JP5356195B2 - 内面溝付管の製造装置およびその製造方法 - Google Patents

内面溝付管の製造装置およびその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、例えば冷凍機や空調機等の熱交換器用の伝熱管として用いられる内面溝付管の製造装置およびその製造方法に関する。
従来、フローティングプラグと連結棒で接続され外周面に溝が形成された溝付プラグを金属管内に通しておき、引抜きダイスとフローティングプラグとの隙間を通して金属管を引き抜いた後、その金属管を押圧手段で溝付プラグに向けて押圧しながら引き抜いて、金属管内面に溝を形成する内面溝付管の製造方法が提案されている。
このような内面溝付管の製造方法において、前記引抜きダイスと前記押圧手段の間の位置で、前記金属管を一対のキャタピラで挟み該キャタピラを移動させる補助引抜き装置を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。これにより、金属管の破断を起こさずに、外径が小さい、肉の薄い、内面の溝が深いまたは溝の管軸に対する捩れ角(リード角)が大きい内面溝付金属管を容易に製造することができるとされている。
また、内面溝付管の高精度化に対応すべく、溝加工された内面溝付管を引き抜く引抜手段に対して引き抜き方向に移動可能な基台に、素管を縮径する縮径手段、補助引抜き装置、引抜きダイスとフローティングプラグとで構成する溝加工手段および、溝加工された縮径管の外面を仕上げる仕上げ加工装置を固定し、引抜手段が溝加工された内面溝付管を引き抜く際に、引抜手段に対して相対移動する基台にかかる荷重を検出する基台荷重検出装置を備えた内面溝付管の製造装置が提案されている(特許文献2参照)。
上記装置は、基台荷重検出装置で検出した荷重に基づいて補助引抜き装置を制御するため、高精度な内面溝付金属管を製造できるとされている。しかし、このような内面溝付金属管は、薄肉化や内面溝の捩れ角(リード角)が大きくなる傾向にあるとともに、コスト低減のための生産性向上が強く求められているが、製造装置では上記要求に対して十分に対応できないという問題点があった。
特許第2950289号公報 特開2008−87004号公報
この発明は、上述の問題に鑑み、高精度な内面溝付管の生産性を向上することのできる内面溝付管の製造装置とその製造方法を提供することを目的とする。
この発明は、素管を縮径する縮径手段と、縮径された縮径管の内面に溝加工を施す溝加工手段と、溝加工された内面溝付管を引き抜く引抜手段とを上流側からこの順に備え、前記縮径手段と前記溝加工手段の間に設けられ、前記縮径管を前記溝加工手段へ向う送り方向に送り補助する送り補助手段を備えた内面溝付管の製造装置であって、前記縮径手段と前記送り補助手段とが固定されて前記引抜手段の引抜方向と平行に前記溝加工手段に対して相対移動可能な移動台と、前記移動台が前記溝加工手段に対して前記相対移動する際に前記移動台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する移動台荷重検出装置とを備えた内面溝付管の製造装置であることを特徴とする。
この発明の態様として、前記溝加工手段が固定されて前記引抜方向と平行に前記引抜手段に対して相対移動可能な基台と、前記基台が前記引抜手段に対して前記相対移動する際に前記基台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する基台荷重検出装置と、前記送り補助手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記移動台を、前記基台に対して前記引抜方向に相対移動可能に構成するとともに、該制御手段を、前記移動台荷重検出装置および前記基台荷重検出装置のうち少なくとも一方により検出した荷重に基づいて、前記送り補助手段の送り補助速度を調節する送り補助速度調整処理、および前記送り補助手段の送り補助トルクを調節する送り補助トルク調整処理のうち少なくともいずれか一方を実行する構成とすることができる。
またこの発明の態様として、前記補助速度調整処理における前記送り補助速度を、第1送り補助速度とするとともに、前記送り補助トルク調整処理を、前記送り補助トルクとの相関関係に基づいて定まる第2送り補助速度をもって調整する調整処理とすることができる。
