JP5370901B1 - 潜堤 - Google Patents

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Abstract

【課題】津波流を受けても機能を維持することができる潜堤を提供する。
【解決手段】フレーム14は、複数の水流透過性面状部材20をお互いに対向するように有するとともに、水流透過性面状部材20が延びる水平方向と略直交する複数の壁体22を有し、さらに上部には水流透過性蓋部材24を有し、底部には水流透過性底部材26を有しており、前記部材20、22、24、26によって側方、上方、および下方を囲まれた空間28を有し、そして、フレーム14は、水流透過性面状部材20の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように捨石マウンド12に配置されており、空間28には中詰石16が水流透過性面状部材20および水流透過性蓋部材24を通過しないように充填されており、一方、フレーム14の部位のうち、捨石マウンド12に根入れされた部位は海底に接触しておらず、捨石マウンド12内にとどまっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、潜堤に関し、特に、津波流を受けても機能を維持することができる潜堤に関する。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による大津波は、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらしたが、岩手県の釜石、大船渡も例外ではなく、港では湾口防波堤が倒壊し、大きな被害を受けた。
釜石港の津波防波堤は港の入口に位置し、開口部(延長300m)を挟み、南側には延長670mの防波堤(南堤)が設けられ、北側には延長990mの防波堤(北堤)が設けられ、さらに前記開口部(延長300m)には海底から水深−19mまで達する潜堤が設けられて構成されている(例えば、非特許文献1参照)。
釜石港の前記津波防波堤は、東北地方太平洋沖地震による大津波により、南北の前記防波堤だけでなく前記開口部(延長300m)に設けられた潜堤も被害を受け、該潜堤においては、大津波の速い流れと圧力により、ケーソンが捨石マウンド上を滑動したり、捨石マウンド上から転落したりするという被害を受けた。
「東北地方太平洋沖地震津波による釜石港津波防波堤の被災要因の検討」、社団法人港湾空港技術研究所、平成23年4月1日、(国土交通省ホームページ報道発表資料「釜石港における津波による被災過程を検証」(平成23年4月1日)における添付資料の別添3)
本発明は、かかる被害状況に鑑みてなされたものであって、津波流を受けても機能を維持することができる潜堤を提供することを課題とする。
本発明は、以下の潜堤により、前記課題を解決したものである。
即ち、本発明に係る潜堤の第1の態様は、海底に構築された捨石マウンドと、少なくとも一部が該捨石マウンドに根入れされて該捨石マウンドと一体化したフレームと、を備えた潜堤であって、前記フレームは、複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有するとともに、前記水流透過性面状部材が延びる水平方向と略直交する複数の壁体を有し、さらに上部には水流透過性蓋部材を有し、底部には水流透過性底部材を有しており、前記複数の水流透過性面状部材、前記複数の壁体、前記水流透過性蓋部材、および前記水流透過性底部材によって側方、上方、および下方を囲まれた空間を有し、そして、前記フレームは、前記水流透過性面状部材の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように前記捨石マウンドに配置されており、側方、上方、および下方を囲まれた前記空間には中詰石が前記水流透過性面状部材および前記水流透過性蓋部材を通過しないように充填されており、一方、前記フレームの部位のうち、前記捨石マウンドに根入れされた部位は海底に接触しておらず、前記捨石マウンド内にとどまっていることを特徴とする潜堤である。
なお、本出願においては、捨石マウンドの表層部を覆う被覆石も捨石マウンドの一部とする。
また、「捨石マウンドと一体化したフレーム」とは、捨石マウンドが崩壊しなければ、想定される津波流の圧力が前記潜堤に作用してもフレームの位置が移動しないような固定状態のフレームのことである。
また、「水流透過性面状部材」とは、面と垂直方向に水流を透過させることができる面状部材のことであり、例えば、長方形の枠材の内側に棒状部材を縦方向または横方向に所定の間隔で配置したものや、長方形の枠材の内側に棒状部材を縦横の両方向に所定の間隔で配置した格子状のものを含む概念である。
また、「複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有する」とは、お互いに平行な複数の水流透過性面状部材を有する場合は当然含むが、それだけに限られず、複数の水流透過性面状部材が概ね向かい合っていると言える状態も含む。例えば、想定される津波流が進行する方向と略直交する水平方向から前記フレームを見たときの形状(前記壁体を正面から見たときの形状)が等脚台形となる場合において、前記フレームの沖側と陸側の側面(水流透過性面状部材)同士は「対向する」の範疇に含まれるものとする。
また、ここでいう「壁体」とは、壁面に貫通孔を有するものも含み、例えば棒状部材をトラス構造に組んでなる面状部材も含む概念であり、面状部材の全面積(面状部材に貫通孔がないとしたときの全面積)に対して占める貫通孔の面積の割合が例えば90%以上のものも含む概念である。
