実施の形態1.
最初に、図1と図2により、この実施の形態による空気調和機の室内ユニット100の構成を説明する。図1は、室内ユニット100全体を正面下方より見る斜視図であり、図2は、図1において、一点鎖線の円で示す要部Aの拡大斜視図である。
図1に示す室内ユニット100は、壁掛けタイプであり、室内の壁面の天井に近い上部に、壁面に固定される鉄製の据付板(図示せず)を介して設置される。室内ユニット100は、壁面側に背面ケース2を有し、その背面ケース2の前方に前面枠1を備える。前面枠1と背面ケース2により室内ユニット100本体の外郭を構成している。そして、前面枠1の前方には、上下方向に回動可能な意匠パネル3が配置される。意匠パネル3は、前面枠1に支持されており、閉じた状態において、この室内ユニット100の正面意匠に大きく貢献する。
背面ケース2は、正面側に図示されない貫流ファンや、その貫流ファンを囲うように配置される室内熱交換器を保持しており、背面側で壁面に固定された据付板(図示せず)に取り付け固定される。
背面ケース2の前方(正面側)に背面ケース2と接して位置する前面枠1は、箱形形状の筐体であり、背面ケース2に保持され背面ケース2から前方に突出している上記の貫流ファンや室内熱交換器を内部に収納している。そして、前面枠1は、下部に吹出口4が形成され、図示はしていないが、上面には室内空気の吸込口が設けられている。吹出口4は、室内ユニット100本体の左右方向に長く伸びるように形成されている。
貫流ファンの回転により、前面枠1上面の吸込口から室内空気がこの室内ユニット100本体内部に吸い込まれ、室内熱交換器を通過する過程で、冷凍サイクルを循環する冷媒との熱交換により冷やされたり暖められたりして調和空気となり、吹出口4から室内へと吹き出され、室内の空気調和が行われる。
吹出口4には、吹き出される調和空気の気流を上下方向に変更可能とする上下風向調整板5が設置されている。ここでは、2枚の上下風向調整板5が設置されている。これら上下風向調整板5は、それぞれ上下方向に回動可能であり、室内ユニット100の運転が停止されると、吹出口4を閉鎖するような位置まで回動して停止する。室内ユニット100が運転停止状態の時は、上下風向調整板5が吹出口4を閉鎖し、室内ユニット100の内部が吹出口4を通してはっきりと見えてしまうことを防いでいる。以上のとおり、室内ユニット100の外観は、主として上記の意匠パネル3、背面ケース2、前面枠1によって構成され、運転停止状態では、上下風向調整板5も外観意匠に寄与している。
図3は、この実施の形態の構成を示す分解斜視図である。前面枠1は背面ケース2にねじ固定されるが、その取付ねじ6の頭部6aをねじカバー20が覆い隠すのである。図1において、ねじカバー20は吹出口4の下縁部で、吹出口4の左右両端近傍に2つが設置されている。
図3において、前面枠1の前面部、詳細には前面枠1の下部に形成される吹出口4の下縁部には、作業者が取付ねじ3の取り付け取り外しを行うためのスペースとなる取り付け空間10が形成されている。取り付け空間10は、前面枠1が略長方体状に切り欠かれた格好で形成され、前方(正面側)と下方が開口している。そして、ねじカバー20が、取り付け空間10の前方と下方の開口縁に沿って、前面枠1と同一平面をなすように取り付け空間10に装着される。
ここで、室内ユニット100に対する方向について定義しておく。室内ユニット100が室内の壁面に設置された状態で、奥行き方向を前後方向とする。すなわち、奥側が壁面寄りの方向であり、手前側が意匠パネル3寄りの方向となる。そして、奥側のことを、同じ意味として、後方や壁面側と表現することもある。また、手前側のことも、同じ意味として、前方や正面側と表現することもある。また、室内ユニット100が室内の壁面に設置された状態で天地方向を上下方向とする。すなわち、意匠パネル3は、吹出口4よりも上側に、もしくは吹出口4の上方に、位置していることになり、逆に吹出口4は、意匠パネル3よりも下側に、もしくは意匠パネル3の下方に位置していることとなる。そして、吹出口4が長く伸びる水平方向を左右方向とする。
