しかしながら、上述したエッチング近接効果補正モデルでは、図12(b)に示すように、パターン間スペースの幅が0.2μm未満の狭いスペース領域(グラフ中のX)、0.2μm〜2μmの中間スペース領域(グラフ中のY)、および、5μm以上の広いスペース領域(グラフ中のZ)において、5nmを超えるモデルフィッティング残差が残っている。これは、図12(a)に示す、スペース領域x、yおよびzにおけるエッチング近接効果補正モデルの精度が高くないためである。
このため、非特許文献1に記載の技術では、高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することが不可能である。それゆえ、半導体装置の基板上に形成される最終的な配線パターンの寸法を、設計寸法通りに精度良く形成することができないという問題点を有している。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することができるエッチング近接効果補正モデルの作成方法、エッチング近接効果補正モデル、そのエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を非常に高精度で行うことができるマスクパターンの補正方法、フォトマスク、半導体装置の製造方法、並びに半導体装置を提供することにある。
本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法は、上記課題を解決するために、マスクパターンに対しエッチング近接効果補正を行うための補正量を算出するエッチング近接効果補正モデルを作成する方法であって、基板の配線形成面にレジストを形成し、評価用パターンを搭載した評価用フォトマスクを用いて該レジストにリソグラフィー処理を行うことにより、評価用パターンが転写されたレジストパターンを形成するステップと、上記レジストパターンに対し、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより、該レジストパターンの線幅のシミュレーション値を算出するステップと、上記レジストパターンをマスクとして上記基板の配線形成面をエッチングすることにより、配線パターンを形成するステップと、上記配線パターンの線幅を測定するステップと、上記レジストパターンの線幅のシミュレーション値と、上記配線パターンの線幅の実測値とから、上記エッチングによるパターンのシフト量を算出するステップと、上記シフト量に対し、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとする補正モデルを用いて、最小二乗法によるフィッティングを行うことにより、エッチング近接効果補正モデルを作成するステップと、を含むことを特徴としている。
上記の方法によれば、エッチング近接効果補正モデルを作成するためにフィッティングを行う際に用いるシフト量は、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより算出したレジストパターンの線幅のシミュレーション値を用いて算出している。それゆえ、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合、この誤差がシフト量の中に含まれるので、誤差を考慮したフィッティングを行うことになる。
よって、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収したエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となり、パターン補正精度をさらに向上することが可能となる。また、エッチング近接効果補正モデルは、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズで定義されるので、精度良く作成される。したがって、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となる。
また、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法は、上記の問題を解決するために、上記補正モデルは、上記パターン間スペースサイズのパラメータをRとする場合、関数R−n(n:正の実数)および対数関数Log(R)が線形結合された式を少なくとも含んでいることを特徴としている。
上記の構成によれば、関数R−nは、例えば、レジスト下部形状による依存性を含めた、フォトレジストの下層に設けられる有機反射防止膜をエッチングする際のパターン依存性を良く再現し、また、対数関数Log(R)は、配線パターンの材料、例えば、多結晶シリコンを、エッチングする際のパターン依存性を良く再現する。これにより、エッチング近接効果補正モデルの精度をさらに向上させることが可能となる。
なお、特に、関数R−1は、フォトレジストの下層に設けられる有機反射防止膜をエッチングする際のパターン依存性を、関数R−2は、エッチングによりパターンがシフトする際の、レジストパターンのレジスト下部形状による依存性を、非常に良く再現する。それゆえ、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法は、上記関数R−nは、1≦n≦2の範囲で設定されることが望ましい。
また、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法は、上記評価用パターンでは、一定のパターンピッチを有する繰り返しパターンが定められていることが好ましい。
上記の構成によれば、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズのパラメータを容易に抽出することが可能となり、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとして用いることによるモデル化を容易に行うことが可能となる。