また、この発明は、素管を縮径する縮径手段と、縮径された縮径管の内面に溝加工を施す溝加工手段と、溝加工された内面溝付管を引き抜く引抜手段とを上流側からこの順に備え、前記縮径手段と前記溝加工手段の間に設けられ、前記縮径管を前記溝加工手段へ向う送り方向に送り補助する送り補助手段と、前記縮径手段と前記送り補助手段とが固定されて前記引抜手段の引抜方向と平行に前記溝加工手段に対して相対移動可能な移動台と、前記溝加工手段が固定されて前記引抜方向と平行に前記引抜手段に対して相対移動可能な基台と、前記移動台が前記溝加工手段に対して前記相対移動する際に前記移動台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する移動台荷重検出装置と、前記基台が前記引抜手段に対して前記相対移動する際に前記基台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する基台荷重検出装置と、前記送り補助手段の動作を制御する制御手段とを備えるとともに、前記移動台を、前記基台に対して前記引抜方向に相対移動可能に構成する内面溝付管の製造装置を用い、該制御手段が、前記送り補助手段の送り補助速度および前記送り補助手段の送り補助トルクのうち少なくともいずれか一方を、前記移動台荷重検出装置および前記基台荷重検出装置が検出した荷重の差分に基づいて調整する内面溝付管の製造方法であることを特徴とする。
この発明の態様として、前記制御手段が調整する送り補助速度を、第1送り補助速度とするとともに、前記制御手段が調整する送り補助トルクを、前記送り補助トルクとの相関関係に基づいて定まる第2送り補助速度をもって調整する制御とすることができる。
前記素管は、銅、アルミニウム、またはこれらの合金など、熱伝導性に優れた金属で形成された管とすることができる。
前記縮径手段は、例えば上流側へ向けて末広がりとなるすり鉢状の斜面が形成されたダイス孔を有する縮径ダイスで構成することができる。この縮径ダイスのダイス孔の対応位置には、素管内に挿入されたフローティングプラグを配置することができる。
前記溝加工手段は、例えば前記フローティングプラグに連結された溝付プラグと、この溝付きプラグへ向けて縮径管を遊星回転しながら押圧するローラやボールで構成される転造工具とで構成することができる。
前記引抜手段は、例えば素管を加工した内面溝付管を下流側で引き抜き巻き取る巻取装置で構成することができる。
前記送り補助手段は、例えば縮径管をベルトあるいはパッドで挟み込んで溝加工手段へ向けて送り補助する装置で構成することができる。
前記移動台および基台は、例えば底面に車輪を有して自由にスライド移動できる台で構成することができる。
前記移動台荷重検出装置および基台荷重検出装置は、例えばロードセルなど荷重を検出できる適宜の検出器で構成することができる。
この発明により、高精度な内面溝付管の生産性を向上することのできる内面溝付管の製造装置とその製造方法を提供することができる。
内面溝付管製造装置の構成を示す構成図。 内面溝付管製造装置における負荷や力を説明する説明図。 内面溝付管製造装置の全体動作を示すフローチャート。
内面溝付管製造装置1は、加工対象100である素管101を縮径する縮径装置20と、縮径された縮径管102の内面に溝加工を施す溝加工装置40と、溝加工された内面溝付管104を引き抜く巻取りドラム60とを上流側からこの順に備えている。
なお、縮径装置20と溝加工装置40の間には、縮径管102を溝加工装置40へ向う送り方向に送り補助する補助送り装置30が設けられている。
また、内面溝付管製造装置1には、縮径装置20と補助送り装置30とが固定されて巻取りドラム60の引抜方向と平行に溝加工装置40に対して相対移動可能な上流可動台82が設けられ、上流可動台82が溝加工装置40に対して相対移動する際に上流可動台82にかかる相対移動方向の荷重を検出する上流荷重検出器92を備えている。
また、内面溝付管製造装置1は、溝加工装置40が固定されて引抜方向と平行に巻取りドラム60に対して相対移動可能な全体可動台84が備えられている。なお、上流可動台82は、全体可動台84に対して引抜方向に相対移動可能に構成されている。
さらにまた、全体可動台84が巻取りドラム60に対して相対移動する際に全体可動台84にかかる相対移動方向の荷重を検出する全体荷重検出器94を備えている。
