JP5344813B2 - 気中キャビテーションジェットノズル - Google Patents

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本発明は気中キャビテーションジェットノズルの改良に関するものである。
高圧水の周囲に低圧水を同心円状に噴射して気中でキャビテーションを発生させる方法及び装置は既に報告されている。例えば、大気中に位置するノズルの第1及び第2噴出口からそれぞれ液体流を噴出させるものであり、第1噴出口から噴出される第1液体流は第2噴出口から噴出される局部的液体環境を形成する第2液体流によって取り囲まれており、この第1液体流は第2液体流よりも高速であってキャビテーション気泡を含み、これらの第1及び第2液体流を、大気中にある金属材料の表面に当て、キャビテーション気泡の崩壊により生じる衝撃力を被加工物の表面に発生させるものである(例えば、特許文献1参照)。また、気中キャビテーションは水中噴射キャビテーションより10倍以上大きい加工能力を有する(例えば、特許文献2参照)。
キャビテーション気泡の崩壊による衝撃力は、種々の目的に使用されている。例えば、特許文献1での金属材料の残留応力改善の他に、歯車、バネ、金型等の機械部品の表面を改質したり及び洗浄を処理(例えば、特許文献2参照)やコンクリート、石材、金属等の掘削等にも使用することが可能である
図4は従来の気中キャビテーションジェットノズルのノズル構成を示す説明図である。図に示す通り、従来の気中キャビテーションジェットノズル50としては低圧水51は高圧水52のノズル53に対して直角方向に流入し、その後、90度曲がって噴射されるのが常であった。
特許第2957976号公報 特開2003−62492号公報
ところで、このような気中キャビテーションジェットノズルにおいては、キャビテーションが均一に発生し難く、安定したキャビテーションを発生させるために低圧水供給量の調整及びノズル先端自体の調整が難しかった。このような場合には、低圧水供給量の変化に応じてノズル先端部内の構造自体を変化させなければ対応できない状況もあった。
また、実用面上では、低圧水導入用のホースのためノズルユニットが大きくなり、ノズル移動時には低圧用ホースの取り回しスペースが必要となりノズルと被加工物とが対峙する噴射空間(改質室、洗浄室、処理室等)を大きく確保する必要があった。また、ノズルの複数配列が実質的に困難である。また、気中キャビテーションジェット装置の新たな用途も限定されざるを得ない状況にあった。
これらを鑑み、本発明は、安定したキャビテーションを発生させるための調整が容易で、しかも、ノズル周りをコンパクトとする気中キャビテーションジェットノズルを提供するものである。
請求項1に記載された発明に係る気中キャビテーションジェットノズルは、高圧水を噴射する高圧水噴射口を先端部に設けた高圧水供給導管と、この高圧水噴射口の周囲に配されて高圧水を中心とした同心円状に低圧水を噴射する低圧水噴射口を先端部に設けた低圧水供給導管とを備え、気中でキャビテーションを発生させる気中キャビテーションジェットノズルにおいて、
前記低圧水供給導管が、前記高圧水供給導管の軸線に沿って設けられており、
前記高圧水噴射口の端縁に対して低圧水噴射口の端縁を出入り可能に保持する高低圧水噴射口保持手段を更に備え、
前記高低圧水噴射口保持手段は、
前記低圧水供給導管の端縁部を入れ子式に装着可能な座ぐり穴状のガイド孔と前記低圧水噴射口とを備えたノズル部と、
前記ガイド孔の内形に装着可能な外形と前記低圧水供給導管と面一となる内形と予め定められた幅長とを備えたリング部と、
前記ノズル部を前記低圧水供給導管に対して固定保持する固定保持手段とを備え、
前記リング部を前記低圧水供給導管端縁面と前記ガイド孔の座部とに突き合わせることを特徴とするものである。