次に、図4乃至図6により、ねじカバー20の構成を説明する。図4は、ねじカバーの側面図であり、図5は、ねじカバー20を外向き面側から見た斜視図、図6は、ねじカバー20を内向き面側から見た斜視図である。ねじカバー20が室内ユニット100に取り付けられた状態において、外向き面が室内に臨む意匠面となり、内向き面が室内ユニット100本体側に向かう面となる。すなわち、図5は、ねじカバー20を意匠面側から見た斜視図であり、図6は、ねじカバー20を本体側から見た斜視図である。なお、上記で定義した室内ユニット100に対する方向を、このねじカバー20にも適用させることとする。ねじカバー20が室内ユニット100に装着された状態(詳細には前面枠1に取り付けられた状態)での姿勢において、上記の室内ユニット100に対する方向を適用する。
ねじカバー20は、縦断面が略L字形状である板状のカバー本体21を有する。このカバー本体21は、正面カバー部22と下面カバー部23から成る。略L字状の短辺側が正面カバー部22で、前方(正面側)と下方が解放されている取り付け空間10の前方を覆う部分である。そして、長辺側が下面カバー部23であり、取り付け空間10の下方を覆う。このねじカバー20の装着によって取り付け空間10は覆い隠される。下面カバー部23の前後方向に伸びる長さの方が、正面カバー部22の略上下方向に伸びる長さよりも長く形成されている。カバー本体21の左右幅は、取り付け空間10の左右幅よりもわずかに小さく、ねじカバー20が装着された状態で、取り付け空間10に対して左右方向に多少の隙間が存在する。
正面カバー部22は、内向き面側(本体側)において、下面カバー部23方向に少しばかり傾斜している。これは、前面枠1の吹出口4下縁部の縦断面形状に合わせているからである。同様に、正面カバー面22と下面カバー23の接続部は曲面形状になっており、これも、前面枠1の吹出口4下縁部の縦断面形状に合致させるためである。このように、ねじカバー20は、前面枠1に装着された状態で、前面枠1から出っ張ることも凹むこともなく、前面枠1と同一平面をなし、取付ねじ頭部6aを覆い隠しながら、前面枠1の一部、詳細には吹出口4の下縁部の一部を構成するようになっている。
カバー本体21の内向き面側の左右両端部には、正面カバー部22と下面カバー部23の両方に接して一対の前側左右壁24が形成されている。前側左右壁24は、前後方向において、正面カバー部22の内向き面から下面カバー部23の途中(手前側1/3程度)までの長さで形成される。そして、前側左右壁24の上端は、正面カバー部22の上端面よりも下方に位置する。この一対の前側左右壁24は、下面カバー部23に接することなく正面カバー部22の内向き面から奥側に向かって突出するように設けられていても、または、正面カバー部22に接することなく下面カバー部23の内向き面から上方へ突出するように設けられていてもよい。一対の左右壁24は、正面カバー部22の近傍に位置して、カバー本体21の左右両端部の内向き面側からそれぞれ突出していれば、正面カバー部22と下面カバー部23の両方に接せずに、どちらか一方の内向き面に接していればよい。
一対の前側左右壁24は、それぞれその外向き面の上部に、外側に向かって球面状に突出する突起25を備えている。左右に一対の突起25は、それぞれ左右方向外側に突出するもので、互いが180°反対方向を向いて突出している。そして、突起25は、上下方向において、正面カバー部22の上端面を越えることなく、上端面より下方に位置するが、正面カバー部22の高さの中央よりは上方に位置している。一対の突起25は、それぞれカバー本体21の左右幅より左右方向に飛び出ている。
また、下面カバー部23の末端側では、内向き面上の左右両端部に一対の奥側左右壁26が立設している。なお下面カバー部23の末端とは、前後方向で正面カバー部22が位置する側とは逆の端のことである。下面カバー部23内向き面上の左右両端部それぞれにおいて、奥側左右壁26と前側左右壁24とは連続しておらず、前後方向に間隔を置いて並んでいる。奥側左右壁26は、前後方向において、下面カバー部23の末端側(奥側)の内向き面から上方に突出するように形成される。そして、奥側左右壁26の高さ(上下方向の長さ)は、正面カバー部22の高さの半分程度であり、前側左右壁24の高さよりも低い。
