JP5353111B2 - Sars3clプロテアーゼの組換えタンパク質 - Google Patents

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Description

本発明は、SARS 3CLプロテアーゼの組換えタンパク質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、及び前記組換えタンパク質のSARS 3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質をスクリーニングする方法等に関する。
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、新型コロナウイルス(SARS CoV)の感染により発症する急性呼吸器疾患である(非特許文献1〜3)。2003年にSARS CoVの存在が確認されて以降、SARS CoVを標的としたSARSの治療方法を開発すべく研究が進められているが、いまだSARSに対する有効な治療方法は確立されていない。
SARS CoVは、ポジティブセンスの一本鎖RNAウイルスであり、今日知られている中で最大のウイルスRNAゲノムを有する(非特許文献4,5)。SARS CoVのゲノムRNAは、ポリタンパク質1a(〜450kDa)および1ab(〜750kDa)という、重複配列を有する2種類の大きなタンパク質をコードしている。ゲノムRNAがポリタンパク質1aおよび1abに翻訳され、さらに、翻訳されたこの2種類のタンパク質が2種類もしくは3種類のウイルスプロテアーゼによって自己触媒的に切断されることで機能性ポリペプチドが生じる(非特許文献6)。この切断は、主に、3C-様プロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)と呼ばれる33kDaのプロテアーゼにより行われる(非特許文献7,8)。3C-様プロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)という名前は、その基質特異性がピコルナウイルス3Cプロテアーゼのものに類似していることに由来する。
天然型SARS 3CLプロテアーゼは、キモトリプシンフォールドを含むアミノ酸306残基からなるシステインプロテアーゼであり、ポリタンパク質1aおよび1abを、P1位置の保存されたGlnやP1’位置の小さいアミノ酸(Ser、Ala又はGly)を含む11個の保存部位で切断する。活性型のSARS 3CLプロテアーゼはホモ二量体として存在し、各33kDaのプロトマーは、2つの触媒残基(Cys−His)を含む活性部位を有する(図1)。
このようにSARS 3CLプロテアーゼは、ウイルス生活環において機能的に重要な役割を果たしており、SARS CoVの増殖に必須のタンパク質である。ウイルスの増殖に必須のSARS 3CLプロテアーゼの働きを阻害することで、SARS CoVの増殖を抑制することができ、SARSの治療にもつながると考えられる。このため、SARS 3CLプロテアーゼは、構造に基づいて行うSARSに対する薬剤設計の魅力的な標的であり、これまでにいくつかのSARS 3CLプロテアーゼ阻害物質が報告されている(非特許文献9)。しかし、今日までSARSの治療につながるようなSARS 3CLプロテアーゼ阻害物質は見つかっていない。
Lee, N. et al. (2003) A major outbreak of severe acute respiratory syndrome in Hong kong. N. Engl. J. Med. 348, 1986-1994. Drosten, C. et al. (2003) Identification of a novel coronavirus in patients with severe acute respiratory syndrome. N. Engl. J. Med. 348, 1967-1976. Ksiazek, T. G. et al. (2003) A novel coronavirus associated with severe acute respiratory syndrome. N. Engl. J. Med. 348, 1953-1966. Rota, P. A. et al. (2003) Characterization of a novel coronavirus associated with severe acute respiratory syndrome. Science 300, 1394-1399. Marra, M. A. et al. (2003) The genome sequence of the SARS-associated coronavirus. Science 300, 1399-1404. Thiel, V. et al. (2003) Mechanisms and enzymes involved in SARS coronavirus genome expression. J. General Viol. 84, 2305-2315. Anand, K. et al. (2002) Structure of coronavirus main proteinase reveals combination of a chymotrypsin fold with an extra -helical domain. EMBO J. 21, 3213-3224. Anand, K. et al. (2003) Coronavirus Main Proteinase (3CLpro) Structure: Basis for Design of Anti-SARS Drugs. Science 300, 1763-1767. Kaeppler, U. et al. (2005) A New Lead for Nonpeptidic Active-Site-Directed Inhibitors of the Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Main Protease DisCoVered by a Combination of Screening and Docking Methods. J. Med. Chem. 48, 6832-6842.
このような状況の下、SARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質の効率的なスクリーニング方法が求められていた。
本発明者は、SARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質の効率的なスクリーニング方法を開発すべく検討を重ねた。本発明者は、検討を重ねる中で、天然型のSARS 3CLプロテアーゼは、その発現と平行してその分解が進行していることを見出した。すなわち、天然型SARS 3CLプロテアーゼは発現から比較的短時間で分解が進行する結果、安定なSARS 3CLプロテアーゼを大量に調製することができず、このため、これまでSARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質を効率的にスクリーニングすることができなかったことが分かった。本発明者は、さらに検討を重ね、発現後比較的長時間の間分解がほとんど起こらない変異型SARS 3CLプロテアーゼ(安定型SARS 3CLプロテアーゼともいう)を開発した。そして、本発明者は、この開発した変異型SARS 3CLプロテアーゼを用いてSARS 3CLプロテアーゼ阻害物質をスクリーニングすることで、SARS 3CLプロテアーゼ阻害物質を効率的にスクリーニングすることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、又は
前記置換されたアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3CLプロテアーゼ活性を有する、組換えタンパク質。
(2)前記第188番目のアミノ酸と置換される他のアミノ酸が、イソロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グリシン、メチオニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン及びグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸である、上記(1)に記載の組換えタンパク質。
(3)前記第188番目のアミノ酸と置換される他のアミノ酸がイソロイシンである、上記(2)に記載の組換えタンパク質。
(4)以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3CLプロテアーゼ活性を有する、組換えタンパク質
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(6)以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、3CLプロテアーゼ活性を有し、かつ、第188番目のアミノ酸がイソロイシンであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(7)上記(5)又は(6)に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
(8)上記(7)に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(9)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組換えタンパク質に候補物質を接触させ、候補物質の中から前記組換えタンパク質の3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質をスクリーニングする方法。
(10)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組換えタンパク質を含む、前記組換えタンパク質の3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質のスクリーニング用キット。
(11)CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOからなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその塩を含む、SARS 3CLプロテアーゼ阻害剤。
(12)CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOからなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその塩を含む、SARS治療用医薬組成物。
(13)CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOからなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその塩を用いる、SARS 3CLプロテアーゼの阻害方法。
(14)CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOからなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその塩を患者に投与することを含む、SARSの治療方法。
本発明は、発現後比較的長時間の間分解がほとんど起こらない変異型SARS 3CLプロテアーゼ、及びその変異型SARS 3CLプロテアーゼを用いて行うSARS 3CLプロテアーゼ阻害物質の効率的なスクリーニング方法を提供する。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
1.概要
SARS CoVのSARS 3CLプロテアーゼは、SARS CoVの増殖のための主要酵素である。したがって、SARS 3CLプロテアーゼを阻害することができれば、SARS CoVの増殖を抑制することができ、結果としてSARSの治療につながると考えられる。このため、SARSの治療につながるようなSARS 3CLプロテアーゼ阻害物質が求められていた。しかし、現在までに、SARSの治療につながるような有効な阻害物質は見つかっていない。SARS 3CLプロテアーゼに対する有効な阻害物質が見つからない原因は、これまでSARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質の効率的なスクリーニング方法がないことにあると考えられた。そこで、本発明者は、SARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質の効率的なスクリーニング方法を開発すべく検討を重ねた。
本発明者は、天然型SARS 3CLプロテアーゼにMBP(マルトース結合タンパク質)−His(6個のヒスチジン)−Flagタグを結合した融合タンパク質を用いた研究において、天然型SARS 3CLプロテアーゼがその発現と平行して2つのタンパク質断片に分解され、その結果、SARS 3CLプロテアーゼの触媒活性が低下することを見出した。さらに、そのタンパク質断片を用いた配列決定解析により、SARS 3CLプロテアーゼが第188番目のアミノ酸であるアルギニンと第189番目のアミノ酸であるグルタミンの間で分解を受けることが判明した。すなわち、天然型SARS 3CLプロテアーゼの発現と平行してその分解が進行していた結果、安定なSARS 3CLプロテアーゼを大量に調製することができず、このため、これまでSARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質を効率的にスクリーニングすることができなかったと考えられた。
本発明者は、さらに検討を重ね、発現から比較的長時間分解がほとんど起こらない変異型SARS 3CLプロテアーゼ(安定型SARS 3CLプロテアーゼともいう)を開発した。この本発明の変異型SARS 3CLプロテアーゼは、天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸がイソロイシン等の他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる組換えタンパク質等である。天然型SARS 3CLプロテアーゼの第188番目の位置のアルギニンをイソロイシン等の他のアミノ酸に置換することで、発現から比較的長時間の間分解がほとんど起こらなくなり、SARS 3CLプロテアーゼの安定性が著しく向上した。後記の実施例に示したように、天然型SARS 3CLプロテアーゼの第188番目のアミノ酸をイソロイシンに置換したアミノ酸配列からなる組換えタンパク質は、ウンデカペプチド基質SO1をKm=33.8μMおよびkcat=4753s−1の効率で消化することができた。
また、この変異型SARS 3CLプロテアーゼを用いてSARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質のスクリーニングを行うことで、阻害物質を効率的にスクリーニングすることができた。スクリーニングの結果、テトラペプチドアルデヒドAc-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOがSARS 3CLプロテアーゼの触媒活性を中程度に阻害する物質であること、及びシステインプロテアーゼに対する代表的な阻害物質であるE−64がSARS 3CLプロテアーゼに対する阻害活性をほとんど示さない物質であることが分かった。また、CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOも、SARS 3CLプロテアーゼの触媒活性を阻害する物質であることが分かった。
2.変異型SARS 3CLプロテアーゼ
2.1.組換えタンパク質
本発明の組換えタンパク質は、天然型のSARS 3CLプロテアーゼと異なり、発現から比較的長時間の間分解がほとんど生じない変異型SARS 3CLプロテアーゼ(安定型SARS 3CLプロテアーゼ)である。この変異型SARS 3CLプロテアーゼを用いることで、例えば、SARS 3CLプロテアーゼに対する阻害物質を効率的にスクリーニングすることができる。SARS 3CLプロテアーゼは、SARS CoVの増殖に重要な役割を果たす。このため、SARS 3CLプロテアーゼの働きを阻害することができれば、SARS CoVの増殖を抑制することができ、SARS患者の治療につながる。したがって、SARS 3CLプロテアーゼに対する有効な阻害物質のスクリーニングは、SARSに対する有効な治療薬を開発につながる。
