JP5348681B2 - 水溶性複合体中における、分子間相互作用エネルギーの評価方法 - Google Patents

水溶性複合体中における、分子間相互作用エネルギーの評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、水溶液中で、対象タンパク質と、該タンパク質と分子間相互作用を介して、複合体を形成するリガンド物質とで構成される複合体において、該複合体を形成している、対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する方法に関する。
水溶液中に存在している、対象タンパク質を検出する方法として、該タンパク質に対して、高い結合能を示す物質を利用して、水溶液中に溶解している対象タンパク質を捕獲固定する手法がある。例えば、対象タンパク質に対する特異的な抗体分子を利用して、水溶液中に溶解している対象タンパク質を捕獲固定する手法は、古くから利用されている。
さらに、近年、特定のタンパク質に対して、高い結合能を示す物質として、核酸アプタマー分子を利用して、対象タンパク質を捕獲固定する手法の利用も進められている。核酸アプタマー分子としては、DNAアプタマー分子とRNAアプタマー分子が知られている。特に、個々のタンパク質に対して、「当該タンパク質に特異的なRNAアプタマー分子」が実際に存在するか否かを確認するための「ランダム・スクリーニング」に類する手法として、SELEX(ystematic volution of igands by Exponetial Enrichment)の手法がある。SELEX法では、5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域との間に、ランダムな塩基配列を有する、特定の塩基長(N)部分が挿入されている形態の、「ランダム一本鎖核酸分子ライブラリー」を利用する。すなわち、in vitro転写系を利用する一本鎖RNA分子の作製と、PCR法を利用する、cDNAの作製を利用するため、各プライマーと相補的な塩基配列を有する、前記5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域を具えている。この「ランダム一本鎖核酸分子ライブラリー」中から、対象タンパク質に対して高い結合能を示す「一本鎖RNA分子」を選別している。
対象タンパク質の発揮する生理学的な機能は、核酸との結合性を必要としていない場合であっても、SELEX法を適用することによって、相当の頻度で、高い結合能を示すRNAアプタマー分子が選別される。また、対象タンパク質の発揮する生理学的な機能は、核酸との結合性を必要とする場合、選別されるRNAアプタマー分子が、該タンパク質の核酸結合部位に結合していることも少なくない。例えば、転写因子タンパク質は、目的の遺伝子DNAと結合するが、このDNA結合型タンパク質である転写因子タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の一例として、NF−κB/RNAアプタマー分子の複合体のX線結晶構造解析の結果が報告されている(非特許文献1)。
対象タンパク質上における、RNAアプタマー分子の結合部位の特定を目的として、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の結晶構造解析も行われている。具体的には、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体のX線結晶構造解析によって、複合体を形成している、対象タンパク質とRNAアプタマー分子を構成する原子の座標が特定されている。
X線結晶構造解析では、水素原子上の電子密度は、技術的に特定困難であり、水素原子の座標は特定されない。また、結晶中においても、回転異性に起因して、複数の配向が共存している原子団に関しては、該原子団を構成する原子上の電子密度の分布は、各配向の存在比率に依存する加重平均として、算出される。その結果、複数の配向が共存している原子団に関して、電子密度の分布のピーク位置の特定が困難な場合が多い。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の結晶は、相当量の水分子を含んでいる。該複合体の結晶中に含有されている、水分子のうち、相当数は、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に対して、複数の相対的な配置を採ることが可能である。これら複数の相対的な配置を採ることが可能な水分子では、該水分子の酸素原子上の電子に由来する電子密度の分布は、やはり、複数の相対的な配置の存在比率に依存する加重平均として、算出される。その結果、複数の配向が共存している原子団に関して、電子密度の分布のピーク位置の特定が困難な場合が多い。一方、該複合体の結晶中に含有されている、水分子のうち、一部は、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に対して、特定の相対的な配置を採っている。この特定の相対的な配置を採っている水分子では、該水分子の酸素原子上の電子に由来する電子密度の分布は、そのピーク位置の特定が可能である。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体のX線結晶構造解析では、複合体を形成している、対象タンパク質とRNAアプタマー分子を構成する原子の座標に加えて、該複合体に対して、特定の相対的な配置を採っている、水分子の酸素原子の座標も特定される。X線結晶構造解析により決定される、複合体を形成している、対象タンパク質とRNAアプタマー分子を構成する原子の座標に基づき、該対象タンパク質上における、RNAアプタマー分子の結合部位が特定されている。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体は、一種の分子間化合物であり、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に解離させることが可能であり、解離平衡状態となっている。例えば、表面プラズモン共鳴装置を利用して、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)を測定し、平衡解離定数:KD(M)は、KD=kd/kaとして、算定されている。当然、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)の安定性は、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の間の分子間相互作用に依存する。具体的には、解離平衡過程では、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)から、過渡的な中間状態を経て、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に解離する。その際、複合体(分子間化合物)から、過渡的な中間状態に達する過程で、エネルギー変化:ΔEがある。一般に、このエネルギー変化:ΔEが大きいほど、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)の安定性は高くなっている。すなわち、解離平衡過程では、平衡解離定数:KD(M)は、exp(−ΔE/kT)という温度Tに対する依存性を示す。
塩基長が15〜60程度の一本鎖RNA分子は、その塩基配列によっては、分子内で、相補的な塩基間;G−C、A−Uの塩基対によって、部分的に二本鎖状の構造を構成し、全体として、三次元構造を構成することもある。例えば、かかる分子内における、部分的に二本鎖状の構造形成に伴い、全体として、三次元構造を構成する、天然の一本鎖RNA分子の代表例として、t−RNA分子を挙げることができる。その他、各種のmRNA分子においても、分子内で、部分的に二本鎖状の構造形成が起こり、さらに、全体として、三次元構造を構成する可能性を示唆する報告がなされている。各種のリボザイムも、一本鎖RNA分子であり、分子内で、部分的に二本鎖状の構造形成が起こり、さらに、全体として、三次元構造を構成することで、その酵素活性を発揮している。
一本鎖RNA分子である、RNAアプタマー分子も、一般に、部分的に二本鎖状の構造を構成し、全体として、三次元構造を構成している。対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)中でも、RNAアプタマー分子は、全体としては、その本来の三次元構造を保持している。
上記のRNAアプタマー分子のように、対象タンパク質と分子間相互作用を介して、複合体を形成する物質は、該対象タンパク質に対するリガンド物質と見做すことができる。リガンド物質は、対象タンパク質の酵素活性発揮の対象である基質物質と異なり、対象タンパク質の酵素機能によって、他の物質への変化することはない。対象タンパク質とリガンド物質の複合体は、水溶液中に共存する、自由な対象タンパク質とリガンド物質に対して、解離平衡状態となっている。すなわち、一旦、形成された対象タンパク質とリガンド物質の複合体を、対象タンパク質とリガンド物質に解離させることが可能であり、この複合体の形成過程と、複合体の解離過程とは、可逆的な過程であり、熱力学的な平衡関係を満足している。
Biochemistry, Vol.38, p.3168-3174 (1999)
水溶液中において、解離平衡状態にある、対象タンパク質とリガンド物質の複合体の安定性を評価する実験的な手法としては、表面プラズモン共鳴装置を利用して、複合体の解離過程の速度定数:kd(s-1)を測定する方法がある。しかしながら、複合体の解離過程の速度定数:kd(s-1)の温度依存性に基づき、複合体形成している際の、対象タンパク質とリガンド物質の間の結合エネルギー:ΔEP/L-bindingを推定することは、困難である。
そのため、水溶液中において、複合体形成している際の、対象タンパク質とリガンド物質の間の結合エネルギー:ΔEP/L-bindingに代えて、水溶液中において、複合体形成している際の、対象タンパク質とリガンド物質の間の分子間相互作用エネルギー:EP/L-aqua.を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算により推定する方法が、提案されている。
例えば、対象タンパク質とリガンド物質の複合体が水溶性である場合、水溶液中において、該複合体の周囲には、溶媒の水分子で構成されるゲージ構造が形成され、水溶液中に浮遊する状態となっている。すなわち、水溶液中に溶解している、対象タンパク質とリガンド物質の複合体は、この複合体の周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造も含めた、多分子で構成される凝集体と見做せる。
しかし、水溶液中において、対象タンパク質とリガンド物質の複合体の周囲を取り囲んでいる、水分子で構成されるゲージ構造の詳細は、十分には解明されていないのが現状である。実際に、対象タンパク質自体も水溶液中では、その周囲を取り囲むように、水分子で構成されるゲージ構造が存在しているが、そのケージ構造ですら、十分には解明されていないのが現状である。
水溶液中において、複合体形成している際の、対象タンパク質とリガンド物質の間の分子間相互作用エネルギー:EP/L-aqua.をより高い確度で推定する上では、その複合体の周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造の寄与を考慮に入れて、対象タンパク質とリガンド物質の間の分子間相互作用エネルギー:EP/L-aqua.を推定する必要性がある。
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、水溶液中において、複合体形成している際の、対象タンパク質とリガンド物質の間の分子間相互作用エネルギー:EP/L-aqua.を推定する際、その複合体の周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造の寄与を考慮に入れて、対象タンパク質とリガンド物質の間の分子間相互作用エネルギー:EP/L-aqua.を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算により推定する方法を提供することにある。特には、リガンド物質が、ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質、あるいは、一本鎖RNA分子により構成される、RNA型リガンド物質である際、その複合体の周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造の寄与を考慮に入れて、対象タンパク質とリガンド物質の間の分子間相互作用エネルギー:EP/L-aqua.を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算により推定する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、まず、水溶液中における、対象タンパク質とリガンド物質の複合体の安定性に寄与する分子間相互作用に関して、検討を行った。