本発明のエッチング近接効果補正モデルは、マスクパターンに対しエッチング近接効果補正を行うための補正量を算出するエッチング近接効果補正モデルであって、基板の配線形成面に形成されたレジストパターンに対しリソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより算出された、該レジストパターンの線幅のシミュレーション値と、上記レジストパターンをマスクとして上記基板の配線形成面をエッチングすることにより形成された配線パターンの線幅の実測値と、から算出された上記エッチングによるパターンのシフト量に対し、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとする補正モデルを用いて、最小二乗法によるフィッティングを行うことにより作成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、エッチング近接効果補正モデルを作成するためにフィッティングを行う際に用いられるシフト量は、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより算出された、レジストパターンの線幅のシミュレーション値を用いて算出されている。それゆえ、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合、この誤差がシフト量の中に含まれるので、誤差を考慮したフィッティングが行われることになる。
よって、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収したエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となり、パターン補正精度をさらに向上することが可能となる。また、エッチング近接効果補正モデルは、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズで定義されるので、精度良く作成される。したがって、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となる。
また、本発明のエッチング近接効果補正モデルは、上記の問題を解決するために、上記補正モデルは、上記パターン間スペースサイズのパラメータをRとする場合、関数R−n(n:正の実数)および対数関数Log(R)が線形結合された式を少なくとも含んでいることを特徴としている。
上記の構成によれば、関数R−nは、例えば、レジスト下部形状による依存性を含めた、フォトレジストの下層に設けられる有機反射防止膜をエッチングする際のパターン依存性を良く再現し、また、対数関数Log(R)は、配線パターンの材料、例えば、多結晶シリコンを、エッチングする際のパターン依存性を良く再現する。これにより、エッチング近接効果補正モデルの精度をさらに向上させることが可能となる。
なお、特に、関数R−1は、フォトレジストの下層に設けられる有機反射防止膜をエッチングする際のパターン依存性を、関数R−2は、エッチングによりパターンがシフトする際の、レジストパターンのレジスト下部形状による依存性を、非常に良く再現する。それゆえ、本発明のエッチング近接効果補正モデルは、上記関数R−nは、1≦n≦2の範囲で設定されることが望ましい。
本発明のマスクパターンの補正方法は、マスクのマスクパターンを、該マスクを用いた微細加工プロセスによって所望の寸法を持つ配線パターンが形成されるように補正する方法であって、上記微細加工プロセスを実施する前に、エッチング近接効果に対する上記マスクパターンの補正を、上記エッチング近接効果補正モデルを用いて行うことを特徴としている。
上記の方法によれば、微細加工プロセスを実施する前に、微細加工プロセスにて用いるマスクのマスクパターンに、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正を行う。よって、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を非常に高精度で行うことが可能となり、設計寸法に非常に近づく配線パターンの形成につなげることが可能となる。
また、本発明のマスクパターンの補正方法は、上記エッチング近接効果補正モデルを用いて、1次元の上記パターンサイズおよびパターン間スペースサイズの組合せにより算出した補正量を規定した補正ルールを作成し、該補正ルールを用いて、上記エッチング近接効果に対する上記マスクパターンの補正を行うことが好ましい。
上記の方法によれば、補正処理の際に、1次元(例えば、横方向)のみのパターンサイズおよびパターン間スペースサイズを検出すればよいため、補正処理にかかる時間を短縮することが可能となる。
本発明のフォトマスクは、上記エッチング近接効果補正モデルが用いられることによって、エッチング近接効果に対する補正が行われたマスクパターンを有することを特徴としている。
上記の構成によれば、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いることから、所望の寸法を持つ配線パターンが基板上に形成されるように、エッチング近接効果に対する補正が非常に高精度で行われたマスクパターンを有するフォトマスクを実現することが可能となる。
本発明の半導体装置の製造方法は、マスクを用いた微細加工プロセスにより形成された配線パターンを備えている半導体装置を製造する方法であって、マスクパターンのデータに対し、少なくとも、上記エッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正、およびリソグラフィー近接効果補正モデルを用いてリソグラフィー近接効果に対する補正を含む補正を行うステップと、上記補正を行ったマスクパターンのデータに基づいてマスクを作成するステップと、上記作成したマスクを用いて、微細加工プロセスにより配線パターンを形成する工程と、を含むことを特徴としている。
上記の方法によれば、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収する非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いて、エッチング近接効果に対する補正が行われたマスクパターンを有するマスクが作成され、このマスクを用いて配線パターンが形成される。よって、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合であっても、所望の寸法を持つ配線パターンを非常に高精度で形成することが可能となる。
本発明の半導体装置は、上記エッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正が行われたマスクパターン、を有するマスクを用いた微細加工プロセスにより形成された配線パターンを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いることから、マスクのマスクパターンは、エッチング近接効果に対する補正が非常に高精度で行われている。よって、所望の寸法を持つ配線パターンが非常に高精度で形成された半導体装置を実現することが可能となる。