一対の奥側左右壁26は、それぞれ下部が奥側の端面から手前側に所定の長さ(カバー本体21の板厚と同程度の長さ)だけ切り欠かれていて、そこが切欠き部27である。この切欠き部27の存在により、切欠き部27の上方には引掛け部28がそれぞれ形成される。一対の引掛け部28は、奥側に向かって、すなわち下面カバー部23の末端へと向かう方向に突き出た形状となる。引掛け部28の下面には、下面カバー部23の内向き面と対向する平坦面28aが形成される。引掛け部28は、奥側に向かって伸び、その伸びた方向で引掛けることが可能な形状を有している。
下面カバー部23の末端の中央には、手前側に向かって窪み、左右方向に所定の幅を有する凹部29が設けられる。これは後述するが、ねじカバー20の取り外し時に、作業者がねじカバー20を手前側にスライドさせる際に、指先、もしくは工具を入れるためのものである。凹部29の左右方向の幅は、人の指先が引掛け易いように、10mm以上であることが望ましい。また、凹部29の深さ(すなわち前後方向の長さ)であるが、意匠性の点から、1〜2mm程度に留めておく。なお、凹部29は、下面カバー部23を上下方向に貫通させないで、外向き面側だけを切欠いて形成してもよい。
正面カバー部22の外向き面(意匠面)には、当該ねじカバー20の内側に取付ねじ3が存在していることを外部に通知するためのマーク22aが記されている。ここでは、ボルトをイメージした図柄が刻印されている。このねじカバー20は、上記に説明した構成を有しているが、マーク22aも含めこれらの構成すべてが樹脂の一体成形で製造される。そして、その樹脂材料は前面枠1の樹脂材料と同一材料であり、ここではポリスチレン樹脂(PS)を用いている。また、前面枠1とねじカバー20は同色である。
続いて、図7により、ねじカバー20が装着される取り付け空間10の構成について説明する。取り付け空間10は前面枠1に形成されるもので、吹出口4の下縁部に設けられている。図7は取り付け空間10の斜視図であり、正面下方から見ている。取り付け空間10は、上下幅(上下方向の長さ)および左右幅(左右方向の長さ)よりも奥行き幅(前後方向の長さ)が長い略長方体状の空間で、正面側(前方)と下方の2面が開口している。取り付け空間10の奥側を閉ざす奥側壁11は、正面側斜め下方に傾斜する座面11aを有している。座面11aは、正面側(手前側)に斜め下を向くように傾斜している。その座面11aの略中央に取付ねじ6のねじ穴12が形成されている。このねじ穴12中心線は座面11aと直交する。
奥側壁11の下部(座面11aの下方)は、傾斜せずに正面を向いており(上下方向に平行であり)、この部分の左右端側には一対のフック部13が前方に向かって突出している。フック部13は直方体状の突起であり、ねじカバー20の引掛け部28をその上面で掛け止める。フック部13の上面は略水平な平坦であり、この上面に引掛け部28の平坦面28aが当接する。フック部13は、上面に引掛け部28の平坦面28aが引掛る平坦部位を有していれば、突出形状は長方体状でなくてもよい。
取り付け空間10の左右両側をそれぞれ閉ざす一対の側壁15には、ねじカバー20の左右に突出する突起25を収めて、下縁で引掛けて止める一対の掛り止め穴14が前方寄りの位置に形成されている。この掛り止め穴14は、通し穴で形成されているが、底面を有した凹穴で形成してもよい。図7に示す掛り止め穴14は、略矩形状であるが、球面状の突起25に合わせて円形状の穴としてもよい。掛り止め穴14の穴形状は、ねじカバー20の突起25が下縁(掛り止め穴14の開口縁の中で下側に位置する縁)で掛り止められるものであれば、如何なる形状であっても構わない。なお、図7にて一対の側壁15には、主に奥側で内向きに突出している部分が存在しているが、これは前面枠1の金型による樹脂成形において、通し穴である掛り止め穴14を形成するために必要な部分である。
そして、取り付け空間10の上側は、上面壁16が閉ざしている。上面壁16には、取付ボルト頭部6aとの接触を避けるための曲面溝16aが前後方向に渡って形成されている。曲面溝16aを設けることで、取り付け空間10全体を上下方向に大きくするよりも、正面カバー部22の高さを抑制することができる。図8は、取付ボルト6が取り付けられた状態の取り付け空間10の分解斜視図である。図8に示すように、取付ボルト頭部6aが座面の上端を越える大きさであっても、曲面溝16aにより、上面壁16に頭部6aが干渉することなく取り付け取り外しが可能となる。ただし、この曲面溝16aは溝深さが深いと、室内ユニット100の運転中、上下風向調整板5の角度によっては、ねじカバー20の正面カバー部22の上方で曲面溝16aの存在が目立って室内ユニット100の意匠性が損なわれるので、曲面溝16aの溝深さは、最大でも1mm程度に留めておく。