請求項2に記載された発明に係る気中キャビテーションジェットノズルは、請求項1に記載の低圧水供給導管には、供給される低圧水を前記高圧水供給導管の軸線に沿った偏りの少ない流れとする1つ以上の整流手段が設けられていることを特徴とするものである。
請求項3に記載された発明に係る気中キャビテーションジェットノズルは、請求項1又は2に記載の低圧水供給導管が前記高圧水供給導管の後端末よりも後端側から前記高圧水供給導管の軸線に沿って供給されることを特徴とするものである。
本発明は、安定したキャビテーションを発生させるための調整が容易で、しかも、ノズル周りをコンパクトとする気中キャビテーションジェットノズルを得ることができるという効果がある。
本発明においては、高圧水を噴射する高圧水噴射口を先端部に設けた高圧水供給導管と、この高圧水噴射口の周囲に配されて高圧水を中心とした同心円状に低圧水を噴射する低圧水噴射口を先端部に設けた低圧水供給導管とを備え、気中でキャビテーションを発生させる気中キャビテーションジェットノズルにおいて、前記低圧水供給導管が前記高圧水供給導管に沿って設けられているものである。これにより、安定したキャビテーションを発生させることができ、しかも、ノズル周りをコンパクトとする気中キャビテーションジェットノズルを得ることができる。
即ち、従来のキャビテーションジェットノズルは、低圧水はノズル先端部で高圧水のノズルに対して直角方向に流入して90度曲がって噴射されるため、例えば低圧水供給量を変化させると高圧水の周りに均一に取り巻いていた低圧水の噴射量に偏りが生じ、噴射量のバランスが崩れることにより、キャビテーションの発生が均一でなくなる。このため、安定したキャビテーションを発生させるために低圧水供給量の調整及びノズル先端自体の調整が難しかった。
本発明の気中キャビテーションジェットノズルでは、低圧水供給導管が高圧水供給導管の軸線に沿って設けられることにより、低圧水が高圧水の噴射方向に沿って供給される。これにより、低圧水の供給量を変化させても高圧水の周りに均一に取り巻いていた低圧水の噴射量に偏りが生じ難く、安定したキャビテーションを発生させることができる。
また、低圧水供給導管が高圧水供給導管の軸線に沿って設けられることにより、従来のノズルには必須であったノズル先端部分での低圧用ホースの取り回しスペースが不要となり、ノズルと被加工物とが対峙する噴射空間(改質室、洗浄室、処理室等)を大きく確保する必要がなくなる。また、ノズルの複数配列も容易に行うことができ、気中キャビテーションジェット装置の新たな用途も開発可能となる等の利点もある。
本発明の低圧水供給導管は高圧水供給導管の軸線に沿って設けられることにより、低圧水の噴射量に偏りが生じ難く、安定したキャビテーションを発生させることができる。より好ましくは、低圧水供給導管は供給される低圧水を高圧水供給導管の軸線に沿った偏りの少ない流れとする1つ以上の整流手段を設けることにより、低圧水供給導管内の流れの偏りを低減して安定したキャビテーションを発生させることができる。
整流手段としては、例えば、低圧水供給導管の流路を塞ぐように配された板材に複数の連通孔を備えた整流板や低圧水の流れに沿って長尺部材を並べたり多数の管路を束ねた整流材などが採用される。尚、複数の整流板を低圧水供給導管内に配する場合には、好ましくは、隣接する整流板の対向する連通孔同士の配置をずらして連通孔を通る低圧水の流線をずらすことにより、定圧水供給導管内での低圧水の流れに偏りを生じさせない等の工夫を行う。
本発明の高圧水供給導管は、数百〜数十MPもの高圧水が流れ、しかも、噴射ノズル径が数mm〜0.数mmであるため、高圧水供給導管が短くても噴射量の偏りによるキャビテーションの不安定さは少ない。そのため、従来のように高圧水供給導管を長く取る必要はなく、数十cm程度で充分である。そこで、更に好ましくは、低圧水供給導管が高圧水供給導管の後端末よりも後端側から前記高圧水供給導管の軸線に沿って供給されるものである。
