JP5362615B2 - 銀粉及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池の電極形成等に用いられる導電性ペーストに配合される銀粉及びその製造方法に関する。
従来から、電子部品などの電極や回路を形成するために、銀粉を有機成分(樹脂)中に分散させた導電性ペーストが使用されている。特に近年はシリコン結晶型太陽電池のフィンガー電極やバスバー電極用として銀粉を分散させた導電性ペーストが使用されることが多い。
ところで、太陽電池の変換効率を向上させるための主たる要因としては、太陽電池素子内へより多くの太陽光を閉じ込めて吸収電流を増加させること、少数キャリヤの再結合の減少による開放電圧を増大させること、及び太陽電池素子内の内部抵抗を低減させることの3つが挙げられる。図1は太陽電池素子の一例の断面構造を示す概略図、図2(a)は図1に示す太陽電池素子の平面図、図2(b)は図1に示す太陽電池素子の底面図である。図1、図2(a)および図2(b)に示すように、太陽電池素子は、シリコン基板(p+型)1と、シリコン基板1の受光面側に形成されるn型拡散層(n+型)2と、入射光に対する無反射条件を確立しうるようにn型拡散層2上に形成される反射防止層3と、キャリヤの再結合による変換効率の低下を防ぐためにシリコン基板1の裏面側に形成されるBSF層4と、受光面側に形成されるバスバー電極5aおよびフィンガー電極5bからなる表面電極5と、裏面側に形成されるバスバー電極6aおよび集電電極6bからなる裏面電極6とを備えている。上記したように、太陽電池素子内へより多くの太陽光を閉じ込めて吸収電流を増加させるとともに太陽電池素子内の内部抵抗を低減させて太陽電池の変換効率を向上させるためには、受光面側に形成されるバスバー電極5aおよびフィンガー電極5bからなる表面電極5の形状や組成が極めて重要である。
そこで、フィンガー電極5bは極力細線化して受光面積を増大させたり、表面電極5の比抵抗を低くしたり、表面電極5のファイヤースルー性を高めるための手段が採用されている。このファイヤースルーとは、焼成の際、表面電極5を構成する導電性ペーストに含まれているガラスフリットが反射防止層3に作用して当該層を溶解除去し、その結果、表面電極5とn型拡散層2が接触し、表面電極5とn型拡散層2とのオーミック接続を得ることをいう。表面電極5とn型拡散層2との間で安定なオーミック接続が得られないと、太陽電池の抵抗が高くなってしまう。
例えば、特許文献1には、上記ファイヤースルー性を高めるために、有機バインダーと、溶剤と、ガラスフリットと、Ti、Bi、Zn、Y、InおよびMoから選ばれる少なくとも1種の金属又はその金属化合物の粉末であって、その平均粒径が0.001μm以上0.1μm未満である金属又はその金属化合物の粉末を含む導電性ペーストが開示されている。
また、特許文献2には、表面電極に各種電気素子を半田付けする際の半田耐熱性を向上して電気導通性を向上させるために、Ag又はAg主体の合金からなる微粒子を有機系金属化合物を含有する有機溶剤中に添加して撹拌し、その後、上記微粒子を固液分離して乾燥することによって表面に有機系金属化合物がコーティングされた微粒子を得、その有機系金属化合物がコーティングされた微粒子を有機溶剤中で混練して導体ペーストを製造する方法が開示されている。
特開2005−243500号公報 特開2002−298651号公報
しかしながら、特許文献1に記載された導電性ペーストは、粒径が極めて小さい金属又はその金属化合物の粉末(以下、微粒子粉末という)を含むために凝集しやすく、ペースト中に均一に分散させることが難しいという欠点がある。その結果、ガラスフリットと微粒子粉末との混合物が表面電極と半導体との界面に不均一に分布することにより、電気導通性のばらつきが大きくなるという欠点がある。
また、特許文献2に記載された導体ペーストの製造方法は、煩雑な製造工程を必要とするため、製造コストが高くなるという不都合がある。
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な方法で太陽電池の変換効率を向上させることができる、太陽電池の電極形成用の導電性ペーストに配合される銀粉及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意試験研究を重ねた結果、銀粉の表面に簡易な手段で脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の金属石鹸を被覆することで金属石鹸被覆銀粉を得ることができ、その金属石鹸被覆銀粉を用いて導電性ペーストを作製して太陽電池の表面電極を形成すると変換効率が向上することを見出し、本発明の完成に至ったのである。
すなわち、第一の発明は、太陽電池の電極形成に用いられる導電性ペーストに配合される銀粉であって、脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の金属石鹸で被覆され上記金属石鹸の被覆量が、被覆前の銀粉重量に対して0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴としている。
第二の発明は、第一の発明における金属石鹸で被覆された銀粉の製造方法であって、銀粉と、脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の金属石鹸とを混合および解砕することにより、金属石鹸で被覆された銀粉を製造することを特徴としている。
第三の発明は、第二の発明における銀粉に金属石鹸を被覆するための混合および解砕が乾式下で行われることを特徴としている。
本発明によれば、簡単な方法で太陽電池の変換効率を向上させることができる、太陽電池の電極形成用の導電性ペーストに配合される銀粉及びその製造方法を提供することができる。
太陽電池素子の一例の断面図である。 図2(a)は図1の太陽電池素子の受光面側の平面図、図2(b)は図1の太陽電池素子の反受光面側の平面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(1)銀粉
銀粉は、太陽電池の電極形成等に用いられる導電性ペーストに配合しうるものであれば特に限定されるものではない。銀粉の形状は、鱗片状、球形状、フレーク状、不定形状またはこれらを混合したものでもよい。要するに、銀粉の形状は特定のものに限定されない。
銀粉の製造方法としては、アトマイズ法、湿式還元法など公知の方法を採用することができる。具体的には、湿式還元法であれば、硝酸銀の水溶液にアンモニア水を加えて銀アンミン錯体を形成した後、ホルマリン、ヒドラジンなどの還元剤を添加して銀に還元させて銀粉を得る方法や硝酸銀の水溶液に水酸化ナトリウムを加えて酸化銀粒子を生成させた後、ホルマリン、ヒドラジンなどの還元剤を添加して銀に還元させて銀粉を得る方法などを挙げることができる。その後は必要に応じて、銀粉を含有する溶液を固液分離して固体分としての銀粉と溶液に分離し、その銀粉を適当な洗浄剤で洗浄して銀粉に付着した液体を除去し、さらに、その銀粉を乾燥して水分を除去し、次いで、解砕や分級などの処理をを行って求める粒度の銀粉を得ることができる。
銀粉を太陽電池の電極形成に用いられる導電性ペーストに配合する場合の銀粉の配合量は導電性ペースト全体に対して65ないし95重量%であるのが好ましい。65重量%未満では銀粉の配合量が少なすぎて焼成して得られる受光面電極の抵抗が上昇するという不都合があり、95重量%を超えると印刷性が悪くなり、物理的な接着強度が不足するという不都合があるからである。
銀粉の平均粒径は、導電性ペーストを焼結するときの焼結特性に影響を与えるので(粒径の大きい銀粉は粒径の小さい銀粉よりもゆっくりとした速度で焼結される)、0.1〜5.0μmが好ましい。0.1μm未満であると焼結速度が速すぎ、物理的な接着強度が不足するという不都合がある。5.0μmを超えると、焼結速度はやや緩慢になるが、ペースト中での分散性および印刷性が悪くなり、細いラインを印刷するのが困難になるという不都合がある。本明細書において、平均粒径とは、レーザ回折法により粒径を測定した場合において、小径側から累積50%の粒径をいう。
(2)金属石鹸
本発明において銀粉を被覆するために使用される金属石鹸は、脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上のものが好ましい。脂肪酸の種類は、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸でもよく、オレイン酸などの不飽和脂肪酸でもよいが、特に、ステアリン酸マグネシウムとステアリン酸カルシウムが好ましい。銀粉を被覆する金属石鹸の重量は、銀粉重量に対して0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上2重量%以下であることがより好ましい。金属石鹸の被覆量が銀粉重量に対して0.1重量%未満であると、太陽電池の電極形成等に用いられる導電性ペーストに配合しても変換効率を向上することが困難である。一方、金属石鹸の被覆量が銀粉重量に対して5重量%を超えると、導電性が低下し、その結果、変換効率が悪くなる。
(3)金属石鹸で被覆された銀粉を得る方法
銀粉を金属石鹸で被覆する方法としては、一般に混合機または解砕機と呼ばれる、回転エネルギーを利用して圧縮、剪断、衝撃、摩擦などの機械的外力を固体材料に加えて破壊する設備を用いて銀粉と金属石鹸とを混合および解砕する方法がコスト面から好ましい。この混合および解砕により、金属石鹸は細かくされるとともに銀粉の表面への付着と剥離を繰り返す。そして、一定時間以上混合および解砕を実行することにより、銀粉の表面には細かくなった金属石鹸の被覆層が形成されるようになる。金属石鹸が微細であるほど、より均一に銀粉表面に被覆されるため、金属石鹸の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。混合および解砕時に粉体へ及ぼされる回転エネルギーが大きくなるほど、金属石鹸の被覆層の銀粉への付着力を高めることができるので、少なくとも600rpmの回転数で10分間以上混合および解砕を行うことが好ましい。なお、混合および解砕時の温度は200℃を超えない程度とするのが好ましい。
銀粉と金属石鹸との混合および解砕を乾式下で行うとは、混合および解砕時に特別の分散媒を用いずに、乾燥した銀粉を金属石鹸で被覆することをいう。
