[概略構成]
先ず、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1及び図2に基づき説明する。
図1は第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
図1及び図2に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
また、ロックユニット9は、後述のようにハウジングユニット5を構成するハウジング11の側壁部12に固設され、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止する起動動作を行う。
また、後述のプリテンショナ機構17(図6参照)を備えたプリテンショナユニット7は、平面視略コの字状のハウジングユニット5の相対向する各側板部13、14の上下端縁部から略直角内側方向に延出されてネジ孔が形成された各ネジ止め部13A、13B、14A、14Bに、各ネジ15及びストッパーネジ16によってネジ止めされる。これにより、プリテンショナユニット7は、ハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部を構成する。
また、巻取バネユニット8は、プリテンショナユニット7の外側にバネケース56(図5参照)に一体形成された各ナイラッチ8Aによって固設される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9とプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図2乃至図5に基づいて説明する。
図3は巻取ドラムユニット6の斜視図である。図4はシートベルト用リトラクタ1の断面図である。図5は巻取ドラムユニット6、プリテンショナユニット7及び巻取バネユニット8の分解斜視図である。
図2乃至図5に示すように、巻取ドラムユニット6は、ガイドドラム21と、ドラムシャフト22と、トーションバー23と、ワイヤ24と、ワイヤプレート25と、ラチェットギヤ26と、ベアリング32とから構成されている。
ガイドドラム21は、アルミ材等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、ガイドドラム21の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向に延出されたフランジ部27が形成されている。また、このフランジ部27の内周面には、後述のように車両衝突時に各クラッチパウル29が係合するクラッチギヤ30が形成されている。
また、ガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状の取付ボス31が立設され、スチール材等により形成されるドラムシャフト22が圧入等によって固着されている。また、この取付ボス31の外周には、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成された略円筒状の筒状部32Aとその基端部の外周に基端フランジ部32Bが連設されたベアリング32が嵌め込まれている。そして、巻取ドラムユニット6は、このベアリング32を介してプリテンショナユニット7を構成するスチール材等で形成されるピニオンギヤ体33の軸受け部33A(図6、図8参照)に回転可能に支持される。
また、ガイドドラム21の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように抜き勾配が形成された軸孔21Aが形成されており、この軸孔21A内のフランジ部27側端部には、スチール材等により形成されるトーションバー23の一端部に形成されるスプライン23Aが圧入されるスプライン溝が形成されている。これにより、トーションバー23のスプライン23A側をガイドドラム21の軸孔21Aに挿入してフランジ部27に当接するまで圧入することによって、トーションバー23がガイドドラム21内に相対回転不能に圧入固定される。
また、ガイドドラム21の軸心方向のロックユニット9側には、端縁部から少し内側の外周面から径方向に延出されたフランジ部35が形成されている。また、このフランジ部35から軸心方向外側の部分は少し外径が細くなった円筒状の段差部36が形成されている。また、この段差部36の外側端面部には径方向の対向する位置に一対の突き出しピン37、37が立設されている。
また、フランジ部35の外側面には、後述のように所定形状の凸部(図31参照)が形成され、ステンレス材等の金属材からなる線材状のワイヤ24が、この凸部の形状に合わせて段差部36の基端部外周に装着される。
また、フランジ部35の外周部は、アルミ材等により形成されて、内側面の外周部に該フランジ部35から外側に突出するワイヤ24が嵌め込まれる凸部38が形成された側面視略卵形のワイヤプレート25で覆われている。
また、このワイヤプレート25の中央部には、段差部36が挿通される貫通孔40が形成されると共に、この貫通孔40の軸心方向外側の外周部には、内周面から半径方向内側に円弧状に突出する2個の凸部が、径方向において互いに対向するように形成された一対の嵌合凸部41が設けられている。また、この貫通孔40の各嵌合凸部41に挟まれた軸心方向外側の外周部には、径方向において互いに対向するように4対のカシメピン39が立設されている。また、各カシメピン39の基端部には、半円弧状に所定深さ窪んだ凹部39Aが形成されている。
また、ラチェットギヤ26は、スチール材等により形成された円板状で、外周部から軸心方向に段差部36とほぼ同じ高さまで延出された円筒状の延出部42が形成され、その延出部42の外周面に、後述のように車両衝突時や車両緊急時にパウル43(図9参照)が係合するラチェットギヤ部45が形成されている。また、延出部42の軸心方向ガイドドラム21側の端縁部には、外周部から径方向に延出された回り止めフランジ46が形成され、更に、その外周部に半径方向内側に円弧状に窪む2個の凹部が、径方向において互いに対向するように形成された一対の嵌合凹部46Bが設けられている(図5参照)。また、この回り止めフランジ46の各カシメピン39に対向する軸心方向外側面には、半円弧状に所定深さ窪んだ各凹部46Aが形成されている。
また、ラチェットギヤ26の各突き出しピン37に対向する位置には、該各突き出しピン37が嵌入される各貫通孔47が穿設されている。また、各貫通孔47の周囲は、所定深さ窪んだ凹部47Aが形成されている。また、ラチェットギヤ26の外側中心位置には、軸部48が立設されている。また、軸部48の外周面には、スプライン48Aが形成されている。そして、巻取ドラムユニット6は、この軸部48を介してロックユニット9に回転可能に支持される。
また、ラチェットギヤ26の内側面の中央部には円筒状の固定ボス49が立設されており、この固定ボス49の内周面には、トーションバー23の他端側に形成されるスプライン23Bが嵌入されるスプライン溝が形成されている。なお、トーションバー23の他端側に形成されるスプライン23Bの外径は、該トーションバー23の一端側に形成されるスプライン23Aの外径とほぼ同じ径に形成されている。
従って、先ず、ワイヤプレート25の各嵌合凸部41にラチェットギヤ26の回り止めフランジ46の各嵌合凹部46Bを嵌入する。その後、各カシメピン39を、その基端部の凹部39A及び相対向する位置に形成された回り止めフランジ46の凹部46Aとの内側に広がるようにカシメる。そして、ガイドドラム21のフランジ部35の外側面に、ワイヤ24を装着する(図31参照)。続いて、その外側にワイヤプレート25及びラチェットギヤ26を被せて、ラチェットギヤ26の各貫通孔47に、ガイドドラム21の各突き出しピン37を挿通させつつ、固定ボス49内にトーションバー23の他端側に形成されたスプライン23Bを嵌入する。その後、各突き出しピン37を貫通孔47の周囲に形成された凹部47Aの内側に広がるようにカシメる。
これにより、ラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、相対回転不能に固定されると共に、このラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、トーションバー23及び各突き出しピン37を介してガイドドラム21に対して相対回転不能に固定される。また、ガイドドラム21のフランジ部27とフランジ部35及びワイヤプレート25との間の外周面にウエビング3が巻装される。
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について図2、図4及び図5に基づいて説明する。
図2、図4及び図5に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネを含む巻取付勢機構55と、この巻取付勢機構55を収容するバネケース56と、バネシャフト58と、から構成されている。そして、スチール材等で形成されるプリテンショナユニット7の外側面を構成するカバープレート57の各貫通孔51に、バネケース56の3箇所に設けられた各ナイラッチ8Aを介して固定される。そして、巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22の先端部が、バネケース56内のバネシャフト58を介して渦巻バネに結合され、渦巻バネの付勢力によって巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向に常時付勢する構造とされている。
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図2、図4乃至図8に基づいて説明する。
図6はプリテンショナユニット7をハウジングユニット5への取り付け面側から見た斜視図である。図7はプリテンショナユニット7の一部切り欠き側面図である。図8は図6のプリテンショナユニット7を分解した分解斜視図である。
図2、図4乃至図8に示すように、プリテンショナユニット7は、プリテンショナ機構17と、ハウジングユニット5の側壁部12に軸支されたパウル43(図9参照)を回動させる強制ロック機構53とから構成されている。
[プリテンショナ機構]
図5乃至図8に示すように、プリテンショナ機構17は、車両衝突時等にガス発生部材61を作動させ、このガスの圧力を利用して巻取ドラムユニット6のフランジ部27を介して該巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向に回転させる機構である。
ここで、プリテンショナ機構17は、ガス発生部材61と、パイプシリンダ62と、ガス発生部材61のガス圧を受けてパイプシリンダ62内を移動するシールプレート63及びピストン64と、このピストン64に形成されたラックに噛合して回転するピニオンギヤ体33と、このパイプシリンダ62が取り付けられる所定厚さ(例えば、厚さ約2.0mmである。)のベースプレート65と、このベースプレート65にパイプシリンダ62のピニオンギヤ体33側の側面に当接して配設される略直方体状のベースブロック体66と、ベースプレート65の外側面に配設されるクラッチ機構68とから構成されている。
また、ピニオンギヤ体33は、スチール材等で形成された略円筒状で、その外周部にピストン64に形成されたラックに噛合するピニオンギヤ部71が形成されている。また、このピニオンギヤ部71の軸心方向カバープレート57側の端部から外側方向に延出される円筒状の支持部72が形成されている。また、この支持部72は、ピニオンギヤ部71の谷径を外径として、このカバープレート57の厚さ寸法(例えば、厚さ約1.6mmである。)にほぼ等しい長さに形成されている。また、カバープレート57の厚さは、ベースプレート65の厚さよりも少し薄くなるように形成されている。
また、このピニオンギヤ部71の軸心方向ベースプレート65側の端部には径方向に張り出すフランジ部73が形成されている。さらに、このフランジ部73から外側方向に略円筒状で巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22が挿通されると共にベアリング32が嵌入される軸受け部33Aが形成されたボス部74が形成されている。また、このボス部74の外周面には、基端部の外径を有する3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。
また、クラッチ機構68は、スチール材等で形成された略円環状のパウルベース76と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル29と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、後述のようにパウルベース76と共に各クラッチパウル29を挟持する略円環状のパウルガイド77とから構成されている(図21等参照)。
また、パウルベース76の内周面には、ピニオンギヤ体33のボス部74に形成されたスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成されている。また、パウルガイド77の内周径は、パウルベース76のスプライン溝よりも大きく形成されると共に、このパウルガイド77の外側の側面部の3カ所に、各位置決突起77Aが等角度で同心円上に位置するように突設されている。
