以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[第1の実施形態]
(溶融金属用測定装置の全体構成)
初めに、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る溶融金属用測定装置の一例として、溶融金属中の成分分析を行う発光分光分析装置10の全体構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る発光分光分析装置10の全体構成を示す説明図である。
図1に示すように、発光分光分析装置10は、測定器11と、光学系13と、筒状部材100と、を主に備える。なお、以下の説明では、溶融金属として溶鋼M、溶融金属表面の浮遊物としてスラグSを例に挙げて説明する。
測定器11は、溶鋼鍋20に装入された表面にスラグS等の浮遊物を有する溶鋼Mからの発光(測定光L)に基づいて溶鋼M中の成分分析を行う。この測定器11としては、例えば、レーザ誘起蛍光分析法を用いる場合には、レーザの照射により誘起されて発生した溶鋼Mからの蛍光を検出し、この蛍光光量を測定する光量検出器が挙げられる。
光学系13は、溶鋼Mからの発光(測定光L)を受光して、受光した測定光Lを測定器11に導入する。本実施形態では、筒状部材100の上方(測定光Lの伝送方向に対して溶鋼Mと反対側)に設置されたミラー15に測定光Lを反射させ、測定器11に測定光Lを導入している。また、本実施形態では、光学系13は、測定部11と筒状部材100との接続部の役割も果たしている。
なお、後述するように、測定光Lは、筒状部材100の内部で反射されるが、ここでいう「測定光L(溶鋼Mからの発光)の伝送方向」とは、測定光Lが伝送される方向(図1の例では、ミラー15の方向である鉛直方向上向き)のことを意味する。
筒状部材100は、溶鋼Mからの発光(測定光L)を採取して、光学系13を介して測定器11に測定光Lを伝送する。この筒状部材100は、例えば直管状の形状をしており、先端部(図1の例では、鉛直方向下側の端部)が溶鋼M中に浸漬されるとともに、後端部(図1の例では、鉛直方向上側の端部)が、光学系13を介して測定器11に接続される。このように、筒状部材100の先端部は、スラグS等の浮遊物を避けて、スラグSの下方に位置する溶鋼M中に浸漬されるため、筒状部材100は、溶鋼Mの清浄な液面からの発光を採取することができ、溶鋼Mの成分分析の精度を向上させることができる。
また、筒状部材100は、筒本体110の内面側に測定光Lを反射させる反射面110aを有する。発光分光分析装置10においては、筒状部材100がこの反射面110aを有することにより、筒状部材100の内面で測定光Lを反射させて、従来の方法では周囲に発散していた測定光Lを集めることができる。従って、発光分光分析装置10によれば、測定光Lの採光率を向上させ、発光分光分析装置10による溶鋼Mの成分分析の精度をさらに向上させることができる。
このような反射面110aは、例えば、後述するように、鏡面加工が施されたステンレススチール(SUS)を用いて形成することができる。
なお、発光分光分析装置10を用いた溶鋼Mの成分分析の際は、筒本体110の内部に溶鋼Mに向かって(図1の例では、鉛直方向下向きに)、アルゴンや窒素等の非酸化性ガスを吹き込むことで、溶鋼Mが筒状部材100の内部に侵入しないようにして、筒状部材100の劣化を抑制している。また、このように非酸化性ガスを吹き込むことにより、筒状部材100の下端の開口部において、溶鋼Mからの発光を採取するための採光面を形成することができる。
(筒状部材100の構成)
次に、図2を参照しながら、本実施形態に係る筒状部材100の構成について詳細に説明する。なお、図2は、本実施形態に係る筒状部材100の構成を示す説明図である。
図2に示すように、筒状部材100は、送光管111と、内管113と外管115とによって形成される冷却管と、耐火物層117と、を主に有する。すなわち、筒状部材100は、送光管111と、内管113と、外管115とからなる三重管構造を有している。
送光管111は、内面側に反射面110aを有し、溶鋼Mからの発光を伝送する。この送光管111は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材100における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。従って、反射面110aも、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材100における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。
また、送光管111(または反射面110a)の溶鋼M側の端部と筒状部材100の溶鋼M側の端部との距離H(mm)と、筒状部材100の内径、すなわち、送光管111の内径D(mm)との比であるH/Dは、0<H/D≦10であることが好ましい。ここで、図3を参照しながら、上記H/Dの適正値の範囲について説明する。なお、図3は、本実施形態に係るH/Dの適正値を説明するための説明図である。
図3に示すように、反射面110aを有する送光管111は、溶鋼Mからの放射光LRを採取する。この際、放射光LRのうち、送光管111の内面である反射面110aに入射するのは、図2に示す広がり角θの範囲にある光である。一般に、溶融金属の成分分析で良好な精度の分析を行うためには、採光率を0.1%以上確保することが好ましいとされている。ここで、採光率は、Itotalを溶鋼Mの表面上の1点から発生する放射光LRの立体角(=2πステラジアン)とし、Iを放射光LRのうち送光管111の内面である反射面110aに入射する放射光LRの立体角(=2π(1−cosθ)ステラジアン)とすると、「採光率=I/Itotal」で定義される。すなわち、精度の良好な分析を行うためには、I/Itotal≧0.1であることが好ましい。このとき、cosθ=(H/D)/√((H/D)2+1/4)であることから、H/D≦10となる。
一方、H/Dの値は小さいほど好ましいが、H/D=0であると溶鋼Mと送光管111とが接触してしまうため、H/D>0とする。
