JP5346934B2 - 眼科治療用顕微鏡装置 - Google Patents

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Description

本発明は、眼の疾患部位にレーザ光を照射して当該疾患部位を治療する眼科治療用顕微鏡装置に関する。
従来から、眼の疾患の治療のために、レーザ光が用いられている。このような治療としては、例えば、被検眼の網膜にレーザ光を照射してその組織を熱凝固させることによる網膜剥離の治療や、レーザ光の照射により被検眼の虹彩に穴を開けることで房水の流出路を確保することによる房水循環を改善する治療等があげられる。このようなレーザ光を用いた治療では、被検眼を拡大観察するために、観察光学系で形成した眼内の実像を接眼レンズで観察する顕微鏡装置が用いられる。この治療では、この顕微鏡装置で眼内を観察しながらレーザ光を照射することにより、意図した箇所への適切な照射を可能としている。
ところが、この治療の際、照射したレーザ光がその眼の組織等で反射され、顕微鏡装置の観察光学系を経て、観察者(施術者)の眼に入射して、その眼を傷める虞がある。このことから、レーザ光治療のための顕微鏡装置では、観察者の眼を保護するために、レーザ光の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを観察光学系に挿入することが知られている(例えば、特開2003−116905号公報参照)。
ここで、フィルタは、設定された波長帯域の以外の光であっても完全に透過させるものではないことから、例えば、治療前の被検眼の観察や治療後の凝固斑の確認等のために、当該フィルタを観察光学系の観察光路の途中に挿脱自在な構成とすることが望ましい。
しかしながら、フィルタの挿脱のための機構を設けると、当該顕微鏡装置を構成する鏡筒の全長が長くなり、被検眼から接眼レンズまでの距離が必然的に長くなってしまう。すると、施術者から患者の眼までの距離が長くなることから、上記した顕微鏡装置を用いると治療し難いという不具合が生じてしまう。
そこで、レーザ光治療のための観察装置として、上記した観察光学系で形成した眼内の実像を接眼レンズで観察する顕微鏡装置に代えて、観察光学系で形成した眼内の実像をCCD等の受光素子を有する撮像装置で取り込み、そこからの電気信号(画素データ)に基づいて生成された画像を液晶モニタ等の電子表示デバイスに表示させ、その電子表示デバイスを接眼レンズで観察するビデオ顕微鏡装置を用いることが考えられる。このビデオ顕微鏡装置では、観察者が電子表示デバイスに表示された画像で眼内を観察することができることから、反射したレーザ光が観察者の眼に入ることがないので、顕微鏡装置を構成する鏡筒の全長の増大を招くことなく、観察者の眼を保護することができる。
ところが、このように構成したビデオ顕微鏡装置では、レーザ光を照射したとき、電子表示デバイスの被検眼像ではその照射箇所を中心として全体に強く光ってしまう。これは、次のことに起因するものと考えられる。照射されるレーザ光は、被検眼の治療のためのものであることから光量が極めて大きい。この照射されたレーザ光が被検眼内(硝子体等)で乱反射されると、非照射時に比較して、被検眼全体が極めて明るくなる。ここで、ビデオ顕微鏡装置では、被検眼内において意図した箇所への適切な照射を補助するものであることから、レーザ光の非照射時における被検眼像を観察者が適切に観察できるように、当該被検眼像を電子表示デバイスに表示させる設定とされている。このため、非照射時に比較して被検眼全体が極めて明るくなると、電子表示デバイスに表示される被検眼像が全体に強く光ってしまう。このような現象は、治療に集中して電子表示デバイスの被検眼像を凝視している観察者(施術者)の眼がくらみ、レーザ光を照射した際の観察者による被検眼の観察を阻害してしまうという問題があった。
特に、治療のためのレーザ光の照射は、間欠的に行われるため、レーザ光を照射する度に電子表示デバイスの被検眼像が強く光ってしまうことから、このような強い光の点滅により観察者が眩惑される。このため、レーザ光を照射した際の観察者による被検眼の観察のみならず、レーザ光の照射と照射との間の非照射時であっても観察者による被検眼像の観察が阻害されてしまう。
