JP5351771B2 - 結晶製造方法、凍結結晶製造方法、結晶、結晶構造解析方法、結晶化スクリーニング方法、結晶化スクリーニング装置 - Google Patents

結晶製造方法、凍結結晶製造方法、結晶、結晶構造解析方法、結晶化スクリーニング方法、結晶化スクリーニング装置 Download PDF

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Description

本発明は、結晶製造方法、凍結結晶製造方法、結晶、結晶構造解析方法、結晶化スクリーニング方法、結晶化スクリーニング装置に関する。
タンパク質、核酸等の生体物質の立体構造を明らかにすることは、産業上極めて有用である。具体的には、例えば、前記生体物質の生体中における機能が明らかになるため、能率的な医薬品の開発が可能となる。
タンパク質、核酸等の立体構造を解析するための方法としては、例えば結晶構造解析、特にX線回折像撮影による結晶構造解析が優れており、広く用いられている。この方法により解析するためには、検体(被解析物質)である前記タンパク質、核酸等の結晶を製造する必要がある。そのために、前記検体を含む溶液から前記検体の結晶を析出(結晶化)させる方法が行われている(特許文献1等)。
国際公開パンフレットWO2004/106598号公報
前述のようにタンパク質、核酸等の溶液から結晶を析出(結晶化)させる結晶の製造方法には、非常に高度な技術が必要であり、困難を伴う。さらに、タンパク質、核酸等の結晶は、非常に脆く、結晶内部にひずみを生じやすいので、慎重に取り扱わなければ簡単に破壊されてしまうという問題がある。
そこで、本発明は、結晶を簡便に製造することが可能で、かつ、製造された結晶が取り扱いやすい結晶製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、タンパク質、核酸等の生体物質の結晶製造方法において、前記生体物質の溶液に代えてゲル中から結晶を析出させることを見出した。前述の通り、タンパク質、核酸等の生体物質の結晶製造方法においては、従来、溶液から結晶を析出させることが一般に行われていた。これらの生体物質について、ゲル中から直接結晶を析出させる試みは、本発明者等がはじめて行った。
すなわち、本発明の結晶製造方法は、
生体物質の結晶を製造する方法であって、
前記生体物質をゲル中で結晶化させる結晶化工程を含むことを特徴とする。
さらに、本発明は、
生体物質の結晶を凍結する凍結工程を含む凍結結晶の製造方法であって、
前記本発明の結晶製造方法により、前記ゲルで被覆された前記被覆結晶を製造する被覆結晶製造工程をさらに含み、
前記凍結工程において、前記被覆結晶を凍結することを特徴とする凍結結晶製造方法を提供する。
さらに、本発明は、
種結晶である生体物質結晶を前記生体物質の溶液中でさらに成長させる結晶成長工程を含む、前記生体物質の結晶の製造方法であって、
前記結晶成長工程において、前記種結晶が、前記本発明の結晶製造方法により製造される、前記ゲルで被覆された被覆結晶であることを特徴とする結晶製造方法を提供する。なお、この結晶製造方法を、以下、「本発明の成長結晶製造方法」または単に「成長結晶製造方法」ということがある。
さらに、本発明は、前記本発明の結晶製造方法、前記本発明の凍結結晶製造方法、または前記本発明の成長結晶製造方法により製造される結晶を提供する。
さらに、本発明は、
生体物質の結晶を構造解析する方法であって、
前記本発明の結晶製造方法により製造された被覆結晶または前記本発明の凍結結晶製造方法により製造された凍結結晶を構造解析する構造解析工程を含むことを特徴とする構造解析方法を提供する。
さらに、本発明は、
生体物質の結晶化条件をスクリーニングする結晶化スクリーニング方法であって、
前記生体物質の結晶を製造する結晶製造工程と、
前記結晶製造工程における結晶化条件をスクリーニングするスクリーニング工程を含み、
前記結晶製造工程において、本発明の結晶製造方法または本発明の凍結結晶製造方法により前記結晶を製造することを特徴とする結晶化スクリーニング方法を提供する。
さらに、本発明は、
生体物質の結晶化条件をスクリーニングする結晶化スクリーニング装置であって、
前記生体物質の結晶を製造する結晶製造手段と、
前記生体物質の結晶化条件をスクリーニングするスクリーニング手段とを含み、
前記結晶製造手段が、ゲル中で前記生体物質の結晶を析出させる結晶化手段を含むことを特徴とする結晶化スクリーニング装置を提供する。
本発明の結晶製造方法によれば、溶液中から結晶を析出させるよりも、前記生体物質の結晶を簡便に製造することが可能である。この理由は必ずしも明らかではないが、例えば、溶液中と異なり、生成した結晶がゲルにより固定されていることが原因と考えられる。より具体的には、例えば、生成した結晶がゲルに固定されているため、容器の壁等への衝突による破損、生成した結晶同士の衝突による多結晶化等が防止可能であり、格子欠陥の少ない単結晶に成長しやすいと考えられる。ただし、これらの考察は、可能な機構の一例を示すに過ぎず、本発明を何ら限定しない。
また、本発明の凍結結晶製造方法によれば、前記結晶が凍結による損傷を受けにくい。さらに、本発明の構造解析方法によれば、前記ゲルで被覆された被覆結晶またはそれを凍結した前記凍結結晶を構造解析するため、結晶の取り扱いがしやすいという利点がある。
さらに、本発明の成長結晶製造方法によれば、前記ゲルで被覆された被覆結晶を種結晶として結晶を成長させるため、より大きな結晶を得ることができる。また、本発明の結晶は、前記本発明の結晶製造方法、前記本発明の凍結結晶製造方法、または前記本発明の成長結晶製造方法により製造されることで、例えば結晶構造解析等に向いた良好な特性を有する。ただし、本発明の結晶の製造方法は特に制限されず、同様の特性を有するのであれば他の任意の製造方法で製造された結晶でもよい。
さらに、本発明の結晶化スクリーニング方法は、本発明の結晶製造方法により簡便に結晶を製造できることで、結晶製造条件をさほど厳密に設定しなくても良いため、スクリーニングをも簡便に行うことができる。さらに、本発明の結晶化スクリーニング装置は、同様の理由により、装置の構成を簡略化することが可能である。
図1Aは、本発明の一実施例により得られた結晶の写真である。 図1Bは、図1Aの結晶を角度を変えて撮影した写真である。 図2Aは、図1の結晶のX線回折像を示す図である。 図2Bは、図2Aの一部の拡大図である。 図3Aは、本発明の他の一実施例により得られた結晶のX線回折像を示す図である。 図3Bは、図3Aの一部の拡大図である。 図4は、図3の結晶を別の条件により測定したときのX線回折像を示す図である。 図5Aは、図4の結晶をさらに別の条件により測定したときのX線回折像を示す図である。 図5Bは、図5Aの一部の拡大図である。 図6Aは、図3〜5の結晶を抗凍結剤に浸漬する直前の状態を示す写真である。 図6Bは、図6Aの結晶を抗凍結剤に浸漬してから5秒後の状態を示す写真である。 図6Cは、図6Aの結晶を抗凍結剤に浸漬してから1分後の状態を示す写真である。 図6Dは、図6Aの結晶を抗凍結剤に浸漬してから5分後の状態を示す写真である。 図7Aは、本発明のさらに別の一実施例により得られた結晶の写真である。 図7Bは、図7Aの結晶のX線回折像を示す図である。 図7Cは、図7Bの一部の拡大図である。 図8Aは、本発明のさらに別の一実施例により得られた結晶の写真である。 図8Bは、図8Aの結晶のX線回折像を示す図である。 図8Cは、図8Bの一部の拡大図である。 図9Aは、比較例の結晶を抗凍結剤に浸漬する直前の状態を示す図である。 図9Bは、図9Aの結晶を抗凍結剤に浸漬した直後の状態を示す図である。 図10Aは、他の比較例の結晶を抗凍結剤に浸漬する直前の状態を示す図である。 図10Bは、図10Aの結晶を抗凍結剤に浸漬した直後の状態を示す図である。 図11は、本発明のさらに別の実施例および比較例の結晶の写真およびデータを示す図である。 図12は、本発明のさらに別の実施例の結晶のX線回折像を示す図である。 図13は、生体分子の結晶構造解析結果の一例を示す模式図である。 図14は、生体分子の結晶構造解析結果のさらに別の一例を示す模式図である。 図15は、本発明の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図16は、本発明のさらに別の実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図17は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図18は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図19は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図20は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図21は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図22は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示す写真およびグラフである。 図23は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示す写真およびグラフである。 図24は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示すグラフである。 図25は、本発明のさらに別の一実施例における結晶化スクリーニング結果を示す写真である。 図26は、本発明のさらに別の実施例における大腸菌由来タンパク質結晶を示す写真である。 図27は、本発明のさらに別の実施例におけるDNA結晶を示す写真である。 図28は、本発明のさらに別の実施例における、結晶化スクリーニング結果を示すグラフおよび結晶の写真である。 図29は、温度を低下させて被覆ゲルを除去した例を示す写真である。 図30は、実施例の結晶および比較例の結晶の乾燥耐性評価を示す写真である。 図31Aは、さらに別の実施例および比較例の結晶の乾燥耐性評価を示す写真である。 図31Bは、図31Aの評価時間の経過後における、同じ実施例の結晶および比較例の結晶の乾燥耐性評価を示す写真である。 図32は、さらに別の実施例で製造した結晶において、周囲の溶液のゲル化前およびゲル化後の結晶状態を示す写真である。 図33は、実施例の結晶のX線回折像を示す図である。 図34は、さらに別の実施例の結晶のX線回折像を示す図である。 図35は、ゲル被覆結晶のフェムト秒レーザーによる加工を示す写真である。 図36は、フェムト秒レーザー加工したゲル被覆結晶の取り出しを示す写真である。 図37は、図36の結晶の写真およびX線結晶構造解析データを示す図である。 図38は、成長結晶製造方法の一実施例を示す写真である。 図39は、成長結晶製造方法の別の一実施例を示す写真である。 図40は、遠心分離による濃度勾配を用いた結晶化スクリーニング方法の一例を模式的に示す図である。 図41は、図40の方法による結晶化スクリーニング結果を示す写真である。 図42は、結晶構造解析における結晶のマウント操作を例示する模式図である。 図43は、結晶構造解析における結晶のマウント操作に用いる機器を例示する模式図である。 図44は、本発明の結晶化スクリーニング装置の一例を示す模式図である。 図45は、本発明の結晶化スクリーニング装置(結晶化キット)のさらに別の一例を示す模式図である。 図46は、本発明の結晶化スクリーニングの一例を示す模式図である。 図47は、アガロースゲルのゲル強度測定結果の一例を示すグラフである。 図48は、図47のグラフのデータの一部を抜粋したグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、本発明において、数値限定により発明を特定する場合、特に示さない限り、厳密にその数値でも良いし、約その数値でもよい。例えば、「0〜90℃」と記載した場合、特に示さない限り、厳密に0〜90℃でも良いし、約0℃〜約90℃でも良い。
[結晶製造方法]
前述の通り、本発明の結晶製造方法は、生体物質を結晶化させる結晶化工程を含む、前記生体物質の結晶の製造方法であって、前記結晶化工程において、前記生体物質をゲル中で結晶化させることを特徴とする。
本発明において、「生体物質」とは、生体由来の物質でも良いが、それと同一の構造を有する合成物質でも良く、または、生体由来物質と類似の構造を有する誘導体や人工物質であっても良いものとする。例えば、前記生体物質が生体高分子化合物の場合は、生体由来の高分子化合物でも、それと同一の構造を有する合成高分子化合物でも、または、生体由来高分子化合物と類似の構造を有する誘導体や人工高分子化合物であっても良い。前記生体物質がタンパク質の場合は、生体由来(天然由来)のタンパク質でも、合成タンパク質でも良いし、天然に存在する構造の天然タンパク質でも、天然に存在しない構造の人工タンパク質でもよい。前記生体物質がペプチドの場合は、生体由来(天然由来)のペプチドでも、合成ペプチドでも良いし、天然に存在する構造の天然ペプチドでも、天然に存在しない構造の人工ペプチドでもよい。前記生体物質が核酸の場合は、生体由来(天然由来)の核酸でも、合成核酸でも良いし、天然に存在する構造の天然核酸でも、天然に存在しない構造の人工核酸でもよい。前記生体物質が糖鎖の場合は、生体由来(天然由来)の糖鎖でも、合成糖鎖でも良いし、天然に存在する構造の天然糖鎖でも、天然に存在しない構造の人工糖鎖でもよい。前記生体物質は、特に制限されないが、例えば、生体高分子化合物、タンパク質、天然タンパク質、人工タンパク質、ペプチド、天然ペプチド、人工ペプチド、核酸、天然核酸、人工核酸、糖鎖、天然糖鎖、または人工糖鎖であることが好ましい。なお、天然核酸としては、特に制限されないが、例えば、DNA、RNA等があげられる。また、人工核酸としては、特に制限されないが、例えば、LNA、PNA等があげられる。また、本発明において、前記生体物質の分子量は特に制限されない。例えば、前記「生体高分子化合物」の分子量は、例えば、5000以上であるが、これには限定されず、5000未満であっても良い。また、前記生体物質がペプチドの場合、分子量は、例えば1000以上であるが、これには限定されず、1000未満であっても良い。
本発明の結晶製造方法は、前記結晶化工程に先立ち、前記生体物質の溶液を準備する溶液準備工程と、前記溶液をゲル化させて前記ゲルを調製するゲル化工程とをさらに含むことが好ましく、前記生体物質溶液がゲル化剤をさらに含むことがより好ましい。前記ゲル化剤は特に制限されないが、例えば、多糖類、増粘多糖類、タンパク質、および昇温時ゲル化型ゲルからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、アガロース、寒天、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ポリアクリルアミド、昇温時ゲル化型ポリアクリルアミドゲルからなる群から選択される少なくとも一つであることがより好ましい。ゲル化温度は特に制限されないが、結晶製造の行いやすさの観点から、例えば0〜90℃、好ましくは0〜60℃、より好ましくは0〜35℃である。