そして、クラッチ機構68のパウルガイド77の外側の側面部に突設される各位置決突起77Aを、ベースプレート65の各位置決孔81に嵌入して、該クラッチ機構68をベースプレート65の外側面に配置する。続いて、図8に示すように、ピニオンギヤ体33のボス部74を、ベースプレート65の略中央部に形成された貫通孔83に嵌入後、該ボス部74に形成される各スプラインをクラッチ機構68を構成するパウルベース76の各スプライン溝に圧入固定する。これにより、クラッチ機構68とピニオンギヤ体33とが、ベースプレート65に配設固定されるとともに、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71が、図7に示す位置に常に位置決め固定される。
また、ベースブロック体66は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、このベースブロック体66の内側の側端縁部から内側方向に平面視略半円状に窪むように形成されると共に底面部が外側方向に突出するリング状に形成されたギヤ収納部85の該底面部の貫通孔82内にピニオンギヤ体33のフランジ部73を挿通させる。また、このベースブロック体66のベースプレート65側の側面部に突出する各位置決めボス79を、ベースプレート65の各位置決孔80に嵌入して、該ベースブロック体66をベースプレート65の内側面に配置する。
また、ベースブロック体66の外側側面部からベースプレート65側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Aと、このベースブロック体66の下側側面部からベースプレート65側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Bとをそれぞれベースプレート65の側端部に係止する。これにより、ベースブロック体66がベースプレート65に配設される。
尚、ベースプレート65の略中央部に形成される貫通孔83の内径は、ピニオンギヤ体33のボス部74の基端部の外径を支持できる径に形成されて、ピニオンギヤ体33の一端側を回転可能に支持することが可能に構成されている。また、ギヤ収納部85の高さは、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71とフランジ部73の高さの和にほぼ等しくなるように形成されている。
[強制ロック機構]
ここで、ベースブロック体66内に配設される強制ロック機構53について図5乃至図8に基づいて説明する。
図7に示すように、ベースブロック体66には、強制ロック機構53を配設する凹部86が形成されて、該強制ロック機構53を構成するプッシュブロック87と、回転レバー88と、プッシュブロック87を回転レバー88側方向へ付勢するブロック付勢バネ87Aと、ギヤ側アーム89と、このギヤ側アーム89を回転レバー88側方向へ付勢する付勢バネ90とが配設されている。また、図6に示すように、このギヤ側アーム89には、ベースプレート65の外側から該強制ロック機構53を構成する連結シャフト91と、メカ側アーム92が接続されている。
この回転レバー88は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略くの字状に形成されると共に、曲がり部に貫通孔が形成されている。そして、図7に示すように、回転レバー88は、一端側がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71に対向するように、ベースブロック体66の凹部86の底面部に立設されるボス93に回転可能に支持されている。
また、プッシュブロック87は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、図7に示すように、プッシュブロック87は、凹部86の底面部に立設される位置決突起94によって、一端がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71の歯の近傍に位置し、他端が回転レバー88の近傍に位置するように位置決めされている。また、このプッシュブロック87は、ブロック付勢バネ87Aによって回転レバー88側に付勢され、ガタツキが防止されている。
従って、後述のようにピニオンギヤ体33が回転した場合には、回転レバー88は、ピニオンギヤ部71の歯に押されたプッシュブロック87によって外側方向(図7中、反時計方向)に回動可能に構成されている(図11参照)。また、プッシュブロック87は、ブロック付勢バネ87Aによってピニオンギヤ体33側に戻るのを防止される。
また、ギヤ側アーム89は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状に形成されると共に、ベースブロック体66側の側面部の回転レバー88から遠い一端側には、ベースブロック体66の凹部86の底面部に形成された貫通孔96に挿通されるボス95が立設されている。また、ギヤ側アーム89のボス95が立設される側面部には、連結シャフト91の一端側折曲部が挿通される所定深さの溝部97が形成されている。
また、図6、図8に示すように、ギヤ側アーム89は、回転レバー88側の先端部上面に、該回転レバー88の他端側が当接される段差部98が形成されている。そして、このギヤ側アーム89は、ボス95が凹部86の底面部に形成される貫通孔96に挿入されて、回転レバー88側に回動可能に支持される。更に、ギヤ側アーム89は、段差部98に対向する他方の先端部下面を付勢バネ90によって回転レバー88側へ(図7中、上側方向である。)付勢されて、該段差部89が回転レバー88の他端側に当接されている。
従って、回転レバー88が図7中、反時計方向に回動した場合には、この回転レバー88の他端側がギヤ側アーム89の先端部から離れ、ギヤ側アームが付勢バネ90の付勢力によって、外側方向(図7中、反時計方向である。)へ回動可能に構成されている。
また、連結シャフト91は、スチール材等の線材で形成されて、両端が相互に約90度ずれて対向するように略直角に折り曲げられている。また。この連結シャフト91の直線部の長さは、ハウジングユニット5の各側板部13、14(図9参照)の幅より若干長く形成されている。
また、図8に示すように、ベースブロック体66の凹部86の底面部に形成される貫通孔96には、連結シャフト91の一端側折曲部が挿通される溝101が外周部から延び出ている。また、ベースプレート65のギヤ側アーム89に対向する部分には、連結シャフト91の一端側折曲部が挿通される貫通孔102が形成されている。
従って、連結シャフト91の一端側折曲部は、ベースプレート65の貫通孔102と、ベースブロック体66の貫通孔96及び溝101を通って、ベースブロック体66の凹部86に配設されたギヤ側アーム89の溝部97内に嵌入される。
また、メカ側アーム92は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状の幅の狭い略扇形に形成されると共に、その中心角側の端縁部の外側面には、ハウジングユニット5の側壁部12(図9参照)に形成される貫通孔105(図10参照)に回転可能に嵌入されるボス106が立設されている。また、メカ側アーム92の外周側端縁部の側壁部12側の外側面には、切欠部138内に挿通されるボス92Aが立設されている。また、メカ側アーム92の内側面には、中心線に沿って所定深さの溝部107が形成されている。
従って、図6に示すように、連結シャフト91の他端側折曲部をメカ側アーム92の溝部107内に嵌入することによって、メカ側アーム92は、このメカ側アーム92の中心角側の端縁部の外側面に立設されるボス106の軸心と連結シャフト91の軸心とがほぼ一直線状になるように、連結シャフト91の他端側に取り付けられる。
そして、後述のようにプリテンショナユニット7がハウジングユニット5に取り付けられた場合には、メカ側アーム92のボス106は、側壁部12に形成される貫通孔105に回転可能に嵌入される(図10参照)。また、メカ側アーム92のボス92Aは、側壁部12に形成された切欠部138に挿入されて、側壁部12の内側に回動可能に取り付けられる。
[プリテンショナ機構]
続いて、プリテンショナ機構17を構成するパイプシリンダ62の構成及び取り付けについて図5乃至図8に基づいて説明する。
図5乃至図8に示すように、パイプシリンダ62は、スチールパイプ材等で略L字状に形成されている。そして、その一端側(図7中、下側折曲部分)は、略円筒状の収納部62Aが形成されて、ガス発生部材61を収納するように構成されている。このガス発生部材61は、火薬を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号により該火薬を着火させてガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
また、パイプシリンダ62の他端側(図7中、上側折曲部分)は、断面略長方形のピストン収納部62Bが形成されて、ピニオンギヤ体33に対向する部分に切欠部111が形成され、ベースプレート65上に配設した場合に、該切欠部111内にピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71が填り込むように構成されている。また、ピストン収納部62Bの上端部には、ベースブロック体66側の側面部に、ベースプレート65から略直角に折り曲げられた折曲部112が嵌入されて、パイプシリンダ62の上下方向の抜け止めとして機能する切欠部113が形成されている。また、切欠部113の横側の両側面部には、プリテンショナユニット7をハウジングユニット5に取り付けると共に、ピストン64の抜け止めとして機能するストッパーネジ16を挿通可能な相対向する一対の貫通孔114が形成されている。
また、図7及び図8に示すように、シールプレート63は、ゴム材等でピストン収納部62Bの上端側から挿入可能な略長方形の板状に形成されている。また、シールプレート63は、長手方向両端縁部から上方に延出されると共に、それぞれの上端部の全幅に渡って内側方向に突出する一対の突起部63Aが形成されている。また、シールプレート63の中央部には、ガス抜き孔63Bが形成されている。
また、ピストン64は、スチール材等で形成されて、ピストン収納部62Bの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン64の下端部には、シールプレート63の各突起部63が横方向から嵌め込まれる各嵌入溝64Aが形成されている。また、ピストン64の下端面には、この下端面から該ピストン64の側面部に形成された貫通孔64Bに連通する細径の連通孔64Cが形成されている。
そして、シールプレート63の各突起部63Aをピストン64の各嵌入溝64に横側からスライドさせて嵌入後、シールプレート63を奥側にして、ピストン収納部62Bの上端側から奥に圧入する。また、シールプレート6のガス抜き孔63Bは、ピストン64の連通孔64Cを介して貫通孔64Bに連通している。
従って、この状態で、ガス発生部材61で発生したガスの圧力によって、シールプレート63が押圧されて、ピストン64がピストン収納部62Bの上端側開口部(図7中、上端部)へ移動する。また、後述のようにウエビング3が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ体33の逆回転によってピストン64が下方に下がる際に、シールプレート63のガス抜き孔63B、ピストン64の連通孔64C及び貫通孔64Bを介してパイプシリンダ62内のガスが抜け、スムーズにピストン64が下がる。
また、ピストン64のピニオンギヤ体33側の側面には、このピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71に噛合するラック116が形成されている。また、ラック116の先端部(図7中、上端部)の背面は、ストッパーネジ16に当接可能な段差部117が形成されている。また、図7に示すように、ガス発生部材61が作動するまでの通常状態では、ピストン64はピストン収納部62Bの奥側に退避して、ラック116の先端がピニオンギヤ部71に非噛合状態となるように位置している。
そして、図7に示すように、このように構成されたピストン収納部62Bの切欠部111の内側に、ベースブロック体66のギヤ収納部85の両側端縁部から外側方向に突出する各突出部109を嵌入させつつ、ピストン収納部62Bの上端部に形成された切欠部113にベースプレート65の折曲部112を嵌入させて、該ベースプレート65上にパイプシリンダ62を配置する。またこの時、ベースブロック体66に立設された断面略U字状のラック止めピン108が、ラック116の上端のギヤ溝に挿入され、ピストン64の上下方向の移動が規制される。また、ピストン64の先端部は、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71の近傍に位置して、非噛合状態になっている。
これにより、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bは、ベースブロック体66の側面部に立設される断面略三角形の各リブ110と、ベースプレート65の側端縁部のピニオンギヤ体33に対向する部分から略直角に延出された各背当て部118A、118Bとによって、その両側面部が支持される。尚、この各背当て部118A、118Bは、ピストン収納部62Bよりも少し高くなるように延出されており、カバープレート57の各背当て部118A、118Bに対向する側端部に形成された各貫通孔119A、119Bに挿通可能に形成されている。
また、各貫通孔119A、119Bの各背当て部118A、118Bの外側面に対向する側縁部は、内側方向(図8中、左側方向)へ所定高さ(例えば、約1mmの高さである。)窪んでいる。これにより、各背当て部118A、118Bが各貫通孔119A、119Bに挿入された場合には、各貫通孔119A、119Bの内側面が、各背当て部118A、118Bの外側面に確実に当接するように構成されている。