側方、上方、および下方を囲まれた前記空間に充填された前記中詰石のうち、前記水流透過性面状部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性面状部材を通過しない大きさであることが好ましく、前記水流透過性蓋部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性蓋部材を通過しない大きさであることが好ましい。
本発明に係る潜堤の第2の態様は、海底に構築された捨石マウンドと、少なくとも一部が該捨石マウンドに根入れされて該捨石マウンドと一体化したフレームと、を備えた潜堤であって、前記フレームは、複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有するとともに、前記水流透過性面状部材が延びる水平方向と略直交する複数の壁体を有し、さらに上部には水流透過性蓋部材を有しており、前記複数の水流透過性面状部材、前記複数の壁体、および前記水流透過性蓋部材によって側方および上方を囲まれた空間を有し、そして、前記フレームは、前記水流透過性面状部材の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように前記捨石マウンドに配置されており、側方および上方を囲まれた前記空間には中詰石が前記水流透過性面状部材および前記水流透過性蓋部材を通過しないように充填されており、一方、前記フレームの部位のうち、前記捨石マウンドに根入れされた部位は海底に接触しておらず、前記捨石マウンド内にとどまっていることを特徴とする潜堤である。
側方および上方を囲まれた前記空間に充填された前記中詰石のうち、前記水流透過性面状部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性面状部材を通過しない大きさであることが好ましく、前記水流透過性蓋部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性蓋部材を通過しない大きさであることが好ましい。
前記壁体を前記水流透過性面状部材の延びる水平方向から見たときの形状は、底辺の方が上辺よりも長い略等脚台形であることが好ましい。
前記壁体は、例えば、想定される津波流が進行する方向と略平行に配置された棒状部材、および略鉛直方向に配置されて前記捨石マウンドに根入れされた棒状部材を少なくとも有してなるように構成してもよい。
また、前記壁体を構成する部材を棒状部材とし、前記壁体をトラス構造により形成するようにしてもよい。
前記水流透過性面状部材は、所定の間隔を開けて配置された複数の棒状部材を有してなるように構成してもよい。
前記フレームは鋼製とすることが好ましい。ただし、鉄筋コンクリート(RC)製の棒状部材や鋼とコンクリートの合成構造(SRC構造など)からなる棒状部材を用いることも可能である。
また、前記壁体を構成する部材は、内部にコンクリートが充填されている鋼管を含むことが好ましい。
また、前記水流透過性面状部材を構成する部材には形鋼を含ませてもよい。
本発明に係る潜堤の前記第1の態様を構築する際には、例えば次のような潜堤の構築方法、即ち、少なくとも一部が捨石マウンドに根入れされるように該捨石マウンド上にフレームを設置して潜堤を構築する潜堤の構築方法であって、複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有するとともに、前記捨石マウンド上に設置した状態において前記水流透過性面状部材が延びる水平方向と略直交する複数の壁体を有し、前記捨石マウンド上に設置した状態において上方向から見たときに水平面内に閉じた形状になっており、さらに前記捨石マウンド上に設置した状態において底部には水流透過性底部材を有し、かつ、上部は開放された側方下方フレームを、水流透過性面状部材が延びる前記水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように前記捨石マウンド上に設置した後、前記側方下方フレームの内側に中詰石を前記水流透過性面状部材を通過しないように上方から投入するとともに、前記捨石マウンド上にもさらに捨石を敷設して、投入した前記中詰石および敷設した前記捨石により前記側方下方フレームの下部の周囲を覆って根入れをし、さらに、投入した前記中詰石が前記側方下方フレームの上部から外に出ないように、前記側方下方フレームの上部を水流透過性蓋部材で覆うことを特徴とする潜堤の構築方法を用いることができる。
前記側方下方フレームの内側に投入する前記中詰石のうち、前記水流透過性面状部材に接する部位に投入する中詰石は該水流透過性面状部材を通過しない大きさであることが好ましく、前記水流透過性蓋部材に接する部位に投入する中詰石は該水流透過性蓋部材を通過しない大きさであることが好ましい。
なお、前記構築方法で用いる側方下方フレームの上部は開放されているが、ここでいう「開放」は、完全に開放されている状態だけでなく、前記側方下方フレームの内側に前記中詰石を上方から投入できる間隙があれば、前記側方下方フレームの内側上部に例えば棒状部材が配置されているような状態も含む概念である。
