JP5352423B2 - ガラス繊維フィルタの構造制御方法 - Google Patents

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本発明は、粗密構造を有するガラス繊維フィルタの構造制御方法に関するものである。
従来、粉じん等の捕集効率を上げるためにガラス繊維フィルタの厚さ方向に対して低密度層と高密度層の粗密構造を設けることが有効であることが知られている。
従来、ガラス繊維フィルタの粗密構造を制御する方法として、例えば、特許文献1に開示がなされている。同文献記載の製造方法は、回転ドラムに綾振しながらガラス繊維を巻回し、弾性的ポリエステル樹脂を付着させる層と前記樹脂を付着させない層を設けて構成されたガラス繊維の積層体を、回転ドラムの軸方向に切り開いて平板状のガラス繊維積層体を形成する。そして、前記弾性的ポリエステル樹脂が粘着性を有する状態で前記積層体を前記軸方向に伸長して厚さ方向に膨らませ、樹脂が付着した層では渦巻き状又は波状の繊維が多い、多孔状の外観を有する層を、樹脂が付着していない層では、比較的均一に分布された個々の繊維の外観を呈し、波形状は少ない層を形成するものである。
上記粗密構造を有するガラス繊維フィルタを製造する場合、ガラス繊維を巻回し、樹脂吹きつけ量の調整によって製造されているが、樹脂の吹きつけ量を調整しないで、ガラス繊維積層体を形成した後で粗密構造とする方法は知られていない。
特公昭45−10786号
本発明は、ガラス繊維マットを形成した後でも、厚さ方向の樹脂中の水分又は溶媒の含有率又は粘着性を調整することにより、ガラス繊維フィルタ用の厚さ方向を任意に制御できる粗密構造を有するガラス繊維フィルタの構造制御方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究の結果、下記の解決手段を見いだした。
本発明のガラス繊維フィルタの構造制御方法は、請求項1に記載の通り、ガラス繊維を交差するように積層し、前記ガラス繊維間に水溶性又は溶媒溶解性で、かつ熱硬化型の樹脂を付着させてガラス繊維マットを形成し、前記ガラス繊維マットを乾燥した後、前記ガラス繊維マットに部分的に水又は溶媒を付着させて、前記ガラス繊維マットの厚さ方向において前記樹脂の水又は溶媒の含有する割合を変化させ、前記ガラス繊維マットを伸長した後、前記樹脂を硬化させることを特徴とする
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のガラス繊維フィルタの構造制御方法において、前記水又は前記溶媒は、前記ガラス繊維マットの片面及び/又は両面に付着させることを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のガラス繊維フィルタの構造制御方法において、前記ガラス繊維マットを形成した後に、前記ガラス繊維マットの表面近傍を乾燥させることにより前記樹脂の水又は溶媒の含有する割合を変化させる工程をさらに備えたことを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維フィルタの構造制御方法において、前記ガラス繊維マットを形成した後、前記樹脂全体重量の水又は溶媒が占める割合を20%以下にまで乾燥させることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタの厚さ方向において、水や溶媒の含有率の高い樹脂層と低い層とを形成することにより、伸長工程において、水等の含有率の高い樹脂が含まれる層では繊維間の自由度が大きいため二次元的に広がり、高密度層(捕集効率の高い層)が形成される。一方、含有率の低い樹脂が含まれる層では繊維間の自由度が小さくなり、カール状又は波状の低密度層(圧力損失の低い層)が形成されることになる。
また、水溶性又は溶媒溶解性で、かつ反応開始温度が水や溶媒の蒸発温度以下の熱硬化型樹脂を用いることより、水や溶媒が存在する間は重合反応が起らないため、適切な粘着性を保つことができる。
本発明の一実施の形態のガラス繊維フィルタの構造制御方法 本発明の一実施の形態のガラス繊維フィルタの断面図の説明図
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、下記(a)から(f)の各工程からなる。
(a)Eガラス、Cガラス、ホウケイ酸ガラス等の溶融したガラス繊維を交差するように積層し、前記ガラス繊維間にアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、尿素系、メラミン系、フェノール系等の水溶性又は溶媒溶解性で、かつ熱硬化型樹脂を付着させてガラス繊維マットを形成する工程