本発明の目的は、顕微鏡装置を構成する鏡筒の全長の増大を招くことなく観察者の眼を保護することができ、レーザ光の照射に起因する観察者による被検眼の観察の阻害を抑制することができる眼科治療用顕微鏡装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一実施例に係る眼科治療用顕微鏡装置は、被検眼を照明する照明ユニットと、前記被検眼からの像形成光束を受光して被検眼像を形成する観察光学系と、該観察光学系により形成された前記被検眼像を撮像する撮像装置と、該撮像素子により撮像された前記被検眼像を表示する表示装置と、前記被検眼の患部へとレーザ光が照射されたことを検知する照射検知機構と、該照射検知機構と前記撮像装置と前記表示装置とを統括的に制御する制御機構とを備えている。この制御機構は、前記照射検知機構がレーザ光の照射を検知するとき、前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を下げるように表示装置を制御するようにされている。
本発明に係る眼科治療用顕微鏡装置では、照射検知機構がレーザ光の照射を検知するとき、表示装置に表示される被検眼像の輝度を下げるように表示装置を制御するので、被検眼を観察している観察者(施術者)の眼がくらんでしまうことを防止することができる。
本発明の一実施例に係る眼科治療用顕微鏡装置を示す概略斜視図。 眼科治療用顕微鏡装置の構成を概略的に示す説明図。 眼科治療用顕微鏡装置の撮像装置の構成を概略的に示す説明図。 眼科治療用顕微鏡装置のレーザ光照射装置の構成を概略的に示す説明図。 表示装置に表示される被検眼像の状態を説明するための説明図。 図5に示す走査線S上で見た輝度を、レーザ光の非照射状態で模式的に示すグラフ。 レーザ光が照射されて被検眼像の輝度を下げていない状態を示す図6Aと同様のグラフ。 レーザ光が照射されて被検眼像の輝度を下げた状態を示す図6Aと同様のグラフ。
符号の説明
10 眼科治療用顕微鏡装置
12 レーザ光照射装置
19 治療装置制御部
20 照明ユニット
21 観察光学系
22 撮像装置
24 表示装置
E 被検眼
Ep 被検眼像
以下、本発明の実施の形態を、実施例に基づいて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る眼科治療用顕微鏡装置10を示す。この眼科治療用顕微鏡装置10は、図1に示すように、脚部11の上に載置されたレーザ光照射装置12と、このレーザ光照射装置12に、略水平方向に延びるように設けられたアーム部13と、このアーム部13の先端部に設けられたビデオ顕微鏡装置14とを備えている。
レーザ光照射装置12の内部には、後述するように、レーザ光を発するレーザ光源、例えば、レーザ発振器37((図4参照)が設けられ、レーザ光がこのレーザ光源から出射可能である。
この眼科治療用顕微鏡装置10では、レーザ光照射装置12に、延長ファイバケーブル15と中継コネクタ16と眼内プローブ17とが接続されている。レーザ光照射装置12から出射されたレーザ光は、延長ファイバケーブル15により外部へ導出され、中継コネクタ16および眼内プローブ17を経て患者の被検眼E(図2および図3参照)へ照射される。
この眼科治療用顕微鏡装置10は、図2に示すように、レーザ光照射装置12およびビデオ顕微鏡装置14に加えて、操作部18と治療装置制御部19とを有する。治療装置制御部19は、レーザ光照射装置12およびビデオ顕微鏡装置14を統括的に制御する制御機構であり、この治療装置制御部19には操作部18が接続されている。この操作部18は、後述するようにレーザ光照射装置12やビデオ顕微鏡装置14を、治療装置制御部19の制御下で操作するために設けられている。
ビデオ顕微鏡装置14は、本実施例では、二眼式ステレオタイプの構成とされている。このビデオ顕微鏡装置14は、照明ユニット20と被検眼像を形成する一対の観察光学系21と一対の撮像装置22とカメラコントローラ23と表示装置24とを有する。
照明ユニット20は、被検眼Eの眼内を照明するものであり、本実施例では顕微鏡筒25に収容されている。この顕微鏡筒25には、対物レンズ26が設けられ、かつその対物レンズ26の光軸Oを境にして左右対称位置に一対の光学ユニット27が収容されている。この一対の光学ユニット27は、変倍レンズ系(図示せず)から構成されており、それぞれに対応するように設けられた一対の結像レンズ28と上述した対物レンズ26との協働により、一対の撮像装置22の撮像素子29の撮像面上に被検眼像を形成する。このため、本実施例では、一対の観察光学系21は、対物レンズ26と一対の光学ユニット27と一対の結像レンズ28とから構成されている。
