JP5362615B2 - 銀粉及びその製造方法 - Google Patents
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Description
銀粉は、太陽電池の電極形成等に用いられる導電性ペーストに配合しうるものであれば特に限定されるものではない。銀粉の形状は、鱗片状、球形状、フレーク状、不定形状またはこれらを混合したものでもよい。要するに、銀粉の形状は特定のものに限定されない。
本発明において銀粉を被覆するために使用される金属石鹸は、脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上のものが好ましい。脂肪酸の種類は、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸でもよく、オレイン酸などの不飽和脂肪酸でもよいが、特に、ステアリン酸マグネシウムとステアリン酸カルシウムが好ましい。銀粉を被覆する金属石鹸の重量は、銀粉重量に対して0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上2重量%以下であることがより好ましい。金属石鹸の被覆量が銀粉重量に対して0.1重量%未満であると、太陽電池の電極形成等に用いられる導電性ペーストに配合しても変換効率を向上することが困難である。一方、金属石鹸の被覆量が銀粉重量に対して5重量%を超えると、導電性が低下し、その結果、変換効率が悪くなる。
銀粉を金属石鹸で被覆する方法としては、一般に混合機または解砕機と呼ばれる、回転エネルギーを利用して圧縮、剪断、衝撃、摩擦などの機械的外力を固体材料に加えて破壊する設備を用いて銀粉と金属石鹸とを混合および解砕する方法がコスト面から好ましい。この混合および解砕により、金属石鹸は細かくされるとともに銀粉の表面への付着と剥離を繰り返す。そして、一定時間以上混合および解砕を実行することにより、銀粉の表面には細かくなった金属石鹸の被覆層が形成されるようになる。金属石鹸が微細であるほど、より均一に銀粉表面に被覆されるため、金属石鹸の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。混合および解砕時に粉体へ及ぼされる回転エネルギーが大きくなるほど、金属石鹸の被覆層の銀粉への付着力を高めることができるので、少なくとも600rpmの回転数で10分間以上混合および解砕を行うことが好ましい。なお、混合および解砕時の温度は200℃を超えない程度とするのが好ましい。
銀粉を含有する導電性ペーストを得るために本発明で使用可能なガラスフリットは、導電性ペーストが750ないし950℃で焼成されたときに、反射防止層を浸食し、適切に半導体基板への接着が行われるように、300ないし550℃の軟化点を有するものが好ましい。軟化点が300℃より低いと、焼成が進んで本発明の効果を十分に得ることができないという不都合がある。一方、軟化点が550℃より高いと、焼成時に十分な溶融流動が起こらないため、十分な接着強度が得られないという不都合がある。例えば、ガラスフリットとしては、Bi系ガラス、Bi2O3−B2O3−ZnO系ガラス、Bi2O3−B2O3系ガラス、Bi2O3−B2O3−SiO2系ガラス、Ba系ガラス、BaO−B2O3−ZnO系ガラスなどを用いることができる。
銀粉を含有する導電性ペーストを得るために本発明で使用可能な有機バインダとしては、限定されるものではないが、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチル系樹脂等を用いることができる。
銀粉を含有する導電性ペーストを得るために本発明で使用可能な溶剤としては、限定されるものではないが、ヘキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、ターピネオール、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの分散剤を導電性ペーストに配合することができる。なお、分散剤は一般的なものであれば、有機酸に限定されるものではない。これら分散剤の配合量は導電性ペースト全体に対して0.05ないし10重量%であるのが好ましい。0.05重量%未満であるとペーストの分散性が悪くなるという不都合があり、10重量%を超えると焼成によって得られる受光面電極の抵抗が上昇するという不都合がある。
本発明においては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤などの各種添加剤を本発明の効果を妨げない範囲において配合することができる。
〔銀粉Aの製造〕
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4390kgに、25質量%のアンモニア水185kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液7kgとを添加して、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を25℃とし、3.2質量%の含水ヒドラジン水溶液400kgを上記銀アンミン錯塩水溶液に添加して銀粒子を析出させ、銀含有スラリーを得た。また、上記の含水ヒドラジン水溶液の添加終了後、銀量に対して0.4質量%のオレイン酸のエタノール溶液を上記銀含有スラリーに添加した。