これより、この実施の形態における取付ねじ6およびねじカバー20の取り付け取り外しについて説明する。図9は、室内ユニット100における取り付け空間10(ねじカバー20)周辺の分解断面図であり、図10と図11はそれぞれ、ねじカバー20が装着された状態における取り付け空間10(ねじカバー20)周辺の断面図である。図10は、図2においてB−B線で示されるように、ねじカバー20の左右方向中央を切断した断面図であり、図11は、図2においてC−C線で示されるように、ねじカバー20の一方の側(吹出口4の左端に近い側)の前側左右壁24の左右方向中央を切断した断面図である。
図9において、樹脂製の背面ケース2には、取付ねじ6が螺合する(雌ねじと噛み合う)螺合穴7を有するボス部9が一体的に形成されている。筒状の螺合穴7の中心線は、前面枠1に形成されている奥側壁11の座面11aに対してほぼ直交する。座面11aは正面側(手前側)の斜め下向に傾斜しているので、螺合穴7は、奥側に進むほど上方に向かう穴であり、ボス部9も同様に傾斜している。螺合穴7は背面ケース2の成形時においては、単なる筒状の穴であるが、室内ユニット100の製造時において、セルフタップねじである取付ねじ6がねじ込まれる(取り付けられる)ことで、筒状の穴の表面に雌ねじが形成されて雄ねじ側である取付ねじ6と噛み合ってねじ結合される。
取付ねじ6は、前面枠1を背面ケース2に固定するものであるが、前面枠1と背面ケース2の間にはドレンパン固定具8が介在し、取付ねじ6の締め込み(取り付け)により、前面枠1と背面ケース2とでドレンパン固定具8を挟持することでドレンパン(図示せず)を固定する。ドレンパンは、室内ユニット100が有する熱交換器の下方に設置されて、室内ユニット100が冷房や除湿運転をしている時に熱交換器表面に結露して滴下する空気中の水分を受け取り、屋外につながるドレンホースへと導くものである。このドレンパンの左右両端部からそれぞれドレンパンと一体的にドレンパン固定具8が下方に延在している。ドレンパン固定具8には、取付ねじ6が貫通する通し穴8aが形成されている。
取付ねじ6の取り付けは、室内ユニット100の製造時に初めて行われる。その後にユーザの居宅において室内の壁面に設置された状態でこの取付ねじ6が取り外されるのは、室内ユニット100本体内部の修理や部品交換といったメンテナンス時に専門業者によって行われるときであり、その頻度はとても低く、使用期間中に一度も取り外されないことも多い。取付ねじ6を取り外し、前面枠1を背面ケース2から前方にスライド移動させて取り外し、本体内部の熱交換器等を露出させるのである。また、廃棄された室内ユニット100が、回収先でリサイクルのために解体される場合に、取付ねじ6が取り外れることがある。
このねじカバー20の作用説明をわかりやすくするために、まずは、室内ユニット100が室内壁面の天井近くの位置に設置された状態にて、メンテナンスが終了し、メンテナンスを担当した専門業者が取付ねじ6を取り付け、その後にねじカバー20を装着する場合を先に説明する。
状況としてねじカバー20は取り外された状態にあり、図9に示すように、作業者(メンテナンス業者)が、取付ねじ7を奥側の斜め上に向かってドライバー等の工具により、押し上げながら回転させて螺合穴7に螺入させする。これにより、取付ねじ6によって図10に示されるように、ドレンパン固定具8を挟み込んで、前面枠1が背面ケース2に固定される。
この取付ねじ6の取り付け作業は、室内ユニット100の設置場所の都合上、作業台を使用しない限り、作業者の頭よりも高い位置で行わなければならないが、この室内ユニット100においては、座面11aが正面側の斜め下方に傾斜しているので、作業台に載ることなく、作業者が上方を見上げるだけで取付ねじ6を挿入するねじ穴12の位置が容易に確認でき、作業性がよい。