一対の撮像装置22は、それぞれ撮像素子29を有し、この撮像素子29で撮像された被検眼像を画像データとして出力する。この両撮像装置22は、互いに等しい構成であるので、図3には、一つの撮像装置22の構成のみを示す。
撮像装置22は、図3に示すように、上述した撮像素子29と、この撮像素子29から出力された出力信号の利得調整等を行う利得調整部30と、この利得調整部30を経た出力信号に基づいて画像データを生成する画像処理ユニット31と、それらを統括的に制御する制御演算部32と、バッファメモリ33とを備える。この制御演算部32には、治療装置制御部19が接続されており、当該治療装置制御部19の制御下で各部すなわち撮像装置22の動作を制御する。
撮像素子29は、観察光学系21により結像された被写体像を取得する。この撮像素子29は、本実施例では、CCDイメージセンサが用いられている。なお、この撮像素子29は、被写体像の取得が可能なものであれば、例えばCMOSイメージセンサであってもよく、CCDイメージセンサに限定されるものではない。撮像素子29は、取得する被写体像を出力信号(アナログRGB画像信号)として利得調整部30へ向けて出力する。
撮像素子29から出力された出力信号(アナログRGB画像信号)は、利得調整部30により利得調整等が施されデジタル化された出力信号(RAW−RGBデータ)として画像処理ユニット31に出力される。この画像処理ユニット31は、画像処理部34とビデオエンコーダ35とを有し、バッファメモリ33に接続されている。
画像処理部34は、利得調整部30を経た出力信号(RAW−RGBデータ)に基づいて、バッファメモリ33を利用しつつ表示や記録が可能なYUV形式の画像データを生成する。このバッファメモリ33には、画像処理部34に取り込まれた出力信号(RAW−RGBデータ)が保存されると共に、この画像処理部34で変換処理された画像データ(YUV形式の画像データ)が保存され、さらに、データ圧縮部(図示せず)で圧縮処理されたJPEG形成などの画像データ等が保存される。なお、上述した画像データのYUVは、輝度データ(Y)と、色差(輝度データと青色(B)データの差分(U)と、輝度データと赤色(R)の差分(V))の情報で色を表現する形式である。
この画像処理部34で生成された画像データ(YUV形式の画像データ)は、ビデオエンコーダ35を介して出力可能とされている。本実施例では、撮像装置22は、ビデオエンコーダ35を介してカメラコントローラ23に接続されている。
このカメラコントローラ23は、一対の撮像装置22から出力された各画像データを結合し、この結合した画像データを表示装置24へと出力する。表示装置24は、入力された画像データ(YUV形式の画像データ)に基づく被検眼像を表示する表示画面24a(図2参照)を有する。
表示装置24は、本実施例では、図2に示すように、表示画面24aに仕切板24bが設けられた構成を有し、この仕切板24bにより表示画面24aが中央を境に左画面部分24cと右画面部分24dとに分割されている。この表示装置24には、一対の接眼レンズ36(図1参照)が設けられており、一方が左画面部分24cに対応して配置され、他方が右画面部分24dに対応して配置されている。表示装置24は、被検眼像の輝度を高くしたり低くしたりする輝度高低調整部(図示せず)を有する。この表示装置24およびビデオエンコーダ35は、それぞれ治療装置制御部19に接続されており、当該治療装置制御部19の制御下で作動される。更に詳細に述べると、表示装置における被検眼像の輝度は、治療装置制御部19によって制御される。
このため、このビデオ顕微鏡装置14を用いると、観察者(施術者)は、一対の接眼レンズ36(図1参照)を覗き込むことにより、左眼では左画面部分24cのみをかつ右眼では右画面部分24dのみを同時に見ることとなり、被検眼Eを立体的に観察することができる。すなわち、観察者(施術者)は、例えば、被検眼Eの眼底の凹の箇所は凹として見ることができ、かつ凸の箇所は凸として見ることができる。なお、本実施例では、単一の表示部24を仕切板24bで左右に分割する構成とされていたが、左右それぞれに表示装置を設ける構成であってもよく、本実施例に限定されるものではない。