そして、ベースプレート65上にベースブロック体66、強制ロック機構53やパイプシリンダ62等が配置された状態で、このベースブロック体66のカバープレート57側の側面部に突出する各位置決めボス121を、カバープレート57の各位置決孔122に嵌入して、ベースブロック体66、強制ロック機構53やパイプシリンダ62等の上側にカバープレート57を配置する。また同時に、ピニオンギヤ体33の円筒状の支持部72を、カバープレート57の略中央部に形成された支持孔125に嵌入する。
また、ベースプレート65の側端縁部から略直角に延出された各背当て部118A、118Bを、カバープレート57の各背当て部118A、118Bに対向する側端縁部に形成された各貫通孔119A、119Bに挿通する。そして、このベースブロック体66の外側側面部からカバープレート57側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Cと、このベースブロック体66の上側側面部からカバープレート57側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Dとをそれぞれカバープレート57の側端部に係止する。
これにより、カバープレート57がベースブロック体65に配設固定され、パイプシリンダ62がカバープレート57とベースプレート65との間に取り付けられる。また、ピニオンギヤ体33の端部に形成された支持部72が、カバープレート57の支持孔125によって回転可能に支持される。従って、図4に示すように、ピニオンギヤ体33の両端部に形成されたボス部74の基端部と支持部72とが、それぞれベースプレート65の貫通孔83とカバープレート57の支持孔125とによって回転可能に支持される。
また、パイプシリンダ62の各貫通孔114と、カバープレート57の各貫通孔114に対向する位置に形成された貫通孔127と、ベースプレート65の各貫通孔114に対向する位置に形成されたネジ孔141B(図9参照)とが同軸上に配置される。これにより、スチール材等で形成されたストッパーネジ16をカバープレート57側からベースプレート65側へ挿通してネジ止めすることができる。
従って、パイプシリンダ62は、カバープレート57とベースプレート65とによって挟持されると共に、ベースブロック体66と各背当て部118A、118Bとによって両側面部が挟持される。また、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bの上端側開口が、カバープレート57の上端部から略直角に延出されたカバー部131によって覆われる。また、ガス発生部材61で発生したガスの圧力によって、シールプレート63が押圧されて、ピストン64がピストン収納部62Bの上端側開口部(図7中、上端部)へ移動した場合には、ピストン64の段差部117が、各貫通孔114に挿通されたストッパーネジ16に当接して、停止させることができる。
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図9及び図10に基づいて説明する。
図9はハウジングユニット5の分解斜視図である。図10はシートベルト用リトラクタ1のロックユニット9を取り除いた状態の側面図である。
図9及び図10に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット133と、プロテクタ135と、パウル43と、パウルリベット136とから構成されている。
また、ハウジング11は、スチール材等で平面視略コの字状に形成されて、奥側の側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26の先端部が挿入される貫通孔137が形成されている。また、この貫通孔137の斜め下側のパウル43に対向する部分には、切欠部138が形成され、パウル43がスムーズに回動するようになっている。また、この切欠部138の横側にパウル43を回転可能に取り付けるための貫通孔139が形成されている。
また、切欠部138のパウル43が当接する部分には、貫通孔139の同心円上に半円形状の案内部140が形成されている。一方、パウル43の案内部140に当接して摺動する部分は、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部140の側縁と同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部43Bが側壁部12の厚さ寸法より若干高く形成されている。また、パウル43の外側の側面の先端部には、後述のようにロックユニット9を構成するクラッチ202のガイド溝202Fに挿入される案内ピン43Aが立設されている。
また、側壁部12の両側端縁部から相対向する各側板部13、14が延出されている。また、各側板部13、14の中央部には、それぞれ開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の取り付け作業の効率化等が図られている。また、各側板部13、14の上下端縁部には、所定幅で略直角内側方向に延出された各ネジ止め部13A、13B、14A、14Bが形成されている。また、各ネジ止め部13A、13B、14Aには、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔141Aがバーリングによって形成され、ネジ止め部14Bには、ストッパーネジ16がネジ止めされるネジ孔141Bがバーリングによって形成されている。
また、側板部13の上端縁部に各リベット134によって取り付けられるブラケット133は、スチール材等で形成されて、側板部13の上端縁部から略直角内側方向に延出された延出部にウエビング3が引き出される横長の貫通孔142が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ135が嵌め込まれている。
また、スチール材等で形成されたパウル43は、段差部43Bが案内部140に当接されて、側壁部12の外側から貫通孔139に回転可能に挿通されるリベット136によって、回動可能に固定されている。これにより、パウル43の側面とラチェットギヤ26の側面とが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように位置される。
また、図10に示すように、プリテンショナユニット7を各ネジ15及びストッパーネジ16によってハウジングユニット5に取り付けた場合には、連結シャフト91の他端側折曲部に取り付けられたメカ側アーム92のボス106が、側壁部12に形成された貫通孔105に回動可能に嵌入されて、切欠部138内に位置するパウル43の下側の側面部の近傍に位置している。また、メカ側アーム92の外側の側面に立設されたボス92Aが切欠部138に挿入されている。また、パウル43は、通常時には、メカ側アーム92に近接した状態で、且つ、ラチェットギヤ26に係合しないようになっている。
[強制ロック機構及びパウルの動作説明]
次に、車両衝突時等において、プリテンショナ機構17のガス発生部材61の作動によって起動する強制ロック機構53及びパウル43の動作について図11乃至図16に基づいて説明する。
図11はプリテンショナ機構17のガス発生部材61の作動によってピストン64がピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71に当接した状態を示す説明図である。図12は図11に対応するパウル43の動作を示す説明図である。図13はピストン64が更に移動して回転レバー88の下端部がギヤ側アーム89の先端部から外れる瞬間を示す説明図である。図14は図13に対応するパウル43の動作を示す説明図である。図15はピストン64が更に移動して回転レバー88の下端部がギヤ側アーム89の先端部から外れた状態を示す説明図である。図16は図15に対応するパウル43の動作を示す説明図である。
図11に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナ機構17のガス発生部材61が作動した場合には、パイプシリンダ62のピストン収納部62B内のピストン64が図7に示す通常状態から、ラック止めピン108を剪断して上方に(矢印X1方向である。)に移動し、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71の歯に当接する。これにより、ベースプレート65とカバープレート57とによって回転可能に支持されているピニオンギヤ体33は、正面視反時計方向(矢印X2方向である。)への回転を開始する。
従って、ピニオンギヤ体33に一体固定されているクラッチ機構68も回転が開始される。また、ピニオンギヤ部71の歯が、ベースブロック体66の凹部86内に配設された強制ロック機構53を構成するプッシュブロック87のピニオンギヤ体33側の端部に当接するまで、このプッシュブロック87は、ベースブロック体66の底面部に立設される位置決突起94によって停止されている。このため、このプッシュブロック87は回転レバー88の上端部を押さないため、回転レバー88及びギヤ側アーム89は、通常位置に位置している。
また、図12に示すように、回転レバー88の下端部が、ギヤ側アーム89の先端部に当接しているため、このギヤ側アーム89に連結シャフト91を介して連結されたメカ側アーム92は回転しない。このため、パウル43は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45から離れた通常状態に位置している。つまり、パウル43は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に係合していない。
続いて、図13に示すように、ピストン64がパイプシリンダ62内を更に移動してピニオンギヤ体33を正面視反時計方向(矢印X2方向である。)へ回転させた場合には、該ピニオンギヤ体33に一体固定されているクラッチ機構68が更に回動される。これにより、クラッチ機構68を構成するパウルガイド77の各位置決突起77Aが、このパウルガイド77の外側面から剪断されて、該クラッチ機構68とピニオンギヤ体33が、ピストン64の移動に伴って一体となって回転を開始する。
そして、同時にピストン64の上方への移動に伴って、プッシュブロック87はピニオンギヤ部71の歯に押されて外側方向(図13中、左方向である。)に移動し、ベースブロック体66の底面部に立設される位置決突起94を剪断する。このため、プッシュブロック87はブロック付勢バネ87Aによって外側方向に押されて、回転レバー88の上端部に当接して、外側方向に押す。これにより、回転レバー88は、プッシュブロック87に押されて正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転して、回転レバー88の下端部は、ギヤ側アーム89の先端部へ移動する。
また、図14に示すように、回転レバー88の下端部が、ギヤ側アーム89の先端部から外れるまでは、このギヤ側アーム89に連結シャフト91を介して連結されたメカ側アーム92は回転しない。このため、パウル43は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45から離れた通常状態に位置している。つまり、パウル43は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に係合していない。
その後、図15に示すように、ピストン64がパイプシリンダ62内を更に移動してピニオンギヤ体33を正面視反時計方向(矢印X2方向である。)への回転させる。また、回転レバー88の上端部は、ブロック付勢バネ87Aによって押されたプッシュブロック87によって更に押されるため、この回転レバー88の下端部が、ギヤ側アーム89の先端部から外れる。
そのため、ギヤ側アーム89は、付勢バネ90によって外側方向に押圧されて、正面視反時計方向(矢印X4方向である。)へ回転する。尚、プッシュブロック87は、ブロック付勢バネ87Aによって外側方向へ押圧され、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71と離間した状態で維持されると共に、回転レバー88の上端部を凹部86の内壁面に当接させた状態に維持する。
また、図16に示すように、回転レバー88の下端部が、ギヤ側アーム89の先端部から外れた場合には、このギヤ側アーム89が、正面視反時計方向(矢印X4方向である。)へ回転するため、該ギヤ側アーム89の溝部97内に一端側折曲部が挿入されている連結シャフト91も、軸心回りに正面視反時計方向(矢印X4方向である。)へ回転する。
このため、メカ側アーム92は、連結シャフト91の他端側折曲部が溝部107に挿入されているため、ギヤ側アーム89の回動に伴って正面視反時計方向(矢印X5方向である。)に回動して、パウル43をラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に係合させる。尚、パウル43とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45とは、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止し、ウエビング3巻き取り方向への回転を許容するように、噛み合う形状とされている。