続いて、図4を参照しながら、H/Dと測定精度との関係について説明する。図4は、本実施形態におけるSN比(dB)とH/Dとの関係の一例を示すグラフである。この例では、シグナル強度Isignalを送光管111による採光率が100%のときを1とし、H/Dの値を大きくすると採光率に応じて減少するものと仮定し、ノイズ強度InoiseをH/Dによらず10−6で一定と仮定して計算した。また、SN比は、10×log(Isignal/Inoise)の式により算出した。なお、SN比が高いほど成分分析における測定精度も高いものとなる。
その結果、図4に示すように、H/Dが大きくなるほど、SN比が低くなる、すなわち、測定精度が悪化するということがわかった。また、一般に、SN比が30以上であれば、十分な測定精度を有しているといわれているが、この例においても、H/Dが10以下では、SN比が30以上となっていた。
再び、図2を参照しながら、筒状部材100の構成についての説明を続ける。本実施形態に係る冷却管は、少なくとも送光管111内面の反射面110aを冷却する冷却手段の一例であり、上述のように、内管113と外管115とによって形成される。
内管113は、送光管111の外側に同軸状に設けられ、外管115は、内管113の外側に同軸状に設けられる。また、内管113と外管115とは、測定光Lの伝送方向に対して溶鋼M側の端部(本実施形態では、鉛直方向下端部)において連通している。そして、内管113の測定光Lの伝送方向に対して測定器11側の端部(本実施形態では、鉛直方向上端部)から冷却媒体が供給され、外管115の測定器11側の端部から冷却媒体が排出される。このように、冷却媒体が冷却管内を流れることにより、主に、送光管111内面の反射面110aが冷却される。なお、本実施形態において使用される冷却媒体としては、特に限定はされないが、例えば、空気、水蒸気、非酸化性ガス等の冷却ガス、冷却水等が挙げられる。
上述した送光管111、内管113及び外管115の材質としては、耐熱性等に優れるステンレススチールを使用することが好ましい。特に、送光管111は、内面に鏡面等の反射面110aを有するため、反射性や光沢性に優れたNi系(Niを多く含有する)ステンレススチール(例えば、SUS304、SUS316等)を使用することが好ましい。
耐火物層117は、送光管111及び冷却管(外管115)の外面の一部又は全部を被覆する。耐火物層117を構成する耐火物としては、通常の製鋼工程等で使用される耐火物を使用でき、例えば、マグネシアスピネル系キャスタブル材等を使用できる。この耐火物層117は、例えば、以下のようにして成形することができる。まず、セラミックス粉末と水とを混合してセラミックススラリーを調製する。次いで、金型の中央に送光管111、内管113及び外管115からなる部材を設置してから、上記のようにして調製したセラミックススラリーを流し込み、鋳込み成形を行う。さらに、脱型及び脱脂した後に焼成を行うことで、耐火物層117を成形することができる。
(用語の定義)
ここで、図5を参照しながら、以下の説明に使用する用語の定義について説明する。なお、図5は、本明細書における用語の定義を説明するための説明図である。
図5に示すように、断面積Siとは、送光管111の外面と内管113の内面とにより形成される冷却媒体の供給側流路の水平断面の断面積を意味し、断面積Soとは、内管113の外面と外管115の内面とにより形成される冷却媒体の排出側流路の水平断面の断面積を意味する。また、表面積Siniとは、送光管111の外面の表面積を意味し、表面積Sfinとは、送光管111の外面に後述する冷却フィンを設けた場合における送光管111が外面の表面積(冷却フィンの表面積も含む)を意味する。また、耐火物外径r1とは、送光管111の内面から耐火物層117の外面までの水平方向の距離を意味し、耐火物内径r2とは、送光管111の内面から(送光管111及び冷却管が形成されている部位における)耐火物層117の内面までの水平方向の距離を意味する。
なお、以下の説明における熱伝達率hiは、冷却媒体の供給側流路における熱伝達率を意味し、熱伝達率hoは、冷却媒体の排出側流路における熱伝達率を意味する。また、本実施形態における熱伝達率hは、長さlの領域について、管の内面又は外面の半径をrとし、熱通過量をQ、管の表面温度をTw、冷却ガスの温度をTgとしたときに、下記式で表されるものとする。
h=Q/2πrl・|Tw−Tg|
また、このようにして定めた熱伝達率は、例えば、熱電対により管の表面温度と冷却ガス温度を測定し、熱流束計により管の半径方向の熱通過量を測定することで、求めることができる。
具体的に、本実施形態では、まず、熱伝達率hiについては、管111の長さlの領域について、管外面の半径をrとし、管外面の温度をTw、接する冷却ガスの温度をTg、管111内面で測定した熱通過量がQで定常状態となったとき、熱伝達率hiは、下記式で表される。
hi=Q/2πrl・(Tg−Tw)
また、熱伝達率hoについては、管115の長さlの領域について、管内面の半径をrとし、管内面の温度をTw’、接する冷却ガスの温度をTg’とし、管115の外面で測定した熱通過量がQ’で定常状態となったとき、熱伝達率hoは、下記式で表される。
ho=Q’/2πrl・(Tw’−Tg’)
次に、上述のようにして定義したパラメータを用いて、本発明の第2〜第6の実施形態に係る溶融金属用測定装置の構成等について説明する。本発明の第2〜第6の実施形態に係る溶融金属用測定装置は、冷却手段として送光管111の外側に設けられた冷却管を有するものである点では、上述した第1の実施形態の場合と同様であるが、送光管内部の反射面の冷却効率を高め、耐火物層の外面の冷却効率を低下させるための構成を有する点で、第1の実施形態の場合とは異なる。このような構成により、本発明の第2〜第6の実施形態に係る溶融金属用測定装置においては、溶融金属からの受熱による反射面における反射率の低下を抑制できるとともに、筒状部材外面への地金の成長を抑制できる。そして、これにより、溶融金属用測定装置の操業性を改善することが可能となる。