前記ゲル化剤は、例えば、低温でゲル化し高温でゾル化するゲルでも良いし、逆に低温でゾル化し高温でゲル化するゲルでも良い。低温でゾル化し高温でゲル化するゲルは、「昇温時ゲル化型ゲル」という。また、例えば、冷却により得られたゲルを再び昇温した時、あるいは昇温により得られたゲルを再び冷却した時、再びゾルに戻るゲルであることが好ましい。このようなゲル化剤は「熱可逆性ゲル」という。また、前記ゲル化剤は、例えば、ハイドロゲルでもオルガノゲルでも良いが、ハイドロゲルが好ましい。ハイドロゲルとしては、例えば、昇温時ゲル化型ハイドロゲルを用いることがより好ましい。昇温時ゲル化型ハイドロゲルは、低温でゲル化し高温でゾル化する一般的なゲルとは逆に、前述のように低温でゾル化し高温でゲル化する性質を持っている。このため、昇温時ゲル化型ハイドロゲルで被覆された被覆結晶は、例えば、乾燥に特に強い、冷却によりゲルを簡便に除去できる、などの利点を有する。昇温時ゲル化型ハイドロゲルとしては、特に制限されないが、例えば、メビオールジェルが挙げられる。メビオールジェルは、メビオール株式会社の昇温時ゲル化型ハイドロゲルの商品名であり、例えば下記の化学構造を有する。メビオールジェルは、昇温時ゲル化型ハイドロゲルとしての性質および熱可逆性ハイドロゲルとしての性質を有するポリアクリルアミドゲルである。
本発明の結晶製造方法は、より具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
(1)溶液準備工程
まず、前記生体物質を溶媒に溶かし、溶液とする。前記溶媒は特に制限されないが、例えば、公知の結晶製造方法に用いる溶媒と同じ物を用いてもよい。前記溶媒は、具体的には、例えば、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトン、アニソール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、シクロヘキサン、ジエチルアミン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ブタノール、ブチルメチルエーテル、ヘキサン、ベンゼン、メチルエチルケトンからなる群から選択される少なくとも一つであり、好ましくは水である。前記生体物質の濃度は、特に制限されないが、例えば0.2〜300mg/mL、好ましくは0.5〜100mg/mL、より好ましくは1〜50mg/mLである。また、必要に応じ、pH調整剤等を適宜加えてもよい。
(2)ゲル化工程
次に、前記生体物質溶液にゲル化剤を加え、ゲル化させ、前記生体物質を含むゲルを調製する。ゲル化剤は、前記生体物質溶液中に直接加えても良いが、別途ゲル化剤溶液を調製した後、前記生体物質溶液に混合すると、均一に混合しやすいため好ましい。前記ゲル化剤溶液の溶媒は特に制限されないが、例えば、前記生体物質溶液と同じである。また、前記ゲル化剤溶液中におけるゲル化剤濃度は特に制限されないが、後述のゲル強度等の観点から、前記ゲル化剤溶液の全質量に対し、例えば0.6〜50質量%、好ましくは0.8〜40質量%、より好ましくは1.0〜30質量%、さらに好ましくは1.0〜25質量%、特に好ましくは1.0〜20質量%である。なお、ゲル化剤濃度と前記生体物質の結晶化のしやすさとの相関関係のメカニズムは不明であるが、例えば、後述する本発明の結晶化スクリーニング方法等を利用して、前記ゲル化剤濃度を適宜設定できる。前記生体物質溶液にゲル化剤を加えた後、ゲル化させる方法は特に制限されない。例えば、ゲル化温度よりも高い温度(例えば20〜45℃)で前記ゲル化剤溶液を調製し、前記生体物質溶液と混合した後、ゲル化温度以下の温度で静置すれば良い。より具体的には、例えば、前記ゲル化剤溶液と前記生体物質溶液を混合した後、キャピラリーに封入し、キャピラリー中でゲル化させてもよい。これにより、ゲルがキャピラリーに封入された状態となる。また、熱可逆性ハイドロゲルの場合は、例えば前記とは逆に、低温で前記ゲル化剤溶液を調製し、前記生体物質溶液と混合した後、温度を上昇させてゲル化させてもよい。
前記ゲル化後のゲル強度は、後述する結晶化工程で析出した前記生体物質結晶を物理的衝撃から保護しやすい等の観点から、例えば100Pa以上、好ましくは200Pa以上、より好ましくは300Pa以上、さらに好ましくは500Pa以上、特に好ましくは1000Pa以上である。前記ゲル化のゲル強度は高いほど好ましく、上限は特に制限されないが、例えば、200000Pa以下である。前記ゲル化後のゲル強度は、前記ゲル化剤濃度を調節することによって、適宜設定することができる。同じゲル化剤濃度における前記ゲル強度は、前記ゲル化剤の種類によって異なる。例えば、図47のグラフに示すとおり、アガロースIII、アガロースSP(アガロースSea Plaque)、アガロース9A(いずれもタカラバイオ株式会社の商品名)は、同じ濃度であれば、ゲル化後は、通常、アガロースIII>アガロースSP>アガロース9Aの順にゲル強度が高くなる。なお、図48のグラフに、図47におけるアガロース9Aのみの測定結果を示す。図47および48において、横軸は前記各アガロースの濃度(質量%)であり、縦軸はゲル強度(g/cm)である。なお、1g/cmは、98.0665Paに相当する。また、ゲル化剤濃度が一定の臨界的濃度未満である場合、前記ゲル化剤を含む溶液が明確にゲル化しないため、ゲル強度は測定不能(グラフ上の記載としては0)である。しかしながら、ゲル化剤濃度が前記臨界的濃度以上になると、前記溶液が明確にゲル化することが可能であるため、ゲル強度が測定可能となる。本発明においては、前記ゲル化剤濃度を前記臨界的濃度以上にすることが好ましい。前記臨界的濃度は、アガロースIII、アガロースSP、アガロース9Aの場合、図47および図48に示すとおり、いずれも、約0.6質量%である。
なお、前記ゲル強度は、レオストレス RS1 Rheometer(英弘精機株式会社のレオメーターの商品名)を動的粘弾性測定モードで用い、周波数1Hz、測定温度20℃で測定した数値とする。図47および図48に示す測定値も、この方法で測定した。なお、ゲル溶解温度が20℃よりも低いために20℃でゲル状態にならない(ゾル状である)ゲルの場合は、前記ゲル強度は、前記ゲル溶解温度よりも低く5で割り切れる摂氏温度(例:15℃、10℃、5℃、0℃、−5℃)のうち最も高い測定可能温度での測定値とする。熱可逆性でありゲル溶解温度が20℃よりも高いために20℃でゲル状態にならない(ゾル状である)ゲルの場合は、前記ゲル強度は、前記ゲル溶解温度よりも高く5で割り切れる摂氏温度(例:25℃、30℃、35℃)のうち最も低い測定可能温度での測定値とする。ただし、この測定方法は、前記ゲル強度の測定方法の一例であって、本発明は、この測定方法における工程および条件によって何ら限定されない。また、他のレオメーターを用いても、同じ測定モード、測定温度および周波数で測定すれば、誤差を除いて同じゲル強度測定値を得ることができる。
(3)結晶化工程
さらに、前記ゲル中から前記生体物質の結晶を析出させる。この方法は特に制限されない。例えば、前記ゲルを単に静置し、前記生体物質の結晶が析出するのを待ってもよい。また、例えば、前記ゲルを、沈殿化剤溶液に接触もしくは近接させた状態で静置してもよい。より具体的には、例えば、前記ゲルをキャピラリーに封入した後、前記沈殿化剤溶液に浸漬させてもよい。前記沈殿化剤は特に制限されないが、例えば、公知の結晶製造方法に用いる沈殿化剤と同じ物を用いてもよい。前記沈殿化剤は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸ナトリウム、PEG(ポリエチレングリコール)、塩化マグネシウム、カコジル酸ナトリウム、HEPES(2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸)、MPD(2-メチル-2,4-ペンタンジオール)、Tris-HCl(塩酸トリスヒドロキシメチルアミノメタン)からなる群から選択される少なくとも一つである。前記沈殿化剤溶液の溶媒は特に制限されないが、例えば、前記生体物質溶液と同じでもよい。前記沈殿化剤の濃度も特に制限されないが、例えば0.0001〜10M、好ましくは0.0005〜8M、より好ましくは0.0005〜6Mである。また、前記沈殿化剤は、必要に応じ、pH調整剤等を適宜含んでいてもよい。なお、沈殿化剤は、「沈殿剤」とも言うことがある。また、上記においては、前記生体物質溶液を含むゲルを沈殿化剤溶液に接触もしくは近接させる方法を示したが、沈殿化剤を用いる結晶化方法は、これに限定されない。例えば、前記結晶化方法は、前記生体物質溶液にゲル化剤とともに沈殿化剤を混合しておき、ゲル化させて沈殿化剤を含むゲルとし、ゲル化後そのまま静置して結晶を析出させる方法でもよい。このような結晶化方法を「バッチ法」という。前記生体物質溶液の溶媒、前記生体物質の濃度、前記ゲル化剤の濃度、前記沈殿化剤の濃度等は、特に制限されないが、例えば、前記と同様である。
タンパク質等の生体物質の結晶化は、例えば、前記生体物質と沈殿化剤との混合比により制御することができる。この混合比をより詳細に制御することで、例えば、さらに高品質かつ大型の単結晶を得ることも可能である。本発明では、例えば、網目の分子構造を持ったゲル(例えばアガロースゲル)に前記のようにして沈殿化剤を拡散させることによって、濃度勾配を形成できる。これにより、前記生体物質溶液と沈殿化剤溶液を直接混合するよりも、前記混合比を容易に制御することが可能である。この場合、沈殿化剤の拡散速度が結晶成長速度に比べ十分遅いことがより好ましい。これにより、最適な混合比の条件で前記タンパク質等の生体物質の結晶化が実現できるため、結晶の製造がさらに簡便になる。また、これにより、本発明の製造方法は、様々な組み合わせの混合比を一気に検索することが可能な“コンビナトリアル結晶化技術”として、結晶化スクリーニング方法に応用することもできる。前記濃度勾配形成を利用したスクリーニングの具体的な方法およびそれに用いる装置は、例えば、後述の通りである。
以上のようにして本発明の結晶製造方法を実施することができるが、本発明はこれに限定されない。本発明の結晶製造方法は、例えば、下記(i)または(ii)の方法により行っても良いし、それ以外の方法により行ってもよい。なお、本発明において、下記(i)を「カウンターディフュージョン法」と呼び、下記(ii)を「液体−固体法」と呼ぶものとする。
(i)前述のように、ゲル化温度よりも高い温度(例えば20〜45℃)で前記ゲル化剤溶液を調製し、前記生体物質(タンパク質等)の溶液と混合し、キャピラリー中に封入してゲル化させる。その後、必要に応じ、沈殿化剤溶液と接触させる。
(ii)まず、ゲル(例えば、固形アガロース)を準備し、これに、別途準備した前記生体物質(タンパク質等)の溶液を浸透させ、ゲル中で前記生体物質を結晶化させる。必要に応じ、沈殿化剤を前記ゲルにさらに浸透させることにより、前記生体物質を結晶化させる。沈殿化剤は、溶液の状態でも、固形のまま用いてもよい。
さらに、本発明の結晶製造方法では、前述の通り、前記生体物質をゲル中で結晶化させる。この「ゲル中で結晶化させる」とは、例えば前述のように、ゲル化工程後にそのゲル中で前記生体物質を結晶化させてもよい。その他、前記「ゲル中で結晶化させる」とは、例えば、ゲル化剤を含む前記生体物質溶液が、ゲル化せずゾル状態の場合に、そのゾル状態のゲル化剤溶液中で前記生体物質を結晶化させることも含むものとする。メカニズムは明らかではないが、ゾル状態の溶液でも、ゲル化剤を含むことにより、結晶が析出しやすくなり、結晶の破損等が起こりにくくなるという本発明の効果が得られる場合があるためである。前記ゾル状態のゲル化剤溶液中で前記生体物質を結晶化させる方法は、例えば、前記ゲル化剤が熱可逆性ハイドロゲルである場合に特に有用である。また、例えば、前記生体物質および前記熱可逆性ハイドロゲルを含むゾル状態溶液を攪拌しながら前記生体物質を結晶化させ、その後前記溶液をゲル化させ、そのゲル中で前記生体物質結晶をさらに成長させることが特に好ましい。前記ゾル状態溶液の攪拌を行うことで、例えば、さらに前記生体物質結晶が成長しやすくなり、大きな結晶が得やすい等の利点がある。前記攪拌の速度は特に制限されないが、例えば10〜1000rpm、好ましくは30〜200rpm、より好ましくは50〜100rpmである。前記攪拌の時間も特に制限されないが、例えば5分〜60日、好ましくは30分〜30日、より好ましくは1時間〜20日である。前記攪拌時の前記ゾル状態溶液の温度も特に制限されないが、例えば0〜40℃、好ましくは2〜30℃、特に好ましくは4〜25℃である。
本発明の結晶製造方法により製造される結晶は、例えば、前記ゲルで被覆された被覆結晶であることが好ましい。この被覆結晶の製造条件は特に制限されないが、例えば、本発明の結晶製造方法において、前記ゲル中から前記生体物質の結晶を析出させることで、必然的に、前記ゲルで被覆された被覆結晶としてもよい。一般に、タンパク質等の生体物質の結晶は、脆く、かつ、乾燥等により変質しやすい。このため、生体物質結晶は、例えば、結晶構造解析の試料として供する操作(マウント)および種結晶として供する操作(Seeding)時など、慎重にかつ手早く操作を行わないと、物理的衝撃や乾燥により破損、変質等を起こしてしまうことが多い。これに対し、本発明における前記被覆結晶は、結晶がゲルで被覆されていることにより、乾燥や物理的衝撃に対する耐性が向上しており、結晶の変質、破損等が起こりにくい。このため、例えば、前記マウント操作やSeeding操作が極めて行いやすくなる。さらに、結晶の保存性も向上する。
なお、前記被覆結晶において、結晶を被覆している前記ゲルは、例えば、後述の結晶構造解析において測定ノイズの原因となるなどの支障がある場合は、あらかじめ除去することが好ましい。除去方法は特に制限されない。例えば、前記ゲルが熱可逆性ハイドロゲルであれば、前述の通り、冷却により前記ゲルがゾル化するため、簡便に除去できる。ゾル化させるための冷却温度は特に制限されないが、メビオールジェルの場合、例えば、15℃以下である。また、前記被覆結晶を適宜な方法で加工し、前記ゲルを含まない結晶だけを取り出すこともできる。前記加工の方法は特に制限されないが、例えば、レーザー光を用いた加工がある。前記レーザー光も特に制限されないが、フェムト秒レーザーを用いることが特に好ましい。フェムト秒レーザーは、集光点付近のみで加工を行うことが可能であるため、例えば、結晶製造(育成)用容器を密封したままで簡便に加工できる等の利点があるためである。また、レーザー光を用いた加工によれば、例えば、結晶を、構造解析等の用途に適した大きさや形状に切り出すこともできる。このような加工工程により、結晶を適切な大きさや形状に切り出すことで、前記適切な大きさや形状の結晶を製造することもできる。また、例えば、前記加工工程により、前記被覆結晶からゲルのみを適切に除去し、結晶部分のみを残した加工結晶を製造することもできる。すなわち、前記加工結晶は、ゲルで被覆された被覆結晶でも良いし、ゲルで被覆されていなくても良い。