また内面溝付管製造装置1は、補助送り装置30の動作を制御する制御器71および演算器76を備えている。そして、制御器71および演算器76は、上流荷重検出器92および全体荷重検出器94のうち少なくとも一方により検出した負荷に基づいて、補助送り装置30の送り補助速度を調節する送り補助速度調整処理、および補助送り装置30の送り補助トルクを調節する送り補助トルク調整処理のうち少なくともいずれか一方を実行する構成である。
なお、補助速度調整処理において制御器71および演算器76が実行する送り補助速度は第1送り補助速度であり、制御器71および演算器76が実行する送り補助トルク調整処理では、送り補助トルクとの相関関係に基づいて定まる第2送り補助速度をもって調整する。
さらに詳述すると、制御器71および演算器76は、補助送り装置30の送り補助速度を調節する送り補助速度調整処理、および補助送り装置30の送り補助トルクを調節する送り補助トルク調整処理のうち少なくともいずれか一方を、上流荷重検出器92および全体荷重検出器94で検出した荷重の差分に基づいて調整する。
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、内面溝付管製造装置1の構成を示す構成図である。この図1では、加工に用いる装置、センシングに用いる装置、および制御に用いる装置が図示されている。また、図2は、内面溝付管製造装置1において素材にかかる負荷、加工に用いる引抜力や補助送り力、および検出する負荷を説明する説明図である。
加工に用いる装置について説明すると、上流から下流に向けて、縮径装置20、補助送り装置30、溝加工装置40、および仕上げ加工装置50が、それぞれの加工部が水平かつ一直線となるようにこの順で配置され、さらにその下流に素管101を一直線に引抜いて巻き取る巻取りドラム60が設けられている。加工対象である素管101の材料は、例えば銅、アルミニウム、またはこれらの合金など、熱伝導性に優れた金属とすることができる。
縮径装置20は、上流側から供給される円筒形の素管101を、素管101の周囲を内側へ押圧する縮径ダイス21と、素管101内部に配置されるフローティングプラグ11との隙間を通して縮径する装置である。
縮径ダイス21は、上流側へ向けて末広がりとなるすり鉢状の斜面が形成されたダイス孔22が設けられている。フローティングプラグ11は、ダイス孔22の半径最小部よりも大きいサイズで、かつ、素管101の内周サイズよりも少し小さいサイズに形成され、素管101内に自由状態で挿入されている。このため、縮径ダイス21のダイス孔22で縮径されつつ素管101が引抜かれる際に、フローティングプラグ11が一緒に引抜かれることがない。
また、フローティングプラグ11のダイス孔22との対向面は、円錐台形状の傾斜面に形成されている。これにより、ダイス孔22で外周面が押圧されて縮径される素管101の内面を押さえることができ、縮径加工を安定させることができる。
上流側から供給される素管101は、この縮径装置20で縮径されて縮径管102となる。
この縮径加工の際に、素管101には、図2に示すように縮径引抜負荷R3がかかる。
補助送り装置30は、押圧装置31、取付板32、プーリ33、およびベルト34により構成されている。
押圧装置31は、取付板32ごとベルト34を縮径管102に向けて押圧する。
取付板32は、上流機枠2に上下動可能(引抜方向と直角方向に移動可能)に取り付けられ、引抜方向に並ぶ一対のプーリ33を回転可能に軸受けしている。この一対のプーリ33は、無端のベルト34がたるみ無く張架されており、ベクトルモータであるモータM2の駆動力によりベルト34を回転させる。
ベルト34は、無端のループ状に形成されており、複数のパッド35が外周に連続的に配置されている。このパッド35は、素管101よりも硬質の材質で構成されることが好ましく、例えば工具鋼で構成される。
このプーリ33とベルト34が設けられた取付板32は、縮径管102を挟んで上下対称(引抜方向と直角方向に対称)に設けられている。さらに、前記押圧装置31も、上下対称に設けられている。これにより、上下の押圧装置31が、上下の押圧装置31を縮径管102に向けて押圧し、縮径管102をパッド35で挟み込む。
補助送り装置30は、この構成と制御器71の制御により、補助送り動作を行う。すなわち、押圧装置31は、縮径管102が過大変形しない一定圧力でパッド35により縮径管102を上下から挟んで把持する。そして、制御器71の制御に従ったモータM2の回転駆動によってプーリ33が定比率で回転し、これに伴ってベルト34が回転しパッド35と縮径管102との間に材料進行方向(引抜方向)の送り摩擦力を発生させる。