また、背面ケース2に形成される螺合穴7は奥側に向かって上方に傾斜していて、作業者は取付ねじ6を斜め上方にねじ込むので、電動ドライバー等の工具を用いて取付ねじ6を取り付ける際に、上方を見上げる姿勢で、その見上げている方向にドライバー等の工具を押し出す動作となり、締結状態を確認しながら作業が進められ、作業性がよく、作業ミスの発生が抑制される。
さらに、上記のとおり取付ねじ6を斜め上方に取り付けることに加えて、取り付け空間10が、左右方向より前後方向が長い略矩形状であって奥行き幅が長いので、たとえ上下風向調整板5が、吹出口4を閉鎖する状態になく、この取り付け空間10の前方に位置するような姿勢(回動角度)であっても、また閉鎖状態であっても取り付け空間10前方に近接していたとしても、取り付け空間10の下方が十分に開放され、奥行き方向に長い取り付け空間10の下方から、上下風向調整板5に接触することなく、取付ねじ6の取り付けが可能となる。
すなわち、取付ねじ6の取り付け空間10を、上下風向調整板5の回動空間(吹出口4内)より後方となる吹出口4の下縁部に設けるようにしても、取り付け空間10の形状を上下方向および左右方向より前後方向が長い形状とすることで、上下風向調整板5の回動角度や位置に影響されることなく、取付ねじ6の取り付け作業が行え、作業性が良好となる。取付ねじ6の取り付け作業に先立って、わざわざ上下風向調整板5の回動角度を変更する必要がない。なおこれは、室内ユニット100の製造時に、最初に取付ねじ6を取り付ける際にも当てはまることである。なお、通常に室内ユニット100の運転を停止すれば、上下風向調整板5は吹出口5を閉鎖する姿勢で停止するが、運転中に主電源を切って運転を止めた場合には、上下風向調整板5は、その止めた時点の回動角度のままで停止する。
取付ねじ6の取り付け、すなわちねじ込みが完了し、前面枠1を背面ケース2に固定できたならば、取付ねじ頭部6aを覆い隠すために、ねじカバー20を前面枠1(取り付け空間10)に装着する。その装着動作について、図2〜8も加えて説明する。まず作業者は、ねじカバー20を取り付け空間10まで移動させ、ねじカバー20の下面カバー部23の末端側左右両側面を、取り付け空間10の手前側で一対の側壁15に沿わせるとともに、上下方向に対しては、下面カバー部23の外向き面が一対の側壁15の下縁に近づくように位置させる。
それから、ねじカバー20の姿勢を水平に近い状態にして、奥側に向かってスライド移動させる。そうすると、前側左右壁24から外側に向かって左右に突出する一対の突起25の両頂点間の水平距離すなわち左右幅が、取り付け空間10の左右幅より大きいので、一対の突起25がそれぞれ一対の側壁15の正面縁に接触する。突起25は球面状であるので、作業者がここで少し奥側へスライドさせる力を追加することで、一対の側壁15がそれぞれ突起25によって左右方向外側に、またねじカバー20の一対の前側左右壁24が、側壁15からの反力によって左右方向内側に弾性変形し、一対の突起25は側壁15の正面縁を容易に乗り越えて、その頂点がそれぞれ側壁15に接触しながら取り付け空間10内へと進入していく。
そのままねじカバー20の奥側方向へのスライドを続けると、一対の突起25は、側壁15に形成された掛り止め穴14に嵌合する、すなわち掛り止め穴14内に収まった状態となる。これにより、側壁15と前側左右壁24の弾性変形が解除される。このように、一対の掛り止め穴14に一対の突起25がそれぞれ収まったと同時に、側壁15と前側左右壁24の弾性変形が解除されるので、その弾性変形の解除を作業者は手応えとして感じることができ、その手応えによって突起25が掛り止め穴14に嵌合されたことを認識できる。作業者は、この手応えを感じた時点でねじカバー20の装着(取り付け)作業を終える。
作業者が装着作業を終えた状態では、ねじカバー20の正面側においては、一対の突起25の根元が掛り止め穴14の下縁に当接して、ねじカバー20に作用する重力が支持される。掛り止め穴14と突起25の嵌合は、突起25の根元が掛り止め穴14の下縁に当接していれば、前後方向や上方に隙間があってよい。一方で奥側では、ねじカバー20の奥側左右壁26の切欠き部27が、取り付け空間10の奥側壁11から前方に突出するフック部13を上下方向に差しはさんだ状態となり、一対の引掛け部28の平坦面28aがそれぞれ一対のフック部13の上面に当接し(図11参照)、フック部13の上面に引掛け部28が掛けられた状態となり、ここでもねじカバー20に作用する重力が支持される。このように、正面側と奥側の両方で、ねじカバー20は前面枠1に上下方向を支持される。