以上のように、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法は、基板の配線形成面にレジストを形成し、評価用パターンを搭載した評価用フォトマスクを用いて該レジストにリソグラフィー処理を行うことにより、評価用パターンが転写されたレジストパターンを形成するステップと、上記レジストパターンに対し、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより、該レジストパターンの線幅のシミュレーション値を算出するステップと、上記レジストパターンをマスクとして上記基板の配線形成面をエッチングすることにより、配線パターンを形成するステップと、上記配線パターンの線幅を測定するステップと、上記レジストパターンの線幅のシミュレーション値と、上記配線パターンの線幅の実測値とから、上記エッチングによるパターンのシフト量を算出するステップと、上記シフト量に対し、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとする補正モデルを用いて、最小二乗法によるフィッティングを行うことにより、エッチング近接効果補正モデルを作成するステップと、を含み、上記補正モデルは、上記パターン間スペースサイズのパラメータをRとする場合、関数R −n (n:正の実数)および対数関数Log(R)が線形結合された式を少なくとも含んでいる方法である。
また、本発明のエッチング近接効果補正モデルは、基板の配線形成面に形成されたレジストパターンに対しリソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより算出された、該レジストパターンの線幅のシミュレーション値と、上記レジストパターンをマスクとして上記基板の配線形成面をエッチングすることにより形成された配線パターンの線幅の実測値と、から算出された上記エッチングによるパターンのシフト量に対し、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとする補正モデルを用いて、最小二乗法によるフィッティングを行うことにより作成されており、上記補正モデルは、上記パターン間スペースサイズのパラメータをRとする場合、関数R −n (n:正の実数)および対数関数Log(R)が線形結合された式を少なくとも含んでいる構成である。
それゆえ、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収したエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となり、パターン補正精度をさらに向上することが可能となる。また、エッチング近接効果補正モデルは、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズで定義されるので、精度良く作成される。したがって、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することができるという効果を奏する。
本発明のマスクパターンの補正方法は、微細加工プロセスを実施する前に、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を、上記エッチング近接効果補正モデルを用いて行う方法であるので、微細加工プロセスにて用いるマスクのマスクパターンに、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正を行う。よって、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を非常に高精度で行うことが可能となり、設計寸法に非常に近づく配線パターンの形成につなげることができるという効果を奏する。
本発明のフォトマスクは、上記エッチング近接効果補正モデルが用いられることによって、エッチング近接効果に対する補正が行われたマスクパターンを有する構成であるので、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いることから、所望の寸法を持つ配線パターンが基板上に形成されるように、エッチング近接効果に対する補正が非常に高精度で行われたマスクパターンを有することができるという効果を奏する。
本発明の半導体装置の製造方法は、マスクパターンのデータに対し、少なくとも、上記エッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正、およびリソグラフィー近接効果補正モデルを用いてリソグラフィー近接効果に対する補正を含む補正を行うステップと、上記補正を行ったマスクパターンのデータに基づいてマスクを作成するステップと、上記作成したマスクを用いて、微細加工プロセスにより配線パターンを形成する工程と、を含む方法であるので、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収する非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いて、エッチング近接効果に対する補正が行われたマスクパターンを有するマスクが作成され、このマスクを用いて配線パターンが形成される。よって、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合であっても、所望の寸法を持つ配線パターンを非常に高精度で形成することができるという効果を奏する。
本発明の半導体装置は、上記エッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正が行われたマスクパターン、を有するマスクを用いた微細加工プロセスにより形成された配線パターンを備えている構成であるので、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを用いることから、マスクのマスクパターンは、エッチング近接効果に対する補正が非常に高精度で行われている。よって、所望の寸法を持つ配線パターンが非常に高精度で形成された半導体装置を実現することができるという効果を奏する。