まず、対象タンパク質自体は、水溶液中に溶解している際、その周囲を取り囲むように、水分子で構成されるゲージ構造が形成されている。また、水溶性のリガンド物質も、水溶液中に溶解している際、その周囲を取り囲むように、水分子で構成されるゲージ構造が形成されている。複合体を形成する過程では、対象タンパク質、リガンド物質それぞれの周囲を取り囲んでいる、水分子で構成されるゲージ構造の一部が取り除かれ、対象タンパク質上の結合部位に、リガンド物質中の結合に関与する領域が近接する。
一般に、水溶性のタンパク質の溶解度は、温度の上昇とともに低下し、また、低い濃度では、塩溶効果が観測されるが、濃度が増すと、塩析を起すことなど、水溶性のタンパク質は、水溶液中では、「非電解質」に特徴的な性質を示す。この特徴を考慮すると、水溶性タンパク質の表面には、相当数の塩基性原子団、酸性原子団が存在しているが、その大半は、実質的にイオン化していない状態であると見做すことができる。すなわち、pHが7前後の水溶液中では、溶解しているタンパク質は、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度であり、その結果、前述の「非電解質」に特徴的な性質を示すと理解される。
一方、ペプチド鎖で構成される、水溶性のペプチド性リガンド物質に関しても、pHが7前後の水溶液中では、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度となっていると推定される。従って、ペプチド鎖で構成される、水溶性のペプチド性リガンド物質も、タンパク質と同様に、前述の「非電解質」に特徴的な性質を示す。
また、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質も、一般的に、その溶解度は、温度の上昇とともに僅かに低下し、また、濃度が増すと、塩析を起す。この「非電解質」に特徴的な性質を考慮すると、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質において、それを構成するヌクレオチドの塩基成分、ならびに、主鎖を構成する3’,5’−ホスホジエステル結合の大半は、実質的にはイオン化していない状態であると、推定される。実際、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質は、しばしば、部分的に二本鎖構造を構成しており、少なくとも、ヌクレオチドの塩基成分の大半は、イオン化していないと理解される。また、3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHのpkaは、8以上と推定され、pHが7前後の水溶液中では、かかる部位の酸解離は、実質的に生じていないと推定される。一方、一本鎖RNA分子の5’−末端のリン酸エステル構造:−O−PO32は、pHが7前後の水溶液中では、大半は、−O−PO3-であり、極く一部は、−O−PO3 2-まで酸解離した状態と推定される。従って、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質も、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度であり、その結果、前述の「非電解質」に特徴的な性質を示すと理解される。
実際、対象タンパク質と水溶性のペプチド性リガンド物質との複合体のX線結晶構造解析の結果では、対象タンパク質上の結合部位は、疎水性に富む領域である事例が多数報告されている。また、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質、例えば、RNAアプタマー分子と対象タンパク質との複合体のX線結晶構造解析の結果においても、対象タンパク質上の結合部位は、疎水性に富む領域である事例が少なくない。
対象タンパク質とリガンド物質の複合体は、各種の分子間相互作用に起因する、非共有結合的な結合によって形成されている。その際、所謂、疎水結合の寄与も、考慮することが必要である。疎水結合では、その結合部位は、疎水性部分同士が近接した状態となる。実際には、極性溶媒である水分子は、疎水性部分から比較的に容易に離脱する結果、疎水性部分同士が近接し、極性溶媒で構成される極性液相から排除される状態が、疎水結合の形成過程である。結果的に、形成される複合体の周囲は、極性溶媒である水分子で構成される極性液相で取り囲まれ、その際、水分子で構成される極性液相は、水分子相互の結合力(水素結合)によって、ケージ構造を構成した状態となる。
換言するならば、該疎水結合の寄与も、考慮する際には、水溶液中の対象タンパク質とリガンド物質の複合体は、この複合体の周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造も含めた、多分子で構成される凝集体として取り扱う必要があることを見出した。
この複合体の周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造自体は、複合体を構成している、対象タンパク質とリガンド物質の表面に接する領域では、その水分子は、対象タンパク質とリガンド物質とも、分子間相互作用している。従って、複合体の周囲に形成される、ゲージ構造を構成する水分子の集団と、複合体を構成している、対象タンパク質、リガンド物質との間の分子間相互作用を考慮に入れる必要があることを見出した。
次に、対象タンパク質とリガンド物質で構成される複合体の周囲に形成される、ゲージ構造を構成する水分子の集団として、どの程度の範囲まで、考慮する必要があるかを検討した。
複合体を構成している、対象タンパク質、リガンド物質と、その周囲を取り囲むゲージ構造を構成する水分子の集団が接する「界面」では、水分子と、対象タンパク質、リガンド物質とは、水素結合可能な距離となっていると推定される。一方、ゲージ構造を構成する水分子の集団では、前記の対象タンパク質、リガンド物質との「界面」を構成する水分子の層に加えて、この「界面」上の水分子相互を連結する、第二の水分子の層が存在していると判断される。すなわち、複合体との「界面」を構成している、第一の水分子の層と、該第一の水分子の層と、水素結合可能な範囲に位置している、第二の水分子の層とで、複合体表面を取り囲むケージ構造の大枠は、構成されていると理解される。
具体的には、少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上であり、前記の第二の水分子の層は、複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在しているはずである。第一の水分子の層は、複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、3・5Å以内に存在している際、該第一の水分子の層の水分子と水素結合可能な距離にある、第二の水分子の層の水分子の酸素原子は、複合体の表面から、6Å以内に位置すると判断される。従って、複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在している水分子の集団を、ゲージ構造を構成する水分子の集団と見做すことが可能であることを見出した。
従って、水溶液中に存在する、対象タンパク質とリガンド物質の複合体に関して、該複合体と、この複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在している水分子の集団とで構成される、凝集体として取り扱う近似を採用することで、上記の疎水結合の寄与を考慮することが可能であることを見出した。
上記の知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
本発明にかかる、水溶性複合体中における、対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーのフラグメント分子軌道法を適用した評価方法は、
水溶液中の、対象タンパク質とリガンド物質とで構成される、水溶性複合体中における、該対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、評価を行う方法であって、
該評価方法は、下記の工程(i)〜工程(vi)を含んでいる:
工程(i)
前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体と、
前記水溶性複合体を取り囲むように、該水溶性複合体の表面から6Å以内に存在している水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}によって構成される凝集体について、
該凝集体を構成する、対象タンパク質:P、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標を特定する;
工程(ii)
工程(i)で特定される、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lの原子座標に基づき、
該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間における直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;
工程(iii)
工程(i)で特定される、対象タンパク質:P、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標に基づき、
該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-wiを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、
該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Wを、前記EP-wiの和;EP-W=Σ(EP-wi)と推定する;
工程(iv)
工程(i)で特定される、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標に基づき、
該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-wiを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、
該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-Wを、前記EL-wiの和;EL-W=Σ(EL-wi)と推定する;
工程(v)
前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体と、前記水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}によって構成される凝集体中における、
前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/Wを、工程(ii)で推定したEP-L、工程(iii)で推定したEP-W、工程(iv)で推定したEL-Wの和;EP-L/W=EP-L+EP-W+EL-Wと推定する;
水溶液中の、対象タンパク質とリガンド物質とで構成される、水溶性複合体中における、該対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/aqua.を、上記工程(i)〜工程(v)によって、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定される、EP-L/Wを用いて、EP-L/aqua.=EP-L/Wと評価する
ことを特徴とする、水溶性複合体中における、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギーのフラグメント分子軌道法を適用した評価方法である。
上記の本発明にかかる評価方法では、
前記リガンド物質:Lは、ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質である形態;
前記リガンド物質:Lは、一本鎖RNA分子により構成される、RNA型リガンド物質である形態;あるいは、
前記リガンド物質:Lは、低分子リガンドである形態
のいずれに対しても、好適に適用できる。
なお、前記ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質は、タンパク質である形態も含まれる。
また、
工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに、
工程(iii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。特には、前記対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択することが望ましい。
一方、前記リガンド物質:Lは、ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質である形態では、
工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに、
