JP5352729B2 - 電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤 - Google Patents

電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤 Download PDF

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Description

この発明は、電子写真現像剤用キャリア芯材(以下、単に「キャリア芯材」ということもある)、電子写真現像剤用キャリア(以下、単に「キャリア」ということもある)、および電子写真現像剤(以下、単に「現像剤」ということもある)に関するものであり、特に、複写機やMFP(Multifunctional Printer)等に用いられる電子写真現像剤に備えられる電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤に備えられる電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤に関するものである。
複写機やMFP等においては、電子写真における乾式の現像方式として、トナーのみを現像剤の成分とする一成分系現像剤と、トナーおよびキャリアを現像剤の成分とする二成分系現像剤とがある。いずれの現像方式においても、所定の電荷量に帯電させたトナーを感光体に供給する。そして、感光体上に形成された静電潜像をトナーによって可視化し、これを用紙に転写する。その後、トナーによる可視画像を用紙に定着させ、所望の画像を得る。 ここで、二成分系現像剤における現像について、簡単に説明する。現像器内には、所定量のトナーおよび所定量のキャリアが収容されている。現像器には、S極とN極とが周方向に交互に複数設けられた回転可能なマグネットローラおよびトナーとキャリアとを現像器内で攪拌混合する攪拌ローラが備えられている。磁性粉から構成されるキャリアは、マグネットローラによって担持される。このマグネットローラの磁力により、キャリア粒子による直鎖状の磁気ブラシが形成される。キャリア粒子の表面には、攪拌による摩擦帯電により複数のトナー粒子が付着している。マグネットローラの回転により、この磁気ブラシを感光体に当てるようにして、感光体の表面にトナーを供給する。二成分系現像剤においては、このようにして現像を行なう。
トナーについては、用紙への定着により現像器内のトナーが順次消費されていくため、現像器に取り付けられたトナーホッパーから、消費された量に相当する新しいトナーが、現像器内に随時供給される。一方、キャリアについては、現像による消費がなく、寿命に達するまでそのまま用いられる。二成分系現像剤の構成材料であるキャリアには、攪拌による摩擦帯電により効率的にトナーを帯電させるトナー帯電機能や絶縁性、感光体にトナーを適切に搬送して供給するトナー搬送能力等、種々の機能が求められる。例えば、トナーの帯電能力向上の観点から、キャリアについては、その電気抵抗値(以下、単に抵抗値ということもある)が適切であること、また、絶縁性が適切であることが要求される。
昨今において、上記したキャリアは、そのコア、すなわち、核となる部分を構成するキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆するようにして設けられるコーティング樹脂とから構成されている。
ここで、キャリア芯材については、その基本的特性として、機械的強度の高いことが望まれる。上記したように、キャリアは現像器内において攪拌されるが、この攪拌によるキャリアの割れや欠けは、できるだけ未然に防ぐことが望ましい。したがって、コーティング樹脂によって被覆されるキャリア芯材自体についても、高い機械的強度が望まれる。
また、キャリア芯材については、磁気的特性が良好であることも望まれる。簡単に説明すると、キャリアは、現像器内において、上記したようにマグネットローラに磁力で担持されている。このような使用状況下において、キャリア芯材自体の磁性、具体的には、キャリア芯材自体の磁化が低いとマグネットローラに対する保持力が弱まり、いわゆるキャ
リア飛散等の問題が生ずるおそれがある。特に、昨今においては、形成される画像の高画質化の要求に応えるため、トナー粒子の粒径を小さくする傾向にあり、これに対応して、キャリア粒子の粒径も小さくする傾向にある。キャリアの小粒径化を図ると、各キャリア粒子の担持力が小さくなってしまうおそれがある。したがって、上記したキャリア飛散の問題に対して、より効果的な対策が望まれる。
キャリア芯材に関する技術が種々開示されているが、キャリア飛散防止という観点に着目した技術については、特開2008−241742号公報(特許文献1)に開示されている。
特開2008−241742号公報
また、キャリア芯材については、電気的特性が良好であること、具体的には、例えば、キャリア芯材自体の帯電量の高いことや高い絶縁破壊電圧を有すること、さらに上記したような観点から、キャリア芯材自体についても適切な抵抗値を有することが望まれる。特に、キャリア芯材自体の帯電性能が、昨今では強く望まれる傾向にある。 ここで、複写機は、一般的に事務所のオフィス等において設置されて使用されるものであるが、同じオフィス環境といえども、世界各国においては、種々のオフィス環境が存在する。例えば、30℃程度の高い温度の環境下で使用される場合や、相対湿度90%程度の高い湿度の環境下で使用される場合、また、逆に10℃程度の低い温度で使用される場合や、相対湿度35%程度の低い湿度の環境下で使用される場合がある。このような温度や相対湿度が変化する状況においても、複写機に備えられる現像器内の現像剤に対しては、その特性の変化を小さくすることが望ましく、キャリアを構成するキャリア芯材についても、環境が変化した場合における特性の変化の小さいこと、いわゆる環境依存性の小さいことが要求される。
そこで、本願発明者らは、使用する環境によってキャリア物性、具体的には、帯電量や抵抗値が変動する原因について鋭意検討を行なった。その結果、キャリア芯材の物性変動が、コーティングを施したキャリアの物性に大きく影響することがわかった。そのため、特許文献1に代表される従来のキャリア芯材では、上記した環境依存性に対して、不十分であることがわかった。例えば、具体的には、比較的高い相対湿度の環境下において、上記した帯電量や抵抗値が大きく低下してしまう場合があった。このようなキャリア芯材では、環境変化による影響が大きく、画質に影響を与えるおそれがある。
この発明の目的は、キャリア芯材自体の帯電性能が高く、環境依存性が小さい電子写真現像剤用キャリア芯材を提供することである。
この発明の他の目的は、帯電性能が高く、環境依存性が小さい電子写真現像剤用キャリアを提供することである。
この発明のさらに他の目的は、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる電子写真現像剤を提供することである。