本発明に係る潜堤の前記第2の態様を構築する際には、例えば次のような潜堤の構築方法、即ち、少なくとも一部が捨石マウンドに根入れされるように該捨石マウンド上にフレームを設置して潜堤を構築する潜堤の構築方法であって、複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有するとともに、前記捨石マウンド上に設置した状態において前記水流透過性面状部材が延びる水平方向と略直交する複数の壁体を有し、前記捨石マウンド上に設置した状態において上方向から見たときに水平面内に閉じた形状になっており、さらに前記捨石マウンド上に設置した状態において上部は開放された側方フレームを、前記水流透過性面状部材が延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように前記捨石マウンド上に設置した後、前記側方フレームの内側に中詰石を前記水流透過性面状部材を通過しないように上方から投入するとともに、前記捨石マウンド上にもさらに捨石を敷設して、投入した前記中詰石および敷設した前記捨石により前記側方フレームの下部の周囲を覆って根入れをし、さらに、投入した前記中詰石が前記側方フレームの上部から外に出ないように、前記側方フレームの上部を水流透過性蓋部材で覆うことを特徴とする潜堤の構築方法を用いることができる。
前記側方フレームの内側に投入する前記中詰石のうち、前記水流透過性面状部材に接する部位に投入する中詰石は該水流透過性面状部材を通過しない大きさであることが好ましく、前記水流透過性蓋部材に接する部位に投入する中詰石は該水流透過性蓋部材を通過しない大きさであることが好ましい。
なお、前記構築方法で用いる側方フレームの上部は開放されているが、ここでいう「開放」は、完全に開放されている状態だけでなく、前記側方フレームの内側に前記中詰石を上方から投入できる間隙があれば、前記側方フレームの内側上部に例えば棒状部材が配置されているような状態も含む概念である。
前記構築方法において、前記中詰石は、シューターにより前記フレームの内側に投入するようにしてもよい。
本発明に係る潜堤は、少なくとも一部が捨石マウンドに根入れされて該捨石マウンドと一体化したフレームを備え、前記フレームの内側には、水流透過性面状部材および水流透過性蓋部材を通過しないように中詰石が充填されているので、津波流を受けても機能を維持することができる。
本発明の実施形態に係る潜堤の斜視図 本発明の実施形態における水流透過性面状部材20の正面図 本発明の実施形態における壁体22の正面図 本発明の実施形態の変形例1における壁体32の正面図 本発明の実施形態における水流透過性蓋部材24の正面図 本発明の実施形態における水流透過性底部材26の正面図 本発明の実施形態の変形例2における壁体34の正面図 本発明の実施形態に係る潜堤の施工状況の一例を模式的に示す図
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(1)構成について
図1は、本発明の実施形態に係る潜堤の斜視図である。
本実施形態に係る潜堤10は、捨石マウンド12と、鋼製フレーム14と、中詰石16と、を備えてなり、捨石マウンド12に少なくとも一部が根入れされるように捨石マウンド12上に鋼製フレーム14が設置された構造で、該鋼製フレーム14の内側に中詰石16が充填された構造である。本実施形態においては、鋼製フレーム14と中詰石16とからなる構造部分を本体構造部分18と称することとする。また、以下では、捨石マウンド12に少なくとも一部が根入れされるように捨石マウンド12上に鋼製フレーム14が設置された状態を、「捨石マウンド12に設置された状態」と記すことがある。
捨石マウンド12は海底に構築されており、通常の捨石マウンドと同様に、基礎地盤の不陸を補正して構造物の安定を図る役割、構造物の荷重を分散して均等に地盤に伝える役割、構造物に作用する波力を捨石マウンド12内部と基礎地盤(海底)との間の摩擦力で吸収する役割、波や潮流による構造物底面における地盤の洗掘を防止する役割等を有する。また、捨石マウンド12は、通常の捨石マウンドと同様に、表層部は被覆石に覆われているが、図1では、捨石と被覆石とを区別することなく同様に描いている。
本実施形態に係る潜堤10の捨石マウンド12に用いる捨石および被覆石は特に限定されず、通常の捨石マウンドに用いる捨石および被覆石と同様のものを用いることができる。
鋼製フレーム14は、水流透過性面状部材20と、壁体22と、水流透過性蓋部材24と、水流透過性底部材26と、を有してなり、複数の水流透過性面状部材20をお互いに対向するように有するとともに、捨石マウンド12に設置された状態において水流透過性面状部材20が延びる水平方向と略直交する複数の壁体22を有し、また上部には水流透過性蓋部材24を有し、底部には水流透過性底部材26を有しており、複数の水流透過性面状部材20、複数の壁体22、水流透過性蓋部材24、および水流透過性底部材26によって側方、上方、および下方を囲まれた空間28を有し、鋼製フレーム14の内側(空間28)には中詰石16が充填されている。より詳細には、水流透過性面状部材20に接する部位には水流透過性面状部材20を通過できない大きさの中詰石16が充填され、水流透過性蓋部材24に接する部位には水流透過性蓋部材24を通過できない大きさの中詰石16が充填されている。
また、鋼製フレーム14は、捨石マウンド12に設置された状態において水流透過性面状部材20の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように捨石マウンド12に配置されており、壁体22は想定される津波流が進行する方向と略平行となるように配置されている。
想定される津波流が進行する方向と直交する水平方向から鋼製フレーム14を見たときの形状(鋼製フレーム14の側面(壁体22)の形状)は、図1に示すように略等脚台形である。
また、後述するように、壁体22の側辺鋼管60および鉛直鋼管62(図3参照)の下部は周囲を中詰石16および捨石によって覆われて、捨石マウンド12に根入れされており、これにより、鋼製フレーム14は捨石マウンド12と一体化している。
