三次元超音波画像の画質を高めるためには、感度を向上させ、同時に、サイドローブ(グレイティングローブ)を低減することが望まれる。アレイ面上に複数のサブアレイを単純に縦横に密に整列させたサブアレイパターンを採用すると、有限なアレイ面を全面的に利用できるので良好な感度を得られるが、サブアレイ配列の規則性から、どうしてもサイドローブが出やすくなる。一方、アレイ面上に複数のサブアレイをランダムに設定すると、サイドローブは出にくくなるが、アレイ面上に多数の隙間が生じてしまい、感度の低下という問題が生じる。なお、個々のサブアレイの形状に多様性をもたせることも考えられるが、その場合にはそれらのサブアレイを機能させるための演算や処理が複雑となるので、サブアレイ形状はある程度は統一した方が望ましい(例えば1個又は数個のサブアレイ形状の利用に留めることが望まれる)。三次元計測に当たっては、回路規模の削減、制御用データの削減といった面での配慮も求められる。
本発明の目的は、三次元超音波診断装置において、サイドローブ低減及び感度向上を図れるようにすることにある。あるいは、本発明の目的は、三次元超音波診断装置において、良好な性能を得つつも、構成及び制御を簡略化できるようにすることにある。
本発明は、サブアレイパターンが設定される二次元配列型の振動素子群を有する2Dアレイ振動子と、前記2Dアレイ振動子に接続され、サブアレイ単位で又はサブアレイ内のグループ単位で複数の素子信号に対するサブ処理を実行してサブ処理結果信号を出力するサブ処理部と、前記サブ処理部から出力される複数のサブ処理結果信号に対するメイン処理を実行するメイン処理部と、を含み、前記サブアレイパターンは、中央サブアレイと、前記中央サブアレイの周囲に設けられた複数のサブアレイ集団と、を有し、前記各サブアレイ集団は密集した複数のサブアレイにより構成され、前記サブアレイパターンは、前記複数のサブアレイ集団における隣接集団間に集団間不揃いが生じ且つ前記各サブアレイ集団内に集団内不揃いが生じるパターンである、ことを特徴とする。
上記構成によれば、中央サブアレイと、その周囲に設けられた複数のサブアレイ集団と、を利用して超音波の送信及び受信が実行される。各サブアレイ集団においては複数のサブアレイが密集しているので、散発的な隙間の発生を防止して感度を高めることができる。しかも、隣接するサブアレイ集団間に「集団間不揃い」が存在し、且つ、各サブアレイ集団内に「集団内不揃い」が存在しているので、複数のサブアレイを規則的に二次元配列した場合よりも、サイドローブの発生を効果的に低減することができる。更に、中央位置に中央サブアレイが設けられているので、その部分も送信開口の一部及び/又は受信開口の一部として有効に利用することができる。望ましくは、集団間不揃い及び集団内不揃いは、一方側サブアレイ列と他方側サブアレイ列が境界線を介して対峙している場合において両者の配列が境界線方向にずれており、両者の配列が揃っていない状態を意味する。
2Dアレイ振動子を構成する振動素子群の中に送受信において機能しない1又は複数の無効素子が含まれてもよい。望ましくは、複数のサブアレイがそれ全体として円形領域を構成する。その場合、円形領域の外側に存在する複数の振動素子は通常それぞれ無効素子となる。望ましくは、各サブアレイ集団は、中央サブアレイから見て、特定の方位角度内に存在する。望ましくは、4つのサブアレイ集団が設けられ、その場合に、4つのサブアレイ集団は、アレイ面上において、それぞれ90度に開いた4つの象限(第1象限、第2象限、第3象限、第4象限)に設けられる。