なお、銀粉を金属石鹸で被覆する方法としては、例えば、水等の溶媒中で銀粉を撹拌しながら脂肪酸ナトリウム塩をその溶媒に添加して銀粉表面に脂肪酸ナトリウム塩を付着させた後、水溶性のマグネシウム塩またはカルシウム塩をその溶媒中に添加することによって脂肪酸ナトリウム塩の一部を脂肪酸マグネシウム塩や脂肪酸カルシウム塩に置換して銀粉表面に析出させるという方法を採用することもできる。しかし、乾式法は湿式法に比べて低コストであり、乾式下で銀粉表面に金属石鹸を被覆しても後記するような太陽電池の変換効率の向上効果は得られるため、乾式法による金属石鹸被覆法を採用するのが好ましい。
銀粉表面が金属石鹸で被覆されることによって太陽電池の変換効率が上昇するのは、金属石鹸で被覆された銀粉を含有する導電性ペーストで太陽電池の電極を形成して焼成すると、金属石鹸の融点はガラスフリットに比べて低いので(例えば、ステアリン酸マグネシウムの融点は約123℃であり、ステアリン酸カルシウムの融点は約152℃であるが、後記するように、本発明で使用可能なガラスフリットの軟化点は300℃以上)、銀粉を適正量の金属石鹸で被覆することによりファイヤースルー性が向上し、図1に示す表面電極5とn型拡散層2との間で安定なオーミック接続を得て、太陽電池素子の内部抵抗を低減することができるからである。銀粉を金属石鹸で被覆する方式として、本発明の方式に代えて、金属石鹸で被覆されていない銀粉を有機溶媒の存在下でペースト化する際に金属石鹸粉末を配合する方式も考えられるが、ペースト化時に金属石鹸粉末を配合する方式では銀粉表面への金属石鹸の被覆量が十分ではなく、太陽電池素子の内部抵抗低減効果は本発明に比べて劣ったものになる。
(4)ガラスフリット
銀粉を含有する導電性ペーストを得るために本発明で使用可能なガラスフリットは、導電性ペーストが750ないし950℃で焼成されたときに、反射防止層を浸食し、適切に半導体基板への接着が行われるように、300ないし550℃の軟化点を有するものが好ましい。軟化点が300℃より低いと、焼成が進んで本発明の効果を十分に得ることができないという不都合がある。一方、軟化点が550℃より高いと、焼成時に十分な溶融流動が起こらないため、十分な接着強度が得られないという不都合がある。例えば、ガラスフリットとしては、Bi系ガラス、Bi23−B23−ZnO系ガラス、Bi23−B23系ガラス、Bi23−B23−SiO2系ガラス、Ba系ガラス、BaO−B23−ZnO系ガラスなどを用いることができる。
ガラスフリットの形状は限定されず、球状でも、不定形状でもよい。
ガラスフリットの配合量は導電性ペースト全体に対して0.1ないし10重量%であるのが好ましい。0.1重量%未満では接着強度が不十分となる場合がある。10重量%を超えると、ガラスの浮きや後工程での半田付け不良が生じることがある。
(5)有機バインダ
銀粉を含有する導電性ペーストを得るために本発明で使用可能な有機バインダとしては、限定されるものではないが、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチル系樹脂等を用いることができる。
有機バインダの配合量は導電性ペースト全体に対して0.1ないし30重量%であるのが好ましい。0.1重量%未満では、十分な接着強度を確保することができない。一方、30重量%を超えると、ペーストの粘度上昇により印刷性が低下する。
(6)溶剤
銀粉を含有する導電性ペーストを得るために本発明で使用可能な溶剤としては、限定されるものではないが、ヘキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、ターピネオール、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
溶剤の配合量は導電性ペースト全体に対して1ないし40重量%であるのが好ましい。それらの範囲外であると、ペーストの印刷性が低下するからである。
(7)分散剤
ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの分散剤を導電性ペーストに配合することができる。なお、分散剤は一般的なものであれば、有機酸に限定されるものではない。これら分散剤の配合量は導電性ペースト全体に対して0.05ないし10重量%であるのが好ましい。0.05重量%未満であるとペーストの分散性が悪くなるという不都合があり、10重量%を超えると焼成によって得られる受光面電極の抵抗が上昇するという不都合がある。
(8)その他の添加剤
本発明においては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤などの各種添加剤を本発明の効果を妨げない範囲において配合することができる。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能である。
1.銀粉Aと銀粉Bの製造
〔銀粉Aの製造〕
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4390kgに、25質量%のアンモニア水185kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液7kgとを添加して、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を25℃とし、3.2質量%の含水ヒドラジン水溶液400kgを上記銀アンミン錯塩水溶液に添加して銀粒子を析出させ、銀含有スラリーを得た。また、上記の含水ヒドラジン水溶液の添加終了後、銀量に対して0.4質量%のオレイン酸のエタノール溶液を上記銀含有スラリーに添加した。