本発明に係るエッチング近接効果補正モデルの作成方法は、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することができる方法である。そして、このエッチング近接効果補正モデルを用いるマスクパターンの補正では、最終的に所望の寸法を持つ配線パターンが基板上に形成されるように、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を非常に高精度で行うことができる。
以下では、まず、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法の比較例について説明し、その次に、そのエッチング近接効果補正モデルを用いてマスクパターンの補正を行うエッチング近接効果補正工程を含む半導体装置の製造方法について説明する。そしてその次に、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法について説明する。
なお、以下の説明では、一例として、ゲートのマスクパターンを補正する場合について説明するが、これに限るものではなく、例えば、半導体装置における各種配線のマスクパターンの補正に適用することも可能である。
(エッチング近接効果補正モデルの作成方法の比較例)
図1〜6を参照しながら、エッチング近接効果補正モデルの作成方法の比較例について説明する。なお、この比較例は、本願出願人によって出願された特願2007−290134に記載されている。
図1は、比較例としてのエッチング近接効果補正モデルの作成方法を示すフローチャートである。図2(a)(b)は、上記エッチング近接効果補正モデルの作成における、ゲート配線パターンの形成工程を示す断面図である。図3は、図2(b)を、ゲート配線パターンが形成されている方向から見たときの上面図である。
まず、ゲート形成用のエッチング近接効果補正モデルを作成するために、土台となる下地構造を形成する(ステップS11)。詳細には、図2(a)に示すように、半導体基板201上に、ゲート絶縁膜202、多結晶シリコン膜203、有機反射防止膜204を順に積層形成する。これにより、半導体基板201、ゲート絶縁膜202、多結晶シリコン膜203、および有機反射防止膜204からなる下地構造を実際に形成する。なお、ここでは、配線パターンとなる(配線パターンを形成するための)材料が形成されている面を、配線形成面としている。
続いて、有機反射防止膜204の上にレジストを形成し、エッチング近接効果評価パターン(評価用パターン)を搭載したフォトマスク(評価用フォトマスク)を用いてリソグラフィー処理を行い、図2(a)に示すように、エッチング近接効果評価パターンが転写されたレジストパターン205を形成する(ステップS12)。このとき、エッチング近接効果評価パターンとしては、図3に示すような、パターン301と、各パターン301間のスペース(パターン間スペース302)とが一定のパターンピッチ303で繰り返す、繰り返しパターンが定められたものを使用するとする。
また、エッチング時のエッチング近接効果によるパターンシフトへの影響は10μm程度の距離まで及ぶため、望ましくは0.1μm〜0.5μmのパターン301の幅と0.1μm〜5μmのパターン間スペース302の幅との複数の組み合わせ、さらに望ましくは0.05μm〜1μmのパターン301の幅と0.05μm〜10μmのパターン間スペース302の幅との複数の組み合わせを有する繰り返しパターンが定められた、エッチング近接効果評価パターンを用いることが好ましい。
続いて、エッチング近接効果評価パターンを用いて形成したレジストパターン205の下部(有機反射防止膜204に接している箇所)のレジストパターン線幅206を、CD−SEM(SEM:走査型電子顕微鏡)を用いて測定する(ステップS13)。これにより、レジストパターン線幅206の実測値を得る。
続いて、ゲートの配線パターンを形成する(ステップS14)。詳細には、図2(a)に示した状態において、レジストパターン205をマスクとして、O2やCl2などのエッチングガスを用いて、有機反射防止膜204を多結晶シリコン膜203が露出するまでドライエッチングする。その後連続して、CXFYや、Cl2、HBr、O2などのエッチングガスを用いて、多結晶シリコン膜203をドライエッチングする。その後、酸素などのアッシングガスを用いたプラズマアッシングを用いて、レジストパターン205を除去し、フッ酸や硫酸などを用いたエッチ後洗浄処理を行うことにより、図2(b)に示すように、ゲート配線パターン207を形成する。
続いて、エッチング近接効果評価パターンを用いて形成したゲート配線パターン207の下部(ゲート絶縁膜202に接している箇所)のゲート配線パターン線幅208を、CD−SEMを用いて測定する(ステップS15)。これにより、ゲート配線パターン線幅208の実測値を得る。
続いて、ステップS14で行ったエッチング工程でのパターンシフトである、エッチシフトを算出する(ステップS16)。すなわち、エッチングによるパターンのシフト量を算出する。詳細には、以下の式(1)を用いて、エッチシフトを容易に算出することができる。
エッチシフト=ゲート配線パターン線幅208(実測値)−レジストパターン線幅206(実測値) …式(1)
続いて、ステップS16にて算出したエッチシフトに対して、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとする補正モデルを用いて、最小二乗法によるフィッティングを行う(ステップS17)。パターンサイズには、パターン301のサイズを示す値として幅の値が抽出される。また、パターン間スペースサイズには、パターン間スペース302のサイズを示す値として幅の値が抽出される。
このフィッティングの際には、補正モデルには、パターン間スペースサイズのパラメータをRとする場合、関数R−n(n:正の実数)および対数関数Log(R)が線形結合された式を少なくとも含ませて、パターンサイズの係数、およびパターン間スペースサイズの係数をそれぞれ算出する。
これにより、エッチング近接効果を反映した補正モデル、すなわち、エッチング近接効果補正モデルを作成する(ステップS18)。このエッチング近接効果補正モデルと、実際のエッチング近接効果により生じたエッチシフトを測定したときの実測値との間の関係を、図4(a)(b)に示す。