望ましくは、各サブアレイ集団が1つの制御単位(第1制御単位)を構成し、各サブアレイが1つの制御単位(第2制御単位)を構成し、更に、グルーピング方式が採用された場合に設定される各グループが1つの制御単位(第3制御単位)を構成する。一例を説明すると、各サブアレイ集団ごとにグルーピングパターン又はディレイパターンを特定するパターン選択信号(サブアレイ制御信号)が与えられる。そのようなパターンはビーム走査方向に応じて動的に制御されるものである。また、各サブアレイごとにチャンネルリダクション処理が実行される。チャンネルリダクション処理には、グループ単位で複数の素子信号を加算する処理、サブアレイ単位での複数の素子信号を整相加算する処理、等が含まれる。サブアレイ内に複数のグループが設定される場合、各グループは通常、複数の振動素子で構成される。グループ内の複数の振動素子から出力された複数の素子信号が加算されてグループ受信信号が生成される。1つのグループが1つの振動素子で構成されてもよく、その場合、その振動素子から出力された素子信号がそのままグループ受信信号として出力される。なお、各サブアレイ内に1又は複数の無効素子が含まれてもよい。中央サブアレイについてはそれ専用のパターン選択信号を与えるようにしてもよい。あるいは、中央サブアレイに対して、いずれかのサブアレイ集団に与えられるパターン選択信号を流用し、それを与えるようにしてもよい。
望ましくは、各サブアレイは正四角形を有する。かかる構成によれば、サブアレイ集団を構成した場合において、複数のサブアレイを互いに隙間無く密集させるのが容易である。中央サブアレイ以外の他のサブアレイの形状を統一するのが望ましい。かかる構成によれば、回路構成やその制御を簡易化できる。もちろん、中央サブアレイの形状も含めて、すべてのサブアレイの形状を統一してもよい。
望ましくは、前記各サブアレイ集団は最も中央寄りの内接サブアレイを有し、前記各サブアレイ集団の内接サブアレイが前記中央サブアレイの特定の辺の一部又は特定の角に接する。このような構成によれば、上記の集団間不揃い及び集団内不揃いを自然に生じさせることができる。
望ましくは、前記集団間不揃いは、隣り合う2つのサブアレイ集団が両者間の境界線の方向へm素子分ずれた状態であり、前記集団内不揃いは、前記各サブアレイ集団内おいて一部分と他部分とが両者間の境界線の方向へn素子分ずれた状態である。すなわち、集団間不揃い及び集団内不揃いとも、振動素子単位でのずれに相当する。m及びnは、サブアレイの一辺に相当する素子数よりも小さい数である。
望ましくは、前記複数のサブアレイ集団を構成する複数のサブアレイはi素子×i素子のサイズを有し、前記m素子及び前記n素子はいずれも前記i素子よりも小さい。望ましくは、前記中央サブアレイも前記i素子×i素子のサイズを有する。
望ましくは、前記中央サブアレイの周囲に複数の二次元ギャップが生じる。サブアレイの形状の規格化を前提とした場合、集団間不揃い及び集団内不揃いを生成するために、複数のギャップが不可避的に生じる。望ましくは、前記各二次元ギャップは1又は複数の無効振動素子により構成される。望ましくは、前記各二次元ギャップは1又は複数の有効振動素子により構成される。望ましくは、前記各二次元ギャップは前記中央サブアレイよりも小さい。
望ましくは、前記複数のサブアレイ集団は、X正方向境界線、Y正方向境界線、X負方向境界線及びY負方向境界線により区分された第1乃至第4サブアレイ集団を含む。各境界線は、中央サブアレイの中心位置又は4辺から外側へ伸びる線である。
望ましくは、前記X正方向境界線と前記X負方向境界線が一直線上に並び、前記Y正方向境界線と前記Y負方向境界線が一直線上に並ぶ。望ましくは、前記X正方向境界線と前記X負方向境界線がY方向にずれた関係にあり、前記Y正方向境界線と前記Y負方向境界線がX方向にずれた関係にある。
望ましくは、前記各サブ処理はグルーピングによるチャンネルリダクション処理であり、前記各サブアレイ集団では、それに属する複数のサブアレイに対して同一のグルーピングパターンが設定される。望ましくは、前記各サブ処理はサブ整相加算によるチャンネルリダクション処理であり、前記各サブアレイ集団では、それに属する複数のサブアレイに対して同一のディレイパターンが設定される。望ましくは、前記複数のサブアレイは、前記中央サブアレイを中心として、実質的に円形の領域を構成する。