なお、レーザー光によるこのような加工は、ゲルで被覆されていない結晶に対しても行うことができる。しかしながら、前記被覆結晶であれば、結晶がゲルにより固定および保護されているため、結晶が加工しやすく損傷を受けにくい、加工の際のデブリ(切りくずや結晶の破片など)が拡散せず結晶表面に再付着しにくい、などの利点がある。
本発明の結晶製造方法によれば、例えば、従来よりも高い確率で高品質かつ大型の結晶が得られ、かつ、前述の濃度勾配形成を利用したスクリーニング法(濃度勾配法)によれば、結晶化条件の広範な探索(コンビナトリアル探索)が可能である。これらに関しては、例えば、従来、タンパク質等の結晶化で最も良く用いられてきた蒸気拡散法よりも優れた結果を得ることもできる。
また、本発明の結晶製造方法によれば、例えば、前記ゲル中から前記生体物質の結晶を析出させることで、以下のような利点が得られる。
構造ゲノム科学の分野におけるタンパク質結晶の構造解析等では、結晶のマウントに高度な技能を有する。例えば、低温における結晶構造解析を行うに際しては、抗凍結条件下に置いた結晶をナイロン糸を用いたループ状のマウント器具を用いて溶液ごとすくい取り、表面張力でループ内に結晶を保持した状態で凍結および測定を行う方法が従来から行われている。この方法では結晶の周りを抗凍結剤溶液が取り囲むので、測定中に結晶を非接触で保持が可能である。その反面、結晶の取り出し時にループの接触等による物理的な損傷を与える可能性がある。すなわち、溶液中で得られた結晶は、結晶マウントの際、溶液中を自由に移動するため、前記ループ等への間接・直接的な接触により、X線測定前に損傷を受けるおそれがある。このため、精度良い測定を行うにはループの取り扱いについての熟練した技能が要求される。
一方、本発明の結晶製造方法では、ゲル中から前記生体物質(タンパク質等)の結晶を析出させる。このため、前記生体物質結晶がゲルで固定された状態となる。したがって、前記生体物質結晶がゲルで固定され移動が阻害されること、ゲルで保護され損傷を受けにくいこと等により、マウント操作が容易であり、再現性の高いマウント操作が可能となる。これによれば、例えば、結晶マウント工程を自動化することにより、従来達成不可能であったタンパク質結晶等のX線構造解析のフルオートメーション化も達成可能となる。また、固相(ゲル中)に前記生体物質(タンパク質等)の結晶を析出させることで、得られた結晶はゲルに被覆されるため、結晶の凍結と簡便なマウント操作が可能となり、結晶の質を低下させずに凍結できるため高精度データが得られる。
[凍結結晶製造方法]
次に、本発明の凍結結晶製造方法は、前述の通り、生体物質の結晶を凍結する凍結工程を含む凍結結晶の製造方法であって、前記本発明の結晶製造方法により、前記ゲルで被覆された前記被覆結晶を製造する被覆結晶製造工程をさらに含み、前記凍結工程において、前記被覆結晶を凍結することを特徴とする。これ以外には、本発明の凍結結晶製造方法は特に制限されないが、前記凍結工程に先立ち、前記被覆結晶を抗凍結剤に浸漬させる浸漬工程をさらに含むことが好ましい。
例えば、タンパク質のX線構造解析を行う場合には、結晶を凍結した状態(例えば100K以下)でX線回折データを収集することが、従来から行われている。その理由としては、例えば、タンパク質結晶を凍結した状態で測定することで、放射線(例えば、高分解能データを得るためのシンクロトロン放射光)による前記結晶の損傷を劇的に抑制するという理由が挙げられる。また、例えば、サイズが極めて小さい結晶は、キャピラリーに封入して測定することが難しいため、キャピラリーへの封入に代えて前記凍結により、放射線による前記結晶の損傷を抑制する。しかし、この場合、タンパク質結晶の周りの水分子が氷へと変化し、結晶自体を損傷させてしまうため、良好なX線回折像を得ることができず、回折データの質や分解能を大きく低下させる場合がある。この機構は必ずしも明らかではないが、例えば、食品を冷凍した際に風味や品質が劣化する場合があるのと同様、凍結により結晶が変質してしまうためと考えられる。そのため、抗凍結剤と呼ばれる試薬を適量、結晶化母液に加え、その中にタンパク質結晶を浸す操作を行う事により、水をアモルファス状で凍結させる事が行われている。しかし、タンパク質、核酸等の結晶は環境の変化に弱いため、前記抗凍結剤の添加で結晶化母液に変化が生じることによって、致命的な損傷を受ける場合がある。そのため、前記抗凍結剤の添加により、かえって良好なX線回折点が得られず、構造解析に至らない場合がある。
本発明の凍結結晶製造方法により得られた凍結結晶は、例えば、凍結で生じた氷による損傷が抑制される。この理由は必ずしも明らかでないが、前記被覆結晶および凍結結晶がゲルで保護されているためと考えられる。また、例えば、前記ゲルにより、X線等による損傷も抑制されると考えられる。また、前記被覆結晶を抗凍結剤に浸漬させる浸漬工程をさらに含むことで、凍結による結晶損傷がさらに抑制される。さらに、前記被覆結晶がゲルで被覆されていることにより、抗凍結剤による結晶の損傷を大幅に抑制することができる。
本発明の凍結結晶製造方法において、抗凍結剤は、特に制限されないが、有機化合物が好ましく、例えば、グリセロール(グリセリン)、MPD(2-Methyl-2,4-PentaneDiol)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、PEG(ポリエチレングリコール)、および酢酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一つである。これらは、そのまま用いても良いし、水溶液としてもよい。従来の凍結結晶製造方法では、前述の通り、抗凍結剤による結晶の損傷が著しいため、例えば、結晶化母液中に加える抗凍結剤の量(濃度)を微調整し、最適な条件をスクリーニングすることが必要であった。また、結晶化の対象となる生体物質(タンパク質等)の種類に応じて、最適な抗凍結剤の探索も必要であった。本発明において、前記抗凍結剤の濃度は特に制限されない。前述の通り、本発明によれば抗凍結剤による結晶の損傷を大幅に抑制することができるので、例えば、100%のDMSO、PEG、あるいはそれらの高濃度水溶液(例えば50〜60質量%)に前記生体物質の結晶を直接浸漬することもできる。本発明において、抗凍結剤の種類自体は、例えば、従来と同じものを用いてもよい。
なお、従来の生体物質結晶の構造解析において、例えば、図13の模式図に示すように、抗凍結剤分子が前記生体物質の活性部位に結合し、結晶中に残留してしまう場合があった。同図は、グルコースイソメラーゼ(GI)のX線結晶構造解析において、抗凍結剤としてグリセロールを用い、分解能0.94Åで測定した場合の構造解析結果の一例を示す模式図である。図中の「2GLK」はPDB ID(プロテインデータバンクの登録番号)であり、グルコースイソメラーゼ(GI)を意味する。このように、結晶中に抗凍結剤分子が残留すると、活性部位を塞ぎ、例えば、薬物設計等の際に不利となる。一方、本発明の被覆結晶を用いれば、例えば、図14の模式図に示すように、活性部位に抗凍結剤が結合せずフリーな状態の構造情報が得られ、薬物設計等に有利である。前述の通り、従来の凍結結晶製造方法では、抗凍結剤による結晶の損傷が著しいため、結晶の損傷を起こしにくい抗凍結剤の種類は、ごく限られていた。このため、結晶の損傷を起こしにくい抗凍結剤の中から、結晶中に残留しにくい抗凍結剤を選択することも困難であった。しかしながら、本発明の凍結結晶製造方法によれば、抗凍結剤による結晶の損傷が抑制されているため、選択できる抗凍結剤の幅が広く、結晶中に残留しにくい抗凍結剤を適切に選択することもできるのである。例えば、グルコースイソメラーゼに対しては、必ずしも明らかではないが、グリセロールよりも酢酸リチウムの方が結晶中に残留しにくいと考えられる。ただし、この説明はあくまでも例示であって、本発明を何ら限定せず、例えば、本発明に用いる抗凍結剤としてグリセロールが不適切であるということを意味しない。
[成長結晶製造方法]
本発明の成長結晶製造方法は、前述の通り、種結晶である生体物質結晶を前記生体物質の溶液中でさらに成長させる結晶成長工程を含み、前記種結晶が、前記ゲルで被覆された被覆結晶である。これ以外には、本発明の成長結晶製造方法は特に制限されない。例えば、前記結晶成長工程における前記生体物質溶液の濃度、温度等の各種条件は、従来技術において種結晶を用いて結晶を成長させる方法等を参考にして適宜設定してもよい。前記生体物質溶液の好ましい濃度は、前記生体物質の種類等により異なるが、成長の結晶しやすさの観点からは、なるべく高濃度であることが好ましい。温度も特に制限されず、例えば、室温(約5〜35℃程度)で静置しても良いし、冷蔵庫等で5℃以下、あるいは0℃以下の低温に冷却しても良い。前記結晶成長工程の時間も特に制限されず、望ましい結晶が析出するまで適宜静置しておけば良い。
種結晶を溶液中でさらに成長させる結晶製造方法は広く行われているが、タンパク質等の生体物質の場合、結晶が脆いために、種結晶を前記生体物質溶液中に移動させる際、物理的衝撃による損傷等が起こるおそれがあった。また、前記種結晶を前記生体物質溶液中に移動させた後、前記種結晶の周りの溶液の濃度や浸透圧の変化により、前記種結晶が溶解してしまい、結晶成長が起こらないおそれがあった。しかし、本発明の成長結晶製造方法によれば、前記種結晶が、前記ゲルで被覆された被覆結晶であるため、物理的衝撃による損傷のおそれが激減する。また、前記種結晶が、前記ゲルで被覆された被覆結晶であるために、前記種結晶の溶解も抑制され、結晶が成長しやすい。これにより、本発明の成長結晶製造方法によれば、例えば中性子線結晶構造解析等の各種用途に向いた大型の結晶を、簡便な操作により、高い確実性で得ることができる。
[構造解析方法]
次に、本発明の構造解析方法は、前述の通り、生体物質の結晶を構造解析する方法であって、本発明の結晶製造方法により製造された被覆結晶または本発明の凍結結晶製造方法により製造された凍結結晶を構造解析する構造解析工程を含むことを特徴とする。前記構造解析工程において、前記結晶を構造解析する方法は特に制限されないが、X線結晶構造解析または中性子線結晶構造解析によることが好ましい。本発明の結晶製造方法によれば、前述の通り、結晶の破損、多結晶化等が防止できるため、中性子線結晶構造解析に適した大きい結晶を得ることができる。
上記以外には、本発明の構造解析方法は特に制限されず、従来の結晶構造解析方法、X線結晶構造解析方法または中性子線結晶構造解析方法と同様に行ってもよい。本発明の構造解析方法において構造解析する生体物質(タンパク質等)の結晶は、本発明の結晶製造方法により製造された被覆結晶または本発明の凍結結晶製造方法により製造された凍結結晶であることにより、高品質かつ大型の結晶とすることができる。これにより、本発明の構造解析方法においては、高精度のデータ(例えば、X線回折データ)を再現性良く得ることができる。その他に、本発明の結晶製造方法および凍結結晶製造方法の項で述べたような利点もある。
本発明の構造解析方法は、前述の通り特に制限されず、どのような方法でもよいが、例えば以下のようにして行うことができる。図42の上部に第一のスキームを、下部に第二のスキームを、それぞれ別個に示す。第一のスキームは本発明の構造解析方法の第一の例を示し、第二のスキームは本発明の構造解析方法の第二の例を示す。同図中の文言は、説明の便宜のための例示であって、本発明を何ら限定しない。
本発明の構造解析方法の第一の例は、例えば、前記第一のスキームに示すとおり、まず、プレート101上に載せた被覆結晶102を準備する。被覆結晶102は、ゲルで被覆されており、本発明の結晶製造方法により製造された被覆結晶である。次に、この被覆結晶を、抗凍結剤に浸し、さらに、前述したようなループ状のマウント器具ですくい取る。すくい取った前記被覆結晶を、低温ガス吹きつけ装置等により凍結し(凍結工程)、その凍結結晶を、X線結晶構造解析または中性子線結晶構造解析等により構造解析する。このようにして、本発明の構造解析方法の第一の例を実施することができる。この第一の例は、例えば、前記ループ状のマウント器具を手作業で用いて前記被覆結晶をすくい取り、凍結させることができる。なお、前記ループ状のマウント器具は、例えば「クライオループ」などということがある。
本発明の構造解析方法の第二の例は、例えば、前記第二のスキームに示すとおり、まず、被覆結晶102とチューブ103とを準備する。被覆結晶102は、ゲルで被覆されており、本発明の結晶製造方法により製造された被覆結晶である。チューブ103は、例えば、図示のように、その根元に、チューブ103自体を別の器具または装置により保持するための保持部が設けられていてもよい。次に、チューブ103の先端を被覆結晶102に突き刺し、結晶が含まれた部分を、被覆しているゲルごとチューブ103の先端に取り込む。さらに、チューブ103の先端に取り込まれた結晶およびゲルだけを、例えばレーザー加工等により、被覆結晶102の他の部分から切り離す。そして、結晶およびゲルが取り込まれたチューブ103の先端を、別途の容器中に準備した抗凍結剤の中に浸す。そして、チューブ103の先端を上に向けて置き(マウント)、そこに取り込まれた前記被覆結晶を、低温ガス吹きつけ装置等により凍結し(凍結工程)、その凍結結晶を、X線結晶構造解析または中性子線結晶構造解析等により構造解析する。このようにして、本発明の構造解析方法の第二の例を実施することができる。この第二の例は、例えば、前記各工程を必要に応じて自動化した「オートマウント」法として行うことができる。被覆結晶102は、例えば図43に示すように、別のチューブの内部に準備されていてもよい。この場合、図43に示すとおり、前記別のチューブの中にチューブ103の先端を突き刺し、結晶が含まれた部分を、被覆しているゲルごとチューブ103の先端に取り込んでもよい。これ以降の工程は、図42の前記第二のスキームと同様に行うことができる。
なお、前記被覆結晶において、結晶を被覆している前記ゲルが測定ノイズの原因となるなどの支障がある場合は、あらかじめ除去することが好ましい。除去方法は特に制限されないが、例えば、前述の通り、熱可逆性ハイドロゲルを冷却する方法、フェムト秒レーザー等のレーザー光で加工する方法等がある。
[結晶化スクリーニング方法および結晶化スクリーニング装置]
次に、本発明の結晶化スクリーニング方法は、前述の通り、生体物質の結晶化条件をスクリーニングする結晶化スクリーニング方法であって、前記生体物質の結晶を製造する結晶製造工程と、前記結晶製造工程における結晶化条件をスクリーニングするスクリーニング工程を含み、前記結晶製造工程において、本発明の結晶製造方法または本発明の凍結結晶製造方法により前記結晶を製造することを特徴とする。