なお、本発明の第2〜第6の実施形態に係る溶融金属用測定装置の構成は、筒状部材の内部の構成の一部が第1の実施形態の場合と異なるため、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略する場合がある。
[第2の実施形態]
まず、図6を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る筒状部材200の構成について詳細に説明する。なお、図6は、本実施形態に係る筒状部材200の構成を示す説明図である。
図6に示すように、筒状部材200は、送光管211と、内管213と外管215とによって形成される冷却管と、耐火物層217と、冷却フィン219と、を主に有する。すなわち、筒状部材200は、送光管211と、内管213と、外管215とからなる三重管構造を有している。
送光管211は、内面側に反射面210aを有し、溶鋼Mからの発光を伝送する。この送光管211は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材200における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている点は、第1の実施形態の場合と同様である。従って、反射面210aも、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材200における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。
本実施形態に係る冷却管は、少なくとも送光管211内面の反射面210aを冷却する冷却手段の一例であり、上述のように、内管213と外管215とによって形成される。
内管213は、送光管211の外側に同軸状に設けられ、外管215は、内管213の外側に同軸状に設けられる。また、内管213と外管215とは、測定光Lの伝送方向に対して溶鋼M側の端部(本実施形態では、鉛直方向下端部)において連通している。そして、内管213の測定光Lの伝送方向に対して測定器11側の端部(本実施形態では、鉛直方向上端部)から冷却媒体が供給され、外管215の測定器11側の端部から冷却媒体が排出される。このように、冷却媒体が冷却管内を流れることにより、主に、送光管211内面の反射面210aが冷却される。なお、本実施形態において使用される冷却媒体の種類や送光管211、内管213及び外管215の材質は、第1の実施形態の場合と同様である。
耐火物層217は、送光管211及び冷却管(外管215)の外面の一部又は全部を被覆する。耐火物層217を構成する耐火物の種類や成形方法は、第1の実施形態の場合と同様である。
冷却フィン219は、送光管211の外面と内管213の内面とにより形成される冷却媒体の供給側流路210bに設けられている。具体的には、本実施形態では、冷却フィン219は、送光管211の外面にその長手方向に沿って複数設けられている。一方、内管213の外面と外管215の内面とにより形成される冷却媒体の排出側流路210cには、冷却フィンは設けられていない。
このように、本実施形態に係る溶融金属用測定装置においては、溶鋼Mからの発光の反射面210aを有する送光管211の外面に冷却フィン219を設けることにより、冷却媒体の排出側流路210cと比べて、冷却媒体の供給側流路210bの熱伝達率を高くすることができる。従って、本実施形態に係る溶融金属用測定装置によれば、送光管211の冷却効率を高め、耐火物層217の冷却効率を低下させることができるので、溶鋼Mからの受熱による反射面210aにおける反射率の低下を抑制できるとともに、耐火物層217の外面(すなわち、筒状部材200の外面)への地金の成長を抑制できる。
ここで、図7を参照しながら、冷却フィン219を設けることによる反射率低下抑制効果及び地金成長抑制効果について説明する。なお、図7は、冷却フィン219を設けたことによる送光管211の外面の表面積の増加率Sfin/Siniと、排出側流路210cにおける熱伝達率hoと供給側流路210bにおける熱伝達率hfinとの熱伝達率比ho/hfinとの関係の一例を示すグラフである。
図7には、反射面210aを有する送光管211の内径を8mm、外径を12mmとし、内管213の内径を16mm、外径を20mmとし、外管215の内径を24mmとし、冷却媒体(冷却ガス)の流量を1.0Nm3/minとし、Siniを一定のまま、Sfinを増加させた場合、すなわち、冷却フィン219の表面積を増加させた場合の例を示している。
図7に示すように、表面積の増加率Sfin/Siniが大きくなると、熱伝達率比ho/hfinが顕著に減少した。このことから、冷却フィン219の表面積を大きくすると、供給側流路210bにおける冷却効率を高めるとともに、排出側流路210cにおける冷却効率を低下させる効果が高まるということがわかる。
[第3の実施形態]
次に、図8を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る筒状部材300の構成について詳細に説明する。なお、図8は、本実施形態に係る筒状部材300の構成を示す説明図である。
図8に示すように、筒状部材300は、送光管311と、内管313と外管315とによって形成される冷却管と、耐火物層317と、を主に有する。すなわち、筒状部材300は、送光管311と、内管313と、外管315とからなる三重管構造を有している。
送光管311は、内面側に反射面310aを有し、溶鋼Mからの発光を伝送する。この送光管311は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材300における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている点は、第1の実施形態の場合と同様である。従って、反射面310aも、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材300における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。
本実施形態に係る冷却管は、少なくとも送光管311内面の反射面310aを冷却する冷却手段の一例であり、上述のように、内管313と外管315とによって形成される。