(b)前記樹脂を硬化しないように反応開始温度以下の温度で乾燥させる工程
(c)前記樹脂の反応開始温度以下の雰囲気下に前記ガラス繊維マットを保管する工程
(d)前記樹脂の水又は溶媒がガラス繊維マットの厚さ方向において、その含有する割合を変化させる工程
(e)前記ガラス繊維マットを伸長させる工程
(f)前記樹脂を反応硬化させる工程
工程(a)、工程(e)及び工程(f)に関しては、前記ガラス繊維マットを形成する方法としては特に制限するものではなく、例えば、特公昭41−4833号公報に開示された公知の方法を使用することができる。具体的には、工程(a)は、ガラス繊維を回転ドラムに巻回しながら前記樹脂を付着させ、前記回転ドラムに巻回されたガラス繊維の積層体を前記回転ドラムの軸方向に切り開いて前記ガラス繊維マットを形成する方法等となる。
ガラス繊維マットの形状等は特に制限はないが、通常は、平均繊維径10〜30μmのガラス長繊維から構成される。また、ガラス繊維は、Eガラス、Cガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス繊維を使用することができる。
工程(a)のガラス繊維に付着させる樹脂としては、水溶性又は溶媒溶解性で、かつ熱硬化型樹脂を使用する。具体的には、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、尿素系、メラミン系、フェノール系等の水溶性又は溶媒溶解性で、かつ熱硬化型樹脂を使用することができる。同樹脂の反応開始温度は100℃以上のものであるものが好ましい。工程(b)及び工程(c)において樹脂が硬化しないようにするためであり、樹脂の水分又は溶媒量を調整することによりガラス繊維マットを構成するガラス繊維間の粘着性を任意に調整できるからである。
同樹脂をガラス繊維に付着させる方法としては、特に制限するものではないが、例えば、噴霧、塗布、浸漬等する方法を挙げることができる。
また、前記樹脂溶液の濃度についても、ガラス繊維間の距離を保った状態で、樹脂の付着部位が支点となってガラス繊維間の関係を維持した状態で伸長できるものであれば特に制限するものではない。一例を挙げると、その濃度を20〜70%とし、ガラス繊維の全重量(g)に対する付着量(g)を固形分付着率として10〜30%とすることが好ましい。
尚、水溶性又は溶媒溶解性型の樹脂は乾燥して固形分濃度が増大していくにつれて粘着性は徐々に上がるのに比べて、エマルジョン型の樹脂は、乾燥の初期ではあまり粘度は変化せず、終期で急激に変化するため粘着性の制御が難しく、しかも、粘度が小さくガラス繊維マットに付着しにくいので好ましくない。
工程(b)は、前記ガラス繊維マットを前記樹脂の反応開始温度以下で、樹脂を硬化させない温度で乾燥させるものである。工程(b)で同樹脂の粘着性を調整することにより、工程(e)の際にガラス繊維同士の結着が強すぎて破断したり、逆に結着が弱すぎて所望の形状に伸長できなかったり、といった不具合を低減することができる。工程(b)の条件としては、水分や溶媒が蒸発すればよく特に制約は無いが、実用上から30〜80℃程度とすることが好ましい。
工程(c)は、水分又は溶媒が蒸発しないようにフィルム等でガラス繊維マットを封入する等の状態で保管する。(c)の条件としては水分や溶媒の蒸発を抑制することができればよく特に制約は無いが、実用上、フィルム等で封入して5〜40℃程度の状態で、水分又は溶媒量が変化にくい環境に保管することが好ましい。適切な保管状態であれば、数日〜数ヶ月の間粘着性はほぼ変化することなく、長期の保管が可能となる。
工程(d)の前記樹脂の水又は溶媒がガラス繊維マットの厚さ方向において、その含有する割合を変化させる方法は、ガラス繊維マットの厚さ方向において層状にその割合を変化させるものであればよく、線形又は段階的に変化させるものの両方を含み、具体的には、以下のものが挙げられる。
(1)ガラス繊維マットを乾燥した後、ガラス繊維マットに部分的に水又は溶媒を付着させて、樹脂の水又は溶媒の含有する割合を変化させる方法。
例えば、ガラス繊維マットの片面及び/又は両面から水等を付着させる方法や、加湿雰囲気に置いてガラス繊維マットの表面から水等を付着させる方法である。
(2)ガラス繊維マットを形成した後に、ガラス繊維マットの表面近傍を乾燥させる方法。
表面近傍とは、ガラス繊維マットの厚さを基準にして、表面から10〜30%程度の深さをいうものとする。
また、ガラス繊維マット全体を水等に浸漬してその後部分的に乾燥させるようにしてもよい。
上記の方法により、ガラス繊維マットの片面のみを乾燥させた場合、粗−密の二層構造を形成することができ、両面を乾燥させた場合、粗−密−粗の三層構造を形成することができる。また両面を湿潤状態にさせた場合には、密−粗−密の三層構造を形成できる。