本発明の結晶化スクリーニング方法によれば、前述の通り、本発明の結晶製造方法により簡便に結晶を製造できることで、結晶製造条件をさほど厳密に設定しなくても良いため、スクリーニングをも簡便に行うことができる。具体的には、例えば、前記生体物質濃度、前記生体物質と前記沈殿化剤の濃度比(混合比)等の最適条件を簡便にスクリーニングすることができる。また、本発明の凍結結晶製造方法により簡便に凍結結晶を製造できることで、凍結結晶製造条件のスクリーニングを簡便に行うことができる。より具体的には、例えば、前述の通り抗凍結剤による結晶の損傷を大幅に抑制できることにより、抗凍結剤濃度等の条件のスクリーニングを簡便にすることができる。
さらに、本発明の結晶化スクリーニング装置は、前述の通り、生体物質の結晶化条件をスクリーニングする結晶化スクリーニング装置であって、前記生体物質の結晶を製造する結晶製造手段と、前記生体物質の結晶化条件をスクリーニングするスクリーニング手段とを含み、前記結晶製造手段が、ゲル中で前記生体物質を結晶化させる結晶化手段を含むことを特徴とする。これら以外には、本発明の結晶化スクリーニング装置は特に制限されないが、例えば、従来の結晶化スクリーニング装置よりも構成を簡略化することも可能である。例えば、前述のような前記生体物質濃度、前記生体物質と前記沈殿化剤の濃度比(混合比)、抗凍結剤濃度等の条件のスクリーニングを簡便にできることで、それらに必要な手段を省略または簡略化することも可能である。本発明の結晶化スクリーニング方法は、どのような装置や器具を用いて行っても良いが、本発明の結晶化スクリーニング装置により行うことが好ましい。
図44に、本発明の結晶化スクリーニング装置およびそれを用いた本発明の結晶化スクリーニング方法の例を三つ示す。前記結晶化スクリーニング方法の三つの例を、それぞれ、ハンギングドロップ(Hanging Drop)法、シッティングドロップ(Sitting Drop)法、および濃度勾配法という。図44左上は、ハンギングドロップ法に用いる装置の例であり、左下は、シッティングドロップ法に用いる装置の例であり、右上は、濃度勾配法に用いる装置の例である。
まず、図44左上の装置について説明する。図示の通り、この装置は、蓋体201と、プレート203とを主要構成要素とする。これらは、本発明の結晶化スクリーニング装置における前記結晶化手段および結晶製造手段を構成するとともに、前記スクリーニング手段をも兼ねる。蓋体201は板状であり、その片面には突起部202が設けられており、他方の面は平らな形状をしている。突起部202の上面は、ゲルを載せることができるように、例えば平らな形状をしている。プレート203の上面には、反対側まで貫通しないウェル(穴)が形成されている。前記ウェル中には、蓋体201に形成された突起部202をはめ込むことが可能である。なお、蓋体201に設けられた突起部202およびプレート203に形成されたウェルの数は任意であり、それぞれ1つでも複数でも良いが、スクリーニングを効率的に行うために十分な数を設けることが好ましい。また、突起部202は、例えば、蓋体201本体から取り外し可能であると、結晶の採取等の操作が行いやすいため好ましい。なお、この装置において、各構成要素の形成材料は特に制限されない。例えば、ガラス、プラスチック等、理化学機器に一般に用いられる材質であって、結晶の製造およびスクリーニングの妨げにならない材質を用いれば良い。また、各構成要素の大きさも特に制限されないが、例えば、装置全体として、実験台の上での取り扱いに便利な程度の大きさであることが好ましい。
この装置を用いた本発明の結晶化スクリーニング方法(ハンギングドロップ法)は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、蓋体201を、突起部202を上に向けて準備する。次に、突起部202上面に、生体物質を含むゲルを載せるか、または、生体物質を含む溶液として突起部202上面に載せ、そこで固化(ゲル化)させる。このゲルの製造方法は、例えば前述の通りである。なお、図中では「タンパク質とゲルの混合物」と記載しているが、タンパク質に限定されず、どのような生体物質でもよい。一方、プレート203のウェル中には、沈殿化剤(沈殿剤)溶液を入れておく。沈殿化剤溶液の製造方法も、例えば前述の通りである。そして、蓋体201を上下反転させて突起部202を下に向け、突起部202をプレートウェル中にはめ込む。これにより、生体物質を含む前記ゲルを前記沈殿化剤(沈殿剤)溶液中に浸漬させ、生体物質をゲル中で結晶化させる。これにより、本発明の結晶化スクリーニング方法における結晶製造工程を行うことができる。そして、この結晶製造工程において、前記生体物質濃度および前記沈殿化剤濃度等の条件を種々変更しておき、前記結晶製造工程終了後、各条件における結晶の形成状態を観察する。これにより、結晶化条件をスクリーニングする前記スクリーニング工程を行う。ここで、突起部202およびウェルが複数設けられている場合は、各突起部202およびウェルにおいて、前記生体物質濃度および前記沈殿化剤濃度を種々変更することにより、一度の結晶製造工程で前記スクリーニング工程を行うことも可能である。以上のようにして、この装置を用いた本発明の結晶化スクリーニング方法(ハンギングドロップ法)を実施することができる。
次に、図44左下の装置について説明する。図示の通り、この装置は、プレート207を主要構成要素とする。このプレート207は、本発明の結晶化スクリーニング装置における前記結晶化手段および結晶製造手段を構成するとともに、前記スクリーニング手段をも兼ねる。プレート207の上面には、反対側まで貫通しないウェル(穴)が形成されている。前記ウェルの数は任意であり、1つでも複数でも良いが、スクリーニングを効率的に行うために十分な数を設けることが好ましい。なお、この装置の形成材料および大きさについては、前述の図44左上の装置と同様である。
この装置を用いた本発明の結晶化スクリーニング方法(シッティングドロップ法)は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、プレート207のウェル中に、生体物質を含むゲルを入れるか、または、生体物質溶液の状態で前記ウェル中にいれ、そこで固化(ゲル化)させる。このゲルの製造方法は、例えば前述の通りである。図中では「タンパク質とゲルの混合物」と記載しているが、タンパク質に限定されず、どのような生体物質でもよい。次に、前記ウェル中に、沈殿化剤(沈殿剤)溶液を注入する。沈殿化剤溶液の製造方法も、例えば前述の通りである。これにより、生体物質を含む前記ゲルを前記沈殿化剤(沈殿剤)溶液中に浸漬させ、生体物質をゲル中で結晶化させる。なお、このとき、前記ウェル中への異物の混入、沈殿化剤溶液の揮発等を防ぐため、例えば、プレート207の上面にシール等を設置することが好ましい。これにより、本発明の結晶化スクリーニング方法における結晶製造工程を行うことができる。そして、この結晶製造工程において、前記生体物質濃度および前記沈殿化剤濃度等の条件を種々変更しておき、前記結晶製造工程終了後、各条件における結晶の形成状態を観察する。これにより、結晶化条件をスクリーニングする前記スクリーニング工程を行う。ここで、前記ウェルが複数設けられている場合は、各ウェルにおいて、前記生体物質濃度および前記沈殿化剤濃度を種々変更することにより、一度の結晶製造工程で前記スクリーニング工程を行うことも可能である。以上のようにして、この装置を用いた本発明の結晶化スクリーニング方法(シッティングドロップ法)を実施することができる。
さらに、図44右上の装置について説明する。図示の通り、この装置は、蓋体209と、プレート206とを主要構成要素とする。これらは、本発明の結晶化スクリーニング装置における前記結晶化手段および結晶製造手段を構成するとともに、前記スクリーニング手段をも兼ねる。蓋体209は板状であり、その片面の一部が突出してチューブ205を形成している。チューブ205の内部は空洞であり、蓋体209本体に接した側の端は開口している。チューブ205の他端(以下「突端」という)は閉じており、例えば半透膜(透析膜)等が張られていることにより、固形物は透過せず、一定の大きさ以下の粒子のみが透過可能である。プレート206の上面には、反対側まで貫通しないウェル(穴)が形成されている。前記ウェル中には、蓋体209に形成されたチューブ205をはめ込むことが可能である。蓋体209に形成されたチューブ205およびプレート206に形成されたウェルの数は任意であり、それぞれ1つでも複数でも良いが、スクリーニングを効率的に行うために十分な数を設けることが好ましい。なお、この装置の形成材料および大きさについては、チューブ205端部の前記半透膜(透析膜)等以外は、前述の図44左上の装置と同様である。
この装置を用いた本発明の結晶化スクリーニング方法(濃度勾配法)は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、蓋体209に形成されたチューブ205内部に、生体物質を含むゲルを入れる。このゲルの製造方法は、例えば前述の通りである。前記ゲルは、ゲルの状態にしてからチューブ205内部に注入してもよいが、溶液(ゾル)の状態でチューブ205内部に注入し、チューブ205内部でゲル化させることが簡便で好ましい。なお、図中では「タンパク質とゲルの混合物」と記載しているが、タンパク質に限定されず、どのような生体物質でもよい。一方、プレート206のウェル中には、沈殿化剤(沈殿剤)溶液を入れておく。沈殿化剤溶液の製造方法も、例えば前述の通りである。そして、チューブ205をプレート206のウェル中にはめ込む。これにより、沈殿化剤が、チューブ205突端を通じて、前記ゲル中に浸透する。前述の通り、チューブ205突端には、半透膜(透析膜)等が張られていることにより、前記ゲルは透過しない。これにより、生体物質をゲル中で結晶化させる。このとき、前記ウェル中への異物の混入、ゲルの乾燥等を防ぐため、例えば、蓋体209の上面にシール等を設置することが好ましい。これにより、本発明の結晶化スクリーニング方法における結晶製造工程を行うことができる。このとき、前述のように、沈殿化剤は、チューブ205突端を通じて前記ゲル中に浸透するため、前記ゲル中において、沈殿化剤(沈殿剤)濃度に勾配が形成される。すなわち、チューブ205突端に近い側では沈殿化剤濃度が高くなり、前記突端から遠ざかるほど沈殿化剤濃度が低くなる。この濃度勾配が形成されることによって、チューブ205内部の各部で前記生体物質濃度と前記沈殿化剤濃度との比が種々変化する。このため、前記結晶製造工程終了後、チューブ205内部における結晶の形成状態を観察することで、結晶化条件をスクリーニングする前記スクリーニング工程を行うことができるのである。さらに、チューブ205およびウェルが複数設けられている場合は、各チューブ205およびウェルにおいて、前記生体物質濃度および前記沈殿化剤濃度を種々変更することにより、さらに詳細に前記スクリーニング工程を行うことも可能である。このようにして、この装置を用いた本発明の結晶化スクリーニング方法(濃度勾配法)を実施することができる。
なお、濃度勾配法による結晶化スクリーニング方法は、例えば、後述の実施例のように、遠心分離装置を用いて行うこともできる。生体物質およびゲル化剤の種類および濃度、等の各種条件は、後述の実施例に限定されず、任意に設定できる。具体的には、例えば、他の実施形態と同様である。遠心分離速度等も特に制限されず、適宜設定可能である。また、濃度勾配法による結晶化スクリーニング方法は、沈殿化剤濃度の勾配を形成して行うのみならず、例えば、生体物質の濃度勾配を形成して行うこともできる。具体的には、例えば、前記生体物質を含まないゲルをあらかじめ準備しておき、そのゲルの片面から前記生体物質溶液を徐々に浸透させることで、前記ゲル中に前記生体物質濃度の勾配を形成しても良い。前記ゲルは、例えば、あらかじめ沈殿化剤を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
さらに、本発明の結晶化スクリーニング装置および結晶化スクリーニング方法は、これらに限定されず、どのような装置および方法でもよい。例えば、結晶化スクリーニング方法の各種条件は、前述の説明に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、結晶化の方法として、図44を用いた前述の説明では、前記生体物質溶液を含むゲルを沈殿化剤溶液に接触もしくは近接させる方法を示した。しかし、前述の通り、沈殿化剤を用いた結晶化方法は、例えば、前記生体物質溶液にゲル化剤とともに沈殿化剤を混合しておき、ゲル化させて沈殿化剤を含むゲルとし、ゲル化後そのまま静置して結晶を析出させる方法でもよい。また、結晶化スクリーニング装置としては、例えば、図45に示すように、前記「濃度勾配法」の装置(図44右上に示す装置)のチューブ205を、浅いウェル305に変えた装置でもよい。図45において、蓋体304およびプレート306は、ウェルの深さがウェル305に合わせて浅い以外は、前記「濃度勾配法」の装置(図44右上に示す装置)と同様である。この装置を用いた結晶化スクリーニング方法は、ゲル中における濃度勾配形成がない以外は、前記「濃度勾配法」の装置と同様であり、あるいは図44に示した他の装置と同様である。図45の装置は、蓋体304およびプレート306に形成されたウェルが浅いことにより、前記「濃度勾配法」の装置と比較して操作全般が簡便であるという利点がある。また、図45の装置は、ゲルと沈殿化剤溶液とがそれぞれ別のウェル中に存在するため、前記「ハンギングドロップ法」および前記「シッティングドロップ法」の装置と比較すると、前記ゲルと前記沈殿化剤溶液との分離操作が簡便である利点がある。
なお、本発明の結晶化スクリーニング方法は、例えば、自動化して行うことが、効率的で好ましい。例えば図46に示すように、前記生体物質の溶液(ゾル)を分注装置により自動的に各ウェルあるいはチューブ内部などに分注するなどの方法により、前記結晶製造工程を自動化してもよい。なお、同図においては「温度コントローラー付きタンパク質分注装置」と記載しているが、これは単なる一例であり、生体物質は、タンパク質に限定されずどのような物質でもよいし、分注装置も、どのような分注装置でもよい。また、例えば、前記結晶製造工程終了後、結晶の形成状態を、図示のように顕微鏡で自動的に観察および写真撮影することで、前記スクリーニング工程を自動化してもよい。
なお、本発明の結晶化スクリーニング装置は、生体物質の結晶を製造する結晶製造手段を含んでいるため、生体物質の結晶を製造する結晶製造装置としても使用可能である。
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。