工程(iv)において、前記相互作用エネルギー:EL-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質に関して、該ペプチド鎖を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。特には、前記ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質に関して、該ペプチド鎖を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択することが望ましい。
前記リガンド物質:Lは、一本鎖RNA分子により構成される、RNA型リガンド物質である形態では、
工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに、
工程(iv)において、前記相互作用エネルギー:EL-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
一本鎖RNA分子により構成される、RNA型リガンド物質に関して、該一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択することが好ましい。
本発明にかかる評価方法では、
工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;
工程(iii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに
工程(iv)において、前記相互作用エネルギー:EL-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
該フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用することができる
さらに、
前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択することができる。
本発明にかかる評価方法では、水溶液中に存在する、対象タンパク質とリガンド物質の複合体に関して、複合体を形成した際の対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーを評価する際、疎水結合の寄与を十分に考慮に入れた、より高い信頼性の評価を行うことができる。
本発明にかかる、水溶性複合体中における、対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーのフラグメント分子軌道法を適用した評価方法について、以下に、より詳しく説明する。
本発明は、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される複合体は、水溶性複合体であり、また、対象タンパク質:P自体、リガンド物質:L自体も、水溶性である系を対象としている。具体的には、水溶液中において、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体は、水溶液中に共存する、対象タンパク質:P自体、リガンド物質:L自体と解離平衡状態にある系が、本発明の対象である。
その水溶液中の対象タンパク質自体、リガンド物質:L自体は、その周囲を取り囲むように水分子からなるケージ構造が形成された状態で、水溶液中に溶解している。また、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体も、該複合体の周囲を取り囲むように水分子からなるケージ構造が形成された状態で、水溶液中に溶解している。
その際、解離平衡は、その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、対象タンパク質:Paqua.、リガンド物質:Laqua.と、その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、複合体:P/Laqua.とが、可逆的に、複合体の形成と複合体の解離を行う平衡状態を意味している。
その複合体の形成過程:Paqua.+Laqua.→P/Laqua.では、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの結合部位を覆っていた水分子が離脱し、該結合部位においては、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lが直接接触する形態となる。形成される水溶性複合体P/Laqua.は、最終的に、該複合体の周囲に水分子からなるケージ構造が形成され、全体として、複合体:P/Lと、その周囲を取り囲むように形成される、水分子からなるケージ構造とからなる、多分子で構成される凝集体と見做すことが可能である。前記結合部位の周囲の領域では、該ケージ構造を構成する水分子の一部は、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの双方に接触している状態となっていると、推断できる。
一方、複合体の解離過程:P/Laqua.→Paqua.+Laqua.では、該複合体の周囲を取り囲むように形成されていた水分子からなるケージ構造が、少なくとも、前記結合部位の周囲の領域では、解消され、結合部位での対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの解離が進行すると考えられる。最終的に、解離された対象タンパク質:Pと、リガンド物質:Lの結合部位を再び、水分子が覆って、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの周囲には、それぞれ、水分子からなるケージ構造が形成される。勿論、解離された対象タンパク質:Pと、リガンド物質:Lとの間においては、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの双方に接触している状態の水分子は存在していないと、推断できる。
解離平衡状態では、その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、対象タンパク質:Paqua.の濃度[Paqua.]、リガンド物質:Laqua.の濃度[Laqua.]と、その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、複合体:P/Laqua.の濃度と[P/Laqua.]は、その平衡解離定数:KD(M)と、KD=[Paqua.]・[Laqua.]/[P/Laqua.]の関係を満たしている。
上記の複合体の形成過程、複合体の解離過程では、その過渡的な中間状態として、少なくとも、前記結合部位の周囲の領域では、水分子からなるケージ構造が構成されていない状態で、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとがある程度近接しているが、分子間相互作用は実質的に存在していない状態が想定される。この過渡的な中間状態:(P:L)intermidiateでも、結合部位とその周囲の領域を除くと、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの表面の相当部分は、水分子が被覆した状態となっていると、推断される。
従って、複合体の形成過程、複合体の解離過程は、始状態:その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、対象タンパク質:Paqua.、リガンド物質:Laqua.と、終状態:その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、複合体:P/Laqua.との間に存在する、前記過渡的な中間状態:(P:L)intermidiateで表記される、ポテンシャルの山を越える過程と理解される。すなわち、終状態:その周囲に水分子からなるケージ構造が形成されている、複合体:P/Laqua.の安定性を評価する上では、終状態と始状態との間のエネルギー差ではなく、終状態と過渡的な中間状態とのエネルギー差に着目すべきことが理解される。
本発明の評価方法は、前記の終状態と過渡的な中間状態とのエネルギー差に相当する、水溶性複合体中における、対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーを高い近似で推定する方法に相当している。
まず、水溶液中に溶解している、対象タンパク質:Paqua.は、その周囲を取り囲むように、水分子で構成されるゲージ構造が形成されている。また、水溶液中に溶解している、水溶性のリガンド物質:Laqua.も、その周囲を取り囲むように、水分子で構成されるゲージ構造が形成されている。複合体を形成する過程では、対象タンパク質:Paqua.、リガンド物質:Laqua.それぞれの周囲を取り囲んでいる、水分子で構成されるゲージ構造の一部が取り除かれ、対象タンパク質上の結合部位に、リガンド物質中の結合に関与する領域が近接する。
本発明は、リガンド物質:Lは、水溶性物質であり、対象タンパク質:Pと該リガンド物質:Lとで構成される複合体は、水溶性複合体であり、解離平衡を達成するものであれば、種々の物質に適用できる。具体的には、リガンド物質:Lとして、種々の有機物質、例えば、水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptide、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNA、あるいは、所謂、水溶性の低分子リガンド:Lsmall moleculeなどを選択することができる。
水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideには、各種レセプタータンパク質に結合される、リガンド・タンパク質のような、タンパク質の形態;あるいは、環状構造を有する、環状ペプチド型リガンドの形態も含まれている。
水溶性の低分子リガンド:Lsmall moleculeには、各種レセプタータンパク質に結合される、比較的に分子量の小さなリガンド分子が含まれる。
一般に、水溶性のタンパク質:Pの溶解度は、温度の上昇とともに低下し、また、低い濃度では、塩溶効果が観測されるが、濃度が増すと、塩析を起すことなど、水溶性のタンパク質:Pは、水溶液中では、「非電解質」に特徴的な性質を示す。この特徴を考慮すると、水溶性タンパク質:Pの表面には、相当数の塩基性原子団、酸性原子団が存在しているが、その大半は、実質的にイオン化していない状態であると見做すことができる。すなわち、pHが7前後の水溶液中では、溶解しているタンパク質:Paqua.は、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度であり、その結果、前述の「非電解質」に特徴的な性質を示すと理解される。
一方、ペプチド鎖で構成される、水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideに関しても、pHが7前後の水溶液中では、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度となっていると推定される。従って、水溶液中では、ペプチド鎖で構成される、水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptide- aqua.も、タンパク質:Paqua.と同様に、前述の「非電解質」に特徴的な性質を示す。
また、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNAも、一般的に、その溶解度は、温度の上昇とともに僅かに低下し、また、濃度が増すと、塩析を起す。この「非電解質」に特徴的な性質を考慮すると、水溶液中では、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNA-aqua.において、それを構成するヌクレオチドの塩基成分、ならびに、主鎖を構成する3’,5’−ホスホジエステル結合の大半は、実質的にはイオン化していない状態であると、推定される。実際、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNA-aqua.は、しばしば、部分的に二本鎖構造を構成しており、少なくとも、ヌクレオチドの塩基成分の大半は、イオン化していないと理解される。また、3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHのpkaは、8以上と推定され、pHが7前後の水溶液中では、かかる部位の酸解離は、実質的に生じていないと推定される。一方、一本鎖RNA分子の5’−末端のリン酸エステル構造:−O−PO32は、pHが7前後の水溶液中では、大半は、−O−PO3-であり、極く一部は、−O−PO3 2-まで酸解離した状態と推定される。従って、水溶液中では、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNA-aqua.も、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度であり、その結果、前述の「非電解質」に特徴的な性質を示すと理解される。