中詰石16は、鋼製フレーム14の内側(空間28)に充填されて、本実施形態に係る潜堤10の主な構造部分(本体構造部分18の一部)となり、潜堤としての機能を発揮する役割を有する。
中詰石16として用いる石材の種類は特に限定されないが、水流透過性面状部材20に接する位置の中詰石16は、水流透過性面状部材20を通過できない大きさであることが好ましく、水流透過性蓋部材24に接する位置の中詰石16は、水流透過性蓋部材24を通過できない大きさであることが好ましい。
ただし、鋼製フレーム14の内側に充填する中詰石16は原則として全て水流透過性面状部材20および水流透過性蓋部材24を通過できない大きさにして、鋼製フレーム14の内側における位置に応じて大きさの異なる中詰石16を使い分ける必要をなくした方が施工性の点では有利となる。
なお、水流透過性面状部材20に接する位置の個々の中詰石16の大きさが水流透過性面状部材20を通過できる大きさであったとしても、複数の中詰石16によるアーチ効果により水流透過性面状部材20を通過できないことも考えられるので、水流透過性面状部材20に接する位置の中詰石16の大きさを水流透過性面状部材20を通過できない大きさに全て揃えることは状況によっては必ずしも必要というわけではない。
同様に、水流透過性蓋部材24に接する位置の個々の中詰石16の大きさが水流透過性蓋部材24を通過できる大きさであったとしても、複数の中詰石16によるアーチ効果により水流透過性蓋部材24を通過できないことも考えられるので、水流透過性蓋部材24に接する位置の中詰石16の大きさを水流透過性蓋部材24を通過できない大きさに全て揃えることは状況によっては必ずしも必要というわけではない。
図2は、水流透過性面状部材20の正面図(水流透過性面状部材20が形成する面と直交する方向から水流透過性面状部材20を見た図)である。図2に示すように、水流透過性面状部材20は、鋼管50と、形鋼52と、丸鋼54とからなり、積み上げられた中詰石16が崩れないように拘束する役割を有する。
縦方向に配置された鋼管50は等脚台形の壁体22の側辺材(図3に示す側辺鋼管60)と共通する部材であり、下部は捨石マウンド12に根入れされている。また、2本の鋼管50の間に5本の形鋼52がおおよそ等間隔で水平方向に配置されており、さらに、2本の鋼管50の間に鋼管50と平行に6本の丸鋼54がおおよそ等間隔で縦方向に配置されている。
鋼管50内にコンクリートを充填することにより、中詰石16を鋼製フレーム14の内側に投入する際の衝撃に対して強くなり、鋼材が損傷しにくくなるので、鋼管50内にコンクリートを充填することが好ましい。ただし、鋼管50に替えて形鋼を用いることができないわけでなく、安全性を照査した上で鋼管50に替えて形鋼を用いることも可能である。
なお、図2では、鋼管50は3本しか描いていないが、鋼管50の数は、潜堤10の必要な延長距離に応じて任意に増やすことができる。
また、水流透過性面状部材20は、面と垂直方向に水流を透過させることができ、かつ、積み上げられた中詰石16が崩れないように拘束する機能を有する面状部材であればよく、この条件を満たすものであれば、形状や材質は必ずしも限定されない。
図2では、2本の鋼管50の間の形鋼52を5本とし、2本の鋼管50の間の丸鋼54を6本としたが、これらの本数は一例であり、これらの本数に限定されるわけではない。また、中詰石16が崩れないように拘束する機能を確保できるのであれば、例えば、図2における5本の形鋼52のうち最上段と最下段の2本のみ残し、他の3本は省略してもよい。また、図2における形鋼52に替えて丸鋼を用いてもよく、図2における丸鋼54に替えて形鋼を用いてもよい。また、形鋼52の数を増やし、形鋼52の間の間隔を小さくすることで、丸鋼54を省略するようにしてもよい。また、この場合に、形鋼52に替えて丸鋼を用いてもよい。
ただし、中詰石16を鋼製フレーム14の内側に投入する際の衝撃を考えると、水流透過性面状部材20の材質は靭性に優れる材質が好ましく、水流透過性面状部材20には鋼材を用いることが好ましい。特に捨石マウンド12に根入れされている部材は本体構造部分18の安定性を確保する上で重要であるので、前述したように鋼管とし、該鋼管内にはコンクリートを充填しておくことが好ましい。
図3は、壁体22の正面図(壁体22が形成する面と直交する方向から壁体22を見た図)である。図3に示すように、壁体22は、側辺鋼管60(水流透過性面状部材20の鋼管50と共通。)と、鉛直鋼管62と、水平鋼管64と、ブレース鋼管66とからなり、これらの鋼管がトラス構造を形成しており、壁体22を正面から見た形状は略等脚台形である。また、側辺鋼管60および鉛直鋼管62の下部は、周囲を中詰石16および捨石によって覆われて捨石マウンド12に根入れされており、これにより鋼製フレーム14は捨石マウンド12と一体化している。さらに、壁体22が形成する面(側辺鋼管60、鉛直鋼管62、水平鋼管64、ブレース鋼管66の全てが含まれる平面)が想定される津波流が進行する方向と平行になるように、鋼製フレーム14は捨石マウンド12に配置されており、沖合からの津波流に対して壁体22のトラス構造で抵抗できるような配置となっている。
したがって、壁体22は、津波流を受けても位置および形状を保持することができ、壁体22は、津波流に対して本体構造部分18の位置が移動したり、崩壊したりすることを防ぐ役割を有している。