本願発明者は、キャリア芯材自体の帯電性能が高く、環境依存性が小さいキャリア芯材を得るための手段として、まず、基本的特性として良好な磁気的特性を確保すべく、マンガンおよび鉄をコア組成の主成分とすることを考えた。そして、高い機械的強度の確保のため、磁気的特性を損なわない程度の微量のSiOを添加することを考えた。ここで、本願発明者らが鋭意検討を行なった結果、機械的強度の向上のために添加したSiOのうち、キャリア芯材の表層部分に存在する酸化物としてのSiが、環境依存性に悪影響を及ぼしていると考えた。具体的には、キャリア芯材の表層部分に位置する酸化物としてのSiが、高い相対湿度の環境下において比較的多く存在する水分と吸着して電荷のリークを促進し、その結果、高い相対湿度の環境下において抵抗値が低下していると考えた。また、キャリア芯材に含有されるSiOはそもそも、摩擦帯電により生じた電荷を保持する性能が低いため、キャリア芯材自体の帯電性能についても低くなると考えた。そして、このSiに起因すると考えられる環境依存性および帯電性能に対する影響を低減すべく、キャリア芯材の成分として、所定の金属元素を所定量添加した。具体的には、Mgを0.13〜0.30重量%含有することとした。こうすることにより、以下のようなメカニズムで、環境依存性の低下および帯電性能の向上を図ることができると考えられる。すなわち、所定量添加した上記した金属元素と、キャリア芯材の表層部分に位置する酸化物としてのSiとが反応して金属複合酸化物を形成する。そして、このSiの金属複合酸化物が、高い相対湿度の環境下において電荷のリークを抑制してキャリア芯材の抵抗値の低下を防止し、その結果、環境依存性を小さくすることができると考えられる。また、Siと所定の金属元素とによって形成されたSiの金属複合酸化物や、上記した金属元素そのものが、摩擦帯電により生じた電荷を保持し、キャリア芯材自体の帯電性能を高めることができると考えられる。さらに、より環境依存性を小さくするため、コア組成中、すなわち、キャリア芯材に対して、酸素量を過剰にすることとした。 すなわち、この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Mgを0.13〜0.30重量%含有する。
上記したような構成のキャリア芯材は、まず、一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表される。すなわち、キャリア芯材中の酸素量については、0<yとして、過剰気味に含有されるものである。このようなキャリア芯材は、高い相対湿度の環境下における抵抗値の低下を抑制することができる。そして、本願発明に係るキャリア芯材は、さらに、Siを0.1重量%以上含有し、Mgを0.13〜0.30重量%含有する構成である。このようなキャリア芯材については、上述したように、キャリア芯材自体の帯電性能が高く、環境依存性が小さい。
ここで、酸素量yの算出方法について説明する。本願発明において、酸素量yを算出するに当たって、Mnの原子価を2価と仮定する。そして、まず、Feの平均価数を算出する。Feの平均価数については、酸化還元滴定によりFe2+の定量と総Feの定量を行い、Fe2+量とFe3+量の算出結果から、Feの平均価数を求める。ここで、Fe2+の定量の方法、および総Feの定量の方法について詳述する。
(1)Fe2+の定量
まず、鉄元素を含むフェライトを炭酸ガスのバブリング中で還元性の酸である塩酸(HCl)水に溶解させる。その後、この溶液中のFe2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe2+の滴定量を求めた。
(2)総Fe量の定量
鉄元素を含むフェライトをFe2+定量の際と同量秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe3+をFe2+に還元する。続いて、この溶液を上記したFe2+定量で用いた方法と同一の分析手段により測定し、滴定量を求めた。
(3)Fe平均価数の算出
上述した(1)では、Fe2+定量を表し、((2)滴定量−(1)滴定量)は、Fe3+量を表すので、以下の計算式により、Feの平均価数を算出した。
Fe平均価数={3×((2)滴定量−(1)滴定量)+2×(1)滴定量}/(2)滴定量
なお、上述した方法以外にも、鉄元素の価数を定量する方法として、異なる酸化還元滴定法が考えられるが、本分析に用いる反応は単純であり、得られた結果の解釈が容易なこと、一般に用いられる試薬および分析装置で十分な精度が出ること、分析者の熟練を要しないことなどから優れていると考えられる。
そして、電気的中性の原理から、構造式において、Mn価数(+2価)×x+Fe平均価数×(3−x)=酸素価数(−2価)×(4+y)の関係が成立するため、上式からyの値を算出する。
また、本願発明に係るキャリア芯材のSi、Mn、Ca、Mg、Srの分析方法について説明する。
(SiO含有量、Si含有量の分析)
キャリア芯材のSiO含有量は、JIS M8214−1995記載の二酸化珪素重量法に準拠して定量分析を行なった。本願発明に記載したキャリア芯材のSiO含有量は、この二酸化珪素重量法で定量分析し得られたSiO量である。また、本願で規定しているSi含有量は、上記分析で得られたSiO量から下記式を用いて算出した。
Si含有量(重量%)=SiO量(重量%)×28.09(mol/g)÷60.09(mol/g)
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行なった。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Ca、Sr、Mgの分析)
キャリア芯材のCa、Sr、Mg含有量は、以下の方法で分析を行なった。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行なった。本願発明に記載したキャリア芯材のCa、Sr、Mg含有量は、このICPによる定量分析で得られたCa、Sr、Mg量である。
好ましくは、含有されるMgのSiに対するモル(mol)比は、0.09以上である。このように構成することにより、含有される金属元素の量をSiに対して多くすることができ、酸化物としてのSiの存在比率を少なくして、より帯電性能を高く、かつ、環境依存性を小さいものとすることができると考えられる。
この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤用キャリアは、電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Mgを0.13〜0.30重量%含有する電子写真現像剤用キャリア芯材と、電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える。このような電子写真現像剤用キャリアは、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を備えるため、帯電性能が高く、環境依存性が小さい。
この発明のさらに他の局面においては、電子写真現像剤は、電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Mgを0.13〜0.30重量%含有する電子写真現像剤用キャリア芯材、および電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂を備える電子写真現像剤用キャリアと、電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える。このような電子写真現像剤は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリアを備えるため、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる。
この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材は、キャリア芯材自体の帯電性能が高く、環境依存性が小さい。
また、この発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、帯電性能が高く、環境依存性が小さい。
また、この発明に係る電子写真現像剤は、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる。