天然型のSARS 3CLプロテアーゼは、306アミノ酸残基からなるシステインプロテアーゼであり、活性型はホモ二量体を形成する。天然型SARS 3CLプロテアーゼをコードする遺伝子のDNA配列を配列番号3(Accession No. AY345988)に、天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列を配列番号4(Accession No.NP_828849)に示す。SARS 3CLプロテアーゼのN末端側にはキモトリプシン様触媒ドメイン(アミノ酸残基1〜184)があり、一方、C末端側にはαへリックスドメイン(アミノ酸残基201〜303)がある。このうちN末端側のキモトリプシン様触媒ドメインに関して、N末端側のキモトリプシン様触媒ドメインのみを発現した場合にSARS 3CLプロテアーゼの触媒効率が低下するということが報告されている(Bacha, U. et al. (2004) Biochemistry 43, 4906-4912.)。また、C末端側のαへリックスドメインは、SARS 3CLプロテアーゼがホモ二量体を形成する時に、一方のプロトマーのN末端が他方のプロトマーの活性部位と相互作用しうる位置にくるように2つのプロトマーを導く役割を果たすと考えられている(Yang, H. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100, 13190-13195.)。このようなN末端側のキモトリプシン様触媒ドメインとC末端側のαへリックスドメインの間には、これらのドメインをつなぐ長いループ領域(アミノ酸残基185〜200)が存在する。天然型のSARS 3CLプロテアーゼでは、その発現と平行して、自己触媒的作用によりこのループ領域で分解が生じる。天然型のSARS 3CLプロテアーゼの切断箇所は、具体的には、第188番目のアミノ酸であるアルギニン(Arg)と第189番目のアミノ酸であるグルタミン(Gln)の間であると考えられる。
本発明の組換えタンパク質は、天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸(アルギニン)を他のアミノ酸に置換することで、発現から比較的長時間の間分解がほとんど生じないような安定型のSARS 3CLプロテアーゼとすることができたものである。
具体的には、本発明の組換えタンパク質は、天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、又は前記置換されたアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3CLプロテアーゼ活性を有する、組換えタンパク質である。
上記第188番目のアミノ酸と置換される他のアミノ酸(以下、置換可能なアミノ酸ともいう)としては、アルギニン以外のアミノ酸であれば特に限定されず、例えば、残りの19種の生体内のアミノ酸を挙げることができる。本発明の好ましい態様によれば、置換可能なアミノ酸は他の酵素の認識部位になりにくいアミノ酸であり、そのようなアミノ酸としては、例えばイソロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グリシン、メチオニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン及びグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸を挙げることができる。置換可能なアミノ酸は、より好ましくは、イソロイシンである。
上記「1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加された」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味し、欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン; B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸; C群:アスパラギン、グルタミン; D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸; E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン; F群:セリン、スレオニン、ホモセリン; G群:フェニルアラニン、チロシン。
上記「1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加された」とは、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜19個、1〜18個、1〜17個、1〜16個、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個若しくは1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたことを意味する。「1〜数個」とは、例えば、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個又は1個を意味する。
上記第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列は、天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列と例えば80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
ここで、「3CLプロテアーゼ活性を有する」とは、システインプロテアーゼとして働くこと、例えば、SARS CoVのゲノムRNAがコードするポリタンパク質1aやポリタンパク質1ab等の基質をプロセッシングすることができることを意味する。3CLプロテアーゼ活性を有するか否かは、例えば次のようにして判断することができる。先ず、精製した組換えタンパク質に基質を接触させ、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などにより基質切断反応の分析を行い、Michaelis定数(Km)、速度定数(kcat)及びkcat/Kmを求める。そして、前記天然型SARS 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる組換えタンパク質のkcat/Kmを1としたとき、前記置換されたアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる組換えタンパク質のkcat/Kmの相対比が、例えば0.2以上、より好ましくは0.4以上、0.6以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.5以上、又は2.0以上である場合に、該欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる組換えタンパク質が3CLプロテアーゼ活性を有すると判断することができる。
他の基質切断反応の分析方法としては、たとえばquenched-FRET assayと呼ばれる方法がある(例えば、J.E.Blanchard et.al., Chemistry and Biology 11, 2004, 1445-1453.、C.J.Kuo et.al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 318, 2004, 862-867.、及びY.C.Liu et.al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 333, 2005,194-199.参照。)。この方法では、3CLプロテアーゼの基質ペプチドのN末端に蛍光化合物を、C末端に消光化合物を結合させたものを用いる。通常の状態でこのペプチド化合物にある一定波長の蛍光を照射しても、C末端に結合された消光化合物の影響によりN末端の蛍光化合物からの蛍光は観測されない。しかし、3CLプロテアーゼを作用させると基質ペプチド配列で切断が生じるため、蛍光化合物と消光化合物が離れてしまい、消光化合物の影響がなくなる。したがって、基質ペプチドの切断とともに蛍光が観測されるようになるので、この蛍光を測定することによって基質の切断を間接的に測定することができる。蛍光化合物としては、例えばanthranilate化合物などが、消光化合物としては、例えばnitorotyrosine化合物などを用いることができる。
本発明の好ましい態様の組換えタンパク質は、以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質である。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3CLプロテアーゼ活性を有する、組換えタンパク質。
上記(a)のタンパク質は、配列番号2に示すように、天然型SARS 3CLプロテアーゼを構成する306個のアミノ酸配列のうち、第188番目のアミノ酸であるアルギニン(Arg,R)が、アルギニン以外のアミノ酸であるイソロイシン(Ile,I)に置換された組換えタンパク質(R188I)である。
ここで、アミノ酸の表記は、一般に、3文字(「Arg」及び「Ile」等)又は1文字(「R」及び「I」等)のアルファベットで表す。そして、例えば「R188I」と表示した場合、数字「188」は置換されるアミノ酸の位置を表し、数字の前に表示したアルファベットは置換前のアミノ酸を表し、数字の後に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸を表す。したがって、「R188I」は、第188番目のアルギニンをイソロイシンに置換したことを意味する。
尚、上記(b)のタンパク質における、「1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加された」と「3CLプロテアーゼ活性を有する」に関しては、組換えタンパク質に関する先の説明を同様に適用することができる。
2.2.組換えポリヌクレオチド
上述した本発明の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを挙げることができる。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、3CLプロテアーゼ活性を有し、かつ、第188番目のアミノ酸がイソロイシンであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
上記(a)のポリヌクレオチド(具体的にはDNA。以下、これらを単に「DNA」とも称する)は、配列番号1に示すように、SARS 3CLプロテアーゼをコードする塩基配列のうち、翻訳後に第188番目のアミノ酸がイソロイシンに置換されるように、塩基を置換変異させたものである。具体的には、第562番目〜第564番目の塩基について、イソロイシンのコドンに対応するように「aga」を「ata」に変異させたものである。第188番目のアミノ酸をイソロイシンに置換する場合、「aga」を「ata」に変異させる他、「aga」を「atc」や「att」に変異させるようにしても良い。
上記(a)のDNAは、翻訳後に第188番目のアミノ酸がイソロイシンに置換されるように塩基を置換変異させたものであるが、本発明はこれに限定されず、翻訳後に第188番目のアミノ酸がアルギニンを除く他のアミノ酸に置換されるように、塩基を置換変異させたものでも良い。アルギニンを除く他のアミノ酸としては、前述した例示が同様に適用できる。そして第562番目〜第564番目の塩基について、アルギニンを除く他のアミノ酸のコドンに対応するように、「aga」を変異させれば良い。
このような変異置換型DNAは、一般には、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて調製することができる。
また、後述する実施例に記載のPCRプライマーを用い、SARS 3CLプロテアーゼをコードする塩基配列を含むDNA等を鋳型として適当な条件下PCRを行うことにより調製することもできる。PCRに用いるDNAポリメラーゼは、限定されないが、正確性の高いDNAポリメラーゼであることが好ましく、例えば、Pwo DNA(ポリメラーゼロシュ・ダイアグノスティックス)、Pfu DNAポリメラーゼ(プロメガ)、プラチナPfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡)等が好ましい。PCRの反応条件は、用いるDNAポリメラーゼの最適温度、合成するDNAの長さや種類等によって異なるが、90〜98℃で5〜30秒(熱変性)、50〜65℃で5〜30秒(アニーリング)、65〜80℃で30〜1200秒(伸長)のセットを1サイクルとして20〜200サイクル、特には20〜35サイクル行うようにすることが好ましい。
上記(b)のDNAは、上記(a)のDNA若しくはそれと相補的な塩基配列からなるDNA、又はこれらの断片をプローブとして用い、コロニーハイブリダイゼーション、及びプラークハイブリダイゼーション等の公知のハイブリダイゼーション法を実施し、cDNAライブラリーやゲノムライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用してもよいし、市販のcDNAライブラリーやゲノムライブラリーを利用してもよく、限定はされない。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等を適宜参照することができる。
上記「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
これ以外にハイブリダイズ可能なDNAとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号1に示される塩基配列と約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。
2.3.組換えベクター
本発明の組換えタンパク質を発現させるためには、発現ベクターに、上述した本発明の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(必要に応じ、当該ポリヌクレオチドの上流に転写プロモーターやSD配列(宿主が原核細胞の場合)やKozak配列(宿主が真核細胞の場合)を、下流にターミネーターを、PCR等により付加しておく)が含まれるように挿入して構築される、組換えベクターが用いられる。上記転写プロモーター等、タンパク質の発現に必要な各要素は、当該ポリヌクレオチドに含まれていてもよいし、発現ベクターにもともと含まれている場合はそれを利用してもよく、限定はされない。発現ベクターに当該ポリヌクレオチドを挿入するには、制限酵素を用いる方法や、トポイソメラーゼを用いる方法等を利用する。
発現ベクターとしては、本発明の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを保持し得るものであれば、限定はされず、それぞれの宿主細胞に適したベクターを適宜選択して使用することができる。
2.4.形質転換体
本発明の組換えタンパク質の発現は、上記組換えベクターを宿主となる細胞に導入して形質転換体を得、これを培養等することにより行うことができる。
宿主細胞としては、上記組換えベクターが導入された後、本発明の組換えタンパク質を発現し得るものであればよく、限定はされないが、例えば、ヒトやマウス等の各種動物細胞、各種植物細胞、大腸菌、枯草菌、酵母、カビ等が挙げられる。宿主細胞は、好ましくは、大腸菌である。
形質転換の方法は、限定はされず、宿主と発現ベクターの組み合わせを考慮し、適宜選択し実施することができるが、例えば、電気穿孔法、リポフェクション法、ヒートショック法、PEG法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法等が好ましく挙げられる。
得られる形質転換体においては、実際に用いた宿主と、組換えベクターに含まれる組換えタンパク質遺伝子のコドン型の宿主とが、一致していてもよいし、異なっていてもよく、限定はされない。
2.5.組換えタンパク質の製造方法
本発明の組換えタンパク質は、本発明の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを用いて製造することができる。
具体的には、まず、遺伝子組換え法の常法に従い、前述した本発明の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むようにした組換えベクターを新たに調製するか、あるいは本発明の組換えタンパク質の発現を誘導するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むようにした組換えベクターを新たに調製する。後者の場合、本発明の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、他のベクターに組み込んで発現させるようにしたものであってもよいし、宿主細胞のゲノムにコードされていて発現し得るものであってもよく、限定されない。