この送り摩擦力による送り補助の際に、補助送り装置30は、図2に示すように補助送り力F2、すなわち補助送りトルクを縮径管102に付与することができる。このため、パッド35の送り方向の速度は、巻取りドラム60の巻き取り速度と同調以上の速度となっている。
溝加工装置40は、溝付プラグ13、加工ヘッド41、転造工具42、押圧部材43、およびベアリング44を備えている。
溝付プラグ13は、縮径管102内に自由状態で挿入されており、上述したフローティングプラグ11に連結棒12で回転自在に連結されている。これにより、溝付プラグ13の引抜方向における位置が前後しないように構成されている。
加工ヘッド41は、下流へ向けて末広がりとなる円錐面が形成されている。この円錐面も含めた貫通孔の内径は、縮径管102の外径よりも少し大きく形成されている。
押圧部材43は、リング状に形成されており、ベアリング44により回転自在に取り付けられている。
転造工具42は、複数のボールで構成されており、加工ヘッド41の円錐面と押圧部材43の押圧面(上流側面)とで遊星回転可能に挟まれ、縮径管102を管内側に向かって押圧する。これにより、転造工具42が遊星回転して縮径管102を溝付プラグ13に押圧し、溝付プラグ13の螺旋状の溝に沿った多数のフィン105(螺旋状の溝)を縮径管102の内面に形成することができる。このフィン105は、管軸に対して所定の捩れ角(リード角)、所定のフィン高さ、所定のフィン間隔に形成することができる。なお、転造工具4は、複数のローラで構成する、あるいはローラとボールを併用して構成することができる。
この溝加工装置40により、上流側から供給された縮径管102が、内面に溝(フィン105)が形成された溝付与管103となる。
この溝加工の際に、縮径管102には、図2に示すように溝加工負荷R2がかかる。
仕上げ加工装置50は、整形ダイス51により構成されている。この整形ダイス51は、上流側へ向かって末広がりになる円錐面を有するダイス孔52が設けられている。このダイス孔52の半径最小部の半径は、溝付与管103の外周半径よりも少し小さく形成されている。溝付与管103をダイス孔52に通すことで、溝付与管103の外周面がわずかに縮径されて形状が整えられ、完成品の内面溝付管104を得ることができる。
この仕上げ加工の際に、溝付与管103には、図2に示すように仕上げ引抜負荷R1がかかる。
巻取りドラム60は、内面溝付管104を巻き取るドラムである。この巻き取りは、制御器73の速度指示信号に従ったモータM1の回転力によって実行される。また、この巻取りの力が、素管101に対する一定方向の一直線な引抜力F1となり、引抜トルクを発生して縮径加工や内面溝加工を実行できる。
すなわち、素管101を巻取りドラム60で引抜きつつ、縮径装置20で縮径し、溝加工装置40で溝加工をし、仕上げ加工装置50で外周面の仕上げ加工をすることができる。
次に、センシングに用いる装置について説明すると、前記縮径装置20および補助送り装置30は、上流機枠2に固定されている。このように構成された上流機枠2は、上流可動台82に固定されており、この上流可動台82と共に全体可動台84上を引抜方向と平行(この実施例では水平)に往復スライド移動できる。すなわち、上流可動台82は、車輪82aが設けられ、この車輪82aが全体可動台84のレール84bに係合しており、これによってレール84bに沿ってスムーズに移動できる。またこれにより、前記縮径装置20および補助送り装置30は、上流可動台82と一体に移動する。
また、上流可動台82の引抜方向側端部には、上流荷重検出器92が設けられている。この上流荷重検出器92は、ロードセルなど荷重を検出できる適宜の検出器で構成する。この上流荷重検出器92により、引抜き加工時に引抜方向にかかる上流可動台82の荷重を上流荷重検出値V(T1)(図2参照)として検出することができる。
前記溝加工装置40と仕上げ加工装置50は、全体機枠4に固定されている。また、このように構成された全体機枠4は、全体可動台84に固定されており、この全体可動台84と共に固定台86上を引抜方向と平行(この実施例では水平)に往復スライド移動できる。すなわち、全体可動台84には車輪84aが設けられ、この車輪84aが固定台86のレール86bに係合しており、これによってレール86bに沿ってスムーズに移動できる。またこれにより、前記溝加工装置40および仕上げ加工装置50は、全体可動台84と一体に移動する。