図4(a)は、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルにおける、パターン間スペース302の値に対してのエッチシフトの値(グラフ中の四角のポイント)と、パターン間スペース302の値に対してのエッチシフトの実測値(グラフ中の丸のポイント)とを示している。また、横軸はパターン間スペース302の幅(nm)を示し、縦軸はエッチシフト(nm)を示している。
図4(b)は、図4(a)に示したようなエッチング近接効果補正モデルにおけるエッチシフトの値を、エッチシフトの実測値にフィッティングした結果を示している。横軸はパターン間スペース302の幅(nm)を示し、縦軸は、フィッティングしたときの残差(モデルフィッティング残差)(nm)を示している。
上述したように、図12に示す手順で作成した従来のエッチング近接効果補正モデルでは、図12(b)に示したように各スペース領域において5nmを超えるモデルフィッティング残差が残っていたが、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルでは、図4(b)に示すように、いずれの領域においても5nmを超えるモデルフィッティング残差は発生していない。
よって、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルは、実測値との間に良い一致が得られる。したがって、高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となる。
なお、関数R−nは、レジスト下部形状による依存性を含めた、フォトレジストの下層に設けられる有機反射防止膜204をエッチングする際のパターン依存性を良く再現し、また、対数関数Log(R)は、ゲート配線パターン207を形成するために多結晶シリコン膜203をエッチングする際のパターン依存性を良く再現する。これにより、エッチング近接効果補正モデルには、関数R−nおよび対数関数Log(R)が線形結合された式が含まれているので、高精度を実現することが可能となっている。
つまり、従来のエッチング近接効果補正モデルの精度が低かった理由は、パターン間スペースの幅が広いスペース領域では、エッチング中の副生成物の生成およびパターン側壁への入射によって生じる側壁保護効果がパターン間スペースRのLog関数に依存すること、一方、パターン間スペースの幅が狭いスペース領域では、エッチシフトがマスクパターンのすそ引きによるパターン間スペースRの関数R−2に依存していることにより、精度が低下するという原因に対応していなかったためと考えられる。
また、特に、関数R−1は、有機反射防止膜204をエッチングする際のパターン依存性を、関数R−2は、エッチングによりパターンがシフトする際の、レジストパターン205のレジスト下部形状による依存性を、非常に良く再現する。実際に、エッチング近接効果補正モデルの作成時に、関数R−nにおいて、n=3,2,1,−1をそれぞれ代入してフィッティングを行った結果、n=2,1の場合が、エッチング近接効果補正モデルの精度を高める影響度の大きいパラメータであることを確認した。それゆえ、上記関数R−nは、1≦n≦2の範囲で設定されることが望ましい。
また、エッチング近接効果補正モデルが、図3に示したような一定のパターンピッチ303を有する繰り返しパターンが定められたエッチング近接効果評価パターンを用いて、算出したエッチシフトに基づいて作成されている場合、エッチシフトは容易に算出でき、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズのパラメータも抽出するのには複雑なものとなっていないので、エッチシフトに対しての、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとして用いることによるモデル化を容易に行うことが可能となる。
ここで、エッチング近接効果補正モデルがパラメータとする、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズについて詳細に説明する。
図3に示したような繰り返しパターンが設定されている場合、図5(a)に示すように、パターン補正を行う点Pに対して、設定した範囲Q内に存在するパターン301の一部分311が、パターンサイズの値を抽出する対象として想定される。同様に、図5(b)に示すように、パターン補正を行う点Pに対して、設定した範囲Q内に存在するパターン間スペース302の一部分312が、パターン間スペースサイズの値を抽出する対象として想定される。
図5(a)(b)に示した繰り返しパターンのような、1次元(図中、横方向)のパターンについては、パターンサイズは一部分311の横幅と同等の量になり、パターン間スペースサイズは一部分312の横幅と同等の量になる。ゆえに、パターン補正を行う点Pと移動していくことによって、その都度、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズの値を抽出していくことができる。
また、1次元のパターンではなく、例えば、2次元のパターン(縦横方向)の場合については、パターン補正を行う点Pに対して、設定した範囲Q内で直線上に見える領域がそれぞれの値を抽出する対象として想定される。つまりは、パターンサイズは、図6(a)に示すように、パターン321の領域(面積)と同等の量になり、パターン間スペースサイズは、図6(b)に示すように、設定した範囲Q内に存在するパターン間スペース322の一部分323の領域と同等の量になる。
(半導体装置の製造方法)
次に、図7を参照しながら、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルを用いてマスクパターンの補正を行うエッチング近接効果補正工程、を含む半導体装置の製造方法について説明する。
なお、この説明では、上述した比較例としてのエッチング近接効果補正モデルを用いてマスクパターン(特にゲートの配線パターン)を補正し、その補正したマスクパターンを有するマスクを用いて微細加工プロセスにより配線パターンを基板上に形成する場合について説明するが、後述するように、比較例としてのエッチング近接効果補正モデルに替えて、本実施の形態のエッチング近接効果補正モデルを適用することもできる。
図7は、半導体装置の製造方法の製造方法を示すフローチャートである。
まず、半導体装置を製造するための設計データ、つまりは配線パターン(ゲートを含む)を形成するためのマスクデータを作成する(ステップS21)。または、予め作成されたマスクデータを用意するという手順をとってもよい。