よって、下面カバー部23の前後方向の長さが正面カバー部22の上下方向の長さよりも長くなるようにねじカバー20を形成しても、ねじカバー20は、前面枠1から正面側と奥側のそれぞれで上下方向に支持されるので、宙ぶらりんになったり落下したりすることなく、略水平な状態(姿勢)を維持して取り付け空間10に保持され、意匠性を損なうことなく、確実に取付ねじ頭部6aを隠匿できる。ねじカバー20は、取付ねじ頭部6aを隠すだけでなく、取り付け空間10そのものを覆い隠している。一対の引掛け部28の平坦面28aがそれぞれ一対のフック部13の上面に当接するとともに、一対の突起25の根元が一対の掛り止め穴14の下縁にそれぞれ当接することにより、下面カバー部23の外向き面が前面枠1(吹出口4の下縁)と同一平面をなすような寸法関係となっている。
また、ねじカバー20の前後方向についての位置決めは、突起25が掛り止め穴14に嵌合されたときに、フック部13の正面側に向く突端面が、ねじカバー20の切欠き部27の奥側を向く壁面と接触することでなされる。これらが接触することで、ねじカバー20がそれ以上奥側にスライドできず、その状態で正面カバー部22の外向き面が前面枠1(吹出口4の下縁)と同一平面をなすような寸法関係となっている。またこのとき、突起25は掛り止め穴14の下縁に当接しているとともに正面縁にも近接しており、装着状態のねじカバー20は、前後方向にはほとんど動かない。すなわち、奥側へはフック部13の正面側に向く突端面へねじカバー20の切欠き部27の奥側を向く壁面が接触することにより、手前側へは突起25が掛り止め穴14の正面縁に接触することにより、ねじカバー20は前後方向の動きを規制される。突起25と掛り止め穴14の嵌合状態では、突起26の上方と奥側に隙間(ともに0.1〜0.3mm程度)が存在していることになる。
ここで、ねじカバー20の左右方向については、カバー本体21の左右幅が取り付け空間10の左右幅よりも少しばかり小さい(0.1〜0.3mm程度)ので、微小な隙間が存在する。このように 遊びしろとなる隙間があるので、ねじカバー20の脱着に際して、取り付け空間10内をねじカバー20がスムーズにスライド移動できる。
ねじカバー20の上下方向の支持(ねじカバー20の重力支持)に関して、仮に正面側における一対の突起25と一対の掛り止め穴14との嵌合だけで支持しようとした場合、下面カバー部23の長さが正面カバー部22より長いことで、ねじカバー20の重心が一対の突起25よりも奥側に位置するので、突起25と掛り止め穴14との当接箇所(支持点)には重力によるモーメントが作用し、ねじカバー20は突起25を中心に下方へと回転して突起25で掛り止め穴14に引っかかった宙ぶらりんな状態となってしまう。これでは、取付ねじ頭部6aを覆い隠すというねじカバー29の本来の機能も作用できないし、室内ユニット100の意匠性も大きく損なってしまう。
逆に、もし奥側における引掛け部28(ねじカバー20側)のフック部13(前面枠1側)への引掛りだけでねじカバー20の重力を支持しようとしたら、ねじカバー20の重心は、正面側には正面カバー部22も存在しており、当然のごとく引掛け部28よりも手前側に位置するので、重力によるモーメントによって、フック部13との当接箇所を中心に下方へと回転し、そして引掛け部28は単にフック部13上面に載って引掛っているだけであるので、その回転によりフック部13への引掛りは解除され、ねじカバー20は落下してしまう。
本実施の形態のねじカバー20では、下面カバー部23の長さを正面カバー部22の長さよりも十分に長く(例えば4倍以上と)して、ねじカバー20の前後方向における重心位置が奥側寄りとなるようであっても、正面側における一対の突起25と一対の掛り止め穴14の嵌合だけでねじカバー20に作用する重力を支持しないで、ねじカバー20の末端側でも引掛け部28をフック部13に引掛けることで支持しているので、ねじカバー20は前面枠1に宙ぶらりんになったり、前面枠1から落下したりすることなく、略水平な装着状態が維持され、意匠性を損なわずに確実に取付ねじ頭部6aを覆い隠すことができる。このねじカバー20は、重心が前後方向においてどこに位置しようとも、落下したり宙ぶらりんとなったりせずに、前面枠1に対して略水平な装着姿勢を維持し、前面枠1に確実にかつ安定的に保持されるのである。