内管313は、送光管311の外側に同軸状に設けられ、外管315は、内管313の外側に同軸状に設けられる。また、内管313と外管315とは、測定光Lの伝送方向に対して溶鋼M側の端部(本実施形態では、鉛直方向下端部)において連通している。そして、内管313の測定光Lの伝送方向に対して測定器11側の端部(本実施形態では、鉛直方向上端部)から冷却媒体が供給され、外管315の測定器11側の端部から冷却媒体が排出される。このように、冷却媒体が冷却管内を流れることにより、主に、送光管311内面の反射面310aが冷却される。なお、本実施形態において使用される冷却媒体の種類や送光管311、内管313及び外管315の材質は、第1の実施形態の場合と同様である。
耐火物層317は、送光管311及び冷却管(外管315)の外面の一部又は全部を被覆する。耐火物層317を構成する耐火物の種類や成形方法は、第1の実施形態の場合と同様である。
本実施形態においては、内管313の外面と外管315の内面とにより形成される冷却媒体の排出側流路310cの断面積Soは、送光管311の外面と内管313の内面とにより形成される冷却媒体の供給側流路310bの断面積Siよりも大きくなるように、冷却管が設けられている。
このように、本実施形態に係る溶融金属用測定装置においては、排出側流路310cの断面積Soを供給側流路310bの断面積Siよりも大きくすることにより、冷却媒体の排出側流路310cの熱伝達率を抑制することができる。従って、本実施形態に係る溶融金属用測定装置によれば、送光管311の冷却効率を高い状態に維持したまま、耐火物層317の冷却効率を低下させることができるので、溶鋼Mからの受熱による反射面310aにおける反射率の低下を抑制できるとともに、耐火物層317の外面(すなわち、筒状部材300の外面)への地金の成長を抑制できる。
ここで、図9を参照しながら、排出側流路310cの断面積Soを供給側流路310bの断面積Siよりも大きくすることによる反射率低下抑制効果及び地金成長抑制効果について説明する。なお、図9は、排出側流路310cの断面積Soと供給側流路310bの断面積Siとの流路断面積比So/Siと、排出側流路310cにおける熱伝達率hoと供給側流路310bにおける熱伝達率hiとの熱伝達率比ho/hiとの関係の一例を示すグラフである。
図9には、反射面310aを有する送光管311の内径を8mm、外径を12mmとし、内管313の内径を16mm、外径を20mmとし、冷却媒体(冷却ガス)の流量を1.0Nm3/minとし、外管315の内径を変化させた場合の例を示している。
図9に示すように、流路断面積比So/Siが大きくなると、熱伝達率比ho/hiが顕著に減少した。このことから、排出側流路310cの断面積Soを供給側流路310bの断面積Siよりも大きくすると、供給側流路310bにおける冷却効率を高いまま維持できるとともに、排出側流路310cにおける冷却効率を低下させる効果が高まるということがわかる。
[第4の実施形態]
次に、図10を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係る筒状部材400の構成について詳細に説明する。なお、図10は、本実施形態に係る筒状部材400の構成を示す説明図である。
図10に示すように、筒状部材400は、送光管411と、内管413と外管415とによって形成される冷却管と、耐火物層417と、を主に有する。すなわち、筒状部材400は、送光管411と、内管413と、外管415とからなる三重管構造を有している。
送光管411は、内面側に反射面410aを有し、溶鋼Mからの発光を伝送する。この送光管411は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材400における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている点は、第1の実施形態の場合と同様である。従って、反射面410aも、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材400における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。
本実施形態に係る冷却管は、少なくとも送光管411内面の反射面410aを冷却する冷却手段の一例であり、上述のように、内管413と外管415とによって形成される。
内管413は、送光管411の外側に同軸状に設けられ、外管415は、内管413の外側に同軸状に設けられる。また、内管413と外管415とは、測定光Lの伝送方向に対して溶鋼M側の端部(本実施形態では、鉛直方向下端部)において連通している。そして、内管413の測定光Lの伝送方向に対して測定器11側の端部(本実施形態では、鉛直方向上端部)から冷却媒体が供給され、外管415の測定器11側の端部から冷却媒体が排出される。このように、冷却媒体が冷却管内を流れることにより、主に、送光管411内面の反射面410aが冷却される。なお、本実施形態において使用される冷却媒体の種類や送光管411、内管413及び外管415の材質は、第1の実施形態の場合と同様である。
耐火物層417は、送光管411及び冷却管(外管415)の外面の一部又は全部を被覆する。耐火物層417を構成する耐火物の種類や成形方法は、第1の実施形態の場合と同様である。
本実施形態においては、外管415は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して、測定部11側の径が溶鋼M側の径よりも大きなテーパ型の形状を有し、かつ、筒状部材400の溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して測定部11側の端部において、内管413の外面と外管415の内面とにより形成される冷却媒体の排出側流路410cの断面積Soは、送光管411の外面と内管413の内面とにより形成される冷却媒体の供給側流路410bの断面積Siよりも大きくなるように、冷却管が設けられている。なお、図10では、耐火物層417の形状が、外管415の形状に合わせてテーパ型に描かれているが、耐火物層417の形状は、必ずしもテーパ型である必要はない。