このビデオ顕微鏡装置14は、レーザ光を用いた治療の際に観察者(施術者)が被検眼Eを観察するためのものである。このレーザ光を用いた治療のためにレーザ光照射装置12が設けられている。
このレーザ光照射装置12は、図4に示すように、レーザ発振器37と発振器駆動回路38とエイミング光出射部39と出射部駆動回路40とダイクロイックミラー41と集光レンズ42とレーザ照射制御部43とを有する。レーザ発振器37は、治療用レーザ光の照射光源であり、発振器駆動回路38により駆動されてレーザ光を出射する。このレーザ発振器37は、本実施例では、緑色(波長532nm)のレーザ光を出射する半導体レーザである。なお、この出射されるレーザ光は、可視領域の他の波長のものであってもよく、赤外領域の波長のものであってもよく、本実施例に限定されるものではない。
エイミング光出射部39は、エイミング用の照射光の出射光源であり、出射部駆動回路40により駆動されてエイミング光を出射する。ダイクロイックミラー41は、エイミング光出射部39から出射されたエイミング光を反射するとともに、レーザ発振器37から出射されたレーザ光を透過する光学特性を有する。エイミング光とレーザ光とは、このダイクロイックミラー41により合成され(等しい光軸とされ)、集光レンズ42により集光され、レーザ光照射装置12に接続された延長ファイバケーブル15および中継コネクタ16を経て眼内プローブ17に導かれ、被検眼Eの疾患部位に照射される。
レーザ光照射装置12では、発振器駆動回路38および出射部駆動回路40がレーザ照射制御部43の制御下で作動される。このレーザ照射制御部43には、治療装置制御部19が接続されており、当該治療装置制御部19により動作が制御される。治療装置制御部19を介して接続された操作部18は、図示しないスイッチ、ボタン、ダイヤル等が設けられており、それらを介して各種操作が為されるとその操作情報を治療装置制御部19へ出力する。治療装置制御部19は、操作部18から各種操作の操作情報が入力されると、その各種操作を実行させるべくビデオ顕微鏡装置14およびレーザ光照射装置12の動作を制御する。この各種操作とは、例えば、ビデオ顕微鏡装置14における表示状態の調節や、レーザ光照射装置12におけるレーザ光の照射時間または照射強度の設定や、レーザ光照射装置12によるレーザ光の照射等があげられる。
本発明に係る眼科治療用顕微鏡装置10では、レーザ光照射装置12に接続された眼内プローブ17から被検眼Eの疾患部位にレーザ光を照射している際、ビデオ顕微鏡装置14の表示装置24に表示されている被検眼像Ep(図5参照)の輝度が低くなるように構成されている。これについて以下で説明する。なお、本実施例において、上述した表示装置24の左右に二分割された左画面部分24cと右画面部分24dとに被検眼像Epが表示されることとなるが、図5では理解容易のために一方の被検眼像Epのみが示されている。また、図6A乃至図6Cに示されたグラフは、理解容易のために簡易的に示すものであり、実際の被検眼像Epの走査線S上で見た輝度と完全に一致するものではない。
表示装置24には、図5に示すように被検眼像Epが表示され、この状態での被検眼像Epの走査線S上で見た輝度が、図6A乃至図6Cのグラフで示されている。
この被検眼Eの疾患部位にレーザ光が照射される(照射位置Isとする(図5参照))と、表示装置24の被検眼像Epではその照射位置Isを中心として全体に緑色に滲むように強く光ってしまう。これは、次のことに起因するものと考えられる。
照射されるレーザ光は、被検眼Eの治療のためのものであることから光量が極めて大きい。この照射されたレーザ光が被検眼E内(硝子体等)で乱反射されると、非照射時(図6A参照)に比較して、被検眼E全体が極めて明るくなる(図6B参照)。本実施例では、上述したように照射されるレーザ光が緑色(波長532nm)であるので、被検眼Eの全体が緑色で極めて明るく表示される。ここで、ビデオ顕微鏡装置では、被検眼E内において意図した箇所への適切な照射を補助するものであることから、レーザ光の非照射時における被検眼像Epを観察者が適切に観察できるように、被検眼像Epを表示装置24に表示させるように設定されている(図6A参照)。このため、非照射時に比較して被検眼E全体が極めて明るくなると、表示装置24に表示される被検眼像Epが全体に緑色に滲むように強く光ってしまう。特に、図6Bに示すように、被検眼像Epの輝度が、非照射時の設定において表示装置24における表示限界Lを超えるような場合、被検眼像Epに相当する領域全体が最大輝度(所謂飽和状態)で光ってしまう。