銀32kgを含む硝酸銀水溶液500kgの温度を40℃に調整して、17.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液117kgを添加し、酸化銀粒子を含有するスラリーを得た。22質量%のホルマリン水溶液25kgを上記の酸化銀粒子含有スラリーに添加して酸化銀を還元して銀粒子を析出させ、銀含有スラリーを得た。この銀含有スラリーを濾過、水洗および乾燥して得た銀粉に、滑剤としてステアリン酸を添加して混合後、振動ボールミルでステンレスボールを用いてフレーク化し、このフレーク状銀粉を40μmの目開きの篩いで分級し、フレーク状の銀粉Bを得た。後記する方法により測定した銀粉Bのタップ密度は5.0g/cm3、レーザ回折法による平均粒径D50は4.4μm、比表面積は0.8m2/g、強熱減量は0.44%であった。
〔実施例1〕
(1)半導体ウエハの準備
厚さが200μmで、外形が20mm×20mmの大きさで、比抵抗が1.5Ωcmの多結晶シリコンのp型シリコン基板の表面にn型拡散層が形成され、さらに、n型拡散層の上にSiNxの反射防止層が形成された半導体ウエハを準備した。
a.BSF層と裏面集電電極形成用の導電性ペースト
アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート(溶剤)と、Bi2O3−B2O3−ZnO系ガラスフリットとを3本ロールミルで混合することによりペースト状にして、BSF層と裏面集電電極形成用の導電性ペーストを得た。
銀粉末と、アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート(溶剤)と、Bi2O3−B2O3系ガラスフリットとを3本ロールミルで混合することによりペースト状にして、裏面バスバー電極形成用の導電性ペーストを得た。
〈ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉の製造〉
銀粉A32kgに、市販のステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)を粉砕して平均粒径D50を0.1μmとしたものを1.0重量%添加して、ヘンシェルミキサーFM75型(三井鉱山株式会社製)を用いて、羽根回転数1000rpm、処理時間20分の条件で混合および解砕を実施した後、40μmの目開きの篩いで分級し、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を測定した。その測定値を以下の表1に示す。各特性値の測定方法は下記のとおりである。
レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製の名称「MICROTRAC HRA」)を用いて、銀粉0.3gをイソプロパノール30mlに添加して超音波発信器を用いて5分間分散処理を行い、全反射モードで測定を行った結果、小径側から累積10%の粒径をD10、小径側から累積50%の粒径をD50、小径側から累積90%の粒径をD90という。
MONOSORB装置(湯浅アイオニクス(株)製)を用いて、銀粉3gをその装置に投入して、Heが70%でN2が30%である組成のキャリヤガスを用いて60℃で10分間かけて脱気を行った後、BET1点法により測定した。
嵩比重測定装置SS−DA−2(柴山科学器械製作所株式会社製)を使用し、銀粉15gを20mlのタップ密度測定用試験管に充填し、タッピング装置にて1000回のタッピング後の銀粉の体積と重量より測定した。
銀粉3.0g(この重量をW0とする)をるつぼに入れ、そのるつぼを800℃の電気炉に30分間挿入した後の銀粉の重量をW1とした場合、〔(W0−W1)/W0〕×100%が強熱減量である。
上記のようなステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉86重量部と、軟化点が約430℃のBi系ガラスフリット1重量部と、エチルセルロース1重量部(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート11重量部(溶剤)と、ステアリン酸0.5重量部(分散剤)と、2重量部のTeO2とを配合したものを3本ロールミルで混合することによりペースト状にし、さらに、後記するスクリーン印刷時のペーストの粘度が約400Pa・sとなるように、上記有機溶剤を適宜添加して調製した。このようにして、表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを得た。
上記(2)aのように調製した導電性ペーストを、(1)のように準備した半導体ウエハの裏面側の略全面にスクリーン印刷により塗布し、その導電性ペーストの上に、図2(b)の6aに示すような形状となるように(2)bのように調製した導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
以上のように導電性ペーストを塗布した半導体ウエハを、BTU社製のモデルPV309で4ゾーンの加熱ゾーンがある高速焼成炉に挿入して、Datapaq社の温度ロガーで半導体ウエハ表面の最高温度を確認しながら、その表面最高温度を焼成温度として、800℃の焼成温度で上記高速焼成炉に挿入してから取り出すまでの時間を約1分間として焼成した。この焼成過程において、半導体ウエハの裏面側に塗布したアルミニウムが半導体ウエハ側に拡散することにより、図1の4に示すようなBSF層が形成され、同時に図1の6bに示すような集電電極が形成されるのである。
以上のようにして作製した太陽電池素子試験片のFF値を求めた。具体的には、共進電機株式会社製の商品名KST−15Ce−1sのテスターと、株式会社ワコム電創製の商品名WXS−156S−10のソーラーシミュレーターとを用いて、電圧−電流曲線からFF値を求めた。表1にそのFF値を示す。太陽電池の変換効率は、開放電圧と短絡電流密度とFF値を乗じることにより得られるので、FF値が大きくなると変換効率は向上する。また、太陽電池の直列抵抗が高くなると、FF値は低下する。