このように、壁体22は、津波流に対して本体構造部分18の安定性を確保する上で重要な部位であり、壁体22を構成する側辺鋼管60、鉛直鋼管62、水平鋼管64、ブレース鋼管66の全てにおいて内部にコンクリートを充填しておき、中詰石16を鋼製フレーム14の内側に投入する際の衝撃に対して強くしておくことが好ましい。また、鋼管を用いることにより、形鋼を用いた場合よりも断面効率が良くなり、防食面積も小さくなる。ただし、鋼管に替えて形鋼を用いることができないわけでなく、安全性を照査した上で鋼管に替えて形鋼を用いることも可能であり、あるいはまた、鉄筋コンクリート(RC)製の棒状部材や鋼とコンクリートの合成構造(SRC構造など)からなる棒状部材を用いることも可能である。
なお、壁体22は必ずしもトラス構造で形成しなくてもよく、例えば鋼管同士の接点を剛結してラーメン構造にしてもよい。
また、本実施形態における壁体22の側辺鋼管60はまっすぐな直線状の鋼管であるが、これに替えて、例えば図4に示す壁体32のように、外側に凸に湾曲した湾曲鋼管68を用いてもよい(変形例1)。この変形例1において、湾曲鋼管68以外の鋼管については、それぞれ壁体22の鉛直鋼管62、水平鋼管64、ブレース鋼管66と同様の形状および機能を有しているので、図4に示す壁体32の湾曲鋼管68以外の鋼管では、壁体22(図3参照)の対応する鋼管と同様の番号を付している。
なお、変形例1における鋼製フレーム14では、外側に凸に湾曲した湾曲鋼管68を有する壁体32を備えることになるので、水流透過性面状部材20は、湾曲鋼管68の形状に合わせて外側に凸に湾曲させた曲面形状にする。
図5は、水流透過性蓋部材24の正面図(水流透過性蓋部材24が形成する面と直交する方向から(真上から)水流透過性蓋部材24を見た図)である。水流透過性蓋部材24は、図1に示す状態において水流透過性面状部材20が延びる水平方向と直交する水平方向(想定される津波流が進行する水平方向)に配置された形鋼70と、形鋼70と直交する水平方向に配置された形鋼72と、形鋼70と平行な水平方向に配置された丸鋼74とからなり、津波流による速い水流を受けたときの揚力で、積み上げられた中詰石16が鋼製フレーム14の上部から外部に放出されないように蓋をする役割を有する。
水流透過性蓋部材24は、面と垂直方向に水流を透過させることができ、かつ、積み上げられた中詰石16が鋼製フレーム14の上部から外部に放出されないように蓋をする機能を有する面状部材であればよく、この条件を満たすものであれば、形状や材質は必ずしも限定されない。
図5では、2本の形鋼70の間の形鋼72を6本とし、2本の形鋼70の間の丸鋼74を4本としたが、これらの本数は一例であり、これらの本数に限定されるわけではない。また、中詰石16が鋼製フレーム14の上部から外部に放出されないように蓋をする機能を確保できるのであれば、例えば、図5における6本の形鋼72のうち最上段と最下段の2本のみ残し、他の4本は省略してもよい。また、図5における形鋼72に替えて丸鋼を用いてもよく、図5における丸鋼74に替えて形鋼を用いてもよい。また、形鋼72の数を増やし、形鋼72の間の間隔を小さくすることで、丸鋼74を省略するようにしてもよい。また、この場合に、形鋼72に替えて丸鋼を用いてもよい。
なお、図5では、1つの水流透過性蓋部材24あたり3本の形鋼70を描いているが、形鋼70の数は、1つの水流透過性蓋部材24あたり2本としても4本以上としてもよい。ただし、水流透過性蓋部材24の取り付けは、中詰石16の投入終了後に水中作業にて取り付けるので、施工性を考慮すると水流透過性蓋部材24の大きさが大きくなりすぎないように留意する。
図6は、水流透過性底部材26の正面図(水流透過性底部材26が形成する面と直交する方向から(真上から)水流透過性底部材26を見た図)である。水流透過性底部材26は、図1に示す状態において水流透過性面状部材20が延びる水平方向と直交する水平方向(想定される津波流が進行する水平方向)に配置された鋼管76(壁体22の水平鋼管64と共通。)と、鋼管76と直交する水平方向に配置された形鋼78(水流透過性面状部材20の形鋼52と共通。)とからなる長方形の枠内に、鋼管76に平行な丸鋼80と、形鋼78に平行な形鋼79とが格子状に配置された形状である。
水流透過性底部材26は、上方から中詰石16の重量を受けて固定されることにより、鋼製フレーム14全体の位置を固定する機能を有すればよく、この条件を満たすものであれば、形状や材質は必ずしも限定されない。
図6では、鋼管76と形鋼78とで形成される長方形の枠内に、丸鋼80と形鋼79とを格子状に配置したが、これは一例であり、このような配置に限定されるわけではない。
水流透過性底部材26の材質については、中詰石16を鋼製フレーム14の内側に投入する際の衝撃を考えると、靭性に優れる材質が好ましく、水流透過性底部材26には鋼材を用いることが好ましい。ただし、水流透過性面状部材20や壁体22と同様に、鉄筋コンクリート構造(RC構造)や鋼とコンクリートの合成構造(SRC構造など)からなる棒状部材を用いることもできる。
なお、想定される津波流や設置する地形等の条件によっては、水流透過性底部材26を設けなくても潜堤の安定性を確保できる場合も考えられる。照査の結果、潜堤の安定性を確保できることを確認できた場合には、水流透過性底部材26を省略してもよい。
(2)特徴部分および効果について
前記(1)により本実施形態に係る潜堤10の構成について一通り説明したが、ここでは、本実施形態に係る潜堤10の主要な特徴および効果に焦点を当ててさらに詳細に説明する。