本発明によれば、三次元超音波診断装置において、サイドローブ低減及び感度向上を図れる。あるいは、三次元超音波診断装置において、良好な性能を得つつも、構成及び制御を簡略化できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には超音波診断装置が開示されている。超音波診断装置は、医療の分野において、生体に対する超音波の送受波により超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置は、大別して、プローブ10と本体12とにより構成される。符号14は両者間を接続するプローブケーブルを示している。プローブ10に設けられるコネクタ及び本体12に設けられるコネクタは図示省略されている。
プローブ10は生体表面に当接した状態で超音波の送受波を行う超音波探触子である。もっとも、プローブ10が体腔内に挿入されるものであってもよい。プローブ10は、2Dアレイ振動子16及びチャンネルリダクション回路18を備えている。それらはプローブ10のプローブヘッド内に設けられている。但し、チャンネルリダクション回路18がプローブコネクタに設けられてもよい。2Dアレイ振動子16は、例えば数千個の振動素子16aにより構成され、それらはX方向及びY方向に整列している。振動素子群に対しては、つまりアレイ面上には、複数のサブアレイからなるサブアレイパターンが設定される。サブアレイパターンは、制御の簡易化、サイドローブの低減、感度の向上といった観点から後述のように定められる。
チャンネルリダクション回路18は、送受信において必要な信号(又は信号線)の個数を削減するための回路である。チャンネルリダクション回路18によれば、プローブケーブルを細くできるし、本体12内の送信部20及び受信部22の構成を簡易化できる。チャンネルリダクションの方式として、グルーピング方式が採用される場合には図2に例示する構成が採用され、サブ整相加算方式が採用される場合には図10に例示する構成が採用される。グルーピング方式が採用される場合、各サブアレイに対して複数のグループが設定され、送信時には、各グループを構成する複数の振動素子に対して同じ送信信号が並列的に供給され、受信時には、各グループを構成する複数の振動素子から並列的に出力される複数の素子信号(素子受信信号)が加算されて単一のグループ受信信号が生成される。一方、チャンネルリダクション方式としてサブ遅延加算方式が採用される場合、送信時には、元になる送信信号に対する遅延処理によって生成された複数の送信信号がサブアレイを構成する複数の振動素子へ並列的に供給され、受信時には、サブアレイを構成する複数の振動素子から並列的に出力された複数の素子信号がサブ整相加算処理されてサブアレイ受信信号が生成される。
次に、本体12の構成について説明する。送受信制御部24は、採用された特定のサブアレイパターンを前提として、各サブアレイに対するグルーピングパターンあるいはディレイパターンの設定を制御している。送信部20は、複数のサブアレイに対応する複数の送信信号を生成する送信ビームフォーマーである。グルーピング方式が採用される場合、グループ総数分の送信信号が生成される。サブ整相加算方式が採用される場合、サブアレイ総数分の送信信号が生成される。受信部22は、受信ビームフォーマーである。グルーピング方式が採用される場合、グループ総数分のグループ受信信号に対する整相加算処理が実行され、これにより受信ビームに相当するビームデータが得られる。サブ整相加算方式が採用される場合、サブアレイ総数分のサブアレイ受信信号に対するメイン整相加算処理(二段階目の整相加算処理)が実行され、これにより受信ビームに相当するビームデータが得られる。送信部20及び受信部22の動作は送受信制御部24によって制御されている。
信号処理部26は、検波器、対数変換器等の構成を具備し、入力される整相加算後の受信信号つまりビームデータに対する各種の処理を実行する。信号処理後のビームデータは三次元画像処理部28に送られ、三次元画像処理部28は複数のビームデータに基づいて三次元超音波画像を形成する。その画像データは表示器30へ送られる。三次元画像処理方式としてはボリュームレンダリング法、サーフェイスレンダリング法等が知られている。複数のビームデータを三次元データメモリ上に格納してボリュームデータを構築し、それに基づいて三次元超音波画像が形成されるようにしてもよい。主制御部32はCPU及び動作プログラムにより構成される。主制御部32にはキーボードやトラックボールなどを備える操作パネル34が接続されている。ドプラ情報の処理を行う回路については図示省略されている。