このようにして得られた銀含有スラリーを濾過および水洗し、含水銀粉ケーキを得た。この含水銀粉ケーキ18.9kgを気流式乾燥機((株)セイシン企業製の名称「フラッシュジェットドライヤー」、型番「FJD−4」)に60分間かけて投入し、乾燥銀粉17.4kgを得た。このときの使用風量は10.4m3/min、上記乾燥機の入口温度は100℃、出口温度は60℃であった。また、赤外水分計を用いて上記乾燥銀粉が乾燥していることを確認した。
得られた乾燥銀粉をヘンシェルミキサーFM75型(三井鉱山株式会社製)により解砕して、銀粉Aを得た。後記する方法により測定した銀粉Aのタップ密度は4.7g/cm3、レーザ回折法による平均粒径D50は1.3μm、比表面積は1.0m2/g、強熱減量は0.36%であった。
〔銀粉Bの製造〕
銀32kgを含む硝酸銀水溶液500kgの温度を40℃に調整して、17.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液117kgを添加し、酸化銀粒子を含有するスラリーを得た。22質量%のホルマリン水溶液25kgを上記の酸化銀粒子含有スラリーに添加して酸化銀を還元して銀粒子を析出させ、銀含有スラリーを得た。この銀含有スラリーを濾過、水洗および乾燥して得た銀粉に、滑剤としてステアリン酸を添加して混合後、振動ボールミルでステンレスボールを用いてフレーク化し、このフレーク状銀粉を40μmの目開きの篩いで分級し、フレーク状の銀粉Bを得た。後記する方法により測定した銀粉Bのタップ密度は5.0g/cm3、レーザ回折法による平均粒径D50は4.4μm、比表面積は0.8m2/g、強熱減量は0.44%であった。
2.実施例1−6
〔実施例1〕
(1)半導体ウエハの準備
厚さが200μmで、外形が20mm×20mmの大きさで、比抵抗が1.5Ωcmの多結晶シリコンのp型シリコン基板の表面にn型拡散層が形成され、さらに、n型拡散層の上にSiNxの反射防止層が形成された半導体ウエハを準備した。
(2)導電性ペーストの調製
a.BSF層と裏面集電電極形成用の導電性ペースト
アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート(溶剤)と、Bi23−B23−ZnO系ガラスフリットとを3本ロールミルで混合することによりペースト状にして、BSF層と裏面集電電極形成用の導電性ペーストを得た。
b.裏面バスバー電極形成用の導電性ペースト
銀粉末と、アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート(溶剤)と、Bi23−B23系ガラスフリットとを3本ロールミルで混合することによりペースト状にして、裏面バスバー電極形成用の導電性ペーストを得た。
c.表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペースト
〈ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉の製造〉
銀粉A32kgに、市販のステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)を粉砕して平均粒径D50を0.1μmとしたものを1.0重量%添加して、ヘンシェルミキサーFM75型(三井鉱山株式会社製)を用いて、羽根回転数1000rpm、処理時間20分の条件で混合および解砕を実施した後、40μmの目開きの篩いで分級し、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を測定した。その測定値を以下の表1に示す。各特性値の測定方法は下記のとおりである。
《粒径D10、平均粒径D50、粒径D90
レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製の名称「MICROTRAC HRA」)を用いて、銀粉0.3gをイソプロパノール30mlに添加して超音波発信器を用いて5分間分散処理を行い、全反射モードで測定を行った結果、小径側から累積10%の粒径をD10、小径側から累積50%の粒径をD50、小径側から累積90%の粒径をD90という。
《比表面積》
MONOSORB装置(湯浅アイオニクス(株)製)を用いて、銀粉3gをその装置に投入して、Heが70%でN2が30%である組成のキャリヤガスを用いて60℃で10分間かけて脱気を行った後、BET1点法により測定した。
《タップ密度》
嵩比重測定装置SS−DA−2(柴山科学器械製作所株式会社製)を使用し、銀粉15gを20mlのタップ密度測定用試験管に充填し、タッピング装置にて1000回のタッピング後の銀粉の体積と重量より測定した。
《強熱減量》
銀粉3.0g(この重量をW0とする)をるつぼに入れ、そのるつぼを800℃の電気炉に30分間挿入した後の銀粉の重量をW1とした場合、〔(W0−W1)/W0〕×100%が強熱減量である。
〈導電性ペーストの製造〉