この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。 この発明の一実施形態に係るキャリアの外観を示す電子顕微鏡写真である。 この発明の一実施形態に係る現像剤の外観を示す電子顕微鏡写真である。 この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。 コア帯電量と含有金属の含有比率との関係を示すグラフである。 キャリア芯材の粉末におけるX線回折(以下、単にXRD(X−Ray Diffraction)ということもある)のチャートである。 比較例2の場合のキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。 実施例14の場合のキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。 実施例16の場合のキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。 図7に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるFe元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図8に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるFe元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図9に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるFe元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図7に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるSi元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図8に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるSi元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図9に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるSi元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図7に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるCa元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図8に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるCa元素の元素分析の結果の概略図を示す。 図9に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるCa元素の元素分析の結果の概略図を示す。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材について説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の外観を示す電子顕微鏡写真である。
図1を参照して、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材11については、その外形形状が、略球形状である。この発明の一実施形態に係るキャリア芯材11の粒径は、約35μmであり、適当な粒度分布を有している。すなわち、上記した粒径は、体積平均粒径を意味する。この粒径および粒度分布については、要求される現像剤の特性や製造工程における歩留まり等により任意に設定される。キャリア芯材11の表面には、主に後述する焼成工程で形成される微小の凹凸が形成されている。
図2は、この発明の一実施形態に係るキャリアの外観を示す電子顕微鏡写真である。図2を参照して、この発明の一実施形態に係るキャリア12についても、キャリア芯材11と同様に、その外形形状が、略球形状である。キャリア12は、キャリア芯材11の表面に薄く樹脂をコーティング、すなわち被覆したものであり、その粒径についても、キャリア芯材11とほとんど変化は無い。キャリア12の表面については、キャリア芯材11と異なり、樹脂でほぼ完全に被覆されている。
図3は、この発明の一実施形態に係る現像剤の外観を示す電子顕微鏡写真である。図3を参照して、現像剤13は、上記した図2に示すキャリア12と、トナー14とから構成されている。トナー14の外形形状についても、略球形状である。トナー14は、スチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂を主成分とするものであり、所定量の顔料やワックス等が配合されている。このようなトナー14は、例えば、粉砕法や重合法によって製造される。トナー14の粒径は、例えば、キャリア12の粒径の7分の1程度の約5μm程度のものが使用される。また、トナー14とキャリア12の配合比についても、要求される現像剤の特性等に応じて、任意に設定される。このような現像剤13は、所定量のキャリア12とトナー14とを適当な混合器で混合することにより製造される。
次に、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法について説明する。図4は、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する製造方法において、代表的な工程を示すフローチャートである。以下、図4に沿って、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の製造方法について説明する。
まず、カルシウムを含む原料、ストロンチウムを含む原料、およびマグネシウムを含む原料のうちの少なくともいずれか一つの原料と、マンガンを含む原料と、鉄を含む原料と、Si(ケイ素)を含む原料とを準備する。そして、準備した原料を、要求される特性に応じて、適当な配合比で配合し、これを混合する(図4(A))。ここで、適当な配合比とは、最終的に得られるキャリア芯材が、Siを0.1重量%以上含有し、Ca、Sr、およびMgからなる群のうちの少なくとも一つの金属元素を0.03重量%以上含有するような配合比である。
この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を構成する鉄原料については、金属鉄またはその酸化物であればよい。具体的には、常温常圧下で安定に存在するFeやFe、Feなどが好適に用いられる。また、マンガン原料については、金属マンガンまたはその酸化物であればよい。具体的には、常温常圧下で安定に存在する金属Mn、MnO、Mn、Mn、MnCOが好適に使用される。また、カルシウムを含む原料としては、金属カルシウムまたはその酸化物が好適に用いられる。具体的には、例えば、炭酸塩であるCaCOや、水酸化物であるCa(OH)、酸化物であるCaO等
が挙げられる。また、ストロンチウムを含む原料としては、金属ストロンチウムまたはその酸化物が好適に用いられる。具体的には、例えば、炭酸塩であるSrCO等が挙げられる。また、マグネシウムを含む原料としては、金属マグネシウムまたはその酸化物が好適に用いられる。具体的には、例えば、炭酸塩であるMgCOや、水酸化物であるMg(OH)、酸化物であるMgO等が挙げられる。また、Siを含む原料については、取扱い性の観点から、SiOが挙げられる。添加するSiO原料は、非晶質シリカ、結晶シリカ、コロイダルシリカ等が好適に用いられる。なお、上記原料(鉄原料、マンガン原料、カルシウム原料、ストロンチウム原料、マグネシウム原料、Siを含む原料等)をそれぞれ、若しくは目的の組成になるように混合した原料を仮焼して粉砕し原料として用いても良い。