従って、パウル43とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45とが係合した場合には、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止するロック動作が行われると共に、ウエビング3巻き取り方向への回転が許容される。尚、前述したクラッチ機構68とピニオンギヤ体33が一体となって回転を開始する以前に、パウル43は巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止しうる状態になる。
また、プリテンショナ機構17の動作後、ピニオンギヤ体33の回転が停止した後は、図15に示すように、回転レバー88の下端部が、ギヤ側アーム89の先端部から外れた状態が維持される。即ち、プリテンショナ機構17の動作後においては、パウル43とラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45との係合が維持される。このため、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、ウエビング3引き出し方向へ回転するのが抑止される。
次に、車両衝突時に動作するプリテンショナ動作について、機構の構成・構造と共にその作用・効果について図17乃至図29に基づいて説明する。
[プリテンショナユニットを含む周辺の構成]
図17は、シートベルト用リトラクタ1を、プリテンショナユニット7を挟んで、巻取りドラムユニット6と巻取バネユニット8とが連結された構成を示す部分断面図で、図4の断面図を背面側から見た図である。
図17に示すように、ガイドドラム21は、ドラムシャフト22を介して巻取バネユニット8との間で同軸に連結されている。ガイドドラム21は、巻取バネユニット8によって、常時ウエビング3の巻き取り方向に付勢されている。
また、プリテンショナユニット7のうち、ベースプレート65から突出して備えられているクラッチ機構68は、ガイドドラム21のドラム凹部21Bに収納されている。ベアリング32は、ガイドドラム21とピニオンギヤ体33との間に摺動自在に備えられている。ベアリング32は、筒状形状を有する筒状部32Aと、筒状部32Aの一端に連設され外径方向に広がりを有する基端フランジ部32Bとを有しており、ガイドドラム21とピニオンギヤ体33との間に摺動自在に装着されている。
具体的には、ガイドドラム21の取付ボス31の外側面および外側面に連設されるドラム凹部21Bの底面部に、ベアリング32における筒状部32Aの内側面および基端フランジ部32Bの下側面とが摺動自在に接触する。また、ピニオンギヤ体33の内側面および先端部に、ベアリング32における筒状部32Aの外側面および基端フランジ部32Bの上側面とが摺動自在に接触する。
また、プリテンショナユニット7において、ピニオンギヤ体33およびクラッチ機構68が、ベアリング32を介してガイドドラム21に摺動自在に当接して構成されている。これにより、通常使用時に、ウエビング3の引き出し、巻き取りに伴うガイドドラム21の回転は、プリテンショナユニット7のピニオンギヤ体33およびクラッチ機構68に規制されず、自在に行うことができる。
図18は、シートベルト用リトラクタ1を、巻取バネユニット8側から見た平面図である。尚、ガイドドラム21、クラッチ機構68、およびベースプレート65の関係を説明するために、クラッチ機構68およびベースプレート65を除くプリテンショナユニット7の構成部材、巻取バネユニット8、ドラムシャフト22が省略されている。また、部材間の関係を示すため、必要に応じて部材の一部または全部が透視された状態(点線で表示)が表示されている。
図18に示すように、クラッチ機構68は、ガイドドラム21と同軸に組み付けられている。これは、クラッチ機構68がベースプレート65の開口65Aを介してピニオンギヤ体33と同軸に連結され、ピニオンギヤ体33の内側面が取付ボス31の外側面とベアリング32を介して回転摺動自在に位置決められているからである。
また、ガイドドラム21のドラム凹部21Bを構成する周縁部には、軸心に向かってクラッチギヤ30が刻設されている。後述するように、クラッチ機構68に収納されているクラッチパウル29がプリテンショナ作動時に突出する。突出したクラッチパウル29がクラッチギヤ30に係合して、ガイドドラム21をウエビング3の巻き取り方向に回転させる。
また、クラッチ機構68のうちベースプレート65に接する面には、位置決突起77Aが備えられており、ベースプレート65に開口されている位置決孔81と係合されている。これにより、クラッチ機構68とベースプレート65とは、通常作動時においては相対回転不能に固定されている。
また、後述するように、位置決突起77Aは、クラッチ機構68を構成するパウルガイド77に形成されている。通常作動時および車両衝突時の初期段階において、パウルガイド77はベースプレート65との間で相対回転不能な状態で固定されている。
そして、車両衝突時にピストン64が押圧駆動されピニオンギヤ体33が回転すると、パウルガイド77に対してパウルベース76が相対回転する。この回転運動に伴いクラッチパウル29が外径方向に突出する。クラッチパウル29が突出した後も、駆動力が継続することにより、パウルガイド77にも駆動力が印加される。この駆動力に抗しきれなくなると位置決突起77Aが破断する。以後、クラッチ機構68は一体となってガイドドラム21を回転させ、ウエビング3の巻き取りが行われる。
尚、ガイドドラム21の取付ボス31には、同軸に開孔部31Aが設けられている。この開孔部31Aにドラムシャフト22が圧入されている。
[プリテンショナ動作の機構説明]
図19、20は、プリテンショナユニット7による車両衝突時のウエビング3の巻き取り動作、すなわち、プリテンショナ動作の構成を示すための斜視図である。尚、プリテンショナ動作に関連する構成を明記するために、一部の構成部品を省略して示している。具体的には、プリテンショナユニット7を構成する部材のうち、クラッチ機構68、ピニオンギヤ体33、パイプシリンダ62を残し、これ以外の部材については省略している。ここで、ベースプレート65については点線にて表示している。また、巻取バネユニット8についても省略している。
図19および図20に示すように、ベースプレート65を挟んでピニオンギヤ体33に連結されたクラッチ機構68は、ガイドドラム21のドラム凹部21Bに収納されている。これにより、クラッチ機構68は、その側面がガイドドラム21のクラッチギヤ30に対向して配置される。プリテンショナ動作時、パイプシリンダ62内のガス圧に応じてピニオンギヤ体33が回転する。ピストン64の押圧駆動によるピニオンギヤ体33の回転に応じてクラッチ機構68の内部に収納されているクラッチパウル29は、クラッチ機構68の側面から外径方向に突出する。突出したクラッチパウル29がクラッチギヤ30と係合して、ウエビング3の巻き取り方向にガイドドラム21を回転させる。
ここで、図20では、クラッチパウル29は複数配設されている。後述する図21、22によれば、3つクラッチパウル29が備えられ、3か所でガイドドラム21のクラッチギヤ30と係合する。ガイドドラム21のドラム凹部21Bの周縁部に形成されるクラッチギヤ30に均等に係合してピニオンギヤ体33の駆動力をガイドドラム21に均等に伝達することができる。
[クラッチ機構の構成]
図21、22は、クラッチ機構68の構成を示す分解斜視図である。図21は、巻取バネユニット8側から見た分解斜視図であり、図22は、巻取りドラムユニット6側から見た分解斜視図である。
図21および図22に示すように、クラッチ機構68は、パウルベース76、クラッチパウル29、パウルガイド77より構成されている。
クラッチパウル29の基端部には貫通孔29Aが開孔されており、パウルガイド77に突設されている十字状突起77Bに圧入される。十字状突起77Bの十字形状の一辺の長さは、クラッチパウル29の貫通孔29Aの直径より長く形成されており、圧入された状態でクラッチパウル29の回動を規制する。この場合、クラッチパウル29においてパウルガイド77に対向する面側の貫通孔29Aには面取り加工が施されている。また、貫通孔29Aの面取り加工に代えて、または面取り加工と共に、十字状突起77Bは、その先端部において十字形状の一辺の長さが短く形成され、あるいは先端部がその他の部位に比して肉薄に形成されていてもよい。これにより、圧入作業をスムーズに行うことができる。
また、クラッチパウル29において、貫通孔29Aと係合歯29Bとの中間位置に凹部29Cが設けられており、パウルガイド77の対応位置には突起77Eが突設されている。パウルガイド77が十字状突起77Bに圧入された状態で、突起77Eと凹部29Cとが嵌合する。凹部29Cと突起77Eとの配置位置は、十字状突起77Bに圧入されたクラッチパウル29の回動位置を決める効果を有するものである。十字状突起77Bに圧入されたクラッチパウル29を収納位置に位置決めするための構成である。凹部29Cと突起77Eとの嵌合、および十字状突起77Bへの貫通孔29Aの圧入により、通常動作時にクラッチパウル29は収納位置から回動せず、係合歯29Bが外方に突出することはない。
また、パウルガイド77の内径側の側面には、クラッチパウル29ごとにガイド部77Cが近接して設けられている。プリテンショナユニット7の動作初期段階においては、パウルガイド77は回転不能の状態にある。位置決突起77Aがベースプレート65に係合しているからである。この状態でパウルベース76が回転する。回転に伴いパウル支持ブロック76Bに押圧されたクラッチパウル29は、十字状突起77Bおよび突起77Eを破断しながら回転方向に移動する。移動したクラッチパウル29は、クラッチパウル29の内径側の側面がガイド部77Cに押圧される。パウルベース76は更に回転するので、クラッチパウル29は、パウル支持ブロック76Bおよびガイド部77Cに押圧される。その結果、クラッチパウル29は、ガイド部77Cにより外径方向に摺動案内されて外径方向に突出する。
また、パウルベース76には、挿通孔76Aが設けられている。ここで、十字状突起77Bの突設長さはクラッチパウル29の肉厚より長く形成されている。十字状突起77Bにクラッチパウル29が圧入されると、十字状突起77Bの先端部はクラッチパウル29の貫通孔29Aの反対側から飛び出した状態となる。パウルガイド77とパウルベース76とが嵌合した際、十字状突起77Bのうちクラッチパウル29から飛び出した部分が、挿通孔76Aに嵌合される。
また、挿通孔76Aをパウルベース76の外径側で囲むように肉厚のパウル支持ブロック76Bが設けられている。パウル支持ブロック76Bは、車両衝突時にクラッチパウル29がガイドドラム21を押圧駆動する際に、クラッチパウル29が受ける荷重を受け止めるために設けられている。
また、クラッチパウル29は、先端部にクラッチギヤ30と係合する係合歯29Bが設けられている。第1実施形態では、3つのクラッチパウル29が配設される構成である。プリテンショナ作動時にガイドドラム21を押圧駆動する際、押圧駆動に伴う荷重を分散して、効率のよい押圧性能、耐荷重性能を実現することができる。
また、パウルベース76において、パウル支持ブロック76Bの外径端には、係止ブロック76Cが形成されている。また、係止ブロック76Cに近接してパウル支持ブロック76Bの一角に凹部76Dが開孔されている。
また、パウルガイド77には、パウルベース76と嵌合した際、係止ブロック76Cと係合する係止フック77D、および凹部76Dと嵌合する十字状突起77Fが形成されている。
ここで、係止ブロック76Cと係止フック77Dとの係合は、ピニオンギヤ体33による回転初期において、パウルガイド77に対してパウルベース76が相対回転可能な係合状態とされることが好ましい。これにより、回転の初期段階においては、パウルガイド77が回転不能に維持された状態でパウルベース76が回転し、クラッチパウル29が突出する。また、凹部76Dと嵌合する十字状突起77Fは、パウルベース76の回転に応じて破断される。
ここで、パウルベース76、およびクラッチパウル29は、金属製部材で構成され、パウルガイド77は、樹脂製部材で構成されている。これにより、クラッチパウル29の突出動作、およびクラッチパウル29の突出後の、パウルガイド77のパウルベース76との一体回転動作が、簡便かつ確実に行えるようになる。
[プリテンショナ動作の説明]
次に、プリテンショナ動作について図23乃至31に基づいて説明する。
図23、25、26は、プリテンショナ動作がガイドドラム21に伝達する機構について説明するために、パイプシリンダ62の一部を断面図として表示し内部に配置されているピストン64の位置が明示されている。また、ベースプレート65およびパウルガイド77を除いた表示として、クラッチパウル29とガイドドラム21との係合状態を明示している。
図24、27、28は、クラッチパウル29とガイドドラム21との係合状態を拡大して示した図である。合わせて、パウルベース76とパウルガイド77との各々に設けられた、
図23および図24は、プリテンショナ動作前の状態を示す。
図23および図24に示すように、パイプシリンダ62内のピストン64は、基底位置に配置されており、ピストン64に刻設されているラック116は、ピニオンギヤ体33とは係合していない。クラッチパウル29は収納位置に維持されている。
図25は、パイプシリンダ62内にてガスの発生が開始された状態である。また、図27は図25に対応する状態を示し、外径方向に突出を開始したクラッチパウル29がクラッチギヤ30に係合し始める状態を示している。
図25に示すように、ガス圧によって、ピストン64がパイプシリンダ62の先端部に向かって押圧駆動され始める。ラック116とピニオンギヤ体33とが係合し、パウルベース76が回転を開始する。これにより、クラッチパウル29が外径方向に突出を開始する。
図26は、ガス圧によるピストン64の押圧駆動が継続した状態である。また、図28は図26に対応する状態を示している。