上記のようなステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉86重量部と、軟化点が約430℃のBi系ガラスフリット1重量部と、エチルセルロース1重量部(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート11重量部(溶剤)と、ステアリン酸0.5重量部(分散剤)と、2重量部のTeO2とを配合したものを3本ロールミルで混合することによりペースト状にし、さらに、後記するスクリーン印刷時のペーストの粘度が約400Pa・sとなるように、上記有機溶剤を適宜添加して調製した。このようにして、表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを得た。
(3)導電性ペーストの印刷
上記(2)aのように調製した導電性ペーストを、(1)のように準備した半導体ウエハの裏面側の略全面にスクリーン印刷により塗布し、その導電性ペーストの上に、図2(b)の6aに示すような形状となるように(2)bのように調製した導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
次に、(1)のように準備した半導体ウエハの表面側に、図2(a)の5aおよび5bに示すような形状となるように(2)cのように調製した導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
(4)焼成
以上のように導電性ペーストを塗布した半導体ウエハを、BTU社製のモデルPV309で4ゾーンの加熱ゾーンがある高速焼成炉に挿入して、Datapaq社の温度ロガーで半導体ウエハ表面の最高温度を確認しながら、その表面最高温度を焼成温度として、800℃の焼成温度で上記高速焼成炉に挿入してから取り出すまでの時間を約1分間として焼成した。この焼成過程において、半導体ウエハの裏面側に塗布したアルミニウムが半導体ウエハ側に拡散することにより、図1の4に示すようなBSF層が形成され、同時に図1の6bに示すような集電電極が形成されるのである。
(5)電気特性の評価
以上のようにして作製した太陽電池素子試験片のFF値を求めた。具体的には、共進電機株式会社製の商品名KST−15Ce−1sのテスターと、株式会社ワコム電創製の商品名WXS−156S−10のソーラーシミュレーターとを用いて、電圧−電流曲線からFF値を求めた。表1にそのFF値を示す。太陽電池の変換効率は、開放電圧と短絡電流密度とFF値を乗じることにより得られるので、FF値が大きくなると変換効率は向上する。また、太陽電池の直列抵抗が高くなると、FF値は低下する。
〔実施例2〕
銀粉A32kgに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を2.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
〔実施例3〕
銀粉A32kgに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を5.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
〔実施例4〕
銀粉A32kgに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を0.1重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
〔実施例5〕
銀粉A32kgに代えて銀粉B32kgを用いて、その銀粉Bに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を1.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
〔実施例6〕
銀粉A32kgに対して、ステアリン酸マグネシウムに代えてステアリン酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)の添加量を1.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸カルシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸カルシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
3.比較例1−5
〔比較例1〕
ステアリン酸マグネシウムで被覆されていない銀粉Aを用いて表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを製造したこと以外は実施例1と同様の方法で太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。銀粉Aの粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
〔比較例2〕
ステアリン酸マグネシウムで被覆されていない銀粉Aを用いて表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを製造する場合において、銀粉Aに対して1重量%のステアリン酸マグネシウムを配合したものを使用して導電性ペーストを製造したこと以外は実施例1と同様の方法で太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