また、全体可動台84の引抜方向側端部には、全体荷重検出器94が設けられている。この全体荷重検出器94は、ロードセルなど荷重を検出できる適宜の検出器で構成する。この全体荷重検出器94により、引抜き加工時に引抜方向にかかる全体可動台84の荷重を下流荷重検出値V(T2)(図2参照)として検出することができる。
次に、制御に用いる装置について説明すると、制御器71、速度設定器72、制御器73、上流信号変換器74、全体信号変換器75、および演算器76が設けられている。
制御器71は、演算器76から回転指示速度S(H)を受け、この速度でモータM2を回転させる。また、モータM2の実際の回転速度およびトルクを演算器76にフィードバックする。
速度設定器72は、巻取りドラム60による引抜速度を設定する装置であり、設定値を制御器73および演算器76に送信する。
制御器73は、速度設定器72から受けた引抜速度に基づいてモータM1の回転速度を設定、指示する。
上流信号変換器74は、上流機枠2を載せた上流可動台82が引抜方向(材料進行方向)へ向かうことによる押付力の信号(上流荷重検出器92で検出)を電気信号に変換し、この信号を上流荷重検出値V(T1)として演算器76に送信する。
全体信号変換器75は、全体機枠4を載せた全体可動台84が引抜方向(材料進行方向)へ向かうことによる押付力の信号(全体荷重検出器94で検出)を電気信号に変換し、この信号を下流荷重検出値V(T2)として演算器76に送信する。
演算器76は、上流信号変換器74から受信した上流荷重検出値V(T1)と、全体信号変換器75から受信した下流荷重検出値V(T2)と、各種設定情報とに基づいて演算を行い、モータM2の回転指示速度S(H)を随時調節しつつ制御器71に送信する。
次に、図3とともに、内面溝付管製造装置1の動作について説明する。なお、図3は内面溝付管製造装置1の全体動作についてのフローチャートを示している。
まず、内面溝付管製造装置1は、巻取りドラム60を始動させる(ステップs1)。なお、制御器73は、素管101の材質や径に応じた一定の引抜力F1で巻き取るように、速度設定器72から受けた引き抜き速度に基づいて、内面溝付管104の製造完了まで巻取りドラム60のモータM1に対して速度制御する。
次に、内面溝付管製造装置1は、補助送り装置30を始動する(ステップs2)。このとき、制御器71は、素管101の材質や径に応じた初期補助送り速度(第1補助送り速度)となるようにモータM2に対して第1補助送り速度制御を実行する(ステップs3)。なお、初期補助送り速度とは、加工対象である素管101の材質や径に応じて、素管101が内面溝付管製造装置1で破断しない範囲における高速度であり、予め設定された送り速度である。
この状態の内面溝付管製造装置1では、素管101は破断しないものの、溝加工装置40で縮径管102にかかる溝加工負荷R2が大きすぎ、溝加工装置40において、フィン105が形成されない、或いは形成されたフィン105が所定の精度を確保できない。
そして、この状態において、内面溝付管製造装置1は、上流荷重検出器92で上流荷重検出値V(T1)を検出し(ステップs4)、全体荷重検出器94で下流荷重検出値V(T2)を検出し(ステップs5)、演算器76に送信する。
演算器76は、上流荷重検出器92および全体荷重検出器94から受信した上流荷重検出値V(T1)および下流荷重検出値V(T2)の差分である荷重差分値(T3)を算出する(ステップs6)。
この荷重差分値(T3)は、溝加工装置40にかかる溝加工負荷R2と仕上げ加工装置50にかかる仕上げ引抜負荷R1との合計負荷を示している。詳述すると、上述したように、上流荷重検出値V(T1)は、引抜き加工時に引抜方向にかかる上流可動台82の荷重、すなわち縮径装置20における縮径引抜負荷R3、および補助送り装置30による補助送り力F2の合計負荷を示している。これに対し、下流荷重検出値V(T2)は、引抜き加工時に引抜方向にかかる全体可動台84の荷重、すなわち、縮径装置20における縮径引抜負荷R3、縮径装置20による補助送り力F2、溝加工装置40における溝加工負荷R2、および仕上げ加工装置50における仕上げ引抜負荷R1の合計負荷を示している。したがって、上流荷重検出値V(T1)および下流荷重検出値V(T2)の差分である荷重差分値(T3)は、溝加工装置40にかかる溝加工負荷R2と仕上げ加工装置50にかかる仕上げ引抜負荷R1の合計負荷となる。
実質的には、溝付与管103の外周面をわずかに縮径して完成品の内面溝付管104を形成する仕上げ加工装置50における仕上げ引抜負荷R1はほぼ一定であるとともに、溝加工装置40における縮径引抜負荷R3と比べて無視できる程度に小さいため、荷重差分値(T3)は、溝加工装置40における縮径引抜負荷R3であると考えて良い。