この眼科治療用顕微鏡装置10では、レーザ光照射装置12に接続された眼内プローブ17から被検眼Eの疾患部位にレーザ光を照射していることを検知し、この検知されたレーザ光の照射状態では、制御機構が表示装置24の輝度高低調整部を制御してビデオ顕微鏡装置14の表示装置24に表示されている被検眼像Epの輝度を下げる(図6C参照)。これにより、レーザ光を照射した場合であっても、被検眼像Ep全体が極端に明るくなることを抑制することができる。
また、眼科治療用顕微鏡装置10では、レーザ光の照射が停止されると、制御機構がビデオ顕微鏡装置14の表示装置24に表示されている被検眼像Epの輝度を、元の状態に復帰させるように表示装置を制御する(図6A参照)。これにより、レーザ光を照射していない場合における、被検眼像Epの視認性を確保することができる。
このような被検眼像Epの輝度の調節は、治療装置制御部19が、レーザ光照射装置12によるレーザ光の照射のタイミングに合わせてビデオ顕微鏡装置14、換言すると、表示装置24を制御することにより行われる。ここで、本実施例の眼科治療用顕微鏡装置10では、治療装置制御部19の制御下で、操作部18への操作により設定された照射時間および照射強度をもってレーザ光照射装置12によるレーザ光の照射を行うものである。このため、治療装置制御部19は、自らがレーザ光照射装置12からレーザ光が照射されたことを検知することができる。このため、本実施例では、治療装置制御部19は、レーザ光照射装置12によるレーザ光の照射を検知する照射検知機構としても機能する。
治療装置制御部19によるビデオ顕微鏡装置14の制御は、本実施例では以下のように行われる。治療装置制御部19は、一対の撮像装置22の制御演算部32を介して、利得調整部30における撮像素子29からの出力信号(アナログRGB画像信号)の利得調整量を、その出力信号の波長帯域別に異ならせるように、制御する。具体的には、上述したように照射されるレーザ光が緑の波長帯域とされていることから、撮像素子29から出力された出力信号(アナログRGB画像信号)のうち、Gの画像信号の利得調整量を他の画像信号(RB)の利得調整量よりも小さくする。この利得調整量の下げ幅は、照射されるレーザ光として設定された照射出力値に応じるものとされており、当該照射出力値が大きいと下げ幅も大きくされ、当該照射出力値が小さいと下げ幅も小さくされる。これにより、ビデオ顕微鏡装置14では、一対の撮像素子29の感度が下げられることとなり、表示装置24に表示させる被検眼像Epの輝度が下がる。
このように、本発明に係る眼科治療用顕微鏡装置10では、レーザ光照射装置12により当該被検眼Eの疾患部位(図5の照射位置Is参照)にレーザ光が照射された場合あっても、図6Bのグラフに示すように被検眼像Epが強く光ってしまうようなことはなく、矢印Aで示すように被検眼像Epの輝度が下げられて、図6Cのグラフに示すように非照射時の被検眼像Epの輝度(図6A参照)と略等しい輝度で表示装置24に被検眼像Epが表示される。ここで、照射時に表示装置24に表示される被検眼像Ep(図6C参照)は、非照射時の被検眼像Ep(図6A参照)と全く同一の状態で表示されることなく劣化され、当該被検眼像Epにおける照射位置Isやこの照射位置を中心とした周辺を認識することができる。また、レーザ光の照射が停止されると元の輝度に復帰されて、図6Aに示すように、元の状態(非照射時)と同様の被検眼像Epが表示装置24に表示される。このため、眼科治療用顕微鏡装置10を用いると、レーザ光を照射した場合であっても、ビデオ顕微鏡装置14の一対の接眼レンズ36(図1参照)を覗き込んで被検眼Eを観察している観察者(施術者)の眼がくらんでしまうことを防止することができる。
本発明に係る眼科治療用顕微鏡装置10では、上述した効果を含めて以下の効果を得ることができる。