〔比較例3〕
銀粉A32kgに対して平均粒径D50が0.1μmであるステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)を10重量%添加して実施例1と同様の操作を実施してステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得たこと以外は実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。上記銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
〔比較例4〕
銀粉A32kgに対して1.0重量%のマグネシウムエトキシド粉末(和光純薬工業株式会社製)を添加してマグネシウムエトキシド粉末で被覆された銀粉を得たこと以外は実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。上記銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
〔比較例5〕
銀粉B32kgに対して平均粒径D50が0.1μmであるステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)を10重量%添加してステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得たこと以外は実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。上記銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
Figure 0005362615
銀粉AとBの主たる差違は、銀粉Aの形状が球状又は不定形状であり、銀粉Bの形状がフレーク状であるという点であり、この銀粉形状の違いによってFF値に差違が見られる。銀粉Aを使用して導電性ペーストを作製した本発明の実施例1、2、3、4および6と、比較例1、2、3および4とを比べると、適量のステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムで被覆された銀粉を用いた本発明の実施例に係るもののFF値は比較例に比べて優れていることが分かる。
比較例2のように、ペースト作製時の配合成分中に適量のステアリン酸マグネシウムを含めば、ペースト作製時の配合成分中にステアリン酸マグネシウムを含まない比較例1よりFF値は高くなるが、本発明の実施例1、2、3、4および6のFF値には及ばないことが分かる。
比較例3は本発明と同じように銀粉がステアリン酸マグネシウムで被覆されたものであるが、ステアリン酸マグネシウムによる被覆量が本発明の範囲外で過度に多い場合である。この比較例3のFF値は、ペースト作製時の配合成分中にステアリン酸マグネシウムを含まない比較例1より高くなる。しかし、ペースト作製時の配合成分中に適量のステアリン酸マグネシウムを含む比較例2のFF値には及ばないことが分かる。
比較例4のように、銀粉を有機物で被覆しても、本発明以外の有機物であれば、そのFF値は本発明の実施例1、2、3、4および6のFF値には及ばないことが分かる。
本発明の実施例5と比較例5は銀粉Bを使用して導電性ペーストを作製した場合であり、適量のステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉Bを用いた本発明の実施例5のFF値は、本発明の範囲を超える多量のステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉Bを用いた比較例5に比べて優れていることが分かる。
本発明は、太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストに配合する銀粉として好適である。
1 シリコン基板
2 n型拡散層
3 反射防止層
4 BSF層
5 表面電極
5a 表面バスバー電極
5b 表面フィンガー電極
6 裏面電極
6a 裏面バスバー電極
6b 裏面集電電極

Claims (3)

  1. 太陽電池の電極形成に用いられる導電性ペーストに配合される銀粉であって、
    脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の金属石鹸で被覆され
    上記金属石鹸の被覆量が、被覆前の銀粉重量に対して0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする銀粉。
  2. 請求項1に記載の金属石鹸で被覆された銀粉の製造方法であって、
    銀粉と、脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の前記金属石鹸とを混合および解砕することにより、銀粉に金属石鹸を被覆することを特徴とする銀粉の製造方法。
  3. 銀粉に金属石鹸を被覆するための混合および解砕が乾式下で行われることを特徴とする請求項2記載の銀粉の製造方法。
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