本発明では、本発明の組換えタンパク質のC末端とN末端の少なくとも一方の端に他のタンパク質を1つ以上結合させて、本発明の組換えタンパク質と当該他のタンパク質を含む融合タンパク質を発現させるようしても良い。当該他のタンパク質としては、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒスチジン(His)タグ配列、及びFlagタグ等を有するタンパク質を挙げることができる。好ましくは、本発明の組換えタンパク質を、そのN末端側にMBPとHisタグ配列とFlagタグを有するタンパク質(MBP-His-Flag タグ)を結合した融合タンパク質として発現させる。当該融合タンパク質を発現させた後、例えばMBPを結合したタンパク質を精製するための金属カラムあるいはアミロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、MBP-His-Flagタグを結合した本発明の組換えタンパク質を精製することができる。精製後、エンテロキナーゼ等の特異的消化酵素を用いた処理を行うことで、本発明の組換えタンパク質からMBP-His-Flagタグを切断し、タグ等を結合していない本発明の組換えタンパク質を得ることもできる。
次いで、調製した組換えベクターにより形質転換された細胞を培養し、得られる培養物から本発明の組換えタンパク質を採取することができる。なお、宿主細胞や発現ベクターの種類等については、前述したものと同様のものが適用できる。
ここで、「培養物」とは、培養上清、培養細胞(菌体)、又は細胞(菌体)の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の組換えタンパク質は、当該培養物中に蓄積される。形質転換体の培養方法は、宿主の培養に採用される通常の方法に従って行うことができる。
形質転換体を培養する培地は、宿主細胞(宿主菌)が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であることが好ましく、天然培地及び合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の炭水化物や、酢酸、プロピオン酸等の有機酸や、エタノール、プロパノール等のアルコール類等が挙げられる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩や、その他の含窒素化合物が挙げられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。その他に、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。
培養は、一般には、振とう培養又は通気攪拌培養(ジャーファーメンター)などの好気的条件下、10℃〜40℃(好ましくは25℃〜37℃)で1〜100時間行うことができる。pHの調整は、適宜、無機酸、有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。
本発明の組換えタンパク質の収率は、SDS-PAGE等の公知のタンパク質検出方法により確認することができる。
培養後、本発明の組換えタンパク質が宿主細胞(菌体)内に生産される場合は、ホモジナイザー処理や超音波処理等により細胞を破砕する。また、溶菌により宿主細胞を破砕する場合は、Lysozyme処理、凍結融解処理、低張液処理等を施すようにする。破砕後の液を遠心分離した後の上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製した本発明の組換えタンパク質溶液として得ることができる。
一方、培養後、本発明の組換えタンパク質が宿主細胞(菌体)外に生産される場合は、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により細胞(菌体)を除去する。
その後、硫安沈澱による抽出等により培養物中から本発明の組換えタンパク質を採取し、必要に応じてさらに透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等)を用いて、本発明の組換えタンパク質を単離精製することができる。
また、本発明の組換えタンパク質の製造に関しては、上述したような形質転換体を用いたタンパク質合成系のほか、生細胞を全く使用しない無細胞タンパク質合成系を採用して行うこともできる。
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内で本発明の組換えタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
この場合、使用する細胞抽出液の由来は、前述の宿主細胞であることが好ましい。細胞抽出液としては、例えば真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、より具体的には、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、マウスL-細胞、HeLa細胞、CHO細胞、出芽酵母、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は、濃縮あるいは希釈されたものであってもよいし、そのままであってもよく、限定はされない。
細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。
このような無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。例えば、試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等が挙げられる。
無細胞タンパク質合成によって産生された本発明の組換えタンパク質は、前述したようにクロマトグラフィー等の手段を適宜選択して、精製することができる。
3.スクリーニング
3.1.スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、前記本発明の組換えタンパク質に候補物質を接触させ、候補物質の中から前記組換えタンパク質の3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質をスクリーニングする方法である。本発明のスクリーニング方法によって得られる物質は、SARS 3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有するものである。SARS 3CLプロテアーゼを阻害することでSARS CoVの増殖を抑制することができるので、本発明のスクリーニング方法によって得られる阻害物質は、SARSに対する治療に利用することができる。
ここで「接触」とは、本発明の組換えタンパク質と候補物質とを同一の反応系又は培養系に存在させることを意味する。接触には、例えば、本発明の組換えタンパク質が含まれる溶液と候補物質とを混合すること、本発明の組換えタンパク質を発現する形質転換体の培養容器に候補物質を添加すること、及び本発明の組換えタンパク質を発現する形質転換体を候補物質の存在下で培養することなどが含まれる。
候補物質が、SARS 3CLプロテアーゼに対して阻害活性を有しているか否かは、例えば「H. Naka, K. Teruya, J. K. Bang, S. Aimoto, T. Tatsumi, H. Konno, K. Nosaka, K. Akaji; Evaluations of substrate specificity and inhibition at PR/p3 cleavage site of HTLV-1 protease; Bioorg. Med. Chem. Lett., 16 (2006) 3761-3764.」に記載の方法に従って判断する。具体的には、先ず、候補物質の存在下で本発明の組換えタンパク質と基質を接触させ、HPLCなどにより組換えタンパク質が基質を切断する反応の分析を行い、図6に示すような用量−応答曲線を引く。尚、図6中、縦軸の阻害(%)は、各濃度で阻害剤が存在する条件下でプロテアーゼにより基質が切断される量をHPLCで定量し、阻害剤が存在していない条件下でプロテアーゼが基質を切断する量を100として相対的に切断率を出し、これを100から引いて阻害率としたものである。そして、その用量−応答曲線からIC50値を求めて、IC50値が例えば50mM以下、10mM以下、6mM以下、5mM以下、1mM以下、または500μM以下、好ましくは200μM以下、より好ましくは100μM以下である場合に、候補物質はSARS 3CLプロテアーゼに対して阻害活性を有していると判断することができる。
ここでIC50値とは、本発明の組換えタンパク質による基質の切断活性を50%阻害する候補物質の濃度を意味する。候補物質のIC50値は、本発明の組換えタンパク質と基質を接触させて基質を切断させる際に、そこに異なる濃度の候補物質を添加して、各添加濃度(用量)での本発明の組換えタンパク質による基質の切断活性(反応)を算出し、用量-反応曲線を作成して、本発明の組換えタンパク質による基質の切断活性を50%阻害する候補物質の添加濃度を算出することによって決定できる。
また、他の測定方法としては、例えば、先に説明したquenched-FRET assayがある。
「候補物質」は、限定されないが、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物(高分子又は低分子化合物)、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出液、血漿などであり、これら物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。これら候補物質は塩を形成していてもよく、候補物質の塩として、生理学的に許容される酸(例えば、無機酸や有機酸など)や塩基(例えば、金属酸など)などとの塩が用いられる。候補物質としては、例えば、次の(a)〜(h)のいずれかの化合物を挙げることができる。(a)Ac-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
(b)Ac-Ile-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
(c)Ac-Ile-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CH2OH
(d)Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
(e)Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CH2OH
(f)Ac-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2))-CHO
(g)Ac-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CH2OH
(h)Ac-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO

ここで、上記(a)〜(h)のアミノ酸配列中、N末端側のAc-は、N末端がアセチル化していることを示す。また、C末端側の-CHOおよび-CH2OHは、それぞれ、C末端にアルデヒドおよびヒドロキシメチルを有することを示す。さらに、C末端側の-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOおよび-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CH2OHは、それぞれ、-Gln(Me2)-CHOおよび-Gln(Me2)-CH2OH(Meはメチルを表す)と表記することができる。尚、上記(a)〜(h)の化合物は、実施例に記載の方法またはそれと同様の方法で合成することができる。
スクリーニング方法としては、例えば、上記それぞれの候補物質を混合物のままスクリーニングする方法がある。また、それぞれの候補物質(例えば化合物)の一部のみの構造が異なる混合物群を調製し、そのままスクリーニングする方法もある。後者の方法を使い、候補物質(例えば化合物)の基本骨格の中で構造の異なる部位を少しずつずらした混合物群のスクリーニング結果を比較することで、基本骨格のどの部分が最も阻害活性に寄与するかをすばやく見積もることができる。
3.2.スクリーニング用キット
本発明のスクリーニング用キットは、前記本発明の組換えタンパク質を含む、前記組換えタンパク質の3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質のスクリーニング用キットである。キットには、さらに、必要に応じて、緩衝液、補助剤、専用容器、その他の必要なアクセサリー及び説明書からなる群から選択される少なくとも1つが含まれて良い。
キットに含まれる「緩衝液」には、「反応緩衝液」のほかに「洗浄液」も含まれる。「洗浄液」には、「反応緩衝液」と同じ溶媒、又はその他の水溶性溶媒、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などを例示することができる。
これらのキットを構成する各成分は、別個に用意しても良く、あるいは、支障がない限り共存させても良い。
4.阻害剤
本発明は、上記本発明のスクリーニング方法で得られた化合物またはその塩(本明細書中で、本発明の化合物と呼ぶ場合がある。)を含む、SARS 3CLプロテアーゼ阻害剤(本明細書中で、本発明の阻害剤と呼ぶ場合がある)を提供する。すなわち、本発明の阻害剤に含まれる化合物またはその塩は、CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物またはその塩である。本発明の1つの態様の阻害剤に含まれる化合物またはその塩は、CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、もしくはCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOまたはその塩である。本発明の阻害剤は、SARS 3CLプロテアーゼの触媒活性を阻害することができる。本発明の1つの態様に係る阻害剤は、SARS CoVの増殖を阻害することができる。
ここで、本発明の阻害剤における塩としては、塩酸塩、硫酸塩、もしくはリン酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、もしくは蓚酸塩などの有機酸塩、またはナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩などの塩が挙げられる。本発明の1つの態様では、塩は、医薬的に許容される塩である。
本発明の別の態様では、本発明の阻害剤と併用して本発明の阻害剤のSARS CoV増殖阻害効果を高めることができる化合物をスクリーニングするために本発明の阻害剤を使用する。具体的には、候補化合物の存在下または非存在下、SARS CoV感染細胞に、本発明の阻害剤を接触させて、細胞を所定時間培養し、SARS CoVのウイルス量を測定する。「接触」とは、SARS CoV感染細胞と本発明の阻害剤とを同一の反応系または培養系に存在させることを意味し、例えば、SARS CoV感染細胞を本発明の阻害剤の存在下で培養することなどが含まれる。尚、このとき、様々な濃度の候補化合物の存在下で、SARS CoVのウイルス量を測定するのが好ましい。そして、候補化合物の存在下でのSARS CoVのウイルス量が、非存在下でのSARS CoVのウイルス量と比較して低い時に(例えば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、150%以上、または200%以上低い時に)、候補化合物を、本発明の阻害剤と併用して本発明の阻害剤のSARS CoV増殖阻害効果を高めることができる化合物として選択する。SARS CoVのウイルス量は、公知の方法を用いて測定することができる。
本発明の別の態様では、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、マウス、ラットなど)のSARSを治療するために、経口または非経口で本発明の阻害剤を哺乳動物に適用する。本発明のある態様では、哺乳動物はヒトを除く哺乳動物である。
また、本発明の阻害剤は、使用目的に応じ、本発明の化合物に加えて、担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体及び添加物として、水、酢酸、有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられる。
本発明の阻害剤における本発明の化合物の使用量は、使用目的によって異なる。当業者であれば、使用目的に応じて、本発明の化合物の使用量を適宜選択することができる。
例えば、本発明の阻害剤と併用して本発明の阻害剤のSARS CoVの増殖阻害効果を高めることができる化合物をスクリーニングするために本発明の阻害剤を用いる場合には、本発明の化合物の使用量を変動させて細胞生存率を測定するのが好ましい。この場合、本発明の化合物の使用量は、例えば、0.001mg〜100mg、好ましくは、0.01mg〜10mgである。