以下の実施例1〜7および比較例1〜7では、検体(被解析物質)として、下記(1)〜(3)のタンパク質結晶を用いた。実施例8以下では、検体(被解析物質)として、下記(1)〜(2)および(4)〜(7)のタンパク質結晶、または(8)の核酸(DNA)結晶を用いた。
(1)リゾチーム
(2)グルコースイソメラーゼ
(3)ソーマチン
(4)エラスターゼ
(5)Synechococcus由来ホスホリブロキナーゼ(PRK)
(Phosphoribulokinase(PRK)/Synechococcus)
(6)セリンアセチルトランスフェラーゼ(SAT)
(7)大腸菌異物排出トランスポーター(AcrB)
(8)DNA
X線源は、株式会社リガク製の商品名Ultrax−18(Cu対陰極)を用いた。検出器は、株式会社リガク製のR−AXIS IV++を用いた。測定電圧は50kV、測定電流は100mA、ビーム径は0.3mmとした。
[実施例1]
アガロース−III((株)同仁化学研究所製、ゲル化温度は約37〜39℃)2質量%と水98質量%を加熱溶解させたもの(A)0.1mLとニワトリ卵白リゾチーム溶液(B)0.1mLの両者を35℃の一定温度下で混合し結晶化溶液(C)とした。この結晶化溶液(C)が固化したゲルとなる前に、キャピラリー(ヒルゲンベルグ社製)へ充填した。前記キャピラリーは、ガラス製(80mm、内径0.7mm)であり、内部の管状空間に固化する前の結晶化溶液(C)を充填した。この結晶化溶液(C)は室温にて数十秒後に固化し、キャピラリー内部空間は結晶化溶液(C)が固化したゲルで充満された。次に、充填されたキャピラリーを、沈殿化剤溶液の約2mlが注入された試験管容器に挿入した。この試験管容器は、直径約16mm、長さ約133mm、のガラス製を用いた。このとき、キャピラリーの挿入端において、固化(ゲル化)した結晶化溶液(C)と沈殿化剤溶液との接触界面が形成された。このとき、固化した結晶化溶液(C)と沈殿化剤溶液との間に気泡が入らないように注意した。さらに、試験管の開口端を栓によって密栓した。なお、以下に、前記タンパク質溶液および沈殿化剤溶液の組成を示す。
タンパク質溶液(B):
30mg/mLニワトリ卵白リゾチーム
0.1M 酢酸バッファーpH4.5

沈殿化剤溶液:
1.0M塩化ナトリウム
0.1M酢酸バッファーpH4.5

結晶化温度:
20℃
前記キャピラリーを挿入し、栓によって密封した試験管を、結晶化温度20℃でセットアップ後、数日内に、固化したゲル中にリゾチーム結晶を確認した。試験管からキャピラリーを取り出し、キャピラリー内の固化したゲル中に晶出したリゾチーム結晶を以下の方法で取り出した。すなわち、まず、ガラスプレートを準備し、その上に沈殿化剤溶液と抗凍結剤溶液(本実施例では100%ジメチルスルホキシド溶液)をそれぞれ約30μL、別々の位置に分注してのせておいた。ピンセットやキャピラリーカッター等を用いて取り出したい結晶の前後5〜10mmの範囲でキャピラリーを切断または破砕し、次に固化したゲルをカッター等で切断した。さらに、取り出したゲル中にある結晶を、先に準備しておいた沈殿化剤溶液中に移動させた。マイクロツール(ハンプトンリサーチ社製)などを用いて顕微鏡下にて、リゾチーム結晶の周りにあるゲルを厚さ約0.1mmになるまで慎重に剥ぎ取った。厚さ約0.1mmのゲルに覆われたリゾチーム結晶をループ状のマウント器具を用いて沈殿化剤溶液からすくい上げ、先に準備しておいた抗凍結剤溶液に数秒間浸漬した後、素早く取り出し凍結した。さらにX線結晶構造解析を行った。X線回折像撮影は、レンズと結晶との距離100mm、露光時間1min、振動角Δ1°、撮影枚数20枚で行った。その結果、リゾチームの結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(リゾチーム結晶:実施例1)
P43212
Resolution 50.00−1.64()
a=b=77.2Å, c=37.3Å
α=β=γ=90°
I/σ(I)()
Rmerge 0.043()
Mosaicity 0.67°
図1Aおよび図1Bに、ゲルで保護された実施例1のリゾチーム結晶を、それぞれ撮影角度を変えて撮影した写真を示す。図示の通り、実施例1では、大きく高品質なリゾチーム単結晶が得られた。また、図2Aおよび図2Bに、実施例1のリゾチーム結晶のX線回折像を示す。図2Aは全体図であり、図2Bは、一部(図2A右下の枠線部分)の拡大図である。図示の通り、良好なX線回折像が得られたことが分かる。
[実施例2]
ニワトリ卵白リゾチーム溶液に代えてグルコースイソメラーゼ溶液を用い、タンパク質溶液及び沈殿化剤溶液の組成、抗凍結剤の種類以外は実施例1と同様にして結晶を製造した。結晶化温度4℃でセットアップ後、約1週間で、固化したゲル中にグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。以下に、タンパク質溶液および沈殿化剤溶液の組成を示す。
タンパク質溶液:
25mg/mLグルコースイソメラーゼ
0.1M ヘペスバッファー pH 7.5
1mM 塩化マグネシウム

沈殿化剤溶液:
2.5M 硫酸アンモニウム
0.1M ヘペスバッファー pH7.5

結晶化温度:
4℃
抗凍結剤溶液は、本実施例では2.5M酢酸リチウム溶液を用いてX線結晶構造解析を行った。その結果、グルコースイソメラーゼ結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(グルコースイソメラーゼ結晶:実施例2)
P21212
Resolution 50.00−1.64()
a=85.9Å,b=94.1Å, c=98.3Å
α=β=γ=90°
Unique reflections
Completeness
I/σ(I)()
Rmerge 0.038()
Mosaicity 0.64°
図3A、図3B、図4、図5Aおよび図5Bに、実施例2のグルコースイソメラーゼ結晶のX線回折像を示す。図3Aは全体図であり、図3Bは、一部(図3A右上の枠線部分)の拡大図である。図4は、条件を変えて撮影したX線回折像である。図5Aは、さらに条件を変えて測定したX線回折像の全体図であり、図5Bは、一部(図5A右下の枠線部分)の拡大図である。図示の通り、良好なX線回折像が得られたことが分かる。また、図6A〜Dに、実施例2のリゾチーム結晶を示す。図6Aは、抗凍結剤溶液に浸漬する直前の状態を示す図であり、単結晶が得られている。図6Bは、抗凍結剤溶液に浸漬してから5秒後、図6Cは、浸漬してから1分後、図6Dは、浸漬してから5分後の状態をそれぞれ示す。図A〜D右側の結晶は、抗凍結剤溶液浸漬前から若干の欠陥があったため、浸漬後次第に崩壊したが、左側の結晶は、良好な単結晶であり、5分間浸漬しても全く崩壊しなかった。
[実施例3]
グルコースイソメラーゼ溶液を用い、抗凍結剤の種類以外は実施例2と同様にして結晶化を行った。セットアップ後、約1週間で固化したゲル中にグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。抗凍結剤溶液は、本実施例では100%グリセロールを用いてX線結晶構造解析を行った。その結果、グルコースイソメラーゼ結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(グルコースイソメラーゼ結晶:実施例3)
P21212
Resolution 50.00−1.64()
a=85.9Å,b=92.2Å, c=99.0Å
α=β=γ=90°
Unique reflections
Completeness
I/σ(I)()
Rmerge 0.077()
Mosaicity 0.71°
[実施例4]
グルコースイソメラーゼ溶液を用い、抗凍結剤の種類以外は実施例2と同様にして結晶化を行った。セットアップ後、約1週間で固化したゲル中にグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。抗凍結剤溶液は、本実施例では50%グリセロール溶液を用いてX線結晶構造解析を行った。その結果、グルコースイソメラーゼ結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(グルコースイソメラーゼ結晶:実施例4)
P21212
Resolution 50.00−1.64()
a=86.0Å,b=92.4Å, c=99.0Å
α=β=γ=90°
Volume 222302.0
Unique reflections
Completeness
I/σ(I)()
Rmerge 0.051()
Mosaicity 0.51°
[実施例5]
ニワトリ卵白リゾチーム溶液に代えてソーマチン溶液を用い、タンパク質溶液及び沈殿化剤溶液の組成、抗凍結剤の種類以外は実施例1と同様にして結晶化を行った。結晶化温度20℃でセットアップ後、約1週間で固化したゲル中にグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。以下に、タンパク質溶液及び沈殿化剤溶液の組成を示す。
タンパク質溶液:
20mg/mLソーマチン
0.1M N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸バッファー pH6.5

沈殿化剤溶液:
2.0M 酒石酸ナトリウムカリウム
0.1M N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸バッファー pH6.5

結晶化温度:
20℃
抗凍結剤溶液は、本実施例では100%グリセロールを用いてX線結晶構造解析を行った。その結果、ソーマチン結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(ソーマチン結晶:実施例5)
P41212
Resolution 50.00−1.64()
a=b=57.5Å, c=149.8Å
α=β=γ=90°
Unique reflections
Completeness
I/σ(I)()
Rmerge 0.032()
Mosaicity 0.49°
図7Aに、ゲルで保護された実施例5のソーマチン結晶の写真を示す。図示の通り、実施例5では、大きく高品質なソーマチン単結晶が得られた。また、図7Bおよび図7Cに、実施例5のソーマチン結晶のX線回折像を示す。図7Bは全体図であり、図7Cは、一部(図7B下部の枠線部分)の拡大図である。図示の通り、良好なX線回折像が得られたことが分かる。
[実施例6]
ソーマチン溶液を用い、抗凍結剤の種類以外は実施例5と同様にして結晶化を行った。セットアップ後、約1週間で固化したゲル中にソーマチン結晶を確認した。抗凍結剤溶液は、本実施例では100%ポリエチレングリコール(平均分子量400)を用いてX線結晶構造解析を行った。その結果、ソーマチン結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(ソーマチン結晶:実施例6)
P41212
Resolution 50.00−1.64()
a=b=57.9Å, c=150.1Å
α=β=γ=90°
Unique reflections
Completeness
I/σ(I)()
Rmerge 0.055()
Mosaicity 0.74°
[実施例7]
ソーマチン溶液を用い、抗凍結剤の種類以外は実施例5と同様にして結晶化を行った。セットアップ後、約1週間で固化したゲル中にソーマチン結晶を確認した。抗凍結剤溶液は、本実施例では60%ポリエチレングリコール(平均分子量4000)溶液を用いてX線結晶構造解析を行った。その結果、ソーマチン結晶を損傷なく容易に捕捉することができ、また抗凍結剤溶液による損傷も無く液体窒素処理にも耐え、良好なX線回折像が得られた。以下に、結晶構造解析結果を示す。なお、1Å=10−10mである。
(ソーマチン結晶:実施例7)
P41212
Resolution 50.00−1.64()
a=b=57.7Å, c=150.1Å
α=β=γ=90°
Unique reflections
Completeness
I/σ(I)()
Rmerge 0.049()
Mosaicity 0.52°
図8Aに、ゲルで保護された実施例7のソーマチン結晶の写真を示す。図示の通り、実施例7では、大きく高品質なソーマチン単結晶が得られた。また、図8Bおよび図8Cに、実施例7のソーマチン結晶のX線回折像を示す。図8Bは全体図であり、図8Cは、一部(図8B下部の枠線部分)の拡大図である。図示の通り、良好なX線回折像が得られたことが分かる。
なお、前記アガロース−III((株)同仁化学研究所製、ゲル化温度は約37〜39℃)に代えてアガロースIX−A(シグマ社製、ゲル化温度は約8〜17℃)を用いることと、温度条件を変更すること以外は実施例1〜7と同様にして結晶および凍結結晶を製造し、同様に良好な結果が得られた。
[比較例1]
アガロースを添加しないリゾチーム溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、数日内にリゾチーム結晶を確認した。キャピラリーから取り出したリゾチーム結晶は、抗凍結剤溶液(100%ジメチルスルホキシド溶液)に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。図9Aおよび図9Bに、比較例1のリゾチーム結晶の写真を示す。図9Aは、抗凍結剤溶液に浸漬する直前の状態を示す写真であり、単結晶が得られている。図9Bは、抗凍結剤溶液に浸漬した直後の状態を示す写真であり、結晶は粉々になっている。
[比較例2]
アガロースを添加しないグルコースイソメラーゼ溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、約1週間でグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。キャピラリーから取り出したグルコースイソメラーゼ結晶は、抗凍結剤溶液(2.5M酢酸リチウム溶液)に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。
[比較例3]
アガロースを添加しないグルコースイソメラーゼ溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、約1週間でグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。キャピラリーから取り出したグルコースイソメラーゼ結晶は、抗凍結剤溶液(100%グリセロール)に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。
[比較例4]
アガロースを添加しないグルコースイソメラーゼ溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、約1週間でグルコースイソメラーゼ結晶を確認した。キャピラリーから取り出したグルコースイソメラーゼ結晶は、抗凍結剤溶液(50%グリセロール溶液)に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。