(1)ビデオ顕微鏡装置14の一対の接眼レンズ36(図1参照)を覗き込んで被検眼Eを観察している観察者(施術者)の眼がくらんでしまうことを防止することができる。このため、観察者(施術者)は、ビデオ顕微鏡装置14の一対の接眼レンズ36(図1参照)を覗き込んで被検眼Eを観察しながら、レーザ光照射装置12に接続された眼内プローブ17から当該被検眼Eの疾患部位にレーザ光を照射することができる。
(2)被検眼Eを観察するための顕微鏡装置が、撮像素子29に被検眼像Epを表示させるビデオ顕微鏡装置14であることから、顕微鏡装置の鏡筒を長くすることなく被検眼Eの組織等で反射されたレーザ光から、観察者(施術者)の眼を保護することができる。このため、従来のフィルタを用いた光学的な顕微鏡装置に比較して、被検眼Eから接眼レンズ36までの距離を短くすることができ、観察者(施術者)に、より治療し易い環境を提供することができる。
(3)レーザ光の照射中であっても一対の接眼レンズ36(図1参照)を覗き込んで被検眼Eを観察することができるので、被検眼Eの照射位置Isにおける凝固斑の様子を観察することができる。
(4)治療のためにレーザ光を間欠的に照射した場合であっても、照射の度に表示装置24の被検眼像Epが強く光るようなことがないので、強い光の点滅に起因して観察者(施術者)が眩惑されることを防止することができる。このため、観察者(施術者)は、レーザ光を照射した際の被検眼Eの観察のみならず、レーザ光の照射と照射との間の非照射時における被検眼Eの観察も適切に行うことができる。
(5)レーザ光の照射を検知するとビデオ顕微鏡装置14の表示装置24に表示している被検眼像Epの輝度を下げることから、レーザ光の照射により被検眼Eが明るくなることに先立って(実際には略同時に)表示装置24における被検眼像Epの輝度を下げることができるので、レーザ光の照射に起因して表示装置24における被検眼像Epが強く光ってしまうことを確実に防止することができる。このため、治療に集中して表示装置24の被検眼像Epを凝視している観察者(施術者)が、被検眼Eへのレーザ光の照射に起因して眼がくらんでしまうことを確実に防止することができるので、観察者(施術者)に、より治療し易い環境を提供することができる。
(6)レーザ光の照射の停止を検知するとビデオ顕微鏡装置14の表示装置24に表示している被検眼像Epの輝度が元の状態に復帰されることから、レーザ光の照射の停止により被検眼Eが元の明るさになると、表示装置24では元の明るさに適合する輝度で被検眼像Epが表示されるので、レーザ光の非照射時における被検眼Eの適切な観察を確保することができる。このため、観察者(施術者)に、より治療し易い環境を提供することができる。
したがって、本発明に係る眼科治療用顕微鏡装置10では、顕微鏡装置を構成する鏡筒の全長の増大を招くことなく観察者の眼を保護することができ、レーザ光の照射に起因する観察者による被検眼Eの観察の阻害を抑制することができる。
なお、上記した実施例では、一対の撮像装置22の利得調整部30において、撮像素子29から出力された出力信号のうち、照射されるレーザ光の波長帯域の画像信号の利得調整量を他の画像信号の利得調整量よりも小さくすることで、一対の撮像素子29の感度を下げていたが、表示装置24に表示させる被検眼像Epの輝度を下げることができるものであれば、例えば、利得調整部30における全ての利得調整量を小さくするものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。この他にも、撮像素子29の感度を下げる方法としては、例えば、撮像装置22の撮像素子29における受光量を減らすことが考えられる。このための構成としては、撮像素子29に至る光路上に光学的な絞りを設けて受光量を減らすことや、当該光路上にメカニカルシャッタを設けて露光時間を短くすることや、電子シャッタにより露光時間を短くすることがあげられる。ここで、電子シャッタを利用する構成や撮像装置22の利得調整部30における利得調整量を調整する構成とすると、光学的な絞りやメカニカルシャッタを設ける構成よりも、顕微鏡装置の全長をより短くすることができる。
