けることなく、前記過給器323及び前記排塵ダクト333をコンパクト且つ機能的に配置できる。すなわち、前記エンジン14前後のスペースを前記過給器323及び前記排塵ダクト333の配置空間として有効利用でき、前記エンジン14搭載スペース(前記運転座席12下方のスペース)の利用効率を向上できるという効果を奏する。
上記の記載並びに図9〜図14から明らかなように、前記熱交換器326〜328群のうちの1つは前記過給器323用のインタークーラ327であり、前記エンジン14の上面側に、前記インタークーラ327の入口側配管341及び出口側配管342が延出しているから、前記エンジン14の上面側スペースを活用して前記インタークーラ327の太い配管341,342群を比較的短い距離で簡単に組み付けできる。従って、前記エンジン14周りの組み付け作業性やメンテナンス作業性の向上を図れるという効果を奏する。
上記の記載並びに図9〜図14から明らかなように、前記走行機体1のうち前記エンジン14の後方に穀粒タンク7が搭載されており、前記排塵ダクト333が前記エンジン14と前記穀粒タンク7との間に位置しているから、前記穀粒タンク7前方の限られたスペースと、前記エンジン14後方のスペースとを有効利用して、前記排塵ダクト333をコンパクト且つ機能的に配置できるという効果を奏する。また、できるだけ前記排塵ダクト333を前記エンジン14後方側に寄せておけば、前記穀粒タンク7容量の拡大を図れ、収穫作業の連続時間の延長が可能になるという利点もある。