[比較例5]
アガロースを添加しないソーマチン溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、約1週間でソーマチン結晶を確認した。キャピラリーから取り出したソーマチン結晶は、抗凍結剤溶液(100%グリセロール)に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。
[比較例6]
アガロースを添加しないソーマチン溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、約1週間でソーマチン結晶を確認した。キャピラリーから取り出したソーマチン結晶は、抗凍結剤溶液(100%ポリエチレングリコール(平均分子量400))に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。図10Aおよび図10Bに、比較例6のリゾチーム結晶の写真を示す。図10Aは、抗凍結剤溶液に浸漬する直前の状態を示す写真であり、単結晶が得られている。図10Bは、抗凍結剤溶液に浸漬した直後の状態を示す写真であり、結晶は粉々になっている。
[比較例7]
アガロースを添加しないソーマチン溶液を用いる以外は実施例1と全く同様に結晶化を行った。セットアップ後、約1週間でソーマチン結晶を確認した。キャピラリーから取り出したソーマチン結晶は、抗凍結剤溶液(60%ポリエチレングリコール(平均分子量4000)溶液)に浸漬した瞬間に粉々に割れ、溶けてしまった。そのため、X線結晶構造解析を行うことができなかった。
以上の通り、実施例1〜7によれば、ゲル中で得られた3種類のタンパク質結晶(リゾチーム、グルコースイソメラーゼ、ソーマチン)は、全て、抗凍結剤による結晶への損傷がほぼ完全に防止された。すなわち、ゲルでコートされた実施例のタンパク質結晶と、比較例のフリーな結晶を比べると、3種のタンパク質結晶ともに抗凍結剤に対する崩壊速度にきわめて大きな差があった。また、ゲルでコートされた実施例のタンパク質結晶を用いたX線回折実験で、ice-ringが生じても、タンパク質結晶自体の損傷は、ほとんど観察されなかった。さらに、シンクロトロン放射光による回折実験でも問題なく十分なデータが得られ、かつ構造解析可能なデータであった。本実施例によれば、リゾチーム、グルコースイソメラーゼ、ソーマチンの3種のタンパク質結晶について、従来のX線結晶構造解析結果を上回る最高分解能の反射が得られた。
[実施例8〜10、比較例8〜9]
ゲルで被覆された被覆結晶を製造し、2.5M酢酸リチウム水溶液を抗凍結剤として用いてX線結晶構造解析を行った。抗凍結剤として2.5M酢酸リチウム水溶液を用いることと、抗凍結剤への前記被覆結晶の浸漬時間を15分間とすることと、被解析結晶を構成する生体物質と、ゲル(アガロースIII)の濃度以外は、実施例1と同様に行った。前記生体物質として、タンパク質の一種であるエラスターゼを用い、ゲル(アガロースIII)の濃度を2.0質量%としたものを実施例8とする。前記生体物質として、タンパク質の一種であるリゾチームを用い、ゲル(アガロースIII)の濃度を1.6質量%としたものを実施例9とする。前記生体物質として、タンパク質の一種であるグルコースイソメラーゼを用い、ゲル(アガロースIII)の濃度を1.6質量%としたものを実施例10とする。
さらに、ゲルを添加しないことと、抗凍結剤(2.5M酢酸リチウム水溶液)への浸漬時間を変える以外は実施例8および9と同様にして生体物質結晶を製造し、X線結晶構造解析を行った。前記生体物質として、タンパク質の一種であるエラスターゼを用い、抗凍結剤への浸漬時間を2秒としたものを実施例8とする。前記生体物質として、タンパク質の一種であるリゾチームを用い、抗凍結剤への浸漬時間を15秒としたものを実施例9とする。
図11に、実施例8〜10および比較例8〜9の結晶の写真およびデータを示す。左から右に向かって、それぞれ、比較例8、実施例8、比較例9、実施例9、および実施例10の写真である。図下方の数値は、アガロースの添加量(質量%)、抗凍結剤(Cryo)溶液への浸漬時間、およびX線結晶構造解析におけるモザイク性(Mosaicity)を示す。図示の通り、実施例8〜10の被覆結晶は、抗凍結剤(2.5M酢酸リチウム水溶液)に15分間という長時間浸漬させても結晶が損傷しなかった。これらの結晶のモザイク性は、いずれも約0.3と十分に小さい数値であり、質の高い結晶であることが示された。一方、比較例8の結晶はモザイク性が1.17と大きく、比較例10の結晶は、抗凍結剤に15秒間浸漬させると破損してしまい、X線結晶構造解析ができなかった。
[実施例11]
抗凍結剤(2.5M酢酸リチウム水溶液)への浸漬時間を10分間に変える以外は実施例10と同条件で被覆結晶製造およびX線結晶構造解析を行った。その結果、モザイク性の数値は、ビーム分散を含めて0.08°と、極めて小さい数値であり、従来技術を上回る非常に高品質の結晶であることが示された。図12に、本実施例の結晶のX線回折像を示す。なお、このときの分解能は0.93Åであり、被解析結晶は、径が0.5mm以上の大きな結晶であった。
[実施例12:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
アガロース−III溶液(A)におけるアガロース−III濃度を0〜2.0質量%まで、0.2質量%刻みで種々変化させたことと、タンパク質溶液(B)においてリゾチームの濃度を30mg/mLから50mg/mLに変えたことと、沈殿化剤溶液における塩化ナトリウム濃度を1.0Mから3.0質量%に変えたことと、図44左下に示したようなバッチ法に適した結晶化プレート(ハンプトンリサーチ社製Imp@ct plate(商品名))を用いてバッチ法にて実施したこと以外は実施例1と同様にして、アガロース−IIIのゲルで被覆された被覆結晶を製造し、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。なお、以下、図44左下の図(シッティングドロップ法)の符号を用いて説明するが、この図は模式図であるため、ウェル数、各部の寸法比等は、実際の機器であるImp@ct plateとは異なる。すなわち、まず、アガロース−III溶液(A)におけるアガロース−III濃度を、前述のとおり0〜2.0質量%まで0.2質量%刻みで変化させた種々のアガロース−III濃度で調製した。これと、タンパク質溶液(B)とを混合させ、アガロース−III濃度が種々異なる結晶化溶液(C)を調製した。次に、異なるアガロース−III濃度を有する前記結晶化溶液(C)を沈殿化剤溶液と混合した後、6μLずつ、結晶化プレート207のそれぞれのウェルに注入した。さらに、各アガロース−III濃度について、同じアガロース−III濃度の結晶化サンプルを合計8つ作製し、それぞれ別個のウェルに注入した。この結晶化溶液(C)は、ウェル内で液滴を形成し、すぐにゲル化した。その直後、プレート(結晶化プレート)207上面にシールを貼って各ウェル中のゲルの大気に対する曝露を防止し、そのまま20℃で3日間静置したところ、結晶の生成を確認した。その後、各サンプル中に生成した結晶数を顕微鏡で観察した。各濃度における8つのサンプルの生成結晶数を平均し、平均結晶数(個)とした。
図15のグラフに、前記平均結晶数を示す。図中、横軸はアガロース−III濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロース−III濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース−III存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例13:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
アガロースの種類を、アガロース−III(AgaroseIII)、アガロース9A、またはアガロースSea Plaque(アガロースSP)、およびアガロースSeaKem(いずれも、タカラバイオ株式会社の商品名)としたことと、アガロース濃度を0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5または6.0質量%と種々変化させること(SeaKemについては2.0質量%以下まで)以外は実施例12と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。図16のグラフに、アガロース濃度0〜2.0質量%の結果を示す。図左上のグラフは、アガロース9Aの結果を示すグラフである。図右上のグラフは、アガロースSPの結果を示すグラフである。図左下のグラフは、アガロース−IIIの結果を示すグラフである。図右下のグラフは、アガロースSeaKemの結果を示すグラフである。図中、横軸はアガロース濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。また、図17のグラフに、アガロース濃度0および2.0〜6.0質量%の結果を示す。図右上のグラフは、アガロース−IIIの結果を示すグラフである。図左下のグラフは、アガロース9Aの結果を示すグラフである。図右下のグラフは、アガロースSPの結果を示すグラフである。図中、横軸はアガロース濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロース濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例14:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
アガロースの種類を、NuSieve3:1(タカラバイオ株式会社の商品名)とすることと、アガロース濃度を0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5または6.0質量%と種々変化させること以外は実施例12およびと同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。図18のグラフに、その結果を示す。図中、横軸はNuSieve3:1濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロースであるNuSieve3:1濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。また、NuSieve3:1の場合、濃度が5.0質量%付近で最も良好な結晶製造条件が得られたことも示された。
[実施例15:ゲル濃度および沈殿化剤濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
沈殿化剤溶液中における塩化ナトリウム濃度を、2.0質量%、3.0質量%、4.0質量%、5.0質量%および6.0質量%と種々変化させることと、沈殿化剤への浸漬時間を6日または7日とすること以外は実施例12と同様にして、ゲル濃度および沈殿化剤変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。なお、ゲル濃度は、各塩化ナトリウム濃度について、実施例12と同様、0から2.0質量%まで0.2質量%刻みで変化させた。図19のグラフに、その結果を示す。図中、横軸はアガロース−III濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロース−III濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース−III存在下(濃度が0以外)では、いずれの塩化ナトリウム濃度でも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例16:ゲル濃度および沈殿化剤濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
前記各実施例で用いた通常のアガロース−IIIに代えて高融点アガロース−IIIを用いること以外は実施例15と同様にして、ゲル濃度および沈殿化剤変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。なお、ゲル濃度は、各塩化ナトリウム濃度について、実施例15と同様、0から2.0質量%まで0.2質量%刻みで変化させた。図20のグラフに、その結果を示す。図中、横軸はアガロース−III濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロース−III濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース−III存在下(濃度が0以外)では、いずれの塩化ナトリウム濃度でも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例17:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
アガロース−III濃度を0、0.4、1.0、1.6または2.0に種々変化させたことと、タンパク質としてリゾチームに代えてエラスターゼを用い、タンパク質溶液(B)においてエラスターゼの濃度を12.5mg/mLとしたことと、アガロースの種類をアガロースSeaplaque(SP)としたことと、平均結晶数の算出に用いるサンプル数を8個に代えて12個としたこと以外は実施例12と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。図21のグラフに、その結果を示す。図中、横軸はアガロースSP濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロースSP濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例18:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
タンパク質としてリゾチームに代えてグルコースイソメラーゼを用い、タンパク質溶液(B)においてグルコースイソメラーゼの濃度を10mg/mLとしたことと、アガロースの種類を超低分子量アガロース9Aとしたことと、沈殿化剤を、塩化ナトリウム水溶液に代えて、10質量%の2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)を含む0.1M塩化カルシウム(CaCl)水溶液としたことと、緩衝液を、0.1M酢酸バッファーpH4.5に代えて0.1M Tris−HCl pH7.0としたこと以外は、実施例12と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。図22の写真およびグラフに、その結果を示す。各写真の下方の数値は、アガロース9A濃度(質量%)を示す。グラフ中、横軸はアガロース9A濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロース9A濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例19:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