次に、混合した原料のスラリー化を行なう(図4(B))。すなわち、これらの原料を、キャリア芯材の狙いとする組成に合わせて秤量し、混合してスラリー原料とする。
この発明に係るキャリア芯材を製造する際の製造工程においては、後述する焼成工程の一部において、還元反応を進めるため、上述したスラリー原料へ、さらに還元剤を添加してもよい。還元剤としては、カーボン粉末やポリカルボン酸系有機物、ポリアクリル酸系有機物、マレイン酸、酢酸、ポリビニルアルコール(PVA(polyvinyl alcohol))系有機物、及びそれらの混合物が好適に用いられる。
上述したスラリー原料に水を加え混合攪拌して、固形分濃度を40重量%以上、好ましくは50重量%以上とする。スラリー原料の固形分濃度が50重量%以上であれば、造粒ペレットの強度を保つことができるので好ましい。
次に、スラリー化した原料について、造粒を行なう(図4(C))。上記混合攪拌して得られたスラリーの造粒は、噴霧乾燥機を用いて行なう。なお、スラリーに対し、造粒前に、さらに湿式粉砕を施すことも好ましい。
噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃程度とすればよい。これにより、概ね、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得ることができる。得られた造粒粉は製品の最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し、この時点で粒度調整することが望ましい。
その後、造粒した造粒物について、焼成を行なう(図4(D))。具体的には、得られた造粒粉を、900〜1500℃程度に加熱した炉に投入し、1〜24時間保持して焼成し、目的とする焼成物を生成させる。このとき、焼成炉内の酸素濃度は、フェライト化の反応が進む条件であればよく、具体的には、1200℃の場合、10−7%以上3%以下となるよう導入ガスの酸素濃度を調整し、フロー状態下で焼成を行う。
また、先の還元剤の調整により、フェライト化に必要な還元雰囲気を制御してもよい。もっとも、工業化時に十分な生産性を確保できる反応速度を得る観点からは、900℃以上の温度が好ましい。一方、焼成温度が1500℃以下であれば、粒子同士の過剰焼結が起こらず、粉体の形態で焼成物を得ることができる。
ここで、コア組成中の酸素量を過剰気味にする一つの手段として、焼成工程における冷却時の酸素濃度を所定の量以上とすることが考えられる。すなわち、焼成工程において、室温程度まで冷却を行なう際に、酸素濃度を所定の濃度、具体的には、0.03%よりも多くした雰囲気下で冷却を行なうようにしてもよい。具体的には、電気炉内に導入する導入ガスの酸素濃度を0.03%よりも多くし、フロー状態下で行なう。このように構成することにより、キャリア芯材の内部層において、フェライト中の酸素量を過剰に存在させ
ることができる。ここで、0.03%以下とすると、内部層における酸素の含有量が、相対的に少なくなる。したがって、ここでは、上記酸素濃度の環境下で、冷却を行なう。
得られた焼成物は、さらにこの段階で粒度調整をすることが望ましい。例えば、焼成物をハンマーミル等で粗解粒する。すなわち、焼成を行った粒状物について、解粒を行なう(図4(E))。その後、振動ふるいなどで分級を行なう。すなわち、解粒した粒状物について、分級を行なう(図4(F))。こうすることにより、所望の粒径を持ったキャリア芯材の粒子を得ることができる。
次に、分級した粒状物について、酸化を行なう(図4(G))。すなわち、この段階で得られたキャリア芯材の粒子表面を熱処理(酸化処理)する。そして、粒子の絶縁破壊電圧を250V以上に上げ、電気抵抗値を適切な電気抵抗値である1×10〜1×1013Ω・cmとする。酸化処理でキャリア芯材の電気抵抗値を上げることにより、電荷のリークによるキャリア飛散のおそれを低減することができる。
具体的には、酸素濃度10〜100%の雰囲気下において、200〜700℃で0.1〜24時間保持して、目的とするキャリア芯材を得る。より好ましくは、250〜600℃で0.5〜20時間、さらに好ましくは、300〜550℃で1時間〜12時間である。このようにして、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材を製造する。なお、このような酸化処理工程については、必要に応じて任意に行なわれるものである。
次に、このようにして得られたキャリア芯材に対して、樹脂により被覆を行なう(図4(H))。具体的には、得られたこの発明に係るキャリア芯材をシリコーン系樹脂やアクリル樹脂等で被覆する。このようにして、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアを得る。シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等の被覆方法は、公知の手法により行うことができる。すなわち、この発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Ca、Sr、およびMgからなる群のうちの少なくとも一つの金属元素を0.03重量%以上含有する電子写真現像剤用キャリア芯材と、電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える。
このような電子写真現像剤用キャリアは、上記した構成の電子写真現像剤用キャリア芯材を備えるため、帯電性能が高く、環境依存性が小さい。
次に、このようにして得られたキャリアとトナーとを所定量ずつ混合する(図4(I))。具体的には、上記した製造方法で得られたこの発明の一実施形態に係る電子写真現像剤用キャリアと、適宜な公知のトナーとを混合する。このようにして、この発明の一実施形態に係る電子写真現像剤を得ることができる。混合は、例えば、ボールミル等、任意の混合器を用いる。この発明に係る電子写真現像剤は、電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Ca、Sr、およびMgからなる群のうちの少なくとも一つの金属元素を0.03重量%以上含有する電子写真現像剤用キャリア芯材、および電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂を備える電子写真現像剤用キャリアと、電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える。
このような電子写真現像剤は、上記した構成の電子写真現像剤用キャリアを備えるため、種々の環境においても良好な画質の画像を形成することができる。
(実施例1)
Fe(平均粒径:0.6μm)10.8kg、Mn(平均粒径:2μm)4.2kgを水5.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を90g、還元剤としてカーボンブラックを45g、SiO原料としてコロイダルシリカ(固形分濃度50%)を30g、CaCOを15g添加して混合物とした。このときの固形分濃度を測定した結果、75重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は、ふるいにより除去した。この造粒粉を、電気炉に投入し、1130℃で3時間焼成した。このとき、電気炉内は酸素濃度が0.8%となるよう、雰囲気を調整した電気炉にフローした。得られた焼成物を解粒後にふるいを用いて分級し、平均粒径25μmとした。さらに、得られたキャリア芯材に対して、470℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例1に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例2)