ねじカバー20が上記のように正面側(手前側)と奥側のそれぞれで上下方向に支持されるため、取り付け空間10の形状を上下方向より前後方向が長い略長方体形状としても、この取付空間10を確実に覆い隠すように装着することができる。上記したとおり、取り付け空間10を前後方向に長い形状とすることで、上下風向調整板5の影響を受けることなく、良好に取付ねじ6の取り付け作業が行えるので、本実施の形態の室内ユニット100は、取付ねじ6の取り付け作業の作業性が良好な取り付け空間10を提供できるとともに、略水平な状態を維持して前面枠1に安定的に保持されて、その取り付け空間10を確実に覆い、取付ねじ6の頭部6aを覆い隠すねじカバー20を提供することができる。
そして、作業者はこのねじカバー20の取り付け(装着)に際し、下面カバー部23の末端側の両側面を取り付け空間10の一対の側壁15正面縁近傍に沿わせて入れ込んで上下方向の位置を目視レベルで合わせ、後は奥側へとスライドさせるだけで、ねじカバー20を装着することができる。このように、ねじカバー20の装着作業が容易に成し遂げられる。また、ねじカバー20の内向き面側は目視できないが、装着作業の完了を一対の側壁15や一対の前側左右壁24の弾性変形解除による手応えを感じることで把握できるので、中途半端にスライド移動を止めてしまって装着が不完全な状態で作業を終了してしまう事態を避けることができる。
また、このねじカバー20は、正面側では掛り止め穴14への突起25の嵌合、奥側ではフック部13の上面への引掛け部28の引掛けという、極めて簡素な構造でありながら、前後方向に長い形状であっても、落下したり前後どちらか一方が宙ぶらりんになったりすることなく、略水平状態を維持して確実にかつ安定的に前面枠1に保持され、取り付け空間10を覆って取付ねじ頭部6aを隠匿できる。
次に、取付ねじ6の取り外し作業について説明する。取付ねじ6の取り外しに先立って、装着されたねじカバー20の脱着が必要である。ねじカバー20は上記のとおり簡素な構造で前面枠1に支持されているので、基本的には装着作業を反対に進めれば脱着が可能となる。以下に詳細に説明する。
ねじカバー20を脱着させるには、前後方向に動きを制限されているねじカバー20に対して、作業者はまずこれを手前側(前方)へスライドさせる必要がある。突起25の根元が掛り止め穴14の正面縁に接触するので、最初からスライドさせる力を高めることで、球面状の突起25が、一対の側壁15をそれぞれ左右方向外側に弾性変形させ、またねじカバー20の一対の前側左右壁24が、側壁15からの反力によって左右方向内側に弾性変形して、一対の突起25は掛り止め穴14の正面縁を容易に乗り越えて、掛り止め穴14との嵌合が解除される。突起25の球面頂点はこの時、側壁15に接触している。
作業者が、脱着作業時の突起25の掛り止め穴14への嵌合解除に対して、ねじカバー20の正面カバー部22と下面カバー部23のそれぞれの外向面を指でつまむようにして、もしくは、下面カバー部23の外向面に指を押し付けて、前方にスライドさせればよいが、指が滑ってしまって嵌合解除までのスライド力をねじカバー20に十分に伝えられない場合も想定される。
そのような場合に備えて、ねじカバー20の末端側中央には凹部29を設けている。この凹部29に指先を引掛けて、もしくは凹部29に工具を挿し入れてねじカバー20を前方に押し出すようにして突起25の嵌合を解除してもよい。凹部29を利用することで突起25の掛り止め穴14への嵌合は容易に解除できる。ねじカバー20の正面カバー部22と下面カバー部23のそれぞれの外向面を指でつまみながら、下面カバー部23をつまむ指の指先を凹部29に引掛けて前方にスライドさせるようにしてもよい。スライドさせる力が十分に伝わるとともに、ねじカバー20をつまんでいるので、脱着作業完了後にねじカバー20が落下する恐れがない。