このように、本実施形態に係る溶融金属用測定装置においては、外管415の形状をテーパ型にすることで、上述した第3の実施形態の場合と同様に、排出側流路410cの断面積Soを供給側流路410bの断面積Siよりも部分的に大きくすることができ、これにより、冷却媒体の排出側流路410cの熱伝達率を抑制することができる。従って、本実施形態に係る溶融金属用測定装置によれば、送光管411の冷却効率を高い状態に維持したまま、耐火物層417の冷却効率を低下させることができるので、溶鋼Mからの受熱による反射面410aにおける反射率の低下を抑制できるとともに、耐火物層417の外面(すなわち、筒状部材400の外面)への地金の成長を抑制できる。
[第5の実施形態]
次に、図11を参照しながら、本発明の第5の実施形態に係る筒状部材500の構成について詳細に説明する。なお、図11は、本実施形態に係る筒状部材500の構成を示す説明図である。
図11に示すように、筒状部材500は、送光管511と、内管513と外管515とによって形成される冷却管と、耐火物層517と、を主に有する。すなわち、筒状部材500は、送光管511と、内管513と、外管515とからなる三重管構造を有している。
送光管511は、内面側に反射面510aを有し、溶鋼Mからの発光を伝送する。この送光管511は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材500における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている点は、第1の実施形態の場合と同様である。従って、反射面510aも、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材500における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。
本実施形態に係る冷却管は、少なくとも送光管511内面の反射面510aを冷却する冷却手段の一例であり、上述のように、内管513と外管515とによって形成される。
内管513は、送光管511の外側に同軸状に設けられ、外管515は、内管513の外側に同軸状に設けられる。また、内管513と外管515とは、測定光Lの伝送方向に対して溶鋼M側の端部(本実施形態では、鉛直方向下端部)において連通している。そして、内管513の測定光Lの伝送方向に対して測定器11側の端部(本実施形態では、鉛直方向上端部)から冷却媒体が供給され、外管515の測定器11側の端部から冷却媒体が排出される。このように、冷却媒体が冷却管内を流れることにより、主に、送光管511内面の反射面510aが冷却される。なお、本実施形態において使用される冷却媒体の種類や送光管511、内管513及び外管515の材質は、第1の実施形態の場合と同様である。
耐火物層517は、送光管511及び冷却管(外管515)の外面の一部又は全部を被覆する。耐火物層517を構成する耐火物の種類は、第1の実施形態の場合と同様である。
本実施形態においては、耐火物層517の所望の内面温度及び外面温度に応じて、耐火物の物性が適正化される。より具体的には、例えば、耐火物層517の所望の内面温度及び外面温度に応じて、耐火物層517の熱伝導率λ、耐火物層517の外径r1及び内径r2が決定される。
ここで、耐火物層517の所望の内面温度としては、例えば、耐火物層517の内部の送光管511、内管513及び外管515の材質(例えば、SUS)を熱による劣化から保護する(特に、送光管511内面側の反射面510aの鏡面状態を維持できる)温度などが挙げられる。また、耐火物層517の所望の外面温度としては、例えば、耐火物層517の外面における地金の成長を抑制できる程度の温度などが挙げられる。
また、耐火物層517の熱伝導率λの調整は、耐火物層517における気孔率を制御することにより行うことができる。このように、気孔率を制御する方法としては、例えば、以下の2通りの方法がある。
第1に、セラミックス粉末と水とを混合して調製したセラミックススラリーに起泡剤を加えて攪拌することにより、スラリー中に気泡を形成させて、耐火物層517の熱伝導率を低下させる方法である。この場合の起泡剤は、気泡を作ることができるものであれば特に限定されず、起泡剤、界面活性剤などが含まれる。より具体的には、本実施形態で使用する起泡剤としては、タンパク質系起泡剤、卵白、アルキルベンゼンスルホン酸塩や高級アルキルアミノ酸等の界面活性剤などが例示できる。この第1の例の場合、起泡剤の添加量を多くしたり、気泡を多く作ることができる起泡剤を選択したりすることにより、耐火物層517の熱伝導率を低下させることができる。
第2に、上記セラミックススラリーに粒状の有機系物質を混入することにより、焼成時に上記有機系物質が分解されることを利用して、気泡を形成させて、耐火物層517の熱伝導率を低下させる方法である。この場合の粒状の有機系物質としては、発泡スチロールやプラスチック製ビーズなどが例示できる。この第2の例の場合、有機系物質の添加量を多くすることにより、耐火物層517の熱伝導率を低下させることができる。
このようにして調整した耐火物層の熱伝導率λは、例えば、熱電対により耐火物の表面温度を測定し、熱流束計により熱通過量を測定することで、求めることができる。具体的に、本実施形態では、耐火物層の熱伝導率λは、耐火物層の内径をr1、外径をr2、長さlの領域について、内側の温度がT1、外側の温度がT2であったとき、測定される熱通過量がQであったとすると、下記式で表される。
λ=Q・ln(r2/r1)/(2πl・(T1−T2))
また、本実施形態における気孔率は、耐火物施工部分の外形容積に対する、気孔(開放気孔および密閉気孔)容積の割合を意味する。気孔率Pは、JIS R2205(「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」)に基づき、真比重Dtおよびかさ比重Dbを測定し、下記式により求めることができる。
P=1−Db/Dt