添加するCaCOを38gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例3)
添加するCaCOを75gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例4)
添加するCaCOを150gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例5)
添加するCaCOをMgCOとし、その量を15gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例6)
添加するCaCOをMgCOとし、その量を32gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例7)
添加するCaCOをMgCOとし、その量を63gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例8)
添加するCaCOをMgCOとし、その量を127gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例8に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例9)
添加するCaCOをSrCOとし、その量を22gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例9に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例10)
添加するCaCOをSrCOとし、その量を55gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例10に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例11)
添加するCaCOをSrCOとし、その量を111gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例11に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例12)
添加するCaCOをSrCOとし、その量を221gとした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例12に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例13)
Fe(平均粒径:0.6μm)6.8kg、Mn(平均粒径:2μm)3.2kgを水3.5kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を63g、SiO原料として結晶シリカを500g、CaCOを53g添加して混合物とした。なお、還元剤としてのカーボンブラック等は未添加とした。このときの固形分濃度を測定した結果、75重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は、ふるいにより除去した。この造粒粉を、電気炉に投入し、1100℃で3時間焼成した。このとき、電気炉内は酸素濃度が0.8%となるよう、雰囲気を調整した電気炉にフローした。得られた焼成物を解粒後にふるいを用いて分級し、平均粒径35μmとし、実施例13に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表3および表4に示す。なお、表3に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定し
て得られた結果である。
(実施例14)
添加するCaCOを105gとした以外は、実施例13と同様の方法で、実施例14に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表3および表4に示す。なお、表3に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例15)
添加するCaCOを210gとした以外は、実施例13と同様の方法で、実施例15に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表3および表4に示す。なお、表3に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(実施例16)
添加するCaCOを525gとした以外は、実施例13と同様の方法で、実施例16に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表3および表4に示す。なお、表3に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(比較例1)
添加するCaCOを未添加とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1および表2に示す。なお、表1に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
(比較例2)
添加するCaCOを5gとし、電気炉内の酸素濃度を0.03%とした以外は、実施例13と同様の方法で、比較例2に係るキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表3および表4に示す。なお、表3に記載の芯材組成は、得られたキャリア芯材を上記した分析方法で測定して得られた結果である。
表1および表2を参照して、実施例1は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Caの含有比率を0.05重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例2は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Caの含有比率を0.09重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例3は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Caの含有比率を0.17重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例4は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Caの含有比率を0.33重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例5は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Mgの含有比率を0.13重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例6は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Mgの含有比率を0.16重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例7は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Mgの含有比率を0.20重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例8は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Caの含有比率を0.30重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例9は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Srの含有比率を0.03重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例10は、x=0.85においてSiの含有