図26に示すように、ラック116と係合しているピニオンギヤ体33の回転が継続される。クラッチ機構68の回転が継続し、クラッチパウル29の突出状態が維持される。また、図28に示すように、クラッチパウル29は、外径方向への突出が完了して、クラッチギヤ30への係合が完了する。これにより、クラッチパウル29とガイドドラム21との係合が完了し、ウエビング3がガイドドラム21に巻き取られる。
[プリテンショナ動作の説明(歯当り状態)]
ここで、クラッチパウル29が突出した際、その先端部がガイドドラム21のクラッチギヤ30の先端部に当たってしまった場合の動作について図29に基づいて説明する。
図29では、突出した3つのクラッチパウル29のうち1つについて、その先端部がガイドドラム21のクラッチギヤ30の先端部に当接した状態を示す。いわゆる、歯当りの状態である。この状態では、クラッチパウル29とガイドドラム21とは相対移動不能な状態となる。パウルベース76の回転は継続するので、歯当りしたクラッチパウル29は、ガイドドラム21と一体に回転しようとする。
このとき、クラッチパウル29は、相対回転不能に維持されているパウルガイド77のガイド部77Cに押圧される。パウルベース76の回転に伴い、ガイド部77Cは、弾性変形を伴いながらクラッチパウル29を受け止める。そして、パウルベース76が所定角度回転して残りのクラッチパウル29が、クラッチギヤ30に係合する。
通常、クラッチパウル29の先端部と、ガイドドラム21のクラッチギヤ30の先端部とが歯当りの状態にあるとしても、歯当り状態が続くことはまれである。すなわち、ガイド部77Cの弾性変形によるクラッチパウル29とクラッチギヤ30との反作用力は、当接面に対して斜めに働く。したがって、ガイド部77Cの弾性変形が進めば、クラッチパウル29に回転方向に力が働き、クラッチパウル29が押し戻される。これにより、歯当り状態を解消することができ、クラッチパウル29とクラッチギヤ30とは、係合状態に移行することができる。
歯当り状態が解消することができない場合であっても、図21および図22などに示すように、クラッチパウル29は3つ備えられクラッチ機構68の外径方向の3方向に配置されているので、歯当り状態となったクラッチパウル29については歯当り状態が解消しないとしても、他のクラッチパウル29の突出動作は継続され、クラッチギヤ30との係合を行うことができる。歯当り状態にはないクラッチパウル29が少なくとも1つ存在すれば、クラッチパウル29とクラッチギヤ30との係合動作を行うことができ、プリテンショナ動作を問題なく行うことができる。
[エネルギ吸収機構]
次に、上記強制ロック機構53または後述する通常の緊急ロック機構が作動した後、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えた場合に、ウエビング3を所定荷重下で引き出させることによって乗員に生じる衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収機構について図30乃至図39に基づいて説明する。
先ず、ガイドドラム21とワイヤプレート25との間に取り付けられたワイヤ24の取付構造について図30乃至図34に基づいて説明する。
図30は巻取ドラムユニット6の軸心及びカシメピン39を含む断面図である。図31は図30のX6−X6矢視断面図である。図32はドラムガイド21をワイヤプレート25の取り付け側から見た斜視図である。図33はドラムガイド21の段差部36に形成された屈曲路を示す一部拡大図である。図34はワイヤプレート25の屈曲路を示す一部拡大図である。
図30及び図31に示すように、巻取ドラムユニット6を構成するガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、ドラムシャフト22が圧入等によって固着されている。そして、ドラムシャフト22の基端部にはベアリング32が嵌め込まれている。また、ガイドドラム21の軸孔21Aの奥側には、トーションバー23のスプライン23Aが相対回転不能に圧入固定されている。
また、図31に示すように、ガイドドラム21のフランジ部35の外側面に形成された正面視略円形の段差部36の外周部には、ワイヤ24の一端の屈曲部24Aが嵌入保持される屈曲路145が一体形成されている。
この屈曲路145は、図32に示すように、フランジ部35の軸方向外側面から突出する正面視下側向きの略台形状に形成された凸部147と、段差部36の外周の凸部147に対向する凹部148と、この凹部148の正面視左端(図33中、左端)から少し離れた段差部36の外周面から斜め内側方向に形成された溝部149と、段差部36の凹部148と溝部149との間の外周面とによって形成されている。
また、図33に示すように、凸部147と凹部148の対向面に、屈曲路145の深さ方向に沿って2組の対向するリブ151が設けられている。また、溝部149の対向面に、屈曲路145の深さ方向に沿って1組のリブ152が設けられている。また、対向する各リブ151、152間の距離は、ワイヤ24の外径よりも小さくなるように形成されている。
また、図31に示すように、ワイヤ24の一端の屈曲部24Aは、各リブ151、152を押し潰しつつ屈曲路145に嵌入されて固定保持される。また、ワイヤ24の屈曲部24Aに連続して形成される正面視くの字状の屈曲部24Bは、フランジ部35の外周よりも外側に突出するように形成されている。そして、ワイヤ24の屈曲部24Bに連続して形成される屈曲部24Cは、段差部36の外周面に沿った円弧状に形成されている。
また、図5、図30、図31、図34に示すように、ワイヤプレート25の貫通孔40の内周は、段差部36の外周部にほぼ対向すると共に、この貫通孔40の周縁部には、ワイヤ24に当接した状態で、このワイヤ24、フランジ部35及び凸部147を収容する収容凹部155が形成されている。また、この収容凹部155は、フランジ部35の外周部を覆う内周面の径が、フランジ部35の外径にほぼ等しくなるように形成されている。
また、収容凹部155のワイヤ24の屈曲部24Bに対向する部分には、屈曲部24Bを収容するために径方向外側に膨出した膨出部155Aが形成されている。また、膨出部155Aの内側面には、ワイヤ24の屈曲部24Bの内側に挿入される正面視略山形の凸部38が一体形成され、ワイヤ24が摺動案内される屈曲路156が構成されている。また、この凸部38のワイヤプレート25の半径方向内側端面部は、段差部36の外周面に沿った円弧状に形成されている。
従って、図31に示すように、ワイヤ24のガイドドラム21への取り付けは、先ず、ガイドドラム21の軸孔21Aの奥側に、トーションバー23のスプライン23Aを圧入固定する。続いて、段差部36に形成された屈曲路145にワイヤ24の屈曲部24Aを押し込むと共に、屈曲部24Cを段差部36の外周面に沿って配置する。そして、ワイヤプレート25の凸部38を、ワイヤ24の屈曲部24B内に挿入して、屈曲路156内にワイヤ24の屈曲部24Bを挿入すると共に、貫通孔40の周縁部をワイヤ24に当接させて、収容凹部155内にワイヤ24、段差部36及び凸部147を収容する。
その後、上記のように、ラチェットギヤ26の固定ボス49内にトーションバー23の他端側に形成されたスプライン23Bを嵌入して、各貫通孔47に挿通したガイドドラム21の各突き出しピン37をカシメる。これにより、ラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、各突き出しピン37を介してガイドドラム21に対して相対回転不能に固定される。また、ワイヤプレート25の各カシメピン39をカシメることによって、ラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、トーションバー23に相対回転不能に固定される。
次に、車両衝突時等において、上記強制ロック機構53または後述する通常の緊急ロック機構が作動して、パウル43が巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26に噛合した場合には、ラチェットギヤ26のウエビング3の引出方向への回転が阻止される。この状態で、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えて引き出された場合には、ガイドドラム21に作用する回転トルクによって、ラチェットギヤ26の各貫通孔47に嵌入されてカシメられた各突き出しピン37が、ガイドドラム21と共に回転されて、剪断される。この際に、「第1のエネルギ吸収機構」としての各突き出しピン37の剪断による衝撃エネルギの吸収がなされる。
また同時に、ガイドドラム21が回転された場合には、トーションバー23のガイドドラム21の軸孔21Aの奥側に圧入固定されたスプライン23A側が回転され、トーションバー23の捻れ変形が開始される。このトーションバー23の捻れ変形に伴ってガイドドラム21がウエビング3の引出方向に回転し、「第2のエネルギ吸収機構」としてのトーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収がなされる。
また同時に、ガイドドラム21が回転された場合には、ワイヤプレート25とラチェットギヤ26とは、各嵌合凸部41と各嵌合凹部46Bとによって嵌合されているため、このワイヤプレート25とガイドドラム21との相互間においても相対回転が生じる。それにより、ガイドドラム21の回転に伴ってワイヤ24とワイヤプレート25との相互間においても相対回転が生じ、「第3のエネルギ吸収機構」としてのワイヤ24による衝撃エネルギの吸収がなされる。
[ワイヤの引き出し動作]
ここで、ワイヤ24によって衝撃エネルギを吸収する際の、当該ワイヤ24の動作について図31、図35乃至図38に基づいて説明する。図35乃至図38はワイヤ24を引き出す動作説明図である。
図31に示されるように、ワイヤプレート25とガイドドラム21との初期状態においては、屈曲路145を構成する凸部141の周方向一端側が、屈曲路156を構成する凸部38の引き出し側端部の近くに位置し、各屈曲路145、156の各端部がほぼ一直線状になるように対向している。
そして、図35乃至図37に示すように、ウエビング3の引き出しによってガイドドラム21がウエビング3の引出方向に回転した場合には、ワイヤプレート25は回転が阻止され、ガイドドラム21の回転に伴って段差部36がウエビング3の引出方向X7に相対回転されていく。これにより、段差部36の屈曲路145に屈曲部24Aが固定保持されたワイヤ24が、膨出部155A内に凸部38によって形成される正面視略くの字状の屈曲路156から順次しごかれながら、矢印X8方向に引き出されて、段差部36の外周面に巻き取られる。尚、この際には、ワイヤ24の引き出しと同時に、ガイドドラム21の回転に伴ってトーションバー23も捻れ変形している。
また、正面視略くの字状の屈曲路156をワイヤ24が変形しながら通過する際に、凸部38とワイヤ24との相互間に摺動抵抗が生じると共に、ワイヤ24自体による屈曲抵抗が生じ、これら摺動抵抗と屈曲抵抗による引出抵抗によってワイヤ24による衝撃エネルギの吸収がなされる。
そして、図38に示すように、ガイドドラム21の回転に伴って、ワイヤ24の他端部が屈曲路156から離脱した時点で、このワイヤ24による衝撃エネルギの吸収作用は終了し、以降はガイドドラム21の回転に伴ってトーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収のみとなる。
ここで、各突き出しピン37、ワイヤ24及びトーションバー23による衝撃エネルギの吸収特性について図39に基づいて説明する。図39は各突き出しピン37、ワイヤ24及びトーションバー23による衝撃エネルギの吸収の一例を示す吸収特性図である。
図39に示すように、ウエビング3の引き出しが開始されてから各突き出しピン37が剪断される時点までの間は、各突き出しピン37とトーションバー23による衝撃エネルギの吸収が、同時になされる。従って、ウエビング3に引き出しが開始されてから各突き出しピン37が剪断される時点までは、各突き出しピン37とトーションバー23、及びワイヤ24によってエネルギーが吸収される。
そして、更にウエビング3が引き出され、各突き出しピン37が剪断されてからワイヤ24が屈曲路156から離脱するまでの間は、トーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収と、ワイヤ24による衝撃エネルギの吸収が、同時になされる。また、各突き出しピン37が剪断されてからワイヤ24の屈曲路156からの引き出しが終了するまでの間は、エネルギー吸収荷重が乗員に悪影響を与えない最大荷重F1よりも小さい所定荷重にできるだけ沿うように設定することが可能である。
更に、ワイヤ24が屈曲路156から離脱した場合には、このワイヤ24による衝撃エネルギの吸収作用は終了し、以降はガイドドラム21の回転に伴ってトーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収のみとなる。
従って、ワイヤ24の屈曲部24Aを屈曲路145に押し込むことによって、ワイヤ24が各リブ151、152により固定保持されるため、構造の簡素化及びワイヤ24の組付け作業の効率化を図ることができる。
また、車両衝突時等における衝撃エネルギの吸収は、この衝撃エネルギの吸収開始直後の初期段階におけるエネルギ吸収を各突き出しピン37、トーションバー23及びワイヤ24によって吸収し、その後、ワイヤ24及びトーションバー23によって吸収するようにして大きくし、より効率よく行うことが可能となる。