図2には、図1に示した超音波診断装置の部分的な構成が示されている。図2はグルーピング方式を採用した場合における構成例を示すブロック図である。2Dアレイ振動子16上には、後に詳述するように、サブアレイパターンを構成する複数のサブアレイ(SA-1〜SA-n)が設定される。この例ではn個のサブアレイが設定される。nは例えば二桁の数値である。各サブアレイはこの例では正四角形を有し、i個×i個の振動素子により構成される。iは例えば2,3,4,5,6、7,8といった整数である。複数のサブアレイは、中央サブアレイAと、複数のサブアレイ集団B〜Eと、により構成される。中央サブアレイは2Dアレイ振動子16の中央に位置するサブアレイであり、その周囲に複数のサブアレイ集団B〜Eが設定される。本実施形態では、2Dアレイ振動子16上の第1象限〜第4象限に4つのサブアレイ集団B〜Eが設定される。各サブアレイ集団B〜Eはサブアレイ密集体(サブアレイクラスタ)である。
複数のサブアレイに対して、チャンネルリダクション回路18を構成する複数のSW(スイッチング)回路(SW1〜SWn)が接続されている。その接続関係は一対一である。各SW回路は、対応するサブアレイに対して複数のグループを設定する。各グループは互いに遅延量が近似している関係にある複数の振動素子により構成される。このようなグルーピングにより、グループを構成する複数の振動素子へ同じ送信信号を並列に供給することができ、グループを構成する複数の振動素子から並列に出力される複数の素子信号を加算して1つのグループ受信信号を生成することができる。つまり、送受信時にチャンネルリダクションを図れる。なお、1つのサブアレイに対しては複数のグループが設定され、その中には、例外的に、1つの振動素子により構成されるグループが含まれてもよい。また、サブアレイ中の一部の振動素子が無効振動素子となってもよい。サブアレイ内に送信専用素子及び受信専用素子が設定されてもよい。
送受信制御部24は、図2に示す構成例において、5つの制御信号を出力している。すなわち、中央サブアレイ用の制御信号36a、第1乃至第4のサブアレイ集団用の制御信号36b〜36eを出力している。各制御信号はグルーピングパターンを指定する信号である。つまり、第1サブアレイ集団Bを構成する複数のサブアレイに対しては同一のグルーピングパターンが設定されている。これは他のサブアレイ集団についても同様である。中央サブアレイAについてはそれ専用の制御信号が与えられているが、制御信号を更に1本削減したいのであれば、中央サブアレイに対して制御信号36b〜36eのいずれかを与えるようにしてもよい。サブアレイ集団B〜Eは、複数のサブアレイの密集体であり、つまり、同じ局所領域内に存在しているので、それらに対して共通のグルーピングパターンを設定しても送受信特性の劣化はさほどではない。ここで、サブアレイはグルーピングパターンの設定単位をなすものであり、サブアレイ集団はグルーピングパターンを共通とする制御単位をなすものである。グループは結線単位をなすものである。本実施形態において、サブアレイパターンはアレイ面上に固定的に設定されるが、グルーピングパターンはビーム方位及び送信フォーカス深さ等の送受信条件に応じて動的に可変設定される。但し、上記のように、個々のサブアレイ集団内においてはすべてのサブアレイに対して1種類のグルーピングパターンが設定される。もちろん、これらの条件に関しては各種の変形例が考えられる。
n個のSW回路(SW1〜SWn)に対してはn個の信号線列(19−1〜19−n)が接続されている。各信号線列は、1つのサブアレイに設定可能な最大グループ数に相当する個数の信号線からなる。図2においては、その個数がjとして表されている。n個の信号線列は、本体内における送信部20と、受信部22とに並列的に接続されている。よって、図示の構成例では、送信部20は、n×j個の送信信号を出力し、受信部22は、n×j個の受信信号に対して整相加算処理を実行する。なお、図2においては、制御信号36a〜36eが複数の信号線を使って並列に伝送されていたが、それらを単一の信号線上に時分割伝送するようにしてもよい。送受信制御部24をプローブ10内に設けるようにしてもよい。