なお、溝加工装置40における縮径引抜負荷R3は、上流側から供給された縮径管102から溝付与管103を形成する際のフィン105の形成において大きな影響を及ぼす。詳しくは、溝加工装置40における縮径引抜負荷R3が予め設定された所定範囲より小さい場合、つまり、溝加工装置40におけるフィン105の形成における負荷が小さいということは、十分なフィン105が形成できていないことを意味している。また、逆に、溝加工装置40における縮径引抜負荷R3が所定範囲より大きい場合、つまり、溝加工装置40におけるフィン105の形成における負荷が大きすぎる場合も同様に、所望のフィン105が形成できない。
したがって、演算器76は、荷重差分値(T3)が素管101の材質や径に応じて予め設定された所定範囲内となるように、補助送り装置30によって縮径管102に作用させる補助送りトルクを算出する(ステップs7)。
上記補助送りトルクは、無負荷トルクと棒摩擦トルクに基づいて算出され、補助送り装置30で縮径管102を溝加工装置40に向かって送り出すトルクとなるが、補助送り装置30におけるモータM2をステップs7で算出された補助送りトルクに合うようトルクコントロールすることはできない。したがって、演算器76は、制御器71に対して、素管101の材質および径に応じて予め設定された補助送りトルクに対する相関関係に基づいて決まる第2補助送り速度となるように増減速指示を送信し、制御器71はモータM2に対して受信した増減速指示に基づくトルク制御を実行する(ステップs8)。
なお、ステップs2において、素管101の材質や径に応じて、素管101が内面溝付管製造装置1で破断しない範囲における高速度である初期補助送り速度(第1補助送り速度)に速度制御する本実施形態では、ステップs8で補助送り装置30に対するトルク制御する補助送りトルク、つまり補助送りトルクに対する相関関係に基づいて決まる第2補助送り速度は初期補助送り速度(第1補助送り速度)より低速であり、制御器71はモータM2に減速制御することとなる。
ステップs8で補助送り装置30に対するトルク制御を実行した内面溝付管製造装置1は、ステップs4〜s6と同様に、上流荷重検出器92および全体荷重検出器94で上流荷重検出値V(T1)および下流荷重検出値V(T2)を検出するとともに、演算器76は補助送り装置30をトルク制御した後の荷重差分値(T3)を算出して、算出された荷重差分値(T3)が予め設定された所定範囲内であるか判定する(ステップs9)。
補助送り装置30をトルク制御した後の荷重差分値(T3)が所定範囲内でない場合(ステップs9:No)、ステップs4に戻って、演算器76は、荷重差分値(T3)が所定範囲内となるように、補助送りトルクを算出する。
逆に、補助送り装置30をトルク制御した後の荷重差分値(T3)が予め設定された所定範囲内であった場合、制御器71は所定量の内面溝付管104が製造できているか判定し、既に所定量の内面溝付管104が製造できている場合は内面溝付管製造装置1による内面溝付管104の製造を停止する(ステップs10:Yes)。これに対し、まだ所定量の内面溝付管104が製造できていない場合は(ステップs10:No)、ステップs4に戻って、所定量の内面溝付管104が製造できるまで上記ステップs4〜s9までを繰り返す。
このように、上述の構成の内面溝付管製造装置1を用い、上述の制御を実行することによって、高精度なフィン105が形成された内面溝付管104の生産性を向上することができる。
詳しくは、内面溝付管製造装置1は、演算器76により、上流荷重検出器92で検出した上流荷重検出値V(T1)と全体荷重検出器94で検出した下流荷重検出値V(T2)の差分であり、実質的に溝加工装置40における縮径引抜負荷R3を示す荷重差分値(T3)が素管101の材質や径に応じて予め設定された所定範囲内となるように、補助送り装置30によって縮径管102に作用させる補助送りトルクを制御するため、フィン105の形成において大きな影響を及ぼす縮径引抜負荷R3を安定させ、加工限界に近い加工条件であっても、所望の精度のフィン105を形成することができる。
したがって、例えば、従来不可能であった精度の内面溝付管104(例えば管軸に対して40〜60°の高捩れ角(リード角)を持つフィン高さ0.2mm以上のフィンを、フィン高さHと隣合うフィン間の溝底肉厚tとの比H/tが1.2以下となるように内面に複数形成した管など)を生産性高く製造することができる。