実際、対象タンパク質:Pと水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideとの複合体:P/LのX線結晶構造解析の結果では、対象タンパク質:P上の結合部位は、疎水性に富む領域である事例が多数報告されている。また、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNA、例えば、RNAアプタマー分子:APRNAと対象タンパク質:Pとの複合体のX線結晶構造解析の結果においても、対象タンパク質:P上の結合部位は、疎水性に富む領域である事例が少なくない。
対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの複合体は、各種の分子間相互作用に起因する、非共有結合的な結合によって形成されている。その際、所謂、疎水結合の寄与も、考慮することが必要である。疎水結合では、その結合部位は、疎水性部分同士が近接した状態となる。実際には、極性溶媒である水分子は、疎水性部分から比較的に容易に離脱する結果、疎水性部分同士が近接し、極性溶媒で構成される極性液相から排除される状態が、疎水結合の形成過程である。結果的に、形成される複合体の周囲は、極性溶媒である水分子で構成される極性液相で取り囲まれ、その際、水分子で構成される極性液相は、水分子相互の結合力(水素結合)によって、ケージ構造を構成した状態となる。
換言するならば、該疎水結合の寄与も、考慮する際には、水溶液中の対象タンパク質とリガンド物質の複合体:P/Laqua.は、該複合体:P/Lの周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造も含めた、多分子で構成される凝集体として取り扱う必要がある。
水溶液中の対象タンパク質とリガンド物質の複合体:P/Laqua.では、その複合体:P/Lの周囲に形成される、水分子で構成されるゲージ構造自体は、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの表面に接する領域では、その水分子は、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとも、分子間相互作用している。従って、複合体:P/Lの周囲に形成される、ゲージ構造を構成する水分子の集団と、複合体を構成している、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lとの間の分子間相互作用を考慮に入れる必要がある。
本発明では、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される複合体:P/Lの周囲に形成される、ゲージ構造を構成する水分子の集団として、該複合体:P/Lの表面を覆っている水分子の層として、二層の範囲までを考慮する。
まず、複合体:P/Lを構成している、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lと、その周囲を取り囲むゲージ構造を構成する水分子の集団が接する「界面」では、水分子と、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lとは、水素結合可能な距離となっていると推定される。一方、ゲージ構造を構成する水分子の集団では、前記の対象タンパク質:P、リガンド物質:Lとの「界面」を構成する水分子の層に加えて、この「界面」上の水分子相互を連結する、第二の水分子の層が存在していると判断される。すなわち、複合体:P/Lとの「界面」を構成している、第一の水分子の層と、該第一の水分子の層と、水素結合可能な範囲に位置している、第二の水分子の層とで、複合体表面を取り囲むケージ構造の大枠は、構成されていると理解される。
具体的には、少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上であり、前記の第二の水分子の層は、複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在しているはずである。従って、複合体:P/Lの表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在している水分子の集団を、ゲージ構造を構成する水分子の集団と見做すことが可能である。
すなわち、本発明では、複合体:P/Lの表面から、3.5Å以内に存在している第一の水分子の層と、該第一の水分子の層を構成する水分子と水素結合可能な距離に位置する、第二の水分子の層とからなる水分子の集団を考慮する。この第一の水分子の層と第二の水分子の層で構成される水分子の集団は、高い近似の精度で、複合体:P/Lの表面から、6Å以内に存在している水分子の集団として、取り扱うことが可能である。
対象タンパク質:Pの表面に露呈している、酸性アミノ酸残基の側鎖のカルボキシル基(−COOH)に対しては、水分子が水素結合している、推断される。例えば、−COOH…OH2…OH2 ⇔ −COO-…(HOH2+…OH2 ⇔ −COO-…HOH…(HOH2+ のように、水素結合を介して、連結される、第一の水分子の層と第二の水分子の層を利用して、該カルボキシル基(−COOH)が酸解離した場合、プロトン・トンネリングの機構によって、プロトンは輸送される。また、その逆の過程を経て、カルボキシル基(−COOH)の再生がなされる。その際、再生されるカルボキシル基(−COOH)では、プロトンが再結合する酸素原子の交換が可能であるため、結果的に、カルボキシル基(−COOH)の二つの酸素原子間では、プロトンの交換がなされる。その間、第一の水分子の層と第二の水分子の層自体の構造は、実質的な変化は無く、かかるカルボキシル基(−COOH)の周囲の水分子で構成されるゲージ構造は安定に維持される。
対象タンパク質:Pの表面に露呈している、塩基性アミノ酸残基Lysの側鎖のアミノ基(−NH2)に対しても、水分子が水素結合している、推断される。例えば、−NH2…HOH…HOH ⇔ −+NH3-OH…HOH ⇔ −+NH3…OH2-OH のように、水素結合を介して、連結される、第一の水分子の層と第二の水分子の層を利用して、該アミノ基(−NH2)がプロトンを受容した場合、プロトン・トンネリングの機構によって、プロトンは輸送される。また、その逆の過程を経て、アミノ基(−NH2)の再生がなされる。その際、再生されるアミノ基(−NH2)では、離脱するプロトンは等価であるため、結果的に、アミノ基(−NH2)と水素結合している水分子との間では、プロトンの交換がなされる。その間、第一の水分子の層と第二の水分子の層自体の構造は、実質的な変化は無く、かかるアミノ基(−NH2)の周囲の水分子で構成されるゲージ構造は安定に維持される。
対象タンパク質:Pの表面に露呈している、塩基性アミノ酸残基Argの側鎖のグアニジノ基(−NH−+C(NH22 ⇔ [−N=C(NH22+H+])に対しても、水分子が水素結合している、推断される。この場合も、水素結合を介して、連結される、第一の水分子の層と第二の水分子の層を利用して、プロトンの受容と、プロトンの放出の過程では、プロトン・トンネリングの機構によって、プロトンは輸送される。さらに、その過程においては、3つの窒素原子間において、共役的にプロトンの交換がなされます。その間、第一の水分子の層と第二の水分子の層自体の構造は、実質的な変化は無く、かかるグアニジノ基の周囲の水分子で構成されるゲージ構造は安定に維持される。
対象タンパク質:PのN末端のアミノ基(−NH2)、C末端のカルボキシル基(−COOH)に対しても、同様な水分子が水素結合した構造が形成されていると、推断されます。
すなわち、pHが7前後の水溶液中では、溶解しているタンパク質:Paqua.は、その周囲を覆うように、水分子で形成されるケージ構造が存在しており、酸性原子団と塩基性原子団の間では、プロトン・トンネリングの機構を介して、共役的なプロトンの授受は繰り返されるが、全体としては、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度であると見做せます。
さらには、対象タンパク質:Pが、金属元素を安定に結合しているタンパク質である場合、該金属元素に対して、水分子が配位している場合もある。例えば、Znフィンガー構造を内在するタンパク質では、該タンパク質の翻訳後、Zn2+カチオン種が取り込まれている。該Znフィンガー構造中に安定に結合しているZn2+カチオン種も、強力なキレート剤を作用させると、タンパク質から除去することが可能であることが少なくない。換言すれば、Znフィンガー構造中に安定に結合しているZn2+カチオン種は、水分子が配位しているので、強力なキレート剤が水分子に代えて、Zn2+カチオン種に配位する過程を経て、Zn2+カチオン種の除去がなされる。従って、対象タンパク質:Pが、強力なキレート剤を作用させることで除去可能な金属元素を含む場合、該金属元素は、水分子が配位していると判断できる。このような金属元素に配位している水分子も、ゲージ構造を構成する水分子の集団に含まれている。
水溶液中の対象タンパク質とリガンド物質の複合体:P/Laqua.の全体も、その周囲を覆うように、水分子で形成されるケージ構造が存在しており、酸性原子団と塩基性原子団の間では、プロトン・トンネリングの機構を介して、共役的なプロトンの授受は繰り返されるが、全体としては、実質的に電荷中性な状態となっている、あるいは、全体として、電荷の総和は一価程度であると見做せます。
従って、本発明では、水溶液中に存在する、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの複合体:P/Laqua.に関して、該複合体:P/Lと、この複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在している水分子の集団:W={w1,…,wi…,wn}とで構成される、凝集体として取り扱う近似を採用する。
本発明にかかる評価方法は、下記の工程(i)〜工程(vi)を含んでいる。
工程(i)
前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体と、
前記水溶性複合体を取り囲むように、該水溶性複合体の表面から6Å以内に存在している水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}によって構成される凝集体について、
該凝集体を構成する、対象タンパク質:P、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標を特定する。
工程(i)では、水溶液中における、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの複合体:P/Laqua.中における、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの構造は、基本的に、既に、X線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標を採用する。実際のX線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標は、水素原子以外の原子に関する原子座標は、基本的に全て特定されている。
一方、水素原子に関しては、X線結晶構造解析では、水素原子上の電子密度分布のピーク位置は、原理的に特定できないため、相当数の水素原子の原子座標は、推定された位置となっている。例えば、ペプチド結合(−CO−NH−)の水素原子は、該ペプチド結合は、ケト−エノール互変異性:−CO−NH− ⇔ −C(OH)=N−が可能な平面状の配置を維持すると仮定して、該水素原子の原子座標の推定がなされている。また、アミノ酸残基(−NH−CH(R)−CO−)のα位炭素原子上の水素原子は、該α位炭素原子の電子軌道は、sp3混成軌道であるという前提に基づき、該アミノ酸残基の2面角(φ,ψ)、結合角(ω)に基づき、該水素原子の原子座標の推定がなされている。また、一般に、メチン(HC)構造の水素原子に関しては、同様に、該炭素原子の残る結合の配置に基づき、該水素原子の原子座標の推定がなされている。また、メチレン構造(−CH2−)の炭素原子上の水素原子に関しても、該炭素原子の残る結合の結合角(ω)に基づき、該水素原子の原子座標の推定がなされている。
一方、本来水素結合を形成していない、ヒドロキシル基(−OH)上の水素原子など、回転異性構造を採ることが可能である水素原子に関しては、本質的に、該水素原子の配置に関して、推定はなされていない。これらのX線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標上、その原子座標が合理的に推定されていない水素原子に関しては、例えば、下記の条件下で、その水素原子の原子座標を推定する。
まず、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの複合体:P/Lは、本来、水溶液中に溶解しているものであり、該複合体:P/Lの周囲は、水分子によって被覆された状態となっている。すなわち、該複合体:P/Lの周囲を取り囲むように、水のケージが構成されているはずである。
実際に、X線結晶構造解析において、該複合体:P/Lの周囲において、その酸素原子の位置が特定される水分子も相当数存在しているが、実際に構成されている、水のケージの相当部分は、複数の配置間で擬似的な平衡関係にあり、それらの水分子の酸素原子の原子座標は決定されていない。
そのため、仮想的に、該複合体の周囲を取り囲むように、水分子を配置する形態とする。その際、例えば、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lからなる複合体:P/Lの表面に存在する、塩基性原子団ならびに酸性原子団は、それぞれ、イオン化した状態と仮定する。