続いて、上記マスクデータすなわちマスクパターンに対して、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルを用いて、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズの補正を行うことにより、エッチング近接効果補正を施す(ステップS22)。つまりは、エッチング近接効果補正モデルを用いたマスクパターン(特にゲートの配線パターン)の補正を行い、エッチング近接効果補正を行ったマスクデータを作成する。なお、このときのマスクパターンの補正は、図6に示したような2次元のパターンサイズおよびパターン間スペースサイズで定義したエッチング近接効果補正モデルを用いて、2次元の設計パターンに対し補正処理を行う。これにより、高精度の補正処理を実現することができる。
続いて、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いて、エッチング近接効果補正を行ったマスクデータに対して、マスクパターンのパターンサイズおよびパターン間スペースサイズの補正を行うことにより、リソグラフィー近接効果補正を施す(ステップS23)。これにより、リソグラフィー近接効果補正を行ったマスクデータを作成する。なお、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いたリソグラフィー近接効果補正の方法は、従来ある一般的な方法を好適に用いればよい。
続いて、マスクプロセス近接効果補正モデルを用いて、リソグラフィー近接効果補正を行ったマスクデータに対して、マスクパターンのパターンサイズおよびパターン間スペースサイズの補正を行うことにより、マスクプロセス近接効果補正を施す(ステップS24)。これにより、マスクプロセス近接効果補正を行ったマスクデータを作成する(ステップS25)。なお、マスクプロセス近接効果補正モデルを用いたマスクプロセス近接効果補正の方法は、従来ある一般的な方法を好適に用いればよい。
続いて、エッチング近接効果補正、リソグラフィー近接効果補正、およびマスクプロセス近接効果補正を順に施して作成したマスクデータに基づいて、通常のフォトマスク作製方法を用いて、プロセス近接効果補正マスク(フォトマスク)を作製する(ステップS26)。その後、通常の欠陥検査装置を用いて、プロセス近接効果補正マスクのパターン欠陥の検査を行う(ステップS27)。
上記検査を経て不良点が発見されなかったプロセス近接効果補正マスクは、高精度なエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果補正が施されたマスクデータに基づいたマスクパターンを有するプロセス近接効果補正マスクとして実現される。
続いて、リソグラフィー工程を実施する(ステップS28)。詳細には、配線パターンを形成する半導体装置の下地構造上に、プロセス近接効果補正マスクと、エッチング近接効果補正モデルの作成に用いたリソグラフィー条件とを用いて、レジストパターンを形成する。
続いて、形成したレジストパターンに基づいて、エッチング工程を実施する(ステップS29)。詳細には、レジストパターンをマスクとして、エッチング近接効果補正モデルの作成に用いたエッチング条件で、エッチング処理を行う。これにより、下地構造に配線パターンを形成することができる(ステップS30)。
これにより形成された配線パターン、特にゲートの配線パターンは、エッチング近接効果補正、リソグラフィー近接効果補正、およびマスクプロセス近接効果補正を順に施して作成したマスクデータに基づいて形成されたものであるので、設計寸法通りに精度良く形成することが可能となる。また、これにより、ゲート線幅のばらつきを抑制しゲートの微細化を行うことができるので、トランジスタの高速化や高集積化を実現することが可能となる。
ところで、上述した半導体装置の製造方法の説明では、それぞれ独立に作成した、エッチング近接効果補正モデル、リソグラフィー近接効果補正モデル、およびマスクプロセス近接効果補正モデルを用いる場合について示した。この場合、1つの近接効果補正モデルに誤差があれば、他の近接効果補正ではその誤差は補正されないため、最終的に形成される配線パターンの線幅の誤差が大きくなる。この一例について説明する。
図8は、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差があり、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果補正を行う場合における、(a)はレジストパターン線幅のパターン依存性を示すグラフであり、(b)はエッチシフトのパターン依存性を示すグラフであり、(c)は配線パターン線幅のパターン依存性を示すグラフである。図8(a)〜(c)では、横軸はパターン間スペースの幅(nm)を示し、縦軸はレジストパターン線幅(nm)、エッチシフト(nm)、配線パターン線幅(nm)をそれぞれ示している。
図8(a)に示すように、エッチング近接効果補正を行う場合、エッチング近接効果・リソグラフィー近接効果補正後の理想的なレジストパターン線幅のパターン間スペース依存性501は、図8(b)に示す、エッチング後の実際のエッチシフトのパターン間スペース依存性504を補正したものである。
しかし、実際には、一例として、リソグラフィー近接効果補正モデルの作成過程で生じるリソグラフィー近接効果補正モデルの誤差502が生じる場合が多い。そのため、エッチング近接効果・リソグラフィー近接効果補正後の実際のレジストパターン線幅のパターン間スペース依存性503は、パターン間スペースが400nm以下の領域でレジストパターン線幅が細くなる方向に、最大で約9nmの誤差が発生する。
なお、図8(c)に示すように、エッチング近接効果補正を行う場合、エッチング近接効果・リソグラフィー近接効果補正後の理想的な配線パターン線幅のパターン間スペース依存性505は、パターン間スペースの値によらず一定である。
しかし、エッチング後の実際の配線パターン線幅のパターン間スペース依存性506は、実際のエッチシフトのパターン間スペース依存性504の影響は補正されているが、パターン間スペースが400nm以下の領域でレジストパターン線幅が細くなる方向に最大で発生した約9nmのリソグラフィー近接効果補正モデルの誤差502の影響を受け、結果として配線パターン線幅のパターン間ばらつき507が残ってしまう(ばらつき幅:約12.5nm)。