図3には、2Dアレイ振動子16上に設定されるサブアレイパターンの第1例が示されている。上述したように、2Dアレイ振動子16は、X方向及びY方向に整列した複数の振動素子16aにより構成される。円形領域103が実際に送受波する領域であり、SAはサブアレイを示し、102はサブアレイ内の中心(重心)を示している。
サブアレイパターンは、中央サブアレイAと、複数のサブアレイ集団B〜Eと、からなる。この例では、すべてのサブアレイが同じ正四角形を有し、すなわちi素子×i素子のサイズを有している。但し、サブアレイ集団内に規格外のサブアレイが含まれてもよい。いずれにしても、サブアレイパターン全体として、サブアレイの種別数を1又は数個程度に抑えれば、構成及び制御を簡略化できるという利点が得られる。図示の例は1種類のサブアレイ形状が利用されているから、そのような利点を最大限引き出せる。なお、サブアレイ集団間の境界線がx1,y1,x2,y2で表されている。
中央サブアレイAは2Dアレイ振動子16の中央に設定され、それを取り囲むように4つのサブアレイ集団B〜Eが設定されている。4つのサブアレイ集団B〜Eは、2Dアレイ振動子16上における中心を原点とした直交座標系を定義した場合に、その第1象限から第4象限に設けられている。各サブアレイ集団B〜Eは、互いに密集した複数のサブアレイにより構成され、以下に説明するギャップ領域を除いて、各サブアレイ集団内には実質的な隙間は存在していない。第1サブアレイ集団Bに着目すると、それには中央サブアレイAに最も近い内接サブアレイSAb1が含まれ、その特定の隅(角)が中央サブアレイAの特定の隅(角)に接している。その内接サブアレイSAb1と、そこから見て紙面上側の隣接サブアレイと、内接サブアレイSAb1から見て紙面右側の隣接サブアレイの3つのサブアレイがサブアレイ集団部分を構成し、残りの2つのサブアレイ(ギャップ領域100bよりも紙面上方の2つのサブアレイ)が別のサブアレイ集団部分を構成している。それらの集団部分間においては両者の境界線方向であるY方向に不揃いが生じており、具体的には、サブアレイ一辺の半分(i素子/2)に相当するずれ(集団内不揃い)が発生している。このように、サブアレイ集団を構成する複数のサブアレイを縦横に完全に揃えるのではなく、一部に不揃いの部分を恣意的に生じさせることによって、サイドローブ低減効果を期待できる。
そのような集団内不揃いを生じさせた結果として、中央サブアレイAと第1サブアレイ集団Bとの間にはギャップ領域100bが生じている。ギャップ領域100bは、X方向にi素子、Y方向にi素子/2のサイズを有している。そのようなギャップ領域100bを挟んで、中央サブアレイAからその紙面上側の内接サブアレイSAb2が隔てられている。
第2サブアレイ集団C、第3サブアレイ集団D及び第4サブアレイ集団Eも、第1サブアレイ集団Bと同様に、それぞれ密集した複数のサブアレイにより構成され、具体的には、内接サブアレイSAc1,SAd1,SAe1と、中央サブアレイAに対してギャップ領域100c,100d,100eを介して隣接するサブアレイSAc2,SAd2,SAe2と、を有する。これにより、それらのサブアレイ集団C,D,E内にも集団内不揃いが生じている。4つのサブアレイ集団内に生じている4つの集団内不揃いの方向は不統一であり、具体的には、X方向に2つの集団内不揃いが発生しており、Y方向に2つの集団内不揃いが生じている。