本実施形態に係る潜堤10の1つ目の特徴は、鋼製フレーム14の一部が捨石マウンド12に根入れされて鋼製フレーム14と捨石マウンド12とが一体化している根入れ効果であり、2つ目の特徴は、本体構造部分18に中詰石16を用いることにより、水流が本体構造部分18を貫通して透過できるようにした水流透過効果であり、3つ目の特徴は、壁体22を正面から見たときの形状(想定される津波流が進行する方向と直交する水平方向から鋼製フレーム14を見たときの形状)が略等脚台形となっており、本体構造部分18の沖側および陸側の側面が傾斜面となっていることによる傾斜効果である。これらの3つの効果について、順に説明する。
(2−1)根入れ効果
前述したように、壁体22の側辺鋼管60および鉛直鋼管62の下部は、捨石マウンド12に根入れされており、これにより鋼製フレーム14は捨石マウンド12と一体化している。このため、本実施形態に係る潜堤10が津波流を受けても、潜堤としての機能は維持されやすい。
これに対して、捨石マウンド上にケーソンを設置した従来の構造形式では、ケーソンの位置を保持する機能は主にケーソンの自重のみによっている。このため、捨石マウンド上にケーソンを設置した従来の構造形式では、津波流に対して位置を保持する機能が弱く、津波流を受けると、ケーソンが捨石マウンド上を滑動したり、捨石マウンド上から転落したりして、潜堤としての機能を維持できなくなるおそれがある。
また、従来の構造としては、捨石マウンド上に消波ブロックを配置した構造形式もあるが、この構造形式も消波ブロックの位置を保持する機能は主に消波ブロックの自重のみによっている。このため、捨石マウンド上に消波ブロックを設置した従来の構造形式では、津波流に対して位置を保持する機能が弱く、津波流を受けると、消波ブロックが捨石マウンド上を滑動したり、捨石マウンド上から転落したりして、潜堤としての機能を維持できなくなるおそれがある。
なお、本実施形態に係る潜堤10では、前述したように、壁体22の側辺鋼管60および鉛直鋼管62の下部を捨石マウンド12に根入れして、鋼製フレーム14を捨石マウンド12と一体化して、津波流を受けても潜堤としての機能が維持されやすいようにしているが、この根入れ効果をさらに高めるべく、捨石マウンド12の下の基礎地盤に達するまで杭を打ち、該杭と鋼製フレーム14を連結して鋼製フレーム14を固定するようにしてもよい。このようにした場合、鋼製フレーム14は杭により強力に固定される。
(2−2)水流透過効果
本実施形態に係る潜堤10の本体構造部分18は、鋼製フレーム14の内側に中詰石16が充填されて構成されており、中詰石16が体積の大部分を占める。鋼製フレーム14の水流透過性面状部材20は、前述したように、面と垂直方向に水流を透過させることができる。また、中詰石16を積み上げた構造においては、中詰石16同士の間には必然的にかなりの空隙(本体構造部分18の全体積に対して相当な程度の体積比の空隙)が存在することとなる。
このため、本実施形態に係る潜堤10の本体構造部分18は、津波流を受けても、該津波流による圧力を全て受け止めるわけではなく、受けた津波流のうちの少なからざる割合を反対側(陸側)に透過させる。
したがって、本実施形態に係る潜堤10が津波流を受けても、本体構造部分18に加わる水平力は、ケーソンのような水流を透過させない従来の構造形式よりも小さくなる。このため、本実施形態に係る潜堤10が津波流を受けても、潜堤としての機能は維持されやすい。
また、捨石マウンド上にケーソンを設置した従来の構造形式においては、飛行機の翼が空気の流れによって揚力を受けるように、津波流による速い水流によってケーソンに大きな揚力が働くと考えられる。
一方、本実施形態に係る潜堤10の本体構造部分18は上下方向にも水流をかなり通すことができるので、本体構造部分18にはケーソンの場合のような大きな揚力は働かない。
この点からも、本実施形態に係る潜堤10の本体構造部分18は津波流を受けても位置を保持しやすく、本実施形態に係る潜堤10が津波流を受けても、潜堤としての機能を維持しやすい。
なお、以上の説明では、沖合からの津波流を念頭に置いて説明をしたが、本実施形態に係る潜堤10は、陸からの引き波に対しても同様の効果を発揮することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る潜堤10の本体構造部分18は、津波流および陸からの引き波を反対側に透過させて津波流および陸からの引き波から受ける水平力を小さくする機能と、津波流および陸からの引き波による速い水流による揚力をほとんど発生させない機能を有しているが、これらの機能は本体構造部分18の体積の多くの部分を中詰石16が占めていることが大きな役割を果たしている。一方、1つ1つの中詰石16は従来のケーソンと比べて質量は格段に小さいため、流れの速い場所での安定性が懸念される。しかしながら、1つ1つの中詰石16は従来のケーソンと比べて質量は格段に小さいが、鋼製フレーム14によって大きなブロックとしてまとめられているので、全体としてはケーソンと同様の質量効果を発揮することができ、本実施形態に係る潜堤10の本体構造部分18は、質量の観点からも、流れの速い場所での安定性を備えている。
(2−3)傾斜効果
本実施形態に係る潜堤10においては、水流透過性面状部材20が延びる水平方向から見た鋼製フレーム14の形状(壁体22を正面から見た形状)は略等脚台形であり、水流透過性面状部材20が水平面となす角が90°未満となっており、このため、津波流を受けても水流をある程度受け流すことができるという効果(以下、傾斜効果と記すことがある。)を得ることができる。
これに対して、捨石マウンド上にケーソンを設置した従来の構造形式では、ケーソンの側面は傾斜しておらず、鉛直であり、本実施形態に係る潜堤10のような津波流を受け流す効果は得られない。