また、上記した実施例では、ビデオ顕微鏡装置14の表示装置24の感度を下げていたが、表示装置24に表示させる被検眼像Epの輝度を下げることができるものであれば、例えば、表示装置24の表示出力を下げるものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。この表示装置24の表示出力を下げる方法としては、表示装置24自体の輝度を下げることや、表示装置24において照射されるレーザ光の波長帯域の色の出力値を下げることがあげられる。
さらに、上記した実施例では、治療装置制御部19が操作部18の操作に応じてレーザ光照射装置12によるレーザ光の照射を制御するものであることから、この治療装置制御部19がレーザ光の照射を検知する照射検知機構としても機能する構成とされていたが、レーザ光が照射(加えてその停止)されたことを検知して治療装置制御部19に伝達するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。例えば、レーザ光照射装置12のレーザ照射制御部43が、レーザ発振器37にレーザ光を照射させる際、その制御に合わせて照射信号(加えて停止信号)を治療装置制御部19へと出力するものであってもよい。また、レーザ光照射装置12内にレーザ発振器37からレーザ光が出射されたことを検知する検知装置を設け、当該検知装置が検知信号を治療装置制御部19へと出力するものであってもよい。後者のような検知装置は、延長ファイバケーブル15、中継コネクタ16または眼内プローブ17に設けられていてもよい。
上記した実施例では、図2に示す構成のビデオ顕微鏡装置14が用いられていたが、治療のために被検眼E内でレーザ光を照射する際に術者が当該被検眼Eを観察するために用いられるものであって、撮像された被検眼像Epを表示装置(電子表示デバイス)に表示させる構成であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、図3に示す構成の撮像装置22が用いられていたが、形成された被検眼像Epを撮像してその信号を表示装置に出力するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、図4に示す構成のレーザ光照射装置12が用いられていたが、被検眼E内で治療のためのレーザ光を照射することができるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、レーザ光照射装置12(レーザ発振器37)が緑色(波長532nm)のレーザ光のみを出射するものとされていたが、他の波長のレーザ光との間で出射するレーザ光を切換可能な構成であってもよい。このような構成の場合、照射されるレーザ光の切換に応じて、撮像素子29からの出力信号のうち利得調整量を調節する対象となる画像信号を適宜切り替えることにより、上記した実施例ように一対の撮像装置22の利得調整部30において、撮像素子29から出力された出力信号のうち、照射されるレーザ光の波長帯域の画像信号の利得調整量を他の画像信号の利得調整量よりも小さくすることで、表示装置24に表示させる被検眼像Epの輝度を下げることができる。
上記した実施例では、一対の撮像装置22の利得調整部30における照射されるレーザ光の波長帯域の画像信号の利得調整量を他の画像信号の利得調整量よりも小さくする際、その下げ幅をレーザ光の出射強度に合わせて調節する、すなわちレーザ光の出射強度に合わせて表示装置24に表示させる被検眼像Epの輝度の下げ幅を調節する構成とされていたが、レーザ光の照射の際に観察者(施術者)の眼をくらませないように表示装置24に表示させる被検眼像Epの輝度の下げるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上述の如く、本発明の実施例が述べられてきたが、本発明は、上記実施例に限定されず、種々の変更および変形がこれら実施例になされ得ることを理解されたい。

Claims (6)

  1. 被検眼を照明する照明ユニットと、前記被検眼からの像形成光束を受光して被検眼像を形成する観察光学系と、該観察光学系により形成された前記被検眼像を撮像する撮像装置と、該撮像装置により撮像された前記被検眼像を、該被検眼像の輝度の高低を変化可能に表示する表示装置と、前記被検眼の患部にレーザ光が照射されたことを検知する照射検知機構と、該照射検知機構と前記撮像装置と前記表示装置とを制御する制御機構とを備え、