具体的には、該複合体P/Lにおいて、その表面に露呈している部分では、対象タンパク質:PのN末端アミノ基、リシン残基の側鎖のアミノ基、ならびに、アルギニン残基の側鎖のグアニジノ基は、プロトンが付加した形状;−NH3 +、−NH−C+(NH22として、取り扱う。また、ヒスチジン残基の側鎖のイミダゾール環のアミノ水素は、τ配置、すなわち、α−アミノ−1H−イミダゾール−4−プロパン酸に相当する配置として、取り扱う。該複合体P/Lにおいて、その表面に露呈している部分では、対象タンパク質:PのC末端カルボキシル基、アスパラギン酸の側鎖のカルボキシル基、ならびに、グルタミン酸の側鎖のカルボキシル基は、プロトンが解離した形状;−COO-として、取り扱う。
また、水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideに関しても、該複合体:P/Lpeptideにおいて、その表面に露呈している部分では、前記の原子団に関して、同様の取り扱いを行う。
一方、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNAに関しては、該複合体:P/LRNAにおいて、その表面に露呈している部分は、下記のように取り扱う。一本鎖RNA分子の主鎖の3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHも、プロトンが解離した形状;>P(O)O-として、取り扱う。なお、一本鎖RNA分子の3’−末端と5’−末端に関しては、一方は、リン酸エステル構造、他方は、ヒドロキシル基となっているが、リン酸エステル構造部分は、プロトンが解離した形状;−O−PO3 2-として、取り扱う。
各ヌクレオチドの塩基に関しては、イオン化していない形状として、取り扱う。分子内において、二重鎖構造を形成している領域では、相補的なヌクレオチドの塩基対が形成されている。それ以外の領域のヌクレオチドの塩基は、イオン化してなく、該塩基の−NH2は、平面形状を示し、その水素原子も、該塩基のヘテロ芳香環と同一平面上に位置する形態とする。
上記の仮定した形状において、アニオン原子団、−COO-と>P(O)O-に対しては、二つの酸素原子は、原則的には、等価として取り扱う。
水溶液中に溶解している、実際のタンパク質では、その表面に存在する塩基性原子団ならびに酸性原子団は、水分子が水素結合しており、その水分子との間で、プロトン交換を行っている。
例えば、ポリアラニン:H2N−(Ala)m−COOHのようなペプチドでは、水溶液に溶解している際、N末端アミノ基とC末端カルボキシル基とは、それぞれ、イオン化して、全体としては、電荷中性な状態の両性イオン(zwitter ion)となっている。同様に、タンパク質も、水溶液に溶解している際、そのN末端アミノ基とC末端カルボキシル基とは、それぞれ、イオン化して、両性イオン(zwitter ion)となっている。一方、タンパク質の表面に露呈している、アミノ酸残基の側鎖の塩基性原子団ならびに酸性原子団は、部分的にしかイオン化していない状態となっている。すなわち、タンパク質全体としては、ほぼ、電荷中性状態として、水溶液中に溶解している。その状態において、タンパク質の表面に露呈している、塩基性原子団ならびに酸性原子団は、イオン化していない状態に対して、水分子が水素結合を形成している形態と実質的には同じ状態である。その際、塩基性原子団ならびに酸性原子団に水素結合している水分子は、全体として、プロトン・トンネリング機構による、プロトン移送が可能な、緩やかなケージ構造を構成している。
このイオン化していない塩基性原子団ならびに酸性原子団に水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造は、塩基性原子団ならびに酸性原子団をイオン化させた状態で、該イオン種に対して、水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造と、共役状態となっている。
また、一本鎖RNA分子においては、その主鎖の3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHは、通常、イオン化していない状態となっている。但し、>P(O)OHに水素結合している水分子との間で、プロトン交換を行うことで、結果的に、>P(O)OHの二つの酸素原子間で、プロトンの交換が行われている。すなわち、>P(O)OHに水素結合している水分子は、全体として、プロトン・トンネリング機構による、プロトン移送が可能な、緩やかなケージ構造を構成している。
このイオン化していない>P(O)OHに水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造は、>P(O)OHをイオン化させた状態で、該イオン種:>P(O)O-に対して、水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造と、共役状態となっている。
従って、上記のタンパク質表面に露呈する塩基性原子団ならびに酸性原子団、ならびに、一本鎖RNA分子の3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHと、末端のリン酸エステル構造に関して、イオン化状態と仮定して、その周囲を取り囲む水分子を配置すると、実際の水溶液中における水分子の配置と、実質的に共役的な配置となっている。すなわち、配置される水分子の酸素原子の座標は、実質的に等価となっている。
ヒスチジン残基の側鎖のイミダゾール環に存在する塩基性窒素原子は、水素結合している水分子とプロトン交換する結果、二つの塩基性窒素原子間における互変異性が生じる。すなわち、イミダゾール環に存在する塩基性窒素原子に水素結合可能な配置で、水分子を配置することで、配置される水分子の酸素原子の座標は、前記の互変異性を考慮したものとなっている。
また、一本鎖RNA分子中、塩基対を構成していない、ヌクレオチドの塩基においても、塩基性窒素原子、オキソ構造の酸素原子の間では、ケト/エノール型の互変異性が生じるが、それぞれ、水素結合している水分子とのプロトン交換として、その互変異性を考慮したものとなっている。
また、リガンド物質:Lが、比較的に分子量の小さなリガンド分子である場合も、該小分子リガンド中に存在している、アニオン性原子団に関しては、イオン化していると仮定する。従って、小分子リガンドが、例えば、ジカルボン酸分子に相当する場合、pH7付近では、二つのカルボキシル基の一方しかイオン化していないが、本発明では、ともにイオン化していると仮定して、その周囲に水分子を配置する。カルボキシル基などのアニオン性原子団の周囲に配置される水分子の酸素原子の位置は、イオン化していない場合と、共役状態となっており、実質的な位置の差違は生じない。さらには、該小分子リガンド中に存在している、カチオン性原子団に関しても、イオン化していると仮定する。
但し、水溶液中において、相互で水素結合を形成していることが判明している、二つカルボキシル基に関しては、酢酸分子の二量体で見出される、−COOH:HOOC−型の水素結合を形成している構造とする。
上記の仮定に従って、複合体:P/Lの周囲に水分子を配置した上で、その水分子の酸素原子の座標を固定した状態で、複合体:P/Lの表面に露呈する各種の原子団との間で立体障害を引き起こさないように、回転異性が可能な水素原子の座標を特定する。その際、例えば、AMBER force fieldなどを利用して、分子力場を考慮して、複合体:P/Lの周囲に配置される水分子の酸素原子の座標、適正は水素原子の座標を特定する。少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上であり、配置される水分子の酸素原子の座標は、複合体:P/Lの周囲に存在する水素原子以外の原子から、前記の距離以内に位置しないように、選択される。
水溶液中において、実際の複合体:P/Lの周囲を取り囲む水分子は、全体として、ケージ構造を構成しており、その際、該ケージ構造は、凡そ、水分子が二層〜三層程度で複合体の周囲に存在する状態に相当している。その点を考慮し、複合体:P/Lの周囲、6Å以内に配置された水分子のみ、水溶液中の対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの複合体:P/Laqua.における相互作用エネルギー:EP-L/aqua.推定計算の際、考慮する。すなわち、上記の水素結合距離の凡そ2倍程度の範囲に酸素原子が位置する水分子は、複合体:P/Lの周囲を取り囲む水分子からなるケージ構造を構成すると推定され、その範囲を考慮していることに相当する。
上記の条件に基づき、前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体を取り囲むように、該水溶性複合体の表面から6Å以内に存在している水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の配置と、その原子座標が特定される。結果的に、水素原子の原子座標の特定もなされ、該凝集体を構成する、対象タンパク質:P、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標の特定がなされる。
工程(i)において、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの構造は、基本的に、既に、X線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標を採用する。結晶構造解析によって、特定されている該複合体:P/Lの原子座標は、例えば、Protein Data Bank(PDB)に登録され、公表されている座標データを利用することができる。なお、自ら、X線結晶構造解析によって、対象となる複合体:P/Lの原子座標を予め特定して、その座標データを利用することもできる。
なお、X線結晶構造解析において、前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される複合体:P/Lの表面から6Å以内に、その酸素原子の原子座標が特定されている水分子に関しては、その酸素原子の原子座標を採用する。
さらに、X線結晶構造解析において、前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される複合体:P/Lに対して、金属元素が結合した状態の構造が決定されている場合もある。その場合、X線結晶構造解析において結合されている金属元素の原子座標を採用する。また、結合されている金属元素は、カチオン種であり、その価数は、報告されている価数とする。該金属カチオン種は、その周囲に適正な配位数となるように、配位子による配位がなされた構造と推定する。
工程(ii)
工程(i)で特定される、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lの原子座標に基づき、
該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間における直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する。
複合体:P/Lと、その周囲を取り囲むように適正に特定された水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}を含む、凝集体の構造において、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lの間における、直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する。この直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lは、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lからなる複合体:P/Lが、真空中に存在していると仮定した場合の、分子間相互作用に起因する相互作用エネルギーに相当している。
フラグメント分子軌道法を適用する際、複合体:P/Lを構成する、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lは、それぞれ、複数のフラグメントに分割する。
フラグメントに分割する際、対象タンパク質:Pに関して、該対象タンパク質:Pを構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。該対象タンパク質:Pを構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択することが好ましい。例えば、フラグメント分割部位を、α位の炭素原子と、そのC末端側のアミド結合−CO−Nとの間のC−C結合、あるいは、α位の炭素原子と、そのC末端側のアミド結合−CO−Nとの間のN−C結合のいずれかに選択することが好ましい。なお、Pro残基に関しては、フラグメント分割部位を、α位の炭素原子と、そのC末端側のアミド結合−CO−Nとの間のC−C結合に選択する。