4つのサブアレイ集団B〜Eにおける隣接相互間の境界線x1,y1,x2,y2に着目すると、各境界線上に不揃い(集団間不揃い)が生じている。例えば、境界線y1上においては、第1サブアレイ集団Bと第2サブアレイ集団Cとの間でY方向にi素子/2分だけずれが生じている。同じく、境界線x1上においては、第2サブアレイ集団Cと第3サブアレイ集団Dとの間でX方向にi素子/2分だけずれが生じている。同様に、第3サブアレイ集団Dと第4サブアレイ集団Eの間、及び、第4サブアレイ集団Eと第1サブアレイ集団Bとの間においても、X方向又はY方向にi素子/2分だけずれが生じている。この結果、4つのサブアレイ集団B〜Eにおける4つの隣接集団間に4つの集団間不揃いが生じていることになる。これらによって、上記の4つの集団内不揃いと相俟って、より顕著なサイドローブ低減効果が期待できる。なお、各ギャップ領域100b,100c,100d,100eは本実施形態では送受信において格別利用されていないが(無効振動素子により構成されているが)、それらを送受信時に機能させることも可能である。
図4に示すように、境界線x1,y1,x2,y2は中央サブアレイが有する4つの辺104−1〜104−4から外部へ伸ばした延長線に相当する。境界線x1と境界線x2は互いに反対方向(正方向、負方向)に延伸し、それらはY方向に中央サブアレイ幅分だけシフトしている。境界線y1と境界線y2も互いに反対方向に延伸し、それらはX方向に中央サブアレイ幅分だけシフトしている。なお、106−1〜106−4は中央サブアレイの4つの隅を示している。Oは中央サブアレイの重心であり、かつ、2Dアレイ振動子の中心である。
以上のように、2次元サブアレイパターンが、4つの集団内不揃いと、4つの集団間不揃いとを有するので、サイドローブを効果的に抑制することが可能である。そのような利点を得つつも、各サブアレイ集団は複数のサブアレイの密集体として構成されているので不感エリアを小さくして感度を高めることが可能である。また、サブアレイパターンを構成する複数のサブアレイが同一形状を有しているので構成及び制御を極めて簡略化できるという利点も得られる。すなわち、シンプルでありながら、実用的価値を十分に高められるのである。
図5乃至図8を用いてサブアレイパターンの第2例乃至第5例を説明する。なお、各図において、図3に示した構成と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
図5に示す第2例において、2Dアレイ振動子16A上に設定されたサブアレイパターンは、中央サブアレイAと、4つのサブアレイ集団B〜Eとで構成される。各サブアレイ集団B〜Eは、中央サブアレイAの特定辺の半分だけに接する内接サブアレイSAb1,SAc1,SAd1,SAe1を含む。また、4つの象限には比較的小さい矩形のギャップ領域100b、100c、100d、100eが存在している。各ギャップ領域はi素子/2×i素子/2のサイズを有している。この第2例によれば、第1例よりも不感領域の面積を削減して感度を高められるという利点が得られる。この第2例では、境界線x1とx2が中央サブアレイAの中心をX方向に通過する同一直線を構成しており、境界線y1とy2が中央サブアレイAの中心をY方向に通過する同一直線を構成している。各サブアレイ集団B〜E内に着目すると、第1例と同様に、集団内不揃いが生じており、また、各境界線x1,y1,x2,y2に着目すると、第1例と同様に、集団間不揃いが生じている。このような2種類の不揃いを生じさせることにより、第1例同様に、サイドローブを効果的に低減できる。
図6に示す第3例において、2Dアレイ振動子16B上に設定されたサブアレイパターンは、比較的に小さな中央サブアレイAと、4つのサブアレイ集団B〜Eとで構成される。各サブアレイ集団B〜Eは、中央サブアレイAの特定辺の半分だけに接する内接サブアレイSAb1,SAc1,SAd1,SAe1を含む。また、4つの象限にはギャップ領域100b、100c、100d、100eが存在している。各ギャップ領域は1素子×3素子の長方形サイズを有している。但し、その長辺の方向は所属象限によって相違している。第3例では、中央サブアレイAを規定形状とは別の形状とする必要があるが、第2例よりも不感領域の面積をより削減して感度を高められるという利点が得られる。この第3例では、境界線x1とx2が中央サブアレイAの中心をX方向に通過する同一直線を構成しており、境界線y1とy2が中央サブアレイAの中心をY方向に通過する同一直線を構成している。各サブアレイ集団B〜Eに着目すると、第1例及び第2例と同様に、集団内不揃いが生じており、また、各境界線x1,y1,x2,y2に着目すると、第1例及び第2例と同様に、集団間不揃いが生じている。このような2種類の不揃いを巧妙に生じさせることにより、第1例及び第2例と同様に、サイドローブを効果的に低減できる。