また、補助送り装置30をトルク制御するための補助送りトルクを、素管101の材質および径に応じて予め設定された補助送りトルクに対する相関関係に基づいて決まる第2補助送り速度を用いてトルク制御するため、トルクコントロール不可能なモータM2に対して確実にトルク制御して、確実に所望の精度のフィン105を形成することができる。
さらにまた、加工対象である素管101の材質や径に応じて、素管101が内面溝付管製造装置1で破断しない範囲における高速度であり、予め設定された第1補助送り速度で制御し、その後、初期補助送り速度(第1補助送り速度)より低速であり、補助送りトルクに対する相関関係に基づいて決まる第2補助送り速度で補助送り装置30をトルク制御するため、所望の精度で形成されたフィン105を有する内面溝付管104の生産性を向上することができる。
また、内面溝付管製造装置1は、巻取りドラム60による引抜力F1を一定としながら、補助送り装置30をトルク制御して所望の精度のフィン105を有する内面溝付管104を製造するため、制御を複雑化することなく、内面溝付管104を生産性高く製造することができる。
また、巻取りドラム60における引抜力F1、初期補助送り速度(第1補助送り速度)、荷重差分値(T3)を制御する基準となる所定範囲、および第2補助送り速度を、素管101の材質や径に応じた速度、範囲および相関関係に基づいて設定しているため、素管101の材質や径による負荷変動に対応して加工することができる。したがって、素管101の材質や径によらず高精度なフィン105を形成できるとともに、破断の発生を低減することができる。
なお、内面溝付管製造装置1は、巻取りドラム60に対して相対移動可能な上流可動台82に縮径装置20と補助送り装置30とを固定するとともに、巻取りドラム60による素管101の引き抜きの際に相対移動する上流可動台82の荷重を検出する上流荷重検出器92を備えている。したがって、例えば、巻取りドラム60に対して相対移動可能な全体可動台84に縮径装置20、補助送り装置30、溝加工装置40および仕上げ加工装置50全体を固定し、全体可動台84にかかる荷重を検出する内面溝付管製造装置と比べて、フィン105の形成に影響の大きな補助送り装置30による補助送りトルクを上流荷重検出器92による検出結果から推測できるとともに、トルク制御できるため、より高精度のフィン105を有する内面溝付管104を、生産性高く製造することができる。
また、内面溝付管製造装置1は、上流可動台82にかかる荷重を検出する上流荷重検出器92と、全体可動台84にかかる全体荷重検出器94とを備えているため、演算器76は、上流荷重検出器92と全体荷重検出器94で検出した上流荷重検出値V(T1)および下流荷重検出値V(T2)から算出した荷重差分値(T3)に加えて上流荷重検出値V(T1)を考慮して補助送り装置30をトルク制御してもよい。
さらには、荷重差分値(T3)に加えて全体荷重検出器94で検出する下流荷重検出値V(T2)を考慮して、巻取りドラム60による引抜力F1を制御する構成であってもよい。
この様に、内面溝付管製造装置1に上流可動台82にかかる荷重を検出する上流荷重検出器92と、全体可動台84にかかる全体荷重検出器94とを備えているため、さらなる薄肉化やフィン105の捩れ角(リード角)がさらに大きくなった場合であっても、制御の複雑化は増大するものの、より高精度なフィン105が形成された内面溝付管104の生産性を向上することができる。
また、上流荷重検出器92と全体荷重検出器94を同一の装置で構成しているため、両検出器から検出する値の変化曲線が近似し、補助送り装置30や巻取りドラム60の速度やトルクを精度良く調整することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の内面溝付管の製造装置は、実施形態の内面溝付管製造装置1に対応し、
以下同様に、
縮径手段は、縮径装置20に対応し、
送り補助手段は、補助送り装置30に対応し、
溝加工手段は、溝加工装置40に対応し、
引抜手段は、巻取りドラム60に対応し、
制御手段は、制御器71および演算器76に対応し、
送り補助速度は、補助送り速度に対応し、
送り補助トルクは、補助送りトルクに対応し、
移動台は、上流可動台82に対応し、
基台は、全体可動台84に対応し、
移動台荷重検出装置は、上流荷重検出器92に対応し、
基台荷重検出装置は、全体荷重検出器94に対応し、