哺乳動物のSARSを治療するために本発明の阻害剤を用いる場合には、本発明の化合物の使用量は、10kgの動物の場合、1日あたり、例えば、0.01mg〜1000mg、好ましくは、0.1mg〜100mgである。
また、本発明は、SARS CoV増殖阻害用の前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を提供する。本発明の化合物の用法および用量は、前記阻害剤で説明したのと同様である。
また、本発明は、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を用いるSARS CoV増殖阻害方法を提供する。ここで、「本発明の化合物を用いる」ことには、例えば、本発明の化合物と併用して本発明の化合物のSARS CoVの増殖阻害効果を高めることができる化合物をスクリーニングするために本発明の化合物を使用すること、および哺乳動物のSARS CoV感染症を治療するために、経口または非経口で本発明の化合物を動物に適用すること、などが含まれるが、これらに限定されない。本発明のSARS CoV増殖阻害方法における本発明の化合物の用法および用量は、前記阻害剤で説明したのと同様である。
さらに、本発明は、SARS CoV増殖阻害剤製造のための前記化合物またはその塩(本発明の化合物)の使用を提供する。本発明の使用における本発明の化合物の用法および用量は、前記SARS CoV増殖阻害剤で説明したのと同様である。
5.医薬組成物
本発明は、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物に含まれる化合物またはその塩は、CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物またはその塩である。本発明の1つの態様の医薬組成物に含まれる化合物またはその塩は、CH3CO-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、CH3CO-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、もしくはCH3CO-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、またはその塩である。本発明の化合物における塩は、医薬的に許容される塩である。医薬的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、もしくはリン酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、もしくは蓚酸塩などの有機酸塩、またはナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩などの塩が挙げられる。本発明の1つの態様によれば、医薬組成物は、SARSを治療するためのものである。
本発明の医薬組成物は、経口投与及び非経口投与のいずれの剤形をも採用することができる。
前記剤形は常法にしたがって製剤化することができ、本発明のペプチドの他、医薬的に許容される担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体及び添加物として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
上記添加物は、本発明の医薬組成物の剤形に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。剤形としては、経口投与の場合は、錠剤、カプセル剤、細粒剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤等として、または適当な剤形により投与が可能である。非経口投与の場合は、注射剤形、座剤等が挙げられる。注射剤形の場合は、例えば点滴等の静脈内注射等により全身又は局部的に投与することができる。
例えば、注射用製剤として使用する場合、本発明の医薬組成物を溶剤(例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等)に溶解し、これに適当な添加剤(ヒト血清アルブミン等)を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
本発明の医薬組成物または本発明の化合物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤形によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。投与量は、例えば成人(60kg)の場合、1日当たり0.01〜1000mg、好ましくは0.1〜100mg、より好ましくは1〜30mgである。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。投与は、例えば1日当たり、1回または2〜4回に分けてもよい。
また、本発明は、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)を患者に投与することを含む、SARSの治療方法を提供する。さらに、本発明は、本発明のSARS治療用医薬組成物を製造するための、前記化合物またはその塩(本発明の化合物)の使用を提供する。SARSの治療方法における、本発明の化合物の投与方法などは、上記医薬組成物で説明したのと同様である。また、本発明の化合物の使用における、医薬組成物の製造方法なども、上記医薬組成物で説明したのと同様である。
なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。また、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる日本特許出願、特願2007-219804の開示内容を包含する。
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.材料および方法
1.1 プラスミドおよび核酸の操作
pMAL-c2X(NEB BioLabs)をベースとした発現ベクターpMAL‐3CLを、山本典生先生(東京医科歯科大学)より供与していただいた。pMAL-3CLは、N末端側のマルトース結合タンパク質、6個のヒスチジンタグ及びFlagタグ(MBP-His-Flag)と完全長SARS 3CLプロテアーゼとを含む75kDaの融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターである。この融合タンパク質をエンテロキナーゼで処理することによって、融合タンパク質のN末端側のMBP-His FlagがSARS 3CLプロテアーゼから切り離され、MBP-His FlagのないSARS 3CLプロテアーゼが得られる。
尚、発現ベクターpMAL‐3CLは、例えば以下のようにして作製することができる。SARS CoV感染細胞からRNAを抽出し、RT-PCRで3CL protease コード領域をクローニングするが、その時にセンスプライマーにはBamH1認識配列、Hisタグ配列、Flag配列を5’側に付加し、アンチセンスプライマーにはSalI認識配列を付加しておく。PCR産物をBamH1 とSalIで切断し、pMAL-c2XのBamH1とSalIクローニング部位にリガーゼで組み込ませる。これにより、発現ベクターpMAL‐3CLを作製できる。
このpMAL-3CLを用いて、pGEM-3CLを次のように作製した。
先ずpMAL-3CLから、次のプライマーを用いて完全長SARS 3CLプロテアーゼをコードする配列をPCR法により増幅した。
NheI部位を有するプライマー:5’- ccggctagcGGTTTTAGGAAAATGGCATTCC(配列番号5)
XhoI部位を有するプライマー:5’- ccgctcgagTTGGAAGGTAACACCAGAG(配列番号6)
そして、このPCR産物をpGEM T-easy(プロメガ)に直接クローニングしてpGEM-3CLを得た。
また、qET-3CLを次のように作製した。
すなわち、qET-3CLは、pET-21a(+)(ノバゲン)のNheI/XhoI部位にpGEM-3CLのSARS 3CLプロテアーゼをコードする断片に対応するNheI-XhoI断片を挿入することによって作製した。pET-3CLは、N末端側の3種類のアミノ酸(Met-Ala-Ser)と、C末端側の2種類のアミノ酸(Leu-Glu)及びHisタグと、完全長3CLプロテアーゼとを含む34kDaの融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターである。
さらに、pGEM-3CL-R188Iを次のように作製した。
3CL-R188Iプロテアーゼを構成するため、Stemmerらによって記述された逆PCR法によって、部位特異的変異誘発を行った(Stemmer et al. (1992) Enzymatic Inverse PCR: A Restriction Site Independent, Single-Fragment Method for High-Efficiency, Site-Directed Mutagenesis. BioTechniques 13, 214-220.)。点変異を生じさせるのに使用した鋳型はpGEM-3CLであり、使用したプライマーは次のものである。尚、下記プライマー中、下線を引いたヌクレオチドが変異を受けたものである。
5’- atctctCGTCTCCATACAAACTGCACAGGCTG(配列番号7)
5’- atctctCGTCTCTGTATGTCAACAAATGGACC(配列番号8)
PCR実施後、直線状の完全長プラスミドの両末端をBsmBI(CGTCTCN’NNNN)で消化した。これにより、直線状プラスミドの両末端には、オーバーハングが生じた。そして、このNNNNオーバーハングを利用して、直線状のプラスミドの両末端を連結し、pGEM-3CL-R188Iを得た。このライゲーションステップは直線状プラスミドの両末端に生じたNNNNオーバーハングを利用したものであるので、pGEM-3CL-R188Iには余分な配列が付加されない。このため、pGEM-3CL-R188Iの配列は、SARS 3CLプロテアーゼをコードする塩基配列うち第562番目〜第564番目のアルギニンに対応するコドンが、イソロイシンに対応するコドンに変わっていることを除きpGEM-3CLと同じである。
最後に、pMAL-3CL-R188IおよびpET-3CL-R188Iを次のように作製した。
すなわち、pMAL-3CLの短いSphI-StyI断片およびpET-3CLの短いNheI-XhoI断片を、各々に対応するpGEM-3CL-R188Iの断片に置換することにより、発現ベクターpMAL-3CL-R188IおよびpET-3CL-R188Iを構成した。
pMAL-3CL-R188IおよびpET-3CL-R188Iについて配列決定分析を行い、pMAL-3CL-R188IおよびpET-3CL-R188Iには所望の変異のみが存在し、意図しない変異が全く見られないことを確認した。すなわち、SARS 3CLプロテアーゼをコードする塩基配列うち第562番目〜第564番目の塩基のみが、アルギニンのコドン「aga」からイソロイシンのコドン「ata」に変異していた(配列番号1)。
1.2.3CLプロテアーゼの発現および精製
pMAL-3CL-R188IおよびpET-3CL-R188Iで、大腸菌株DH5αおよびBL21(DE3)pLysをそれぞれ形質転換した。
形質転換した大腸菌株を、50μg ml-1のアンピシリンを含有する10mlのLB培地内で37℃で一晩増殖させ、ペレット化し、100mlの新鮮培地で2時間増殖させた。さらに、この大腸菌株に0.5mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えて28℃で2時間振とうし、組換えタンパク質(3CL-R188Iプロテアーゼ)の発現を誘発した。この時、pMAL-3CL-R188Iで形質転換した大腸菌からは、3CL-R188IプロテアーゼはそのN末端側にMBP-His-Flagが付加した融合タンパク質として発現し、pET-3CL-R188Iで形質転換した大腸菌からは、3CL-R188IプロテアーゼはそのN末端側にMet-Ala-Serが付加し、そのC末端側にLeu-GluとHisタグが付加した融合タンパク質として発現した。
ついで、細胞をペレット化し、該ペレット化した細胞を、Hisタグ付加タンパク質の精製のための、10mMイミダゾール、1mMフッ化フェニルメチルスルホニルおよび10μl ml-1のプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)を含有する溶液L(50mM Na2HPO4、pH7.0、300mM NaCl)20mlで再懸濁し、氷水中でBioruptor(コスモ・バイオ、東京、日本)を使用し、1回につき200W、30秒間として120秒間隔で4回にわたり超音波処理を行った。細胞残屑を14000×gで20分間の遠心分離で除去し、上清の粗抽出液を採集した。採集した粗抽出液を、10mMイミダゾールを含有する溶液Lで平衡化したベッド体積1mlのTALON Metal Affinity Resin (クロンテック)に適用した。SARS 3CLプロテアーゼを含む融合タンパク質を、同溶液20mlで洗浄後、125mMイミダゾールを含有する溶液Lで溶出させた。Centricon YM-10 (10kDaカットオフ、ミリポア)を使用した限外濾過によって緩衝液を20mMトリス-HCl pH7.5に交換するとともに、結合させた溶出画分(1.3ml)を0.2mlに濃縮した。
タグが付加していない3CL-R188Lプロテアーゼの精製のため、N末端側にMBP-His-Flag-タグを付加したプロテアーゼ(約1.5mgのタンパク質)をMetal Affinity Resinで処理した画分を、20mMトリス-HCl pH7.4、50mM NaCl、2mM CaCl2を含有する緩衝液1ml中で17Uの組換えエンテロキナーゼ (ノバゲン)とともに21℃で2時間さらにインキュベートした。このエンテロキナーゼ処理により、MBP-His-Flag-タグを3CL-R188Lプロテアーゼから切り離した。さらに、EKapture Agarose (ノバゲン)を使用して溶液からエンテロキナーゼを除去した後、緩衝液をCentricon YM-10を使用して20mMビス-トリスpH5.5に交換した。ついで、エンテロキナーゼで処理した画分を同緩衝液で平衡化したベッド体積1mlのDEAE Sepharose (GEヘルスケア)に適用した。タグが付加していない3CL-R188LプロテアーゼはSepharose樹脂を通過し、MBP-His-Flag断片は樹脂中に保持された。場合により、MBP-His-Flag断片を0.5M KClを含有する同緩衝液で溶出させることができた。
1.3.3CLプロテアーゼの分解についての検討および切断部位の同定
3CLプロテアーゼの分解について検討するため、C末端側にHis-タグを付加した3CLプロテアーゼのMetal Affinity Resinで処理した画分を基質として使用した。画分(約4μgのタンパク質)を0.05Uのエンテロキナーゼまたは0.5μgの精製した3CL-R188Lプロテアーゼとともに室温で14時間インキュベートした後、溶液を15% SDS-PAGEゲル上で分離し、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜にエレクトロブロットした。His-タグ付加3CLプロテアーゼおよびその切断された産物を、抗-His-タグのモノクローナル抗体(ノバゲン)、ビオチン化抗-マウスIgG(ベクター)、および増幅されたアルカリホスファターゼImmun-Blotアッセイキット(バイオ・ラッド)を使用して視覚化した。
3CLプロテアーゼの切断部位を同定するため、N末端側にMBP-His-Flag-タグを付加した3CLプロテアーゼのMetal Affinity Resin(金属アフィニティー樹脂)で精製した画分(12μgタンパク質)を1Uのエンテロキナーゼとともに21℃で30分間インキュベートし、ついで15% SDS-PAGEゲル上で分離し、PVDF膜に移した。Coomassieブルー染色後、20kDaおよび13kDaバンドを分析した。この時、N末端側の配列決定は、Edmanシーケンシングに従った(Matsudaira, P. (1987) Sequence from picomole quantities of proteins electroblotted onto polyvinylidene difluoride membranes.J. Biol. Chem. 262, 10035-10038.)。この分析はアプロサイエンス生命科学研究所(鳴門、日本)でApplied Biosystems 491 Protein Sequencerを使用して行った。
1.4.基質ペプチド
