JP5347254B2 - 耐熱圧性ポリエステルボトル及びその製造方法 - Google Patents
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一般に、瓶詰製品の製造に際しては、内容物の保存性を高めるために、内容物を熱間充填し或いは内容物を充填した後、加熱殺菌乃至滅菌することが必要である。しかしながら、ポリエステル製ボトルは耐熱性に劣るという欠点があり、内容物を熱間充填する際の熱変形や容積の収縮変形を生じるため、二軸延伸ブロー容器を成形後に熱固定(ヒート・セット)する操作が行われている。
このような観点から、耐熱圧性ポリエステルボトル及びその製法が提案されている。例えば、本出願人により2段ブロー成形法による耐熱圧性ポリエステルボトル及びその製造方法が提案されており、この方法によれば、加熱殺菌乃至滅菌を施しても上述した問題を生じることのない、耐熱圧性に優れたポリエステルボトルが提供される(特許文献1及び2)。
また本発明の耐熱圧性ポリエステルボトルの製造方法においては、二段ブロー成形における二次ブローの加工量を18〜40vol%に制御することによって、上述した特性を有する耐熱圧性ポリエステルボトルを成形することが可能となる。
すなわち本発明の耐熱圧性ポリエステルボトルにおいては、胴部の円周方向の配向パラメータが2.80以上、特に2.90〜3.40の範囲にあり、円周方向の配向が強く、加熱殺菌時などのように内圧が過度に上昇した場合でも胴部が内圧を吸収することが可能となるのである。3.40を大きく上回るボトルは過延伸白化が生じるなど耐熱圧性以外の面で問題があり、製造が困難である。
尚、本発明における配向パラメータは、レーザーラマン分光法により測定したものであり、具体的な測定方法は後述する。
尚、本発明における80℃及び65℃における収縮量は、熱機械分析(TMA)による無荷重変化量であり、具体的な測定方法は後述する。
すなわち二段ブロー成形法においては、加熱収縮工程によって一次ブロー成形による歪が緩和され、また結晶化度を向上させることができるため、高い耐熱性を付与することが可能であり、特に本発明においては二次ブロー成形工程において二次成形品から最終成形品への加工量を上記範囲とし、最終成形容器に二次ブロー成形に起因する残留歪を敢えて生じさせて、前述した特性を有するポリエステルボトルを成形することが可能となるのである。
尚、二次ブロー成形工程における加工量は、下記式
加工量=(最終成形品の容積−二次成形品の容積)/最終成形品の容積×100
で表される。
本発明の耐熱圧性ポリエステルボトルに用いられる熱可塑性ポリエステルとしては、特にエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを好適に用いることができる。
本発明に用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上、特に80モル%以上をエチレンテレフタレート単位を占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50乃至90℃、特に55乃至80℃で、融点(Tm)が200乃至275℃、特に220乃至270℃にある熱可塑性ポリエステルが好適である。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、少なくともフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、用途に応じて、射出グレード或いは押出グレードのものが使用される。その固有粘度(I.V.)は一般的に0.6乃至1.4dL/g、特に0.63乃至1.3dL/gの範囲にあるものが望ましい。