上記に説明したウエビングの強制ロック機構53は、車両衝突時等に作動するロック機構である。すなわち、車両衝突時等の緊急時のプリテンショナ動作においてウエビングの巻き取り動作が完了後、後述する通常の緊急ロック機構が作動するより早期に乗員の移動を防止するロック機構である。車両衝突の衝撃直後に作動するロック機構である。
第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、上記の強制ロック機構53のほかに、2種類のロック機構を備えている。ウエビングの急な引き出しに対して作動するウエビング感応式ロック機構と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する車体感応式ロック機構である。以下の説明では、強制ロック機構53と明確に区別するために、これらの2種類のロック機構を緊急ロック機構と称して、以下に説明を行う。
[緊急ロック機構の概略構成]
図40は、緊急ロック機構を奏するロックユニット9の構成を示す分解斜視図である。また、図4には断面図を示す。
図40および図4に示すように、ロックユニット9は、ウエビング感応式ロック機構と車体感応式ロック機構との動作を行うユニットである。メカニズムブロック201、クラッチ202、パイロットアーム203、リターンスプリング204、ビークルセンサ205、ロッキングギヤ206、センサスプリング207、ロックアーム208、イナーシャマス209、およびメカニズムカバー210で構成されている。
クラッチ202の外周縁にはリブ202Aが設けられている。メカニズムブロック201の係合部201Aと係合することにより、クラッチ202は、回動可能にメカニズムブロック201に取り付けられる。このとき、リターンスプリング204が、ロックユニット9の上端部で互いに対向してなる、メカニズムブロック201およびクラッチ202の突状保持部201Bおよび202Bの間に保持されており、クラッチ202を所定位置に付勢する。
メカニズムブロック201は、中央部が開口されている。開口形状は略倒立した瓢箪状の形状を有している。このうち、大径の開口部はラチェットギア26の径より大きく、クラッチ202の径より小さい径を有している。これにより、大径の開口部においてクラッチ202の背面とラチェットギア26とが近接して対向配置する。小径の開口部および大径の開口部との接続部分は、パウル43の可動領域を提供する。パウルリベット136によりハウジング11に回動可能に軸支されたパウル43が配置される。パウル43の大径の開口部への回動により、パウル43がラチェットギア26のラチェットギヤ部45に係合する。
また、メカニズムブロック201において、小径の開口部の対向辺には、センサ載置部201Cが設けられており、ビークルセンサ205が、ボールセンサ205C上にビークルセンサレバー205Aを上方に向けて載置される。
クラッチ202は、中央に開口部202Cを有している。近接配置されたラチェットギヤ26の軸部48が遊嵌される。クラッチ202の前面部には開口部202Cと同軸であって軸心に向かう方向にクラッチ歯202Dが、円環状に立設されている。
クラッチ202の略下方中央部には、取付ピン202Eとガイド溝202Fとが備えられている。取付ピン202Eは前面側に備えられ、パイロットアーム203が回動可能に軸支される。パイロットアーム203は、ビークルセンサレバー205Aにより押圧され押上げられる。ガイド溝202Fは背面側に備えられ、パウル43の案内ピン43Aが遊嵌される。ガイド溝202Fは左方に向かって開口部202Cの軸心に近づくように形成されている。これにより、クラッチ202が反時計方向に回動することによりパウル43はラチェットギヤ26に近づくように誘導される。
更に、取付ピン202Eから左下方に誘導ブロック202Gが延設されている。誘導ブロック202Gは、ビークルセンサ205のレバー基部205Bに対向して設けられている。取付ピン202Eから左方に延設されるに従い下方に広がるテーパー構造を有している。その先は一定の幅を有した領域である。
ロッキングギヤ206は、その背面側に、クラッチ202に円環状に立設されているクラッチ歯202Dを収納する円環状の溝部206Dを有している。ロッキングギヤ206は、溝部206Dがクラッチ歯202Dを囲むようにクラッチ202に接触あるいは近接して配置される。開口部202Cを遊嵌した軸部48がロッキングギヤ206と同軸に圧入される。ラチェットギヤ26とロッキングギヤ206とが同軸に固定される。
ロッキングギヤ206の外周端側の一角には、溝部206Dに抜ける開口部206Cが備えられている。また、開口部206Cに近接して軸支ピン206Bが備えられている。ロックアーム208は、その先端部が開口部206Cから外方の溝部206Dに向かって回動可能に、軸支ピン206Bに軸支される。また、ロックアーム208は、センサスプリング207によりロッキングギヤ206と連結されており、通常動作時、先端部が開口部206Cから突出しないように付勢されている。ウエビング感応式ロック機構によるロック動作の際、ロックアーム208が開口部206Cを介して溝部206Dに突出し、ロックアーム208の先端部がクラッチ歯202Dと係合する。
ロッキングギヤ206の外周縁は、外径方向に向かってロッキングギヤ歯206Aが刻設されている。ロッキングギヤ206は、ロッキングギヤ歯206Aがパイロットアーム203に近接するようにクラッチ202に配置される。車体感応式ロック機構によるロック動作の際、ビークルセンサ205のビークルセンサレバー205Aによりパイロットアーム203が押し上げられて、パイロットアーム203の先端部がロッキングギヤ歯206Aと係合する。
また、ロッキングギヤ206の前面には、イナーシャマス209が回動可能に取り付けられている。イナーシャマス209は、ガイド開口部209Aを有している。ガイド開口部209Aにはロックアーム208に突設された誘導ピン208Aが遊嵌されている。イナーシャマス209は、急激なウエビングの引き出しに対して慣性遅れを発生させる部材であり、金属部材で成形されている。ガイド開口部209Aは機能的には一つ備えていれば良いが、慣性遅れを発生させる目的から、イナーシャマス209の中心点に点対称の位置にダミーのガイド開口部209Aを備えている。
ロックユニット9の前面はメカニズムカバー210でカバーされる。メカニズムカバー210には、ナイラッチ210Aが備えられている。ナイラッチ210Aは、ナイラッチ8Aと同様な構成を有している。ロックユニット9は、ナイラッチ210Aにより、メカニズムブロック201の開口201Dを介してハウジング11に固定される。
尚、ロックユニット9は、イナーシャマス209、リターンスプリング204、センサスプリング207、およびビークルセンサ205の金属球を除いた部材は樹脂部材で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
次に、図41〜図46により通常のロック機構についての動作を説明する。図においてウエビングの引き出し方向は図示の方向である。反時計方向の回転方向がウエビングの引き出し方向である。以下の説明では、ロック動作に係る動作を中心に説明し、その他の部分については適宜、記載を省略する。また、動作の説明上、必要に応じて図面の一部を切り欠いて表示している。ウエビング感応式ロック機構および車体感応式ロック機構では、共にパウル43の動作は共通である。このため、以下の説明では、パウル43とラチェットギヤ26との関係を示す部分については、その一部をきり欠いた状態として表示している。
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
図41〜図43は、ウエビング感応式ロック機構の動作説明図である。ウエビング感応式ロック機構では、パウル43とラチェットギヤ26との関係を示す部分に加えて、ロックアーム208とクラッチ歯202Dとの関係を示す部分、およびセンサスプリング207の部分を切り欠いて表示している。
ウエビングに加わる引き出し方向の加速度が所定値を越えると、センサスプリング207がイナーシャマス209の初期位置を維持できなくなる。すなわち、イナーシャマス209に慣性遅れが生じ、イナーシャマス209に対してロッキングギヤ206が反時計方向に回動する。
これにより、ロックアーム208の誘導ピン208Aがイナーシャマス209のガイド開口部209Aにガイドされて、ロックアーム208の先端部が外径方向に回動しクラッチ歯202Dと係合する。この状態を図41に示す。
ロックアーム208がクラッチ歯202Dに係合した後もウエビングの引き出しが継続すると、ラチェットギヤ26と同軸に固定されているロッキングギヤ206は、反時計方向の回転力が印加され続ける。ロックアーム208がクラッチ歯202Dに係合しているので、クラッチ202も反時計方向に回動される。
これにより、クラッチ202のガイド溝202Fにパウル43の案内ピン43Aが誘導されて、パウル43がラチェットギヤ26に向かって回動する。この状態を図42に示す。
パウル43の回動が継続してラチェットギヤ26に係合することにより、ラチェットギヤ26の回転がロックされる。ガイドドラム21の回転がロックされてウエビングの引き出しがロックされる。この状態を図43に示す。
図43の状態では、リターンスプリング204が圧縮された状態に維持される。従って、ウエビングに加わる引き出し方向の引張力が緩められ、ガイドドラム21が巻取方向に回転すると、圧縮されたリターンスプリング204の付勢力によりクラッチ202は時計方向に回動する。これにより、パウル43の案内ピン43Aがクラッチ202のガイド溝202Fを逆方向に誘導されて、ラチェットギヤ26からパウル43が離間する。ロック状態が解除される。
[車体感応式ロック機構の動作説明]
図44〜図46は、車体感応式ロック機構の動作説明図である。車体感応式ロック機構では、パウル43とラチェットギヤ26との関係を示す部分を切り欠いて表示している。
車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定値を越えると、ビークルセンサ205のボールセンサ205Cが所定位置を維持できなくなり、ビークルセンサレバー205Aがパイロットアーム203を押し上げる。
これにより、パイロットアーム203の先端部がロッキングギヤ歯206Aと係合する。この状態を図44に示す。
パイロットアーム203とロッキングギヤ歯206Aとの係合状態が継続すると、ロッキングギヤ206に加わっている反時計方向の回転力が、パイロットアーム203を介してパイロットアーム203が軸支されているクラッチ202を反時計方向に回動させる。
これにより、クラッチ202のガイド溝202Fにパウル43の案内ピン43Aが誘導されて、パウル43がラチェットギヤ26に向かって回動する。この状態を図45に示す。
パウル43の回動が継続してラチェットギヤ26に係合することにより、ラチェットギヤ26の回転がロックされる。ガイドドラム21の回転がロックされてウエビングの引き出しがロックされる。この状態を図46に示す。
ウエビング感応式ロック機構と同様に、ウエビング3が巻き取られると、クラッチ202は時計方向に回動して、パウル43とラチェットギヤ26の係合が解除される。尚、ボールセンサ205Cは、車両の加速度がなくなった時点で、初期状態に復帰する。
ここで、誘導ブロック202Gは、ロック状態が解除されクラッチ202が時計方向に回動して通常の位置に戻る際、ビークルセンサレバー205Aが車体の加速度により上昇しないようにする揺動規制部材であって、パイロットアーム203の先端部とビークルセンサ205のビークルセンサレバー205Aとが当接してクラッチ202の戻りが規制されないように備えられている。
ロック状態では、誘導ブロック202Gのうち幅広領域の下端部がビークルセンサ205のレバー基部205Bに当接している。この状態では、ビークルセンサレバー205Aの先端位置がパイロットアーム203の下端部の可動軌跡より下方に維持されるように幅広領域の幅を設定しておけば、クラッチ202が時計方向に回動して戻る際にも、ビークルセンサレバー205Aとパイロットアーム203の先端部とが当接してしまうことはない。クラッチ202の時計方向への回動に伴い、レバー基部205Bに当接する誘導ブロック202Gの下端部は、テーパー構造を有して幅が順次狭くなる。これにより、ロック状態からの復帰時、クラッチ202が時計方向に回動して通常位置に戻る際、パイロットアーム203の先端部がビークルセンサレバー205Aに当接し、クラッチ202の戻り動作を規制してしまうことはない。また、通常の動作状態において、レバー基部205Bが誘導ブロック202Gに当接することはなく、また、ビークルセンサ205の車体の加速度による揺動が誘導ブロック202Gにより規制されてしまうことはない。
ここで、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラムの一例である。また、プリテンショナ機構17は、プリテンショナ機構部の一例である。また、ベースプレート65は、一方の側壁部の一例である。また、ガス発生部材61は、ガス発生部材の一例である。また、パイプシリンダ62は、シリンダの一例である。また、ベースブロック体66は、ブロック部材の一例である。また、ストッパーネジ16は、締結部材の一例である。また、貫通孔127は、カバー側固定孔の一例である。また、貫通孔128は、側壁部側固定孔の一例である。また、各背当て部118A、118Bは、延出部の一例である。また、各貫通孔119A、119Bは、嵌合孔の一例である。また、切欠部111は、開口部の一例である。