Rinkアミド樹脂(4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmocアミノメチル)-フェノキシ樹脂) (Rink, H. (1987) Solid-phase synthesis of protected peptide fragments using a trialkoxy-diphenyl-methylester resin. Tetrahedron Lett. 28, 3787-3790.)から出発するFmoc型固相ペプチド合成法(SPPS)( Atherton, E et al. (2004) Synthesis of Peptides and Peptidemimetics E22a, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, pp740-754.)に従い、以下の基質ペプチド(SO1, SO3, SR1)を合成した。
SO1; H-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-NH2(配列番号9)
SO3; H-Lys-Val-Ala-Thr-Val-Gln-Ser-Lys-Met-Ser-Asp-NH2(配列番号10)
SR1; H-Gly-Pro-Phe-Val-Asp-Arg-Gln-Thr-Ala-Gln-Ala-Ala-Gly-Thr-Asp-Thr-NH2(配列番号11)
上記各アミノ酸配列において、右端の-NH2は、これらのペプチドのC末端がアミドになっていることを示している。
具体的には、20%ピペリジン/DMFを用いたFmocの脱保護と標準のジイソプロピルカルボジイミド/HOBtプロトコルを用いた縮合反応とを組み合わせることによって固相合成を行った。各ペプチドを、25℃で3時間にわたるTFA-チオアニソール(10:1)処理によって樹脂から切断した後、分取HPLCによって精製した。さらにMALDI-TOF MS分析によって均一性を確認した。
SO1; HPLC[コスモシール製5C18 ARカラム(4.6×150mm)、1.0ml/分、CH3CN(10〜20%)/30分] 溶出時間19.62分、[M+H]+ 1192.714(計算値1192.681)。
SO3; HPLC[コスモシール製5C18 ARカラム(4.6×150 mm)、1.0 ml/分、CH3CN(10〜20%)/30 分] 溶出時間8.58分、[M+H]+ 1192.288(計算値1192.637)。
SR1; HPLC [コスモシール製5C18 ARカラム(4.6×150mm)、1.0 ml/分、CH3CN(10〜50%)/30 分] 溶出時間11.07分、[M+H]+ 1633.758(計算値1633.794)。
1.5.3CLプロテアーゼ活性
分析HPLCを用いた基質ペプチドの切断アッセイにより、3CLプロテアーゼのタンパク質分解活性を検出した。具体的には、7mM DTTを含有する20mMトリス-HCl緩衝液 pH7.5中の各基質ペプチドを3CLプロテアーゼとともに37℃でインキュベートし、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの直線勾配を用いた分析HPLC(コスモシール製5C18逆相カラム、4.6×150mm)によって切断反応を監視した。各加水分解産物をMALDI-TOF MS分析によって同定した。
37℃での精製プロテアーゼ変異体による各基質の加水分解反応の初期速度測定値により、速度論的パラメータのKmおよびkcatを判定した。プロテアーゼを異なる最終濃度の各基質(0〜168μM)を含有する様々な溶液に添加することにより、各反応を開始した。異なる基質に対して切断活性が異なることから、酵素の最終濃度と消化時間は適宜変更した(変異型プロテアーゼで10〜170nM、反応時間15〜90分)。反応後、分析HPLC(コスモシール製5C18逆相カラム、4.6×150mm、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの10%〜20%直線勾配を使用)によって加水分解物を分析した。各基質のピーク面積の減少から初期消化速度を計算した。Kmを[S]/v対[S]([S]は基質の濃度、vは初期反応速度)のプロットから計算した。すべての反応を3回繰り返し、結果を平均化した。
1.6.阻害物質
チオールプロテアーゼに対する代表的阻害物質E-64(Hanada, K. et al. (1978) Isolation and Characterization of E-64, a New Thiol Protease Inhibitor. Agric. Biol. Chem. 42, 523-528.)を(株)ペプチド研究所(大阪府箕面市、日本)から購入した。
また、基質のテトラペプチド配列およびC末端側にアルデヒドを有するアルデヒド型阻害物質(Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびAc-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO)をNa- Fmoc-保護基を用いた従来の溶液相合成によって合成した。具体的にはEt2NHによるFmocの脱保護とBOP試薬による対応するFmoc-アミノ酸の縮合の組み合わせにより、Fmoc-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CON(OCH3)CH3から出発して連続的にペプチド鎖を伸長した。鎖伸長の完了後、LiAlH4を用いてC末端側のアミドを還元し、対応するペプチド-アルデヒドを生成した(Nahm, S.et al. (1981) N-methoxy-n-methylamides as effective acylating agents. Tetrahedron Lett. 22, 3815-3818.)。0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの15〜25%の直線勾配(60分、流速3ml/分)を用いたセミ分取HPLC(コスモシール、5C18逆相カラム、1.0×250mm)等によって粗生成物を精製し、さらに1H-NMR(Bruker AV300M分光計)等によって均一性等を確認した。
ここで、Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Ala-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびAc-Ser-Ala-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOは、より詳細には、次のように合成した。
尚、下記合成において、分取HPLC分析はELITE LaChrom system(OD, 220nm)(HITACHI)を用いて行った。このとき、カラムはCOSMOSIL 5C18-AR-II (4.6x150 mm または10x250 mm)(Nacalai tesque)を用いた。
また、1H(300MHz)NMRおよび13C(75MHz)NMRのスペクトログラムをAM-300(Bruker)に記録した。化学シフトは、TMS(0ppm)またはCHCl3(1Hについては7.28ppm、また、13Cについては77.0ppm)に対するppmで表わした。
また、Autoflex-II(Bruker)により高分解能MALDI TOF-MSマススペクトルを測定した。 さらに、旋光度は、SEPA-300 polarimeter(HORIBA)を用いて、ナトリウムD線で測定した。
(1) Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOの合成
(1-1)Fmoc-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Glu-OBut(1.28 g, 3 mmol)をCH2Cl2(10 ml)に溶解し、HN(Me)2塩酸塩(0.29 g, 3.56 mmol)、BOP(1.59 g, 3.56 mmol)、DIEA(1.91 ml, 12 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を留去し残渣を酢酸エチルで抽出した後、有機層を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を溶出液としてCHCl3:MeOH=10:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物をさらに精製することなくそのまま次のTFA処理を行った。目的物にanisole (0.65 ml, 6.0 mmol)とTFA (7.0 ml)を加え、室温で1時間撹拌した。室温でTFAを留去、残渣をヘキサンで洗浄した後減圧下で乾燥した。得られた残渣をDMF (10 ml)に溶解し、HN(OMe)Me塩酸塩(0.38 g, 3.90 mmol)、BOP(1.72 g, 3.90 mmol)、DIEA(1.70 ml, 11 mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。溶媒を留去し残渣を酢酸エチルで抽出した後、有機層を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を、溶出液としてCHCl3:MeOH=10:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物(Fmoc-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を油状物質として得た。収量 1.13 g (85 %), [a]D 27 +46.7 (c 0.24, CHCl3), 1H NMR (CDCl3) d; 2.00 (m, 1H), 2.16 (m, 1H), 2.42 (m, 2H), 2.94 (s, 3H), 2.95 (s, 3H), 3.22 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 4.22 (t, J=7.1 Hz, 1H), 4.35 (m, 2H), 4.76 (br s, 1H), 5.91 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.31 (d, J=7.5 Hz, 2H), 7.39 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.61 (br t, J=8.3 Hz, 2H), 7.75 (d, J=8.3 Hz, 2H); 13C NMR d; 27.72, 29.13, 32.29, 35.63, 37.24, 47.27, 51.04, 61.72, 67.09, 120.05, 125.23, 125.34, 127.15, 127.78, 141.37, 141.40, 143.89, 144.12, 156.39, 162.44, 171.99; MALDI TOF-MS; Calcd. 462.201 for C24H29N3O5Na, Found. 462.126 for [M+Na]+
(1-2)Fmoc-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Gln-N(OMe)Me (0.73 g, 1.66 mmol)をCH3CN (8 ml)に溶解し、Et2NH (8.6 ml)を加え、室温で40分撹拌した。溶媒を留去し残渣を減圧下乾燥させた。生成物をさらに精製することなくそのまま次の縮合を行った。得られた残渣をCH2Cl2(5 ml)に溶解し、Fmoc-Leu-OH (0.49 g, 1.39 mmol)、BOP(0.61 g, 1.39 mmol)、DIEA(0.44 ml, 2.77 mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。溶媒を留去し残渣を酢酸エチルで抽出した後、有機層を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を、溶出液としてCHCl3:MeOH=10:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物(Fmoc-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を油状物質として得た。収量 0.60 g (91 %), [a]D 27 -27.6 (c 1.1, CHCl3), 1H NMR (CDCl3) d; 0.94 (s, 3H), 0.96 (s, 3H), 1.53-1.63 (m, 2H), 1.66-1.72 (m, 1H), 2.00 (br s, 1H), 2.14-2.21 (m, 1H), 2.88 (s, 3H), 2.90 (s, 3H), 3.21 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 4.19-4.24 (m, 1H), 4.22 (d, J=6.9 Hz, 1H), 4.29-4.42 (m, 2H), 4.92 (br s, 1H), 5.40 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.32 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.39 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.59 (d, J=7.5 Hz, 2H), 7.75 (d, J=7.5 Hz, 2H); 13C NMR d; 22.06, 23.12, 24.77, 26.77, 29.18, 32.33, 35.70, 37.20, 42.19, 47.32, 49.64, 53.66, 61.71, 67.09, 120.06, 120.08, 125.22, 127.20, 127.82, 141.40, 143.97, 144.02, 156.19, 171.80, 172.36, 172.43; MALDI TOF-MS; Calcd. 575.285 for C30H40N4O6Na, Found. 575.174 for [M+Na]+
(1-3)Fmoc-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Leu-Gln-N(OMe)Me (0.60 g, 1.09 mmol)をCH3CN (6 ml)に溶解し、Et2NH (5.6 ml)を加え、室温で40分撹拌した。溶媒を留去し残渣を減圧下乾燥させた。生成物をさらに精製することなくそのまま次の縮合を行った。得られた残渣をCH2Cl2-DMF(2.5 ml-2.5 ml)に溶解し、Fmoc-Val-OH (0.44 g, 1.30 mmol)、BOP(0.58 g, 1.30 mmol)、DIEA(0.41 ml, 2.58 mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。溶媒を留去し残渣を酢酸エチルで抽出した後、有機層を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を、溶出液としてCHCl3:MeOH=10:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物(Fmoc-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を油状物質として得た。収量 0.61 g (86 %), [a]D 27 -11.6 (c 1.0, CHCl3), 1H NMR (CDCl3) d; 0.86 (m, 12H), 1.49-1.65 (m, 2H), 1.97 (br s, 1H), 2.12-2.17 (m, 2H), 2.37-2.39 (m, 2H), 2.92 (s, 3H), 2.94 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 4.03 (br t, J=7.2 Hz, 1H), 4.21 (t, J=6.9 Hz, 1H), 4.31-4.53 (m, 3H), 4.92 (br s, 1H), 5.58 (br d, J=8.7 Hz, 1H), 6.56 (br d, J=7.5 Hz, 1H), 7.30 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.39 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.59 (d, J=7.5 Hz, 2H), 7.75 (d, J=7.5 Hz, 2H); 13C NMR d; 17.97, 19.38, 22.10, 23.03, 24.83, 29.20, 31.25, 35.73, 37.28, 41.79, 47.32, 49.56, 52.01, 60.61, 61.71, 67.24, 120.08, 125.22, 127.21, 127.84, 141.43, 144.05, 156.58, 171.32, 171.85, 172.36; MALDI TOF-MS; Calcd. 674.353 for C35H49N5O7Na, Found. 674.211 for [M+Na]+