したがって、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合、図1に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果補正を行うことで、実際の配線パターンの線幅のパターン間ばらつきを低減することが可能となってはいるが、さらなる低減が望まれている。
本発明では、このような配線パターン線幅のパターン間ばらつきをさらに低減するために、例えばリソグラフィー近接効果補正モデルの誤差をエッチング近接効果補正で吸収することで、最終のパターン補正精度をさらに向上することが可能となっている。次に、本発明のエッチング近接効果補正モデルの作成方法の一実施例について説明する。
(エッチング近接効果補正モデルの作成方法)
本発明の一実施形態について図9,10に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図9は、本実施の形態のエッチング近接効果補正モデルの作成方法を示すフローチャートである。
まず、図1を用いて説明した作成方法のステップS11〜S12と同様に、下地構造を形成し(ステップS31)、その上にレジストパターンを形成する(ステップS32)。
続いて、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いて、形成したレジストパターンに対しシミュレーションを行うことにより、レジストパターン線幅を算出する(ステップS33)。これにより、レジストパターン線幅のシミュレーション値を得る。
このとき、リソグラフィー近接効果補正モデルとしては、図7に示したステップS23のリソグラフィー近接効果補正工程において使用するリソグラフィー近接効果補正モデルを用い、リソグラフィー近接効果補正モデル作成ツールのシミュレーション機能を用いて、エッチング近接効果評価パターンの設計レイアウトから、レジストパターン形状をシミュレーションし、その線幅を測定する。
この際、レジストパターン線幅の実測値とシミュレーション値との間には、以下の式(2)の関係が成り立っている。
レジストパターン線幅(実測値)=レジストパターン線幅(シミュレーション値)+リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差 …式(2)
続いて、図1を用いて説明した作成方法のステップS14〜S15と同様に、ゲート配線パターンを形成し(ステップS34)、ゲート配線パターン線幅を測定する(ステップS35)。これにより、ゲート配線パターン線幅の実測値を得る。
続いて、ステップS34で行ったエッチング工程でのパターンシフトである、エッチシフトを算出する(ステップS36)。すなわち、エッチングによるパターンのシフト量を算出する。この際、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いて算出したレジストパターン線幅のシミュレーション値と、ゲート配線パターン線幅の実測値とから、以下の式(3)を用いてエッチシフトを算出する。
エッチシフト=ゲート配線パターン線幅(実測値)−レジストパターン線幅(シミュレーション値) …式(3)。
ここで、式(2)および式(3)から、以下の式(4)の関係が成り立つため、上記手法を用いることで、実測値から算出されたエッチシフトに加えて、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を含んだエッチシフトを算出することができる。
エッチシフト=配線パターン線幅(実測値)−レジストパターン線幅(実測値)+リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差 …式(4)
続いて、図1を用いて説明した作成方法のステップS17と同様に、ステップS36にて算出したエッチシフトに対して、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとする補正モデルを用いて、最小二乗法によるフィッティングを行う(ステップS37)。これにより、エッチング近接効果補正モデルを作成し得る(ステップS38)。
図1に示した比較例としてのエッチング近接効果補正モデルの作成方法では、ステップS16でエッチシフトを算出する際、ステップS13で測定したレジストパターン線幅の実測値と、ステップS15で測定した配線パターン線幅(ゲート配線パターン線幅)の実測値とを用いて計算している。
これに対し、図9に示した本実施の形態のエッチング近接効果補正モデルの作成方法では、ステップS36でエッチシフトを算出する際、ステップS33でリソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより算出したレジストパターン線幅のシミュレーション値と、ステップS35で測定した配線パターン線幅の実測値とを用いて計算している。
すなわち、エッチシフトは、リソグラフィー近接効果補正モデルを用いてシミュレーションを行うことにより算出したレジストパターンの線幅のシミュレーション値を用いて算出している。それゆえ、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合、この誤差をエッチシフトの中に含めることが可能となり、誤差を考慮したフィッティングを行うことが可能となる。
よって、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収したエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となり、パターン補正精度をさらに向上することが可能となる。また、エッチング近接効果補正モデルは、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズで定義されるので、精度良く作成される。したがって、非常に高精度のエッチング近接効果補正モデルを作成することが可能となる。
また、本実施の形態のエッチング近接効果補正モデルの作成方法では、レジストパターン線幅の測定工程を削減することができるため、図1に示した比較例としてのエッチング近接効果補正モデルの作成方法と比較して、モデル作成期間の短縮が可能となる。