従って、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、ピストン収納部62Bの切欠部111の内側にベースブロック体66のギヤ収納部55の両側端縁部から外側方向に突出する各突出部109を嵌入させつつ、ピストン収納部62Bの上端部に形成された切欠部113にベースプレート65の折曲部112を嵌入させて、該ベースプレート65上にパイプシリンダ62を配置する。更に、カバープレート57とベースプレート65のパイプシリンダ62の各貫通孔114に対向する位置に形成される各貫通孔127、128に、スチール材等で形成されたストッパーネジ16をカバープレート57側から挿通して、ハウジング11のネジ止め部14Bにネジ止めすることによって、パイプシリンダ62がカバープレート57とベースプレート65との間に挟まれた状態でハウジング11に取り付けられる。
これにより、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bは、ベースブロック体66の側面部に立設される断面略三角形の各リブ110と、ベースプレート65の側端縁部のピニオンギヤ体33に対向する部分から略直角に延出された各背当て部118A、118Bとによって、その両側面部を支持することが可能となる。このため、車両衝突時等において、ガス発生部材61で発生したガスの圧力による反力をベースブロック体66、各背当て部118A、118B及びストッパーネジ16で構成される簡易な構成で受けることが可能となる。従って、プリテンショナ機構17の構造の簡素化を図ると共に該プリテンショナ機構17の組立作業効率の向上を図ることが可能となる。
また、ベースプレート65の側端縁部から略直角に延出された各背当て部118A、118Bが、カバープレート57の該各背当て部118A、118Bに対向する側端縁部に形成された各貫通孔119A、119Bに挿通される。このため、ガス発生部材61で発生したガスの圧力による反力を受ける強度の向上を図ることが可能となる。
また、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bの側面に形成された切欠部113を、ベースプレート65の折曲部112に嵌め込むことによって、ピストン収納部62Bの長手方向の位置決めを容易に行うことができ、プリテンショナ機構17の組立作業効率の更なる向上を図ることが可能となる。
また、ピストン収納部62Bの切欠部111の内側にベースブロック体66のギヤ収納部55の両側端縁部から外側方向に突出する各突出部109を嵌入させることによって、該切欠部111をピニオンギヤ体33に対して容易に位置決めすることができ、プリテンショナ機構17の組立作業効率の更なる向上を図ることが可能となる。
更に、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bの上端側開口が、カバープレート57の上端部から略直角に延出されたカバー部131によって覆われるため、パイプシリンダ62内への異物の侵入によるプリテンショナ機構17の作動不良を防止することができる。
次に、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301について図47乃至図58に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図46の第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一符号は、該第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
先ず、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301の概略構成を図47乃至図50に基づいて説明する。
図47は第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301のプリテンショナユニット302を分解した分解斜視図である。図48はプリテンショナユニット302を外側から見た斜視図である。図49はプリテンショナユニット302をハウジングユニット5への取り付け面側から見た斜視図である。図50はプリテンショナユニット302を構成するカバープレート307のガス発生部材61の作動による変形の一例を示す説明図である。
図47乃至図49に示すように、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301の概略構成は、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1とほぼ同じ構成である。
但し、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1のベースブロック体66、ベースプレート65及びカバープレート57に替えて、ベースブロック体305、ベースプレート306及びカバープレート307が設けられている点で異なっている。
このベースブロック体305は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成され、第1実施形態に係るベースブロック体66とほぼ同じ形状である。但し、ベースブロック体305は、パイプシリンダ62の収納部62Aに対向する下端部から該収納部62A近傍位置まで、ピストン収納部62Bに対向するように同じ厚さで所定幅(例えば、約10mm幅である。)だけ延出されたブロック延出部309が形成されている。また、このブロック延出部309の下端部には、ネジ310(図48参照)が挿通される貫通孔311が形成されている。
また、図47乃至図49に示すように、ベースプレート306は、第1実施形態に係るベースプレート65とほぼ同じ形状である。但し、ベースプレート306は、ベースプレート65のパイプシリンダ62の収納部62A側の端縁部に相当する部分において、ピストン収納部62B側の外側端縁部からベースブロック体305のブロック延出部309のガス発生部材61側端縁部までの幅に渡って、収納部62A近傍位置まで延出されたベースプレート取付部313が設けられている。従って、ベースブロック体305のブロック延出部309のハウジングユニット5側の端面部は、ベースプレート取付部313によって覆われる。
また、このベースプレート取付部313のピストン収納部62Bの下端部に対向する外側角部(図49中、左下側角部である。)には、ベースプレート取付部313の外側上端部からピストン収納部62Bの外側端縁部に対向する位置まで斜めに切り欠かれた切欠部315が形成されている。また、ベースプレート取付部313は、ベースブロック体305のブロック延出部309に形成された貫通孔311に対向する位置に、該貫通孔311に挿通されたネジ310が締結されるネジ孔316がバーリング加工によって形成されている。
また、このネジ孔316の上側には、ベースブロック体305の弾性係止片66Bが挿通されて弾性的に係止される横長四角形の貫通孔317が形成されている。
また、ベースプレート取付部313のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、ネジ孔316の近傍位置(例えば、約3mm離れた位置である。)から切欠部315の端縁部まで、ピストン収納部62Bの長手方向に対して略直角になるようにベースプレート補強溝318が形成されている。このベースプレート補強溝318は、ベースプレート306の厚さ寸法(例えば、約2mmの厚さである。)にほぼ等しい深さの断面略半円形状で外側方向(ハウジングユニット5側の方向である。)に窪むようにプレス成型等により形成されている。
また、このベースプレート補強溝318とピニオンギヤ体33のボス部74を回転可能に支持する貫通孔83との略中央位置でピストン収納部62Bに対向する部分には、ベースプレート補強溝318に平行な補強溝319が、ベースプレート補強溝318とほぼ同じ長さで形成されている。この補強溝319は、ベースプレート306の厚さ寸法(例えば、約2mmの厚さである。)にほぼ等しい深さの断面略半円形状で外側方向(ハウジングユニット5側の方向である。)に窪むように形成されている。
また、図47乃至図50に示すように、カバープレート307は、第1実施形態に係るカバープレート57とほぼ同じ形状である。但し、カバープレート307は、カバープレート57のパイプシリンダ62の収納部62A側の端縁部に相当する部分において、ピストン収納部62B側の外側端縁部からベースブロック体305のブロック延出部309のガス発生部材61側端縁部までの幅に渡って、収納部62A近傍位置まで延出されたカバープレート取付部321が設けられている。従って、ベースブロック体305のブロック延出部309の外側の端面部は、カバープレート取付部321によって覆われる。
また、このカバープレート取付部321のピストン収納部62Bの下端部に対向する外側角部(図48中、右下側角部である。)には、カバープレート取付部321の外側上端部からピストン収納部62Bの外側端縁部に対向する位置まで斜めに切り欠かれた切欠部322が形成されている。また、カバープレート取付部321は、ベースブロック体305のブロック延出部309に形成された貫通孔311に対向する位置に、ネジ310が挿通される貫通孔323が形成されている。
また、図50に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、正面視横T字形のカバープレート補強溝325がプレス成型等により形成されている。このカバープレート補強溝325は、カバープレート取付部321の右下角部からピストン収納部62Bの長手方向に沿って、該ピストン収納部62Bに対して外側方向に窪む縦溝部325Aと、この縦溝部325の長手方向略中央部から略直角にブロック延出部309側の端縁部近傍まで形成され、該ピストン収納部62Bに対して外側方向に窪む横溝部325Bとから構成されている。
この縦溝部325Aは、カバープレート取付部321の右下角部からハウジング11のネジ孔141Aにネジ15を取り付けるため貫通孔326よりも少し上側の位置まで、カバープレート307の厚さ寸法(例えば、約1.6mmの厚さである。)にほぼ等しい深さの断面略半円形状で外側方向に窪んでいる。これにより、縦溝部325Aは、ピストン収納部62Bの外側端縁部近傍に対向するように設けられている。
また、横溝部325Bは、上端縁部がカバープレート取付部321の上端縁部にほぼ沿うように、カバープレート307の厚さ寸法(例えば、約1.6mmの厚さである。)にほぼ等しい深さの断面略半円形状で外側方向に窪んでいる。また、横溝部325Bのブロック延出部309側の端縁部は、位置決め孔122と貫通孔323とのほぼ中間位置を通るように形成されている。
従って、図48に示すように、先ず、ベースプレート306とカバープレート307との間に、ベースブロック体305と、ピニオンギヤ体33と、シールプレート63が装着されたピストン64を収納したパイプシリンダ62等を挟持した状態で、ネジ310を各貫通孔323、311に挿通して、ベースプレート306のネジ孔316に締結する。これにより、ベースプレート取付部313とカバープレート取付部321とのガス発生部材61側の両角部が、ブロック延出部309を介して締結される。尚、ベースブロック体305には、第1実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1のベースブロック体66と同様に強制ロック機構53(図7参照)が収納されている。
その後、連結シャフト91及びカム側アーム92が装着されたプリテンショナユニット302を、ハウジングユニット5の各ネジ止め部13A、13B、14A、14Bに、各ネジ15及びストッパーネジ16によってネジ止めする。これにより、プリテンショナユニット302は、ハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部を構成する。
次に、プリテンショナユニット302をハウジングユニット5に取り付けた状態で、ガス発生部材61が作動した場合に、カバープレート取付部321がピストン収納部62Bの外側方向への膨出によって変形する変形量を有限要素法によって解析した一例について図50に基づいて説明する。尚、ベースプレート306の厚さは約2.0mm、カバープレート307の厚さは約1.6mm、ベースプレート補強溝318の深さは約2.0mm、カバープレート補強溝325の深さは約1.6mm、各プレート306、307の材質はスチール材とした。
図50に示すように、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝325の縦溝部325Aの下端部を中心とする略扇形の斜線部分328が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝325の縦溝部325Aの下端部の変形量が最大となり、外側方向へ約0.272mm変形した。
ここで、カバープレート取付部321にカバープレート補強溝325に替えて他の形状のカバープレート補強溝を形成した場合に、当該カバープレート取付部321のガス発生部材61の作動による変形量を有限要素法によって解析した一例について図51乃至図58に基づいて説明する。図51乃至図58は、カバープレート取付部321に他の形状のカバープレート補強溝を形成した場合に、ガス発生部材61の作動による当該カバープレート取付部321の変形状態の一例を示す説明図である。
尚、図51乃至図58に示す他の形状のカバープレート補強溝の深さ及び幅は、上記カバープレート補強溝325の深さ及び幅と同一とする。また、図51乃至図58に示す他の形状のカバープレート補強溝は、ピストン収納部62Bに対して外側方向に窪むように形成されている。