また、図1に示すように、乾燥条件や保管により粘着性が伸長可能領域を超えたとしても、加湿等の水分調整を行うことで再度伸長することが可能となる。従って、本発明において、乾燥や加湿等の工程は、伸長工程の前に複数回行うことまで含むものとする。
以下に本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
軸方向の長さ1800mm、直径1500mmの回転ドラムを145rpmで回転させ、直径約4mmのノズルから1300℃で溶融させたガラス繊維を綾振幅50mmで巻回し、その際に、固形分濃度55%に調製された反応開始温度150℃の水溶性熱硬化型アクリル樹脂(製品名 A−600、ロームアンドハース社製)を噴霧してガラス繊維に対して均一に塗布するようにした。巻回されたガラス繊維積層体を前記回転ドラムの軸方向に切り開いて長さ1200mm、幅4700mmのガラス繊維マットを得た(工程(a))。
その後、ガラス繊維マットを60℃の乾燥室で4時間乾燥した(工程(b))。その後、ガラス繊維マットをPEフィルムで覆い水分が蒸発しないようにして、室温(20〜30℃)で保管した。このときの伸長可能期間は3ヶ月以上であった(工程(c))。次いで、30℃、相対湿度80%の恒温恒湿室で24時間、ガラス繊維マットを片面のみ調湿するように片面をラップで覆って保管することにより調湿することで、図2に示すように、樹脂中の水分の含有率が高い層1及び樹脂中の水分の含有率が低い層2からなるガラス繊維マットを得た(工程(d))。さらに、前記ガラス繊維マットを前記軸方向に伸長させることにより、樹脂中の水分の含有率が高い層1では、繊維同士の交点がずれやすくなり二次元的に広がった高密度層(捕集効率の高い層)1’及び樹脂中の水分の含有率が低い層2では、繊維間の自由度が小さくなるため、カール状又は波状になった低密度層(圧力損失の低い層)2’を同時に形成した(工程(e))。最後に、温度230℃で樹脂を加熱硬化し、厚さ1mm、密度30kg/mの高密度層1’、厚さ12mm、密度5kg/m3の低密度層2’の粗密構造をもつ長さ40000mm、幅1600mm、樹脂付着率20%、のガラス繊維フィルタを得た(工程(f))。同フィルタの初期圧力損失は20Pa、捕集効率は85%であった。
尚、上記フィルタ特性については、捕集効率、圧力損失をJIS B 9908(換気用エアフィルタ、電気集じん機の性能試験方法)の形式1(計数法)を適用して試験した。
上記実施例1は、反応開始温度150℃の水溶性熱硬化型アクリル樹脂を用いているため、常温では反応が開始せず、水分調整を行うことが容易であったため、常温保管を3ヶ月以上した後でも伸長してガラス繊維フィルタを得ることができた。また、3ヶ月保管したガラス繊維マットから得られたガラス繊維フィルタは、圧力損失及び捕集効率も目標値(初期圧力損失30Pa以下、捕集効率60%以上)を満たしていた。
また、上記実施例1のガラス繊維フィルタは、高密度層1’を有するため低密度層2’を通過した繊維を確実に捕集することができることから、繊維飛散を防止できる機能を付与できる。
1 樹脂中の水分の含有率が高い層
2 樹脂中の水分の含有率が低い層
1’高密度層(捕集効率の高い層)
2’低密度層(圧力損失の低い層)

Claims (4)

  1. ガラス繊維を交差するように積層し、
    前記ガラス繊維間に水溶性又は溶媒溶解性で、かつ熱硬化型の樹脂を付着させてガラス繊維マットを形成し、
    前記ガラス繊維マットを乾燥した後、前記ガラス繊維マットに部分的に水又は溶媒を付着させて、前記ガラス繊維マットの厚さ方向において前記樹脂の水又は溶媒の含有する割合を変化させ、
    前記ガラス繊維マットを伸長した後、
    前記樹脂を硬化させることを特徴とするガラス繊維フィルタの構造制御方法。
  2. 前記水又は前記溶媒は、前記ガラス繊維マットの片面及び/又は両面に付着させることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維フィルタの構造制御方法。
  3. 前記ガラス繊維マットの表面近傍を乾燥させることにより前記樹脂の水又は溶媒の含有する割合を変化させる工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス繊維フィルタの構造制御方法。
  4. 前記ガラス繊維マットを形成した後、前記樹脂全体重量の水又は溶媒が占める割合を20%以下にまで乾燥させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガラス繊維フィルタの構造制御方法。
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