銀粉A32kgに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を2.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
銀粉A32kgに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を5.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
銀粉A32kgに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を0.1重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
銀粉A32kgに代えて銀粉B32kgを用いて、その銀粉Bに対するステアリン酸マグネシウムの添加量を1.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
銀粉A32kgに対して、ステアリン酸マグネシウムに代えてステアリン酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)の添加量を1.0重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施して、ステアリン酸カルシウムで被覆された銀粉を得た。そして、この銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度および強熱減量を上記方法により測定した。その測定値を表1に示す。また、そのステアリン酸カルシウムで被覆された銀粉を用いて実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
〔比較例1〕
ステアリン酸マグネシウムで被覆されていない銀粉Aを用いて表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを製造したこと以外は実施例1と同様の方法で太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。銀粉Aの粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
ステアリン酸マグネシウムで被覆されていない銀粉Aを用いて表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを製造する場合において、銀粉Aに対して1重量%のステアリン酸マグネシウムを配合したものを使用して導電性ペーストを製造したこと以外は実施例1と同様の方法で太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。そのFF値を表1に示す。
銀粉A32kgに対して平均粒径D50が0.1μmであるステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)を10重量%添加して実施例1と同様の操作を実施してステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得たこと以外は実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。上記銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
銀粉A32kgに対して1.0重量%のマグネシウムエトキシド粉末(和光純薬工業株式会社製)を添加してマグネシウムエトキシド粉末で被覆された銀粉を得たこと以外は実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。上記銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
銀粉B32kgに対して平均粒径D50が0.1μmであるステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)を10重量%添加してステアリン酸マグネシウムで被覆された銀粉を得たこと以外は実施例1と同様の方法で表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストと太陽電池素子試験片を作製し、FF値を求めた。上記銀粉の粒径D10、平均粒径D50、粒径D90、比表面積、タップ密度、強熱減量、ならびにFF値を表1に示す。
2 n型拡散層
3 反射防止層
4 BSF層
5 表面電極
5a 表面バスバー電極
5b 表面フィンガー電極
6 裏面電極
6a 裏面バスバー電極
6b 裏面集電電極
Claims (3)
- 太陽電池の電極形成に用いられる導電性ペーストに配合される銀粉であって、
脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の金属石鹸で被覆され、
上記金属石鹸の被覆量が、被覆前の銀粉の重量に対して0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする銀粉。 - 請求項1に記載の金属石鹸で被覆された銀粉の製造方法であって、
銀粉と、脂肪酸マグネシウム塩および脂肪酸カルシウム塩の中から選択される1種以上の前記金属石鹸とを混合および解砕することにより、銀粉に金属石鹸を被覆することを特徴とする銀粉の製造方法。 - 銀粉に金属石鹸を被覆するための混合および解砕が乾式下で行われることを特徴とする請求項2記載の銀粉の製造方法。
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