図10は、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差があり、図9に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果補正を行う場合における、(a)はレジストパターン線幅のパターン依存性を示すグラフであり、(b)はエッチシフトのパターン依存性を示すグラフであり、(c)は配線パターン線幅のパターン依存性を示すグラフである。図10(a)〜(c)では、横軸はパターン間スペースの幅(nm)を示し、縦軸はレジストパターン線幅(nm)、エッチシフト(nm)、配線パターン線幅(nm)をそれぞれ示している。
図10(a)に示すように、エッチング近接効果補正を行う場合、エッチング近接効果・リソグラフィー近接効果補正後の理想的なレジストパターン線幅のパターン間スペース依存性601は、図10(b)に示す、エッチング後の実際のエッチシフトのパターン間スペース依存性604を補正したものである。
ここで、実際には、リソグラフィー近接効果補正モデルの作成過程で生じるリソグラフィー近接効果補正モデルの誤差602が生じる場合が多く、一例として、パターン間スペースが400nm以下の領域でレジストパターン線幅が細くなる方向に、最大で約9nmの誤差が発生する。
ところが、本実施例では、エッチング近接効果補正を行う際に用いるエッチング近接効果補正モデルが、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差602を吸収している。よって、誤差602がある場合でも、エッチング近接効果・リソグラフィー近接効果補正後の実際のレジストパターン線幅のパターン間スペース依存性603は、誤差602を吸収して、理想的なレジストパターン線幅のパターン間スペース依存性601に非常に近づけることが可能となっている。
また、図10(c)に示すように、エッチング近接効果補正を行う場合、エッチング近接効果・リソグラフィー近接効果補正後の理想的な配線パターン線幅のパターン間スペース依存性605は、パターン間スペースの値によらず一定である。
本実施例では、エッチング後の実際の配線パターン線幅のパターン間スペース依存性606は、実際のエッチシフトのパターン間スペース依存性604、および、パターン間スペースが400nm以下の領域でレジストパターン線幅が細くなる方向に最大で発生した約9nmのリソグラフィー近接効果補正モデルの誤差602の影響が補正されているので、パターン間ばらつき607を非常に小さくすることが可能となっている(ばらつき幅:約7.9nm)。
このように、本実施の形態のエッチング近接効果補正モデルを用いたマスクパターンの補正では、設計パターン(設計データ)に対し、エッチング近接効果補正処理を行う際に、リソグラフィー近接効果補正モデルの誤差を吸収することができる。よって、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を非常に高精度で行うことが可能となり、設計寸法に非常に近づく配線パターンの形成につなげることが可能となる。
つまりは、図7を参照して説明した半導体装置の製造において、ステップS22のエッチング近接効果補正工程で、マスクパターンに対し、本実施の形態のエッチング近接効果補正モデルを用いてエッチング近接効果に対する補正を行うことによって、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合であっても、マスクパターンの補正を非常に高精度で行うことが可能となり、最終の配線パターンに対してさらに高精度な補正が可能となる。
またこれにより、エッチング近接効果に対する補正が非常に高精度で行われたマスクパターンを有するプロセス近接効果補正マスクを作成することが可能となる。
さらには、上記プロセス近接効果補正マスクを用いて配線パターンが形成されるので、リソグラフィー近接効果補正モデルに誤差がある場合であっても、設計寸法通りの非常に優れた精度で、配線パターンを形成することが可能となる。すなわち、所望の寸法を持つ配線パターンが非常に高精度で形成された半導体装置を実現することが可能となる。
なお、上述した説明では、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を、パターンサイズおよびパターン間スペースサイズをパラメータとするエッチング近接効果補正モデルを用いて行う場合について説明したが、エッチング近接効果補正モデルから、様々なパターンサイズおよびパターン間スペースサイズに対して、エッチシフトを計算することが可能になるため、パターンサイズとパターン間スペースサイズとの組み合わせにより補正量を規定した補正ルールを用いて、エッチング近接効果に対するマスクパターンの補正を行うこともできる。次に、この補正ルールの一例について説明する。
(補正ルール)
図9に示す手順で作成したエッチング近接効果補正モデルを用いることにより、パターンの幅およびパターン間スペースの幅に対して、補正量を一定の間隔(例えば1nm)で算出する。そして、算出した補正量と、パターンの幅およびパターン間スペースの幅との組合せ(補正ルール表)を作成する。これにより、補正ルールを規定することができる。
補正ルールを用いた補正処理は、図5に示したような横方向スペースによる1次元(横方向)のみの補正を想定している。つまりは、補正処理を行うパターンのレイアウトにおいて、パターンのエッジを一定の長さ(例えば50nm)に細分化してエッジセグメントを形成する。そして、それぞれのエッジセグメントに対して、パターンの幅およびパターン間スペースの幅を測定する。そして、補正ルール表を参照しながら、測定したパターンの幅およびパターン間スペースの幅から、補正量を抽出する。この補正量の分だけ、エッジセグメント内のパターンのエッジを移動させることにより、パターン補正処理を行う。
エッチング近接効果補正モデルを直接用いた補正処理は、図6に示したような2次元の設計パターンに対し補正処理を行うが、エッチング近接効果補正モデルを用いて算出したデータにより規定した補正ルールを用いた補正処理は、図5に示したような横方向のスペースによる1次元(横方向)のみの補正処理を行う。
それゆえ、補正ルールを用いた補正処理は、補正処理の際に、各エッジセグメントに対し、1次元(横方向)のみのパターンサイズおよびパターン間スペースサイズを検出すればよいため、補正処理にかかる時間を短縮することが可能となる。但し、1次元(横方向)のみのパターンサイズおよびパターン間スペースサイズしか考慮しないため、補正精度は幾分低下する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。