アガロースの種類をアガロースSPとしたことと、沈殿化剤を、8.0質量%の2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)を含む0.1M酢酸カルシウム(CaAc)水溶液としたこと以外は実施例18と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。図23の写真およびグラフに、その結果を示す。各写真の下方の数値は、アガロースSP濃度(質量%)を示す。グラフ中、横軸はアガロースSP濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロースSP濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例20:タンパク質濃度およびゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
タンパク質としてリゾチームに代えてソーマチンを用いたことと、アガロースの種類をSeaplaque(タカラバイオ株式会社の商品名)としたことと、沈殿化剤(沈殿剤)を0.3M Na/K酒石酸塩としたことと、平均結晶数の算出に用いるサンプル数を8個に代えて12個としたこと以外は実施例12と同様にして、タンパク質濃度およびゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。図24のグラフに、その結果を示す。図中、横軸はアガロースSP(Seaplaque)濃度、縦軸は、前記平均結晶数(個)である。図示の通り、アガロースSP濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。また、ソーマチン濃度は、50mg/mLでも25mg/mLでも、いずれでも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例21:ゲル濃度変化条件下での結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
下記(1)〜(3)以外は実施例12と同様にして結晶製造および結晶化条件スクリーニングを行った。
(1)VDX plate(ハンプトンリサーチ社の商品名)を用いたハンギングドロップ法により結晶製造を行った。
(2)タンパク質としてリゾチームに代えてSynechococcus由来ホスホリブロキナーゼ(PRK)(Phosphoribulokinase(PRK)/Synechococcus)を用い、これとゲル化剤(アガロース−IIIに代えてアガロース9Aを用いた)および4mMのCHHgClとの混合溶液を結晶化溶液(C)とした。なお、この結晶化溶液(C)は、すぐにゲル化するため、調製後、速やかに結晶製造工程に供した。
(3)塩化ナトリウム水溶液および0.1M酢酸バッファーpH4.5に代えて、12質量%のイソプロパノール、0.1Mまたは0.22M酢酸カリウム、および0.1M Mes(2−モルホリノエタンスルホン酸) pH6.5水溶液を沈殿化剤溶液とした。
ハンギングドロップ法による結晶製造工程は、以下のように行った。すなわち、まず、プレート203の各ウェル(プレートウェル)中に、あらかじめ前記沈殿化剤溶液を500μL/ウェル入れて準備した。一方、前記の通り調整した結晶化溶液(C)を、突起部202(カバーガラス)上に2μLずつ分注してゲル化させた。各濃度の前記結晶化溶液(C)について、8つの同じサンプルを、8つの突起部202の上面に載せた。その後、蓋体201を上下反転させて突起部202を下に向け、突起部202を、前記沈殿化剤溶液を含むプレートウェル中にはめ込み、前記ゲルと前記沈殿化剤溶液とを近接させた。このようにセットした後、20℃で3日間静置し、ゲル中でDNA結晶を析出させて結晶を製造した。図25の写真に、その結果を示す。図中、各写真の下方の数値は、アガロース濃度(質量%)および沈殿化剤(沈殿剤)濃度を示す。図示の通り、アガロース9A濃度(ゲル濃度)と平均結晶数の相関関係のメカニズムは不明であるが、アガロース存在下(濃度が0以外)では、いずれも良好な結晶製造条件が得られたことが示された。
[実施例22:大腸菌由来タンパク質の結晶製造(結晶化)]
タンパク質として、前記のタンパク質に代えて大腸菌由来セリンアセチルトランスフェラーゼ(SAT)7.5mg/mLを用いたことと、沈殿化剤(沈殿剤)溶液を4.5質量%のPEG8000(Promega社のポリエチレングリコールの商品名)および0.1M カコジル酸ナトリウムを含むpH6.5水溶液としたこと以外は実施例21と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。
[実施例23:大腸菌由来タンパク質の結晶製造(結晶化)]
沈殿化剤(沈殿剤)溶液を、7.5質量%のPEG8000(Promega社のポリエチレングリコールの商品名)および0.1M カコジル酸ナトリウムを含むpH6.5水溶液としたこと以外は実施例22と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。
[実施例24:大腸菌由来タンパク質の結晶製造(結晶化)]
タンパク質として、SATに代えて大腸菌異物排出トランスポーター(AcrB)28mg/mLを用いたことと、沈殿化剤(沈殿剤)溶液を、10質量%のPEG2000(Promega社のポリエチレングリコールの商品名)、80mMリン酸二水素ナトリウムおよび20mMクエン酸ナトリウムを含むpH5.6水溶液としたこと以外は実施例12と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。
[実施例25:大腸菌由来タンパク質の結晶製造(結晶化)]
沈殿化剤(沈殿剤)溶液のPEG2000濃度を10質量%に代えて14質量%としたこと以外は実施例24と同様にして、ゲル濃度変化条件下での結晶化条件(結晶製造条件)をスクリーニングした。
実施例22〜25の結果、大腸菌由来セリンアセチルトランスフェラーゼ(SAT)および大腸菌異物排出トランスポーター(AcrB)のいずれについても、良好な結晶製造(結晶化)条件が得られた。図26の写真に、実施例22および23(SAT)についてはアガロース濃度1.0質量%における結果を、実施例24および25(AcrB)についてはアガロース濃度2.0質量%における結果を、併せて示す。図左上および中上は、実施例22の結果を示す写真である。図左下および中下は、実施例23の結果を示す写真である。図右上は、図24の結果を示す写真である。図右下は、実施例25の結果を示す写真である。図示の通り、大腸菌由来のSATおよびAcrBのいずれについても、良好な結晶を得ることができた。
[実施例26:核酸(DNA)の結晶製造および結晶化条件スクリーニング]
以下のようにして、核酸(DNA)の結晶を製造した。
まず、DNAをアニーリングした。すなわち、まず、一本鎖DNAであるDNA1(5’−AAGAAAAAAAA−3’:配列番号1)の1mM水溶液と、DNA1の相補鎖であるDNA2(5’−TTTTTTTTCTT−3’:配列番号2)の1mM水溶液とを等量混合し、まず60℃で10分間、続いて20℃で15分間静置した。ここに、BNA(Bridged Nucleic Acid、株式会社ジーンデザイン社製)の1mM水溶液を、前記DNA1水溶液と同量加え、20℃で終夜静置した。このようにして、DNAのアニーリングを行い、アニール化DNA水溶液を得た。このアニール化DNA水溶液を、結晶製造に供した。
VDX plate(ハンプトンリサーチ社の商品名)を用いたハンギングドロップ法により結晶製造を行うことと、結晶化溶液(C)として、下記のゲルとDNAとの混合水溶液を用い、沈殿化剤(リザーバー)溶液として下記の溶液を用いること以外は、実施例12と同様にして結晶製造および結晶化条件スクリーニングを行った。

ゲルとDNAとの混合水溶液(濃度は最終濃度)
アガロース9A 1.0または1.6質量%
1.5質量% MPD
0.5mM DNA(前記アニール化DNA水溶液を左記濃度相当分使用)
20mM カコジル酸ナトリウム/10mM MgCl緩衝液(pH6.8)
沈殿化剤(リザーバー)溶液
18質量% MPD水溶液(500μL/ウェル)
なお、本実施例では、以下のようにして結晶化溶液(C)(前記ゲルとDNAとの混合水溶液)を調整した。すなわち、まず、アガロース9Aを85℃の水に溶かし、37℃で保温したゲル化剤水溶液(最終濃度の4倍濃度)を調製した。このゲル化剤水溶液と、MPD、カコジル酸ナトリウムおよびMgClを最終濃度の4倍濃度で含む緩衝液と、前記アニール化DNA水溶液とを、この順に1:1:2の体積比で混合し、結晶化溶液(C)を得た。この結晶化溶液(C)は、すぐにゲル化するため、調製後速やかに以下の結晶製造工程に供した。
結晶製造工程は、以下のように行った。すなわち、まず、プレート203の各ウェル(プレートウェル)中に、あらかじめ前記沈殿化剤溶液を500μL/ウェル入れて準備した。一方、前記の通り調整した結晶化溶液(C)を、突起部202(カバーガラス)上に2μLずつ分注してゲル化させた。各濃度の前記結晶化溶液(C)について、8つの同じサンプルを、8つの突起部202の上面に載せた。その後、蓋体201を上下反転させて突起部202を下に向け、突起部202を、前記沈殿化剤溶液を含むプレートウェル中にはめ込み、前記ゲルと前記沈殿化剤溶液とを近接させた。このようにセットした後、20℃で1〜5日間静置し、ゲル中でDNA結晶を析出させて結晶を製造した。
図27の写真に、本実施例におけるDNA結晶製造(結晶成長)の過程を示す。図27左欄は、アガロースを加えなかった例(比較例に相当)である。中欄は、アガロース9Aの最終濃度1.0質量%の例である。右欄は、アガロース9Aの最終濃度1.6質量%の例である。また、それぞれにおいて、上段は、20℃で1日静置直後の写真であり、下段は、20℃で5日静置直後の写真である。図示の通り、アガロースを加えなくてもDNA結晶は成長するが、アガロースを加えた本発明の実施例によれば、さらに結晶が成長しやすいことが示された。また、図示の通り、20℃で静置後5日経つと、静置後1日の時よりも、細かい結晶が減ってゲルの透明度が上昇し、結晶が大きく成長した。
[実施例27:メビオールジェルを用いた結晶製造および結晶化スクリーニング]
アガロース−III溶液(A)に代えて、メビオールジェル濃度を0、1、3および5質量%に種々変化させたメビオールジェル溶液を用いたことと、タンパク質溶液(B)においてリゾチームの濃度を40mg/mLに変えたこと以外は実施例12と同様にしてリゾチームの結晶を製造し、結晶化スクリーニングを行った。図28に、その結果を示す。図左側のグラフにおいて、横軸は、メビオールジェル添加量(質量%)であり、縦軸は、平均結晶数(結晶析出数)である。また、右側の写真は、メビオールジェルを1質量%添加した場合およびメビオールジェルを添加しなかった場合において、それぞれ析出した結晶を示す。図示の通り、メビオールジェルを添加しなかった場合は、リゾチーム結晶はほとんど析出せず、析出した結晶も、クラックが発生してしまい、良質な結晶ではなかった。これに対し、メビオールジェルを添加した場合、クラック等のない良質な結晶が多数得られた。特に、メビオールジェル添加量を5質量%に増加させると、結晶析出数が急激に上昇した。さらに、メビオールジェルを7質量%に増加させても、同様に良好な結果が得られた。
また、上記結晶は、メビオールジェルで被覆された被覆結晶であるが、15℃以下に冷却することにより、メビオールジェルが液化(ゾル化)し、極めて簡便にゲル被覆を除去することができた。図29の写真に、その様子を示す。左側の写真は、冷却前の、メビオールジェルで被覆された結晶を示す。右側の写真は、冷却後の、ゲル被覆が除去された結晶を示す。
[ゲル被覆結晶の耐乾燥性]
実施例13および27における結晶化スクリーニングで製造した被覆結晶の対乾燥性を評価した。実施例13は、2.0質量%アガロース9A、2.0質量%アガロースSP、または2.0質量%アガロース−IIIを用いて製造した被覆結晶をそれぞれ評価に用いた。実施例27は、メビオールジェル1質量%を用いて製造した被覆結晶を評価に用いた。評価は、結晶の入った前記ハンギングドロップ法用の装置(ハンプトンリサーチ社製VDX plate(商品名))ウェル上面からシールを取り除いて結晶を常温の大気に曝露し、経時変化を顕微鏡観察することで行った。
図30の写真に、実施例13の結晶の対乾燥性評価結果を示す。1番左の「None」のラインは、ゲルを添加しないで製造した結晶(比較例)の経時変化を示す。左から2番目の「2.0% 9A」のラインは、2.0質量%アガロース9Aを用いて製造した結晶の経時変化を示す。左から3番目の「2.0% SP」のラインは、2.0質量%アガロースSPを用いて製造した結晶の経時変化を示す。一番右の「2.0% III」のラインは、2.0質量%アガロース−IIIを用いて製造した結晶の経時変化を示す。写真の左側における「min」で表した数字は、結晶の、大気に対する曝露時間(分)を表す。図示の通り、ゲルを添加しないで製造した結晶(比較例)は、曝露時間10分ですでに乾燥が始まり、曝露時間16分では顕著なクラックが起こり、すでに実用に耐えず、曝露時間29分では完全に崩壊していた。これに対し、実施例の各被覆結晶は、曝露時間20〜29分という長時間、乾燥に耐えた。
さらに、図31Aおよび31Bの写真に、実施例27の結晶の対乾燥性評価結果を示す。図31A上段の「ゲル添加なし」のラインは、ゲルを添加しないで製造した結晶(比較例)の経時変化を示す。図31A下段の「メビオール1%添加」のラインは、1.0質量%メビオールジェルを用いて製造した結晶の経時変化を示す。図31B上段は、図31A上段に引き続き、ゲルを添加しないで製造した結晶(比較例)の経時変化を示す。図31B下段は、図31A下段に引き続き、1.0質量%メビオールジェルを用いて製造した結晶の経時変化を示す。「min」で表した数字は、結晶の、大気に対する曝露時間(分)を表す。図示の通り、ゲルを添加しないで製造した結晶(比較例)は、曝露時間4分ですでに表面の乾燥がはじまり、曝露時間22分でクラックが入り始め、曝露時間28分では顕著な沈殿やひび割れが生じ、曝露時間36分でほぼ完全に崩壊した。これに対し、メビオールジェルで被覆された実施例の被覆結晶は、曝露時間36分でもクラックや乾燥等の劣化を何ら起こさず、曝露時間41分でも、ごく一部の結晶に微細なクラックが入ったのみであった。