    前記撮像装置は、互いに異なる波長の感度を有する複数の受光素子を有し、
    前記制御機構は、前記照射検知機構がレーザ光の照射を検知すると、前記撮像装置において照射されるレーザ光の波長帯域の感度を有する前記受光素子のみの感度を下げ、且つ前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を下げるように前記撮像装置および前記表示装置を制御するようにした眼科治療用顕微鏡装置。
  2. 被検眼を照明する照明ユニットと、前記被検眼からの像形成光束を受光して被検眼像を形成する観察光学系と、該観察光学系により形成された前記被検眼像を撮像する撮像装置と、該撮像装置により撮像された前記被検眼像を、該被検眼像の輝度の高低を変化可能に表示する表示装置と、前記被検眼の患部にレーザ光が照射されたことを検知する照射検知機構と、該照射検知機構と前記撮像装置と前記表示装置とを制御する制御機構とを備え、
    前記撮像装置は、互いに異なる波長の感度を有する複数の受光素子を有し、
    前記制御機構は、前記照射検知機構がレーザ光の照射を検知すると、前記撮像装置において照射されるレーザ光の波長帯域の感度を有する前記受光素子からの画素データの表示出力を下げることにより前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を下げるように前記表示装置を制御するようにした眼科治療用顕微鏡装置。
  3. 前記制御機構は、レーザ光の照射前における前記被検眼像の輝度と略等しい輝度となるように、前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度の高低を制御するようにした請求項1または請求項2に記載の眼科治療用顕微鏡装置。
  4. 前記照射検知機構は、前記被検眼の患部へとレーザ光が照射されたことに加えて当該レーザ光の照射が停止されたことを検知可能であり、
    前記制御機構は、前記照射検知機構がレーザ光の照射を検知したとき、前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を下げるとともに、前記照射検知機構がレーザ光の照射が停止されたことを検知したとき、前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を元の状態に復帰させるように前記照射検知機構および前記表示装置を制御するようにした請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼科治療用顕微鏡装置。
  5. 更に、前記被検眼の患部へと任意に設定された照射時間でレーザ光を照射するレーザ光照射機構を備え、
    前記照射検知機構は、前記レーザ光照射機構に設定された前記照射時間の情報を取得可能とされ、レーザ光の照射を検知した時点から設定された前記照射時間が経過することにより当該レーザ光の照射が停止したものと判断するように構成され、
    前記制御機構は、前記照射検知機構がレーザ光の照射を検知したとき、前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を下げるとともに、前記照射検知機構がレーザ光の照射が停止されたことを検知したとき、前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度を元の状態に復帰させるように前記照射検知機構および前記表示装置を制御するようにした請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼科治療用顕微鏡装置。
  6. 更に、任意に設定された強度のレーザ光を前記被検眼の患部へ照射するレーザ光照射機構を備え、
    前記制御機構は、前記レーザ光照射機構に設定された前記強度の情報を取得可能とされ、照射されるレーザ光の強弱に応じて前記表示装置に表示される前記被検眼像の輝度の下げ幅を調節するように前記表示装置を制御するようにした請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の眼科治療用顕微鏡装置。
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