一対の突起25の嵌合を解除したら、後はねじカバー20を前方にスライドさせればよい。その時、一対の突起25の頂点が一対の側壁15に接しながらスライドしており、一対の側壁15および一対の前側左右壁24の左右方向への弾性変形は継続している。そのままねじカバー20の末端側が抜け出るまでスライドさせて脱着してもよいし、フック部13への引掛け部28の引掛けが外れる位置までスライドさせたら、一対の突起25の頂点を中心にねじカバー20を下方へ回転させながら、突起25を取り付け空間10の下方から抜け出るよう斜め下にスライドさせて脱着してもよい。
いずれにしろ、一対の突起25の頂点と一対の側壁14の接触がスライド移動により解消された時点で、一対の側壁15および一対の前側左右壁24の左右方向への弾性変形が解除される。このねじカバー20は装着構造が簡素であるので、装着だけでなく上記のように脱着作業も容易に成し遂げられる。すなわち、ねじカバー20の着脱作業の作業性が良好である。
ねじカバー20を脱着すると、奥側に長い取り付け空間10は下方が広く開放された状態となり、また座面11aが正面側の斜め下向に傾斜しているので、電動ドライバー等の工具を使用しても、上下風向調整板5の回動角度や位置(上下方向、前後方向)に影響を受けることなく、作業者の頭よりも高い位置での取付ねじ6の取り外し作業が容易に行える。
以上のように、このねじカバー20は上下方向よりも前後方向に長い略L字状のカバー本体21を有するように形成しても、前面枠1に対して装着状態を安定的に維持して取り付け空間10を覆って取付ねじ6の頭部6aを隠すことができるので、取り付け空間10も前後方向が上下方向や左右方向よりも長い略直方体状に形成することができ、このため、ねじカバー20が取り外された状態にて、取り付け空間10の下方が広く開放され、さらに座面11aが正面側の斜め下を向いていることも合わせて、吹出口4の下縁部に取り付け空間10を設けても、上下風向調整板5の角度や位置の影響を受けることなく、取付ねじ6の取り付け取り外しの作業に関して良好な作業性を確保することができる。
また、吹出口4の下縁部に取り付け空間10を設け、上下風向調整板5を吹出口4の下縁部に近接させても、上記のとおり取り付け空間10を広く開放して、取付ねじ6の良好な作業性を確保することができるので、室内ユニット100の奥行き幅(前後方向の厚さ)を縮小でき、室内ユニット100の室内壁面からの出っ張り量をスリム化して、更なる意匠性の向上を図ることができる。
また、ねじカバー20の前面枠1(取り付け空間10)への装着構造も、正面側における一対の突起25の掛り止め穴14への嵌合と、奥側における一対の引掛け部28のフック部13への引掛りだけと簡素であるため、ねじカバー20の着脱作業も基本的にはねじカバー20をスライドさせることで為し得るので容易である。そして、ねじカバー20はその前後(手前側と奥側)においてそれぞれ上下方向に支持されるので、装着状態では前面枠1に対して略水平な装着姿勢を維持して安定的に保持される。
なお、ねじカバー20の奥側における上下方向の支持は、取り付け空間10の奥側壁11から前方に突出する略長方体のフック部13の上面に、ねじカバー20の末端側で奥側に向かって突出する引掛け部28を引掛けることで成り立たせているが、奥側壁11に一対の穴もしくは凹部を形成し、一対の引掛け部28を下面カバー部23の末端面よりもさらに奥側へと突出させ、奥側壁11に形成した穴もしくは凹部に、その延長した引掛け部28を挿入して、その下縁に引掛け部28の平坦面28aを当接させることで、ねじカバー20の奥側における上下方向の支持を行うような構造としてもよい。すなわち、奥側壁11には、突出させても凹ましてもよいので、一対の引掛け部28をそれぞれ引掛けられる一対の係止部が設けられていればよい。
ここまでの実施の形態においては、ねじカバー20を空気調和機の壁掛けタイプの室内ユニット100に適用させたが、ねじカバー20およびそれを保持する取り付け空間10の構成は、室内ユニット100に限らず、外観意匠上、外郭部品に取り付けられる取付ねじの頭部を覆い隠す必要がある機器に対しても適用可能である。特に、作業者の頭よりも高い位置に設置される機器に対して有効であり、空気調和機であれば、壁掛けタイプだけでなく、天井吊り形式や天井埋込カセット形式の室内ユニットにも適用できるし、空気調和機以外の電化製品では、天井や天井近傍に設置される換気扇や照明器具、壁掛け扇風機などに適用できる。