上記ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、延伸ブロー成形及び熱結晶化可能な樹脂であれば任意のものを使用でき、これに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン重合体などのオレフィン系樹脂や、キシリレン基含有ポリアミドなどのポリアミド樹脂等を挙げることができる。また、キシリレン基含有ポリアミドにジエン系化合物、遷移金属系触媒を配合した酸素吸収性ガスバリヤー樹脂組成物や、リサイクルポリエステル(PCR(使用済みボトルを再生した樹脂)、SCR(生産工場内で発生した樹脂)又はそれらの混合物)等も用いることができる。
ポリエステル樹脂のプリフォームへの成形は、従来公知の方法により成形することができ、射出成形又は圧縮成形により成形することができる。
プリフォームの口部は熱結晶化されているのが望ましく、これらの部分をそれ自体公知の手段で選択的に加熱することにより行うことができる。ポリエステル等の熱結晶化は、固有の結晶化温度で顕著に生じるので、一般にプリフォームの対応する部分を、結晶化温度に加熱すればよい。加熱は、赤外線加熱或いは誘電加熱等により行うことができ、一般に延伸すべき胴部を熱源から断熱材により遮断して、選択的加熱を行うのがよい。
上記の熱結晶化は、プリフォーム10の延伸温度への予備加熱と同時に行っても或いは別個に行ってもよい。口部熱結晶化は、プリフォーム口部を、他の部分と熱的に絶縁した状態で、一般に140乃至220℃、特に160乃至210℃の温度に加熱することにより行うことができる。プリフォーム口部の結晶化度は25%以上であるのがよい。
なお、内容物充填後の殺菌処理条件が後述する実施例と同等程度かそれ以下であれば、必ずしも口部を熱結晶化しなくてもよい。
本発明の耐熱圧性ポリエステルボトルは二段ブロー成形法により成形することができ、二段ブロー成形法では、最初に延伸温度に加熱したプリフォームを一次ブロー成形して、概ね底部がドーム状の一次成形品を作成する。次に、その一次成形品の口部及び最終成形品の形状によっては首部を除く、肩部、胴部及び底部を加熱収縮させて二次成形品とし、更に加熱状態にある二次成形品を二次ブロー成形して最終成形品とする。
二段ブロー成形法を示す図1において、必要により部分熱結晶化されたプリフォーム10を加熱機構により予備加熱し;予備加熱を行ったプリフォーム10を一次ブロー金型21内にて二軸延伸ブロー成形して、概ねドーム状の底部を形成すると共に、プリフォームの熱結晶化部以外の部分を高延伸倍率に延伸した一次成形品22とする。尚、図1に示す具体例においては、最終成形品の形状が首部が細長い鶴首形状のものであるため、首部は最終成形品とほぼ同一形状に延伸される。
プリフォームの延伸温度は、一般に85乃至135℃、特に90乃至130℃の温度が適当であり、その加熱は、赤外線加熱、熱風加熱炉、誘電加熱等のそれ自体公知の手段により行うことができる。尚、プリフォームからの延伸ブロー成形には、成形されるプリフォーム成形品に与えられた熱、即ち余熱を利用して、プリフォーム成形に続いて延伸ブロー成形を行う方法も使用できるが、一般には、一旦冷却状態のプリフォーム成形品を製造し、このプリフォームを前述した延伸温度に加熱して延伸ブロー成形を行う方法(コールドパリソン法)が好ましい。
一次ブロー成形工程においては、プリフォーム内に延伸棒を挿入し、その先端をプリフォーム底部の中心部に押し当てて、プリフォームを軸方向に引っ張り延伸すると共に、プリフォーム内に流体を吹き込んで、プリフォームを周方向に膨張延伸させる。この際、延伸棒と同軸に、底部の側にプレス棒を配置して、引っ張り延伸に際して、プリフォームの底部中心部を延伸棒とプレス棒とにより狭持して、プリフォームの底部の中心部が形成される一次成形品の中心に位置するように位置規制してもよい。
金型の底部形状は、一次成形品の底部の高延伸化を促進するために、曲率半径の大きい概ねドーム状の形状を有しているが、図1に示すように、底中央部に平坦状部が形成されたものであることが好ましい。一次成形品の底部の直径を、最終容器の胴部及び底部直径の1.1乃至1.5倍程度とすることが好適である。