このように、本実施形態に係る溶融金属用測定装置においては、耐火物層517の物性や耐火物層517の形状や大きさを最適化することにより、送光管511、内管513及び外管515の温度上昇を抑制することができる。従って、本実施形態に係る溶融金属用測定装置によれば、送光管511の冷却効率の低下を防止するとともに、耐火物層517の冷却効率を低い状態で維持できるので、溶鋼Mからの受熱による反射面510aにおける反射率の低下を抑制できるとともに、耐火物層517の外面(すなわち、筒状部材500の外面)への地金の成長を抑制できる。
ここで、図12を参照しながら、耐火物層517の物性や耐火物層517の形状や大きさを最適化することによる反射率低下抑制効果及び地金成長抑制効果について説明する。なお、図12は、耐火物層517における熱伝達率の指標として用いたλ/ln(r1/r2)(W/m・k)と、耐火物層517の内面温度(℃)との関係の一例を示すグラフである。なお、耐火物層517における熱伝達率の指標としてλ/ln(r1/r2)を用いたのは、以下の理由による。すなわち、耐火物層517の内面の温度をT2、外面の温度をT1、耐火物層517中の熱通過量をQとすると、長さlの領域について、下記式(1)の関係が成り立つ。この式(1)によれば、λ/ln(r1/r2)によって耐火物層517の内面の温度T2が決まるため、λ/ln(r1/r2)を耐火物層517における熱伝達率の指標とした。
T2=T1−Q/(2πl・λ/ln(r1/r2)) ・・・(1)
図12には、内管513の外径を20mmとし、外管515の内径を24mm、外径を28mm(一定)とし、外管515の内面温度を25℃とし、耐火物層517の外面温度を1600℃とし、耐火物層517の熱伝導率λ及び耐火物層517の内径r2を変化させた場合の例を示している。
図12に示すように、耐火物層517の熱伝達率λ/ln(r1/r2)が高くなると、耐火物層517の内面温度も高くなった。このことから、耐火物層517の内面温度を低くして、送光管511及び冷却管の温度を低くしたい場合には、耐火物層517の熱伝達率を低くする(例えば、耐火物層517の気孔率を大きくして熱伝導率λを小さくする)ことが必要であることがわかる。この場合、送光管511の冷却効率の低下を防止するとともに、耐火物層517の冷却効率を低い状態で維持できる。
[第6の実施形態]
次に、図13を参照しながら、本発明の第6の実施形態に係る筒状部材600の構成について詳細に説明する。なお、図13は、本実施形態に係る筒状部材600の構成を示す説明図である。
図13に示すように、筒状部材600は、送光管611と、内管613と外管615とによって形成される冷却管と、耐火物層617と、を主に有する。すなわち、筒状部材600は、送光管611と、内管613と、外管615とからなる三重管構造を有している。
送光管611は、内面側に反射面610aを有し、溶鋼Mからの発光を伝送する。この送光管611は、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材600における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている点は、第1の実施形態の場合と同様である。従って、反射面610aも、溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部が、筒状部材600における溶鋼Mからの発光の伝送方向に対して溶鋼M側の端部から距離Hだけ離隔して設けられている。
本実施形態に係る冷却管は、少なくとも送光管611内面の反射面610aを冷却する冷却手段の一例であり、上述のように、内管613と外管615とによって形成される。
内管613は、送光管611の外側に同軸状に設けられ、外管615は、内管613の外側に同軸状に設けられる。また、内管613と外管615とは、測定光Lの伝送方向に対して溶鋼M側の端部(本実施形態では、鉛直方向下端部)において連通している。そして、内管613の測定光Lの伝送方向に対して測定器11側の端部(本実施形態では、鉛直方向上端部)から冷却媒体が供給され、外管615の測定器11側の端部から冷却媒体が排出される。このように、冷却媒体が冷却管内を流れることにより、主に、送光管611内面の反射面610aが冷却される。なお、本実施形態において使用される冷却媒体の種類や送光管611、内管613及び外管615の材質は、第1の実施形態の場合と同様である。
耐火物層617は、送光管611及び冷却管(外管615)の外面の一部又は全部を被覆する。耐火物層617を構成する耐火物の種類は、第1の実施形態の場合と同様である。
本実施形態においては、耐火物層617は、その内部に空隙を有する。図13に示した例では、耐火物層617は、上記空隙としてスリット618を有している。このようなスリット618は、例えば、次のようにして形成することができる。すなわち、線状またはネット状の有機系物質を外管615の周囲に巻き付けた上に耐火物層617を施工することで、耐火物層617の焼成時に上記有機系物質が分解されるため、有機系物質が巻き付けられていた部分にスリット618を形成することができる。この場合の有機系物質としては、プラスチックや紙などが例示できる。
また、本実施形態の変形例として、筒状部材600のうち溶鋼Mに浸漬される部分において、外管615の周囲にセラミックフェルトを巻き付けてからキャスタブルなどによる耐火物層を形成することにより、セラミックフェルトには空隙部が含まれることを利用して、耐火物層617の内部に空隙を形成することができる。
このように、本実施形態に係る溶融金属用測定装置においては、耐火物層617の内部にスリット618等の空隙を設けることにより、上記第5の実施形態において耐火物層517の気孔率を高めた場合と同様の理由で、耐火物層617の熱伝達率を低下させることができる。また、上記変形例の場合には、外管615の周囲に巻き付けるセラミックフェルトの量を多くしたりすることにより、耐火物層617の熱伝導率を低下させることができる。従って、本実施形態に係る溶融金属用測定装置によれば、送光管611の冷却効率の低下を防止するとともに、耐火物層617の冷却効率を低い状態で維持できるので、溶鋼Mからの受熱による反射面610aにおける反射率の低下を抑制できるとともに、耐火物層617の外面(すなわち、筒状部材600の外面)への地金の成長を抑制できる。