比率を0.11重量%、Srの含有比率を0.13重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例11は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Srの含有比率を0.32重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例12は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Srの含有比率を0.72重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。一方、比較例1は、x=0.85においてSiの含有比率を0.11重量%、Ca、Sr、Mgの含有比率を0重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたもの、すなわち、Ca、Sr、Mgのいずれも含有しないものである。実施例1〜12および比較例1において、酸化処理工程における酸化温度は、470℃としている。
表3および表4を参照して、実施例13は、x=0.97においてSiの含有比率を2.24重量%、Caの含有比率を0.10重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例14は、x=0.98においてSiの含有比率を2.24重量%、Caの含有比率を0.34重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%と
したものである。実施例15は、x=0.97においてSiの含有比率を2.24重量%、Caの含有比率を0.74重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。実施例16は、x=0.97においてSiの含有比率を2.24重量%、Caの含有比率を1.53重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.8%としたものである。一方、比較例2は、x=0.97においてSiの含有比率を2.24重量%、Caの含有比率を0.01重量%とし、冷却工程における酸素濃度を0.03%としたものである。実施例13〜16および比較例2においては、酸化処理を行っていない。
表中、酸化処理条件における温度とは、上記した酸化工程における温度(℃)である。表中、「含有金属/Si」とは、含有される金属元素のSiに対するモル比である。モル比の具体的な算出方法としては、以下の通りである。まず、各元素の原子量について、S
iを28.1、Mgを24.3、Caを40.1、Srを87.6、Mnを54.9、Feを55.8とした。含有される金属元素のSiに対するモル比は、モル比={(含有される金属元素の重量%)/(含有される金属元素の原子量)}/{(含有されるSiの重量%)/(含有されるSiの原子量)}の式によって算出される。なお、Feの平均価数については、上述した通りである。
表中のコア帯電量とは、コア、すなわち、キャリア芯材の帯電量のことである。ここで、帯電量の測定について説明する。キャリア芯材9.5g、市販のフルカラー機のトナー0.5gを100mlの栓付きガラス瓶に入れ、25℃、相対湿度50%の環境下で12時間放置して調湿する。調湿したキャリア芯材とトナーを振とう器で30分振とうし、混合する。ここで、振とう器については、株式会社ヤヨイ製のNEW−YS型を用い、200回/分、角度60°で行なった。混合したキャリア芯材とトナーを500mg計量し、帯電量測定装置で帯電量を測定した。この実施形態においては、日本パイオテク株式会社製のSTC−1−C1型を用い、吸引圧力5.0kPa、吸引用メッシュをSUS製の795meshで行なった。同一サンプルについて2回の測定を行い、これらの平均値を各コア帯電量とした。コア帯電量の算出式については、コア帯電量(μC(クーロン)/g)=実測電荷(nC)×10×係数(1.0083×10−3)÷トナー重量(吸引前重量(g)−吸引後重量(g))となる。
また、強度の測定については、以下の通りである。まず、キャリア芯材30gをサンプルミルに投入した。サンプルミルは、協立理工株式会社製のSK−M10型を用いた。そして、回転数14000rpmで60秒間破砕試験を行った。その後、破砕前の22μm以下の破砕片における累積値と破砕後の22μm以下の破砕片における累積値との変化率を微粉増加率として測定した。累積値については、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、体積値を採用した。レーザー回折式粒度分布測定装置は、日機装株式会社製のマイクロトラック、Model9320−X100を用いた。このようにして測定された強度(%)については、その値の小さい方が、より強度の高いことになる。
次に、抵抗値の測定について説明する。キャリア芯材を、表中に示す環境下、すなわち、10℃、相対湿度35%の環境下(LL環境下)および30℃、相対湿度90%の環境下(HH環境下)において1昼夜調湿した後、その環境下で測定を行なった。まず、水平に置かれた絶縁板、例えば、テフロン(登録商標)でコートされたアクリル板の上に、電極として表面を電解研摩した板厚2mmのSUS(JIS)304板2枚を、電極間距離1mmとなるように配置する。この時、2枚の電極板は、その法線方向が水平方向となるようにする。2枚の電極板の間の空隙に被測定粉体200±1mgを装入した後、それぞれの電極板の背後に断面積240mmの磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させる。この状態で、電極間に各電圧を小さいものから順に直流電圧で印加し、被測定粉体を流れる電流値を2端子法により測定し、電気抵抗率(比抵抗)を算出する。なお、ここでは、日置電機株式会社製の超絶縁計SM−8215を用いている。また、電気抵抗率(比抵抗)の算出式は、電気抵抗率(比抵抗)(Ω・cm)=実測抵抗値(Ω)×断面積(2.4cm)÷電極間距離(0.1cm)となる。そして、表中の各電圧を印加した場合の印加時の抵抗率(比抵抗)(Ω・cm)を測定した。なお、使用する磁石は、粉体がブリッジを形成できる限り、種々のものが使用できるが、この実施形態では、表面の磁束密度が1000ガウス以上の永久磁石、例えば、フェライト磁石を使用している。
なお、表中において、低温低湿環境、具体的には、温度10℃、相対湿度35%の環境下における抵抗値、および高温高湿環境、具体的には、温度30℃、相対湿度90%の環境下における抵抗値を示す。ここで、表中に記載の抵抗は、対数値で示している。すなわち、電気抵抗率(比抵抗)1×10Ω・cmは、Log Rとして算出し、換算値6.