図1に示す鶴首形状の最終成形品を成形する場合には、上述したように、首部の形状を最終成形品と同様の鶴首形状に延伸するが、この際、図1(A)に示す、首部に相当する部分の金型21aの温度を15乃至60℃、特に15乃至40℃の範囲に設定することが好ましい。また首部を除く部分に対応する金型21bの温度を60乃至150℃の設定することが好ましい。
一次ブロー成形工程における延伸倍率は、軸方向延伸倍率を2乃至5倍、特に2.2乃至4倍、周方向延伸倍率を2.5乃至6.6倍、特に3乃至6倍とするのがよい。圧力流体としては、室温或いは加熱された空気や、その他のガス、例えば窒素、炭酸ガス或いは水蒸気等を使用することができ、その圧力は、通常10乃至40kg/cm2 ゲージ、特に15乃至30kg/cm2 ゲージの範囲にあるのがよい。
熱処理工程において、一次成形品は口部、及び図1に示す具体例においては更に首部を除く部分が赤外線加熱体と対面するように設置され、首部を除く部分が赤外線加熱体からの赤外線で加熱され、高さ方向及び径方向に収縮し、最終成形品形状である二次ブロー金型に収まる形状を有する二次成形品となる。より確実に首部の加熱収縮を防ぐため、図1(B)に示すように遮蔽板26が設置される。
この際本発明においては、従来公知の二段ブロー成形法における収縮量よりも大きくなるように一次成形品を加熱収縮させることが重要であり、最終成形品の容積比で表す加工量が18乃至40vol%の範囲となるように、一次成形品を加熱収縮させることが好ましい。これにより、耐圧性をより向上させることが可能となる。加工量がこの範囲を上回ると、過延伸白化や破裂などの成形不良が生じやすくなる。
加熱温度は胴部において120乃至210℃とすることが好ましく、得られた二次成形品は収縮すると共に熱固定され、結晶化が進行する。底部も胴部と同等の温度に加熱するのが好ましく、この際、一次成形品の底部は比較的高延伸状態にあるため加熱により白化は殆ど生じない。赤外線放射体は400〜1000℃程度に加熱された比較的放射効率に優れた且つ比較的表面積の大きな面状の表面を有するものを組み合わせて使用するとよい。
赤外線加熱体としては具体的には炭素鋼或いはステンレス鋼等の金属面、アルミナ、マグネシア或いはジルコニア等のセラミック面、セラミックとカーボン等の複合材面などの固体表面或いはガスを燃焼して得られる気体表面などが利用できる。固体からなる赤外線加熱体の表面は埋め込んだ電熱ヒータによる加熱或いは高周波誘導加熱などにより所定の温度とする。
二次ブロー成形工程においては、二次成形品は、口部を除く部分が最終成形品の形状に賦形される。すなわち二次成形品内に流体を吹き込んで、二次ブロー成形し、所定の谷部及び足部を備えた最終成形品の底形状(好ましくは5〜6本足)に形成する。二次成形品では、熱処理による結晶化で、弾性率が増加しているので、高い流体圧を用いて行うのがよく、一般に15乃至45kg/cm2 の圧力流体を用いるのが好ましい。首部は既にほぼ最終成形品の形状に賦形されているので、ほとんど延伸されない。
尚、本発明の耐熱圧性ポリエステルボトルにおいては、底部は所定の谷部及び足部を備えた、所謂ペタロイド型の形状のものに限定されず、従来、耐圧性ボトルの底形状に採用されていたすべての底形状を採用することができ、例えば底部中心が内方に凹みその周囲が接地面を形成する所謂シャンパン型の底形状であっても勿論よい。
本発明においては、二次ブロー成形工程では熱固定する必要はなく、二次ブロー金型の温度は15〜60℃とすることができる。
装置:日本分光製・レーザーラマン分光光度計NRS−1000
[配向パラメータ]
配向パラメータは、レーザーラマン分光法により測定した。ボトル胴部の断面(縦横2方向)をミクロトームで30μmに切りだし試験片とした。試験片のラマンスペクトルを測定し、1620cm−1付近のベンゼン環骨格振動由来のピーク強度から配向パラメータを下式により算出した。
配向パラメータ(O.P.)