先ず、第1の例として、図51に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて正面視十字形のカバープレート補強溝331がプレス成型等により形成されている。このカバープレート補強溝331は、カバープレート補強溝325の縦溝部325Aとほぼ同形状の縦溝部331Aが、ピストン収納部62Bの左右幅方向の略中央部に対向するカバープレート取付部321の下端部からピストン収納部62Bの長手方向に沿って形成されている。
また、カバープレート補強溝331は、カバープレート補強溝325の横溝部325Bとほぼ同形状の横溝部331Bが、この縦溝部331Aの長手方向略中央部を左右方向へ直角に横切って、更に、カバープレート取付部321の外側端縁部まで形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝331の縦溝部331Aの下端部右端を中心とする略扇形の斜線部分332が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝331の縦溝部331Aの下端部近傍の変形量が最大となり、外側方向へ約0.333mm変形した。
次に、第2の例として、図52に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて正面視十字形のカバープレート補強溝341がプレス成型等により形成されている。このカバープレート補強溝341は、カバープレート補強溝325の縦溝部325Aとほぼ同形状の縦溝部341Aが、該縦溝部325Aとほぼ同じ位置に形成されている。
また、カバープレート補強溝325の横溝部325Bとほぼ同形状の横溝部341Bが、この縦溝部341Aの長手方向略中央部を左右方向へ直角に横切って、更に、カバープレート取付部321の外側端縁部まで形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝341の縦溝部341Aの下端部左端を中心とする略扇形の斜線部分342が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝341の縦溝部341Aの下端部近傍の変形量が最大となり、外側方向へ約0.318mm変形した。
次に、第3の例として、図53に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて左右に配置された一対の縦溝部351A、351Bから構成されるカバープレート補強溝351がプレス成型等により形成されている。このカバープレート補強溝351の各縦溝部351A、351Bは、カバープレート補強溝325の縦溝部325Aとほぼ同形状である。
また、右側の縦溝部351Aは、該縦溝部325Aとほぼ同じ位置、つまり、ピストン収納部62Bの外側端縁部近傍に対向するように該ピストン収納部62Bの長手方向に沿って形成されている。また、左側の縦溝部351Bは、ピストン収納部62Bのベースブロック体305側端縁部近傍に対向するように、カバープレート取付部321の下端縁部から該ピストン収納部62Bの長手方向に沿って形成されている。従って、各縦溝部351A、351Bは、ピストン収納部62Bの左右方向中心軸に対してほぼ対称になるように形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝351の縦溝部351Aの下端部左端を中心とする略扇形の斜線部分352が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝351の縦溝部351Aの下端部左端の変形量が最大となり、外側方向へ約0.286mm変形した。
次に、第4の例として、図54に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて正面視H字形のカバープレート補強溝361がプレス成型等により形成されている。このカバープレート補強溝361は、上記第3の例としてのカバープレート補強溝351の各縦溝部351A、351Bと同形状の各縦溝部361A、361Bが、ほぼ同じ位置に形成されると共に、横溝部361Cが縦溝部361Aの長手方向略中央部から略直角に縦溝部361Bまで形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝361の縦溝部361Aの下端部左端を中心とする略扇形の斜線部分362が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝361の縦溝部361Aの下端部左端の変形量が最大となり、外側方向へ約0.288mm変形した。
次に、第5の例として、図55に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて正面視略U字形のカバープレート補強溝371がプレス成型等により形成されている。このカバープレート補強溝371は、上記第3の例としてのカバープレート補強溝351の各縦溝部351A、351Bと同形状の各縦溝部371A、371Bが、ほぼ同じ位置に形成されると共に、横溝部371Cが縦溝部371Aの下端部近傍から略直角に縦溝部371Bまで形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝371の縦溝部371Aの下端部を中心とする略扇形の斜線部分372が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝371の縦溝部371Aの下端部の変形量が最大となり、外側方向へ約0.253mm変形した。
尚、第5の例としてのカバープレート補強溝371は、各縦溝部371A、371Bの間隔が狭く、且つ、横溝部371Cをカバープレート取付部321の下端縁部近傍に形成するため、プレス成型で製作することが難しいという問題がある。
次に、第6の例として、図56に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて正面視略L字形のカバープレート補強溝381がプレス成型等により形成されている。
このカバープレート補強溝381は、横溝部381Aが、貫通孔323の右側でピストン収納部62Bのベースブロック体305側端縁部近傍に対向する位置からカバープレート取付部321の外側端縁部まで、該ピストン収納部62Bの長手方向に対して略垂直な方向に沿って形成されている。また、カバープレート補強溝381は、縦溝部381Bが、横溝部381Aのピストン収納部62Bの左右幅方向の略中央部に対向する位置から、ピストン収納部62Bの長手方向に沿って貫通孔326よりも少し上側の位置まで形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝381の横溝部381Aの下端縁部中央位置近傍を中心とする略扇形の斜線部分382が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝331の横溝部381Aの下端縁部中央位置近傍の変形量が最大となり、外側方向へ約0.336mm変形した。
次に、第7の例として、図57に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて上下に配置された一対の横溝部391A、391Bから構成されるカバープレート補強溝391がプレス成型等により形成されている。
このカバープレート補強溝391の下側の横溝部391Aは、カバープレート補強溝381の横溝部381Aとほぼ同形状で、該横溝部381Aとほぼ同じ位置に形成されている。また、カバープレート補強溝391の上側の横溝部391Bは、貫通孔326よりも少し上側の位置に、ピストン収納部62Bの長手方向に対して略垂直な方向に沿って、該ピストン収納部62Bのベースブロック体305側端縁部近傍に対向する位置から該ピストン収納部62Bの外側端縁部近傍に対向する位置まで形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝391の横溝部391Aの下端縁部中央位置近傍を中心とする略扇形の斜線部分392が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝391の横溝部391Aの下端縁部中央位置近傍の変形量が最大となり、外側方向へ約0.339mm変形した。
次に、第8の例として、図58に示すように、カバープレート取付部321のピストン収納部62Bに収納されたピストン64の下端部に対向する部分には、カバープレート補強溝325に替えて左右に配置された左斜め上に傾斜する一対の斜め溝部401A、401Bから構成されるカバープレート補強溝401がプレス成型等により形成されている。
このカバープレート補強溝401の左側の斜め溝部401Aは、ピストン収納部62Bの左右幅方向の略中央部に対向するカバープレート取付部321の下端部から、該ピストン収納部62Bのベースブロック体305側端縁部近傍に対向するように左斜め上に傾斜している。また、斜め溝部401Aの上端部は、位置決め孔122と貫通孔323とのほぼ中間位置に対向している。
また、カバープレート補強溝401の右側の斜め溝部401Bは、ピストン収納部62Bの外側端縁部に対向する切欠部322の下端部から、ピストン収納部62Bの左右幅方向の略中央部に対向する位置まで、左側の斜め溝部401Aに対して平行に形成されている。
そして、ガス発生部材61が作動した場合には、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝401の斜め溝部401Aの下端部を中心とする略扇形の斜線部分402が外側方向へ膨らむように変形している。また、カバープレート取付部321の右下角部、つまり、カバープレート補強溝401の斜め溝部401Aの下端部の変形量が最大となり、外側方向へ約0.405mm変形した。
以上、詳細に説明したように、第2実施形態に係るシートベルト用リトラクタ301によれば、ベースプレート306とカバープレート307との間に、強制ロック機構53が収納されたベースブロック体305と、ピニオンギヤ体33と、シールプレート63が装着されたピストン64を収納したパイプシリンダ62等を挟持した状態で、ネジ310を各貫通孔323、311に挿通して、ベースプレート306のネジ孔316に締結することによって、プリテンショナユニット302を一体的に構成することが可能となる。
従って、プリテンショナユニット302の構造の簡素化を図ると共に、プリテンショナユニット302を予め組み立てた状態でハウジング11に取り付けることが可能となり、プリテンショナユニット302等のハウジング11への取り付け作業の効率化を図ることが可能となる。
また、ベースプレート補強溝318によってベースプレート306のピストン収納部62Bの下端部に対向する部分の曲げ強度を向上させると共に、正面視横T字形のカバープレート補強溝325によってカバープレート307のピストン収納部62Bの下端部に対向する部分の曲げ強度を向上させることができる。これにより、ベースプレート補強溝318とカバープレート補強溝325とによって、ガス発生部材61によって発生したガスの圧力によるピストン収納部62Bの下端部における膨出変形を両側面部から押さえて抑止することが可能となり、ガスの圧力によるピストン64の駆動効率の向上を図ることが可能となる。
また、ベースプレート補強溝318を設けることによって、ベースプレート306のピストン収納部62Bの下端部に対向する部分が、ガス発生部材61によって発生したガスの圧力によってハウジング11内へ膨出変形するのを抑止でき、当該ベースプレート306の薄型化及び軽量化を図ることが可能となる。また、カバープレート補強溝325を設けることによって、カバープレート307のピストン収納部62Bの下端部に対向する部分が、ガス発生部材61によって発生したガスの圧力によって外側方向へ曲がり変形するのを抑止でき、当該カバープレート307の薄型化及び軽量化を図ることが可能となる。
また、ベースプレート306のベースプレート取付部313とカバープレート307のカバープレート取付部321は、ベースブロック体305のブロック延出部309を挟んでネジ310によって締結される。これにより、カバープレート補強溝325とベースプレート補強溝318のブロック延出部309側端縁部分における外側方向への変形を確実に防止し、ガス発生部材61によって発生したガスの圧力によるピストン収納部62Bの下端部における膨出変形を効果的に抑止することが可能となる。
また、ベースプレート取付部313とカバプレート取付部321のピストン収納部62Bの下端部に対向する外側角部に、各切欠部315、322を形成しても、ベースプレート補強溝318とカバープレート補強溝325を形成することによって、ガス発生部材61によって発生したガスの圧力によるピストン収納部62Bの下端部における膨出変形を両側面部から押さえて抑止することが可能となり、ガスの圧力によるピストン64の駆動効率の向上を図ることが可能となる。
尚、本発明は前記第1実施形態及び第2実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、ストッパーネジ16に替えて、リベット等をカバープレート57とベースプレート65のパイプシリンダ62の各貫通孔114に対向する位置に形成される各貫通孔127、128に挿通して、カシメて締結するようにしてもよい。これにより、パイプシリンダ62及びカバープレート57を簡易な構成でベースプレート65に取り付けることができ、プリテンショナ機構17の構造の簡素化を図ることが可能となる。また、このピストン収納部62Bの開口側端部に挿通されたリベット等によって、車両衝突時等に発生したガスの圧力で押圧駆動されたピストン64の移動を停止させることが可能となり、プリテンショナ機構17の構造の更なる簡素化を図ることが可能となる。