0と示している。また、抵抗の環境差とは、低温低湿環境における抵抗から高温高湿環境における抵抗を差し引いたものである。
表中、「σ1000」とは、外部磁場1000Oeである場合における磁化である。また、ADとは、かさ密度(g/ml)を示し、D50は、所定の粒度分布を有するキャリア芯材粒子の体積平均粒径を指す。ここで、キャリア芯材の粒度分布の測定については、上記した日機装株式会社製のマイクロトラック、Model9320−X100を用いた。
まず、表1および表2を参照して、比較例1においては、コア帯電量が1.5μC/gであるのに対し、実施例1〜実施例12においては、コア帯電量が全て7μC/g以上となっている。また、Caを用いた場合、およびSrを用いた場合については、コア帯電量が全て10μC/g以上となっている。このように、実施例1〜12におけるキャリア芯材は、比較例1に示すキャリア芯材と比較して、大きくその帯電性能が向上している。ここで、帯電性能の大きな向上を狙うには、含有する金属元素としてCaおよびSrを選択すると良い。
強度について、金属としてCaを用いた実施例1〜4の場合においては、比較例1の場合よりも大きく向上している。すなわち、強度アップとなっている。金属としてSrを用いた実施例9〜実施例12の場合においては、比較例1の場合と同等であるか、比較例1の場合よりも大きく向上している。Mgを用いた実施例5〜8の場合においては、比較例1の場合と同等であるか、比較例1の場合よりもやや劣っている。ここで、強度の大幅なアップを狙うには、含有する金属元素としてCaを選択すると良い。
また、抵抗の環境差については、比較例1が1.38であるのに対し、実施例1〜実施例12においては、全て1以下となっている。金属元素としては、Mgを用いた実施例5〜8の場合、金属としてSrを用いた実施例9〜12の場合、金属として金属としてCaを用いた実施例1〜4の場合の順に、環境依存性が向上されている。ここで、より良好な環境依存性を狙うには、含有する金属元素としてCaを選択すると良い。
磁化については、実施例1〜実施例12においていずれも50emu/g以上であり、実使用状況下において、問題のないレベルである。
次に、表3および表4を参照して、比較例2は、Caを0.01重量%含有する構成である。実施例13〜16および比較例2については、表1および表2に示す実施例1〜12および比較例2と焼成温度が異なり、酸化処理を行っていない。また、中心粒径D50も大きい。
表3および表4を参照して、比較例2においては、コア帯電量が0.1μC/gであるのに対し、実施例13〜実施例16においては、全て2.0μC/g以上となっている。このように、実施例13〜16におけるキャリア芯材は、比較例2に示すキャリア芯材と比較して、大きくその帯電性能が向上している。
強度については、実施例13〜実施例16においては、比較例2の場合と同等であるか、比較例2の場合よりもやや劣っている。
また、抵抗の環境差については、比較例2が1.02であるのに対し、実施例13〜実施例16においては、全て0.9以下となっている。特に、実施例14においては、0.08であり、環境差がほとんどないものとなっている。すなわち、環境依存性が向上されている。
なお、磁化については、実施例13〜実施例16においていずれも50emu/g以上であり、実使用状況下において、問題のないレベルである。
図5は、上記した実施例について、コア帯電量と含有金属の含有比率との関係を示すグラフである。図5中、縦軸は、コア帯電量を示し、横軸は、含有金属の含有比率を示す。図5を参照して、それぞれの金属元素について、含有金属の含有比率が高くなるに従い、コアの帯電量が増加することが把握できる。
ここで、この発明の原理について考察すると、以下の通りである。図6は、実施例13〜16および比較例2の場合のキャリア芯材の粉末におけるXRDのチャートである。図6において、横軸は、2θ(degree)、縦軸は、強度(cps(count per second))を示す。また、XRDの測定条件について説明すると、X線回折装置は、株式会社リガク製のUltima IVを用い、X線源をCu、加速電圧を40kV、電流を40mA、発散スリット開口角を1°、散乱スリット開口角を1°、受光スリット幅を0.3mm、走査モードをステップスキャン、ステップ幅を0.0200°、係数時間を1.0秒、積算回数を1回とした。なお、図6中においては、下から比較例2、実施例13、実施例14、実施例15、実施例16の順に、パターン画像を所定の間隔を空けて図示している。また、SiOの存在を示すピーク位置、CaSiOの存在を示すピーク位置をそれぞれ図6中に矢印で図示している。
表3および図6を参照して、比較例2、実施例13、実施例14、実施例15、実施例16の順に、Ca含有量を多くしているが、Ca含有量の増加に伴って、CaSiOのピークが明確に出現していることが把握できる。また、SiOのピークがこの順に徐々に消滅しているのも把握できる。すなわち、このXRDのチャートの比較から、Caの量を増加していくに従い、キャリア芯材の粒子において、SiOの結晶構造が少なくなり、CaSiOの結晶構造が増加していっていることを把握できる。
なお、実施例1〜12では添加しているSi、Ca、Sr、Mgの含有量が少なく、XRDでSiと含有金属との金属複合酸化物のピークを検出することができない。そこで、Siの金属複合酸化物が合成されているか否かを確認するために、以下の方法で分析を行なった。得られたキャリア芯材について振動ミル、ビーズミル等の粉砕機で粒子を1μm程度まで粉砕し、磁選を行なって非磁性粉を回収した。得られた非磁性粉をXRDで分析した結果、実施例1〜12において、Siと含有金属との金属複合酸化物を同定したが、比較例1ではSiと含有金属との金属複合酸化物を検出できなかった。これにより、実施例1〜12においては、金属複合酸化物が合成されており、比較例1については、金属複合酸化物が合成されていないことが把握できる。