(1-4)Fmoc-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Val-Leu-Gln-N(OMe)Me (0.60 g, 0.92 mmol)をCH2Cl2-CH3CN (3 ml-3 ml)に溶解し、Et2NH (4.8 ml)を加え、室温で40分撹拌した。溶媒を留去し残渣を減圧下乾燥させた。生成物をさらに精製することなくそのまま次の縮合を行った。得られた残渣をDMF(5 ml)に溶解し、Fmoc-Ala-OH (0.34 g, 1.09 mmol)、BOP(0.49 g, 1.09 mmol)、DIEA(0.35 ml, 2.20 mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。溶媒を留去し残渣を酢酸エチルで抽出した後、有機層を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を、溶出液としてCHCl3:MeOH=10:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物(Fmoc-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を油状物質として得た。収量 0.51 g (77 %), [a]D 27 -30.3 (c 0.90, CHCl3), 1H NMR (CDCl3) d; 0.87 (d, J=6.6 Hz, 6H), 0.93 (d, J=6.6 Hz, 6H), 1.36 (d, J=6.9 Hz, 3H), 1.51-1.67 (m, 3H), 1.95-2.14 (m, 3H), 2.33-2.38 (m, 2H), 2.88 (s, 6H), 3.17(s, 3H), 3.72 (s, 3H), 4.20 (t, J=7.2 Hz, 1H), 4.28-4.41 (m, 2H), 4.46 (br s, 1H), 4.57 (br s, 1H), 4.83 (br s, 1H), 5.08 (br s, 1H), 6.21 (br s, 1H), 7.24 (t, J=7.2 Hz, 2H), 7.37 (t, J=7.4 Hz, 2H), 7.60 (d, J=7.5 Hz, 2H), 7.74 (d, J=7.5 Hz, 2H), 7.95 (br s, 1H); 13C NMR d; 18.66, 19.42, 22.65, 22.88, 25.04, 27.92, 29.34, 31.51, 32.33, 35.58, 37.20, 42.06, 47.27, 49.01, 50.59, 51.76, 58.92, 61.79, 67.19, 120.06, 125.32, 127.17, 127.81, 141.39, 144.05, 162.49, 171.03, 172.07, 172.94; MALDI TOF-MS; Calcd. 745.390 for C38H54N6O8Na, Found. 745.199 for [M+Na]+
(1-5)Fmoc-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Ala-Val-Leu-Gln-N(OMe)Me (0.56 g, 0.77 mmol)をCH2Cl2-CH3CN (3 ml-3 ml)に溶解し、Et2NH (4.0 ml)を加え、室温で40分撹拌した。溶媒を留去し残渣を減圧下乾燥させた。生成物をさらに精製することなくそのまま次の縮合を行った。得られた残渣をDMF(5 ml)に溶解し、Fmoc-Ser(But)-OH (0.36 g, 0.94 mmol)、BOP(0.41 g, 0.94 mmol)、DIEA(0.30 ml, 1.89 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を留去し残渣を酢酸エチルで抽出した後、有機層を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を、溶出液としてCHCl3:MeOH=10:0.5を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物(Fmoc-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を油状物質として得た。収量 0.58 g (86 %), [a]D 27 -22.8 (c 0.15, CHCl3), 1H NMR (CDCl3) d; 0.84-0.92 (m, 12H), 1.15 (s, 9H), 1.34 (d, J=6.6 Hz, 3H), 1.55-1.63 (m, 3H), 1.89-1.99 (m, 1H), 2.07-2.17 (m, 2H), 2.36 (br s, 2H), 2.88 (s, 3H), 2.89 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 3.47 (t, J=7.8 Hz, 1H), 3.71 (t, J=7.8 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 4.21 (t, J=7.1 Hz, 1H), 4.29-4.50 (m, 4H), 4.83 (br s, 1H), 4.94 (br s, 1H), 5.09 (br s, 1H), 6.39 (br s, 1H), 7.26 (br t, J=7.4 Hz, 2H), 7.37 (br t, J=7.4 Hz, 2H), 7.62 (br d, J=6.9 Hz, 2H), 7.74 (br d, J=7.2 Hz, 2H), 7.83 (br s, 1H), 8.03 (br s, 1H); 13C NMR d; 18.51, 19.26, 22.36, 22.79, 24.95, 27.35, 27.90, 29.20, 31.57, 35.42, 37.09, 41.80, 47.15, 48.99, 51.67, 54.98, 58.70, 61.70, 62.20, 67.05, 119.89, 125.22, 127.02, 127.65, 141.26, 143.92, 162.34, 170.02, 171.00, 172.00; MALDI TOF-MS; Calcd. 888.041 for C45H66N7O10Na, Found. 888.253 for [M+Na]+
(1-6)Fmoc-Thr(But)-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln-N(OMe)Me (0.57 g, 0.66 mmol)をCH2Cl2-CH3CN (3 ml-3 ml)に溶解し、Et2NH (3.4 ml)を加え、室温で40分撹拌した。溶媒を留去し残渣を減圧下乾燥させた。生成物をさらに精製することなくそのまま次の縮合を行った。得られた残渣をDMF(5 ml)に溶解し、Fmoc-Thr(But)-OH (0.33 g, 0.80 mmol)、BOP(0.35 g, 0.80 mmol)、DIEA(0.25 ml, 1.57 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を留去し残渣にH2Oを加え、析出する沈殿を5%クエン酸水溶液、5%NaHCO3水溶液、水で洗浄した。DMF/Et2Oで再沈殿し、目的物(Fmoc-Thr(But)-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を固形物として得た。収量 0.40 g (59 %), [a]D 27 -13.2 (c 0.68, CHCl3), 1H NMR (CDCl3) d; 0.93-0.95 (br s, 12H), 1.17 (s, 12H), 1.31 (s, 9H), 1.41 (br d, J=6.0 Hz, 3H), 1.67 (br s, 3H), 1.93 (br s, 1H), 2.13 (br s, 1H), 2.38 (br s, 3H), 2.92 (s, 3H), 2.97 (s, 3H), 3.20 (s, 3H), 3.51 (br s, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.87 (br d, J=7.8 Hz, 1H), 4.22 (br s, 4H), 4.42 (br s, 4H), 4.96 (br s, 1H), 6.78-6.81 (m, 2H), 7.14-7.41 (m, 7H), 7.58 (br d, J=5.7 Hz, 2H), 7.77 (br d, J=6.3 Hz, 2H); 13C NMR d; 17.28, 17.35, 17.89, 19.33, 21.48, 23.24, 24.73, 27.45, 28.30, 29.08, 29.65, 35.51, 37.23, 40.50, 47.22, 49.11, 50.49, 51.89, 54.52, 59.07, 60.83, 61.58, 66.72, 67.19, 120.08, 124.98, 125.08, 127.12, 127.84, 141.39, 143.61, 143.75, 156.07, 162.36, 169.63, 171.05, 171.35, 171.94, 172.31; MALDI TOF-MS; Calcd. 1045.252 for C53H81N8O12Na, Found. 1045.426 for [M+Na]+
(1-7)Ac-Thr(But)-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me
Fmoc-Thr(But)-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln-N(OMe)Me (78 mg, 75 mmol)をCH2Cl2-CH3CN (1.5 ml-1.5 ml)に溶解し、Et2NH (0.59 ml)を加え、室温で60分撹拌した。溶媒を留去し残渣を減圧下乾燥させた。生成物をさらに精製することなくそのまま次の縮合を行った。得られた残渣をDMF(3 ml)に溶解し、Ac2O(0.14 ml, 1.48 mmol)、DIEA(0.24 ml, 1.48 mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。溶媒を留去し残渣にH2Oを加え、析出する沈殿をDMF/Et2Oで再沈殿し、目的物(Ac-Thr(But)-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln(Me)2-N(OMe)Me)を固形物として得た。収量 40 mg (63 %), [a]D 27 -17.5 (c 0.20, DMF), 1H NMR (DMSO-d6) d;0.80-0.88 (m, 12H), 1.04 (d, J=6.3 Hz, 3H), 1.10 (s, 9H), 1.11 (d, J=6.6 Hz, 3H), 1.17 (s, 9H), 1.36-1.46 (m, 2H), 1.53-1.60 (m, 1H), 1.63-1.83 (m, 2H), 1.91 (s, 3H), 1.97 (m, 1H), 2.30 (br t, J=7.4 Hz, 2H), 2.80 (s, 3H), 2.90 (s, 3H), 3.10 (s, 3H), 3.41-3.46 (m, 1H), 3.51-3.59 (m, 1H), 3.70 (s, 3H), 3.87-3.90 (m, 1H), 4.10-4.15 (m, 1H), 4.30-4.39 (m, 4H), 4.71 (br s, 1H), 7.61-7.97 (m, 6H); 13C NMR d; 18.49, 18.92, 19.64, 21.94, 22.97, 23.54, 24.40, 27.57, 28.45, 30.75, 35.29, 37.01, 48.61, 53.60, 57.75, 58.10, 62.25, 67.50, 169.89, 170.98, 171.64, 172.23; MALDI TOF-MS; Calcd. 865.538 for C40H74N8O11Na, Found. 865.476 for [M+Na]+
(1-8)Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
Ac-Thr(But)-Ser(But)-Ala-Val-Leu-Gln-N(OMe)Me (30 mg, 36 mmol)をDMF-THF (1.5 ml-1.5 ml)に溶解し、LiAlH4(30 mg)を加え、室温で90分撹拌した。反応液をセライトろ過し溶媒を減圧留去した。生成物をCosmosil 5C18 (10 x 250 mm)を用いるHPLC (0.1 % TFA containing CH3CN:0.1% aq.TFA; CH3CN gradient, 15% to 60% in 60 min) で精製した。目的物を含むピーク(42分に溶出)を集め、凍結乾燥し白色粉末を得た。収量 5.2 mg (19 %) 1H NMR (CD3CN containing D2O) d; 0.82-0.93 (m, 12H), 1.10-1.14 (m, 3H), 1.14 (s, 9H), 1.17 (s, 9H), 1.31-1.36 (m, 3H), 1.56-1.64 (m, 3H), 2.00 (s, 3H), 2.10-2.17 (m, 1H), 2.28-2.33 (m, 2H), 2.85 (br s, 3H), 2.97 (br s, 3H), 3.61-3.70 (m, 2H), 3.97-4.02 (m, 1H), 4.10-4.24 (m, 6H), 9.41 (br s); MALDI TOF-MS; Calcd. 806.501 for C38H69N7O10Na, Found. 806.121 for [M+Na]+
得られた粉末 (7.1 mg, 9 mmol) にanisole (15 ml, 6.0 mmol)とTFA (0.5 ml)を加え、室温で2時間撹拌した。室温でTFAを留去、残渣にエーテル(5 ml)と0.1% aq.TFA (5 ml)を加えた。水層をエーテル(5 ml) で洗浄後、水層を凍結乾燥した。生成物をCosmosil 5C18 (10 x 250 mm)を用いるHPLC (0.1 % TFA containing CH3CN:0.1% aq.TFA; CH3CN gradient, 10% to 40% in 60 min) で精製した。目的物(Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO)を含むピーク(25.6分に溶出)を集め、凍結乾燥し白色粉末を得た。収量 1.8 mg (30 %), HPLC retention time, 14.36 min [Cosmosil 5C18 (4.6 x 150 mm), 0.1 % TFA containing CH3CN:0.1% aq.TFA; CH3CN gradient, 10% to 40% in 30 min], 1H NMR (CD3CN containing D2O) d; 0.84-0.94 (m, 12H), 1.14-1.17 (m, 3H), 1.33-1.37 (m, 3H), 1.56-1.63 (m, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.02-2.09 (m, 1H), 2.32-2.35 (m, 2H), 2.84-2.87 (m, 3H), 2.94-2.99 (m, 3H), 3.74-3.76 (m, 1H), 3.81-3.85 (m, 1H), 4.17-4.33 (m, 6H), 4.77-4.82 (m, 1H), 9.44 (br s); MALDI TOF-MS; Calcd. 694.375 for C30H53N7O10Na, Found. 694.337 for [M+Na]+
上記合成中間体より同様の操作により以下の各誘導体を合成した。
(2)Ac-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
HPLC retention time, 18.64 min [Cosmosil 5C18 (4.6 x 150 mm), 0.1 % TFA containing CH3CN:0.1% aq.TFA; CH3CN gradient, 10% to 60% in 30 min], 1H NMR (CD3CN) d; 0.86-0.99 (m, 12H), 1.51-1.64 (m, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.31-2.37 (m, 2H), 3.98 (br t, J=5.9 Hz, 1H), 4.27-4.33 (m, 1H), 4.55-4.63 (m, 1H), 4.78-4.86 (m, 1H), 6.82 (br d, J=7.8 Hz, 2H), 6.96 (br d, J=8.7 Hz, 1H); MALDI TOF-MS; Calcd. 435.259 for C20H46N4O5Na, Found. 435.955 for [M+Na]+