また、リガンド物質:Lが、水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideである場合、フラグメントに分割する際、該水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideを構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。該水溶性のペプチド性リガンド物質:Lpeptideを構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択することが好ましい。例えば、フラグメント分割部位を、α位の炭素原子と、そのC末端側のアミド結合−CO−Nとの間のC−C結合、あるいは、α位の炭素原子と、そのC末端側のアミド結合−CO−Nとの間のN−C結合のいずれかに選択することが好ましい。なお、Pro残基に関しては、フラグメント分割部位を、α位の炭素原子と、そのC末端側のアミド結合−CO−Nとの間のC−C結合に選択する。
リガンド物質:Lが、一本鎖RNA分子より構成される、RNA型リガンド物質:LRNAである場合、フラグメントに分割する際、該一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチド毎に、少なくとも、一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。さらには、該一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択することがより好ましい。
隣接するヌクレオチドを連結する3’,5’−ホスホジエステル結合に関しては、フラグメント分割の際、D−リボース成分の5’−位の−CH2−と、−O−PO2−O−原子団の間のC−O結合を、フラグメント分割部位として選択することがより好ましい。
該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間における直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lは、対象タンパク質:Pに由来する各フラグメント:FP-jと、リガンド物質:Lに由来する各フラグメント:FL-kとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値:ePj-Lkの総和:ΣePj-Lkとして、数値計算によって求める。
上記のフラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する際、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用することができる。前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択することができる。
具体的には、6−31G基底関数系と採用して、Muller-Plessetの二次摂動法(MP2法)により、電子相関を近似する、MP2/6−31G水準の数値計算を利用することが望ましい。
前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムである、ABINIT−MPは、公表されている。例えば、ABINIT−MPは、http://www.rss.iis.u-tokyo.ac.jp/result/download/ より参照でき、ABINIT−MPプログラム・パッケージは、http://www.fsis.iis.u-tokyo.ac.jp/en/result/software/ において、参照可能である。また、ABINIT−MP Ver. 4.1は、下記のサイト:http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/dl/index.htmlにおいて、参照可能である。
その他、同様の目的に利用可能な、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算に利用可能な、量子化学計算用プログラム・パッケージである、GAMESSも公表されており、http://www.msg.ameslab.gov/GAMESS/GEMESS.html において、参照可能である。
工程(iii)
工程(i)で特定される、対象タンパク質:P、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標に基づき、
該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-wiを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、
該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Wを、前記EP-wiの和;EP-W=Σ(EP-wi)と推定する。
該対象タンパク質:Pと、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-wiは、対象タンパク質:Pに由来する各フラグメント:FP-jと、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値:ePj-Wiの総和:EP-wi=ΣePj-Wiとして、数値計算によって求める。
該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Wを、前記EP-wiの和;EP-W=Σ(EP-wi)と推定する。
推定されるEP-Wは、複合体:P/Lを形成した際、対象タンパク質:Pの表面の覆っている水分子との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギーの寄与を含んでいる。従って、かかる寄与は、複合体:P/Lを形成した際、対象タンパク質:Pの表面に対する水分子の水和エネルギーを評価すると見做すことが可能である。
複合体:P/Lのとの「界面」に位置する、第一の水分子の層に含まれる水分子Wi'は、対象タンパク質:Pに由来する各フラグメント:FP-jの複数と相互作用している場合がある。例えば、複数のフラグメント:FP-jが、第一の水分子の層に含まれる水分子Wi'と水素結合を形成する場合がある。この種の水分子Wi'を介する、複数のフラグメント:FP-j間の連結は、水分子を介する、複数のフラグメント:FP-j間の架橋構造と見做せる。
水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体は、上記のように、複合体:P/Lのとの「界面」に位置する、第一の水分子の層と、第二の水分子の層とを含んでいる。その結果、第二の水分子の層に含まれる水分子Wiと、対象タンパク質:Pに由来する各フラグメント:FP-jと、との間のフラグメント間相互作用エネルギー:ePj-Wiを推定する際には、対象タンパク質:Pに由来する各フラグメント:FP-jと、第二の水分子の層に含まれる水分子Wiとの間に位置する、第一の水分子の層の水分子Wi'を介する相互作用エネルギーも考慮される。
上記のフラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する際、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用することができる。前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択することができる。
具体的には、6−31G基底関数系と採用して、Muller-Plessetの二次摂動法(MP2法)により、電子相関を近似する、MP2/6−31G水準の数値計算を利用することが望ましい。
工程(iv)
工程(i)で特定される、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標に基づき、
該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-wiを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、
該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-Wを、前記EL-wiの和;EL-W=Σ(EL-wi)と推定する。
該リガンド物質:Lと、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-wiは、リガンド物質:Lに由来する各フラグメント:FL-kと、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値:eLk-Wiの総和:EL-wi=ΣeLk-Wiとして、数値計算によって求める。
該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-Wを、前記EL-wiの和;EL-W=Σ(EL-wi)と推定する。
推定されるEL-Wは、複合体:P/Lを形成した際、該リガンド物質:Lの表面の覆っている水分子との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギーの寄与を含んでいる。従って、かかる寄与は、複合体:P/Lを形成した際、リガンド物質:Lの表面に対する水分子の水和エネルギーを評価すると見做すことが可能である。
複合体:P/Lのとの「界面」に位置する、第一の水分子の層に含まれる水分子Wi'は、リガンド物質:Lに由来する各フラグメント:FL-kの複数と相互作用している場合がある。例えば、複数のフラグメント:FL-kが、第一の水分子の層に含まれる水分子Wi'と水素結合を形成する場合がある。この種の水分子Wi'を介する、複数のフラグメント:FL-k間の連結は、水分子を介する、複数のフラグメント:FL-k間の架橋構造と見做せる。
水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体は、上記のように、複合体:P/Lのとの「界面」に位置する、第一の水分子の層と、第二の水分子の層とを含んでいる。その結果、第二の水分子の層に含まれる水分子Wiと、リガンド物質:Lに由来する各フラグメント:FL-kと、との間のフラグメント間相互作用エネルギー:eLk-Wiを推定する際には、リガンド物質:Lに由来する各フラグメント:FL-kと、第二の水分子の層に含まれる水分子Wiとの間に位置する、第一の水分子の層の水分子Wi'を介する相互作用エネルギーも考慮される。
上記のフラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する際、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用することができる。前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択することができる。
具体的には、6−31G基底関数系と採用して、Muller-Plessetの二次摂動法(MP2法)により、電子相関を近似する、MP2/6−31G水準の数値計算を利用することが望ましい。
工程(v)
前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体と、前記水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}によって構成される凝集体中における、
前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/Wを、工程(ii)で推定したEP-L、工程(iii)で推定したEP-W、工程(iv)で推定したEL-Wの和;EP-L/W=EP-L+EP-W+EL-Wと推定する。
前記水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}中には、前記対象タンパク質:Pの表面、リガンド物質:Lの表面の双方から、3.5Å以内に、その酸素原子の原子座標が特定された水分子も含まれている。この前記対象タンパク質:Pの表面、リガンド物質:Lの表面の双方から、水素結合可能な距離に存在している水分子は、対象タンパク質:Pに由来するフラグメント:FP-jと、リガンド物質:Lに由来するフラグメント:FL-kとの間を、水素結合を介して、「架橋」している可能性が高い。工程(iii)で推定したEP-W、工程(iv)で推定したEL-Wの寄与を考慮することによって、対象タンパク質:Pに由来するフラグメント:FP-jと、リガンド物質:Lに由来するフラグメント:FL-kとの間を、水素結合を介して、「架橋」している水分子に因る、相互作用ネルギーも考慮されている。
例えば、水溶液中において、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体は、主として、疎水結合に因って形成されている場合、工程(ii)で推定したEP-Lは、僅かな寄与しかないが、工程(iii)で推定したEP-W、工程(iv)で推定したEL-Wは、大きな寄与を有している。
水溶液中の、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとで構成される、水溶性複合体:P/Laqua.中における、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/aqua.を、上記工程(i)〜工程(v)によって、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定される、EP-L/Wを用いて、EP-L/aqua.=EP-L/Wと評価する。