ここで、図14を参照しながら、耐火物層617の内部に空隙を設けることによる反射率低下抑制効果及び地金成長抑制効果について説明する。なお、図14は、耐火物層617の空隙率φと、耐火物層617に空隙を設けた場合の熱伝達率Kφと、空隙を設けなかった場合の熱伝達率K0との熱伝達率比Kφ/K0との関係の一例を示すグラフである。
図14には、耐火物層617の内径r2=28mm、外径r1=128mmとし、径が28mm〜78mmとなる耐火物層617中の領域に空隙率φとなる空隙が有るとした場合の熱伝達率Kφと、φ=0のときの熱伝達率K0とを比較した場合の例を示している。なお、空隙の有る領域では熱伝達率が(1−φ)倍となるものとして計算した。なお、本実施形態における空隙率φとは、耐火物層617中で、径がr1〜r2となる領域に空隙を設けたとしたとき、この領域の外形容積に対する空隙部の容積の割合を意味する。この空隙率φは、空隙を設けた領域の外形容積をV、空隙部分の容積をVsとすると、下記式により求めることができる。
φ=Vs/V
図14に示すように、空隙率φが高くなると、熱伝達率比Kφ/K0が減少した。このことから、耐火物層617の空隙率φを高くすると、空隙を設けたことによる熱伝達率の低下効果が大きくなることがわかる。
なお、以上説明した本発明の第2〜第6の実施形態に係る溶融金属用測定装置の構成のうち、少なくともいずれか1種を採用することにより、溶融金属からの受熱による反射面における反射率の低下を抑制できるとともに、筒状部材外面への地金の成長を抑制できる、という効果を得ることはできる。しかし、以上説明した本発明の第2〜第6の実施形態に係る溶融金属用測定装置の構成のうちのいずれか2種以上を組み合わせることにより、上記効果をより高めることが可能となる。特に、上述した第2の実施形態と第3の実施液体と第5の実施形態を組み合わせた溶融金属用測定装置は、上記溶融金属からの受熱による反射面における反射率の低下を抑制できるとともに、筒状部材外面への地金の成長を抑制できる、という効果が最も優れている。
次に、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例は、溶融金属の測定例として溶鋼中の炭素濃度の分析を行った例である。具体的には、上述した本発明による筒状部材を使用して、誘導溶解炉で溶融させた溶鋼中の炭素濃度をレーザ誘起蛍光分析法により分析した。
本実施例では、レーザ誘起蛍光分析法に用いるアブレーションレーザとして、QスイッチパルスNd:YAGレーザを、選択励起レーザとして、チタンサファイアレーザを用いた。選択励起レーザの波長は247.85nmとし、波長193.09nmのレーザ誘起蛍光光量を光量検出器で測定した。光量検出器としては、光電子増倍管を用いた。また、溶鋼表面で発生したレーザ誘起蛍光は、筒状部材の上方に設けたミラーにより反射させ、光量検出器に導入した。
ここで、実施例1において使用した筒状部材1100を図15に示す。筒状部材1100は、ステンレススチール(SUS316)製管で形成された送光管1111、内管1113及び外管1115と、耐火物層1117とから構成される。送光管1111は、外径が13.8mm、厚みが1.65mmであり、内面側に、電解研磨仕上げにより反射面を形成した。また、内管1113として、外径42.7mmで、厚み1.65mmのステンレススチール製管を、外管1115として、外径76.3mmで、厚み3.0mmのステンレススチール製管をそれぞれ使用した。耐火物層1117として、マグネシアスピネル系キャスタブル材を使用し、耐火物層1117を成形する際に、発泡剤としてタンパク質系発泡剤を使用した。なお、耐火物層1117の厚みは150mm、気孔率は70%であった。また、耐火物層1117の下端から送光管1111の下端までの距離を50.0mmとした。このとき、冷却ガスの供給側流路1110bの断面積Siと排出側流路1110cの断面積Soとの比So/Siは、2.3となる。また、耐火物層1117の熱伝達率の指標λ/ln(r1/r2)は0.3となる。また、本実施例で耐火物として使用したマグネシアスピネル系キャスタブル材の熱伝導率は、MgO84%、気孔率17.5%、1000℃で2.4W/m・K(AGCセラミックスHP)であった。
分析条件としては、溶鋼が筒状部材1100の開口部から流入しないように、送光管1111の内部にアルゴンガスを2.0NL/minで導入しながら、測定用の筒状部材1100の先端から深さ50mmまで浸漬した。このとき、筒状部材1100の先端は、溶鋼表面のスラグの下方に位置していた。また、冷却ガスとして空気を7.5Nm3/minで導入した。なお、溶鋼温度は1650℃であった。
このような条件で溶鋼中の炭素濃度の分析を行った結果を図17に示す。図17の縦軸は、レーザ誘起蛍光発光光量(mV)を示し、横軸は炭素濃度(ppm)を示している。また、本実施例による分析結果を「◆」で示した。溶鋼中の炭素濃度は、燃焼赤外線吸収法により測定した。
図17に示すように、レーザ誘起蛍光光量(mV)と炭素濃度(ppm)とは、ほぼ直線状の相関を示し、本実施例の筒状部材1100を用いることで、レーザ誘起蛍光分析法による炭素濃度の精度が高い分析が可能であることが確認された。
なお、炭素濃度の分析中における冷却ガスの排出側温度は520℃程度であり、筒状部材1100に変形は見られず、問題なく分析に使用できた。また、分析終了後、筒状部材1100の外表面に地金の付着は見られなかった。
(実施例2)
本実施例においても、実施例1と同様に、溶融金属の測定例として溶鋼中の炭素濃度の分析を行った。