なお、陸を遡上した津波による引き波による水流もかなりの速さを有しているので、水流透過性面状部材20のうち、沖に向いた側のみを水平面とのなす角が90°未満となるようにするのではなく、陸に向いた側も水平面とのなす角が90°未満となるようにすることが好ましい。即ち、本実施形態のように、想定される津波流が進行する方向と直交する水平方向から鋼製フレーム14を見たときの形状(鋼製フレーム14の側面(壁体22)の形状)は、側辺と底辺とのなす角が90°未満の略等脚台形であることが好ましい。
また、本実施形態に係る潜堤10においては、前述したような(1)、(2)の効果が得られるので、想定される津波流の強さ、潜堤を設置する位置と地形との関係、潜堤に要求される性能等によっては、津波流を受け流す傾斜効果が得られなくても安全性を確保できる場合も考えられる。このような場合は、水流透過性面状部材20が水平面とのなす角を90°未満としなくてもよく、水流透過性面状部材20が延びる水平方向から見た鋼製フレーム14の形状(壁体を正面から見た形状)を例えば略長方形にしてもよい(変形例2)。
図7は、この変形例2における壁体34の正面図(壁体34が形成する面と直交する方向から壁体34を見た図)である。壁体34は形状が略長方形である点以外は形状が略等脚台形である壁体22と同様であり、側辺鋼管82と、鉛直鋼管84と、水平鋼管86と、ブレース鋼管88とからなり、これらの鋼管がトラス構造を形成している。
(2−4)まとめ
以上、(2−1)〜(2−3)で本実施形態に係る潜堤10の3つの主要な特徴および効果について説明したように、本実施形態に係る潜堤10において得られる効果は、従来の構造形式よりも格段に優れる。
一方、本実施形態に係る潜堤10の主たる構造は、図1に示すように、捨石マウンド12に少なくとも一部が根入れされるように捨石マウンド12上に鋼製フレーム14を設置して、該鋼製フレーム14の内側に中詰石16を充填した構造であり、簡易な構造である。また、用いる材料も、鋼製フレーム14の鋼材以外は、主に捨石マウンド12の捨石と、中詰石16とであり、安価である。
したがって、本実施形態に係る潜堤10は、費用対効果が極めて優れた構造形式であるといえる。
なお、本実施形態に係る潜堤10が(2−1)〜(2−3)で説明した効果を奏することは、水理実験で確認済みである。
(3)施工手順について
最後に、本実施形態に係る潜堤10を構築する施工手順について説明する。図8は、本実施形態に係る潜堤10の施工状況の一例を模式的に示す図である。
まず、潜堤10を構築する海底上に捨石マウンドを設置する。水流透過性蓋部材24を除いた鋼製フレーム14(水流透過性面状部材20、壁体22、および水流透過性底部材26からなる鋼製フレームであり、以下、側方下方フレーム15と称する。)を設置する前の捨石マウンドを、潜堤10の完成後の捨石マウンド12と区別するために、ここでは側方下方フレーム15を設置する前の捨石マウンドを初期捨石マウンドと称することとする。初期捨石マウンドの設置は現状の捨石マウンド設置の一般的な方法に従って行えばよいので説明は省略する。ただし、側方下方フレーム15を初期捨石マウンド上に設置した後、側方下方フレーム15の内側に中詰石16を充填するとともに、さらに初期捨石マウンド上に捨石および被覆石を設置して、側方下方フレーム15を捨石マウンド12に根入れするので、側方下方フレーム15を初期捨石マウンド上に設置後に初期捨石マウンド上に設置する捨石および被覆石の量に相当する分だけ、初期捨石マウンドの捨石の量は、潜堤10の完成後の捨石マウンド12よりも少なくする。
海底上への初期捨石マウンドの設置完了後、クレーン等を用いて側方下方フレーム15を初期捨石マウンドの所定の位置に設置する。その際、上方向から見たときに水流透過性面状部材20の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように初期捨石マウンド上に設置することに留意する。なお、側方下方フレーム15を初期捨石マウンドの所定の位置に設置した状態を上方向から見たとき、側方下方フレーム15は水平面内に閉じた形状になっており、初期捨石マウンド上に設置した状態において底部には水流透過性底部材26が位置する。
初期捨石マウンド上への側方下方フレーム15の設置完了後、側方下方フレーム15の内側に中詰石16を充填するとともに、初期捨石マウンド上にさらに捨石および被覆石を設置して、側方下方フレーム15を捨石マウンド12に根入れする。
側方下方フレーム15の内側へ中詰石16を充填する際には、例えば図8に示すように、シューター90を用いて側方下方フレーム15の内側へ上方から中詰石16を充填することができる。すでに側方下方フレーム15が初期捨石マウンド上へ設置されているので、蛇かご等で予め中詰石16をブロック化しておく必要はない。
側方下方フレーム15の内側への中詰石16の充填完了後、水流透過性蓋部材24を水流透過性面状部材20および壁体22に水中作業で取り付け、充填された中詰石16の上部を水流透過性蓋部材24で覆って、鋼製フレーム14を完成させて、潜堤10を完成させる。
以上説明した施工手順では、水流透過性面状部材20、壁体22、および水流透過性底部材26からなる側方下方フレーム15を用いており、完成した潜堤10(鋼製フレーム14)は水流透過性底部材26も有しているが、照査の結果、潜堤の安定性(安全性)を確保できることを確認できた場合には、水流透過性底部材26を省略してもよく、水流透過性底部材26を省略する場合は、水流透過性面状部材20および壁体22からなる鋼製フレーム(以下、側方フレームと称する。)を用いて、側方下方フレーム15を用いた場合と同様の施工を行えばよい。