本発明の評価方法によって、評価される水溶液中の、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとで構成される、水溶性複合体:P/Laqua.中における、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/aqua.は、上述するように、該水溶性複合体:P/Laqua.の解離平衡過程における、過渡的な中間状態と、終状態である水溶性複合体:P/Laqua.とエネルギー差に相当している。
また、水溶性複合体:P/Laqua.中における、該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/aqua.=EP-L/Wと、工程(i)で推定される、直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lとの差は、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとで構成される、複合体:P/Lを取り囲むように形成される、水分子からなるケージ構造に因る寄与を反映している。
特には、疎水結合の寄与を考慮する必要がある場合、本発明の評価方法は、有力な手法となる。勿論、複合体:P/Lの表面全体を覆うように配置される水分子は、水和している水分子に相当しており、複合体:P/L全体の水和による安定化の寄与も評価されている。
なお、本発明の評価方法では、水溶液中における、複合体の構造を基礎として、その周囲に水分子を配置する必要がある。通常、該水溶液中における、複合体の構造として、水溶液中から結晶化させた、該複合体の結晶をX線結晶構造解析することで特定される構造データを利用している。
さらには、対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとからなる複合体の構造が判明している場合、該リガンド物質:Lと類似する構造を有する、リガンド物質類縁体:Lanalogも、対象タンパク質:Pと複合体を形成し、その構造は、本来の対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとからなる複合体と実質的に等しいと推断できる場合がある。このような、対象タンパク質:Pとリガンド物質類縁体:Lanalogからなる複合体に関しては、本来の対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとからなる複合体の構造に基づき、その構造を高い確度で推定することが可能である。その高い確度で推定される構造に基づき、対象タンパク質:Pとリガンド物質類縁体:Lanalogからなる複合体に関しても、同様の手法を適用して、該水溶性複合体:P/Lanalog- aqua.中における、該対象タンパク質:Pとリガンド物質類縁体:Lanalogとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-Lanalog/aqua.の評価を行うことが可能である。
すなわち、本来の対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとからなる複合体:P/Laqua.と、対象タンパク質:Pとリガンド物質類縁体:Lanalogからなる複合体:P/Lanalog- aqua.との間において、分子間相互作用エネルギーの比較を行う際、本発明の評価方法を応用することが可能である。
以下に、さらに、具体的な事例を参照して、本発明の好ましい実施形態について、説明を加える。なお、下記の具体的な事例は、本発明の最適な実施形態の一例ではあるが、本発明は、この事例により例示される形態に限定されるものではない。
(第一の実施態様)
第一の実施態様は、本発明にかかる評価方法を、NF−κB/RNAアプタマー複合体のX線結晶構造解析の結果に基づき、水溶液中で、該複合体を形成する、NF−κBタンパク質/RNAアプタマー間の分子間相互作用エネルギーの評価に適用した事例に相当する。
加えて、該RNAアプタマーから誘導される、各種の修飾RNAアプタマーに関して、NF−κBタンパク質との複合体を形成した際の、NF−κBタンパク質/修飾RNAアプタマー間の分子間相互作用エネルギーを評価し、その比較に利用した事例に相当している。
NF−κB/RNAアプタマー複合体のX線結晶構造解析に基づき、決定された構造の原子座標は、PDB ID:1OOAに公表されている。該NF−κB/RNAアプタマー複合体に関しては、非特許文献1:Biochemistry, Vol.38, p.3168-3174 (1999)に、詳細に開示されている。NF−κBタンパク質は、313アミノ酸残基で構成されており、RNAアプタマー分子は、29塩基長である。該RNAアプタマー分子の塩基配列は、5’−CAUACUUGAAACUGUAAGGUU GGCGUAUG−3’である。
X線結晶構造解析された構造では、NF−κB/RNAアプタマー複合体は、2量体(chain A/C, chain B/D)を構成している。前記2量体化自体は、NF−κBタンパク質間で行われており、各RNAアプタマー分子は、各NF−κBタンパク質とのみ相互作用している形態である。その際、該2量体(chain A/C, chain B/D)は、2回対称性を示している。その点を考慮して、該2量体(chain A/C, chain B/D)のうち、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー複合体の原子座標のみを利用して、本発明の評価方法を適用している。
X線結晶構造解析の結果では、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー分子の複合体において、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子から3.5Å以内に存在する水分子が、17個特定されている。これら酸素原子の座標が特定されている水分子は、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子のいずれとも水素結合的な分子間相互作用を有すると、推定される。すなわち、NF−κB/RNAアプタマー分子の複合体において、該水分子は、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子との間に、水素結合を介する、架橋構造を形成していると、推断される。
RNAアプタマー分子自体は、全体としては、ヘアピン型の高次構造を形成している。NF−κBタンパク質自体は、DNA結合性タンパク質であり、そのDNA結合部位に相当する領域において、該RNAアプタマー分子と複合体を構成している。該NF−κBタンパク質の表面から、3.5Å以内に存在するヌクレオチドとして、8G,9A,10A,11A,12C,14G,15U,17A,18G,19G,20U,21U,22G,23G,24C,25Gが特定される。
X線結晶構造解析の結果を参照すると、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー分子の複合体から、6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子が多数存在している。後述するFMO計算においては、NF−κB/RNAアプタマー分子の複合体から、6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子(結晶水)を、計算系に含めている。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体において、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子の双方と相互作用を示す水分子に因る、架橋構造の寄与を含め、該複合体を構成した際の結合力の評価を行っている。対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体とその周囲を取り囲む水分子からなる系について、その相互作用エネルギー:VP-Rを評価する。具体的には、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子間の相互作用エネルギー:VP-Rの評価に利用する、複合体を構成した配置において、FMO計算で推定計算する、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE: Interfragment Interaction Energy)は、下記のように定義している。
P-R =ΣeP-R +ΣeP-W +ΣeR-W
P-R:タンパク質−RNA間のIFIE;
P-W:タンパク質−水分子間のIFIE;
R-W:RNA−水分子間のIFIE
以下に記述するように、NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造、および修飾モデリング構造を計算し、上記の定義に従って算出される、フラグメント間相互作用エネルギーVP-Rを指標として、結合力を、それぞれ評価している。
修飾構造について、算出されるNF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子間相互作用エネルギー:VP-R(modification)と、基準構造について、算出されるNF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子間相互作用エネルギー:VP-R(native)との比較を行っている。差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を計算し、複合体を形成した際、その結合力に対して、修飾が与える影響の指標として、評価を行っている。
[NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造計算]
まず、PDB ID:1OOAに公表されている、二量体の構造から、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー分子の複合体の原子座標を取得する。このNF−κB/RNAアプタマー複合体の構造に対して、AMBER8を用いて、Na+で中和し、TIP3P型で水を添加する。その後、重原子を固定して、力場ff02により、水分子を含め、構造最適化を行っている。
該最適化された構造は、NF−κBタンパク質:アミノ酸313残基;RNAアプタマー分子:29塩基;複合体から6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子:197水分子で構成されている。
FMO法を適用する際、対象フラグメントは、NF−κBタンパク質:アミノ酸313残基の313フラグメント;RNAアプタマー分子:29塩基に由来する塩基部分とD−リボース成分の29×2フラグメント;複合体から6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子:197水分子としている。
次に、最適化されて構造において、NF−κB/RNAアプタマー複合体と、該複合体から6Å以内に酸素原子が特定されている水分子(結晶水)について、FMO法を実装したABINIT−MPを用いて、MP2/6−31Gで、フラグメント間相互作用エネルギーの計算を行っている。
[修飾モデリング構造計算]
修飾モデリングのため、該RNAアプタマー分子の塩基配列中、5’−末端のCを除く、全てのピリミジン塩基C/U(13個):5’−CACUUGAAACUAAGGUU GGG−3’について、それぞれ2’‐O‐メチル修飾した構造を、モデリングにより構築する。各修飾RNAアプタマー分子とNF−κBタンパク質の複合体について、前記の手法を応用して、水分子を含め、構造最適化を行っている。
なお、前記構造最適化において、修飾RNAアプタマー分子の修飾ヌクレオチドの2’‐O‐メチル修飾部位から、6Å以内の重原子について、その拘束を段階的に解く手法を採用している。
次に、最適化されて構造において、NF−κB/修飾RNAアプタマー複合体と、該複合体から6Å以内に酸素原子が特定されている水分子(結晶水)について、FMO法を実装したABINIT−MPを用いて、MP2/6−31Gで、フラグメント間相互作用エネルギーの計算を行っている。
なお、上記のフラグメント間相互作用エネルギーの計算では、ABINIT-MP Ver. 4.1 (http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/dl/index.html)を利用している。
まず、NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造について、上記のFMO法を適用して、RNAアプタマー分子:29塩基に由来する塩基部分とD−リボース成分の29×2フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIE:eP-Rを計算した結果を、図1に示す。RNAアプタマー分子を構成する各ヌクレオチドのD−リボース成分フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIEの寄与を示す計算結果となっている。