送り補助速度調整処理は、ステップs3に対応し、
送り補助トルク調整処理は、ステップs8に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
1…内面溝付管製造装置
20…縮径装置
30…補助送り装置
40…溝加工装置
60…巻取りドラム
71…制御器
76…演算器
82…上流可動台
84…全体可動台
92…上流荷重検出器
94…全体荷重検出器
101…素管
102…縮径管
104…内面溝付管

Claims (5)

  1. 素管を縮径する縮径手段と、
    縮径された縮径管の内面に溝加工を施す溝加工手段と、
    溝加工された内面溝付管を引き抜く引抜手段とを上流側からこの順に備え、
    前記縮径手段と前記溝加工手段の間に設けられ、前記縮径管を前記溝加工手段へ向う送り方向に送り補助する送り補助手段を備えた内面溝付管の製造装置であって、
    前記縮径手段と前記送り補助手段とが固定されて前記引抜手段の引抜方向と平行に前記溝加工手段に対して相対移動可能な移動台と、
    前記移動台が前記溝加工手段に対して前記相対移動する際に前記移動台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する移動台荷重検出装置とを備えた
    内面溝付管の製造装置。
  2. 前記溝加工手段が固定されて前記引抜方向と平行に前記引抜手段に対して相対移動可能な基台と、
    前記基台が前記引抜手段に対して前記相対移動する際に前記基台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する基台荷重検出装置と、
    前記送り補助手段の動作を制御する制御手段とを備え、
    前記移動台を、前記基台に対して前記引抜方向に相対移動可能に構成するとともに、
    該制御手段を、
    前記移動台荷重検出装置および前記基台荷重検出装置のうち少なくとも一方により検出した荷重に基づいて、前記送り補助手段の送り補助速度を調節する送り補助速度調整処理、および前記送り補助手段の送り補助トルクを調節する送り補助トルク調整処理のうち少なくともいずれか一方を実行する構成とした
    請求項1に記載の内面溝付管の製造装置。
  3. 前記補助速度調整処理における前記送り補助速度を、第1送り補助速度とするとともに、
    前記送り補助トルク調整処理を、
    前記送り補助トルクとの相関関係に基づいて定まる第2送り補助速度をもって調整する調整処理とした
    請求項2に記載の内面溝付管の製造装置。
  4. 素管を縮径する縮径手段と、
    縮径された縮径管の内面に溝加工を施す溝加工手段と、
    溝加工された内面溝付管を引き抜く引抜手段とを上流側からこの順に備え、
    前記縮径手段と前記溝加工手段の間に設けられ、前記縮径管を前記溝加工手段へ向う送り方向に送り補助する送り補助手段と、
    前記縮径手段と前記送り補助手段とが固定されて前記引抜手段の引抜方向と平行に前記溝加工手段に対して相対移動可能な移動台と、
    前記溝加工手段が固定されて前記引抜方向と平行に前記引抜手段に対して相対移動可能な基台と、
    前記移動台が前記溝加工手段に対して前記相対移動する際に前記移動台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する移動台荷重検出装置と、
    前記基台が前記引抜手段に対して前記相対移動する際に前記基台にかかる前記相対移動方向の荷重を検出する基台荷重検出装置と、
    前記送り補助手段の動作を制御する制御手段とを備えるとともに、
    前記移動台を、前記基台に対して前記引抜方向に相対移動可能に構成する内面溝付管の製造装置を用い、
    該制御手段が、
    前記送り補助手段の送り補助速度および前記送り補助手段の送り補助トルクのうち少なくともいずれか一方を、前記移動台荷重検出装置および前記基台荷重検出装置が検出した荷重の差分に基づいて調整する
    内面溝付管の製造方法。
  5. 前記制御手段が調整する送り補助速度を、第1送り補助速度とするとともに、
    前記制御手段が調整する送り補助トルクを、前記送り補助トルクとの相関関係に基づいて定まる第2送り補助速度をもって調整する制御とした
    請求項4に記載の内面溝付管の製造方法。
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