(3)Ac-Ala-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
HPLC retention time, 12.64 min [Cosmosil 5C18 (4.6 x 150 mm), 0.1 % TFA containing CH3CN:0.1% aq.TFA; CH3CN gradient, 10% to 60% in 30 min], 1H NMR (D2O) d; 0.86-0.94 (m, 12H), 1.33 (d, J=7.2 Hz, 3H), 1.57-1.67 (m, 3H), 2.00 (s, 3H), 2.00-2.22 (m, 3H), 2.45-2.49 (m, 2H), 2.92 (s, 3H), 3.04 (s, 3H), 4.08 (d, J=8.1 Hz, 1H), 4.28 (q, J=7.2 Hz, 1H), 4.38-4.42 (m, 2H), 9.41 (br s); MALDI TOF-MS; Calcd. 506.296 for C23H41N5O6Na, Found. 506.216 for [M+Na]+
(4)Ac-Ser-Ala-Val-Leu- NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO
HPLC retention time, 14.38 min [Cosmosil 5C18 (4.6 x 150 mm), 0.1 % TFA containing CH3CN:0.1% aq.TFA; CH3CN gradient, 10% to 40% in 30 min], 1H NMR (CD3CN containing D2O) d; 0.85-0.92 (m, 12H), 1.36 (d, J=7.5 Hz, 3H), 1.56-1.66 (m, 3H), 1.98 (s, 3H), 2.07-2.10 (m, 1H), 2.30-2.35 (m, 2H), 2.86 (s, 3H), 2.99 (s, 3H), 3.64-3.69 (m, 1H), 3.77-3.83 (m, 1H), 4.00-4.02 (m, 1H), 4.19-4.30 (m, 23H), 9.44 (br s); MALDI TOF-MS; Calcd. 593.328 for C26H46N6O8Na, Found. 593.258 for [M+Na]+
1.7.阻害活性
基質として前記合成ウンデカペプチドSO1を用い、阻害活性について検討した。上記のように、分析HPLCにより、様々な濃度の阻害物質の存在下における精製3CLプロテアーゼ変異体による基質の切断を監視した。阻害活性を、S字形用量-応答曲線から得られるIC50値を用いて評価した。反応を3回繰り返し、結果を平均化した。
2.結果
2.1.成熟3CLプロテアーゼの発現
本発明者は、大腸菌内で、SARS 3CLプロテアーゼのN末端側にMBP-His-Flagタグを結合した融合タンパク質を発現させた後、まず、SARS 3CLプロテアーゼのN末端側のMBP-His-Flagタグを切断することによって、タグを結合していない3CLプロテアーゼ(成熟3CLプロテアーゼ)を得ようとした。
IPTG誘導による全細胞抽出物中の主な産物として、SARS 3CLプロテアーゼのN末端側にMBP-His-Flagタグを結合した融合タンパク質に対応する約75kDaの産物が生成された(図2A、レーン1)。粗抽出物の金属アフィニティー樹脂への吸着後、目的の75kDa産物がイミダゾールで容易に溶出され、過剰量のイミダゾールを限外濾過によって除去した(図2A、レーン2)。75kDaの産物は3CLプロテアーゼのP1/P2切断部位を有するウンデカペプチド基質S01を切断しなかった。これは、N末端側の分子の大きいMBP-His-Fragタグの影響だと考えられる。融合タンパク質の通常のエンテロキナーゼ処理により、Coomassie染色後にSDS-PAGE上でN末端側のMBP-His-Flagタグに対応する42kDaの産物が得られたが、MBP-His-Flagタグが切り離された3CLプロテアーゼ(成熟3CLプロテアーゼ)に対応する33kDaの産物はほとんど検出されなかった(図2A、レーン3)。このエンテロキナーゼで処理した調製物では、SO1基質に対するタンパク質分解活性は全く検出されなかった。しかし、エンテロキナーゼの添加に先立ちSO1を75kDaの産物と混合すると、SO1が効率的に切断された(図3A)。この反応混合物では、想定されたSO1の断片ペプチドが明確に検出され、MALDI-TOF MS分析によって同定された(図3A;ピーク1、H-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-NH2の場合で[M+H]+ 593.365(計算値593.353); ピーク2、H-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-OHの場合で[M+H]+ 618.288(計算値618.347))。この結果は、75kDaの融合タンパク質がエンテロキナーゼで消化されて成熟3CLプロテアーゼが一時的に生成し、それがS01基質を切断したことを示唆している。
本発明者は、C末端側にHisタグを有する3CLプロテアーゼも発現させたが、N末端側にMBP-His-Flagタグを有するプロテアーゼと異なり、IPTG誘導による全細胞抽出物の主な産物として目的の34kDaのタンパク質が検出されなかった(図4A、レーン1)。しかし、金属アフィニティー樹脂を用いて目的のタンパク質を部分精製することができ(図4A、レーン2)、抗-His-タグ抗体を使用したウエスタンブロット分析によって所望の34kDaの産物が確認された(図4B、レーン1)。本発明者は、イミダゾールを除去して室温に放置すると、34kDaのタンパク質の免疫染色強度が低下し、新たに14kDaのタンパク質が現れることを見いだした(図4B、レーン2)。さらに、プロテアーゼをエンテロキナーゼとともに室温で一晩インキュベートすると、この3CLプロテアーゼの分解産物と考えられるものが検出された(図4B、レーン3)。これらの結果を組み合わせると、天然型成熟3CLプロテアーゼがタンパク質分解を受けやすいことが強く示唆される。
2.2.3CLプロテアーゼの切断部位の同定
3CLプロテアーゼの切断部位を同定するため、成熟3CLプロテアーゼとN末端側のMBP-His-Flagタグとからなる75kDaの融合タンパク質のエンテロキナーゼ消化(図2B)について注意深く検討した。金属アフィニティー樹脂処理後の試料では、融合タンパク質に対応する75kDaの産物が検出された(図2B、レーン1)。次に、前記画分を少量のエンテロキナーゼで15分間処理すると、目的の33kDaの産物がCoomassie染色でかすかに検出されるとともに、33kDaの産物の分解産物と考えられる産物として、20kDaおよび13kDaで2つのバンドも検出された(図2B、レーン2)。処理時間が30分、60分と経過すると33kDaのバンドは徐々に消失した(図2B、レーン3(30分)、レーン4(60分))。この新たに現れた13kDaのタンパク質は、免疫染色によって検出されるC末端側にHis-タグを付加した3CLプロテアーゼのタンパク質分解産物と同一であるように思われた(図4B、レーン2〜4)。13kDaのタンパク質をPVDFメンブランにブロッテングし、アミノ酸シークエンサーで解析したところ、産物のN末端側配列がGln-Thr-Ala-Gln-Alaであると判定された。この結果は、成熟3CLプロテアーゼが188Arg/189Gln部位で切断されることを示している。さらに、188Arg/189Gln部位を有するヘキサデカペプチドであるSR1基質を用いて、成熟3CLプロテアーゼが生成されるときにタンパク質分解活性が発現されるか検討した(図3B)。予想どおり、75kDaの融合タンパク質が通常のエンテロキナーゼ処理の間にヘキサデカペプチドを切断する一方(図3B; ピーク1、H-Gly-Pro-Phe-Val-Asp-Arg-OHの場合で[M+H]+ 690,282(計算値690.358))、同一条件下でエンテロキナーゼ単独によってSR1ペプチドを切断することができなかった。
2.3.3CL-R188I-プロテアーゼ変異体(組換えタンパク質)の発現および精製
ついで本発明者は、タンパク質分解に抵抗性を示す活性を持つ安定な3CLプロテアーゼを得るため、Arg-188が部位特異的変異誘発によりIleと置換された3CLプロテアーゼ変異体(3CL-R188I)を構築した。
天然型3CLプロテアーゼと同様、細菌細胞内でN末端側にMBP-His-FlagタグまたはC末端側にHisタグを有する3CL-R188Iプロテアーゼを発現させた。N末端側にタグを有する3CL-R188Iプロテアーゼの75kDaの産物を金属アフィニティー樹脂によって部分精製した(図5A、レーン2)。尚、図5A、レーン1はこの金属アフィニティー樹脂精製前の粗抽出液をSDS-PAGEで分離したものである。通常のエンテロキナーゼ処理後、3CL-R188Iプロテアーゼに対応する目的の33kDaの産物(組換えタンパク質)およびMBP-His-Flagに対応する42kDaの断片はSDS-PAGE上でCoomassie色素に強く染色されたが、タンパク質分解産物は全く検出されなかった(図5A、レーン3)。本発明者は、この段階で、アフィニティーアガロースによりエンテロキナーゼを除去した後に、組換えタンパク質のSO1基質に対するタンパク質分解活性を確認した。pH5.5でのアニオン交換クロマトグラフィーにより、3CL-R188Iプロテアーゼをさらに精製した。つまり、予想どおり計算値pI6.24の3CL-R188Iプロテアーゼが樹脂を通過し、計算値pI5.08のMBP-His-Flagが樹脂上に吸着された(図5A、レーン4(通過画分)、レーン5(樹脂の保持画分))。細菌培養物100mlから約0.10mgの精製したタグが付加していない組み換えタンパク質が得られた。
同様に、C末端側にHisタグを有する3CL-R188Iプロテアーゼに対応する34kDaのタンパク質がIPTG誘導後の全細胞溶解物の主な産物として生成された(図5B、レーン1)。金属アフィニティー樹脂による単一ステップによる操作で、十分に精製された目的物が得られた(図5B、レーン2)。この場合、約0.13mgのC末端側にHis-タグが付加した精製タンパク質が100mlの培養物から得られた。
限外濾過により緩衝液を交換するとともに、タグのない精製タンパク質及びC末端側にHisタグを有する精製タンパク質を濃縮し、等容量のグリセロールを添加した。各溶液を-20℃で保存したところ、少なくとも数か月間、触媒活性の低下は全くなかった。
N末端側にタグが付加した成熟3CLプロテアーゼをエンテロキナーゼ消化する間にSR1オリゴペプチドが効率的に切断されたことから、本発明者は3CLプロテアーゼ変異体がエンテロキナーゼの非存在下で成熟3CLプロテアーゼを切断しうる否かを検討した。精製した3CL-R188IプロテアーゼとC末端側にHis-タグが付加した成熟3CLプロテアーゼとの室温でのインキュベーションによって3CLプロテアーゼ由来の分解産物が確かに得られた(図4B、レーン4)。なお、精製3CL-R188I試料にはエンテロキナーゼの基質でコンタミネーションの指標に用いられるCleavege Conttol Protein(ノバゲン)を切断する活性は認められなかった。これらの結果は、成熟プロテアーゼは自己タンパク質分解を受けるという可能性を示唆している。
2.4.3CL-R188Iプロテアーゼの速度論的特性
3つの異なる基質(SO1、SO3、SR1)を用い、タグのない精製3CL-R188Iプロテアーゼ及びC末端側にHisタグを有する精製3CL-R188Iプロテアーゼの触媒活性について検討した。その速度論的データを表1にまとめる。タグが付加していない3CL-R188Iプロテアーゼは、SO1の消化を最も効率的に触媒した(Km=33.8μM、kcat=4753 s-1)。SO1基質におけるkcat/Kmと比較した場合、SO3およびSR1基質における相対効率はそれぞれ0.06および0.01であった。C末端側にHis-タグを有する3CL-R188Iのkcat/Km値は、kcat値が顕著な低下を示すことからタグが付加していない酵素の0.03倍である。一方、Km値における有意差は2種類のタンパク質間で全く認められなかった。この結果は、残基数個をC末端に付加すると3CLプロテアーゼの触媒効率が影響を受けることを示している。
2.5.阻害活性
タグのない精製3CL-R188Iプロテアーゼを用い、E-64および新規に合成した基質をベースとするアルデヒド型阻害物質の阻害効果を解析した。1.6mM E-64の存在下であっても、3CL-R188IプロテアーゼによるSO1基質の分解は全く低下しなかった。それに対し、1.6mMのAc-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO(合成ペプチドアルデヒド1とも言う)は3CL-R188Iの活性をほぼ完全に阻害した。用量-応答曲線(図6)から、合成ペプチドアルデヒド1のIC50値が155μMであることが分かった。また、Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびAc-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO(それぞれ、合成ペプチドアルデヒド2〜4とも言う)も3CL-R188Iの活性を阻害する作用があることが分かった。図7の用量-応答曲線から、合成ペプチドアルデヒド2のIC50値が26μMであることが分かった。また、図8の用量-応答曲線から、合成ペプチドアルデヒド3のIC50値が〜6mMであることが分かった。さらに、図9の用量-応答曲線から、合成ペプチドアルデヒド4のIC50値が37μMであることが分かった。これらの結果を、下記表2にまとめる。
尚、図6〜9中、横軸は、阻害物質(合成ペプチドアルデヒド)の濃度であり、縦軸は阻害(%)である。縦軸の阻害(%)は、各濃度の阻害剤が存在する条件下でプロテアーゼにより基質が切断される量をHPLCで定量し、阻害剤が存在していない条件下でプロテアーゼが基質を切断する量を100とする切断率を出し、これを100から引いて阻害率としたものである。
3.考察
これまで成熟SARS CoV 3CLプロテアーゼタンパク質は大腸菌で発現することができ、その結晶構造も解析されていたが、今回、成熟3CLプロテアーゼがタンパク質分解による分解を受けやすいことが見いだされた。
エンテロキナーゼは本来の切断部位(Asp-Asp-Asp-Asp-Lys)のLys以外の塩基性残基でタンパク質を切断することが報告されているが、エンテロキナーゼが3CLプロテアーゼを分解することが明らかとなった(Collins-Racie, L.A. et al. (1995) Production of recombinant bovine enterokinase catalytic subunit in Escherichia coli using the novel secretory fusion partner DsbA. Biotechnology 13, 982-987.)。
しかし、本発明者は以下の結果から3CLプロテアーゼは自己分解すると考えた:(a) N末側にMBP-His-Flagタグを有する触媒活性を示さない3CLプロテアーゼを大腸菌で発現させると3CLプロテアーゼが抽出液中に多量に得られたが、C末側にHisタグを有する活性を持つ3CLプロテアーゼを発現させると3CLプロテアーゼが抽出液中にわずかしか存在しなかった;(b) N末側にタグを有する精製野生型3CLプロテアーゼをエンテロキナーゼ処理するとSO1およびSR1オリゴペプチドを切断する活性が認められたが、エンテロキナーゼ単独では同一条件下で3種類のオリゴペプチド基質を切断しなかった;(C) C末側にHisタグを有する野生型3CLプロテアーゼが精製3CL-R188Iプロテアーゼにより分解された。