図7に示す第4例において、2Dアレイ振動子16C上に設定されたサブアレイパターンは、中央サブアレイAと、4つのサブアレイ集団B〜Eとで構成される。この第4例におけるサブアレイパターンは、サブアレイ数の点を除いて、図3に示した第1例におけるサブアレイパターンと同じである。この第4例においても円形領域103が送受信領域として機能する。但し、矩形、菱形等の送受信領域を構成するようにしてもよい。
図8に示す第5例において、2Dアレイ振動子16D上に設定されたサブアレイパターンは、中央サブアレイAと、それを取り囲む4つの内側サブアレイ集団B1〜E1と、更にそれらを取り囲む外側サブアレイ集団B2〜E2と、で構成される。図8に示すサブアレイパターンは、集団数の点を除いて、図3に示したサブアレイパターンと同じである。各内側サブアレイ集団B1〜E1は2つのサブアレイで構成され、各外側サブアレイ集団B2〜E2は3つのサブアレイで構成されている。各内側サブアレイB1〜E1においては上記同様に集団内不揃いが生じており、しかもそれらの間において集団間不揃いが生じている。これと同様に、各外側サブアレイB2〜E2においても集団内不揃いが生じており、しかもそれらの間において集団間不揃いが生じている。なお、rb,rc,rd,reはそれぞれ内側と外側とを区分する境界線を表している。
図9には、サブアレイSAに設定される幾つかのグルーピングパターン例が示されている。各数字は振動素子が所属するグループ番号を示している。同じ番号同士の複数の振動素子は電気的に結線される。上述したように、グルーピングパターンは送信フォーカス点の三次元位置の運動に伴い動的に切り替えられるものである。(C)に示すグルーピングパターンにはいずれのグループにも属しない無効素子が含まれている。
図10には、図1に示した超音波診断装置の部分的な構成が示されている。図10はサブビームフォーミング方式を採用した場合における構成例を示すブロック図である。なお、図2に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
複数のサブアレイ(SA-1〜SA-n)に対しては、チャンネルリダクション回路18を構成する複数のSBF(サブビームフォーマー)(38−1〜38−n)が接続されている。その接続関係は一対一である。各SBFは、対応するサブアレイからの複数の素子信号に対して整相加算処理を実行する回路である。その結果、それらの素子信号が1つの受信信号に集約される。送信時には、サブアレイごとに1つの送信信号から遅延関係をもった複数の送信信号が生成され、それらがサブアレイを構成する複数の振動素子に供給される。SBFはそのような送信ビームフォーマーとしての機能も備えている。n個のSBFに対して、メインビームフォーマー22A及び送信部20が並列的に接続されている。n個のSBFにはn個の信号線21−1〜21−nが接続されている。
n個のSBFは、中央サブアレイAに対応したSBF38−1と、4つのサブアレイ集団B〜Eに対応した複数のSBF38−2〜38−nと、により構成されている。5つの制御信号37a〜37eはディレイパターンを指定する信号である。すなわち、中央サブアレイAに対しては独立してディレイパターンを設定可能であり、個々のサブアレイ集団に対してはそれらを構成する複数のサブアレイに対して共通のディレイパターンが設定される。その結果、各時刻において選択するディレイパターンの個数は5つとなる。制御信号を各サブアレイ集団ごとに共通化できるので回路構成を簡易化できる。それらの回路の制御も容易となる。
このようなサブ整相加算方式が選択される場合においても、サブアレイパターンとして第1例から第5例のいずれも採用することが可能であり、更に他のサブアレイパターンを採用することも可能である。いずれにしても、集団内不揃いと集団間不揃いとを併用してサイドローブを効果的に低減できる。