次に、図7〜図9に、比較例2、実施例14、実施例16のキャリア芯材の粒子の表面の電子顕微鏡写真を示す。図10〜図12において、図7〜図9に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy:エネルギー分散X線分光法)におけるFe元素の元素分析の結果の概略図を示す。図13〜図15において、図7〜図9に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるSi元素の元素分析の結果の概略図を示す。図16〜図18において、図7〜図9に示す電子顕微鏡写真の視野範囲内のEDXにおけるCa元素の元素分析の結果の概略図を示す。
図10〜図12中、ハッチングで示す領域Sが、Feの比較的少ない領域を示し、図13〜図15中、ハッチングで示す領域Sが、Siの比較的多い領域を示し、図16〜図18中、ハッチングで示す領域Sが、Caの比較的多い領域を示す。
まず、図7〜図9および図10〜図12を参照して、キャリア芯材粒子の表面性状については、大差がないように見える。そして、比較例2、実施例14、実施例16の順に、Feの少ない領域が増加していることが把握できる。そして、合わせて図13〜図15を参照すると、Siが多い領域はほとんど変化のないことが把握できる。さらに合わせて、図16〜図18を参照すると、図10〜図12においてハッチングした領域S1、すなわち、Feが少なくなっている領域において、Caの多い領域が増加していることが把握できる。
この図7〜図18から考察すると、キャリア芯材の粒子の表面に存在するSiについて、その量は比較例2、実施例14、実施例16において大差はないが、Caの増加している領域と、Feの減少している領域と、Siが存在している領域がほとんど重なっている。このことより、キャリア芯材の粒子の表面に存在しているSiが、比較例2においては、Si単体またはSiOのような酸化物として存在しているが、Caの量を増加させるに従い、キャリア芯材の粒子の表面に存在しているSiが、Caとの化合物、例えば、Siとの金属複合酸化物であるCaSiOとして存在していることが考察される。SiとMgとの金属複合酸化物としては、例えば、MgSiOやMgSiO等が挙げられ、SiとCaとの金属複合酸化物としては、例えば、CaSiOやCaSiO、CaSi、CaSiO等が挙げられ、SiとSrとの金属複合酸化物としては、例えば、SrSiOやSrSiO、SrSiO等が挙げられる。なお、表2および表4においては、考えられるSiと含有金属の金属複合酸化物の構造、および主成分の結晶構造を示している。
なお、このEDXの結果は、キャリア芯材の粒子の表面について考察されるものであるが、その内部についても、同様の構成となっていることが推察される。すなわち、キャリア芯材の内部層においても、CaSiOのようなSiと含有金属との金属複合酸化物が形成され、このSiと含有金属との金属複合酸化物が、摩擦帯電により生じた電荷を保持し、キャリア芯材自体の帯電性能を高めることができると考えられる。さらに、金属元素を過剰に供給した場合においても、上記した金属元素そのものが、摩擦帯電により生じた電荷を保持し、キャリア芯材自体の帯電性能を高めることができると考えられる。また、MgやCaやSrは、Siとの金属複合酸化物として存在するとしたが、一部、スピネル構造中に固溶していてもよい。
なお、上記の実施の形態においては、製造方法として、カルシウムを含む原料、ストロンチウムを含む原料、およびマグネシウムを含む原料のうちの少なくともいずれか一つの原料と、マンガンを含む原料と、鉄を含む原料と、シリコンを含む原料とを準備し、これらを混合して、本願発明に係るキャリア芯材を得ることとしたが、これに限らず、例えば、CaSiO等のSiの金属酸化物を準備し、これらを混合して、本願発明に係るキャリア芯材を得ることにしてもよい。
また、上記の実施の形態において、Ca、Sr、およびMgからなる群のうち、CaとSr等、2つ以上の金属元素を含有することとしてもよい。さらには、Baを含有金属としてもよい。
なお、上記の実施の形態において、酸素量yについては、キャリア芯材に過剰に含有させるために、焼成工程における冷却時の酸素濃度を所定の濃度よりも高くすることとしたが、これに限らず、例えば、原料混合工程における配合比率を調整して、キャリア芯材に過剰に含有させることとしてもよい。また、冷却する前の工程である焼結反応を進める工程において、冷却工程と同じ雰囲気下で行なうこととしてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア、および電子写真現像剤は、種々の環境下で使用される複写機等に適用される場合に、有効に利用される。
11 キャリア芯材、12 キャリア、13 現像剤、14 トナー。

Claims (4)

  1. 一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、
    Siを0.1重量%以上含有し、
    Mgを0.13〜0.30重量%含有する、電子写真現像剤用キャリア芯材。
  2. 含有される前記Mgの前記Siに対するモル比は、0.09以上である、請求項1に記載の電子写真現像剤用キャリア芯材。
  3. 電子写真の現像剤に用いられる電子写真現像剤用キャリアであって、
    一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Mgを0.13〜0.30重量%含有する電子写真現像剤用キャリア芯材と、
    前記電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂とを備える、電子写真現像剤用キャリア。
  4. 電子写真の現像に用いられる電子写真現像剤であって、
    一般式:MnFe3−x4+y(0<x≦1、0<y)で表されるコア組成を主成分として有し、Siを0.1重量%以上含有し、Mgを0.13〜0.30重量%含有する電子写真現像剤用キャリア芯材、および前記電子写真現像剤用キャリア芯材の表面を被覆する樹脂を備える電子写真現像剤用キャリアと、
    前記電子写真現像剤用キャリアとの摩擦帯電により電子写真における帯電が可能なトナーとを備える、電子写真現像剤。
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