分解産物断片のアミノ酸配列決定を行うことにより、成熟3CLプロテアーゼが188Arg/189Gln部位で切断されることが見いだされた。同部位は、成熟3CLプロテアーゼのキモトリプシン様触媒ドメイン(1-184)とC末端α-ヘリックスドメイン(201-303)とをつなぐ長いループ領域(残基185-200)内に存在する(図1)。成熟3CLプロテアーゼのホモ二量体構造では、α-ヘリックスドメインは一方の単量体のアミノ末端を他方の単量体の活性部位と相互作用しうる位置に方向づける役割を担うと想定されている(Yang, H. et al. (2003) The crystal structures of severe acute respiratory syndrome virus main protease and its complex with an inhibitor. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100, 13190-13195.)。また、N末端側の触媒領域のみの発現では、発現したタンパク質の触媒効率が低下することも報告されている(Bacha, U. et al. (2004) Identification of Novel Inhibitors of the SARS Coronavirus Main Protease 3CLpro. Biochemistry 43, 4906-4912.)。これらの知見は、188Arg/189Gln部位でのタンパク質分解によって成熟3CLプロテアーゼの触媒効率が速やかに低下するという本発明者の知見と一致する。成熟プロテアーゼにおける発現の間での自己タンパク質分解による分解がHIV-1およびHTLV-1プロテアーゼなどのアスパラギン酸プロテアーゼにおいて報告されており(Rose, J. R. et al. (1993) Regulation of autoproteolysis of the HIV-1 and HIV-2 proteases with engineered amino acid substitutions. J. Biol. Chem. 268, 11939-11945.;Laco, G. S. et al. (1997) Molecular analysis of the feline immunodeficiency virus protease: generation of a novel form of the protease by autoproteolysis and construction of cleavage-resitant proteases. J. Viol. 71, 5505-5511.;Louis, J. M. et al. (1999) Stabilization from Autoproteolysis and Kinetic Characterization of the Human T-cell Leukemia Virus Type 1 Proteinase. J. Biol. Chem. 274, 6660-6666.)、これらはプロテアーゼの速やかな分解がウイルスプロテアーゼにおいてあり得ることを示唆している。
3CLプロテアーゼのタンパク質分解を抑制するため、本発明者は成熟3CLプロテアーゼの第188番目の位置でArg残基を置換した。適切な置換残基としてIleを選択してイオン性グアニジン基を除去した。この変異により、本発明者は、タグのない精製3CL-R188IプロテアーゼとC末端側にHisタグを有する精製3CL-R188Iプロテアーゼを容易に得ることができた。
ついで、3つの異なる基質であるSO1、SO3およびSR1基質を用い、R188I 3CLプロテアーゼ変異体の触媒活性について検討した。P1/P2切断部位を有するSO1基質は、3CLプロテアーゼのN末端側の自己切断部位であり、3CLプロテアーゼにとって最適な基質であることが報告されている(Fan, K. et al. (2004) Biosynthesis, Purification, and Substrate Specificity of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 3C-like Proteinase. J. Biol. Chem. 279, 1637-1642.)。SO3基質は3CLプロテアーゼのP3/P4切断部位を有するウンデカペプチドである。SR1基質は今回新規に見いだされたタンパク質分解部位(188Arg/189Gln)を有するヘキサデカペプチドである。タグのない成熟3CL-R188Iプロテアーゼの触媒能がC末端側にHisタグを有する成熟3CLプロテアーゼと比べて極めて高く、それが特にkcat値で顕著であり、成熟3CLプロテアーゼでは12.2/分、3CL-R188Iでは4753/秒であることが見いだされた。HisタグをC末端側に付加した3CL-R188Iプロテアーゼ変異体では、触媒活性が3CL-R188Iプロテアーゼの3%にまで低下した。これらの結果は、成熟3CLプロテアーゼのNおよびC末端側での付加的配列により、数個の残基付加によっても触媒活性が顕著な影響を受けることを示唆している(Hsu, M. -F. et al. (2005) Mechanism of the Maturation Process of SARS-CoV 3CL Protease. J. Biol. Chem. 280, 31257-31266.)。
タグが付加していない3CL-R188IプロテアーゼのSO3基質とSO1基質に対する相対効率(SO3/SO1比)がC末端側にHisタグを有する成熟3CLプロテアーゼに対して報告されたものと正確に同一であったことは注目される(Fan, K. et al. (2004) Biosynthesis, Purification, and Substrate Specificity of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 3C-like Proteinase. J. Biol. Chem. 279, 1637-1642.)。一方、SR1基質に対する触媒の相対効率は、成熟3CLプロテアーゼの11の切断部位のひとつであるP5/P6部位での切断に対して報告されたものとほぼ同一であった(Fan, K. et al. (2004) Biosynthesis, Purification, and Substrate Specificity of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 3C-like Proteinase. J. Biol. Chem. 279, 1637-1642.)。これらのデータは、成熟3CLプロテアーゼがArg188/Gln189部位でSARS CoVのポリタンパク質前駆体を本来の切断部位の場合とほぼ等しい効率で消化しうることを示唆している。したがって、成熟3CLプロテアーゼと大きさが等しいプロテアーゼ変異体を応用することがSARS CoV 3CLプロテアーゼに対して有効な阻害物質をスクリーニングするのに有効であると考えられる。
タグが付加していない3CL-R188Iプロテアーゼを用いたに関するスクリーニングにおいて、基質をベースとするアルデヒド型阻害物質(Ac-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO)はSO1基質の消化を中程度に阻害した。これまで報告された様々な阻害物質と比較すると活性は高くなかったが(IC50=155μM)、3CLプロテアーゼについて先に報告された基質をベースとする阻害物質の構造-活性の関係性に関する研究(Ghosh, A. K. et al. (2005) Design and Synthesis of Peptidomimetic Severe Acute Respiratory Syndrome Chymotrypsin-like Protease Inhibitors. J. Med. Chem. 48, 6767-6771.; Shie, J. -J. et al. (2005) Discovery of Potent Anilide Inhibitors against the Severe Acute Respiratory Syndrome 3CL Protease.J. Med. Chem. 48, 4469-4473.; Chen, L. -R. et al. (2005) Synthesis and evaluation of isatin derivatives as effective SARS coronavirus 3CL protease inhibitors. Bioorg. Med. Chem. Lett. 15, 3058-3062.; Shie, J. -J. et al. (2005) Inhibition of the severe acute respiratory syndrome 3CL protease by peptidomimetic α, β-unsaturated esters. Bioorg. Med. Chem. 13, 5240-5252.; Jain, R. P. et al. (2004) Synthesis and Evaluation of Keto-Glutamine Analogues as Potent Inhibitors of Severe Acute Respiratory Syndrome 3CLpro. J. Med. Chem. 47, 6113-6116.)を参照することにより、阻害能を増強することができると予想される。
また、本実施例において、Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、およびAc-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOも3CL-R188IプロテアーゼによるSO1基質の消化を阻害することが分かった。これらの阻害物質(Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO、Ac-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOおよびAc-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHO)は、SARS 3CLプロテアーゼの触媒活性を阻害するので、SARSの治療のために使用し得る。
天然型SARS CoV 3CLプロテアーゼのアミノ酸配列を示す図である。3CLプロテアーゼの触媒中心の2残基はHis41およびCys145であり、これは他のコロナウイルスプロテアーゼに見いだされた配列に類似している。N末端部分(1-184)はキモトリプシン型プロテアーゼに類似する2つのβバレルフォールドを含む。C末端部分(201-303)は5つのαヘリックスを含む。 N末端側にMBP-His-Flag-タグを付加した3CLプロテアーゼのSDS-PAGEを示す図である。試料は10%(A)または15%(B)のSDS-PAGEによって分離され、Coomassie Brilliant Blueで染色された。レーンMは標準タンパク質分子(バイオ・ラッド)を示す。(A)各精製ステップ:レーン1、IPTG誘導による細菌細胞の粗抽出液(20μgのタンパク質); レーン2、金属アフィニティー樹脂で処理した画分(3μg); レーン3、エンテロキナーゼで処理した(2時間で0.1u)画分(3μg)、(B)金属アフィニティー樹脂で処理した画分(10μg)のエンテロキナーゼ(0.05u)消化の経時変化:レーン1、未処理; レーン2、15分; レーン3、30分; レーン4、60分 75kDaの融合タンパク質、エンテロキナーゼおよびペプチド基質の混合物のHPLCプロフィールを示す図である。(A)SO1基質、(a)反応混合物中に基質のみ、(b)4時間の処理後、SO1基質のC末端側の切断断片からピーク1が生じ、SO1基質のN末端側の切断断片からピーク2が生じる。(B)SR1基質、(a)反応混合物中に基質のみ、(b)13時間の処理後、SR1基質のN末端側の切断断片からピーク1が生じる。 C末端側にHis-タグを付加した3CLプロテアーゼのSDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングを示す図である。試料は15% SDS-PAGE上で分離後、Coomassie Brilliant Blue(A)で染色されるかまたは抗-His-タグ抗体を用いたウエスタンブロッティング(B)により分析された。(A)各精製ステップ: レーンM、標準タンパク質分子(バイオ・ラッド); レーン1、IPTG誘導による細菌細胞の粗抽出液(20μgのタンパク質); レーン2、金属アフィニティー樹脂で処理した画分(4μg)、(B)室温での一晩のインキュベーションによる金属アフィニティー樹脂で処理した画分(4μg)のタンパク質分解 :レーンM、ビオチン化分子の標準タンパク質(バイオ・ラッド); レーン1、インキュベーションなし; レーン2、インキュベーションのみ; レーン3、エンテロキナーゼ(0.05u)とのインキュベーション; レーン4、精製した3CL-R188Iプロテアーゼ(0.5μg)とのインキュベーション R188I 3CLプロテアーゼ変異体のSDS-PAGEを示す図である。: 各精製ステップで試料が10%(A)または15%(B)のSDS-PAGEによって分離され、Coomassie Brilliant Blueで染色された様子を示す。レーンMは標準タンパク質分子(バイオ・ラッド)を示す。(A) タグが付加していないプロテアーゼ: レーン1、N末端側にMBP-His-Flag-タグを付加したプロテアーゼを発現する細菌細胞の粗抽出液(20μgのタンパク質); レーン2、金属アフィニティー樹脂で処理した画分(6μg); レーン3、エンテロキナーゼで処理した画分(4μg); レーン4、DEAE-Sepharoseカラムの通過画分(3μg); レーン5、DEAE-Sepharoseカラムの保持画分(3μg)、(B)C末端側にHis-タグを付加したプロテアーゼ: レーン1、IPTG誘導による細菌細胞の粗抽出液(20μgのタンパク質); レーン2、金属アフィニティー樹脂で処理した画分(2μg) 阻害物質Ac-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOのIC50値の推定のために用いられる代表的なS字形用量-応答曲線を示す図である。 阻害物質Ac-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOのIC50値の推定のために用いられるS字形用量-応答曲線を示す図である。 阻害物質Ac-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOのIC50値の推定のために用いられるS字形用量-応答曲線を示す図である。 阻害物質Ac-Ser-Ala-Val-Leu-NHCH(CH2CH2CON(CH3)2)-CHOのIC50値の推定のために用いられるS字形用量-応答曲線を示す図である。

Claims (10)

  1. 配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなる、又は
    前記置換されたアミノ酸配列のうち第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3CLプロテアーゼ活性を有する、組換えタンパク質。
  2. 前記第188番目のアミノ酸と置換される他のアミノ酸が、イソロイシン、ロイシン、バリン、アラニン、グリシン、メチオニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン及びグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1に記載の組換えタンパク質。
  3. 前記第188番目のアミノ酸と置換される他のアミノ酸がイソロイシンである、請求項2に記載の組換えタンパク質。
  4. 以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質。
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において第188番目のアミノ酸を除く1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3CLプロテアーゼ活性を有する、組換えタンパク質
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  6. 以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (b)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、3CLプロテアーゼ活性を有し、かつ、第188番目のアミノ酸がイソロイシンであるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
  7. 請求項5又は6に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
  8. 請求項7に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えタンパク質に候補物質を接触させ、候補物質の中から前記組換えタンパク質の3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  10. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えタンパク質を含む、前記組換えタンパク質の3CLプロテアーゼ活性を阻害する物質のスクリーニング用キット。
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