なお、側方フレームを初期捨石マウンドの所定の位置に設置した状態を上方向から見たとき、側方フレームは水平面内に閉じた形状になっているが、側方下方フレーム15とは異なり、水流透過性底部材26を有しない。
10…潜堤
12…捨石マウンド
14…鋼製フレーム
15…側方下方フレーム
16…中詰石
18…本体構造部分
20…水流透過性面状部材
22、32、34…壁体
24…水流透過性蓋部材
26…水流透過性底部材
28…空間
50、76…鋼管
52、70、72、78、79…形鋼
54、74、80…丸鋼
60、82…側辺鋼管
62、84…鉛直鋼管
64、86…水平鋼管
66、88…ブレース鋼管
68…湾曲鋼管
90…シューター

Claims (11)

  1. 海底に構築された捨石マウンドと、
    少なくとも一部が該捨石マウンドに根入れされて該捨石マウンドと一体化したフレームと、
    を備えた潜堤であって、
    前記フレームは、複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有するとともに、前記水流透過性面状部材が延びる水平方向と略直交する複数の壁体を有し、さらに上部には水流透過性蓋部材を有し、底部には水流透過性底部材を有しており、前記複数の水流透過性面状部材、前記複数の壁体、前記水流透過性蓋部材、および前記水流透過性底部材によって側方、上方、および下方を囲まれた空間を有し、
    そして、前記フレームは、前記水流透過性面状部材の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように前記捨石マウンドに配置されており、側方、上方、および下方を囲まれた前記空間には中詰石が前記水流透過性面状部材および前記水流透過性蓋部材を通過しないように充填されており、
    一方、前記フレームの部位のうち、前記捨石マウンドに根入れされた部位は海底に接触しておらず、前記捨石マウンド内にとどまっていることを特徴とする潜堤。
  2. 側方、上方、および下方を囲まれた前記空間に充填された前記中詰石のうち、前記水流透過性面状部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性面状部材を通過しない大きさであり、前記水流透過性蓋部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性蓋部材を通過しない大きさであることを特徴とする請求項1に記載の潜堤。
  3. 海底に構築された捨石マウンドと、
    少なくとも一部が該捨石マウンドに根入れされて該捨石マウンドと一体化したフレームと、
    を備えた潜堤であって、
    前記フレームは、複数の水流透過性面状部材をお互いに対向するように有するとともに、前記水流透過性面状部材が延びる水平方向と略直交する複数の壁体を有し、さらに上部には水流透過性蓋部材を有しており、前記複数の水流透過性面状部材、前記複数の壁体、および前記水流透過性蓋部材によって側方および上方を囲まれた空間を有し、
    そして、前記フレームは、前記水流透過性面状部材の延びる水平方向が、想定される津波流が進行する方向と略直交するように前記捨石マウンドに配置されており、側方および上方を囲まれた前記空間には中詰石が前記水流透過性面状部材および前記水流透過性蓋部材を通過しないように充填されており、
    一方、前記フレームの部位のうち、前記捨石マウンドに根入れされた部位は海底に接触しておらず、前記捨石マウンド内にとどまっていることを特徴とする潜堤。
  4. 側方および上方を囲まれた前記空間に充填された前記中詰石のうち、前記水流透過性面状部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性面状部材を通過しない大きさであり、前記水流透過性蓋部材に接する部位に充填された中詰石は該水流透過性蓋部材を通過しない大きさであることを特徴とする請求項3に記載の潜堤。
  5. 前記壁体を前記水流透過性面状部材の延びる水平方向から見たときの形状は、底辺の方が上辺よりも長い略等脚台形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の潜堤。
  6. 前記壁体は、想定される津波流が進行する方向と略平行に配置された棒状部材、および略鉛直方向に配置されて前記捨石マウンドに根入れされた棒状部材を少なくとも有してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の潜堤。
  7. 前記壁体を構成する部材は棒状部材であり、トラス構造を形成していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の潜堤。
  8. 前記水流透過性面状部材は、所定の間隔を開けて配置された複数の棒状部材を有してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の潜堤。
  9. 前記フレームは鋼製であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の潜堤。
  10. 前記壁体を構成する部材は、内部にコンクリートが充填されている鋼管を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の潜堤。
  11. 前記水流透過性面状部材を構成する部材には形鋼が含まれることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の潜堤。
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