このように、本発明の製造方法により製造される被覆結晶は、ゲルで被覆されていることにより、乾燥に極めて強く、保存に向くことが確認された。
[実施例28:メビオールジェルを用いた結晶製造]
リゾチーム濃度 35mg/mL、塩化ナトリウム濃度 3質量%、酢酸ナトリウム濃度を0.2M、メビオールジェル濃度 2質量%の混合溶液を12℃に保ち、そのまま12℃で約1週間静置して結晶を析出させ、本発明の結晶製造方法を実施した。さらにその後、前記混合溶液の温度を20℃に上昇し、ゲル状態に変換(移動)させた。この状態変化(移動)の前後で結晶に損傷等の変化があるか観察した。図32の写真に、その観察結果を示す。左はゾル状態(移動前)の写真であり、右はゲル状態(移動後)の写真である。図示の通り、移動前後で結晶の状態に変化は見られなかった。さらに、メビオールジェル濃度を3質量%に代えても同様の結果が得られた。
図33の表および写真に、実施例27および28の結晶のX線結晶構造解析の結果を示す。X線結晶構造解析は、前述の各実施例と同様に行った。抗凍結剤は2.5M酢酸リチウムを用い、浸漬時間は15分間とした。表中の番号1は、メビオールジェルを添加せずに製造した結晶(比較例)を示す。番号2および3は、実施例28の結晶(メビオールジェル2質量%および3質量%)を示す。番号4および5は、実施例27の結晶(メビオールジェル2質量%および5質量%)を示す。写真は、X線回折像を示し、写真に付された1、2、3および5の番号は、それぞれ表中の番号に対応する。図示のとおり、いずれの結晶においても良好な解析結果が得られ、メビオールジェルの添加および結晶析出後のゲル化は、結晶に対し何ら悪影響を及ぼさないことが確認された。なお、番号2の結晶のみ、若干モザイク性の数値が大きくなっているが、これは、結晶を前記VDX plateから剥がす際の操作エラーにより、若干損傷が起こってしまったためであり、結晶構造の本質的な欠陥によるものではない。
さらに、実施例27のリゾチーム結晶のうち、メビオールジェルを7質量%添加して製造したものについて、同様にX線結晶構造解析を行った。図34に、その結果を示す。図34左側に示すように、良好な結晶が得られ、右側に示すように、良好なX線回折像と低いモザイク性(0.3178)が得られた。
[フェムト秒レーザーによる被覆結晶の加工による加工結晶の製造]
実施例18で製造したグルコースイソメラーゼのアガロースSPゲル被覆結晶(アガロースSP濃度1.6質量%)をフェムト秒レーザーで加工し、一部を切り出し、加工結晶を製造した。レーザ光源としては、サイバーレーザー社製イフリート(商品名)を用い、出力は0.7〜2.0mWとした。図35の写真に、その様子を示す。図左は加工前であり、図右は加工後である。図示のように、フェムト秒レーザーで加工した加工部において、結晶およびゲルの一部を切り出し、加工結晶を製造することができた。
加工により切り出した加工部(加工結晶)は、ピンセットやクライオループなどを用いて取り出し、X線結晶構造解析に供することができた。図36左は、前記加工部(加工結晶)を取り出している最中の状態を示す写真であり、図36右は、取り出し後の前記加工部(加工結晶)の写真である。また、図37に、前記加工部のX線結晶構造解析結果を示す。図37左は、前記加工部の結晶とゲルを示す写真であり、図右は、図左に示した各部分の分解能およびモザイク性である。図示のように、加工部に含まれる結晶は、良好な構造を有することが確認された。
このように、フェムト秒レーザー等のレーザー光を用いた加工によれば、例えば、ゲル被覆結晶から、ゲルおよび結晶のうち使用目的に供する部分のみを適切に切り出すことができる。また、例えば、結晶からゲルのみを適切に除去し、前記ゲルを含まない結晶だけを取り出すこともできる。
このようなレーザー光加工は、ゲルで被覆されていない結晶に対しても行うことができる。このレーザー光加工によれば、密封環境下で非接触加工を行うことができる。さらに、光エネルギーで分子結合を切断するため、周辺部分に熱拡散せずに加工を行うことができる。特に、フェムト秒レーザーは、集光点付近の例えば数μmの部分でのみ光エネルギー吸収が起こるため、精密な三次元加工等が可能である。しかしながら、液中に存在しゲルで被覆されていない結晶をレーザー光で加工した場合、結晶がゲルで固定されておらず動いてしまうために、正確な加工がしにくい場合がある。また、結晶がゲルで保護されていないために損傷してしまうおそれがある。さらに、加工の際のデブリ(切りくずや結晶の破片など)が拡散して結晶表面に再付着し、多結晶化等を引き起こしてしまうおそれもある。しかし、レーザー光加工に用いる結晶が、ゲルで被覆された被覆結晶(ゲル被覆結晶)であれば、これらの問題を解決することができる。一方、ゲル被覆結晶にレーザー光を用いて加工すれば、物理的手段による加工よりも、結晶の加工や取出しを簡便に行うことができ、ゲル被覆が加工の妨げになりにくいという利点がある。このように、ゲル被覆結晶のレーザー光加工であれば、ゲル被覆結晶とレーザー光加工との双方の課題を補うことができるのである。
[実施例29:被覆結晶を種結晶として用いた成長結晶製造]
実施例12の結晶化スクリーニングにおいて製造した、アガロースゲルで被覆されたリゾチーム結晶(アガロース−III濃度1.0質量%)の一部を、前述のフェムト秒レーザーにより切り出して種結晶とした。この種結晶を、塩化ナトリウム3質量%およびリゾチーム20mg/mLを含む水溶液中に入れ、室温で60日間静置して結晶を成長させ、本発明の成長結晶製造方法を実施した。図38の写真に、その様子を示す。左図は、実施例12のゲル被覆結晶であり、中図は、その一部をフェムト秒レーザー加工で切り出した種結晶(加工結晶)であり、右図は、室温で60日間成長させた後の成長結晶である。図示の通り、溶液中での成長により、種結晶よりもはるかに大きな、径が約1mmにも達する大きな結晶が得られた。このような大きな結晶は、種々の用途に用いることができ、例えば、中性子線結晶構造解析等に向く。
[実施例30:被覆結晶を種結晶として用いた成長結晶製造]
実施例27の結晶化スクリーニングにおいて製造した、メビオールジェルで被覆されたリゾチーム結晶(メビオールジェル濃度5.0質量%)の一部を、前述のフェムト秒レーザーにより切り出して種結晶とした。この種結晶を、塩化ナトリウム3質量%およびリゾチーム20mg/mLを含む水溶液中に入れ、室温で4日間静置して結晶を成長させ、本発明の成長結晶製造方法を実施した。図39の写真に、その様子を示す。左図は、実施例27のゲル被覆結晶であり、中図は、その一部をフェムト秒レーザー加工で切り出した種結晶(加工結晶)であり、右図は、室温で4日間成長させた後の成長結晶である。図示の通り、溶液中での成長により、種結晶よりもはるかに大きな、径が約0.5mmにも達する大きな結晶が得られた。このような大きな結晶は、実施例29でも述べた通り、種々の用途に用いることができ、例えば、中性子線結晶構造解析等に向く。
[実施例31:遠心分離による濃度勾配を用いた結晶化スクリーニング]
遠心分離機を用い、遠心分離チューブ内部の上部と下部とで沈殿剤(沈殿化剤)濃度に勾配を形成することで、結晶化スクリーニングを行った。以下、図40を用いて具体的に説明する。
すなわち、まず、遠心分離チューブ405(BD社製、商品名 BD Falcon Cell Culture Inserts)を準備した。この遠心分離チューブは、底部にPET製の半透膜(透析膜)が貼られており、前記半透膜は、固形物は通さずに、一定の大きさ以下の粒子のみを通す。次に、この遠心分離チューブ405内部に、2.0質量%アガロース水溶液(アガロースの種類は、Seaplaque)を650μL入れ、ゲル化させた。さらにそのゲルの上面に、リゾチーム50mg/mL、塩化ナトリウム4.0質量%、0.1M 酢酸ナトリウム pH4.5を含む水溶液650μLを注いだ。これを、遠心分離機器(久保田商事株式会社社製、商品名 Plate Spin)を用いて、20℃において20,000rpmで15時間遠心分離し、前記ゲル中にリゾチーム溶液を均一に拡散させた。
一方、遠心分離チューブ405よりも太く底部が閉じられた円筒容器406中に、沈殿化剤(4.0質量%塩化ナトリウム水溶液)1000μLを入れた。さらにその中に、前記ゲルを含んだ遠心分離チューブ405を入れた。そのまま20℃で2日間静置すると、遠心分離チューブ405内部には、底部のPET膜を通じて徐々に沈殿化剤が浸透し、下部では沈殿化剤濃度が高く、上部では沈殿化剤濃度が低くなり、前記ゲル中にリゾチーム結晶が析出した。このようにして、前記ゲル中で結晶を析出させてリゾチーム結晶を製造した。
結晶製造(析出)後の遠心分離チューブ405内におけるゲル内部を、実体顕微鏡で観察した。撮影は、遠心分離チューブ405(カップ)内部の下部(PET膜(メンブレン)側)から上部にかけて、複数の異なる角度から行った。図41に、その写真を示す。図示の通り、図41上部は、遠心分離チューブ405(カップ)内部の上部を示し、図41下部は、遠心分離チューブ405(カップ)内部の下部(PET膜(メンブレン)側)を示す。同図から分かる通り、沈殿化剤濃度が高いカップ下部(メンブレン側)では析出した結晶の個数が多かった。逆に、沈殿化剤濃度が低いカップ上部では、析出した結晶の個数が少なかった。すなわち、遠心分離を用いて、遠心分離容器内部の上部と下部とで沈殿化剤の濃度勾配を形成し、結晶化条件のスクリーニングを行うことができた。なお、この実施例は、沈殿化剤の濃度勾配を利用した結晶化条件のスクリーニングであるが、同様にタンパク質濃度勾配を形成することによる結晶化条件のスクリーニングも簡便に行うことができる。タンパク質以外の生体物質に対しても同様である。
以上の通り、本発明の結晶製造方法によれば、溶液中から結晶を析出させるよりも、前記生体物質の結晶を簡便に製造することが可能である。また、本発明の凍結結晶製造方法によれば、前記結晶が凍結による損傷を受けにくい。さらに、本発明の成長結晶製造方法によれば、前記ゲルで被覆された被覆結晶を種結晶として結晶を成長させるため、より大きな結晶を得ることができる。また、本発明の結晶は、前記本発明の結晶製造方法、前記本発明の凍結結晶製造方法、または前記本発明の成長結晶製造方法により製造されることで、例えば結晶構造解析等に向いた良好な特性を有する。さらに、本発明の構造解析方法によれば、前記ゲルで被覆された被覆結晶またはそれを凍結した前記凍結結晶を構造解析するため、結晶の取り扱いがしやすいという利点がある。
さらに、本発明の結晶化スクリーニング方法は、本発明の結晶製造方法により簡便に結晶を製造できることで、結晶製造条件をさほど厳密に設定しなくても良いため、スクリーニングをも簡便に行うことができる。さらに、本発明の結晶化スクリーニング装置は、同様の理由により、装置の構成を簡略化することが可能である。
本発明の結晶製造方法および凍結結晶製造方法は、結晶構造解析、特にX線結晶構造解析に有用であり、さらに、結晶化スクリーニング方法にも応用可能である。さらに、本発明の結晶製造方法および凍結結晶製造方法と、それらにより製造された結晶および凍結結晶の用途は、前記の用途に限定されず、あらゆる用途に使用可能である。

Claims (13)

  1. 生体物質を結晶化させる結晶化工程を含む、前記生体物質の結晶の製造方法であって、
    前記結晶化工程において、前記生体物質をゲル中で結晶化させ、前記ゲルを静置して前記結晶を成長させることを特徴とする製造方法。
  2. 前記生体物質が、生体高分子化合物、タンパク質、天然タンパク質、人工タンパク質、ペプチド、天然ペプチド、人工ペプチド、核酸、天然核酸、人工核酸、糖鎖、天然糖鎖、または人工糖鎖である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記結晶化工程に先立ち、
    前記生体物質の溶液を準備する溶液準備工程と、
    前記溶液をゲル化させて前記ゲルを調製するゲル化工程とをさらに含む、
    請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記生体物質溶液がゲル化剤をさらに含む請求項3記載の製造方法。
  5. ゲル化剤が、多糖類、増粘多糖類、タンパク質、および昇温時ゲル化型ゲルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項4記載の製造方法。
  6. ゲル化剤が、アガロース、寒天、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ポリアクリルアミド、昇温時ゲル化型ポリアクリルアミドゲルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項4または5記載の製造方法。
  7. 前記ゲルのゲル強度が100Pa以上である請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 製造される前記結晶が、前記ゲルで被覆された被覆結晶である請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 生体物質の結晶を凍結する凍結工程を含む凍結結晶の製造方法であって、
    請求項8記載の方法により前記被覆結晶を製造する被覆結晶製造工程をさらに含み、
    前記凍結工程において、前記被覆結晶を凍結することを特徴とする製造方法。
  10. 前記凍結工程に先立ち、前記被覆結晶を抗凍結剤に浸漬させる浸漬工程をさらに含む請求項9記載の製造方法。
  11. 種結晶である生体物質結晶を前記生体物質の溶液中でさらに成長させる結晶成長工程を含む、前記生体物質の結晶の製造方法であって、
    前記結晶成長工程において、前記種結晶が、請求項8記載の方法により製造される被覆結晶であることを特徴とする製造方法。
  12. 生体物質の結晶化条件をスクリーニングする結晶化スクリーニング方法であって、
    前記生体物質の結晶を製造する結晶製造工程と、
    前記結晶製造工程における結晶化条件をスクリーニングするスクリーニング工程を含み、
    前記結晶製造工程において、請求項1から8および11のいずれか一項に記載の結晶製造方法または請求項9もしくは10記載の凍結結晶製造方法により前記結晶を製造することを特徴とする結晶化スクリーニング方法。
  13. 請求項12記載の結晶化スクリーニング方法に用いる結晶化スクリーニング装置であって、
    前記生体物質の結晶を製造する結晶製造手段と、
    前記生体物質の結晶化条件をスクリーニングするスクリーニング手段とを含み、
    前記結晶製造手段が、請求項1から8および11のいずれか一項に記載の結晶製造方法または請求項9もしくは10記載の凍結結晶製造方法により前記結晶を製造する手段であり、かつ、前記生体物質をゲル中で結晶化させ、前記ゲルを静置して前記結晶を成長させる結晶化手段を含むことを特徴とする結晶化スクリーニング装置。
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