=(入射レーザー0°偏光時のピーク強度/入射レーザー90°偏光時のピーク強度)
配向パラメータをボトル胴部の肉厚に対して均等距離で10点測定し、平均値をそのボトルの配向パラメータとした。
使用レーザー532 nm 測定波長範囲:1800〜600 cm−1
測定秒数:5 sec. 積分回数:2回
測定部位:接地面より80 mmを中心とした試料
装置:セイコーインスツルメンツ製・DMS6100
[耐熱性]
ボトル胴部を中心として40mm(評点間距離20mm)x5mmの試験片を切り出した(縦横2方向)。試験片をTMA炉にて昇温速度5℃/min.で加熱し、温度に対する寸法変化を測定することで耐熱性を評価した。
尚、比較例1はバリア層剥離後、外層PETを測定した。
原材料にホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.75 dl/g)を用い、射出成形機にてスクリューキャップと螺合する口部形状を有する重さ33gのプリフォームを成形した。
このプリフォームを110℃に加熱して、首部金型温度25℃、胴部金型温度120℃にて一次ブロー成形を行い、一次成形品を得た。
この一次成形品を、胴部温度が170℃となるように加熱し熱収縮させて二次成形品とした後、直ちに金型温度25℃にて二次ブロー成形を行い、図1に示す形状の満注容量530ml、胴部平均肉厚0.3mmの最終成形品とした。加工量は23%であった。
最終成形品の胴部横方向の配向パラメータは3.3、80℃における収縮量は45μm、65℃における収縮量は5μmであった。
加工量を19%とした以外は実施例1と同様にして同形状のボトルを成形した。
最終成形品の胴部横方向の配向パラメータは3.0、80℃における収縮量は32μm、65℃における収縮量は5μmであった。
原材料に共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.80 dl/g)を用いた以外は実施例1と同様にして同形状のボトルを成形した。加工量は23%であった。
最終成形品の胴部横方向の配向パラメータは3.0、80℃における収縮量は81μm、65℃における収縮量は18μmであった。
内外層にイソフタル酸成分を1.3モル%含む共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.80dL/g)を用い、中間層にポリアミド系樹脂を基材とする酸素吸収性樹脂を5重量%用いて、共射出成形機にて重さ35gの多層プリフォームを成形し、1段ブロー成形法でプリフォーム加熱温度110℃にて、実施例1と同一外観のボトルを成形した。
成形品の胴部横方向の配向パラメータは2.4、80℃における収縮量は1313μm、65℃における収縮量は140μmであった。
原材料に実施例1と同じホモポリエチレンテレフタレートを用い、ブロー成形の金型温度を150℃とした他は比較例1と同様にして、ボトルを成形した。
成形品の胴部横方向の配向パラメータは2.1、80℃における収縮量は8μm、65℃における収縮量は5μmであった。
原材料に実施例1と同じホモポリエチレンテレフタレートを用いてプリフォームを成形した。
プリフォームを115℃に加熱して、首部金型温度25℃、胴部金型温度140℃にて一次ブロー成形を行い、一次成形品を得た。
この一次成形品を、胴部温度が190℃となるように加熱し熱収縮させて二次成形品とした後、直ちに金型温度150℃にて二次ブロー成形を行い、実施例1と同形状の最終成形品とした。加工量は8%であった。
最終成形品の胴部横方向の配向パラメータは2.5、80℃における収縮量は15μm、65℃における収縮量は5μmであった。
上記実施例、比較例で成形した各ボトルについて、充填殺菌評価を行った。各ボトルに3.3ガスボリューム(GV)に調製した5℃の炭酸水を500ml充填して密封した。続いてコールドスポットが65℃24分となるように熱水シャワーを施し、その後冷水シャワーにて室温まで冷却した。
実施例1,2,3のボトルは、いずれも入れ目線(内容物液面)の低下が小さく、外観上の目立った変形もなく、優れた耐熱圧性を有していた。これに対して比較例1,2,3のボトルでは、入れ目線が鶴首部から外れて肩部まで低下したものや、胴部が膨れて変形したものが見られた。
24 二次成形品。
Claims (2)
- ポリエステル樹脂から成るプリフォームを二軸延伸成形して成り、少なくとも口部、胴部及び底部から成る耐熱圧性ポリエステルボトルにおいて、
前記胴部のレーザーラマン分光法により測定した円周方向の配向パラメータが2.80以上で且つTMA測定による80℃における収縮量が15μm以上であることを特徴とする耐熱圧性ポリエステルボトル。 - ポリエステル樹脂から成るプリフォームを二軸延伸ブロー成形して一次成形品を得る一次ブロー成形工程、一次成形品を熱処理して加熱収縮させた二次成形品を得る熱処理工程、二次成形品を二軸延伸ブロー成形して最終成形品を得る二次ブロー成形工程、から成る耐熱圧性ポリエステルボトルの製造方法において、前記一次成形品の底部の直径が最終成形品の胴部及び底部直径の1.1乃至1.5倍であり、前記二次ブロー成形工程における最終成形品の容積比で表す加工量が18〜40vol%であることを特徴とする耐熱圧性ポリエステルボトルの製造方法。
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