本実施例において使用した筒状部材1200を図16に示す。筒状部材1200は、ステンレススチール(SUS304)製管で形成された送光管1211、内管1213及び外管1215と、耐火物層1217とから構成される。送光管1211は、外径が13.8mm、厚みが1.65mmであり、内面側に電解研磨仕上げにより反射面を形成し、外面に冷却フィンとして高さ15.0mm、厚み1.0mmのステンレススチール製の板を12枚取り付けた。また、外管1215の外周に線径2.0mmのポリプロピレン製線を3.0mmピッチで巻きつけた上で、耐火物層1217を施工した。その他の設計条件は、実施例1と同様である。このとき、冷却フィンによる表面積増加率Sfin/Siniは8.2であり、冷却ガスの供給側流路1210bの断面積Siと排出側流路1210cの断面積Soとの比So/Siは2.3となる。また、耐火物層1217の熱伝達率の指標λ/ln(r1/r2)は0.25となる。
溶鋼が筒状部材1200の開口部から流入しないように、送光管1211の内部にアルゴンガスを2.0NL/minで導入しながら、測定用の筒状部材1200の先端から深さ50mmまで浸漬した。このとき、筒状部材1200の先端は、溶鋼表面のスラグの下方に位置していた。また、冷却ガスとして空気を7.5Nm3/minで導入した。なお、溶鋼温度は1650℃であった。
このような条件でレーザ誘起蛍光分析法による溶鋼中の炭素濃度の分析を行った結果、レーザ誘起蛍光光量(mV)と炭素濃度(ppm)とは、実施例1と同様に、ほぼ直線状の相関を示し、本実施例の筒状部材1200を用いることで、レーザ誘起蛍光分析法による炭素濃度の精度が高い分析が可能であることが確認された。
なお、炭素濃度の分析中における冷却ガスの排出側温度は270℃程度であり、筒状部材1200に変形は見られず、問題なく分析に使用できた。また、分析終了後、筒状部材1200の外表面に地金の付着は見られなかった。
参考までに、ステンレス鋼の高温強度としては、SUS304、SUS316ともに常温で引張強さ60kg/mm2程度であり、引張強さが常温の75%となる温度まで使用可能とすると、SUS304で490℃、SUS316で600℃程度である。
(比較例1)
比較例1として、実施例1で送光管を酸洗仕上げのステンレススチール製管で作成した。その他の設計条件、分析条件については実施例1と同様である。
このような条件で溶鋼中の炭素濃度の分析を行った結果を図17に示す。本比較例による分析結果を「△」で示した。
図17に示すように、本比較例の筒状部材を使用した場合には、実施例1の筒状部材を使用した場合と比べて、検出されるレーザ誘起蛍光光量が少なく、炭素濃度との相関が見られなかった。よって、本比較例における筒状部材を使用した場合には、溶鋼中の炭素濃度の分析の精度が低く、溶鋼中の炭素の濃度の分析には使用できないことがわかった。
(実施例3)
本実施例は、溶融金属の測定例として溶鋼温度の測定を行った例である。具体的には、上述した本発明による筒状部材を使用して、誘導溶解炉で溶融させた溶鋼の温度を、放射測温により測定した。
本実施例では、放射測温に用いる測定器として、放射温度計を使用した。溶鋼表面からの輻射光は、筒状部材上端に設けたミラーにより反射し、放射温度計に導入した。ここで、実施例3において使用した筒状部材は、実施例1と同様である。
分析条件としては、溶鋼が筒状部材1100の開口部から流入しないように、送光管1111の内部にアルゴンガスを2.0NL/minで導入しながら、測定用の筒状部材1100の先端から深さ50mmまで浸漬した。このとき、筒状部材1100の先端は、溶鋼表面のスラグの下方に位置していた。また、冷却ガスとして空気を7.5Nm3/minで導入した。このような条件で溶鋼の測温を行った結果を図18に示す。
図18に示すように、測定された輻射光光量と、従来法である消耗型浸漬熱電対による測定温度とは良い相関を示し、本実施例による筒状部材を用いることで、放射測温による連続的かつ精度の良い温度測定が可能であることが確認された。
なお、溶鋼温度の測定中における冷却ガスの排出側温度は520℃程度であり、筒状部材1100に変形は見られず、問題なく分析に使用できた。また、分析終了後、筒状部材1100の外表面に地金の付着は見られなかった。
(実施例4)
本実施例においても、実施例3と同様に、溶融金属の測定例として溶鋼温度の測定を行った。
本実施例においては、放射測温に用いる測定器および輻射光の導入法は、実施例3と同様であり、使用した筒状部材は、実施例2と同様である。
分析条件としては、溶鋼が筒状部材1200の開口部から流入しないように、送光管1211の内部にアルゴンガスを2.0NL/minで導入しながら、測定用の筒状部材1200の先端から深さ50mmまで浸漬した。このとき、筒状部材1200の先端は、溶鋼表面のスラグの下方に位置していた。また、冷却ガスとして空気を7.5Nm3/minで導入した。
このような条件で溶鋼の測温を行った結果、測定された輻射光光量と従来法である消耗型浸漬熱電対による測定温度とは、図18と同様に、良い相関を示し、本実施例による筒状部材を用いることで、放射測温による連続的かつ精度の良い温度測定が可能であることが確認された。
なお、溶鋼温度の測定中における冷却ガスの排出側温度は270℃程度であり、筒状部材1200に変形は見られず、問題なく分析に使用できた。また、分析終了後、筒状部材1200の外表面に地金の付着は見られなかった。
(比較例2)
比較例2として、送光管を、比較例1と同様に酸洗仕上げのステンレススチール製管で作成したものを用いた。その他の設計条件、分析条件については実施例3と同様である。
本比較例の筒状部材を使用した場合には、実施例3の筒状部材を使用した場合と比べて、検出される輻射光強度が小さいため、ノイズによる影響が無視できず、測定結果のばらつきが大きくなり、消耗型浸漬熱電対による測定温度との相関が見られなかった。よって、本比較例における筒状部材は、溶鋼の測温には使用できないことがわかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態においては、溶融金属の測定例として、溶融金属の成分分析の場合について説明したが、本発明は、溶融金属から放射される光を用いて行う温度測定を行う測定装置にも適用できる。
また、上述した実施形態においては、冷却手段が、内管と外管とにより形成される2重管構造の冷却管である場合について説明したが、この場合には限られず、反射面の冷却効果を高め、筒状部材の外面の冷却効果を抑制するものであれば、いかなる形態の冷却手段であってもよい。