X線結晶構造解析の結果を参照すると、NF−κBタンパク質の表面から、3.5Å以内に存在するヌクレオチドのうち、11A,12C,14G,15U,19G,20U,21U,22G,23G,24Cでは、その塩基部分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置しており;8G,9A,17A,18G,25Gでは、そのD−リボース成分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置している。
図1を参照すると、そのD−リボース成分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置している、8G,9A,17A,18G,25Gでは、D−リボース成分フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIEが、大きな寄与を示す計算結果となっている。また、その塩基部分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置している、11A,12C,14G,15U,19G,20U,21U,22G,23G,24Cでは、塩基成分フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIEが、実際に寄与を有することを示唆する計算結果となっている。
次に、上記の13箇所のピリミジン塩基C/Uに、それぞれ、2’‐O‐メチル修飾を施した修飾RNAアプタマー分子について、複合体を形成した際のフラグメント間相互作用エネルギー:VP-R(modification)を、FMO法によって計算している。差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を計算し、複合体を形成した際、その結合力に対して、修飾が与える影響の指標として、評価を行った結果を、図2に示す。
3U、6U、12C、15U、21U、26U、28Uを修飾ヌクレオチドに置き換えた場合、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)>0となっている。一方、5C、7U、13U、20U、24Cを修飾ヌクレオチドに置き換えた場合、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)≦0となっている。
この結果から、5C、7U、13U、20U、24Cを修飾ヌクレオチドに置き換えた場合、複合体を形成した際、少なくとも、その結合力の低下は生じないと推断される。
前記5C、7U、13U、20U、24Cを、全て、修飾ヌクレオチドに置き換えた、5箇所修飾RNAアプタマー分子についても、複合体を形成した際のNF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子間相互作用エネルギー:VP-R(modification)を、FMO法によって計算している。この5箇所修飾RNAアプタマー分子について、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を計算した結果も、図2に示してある。この5箇所修飾RNAアプタマー分子でも、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)<0となっており、複合体を形成した際、少なくとも、その結合力の低下は生じないと推断される。
本発明にかかる評価方法を適用することで、水溶液中に存在する、対象タンパク質とリガンド物質の複合体に関して、疎水結合の寄与を含め、対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーの評価を行うことが可能となる。特には、対象タンパク質に対して、同じ結合部位に結合する複数種類のリガンド物質について、複合体を形成した際の対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーを高い確度に比較することが可能となる。
NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造について、FMO法を適用して、RNAアプタマー分子:29塩基に由来する塩基部分とD−リボース成分の29×2フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIE:eP-Rを計算した結果を示す図である。 13箇所のピリミジン塩基C/Uに、それぞれ、2’‐O‐メチル修飾を施した修飾RNAアプタマー分子について、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を算出し、複合体を形成した際、その結合力に対して、修飾が与える影響の指標として、評価を行った結果示す。

Claims (12)

  1. 水溶液中の、対象タンパク質とリガンド物質とで構成される、水溶性複合体中における、該対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、評価を行う方法であって、
    該評価方法は、下記の工程(i)〜工程(vi)を含んでいる:
    工程(i)
    前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体と、
    前記水溶性複合体を取り囲むように、該水溶性複合体の表面から6Å以内に存在している水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}によって構成される凝集体について、
    該凝集体を構成する、対象タンパク質:P、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標を特定する;
    工程(ii)
    工程(i)で特定される、対象タンパク質:P、リガンド物質:Lの原子座標に基づき、
    該対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間における直接の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;
    工程(iii)
    工程(i)で特定される、対象タンパク質:P、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標に基づき、
    該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-wiを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、
    該対象タンパク質:Pと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EP-Wを、前記EP-wiの和;EP-W=Σ(EP-wi)と推定する;
    工程(iv)
    工程(i)で特定される、リガンド物質:L、水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子の原子座標に基づき、
    該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}の各水分子wiとの間の分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-wiを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定し、
    該リガンド物質:Lと水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}全体との分子間相互作用に起因する相互作用エネルギー:EL-Wを、前記EL-wiの和;EL-W=Σ(EL-wi)と推定する;
    工程(v)
    前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lで構成される水溶性複合体と、前記水分子の集合W={w1,…,wi…,wn}によって構成される凝集体中における、
    前記対象タンパク質:Pとリガンド物質:Lとの間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/Wを、工程(ii)で推定したEP-L、工程(iii)で推定したEP-W、工程(iv)で推定したEL-Wの和;EP-L/W=EP-L+EP-W+EL-Wと推定する;
    工程(vi)
    水溶液中の、対象タンパク質とリガンド物質とで構成される、水溶性複合体中における、該対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギー:EP-L/aqua.を、上記工程(i)〜工程(v)によって、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定される、EP-L/Wを用いて、EP-L/aqua.=EP-L/Wと評価する;
    ことを特徴とする、水溶性複合体中における、対象タンパク質とリガンド物質との間の分子間相互作用エネルギーのフラグメント分子軌道法を適用した評価方法。
  2. 前記リガンド物質:Lは、ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質は、タンパク質である
    ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記リガンド物質:Lは、一本鎖RNA分子により構成される、RNA型リガンド物質である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 前記リガンド物質:Lは、低分子リガンドである
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  6. 工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに、
    工程(iii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
    対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択する
    ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに、
    工程(iv)において、前記相互作用エネルギー:EL-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
    ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質に関して、該ペプチド鎖を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う
    ことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
  9. 前記ペプチド鎖で構成される、ペプチド性リガンド物質に関して、該ペプチド鎖を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択する
    ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに、
    工程(iv)において、前記相互作用エネルギー:EL-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
    一本鎖RNA分子により構成される、RNA型リガンド物質に関して、該一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択する
    ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  11. 工程(ii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Lを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;
    工程(iii)において、前記相互作用エネルギー:EP-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する;ならびに
    工程(iv)において、前記相互作用エネルギー:EL-Wを、フラグメント分子軌道法を適用し、数値計算により推定する際、
    該フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する
    ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択する
    ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
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