本発明のノズル先端部には従来のような低圧水供給配管は連結されない。このため、ノズル先端部の自由度も増すことになり、従来は変更が不可能であった高圧水噴射口の端縁に対して低圧水噴射口の端縁を出入り可能に保持することが可能となる。好ましくは、高圧水噴射口の端縁に対して低圧水噴射口の端縁を出入り可能に保持する高低圧水噴射口保持手段を更に備える。高圧水と低圧水とが合流する位置によってキャビテーションによる壊食量、即ち、キャビテーションの威力が変化するため、合流点の位置調整が必要であり、前記高低圧水噴射口保持手段により、合流点の位置調整が可能となる。
高低圧水噴射口保持手段としては、高圧水噴射口を備えたパーツと低圧水噴射口を備えたパーツとの何れか一方を固定し、他方を駆動手段に固定して相対距離を変動させてもよいが、より好ましくは、この高低圧水噴射口保持手段として、低圧水供給導管の端縁部を入れ子式に装着可能な座ぐり穴状のガイド孔と前記低圧水噴射口とを備えたノズル部と、ガイド孔の内形に装着可能な外形と前記低圧水供給導管と面一となる内形と予め定められた幅長とを備えたリング部と、ノズル部を前記低圧水供給導管に対して固定保持する固定保持手段とを備え、任意の幅長のリング部を装着して前記低圧水供給導管端縁面と前記ガイド孔の座部とに突き合わせることにより、高圧水噴射口の端縁に対して低圧水噴射口の端縁を出入り可能に保持することが可能となる。
図1は本発明の気中キャビテーションジェットノズルの一実施例の構成を示す説明図であり、a図は縦断面図、b図は側面図である。図2は図1のノズルの各横断面図であり、a図はA−A断面図、b図はB−B断面図、c図はC−C断面図、d図はD−D断面図、e図はE−E断面図である。
図に示す通り、本実施例の気中キャビテーションジェットノズル装置は、大きく分けて本体部10と、その本体部10の上端部に配された高低圧水供給部20と、本体部10の下端部に配されたノズル部30との3つからなる。本体部10は高圧水がノズル部30方向に流れる高圧水供給導管11を中心としてその周囲に低圧水がノズル部30方向に流れる低圧水供給導管12の二重構造となっている。
高低圧水供給部20はその後端面に図示しない低圧水供給ホースに連結される低圧水供給口21と、側面部に図示しない高圧水供給配管に連結される高圧水供給口22とを備える。図2のa図にも示す通り、高圧水供給口22はZ軸マニホールド23の高圧水供給導管11の後端部となる穿設孔24の側面から供給されている。このZ軸マニホールド23には低圧水供給口21からの低圧水を本体部10の低圧水供給導管12に流すために5つの連通孔25が形成されている。尚、この5つの連通孔25が低圧水の流れの偏りを解消するための第1の整流手段となっている。連通孔25の長さは穴径の5倍以上であり、穴径の断面積の合計は低圧水供給口面積の60パーセント以上である。
高低圧水供給部20は、本体部10の外殻となる円管13の上端に形成された突き合わせ部14で接合されている。Z軸マニホールド23の連通孔25を通過した低圧水は、図2のb図に示す通り、この突き合わせ部14に穿設された4つの連通孔15を介して本体部10の低圧水供給導管12に供給される。尚、この4つの連通孔15が低圧水の流れの偏りを解消するための第2の整流手段となっている。連通孔の長さは穴径の2倍以上であり、穴径の断面積の合計は低圧水供給口面積の75パーセント以上である。
本体部10内部では低圧水は本体部10の中心に配された高圧水供給導管11の回りに配された低圧水供給導管12内を流れるため、高圧水の噴射方向に沿って供給される。これにより、低圧水の流れに偏りが生じ難くなる。
高圧水は本体部10の内部を下流側に流れるに従い段階的に流れ断面を狭めることにより、高い圧力で噴射口から噴射される。先ず、本体部10の円管13の下端部に配されたフランジ部16で流れ断面を狭められる。図2のc図に示す通り、大小の連通孔17、18が穿設され、低圧水もフランジ部16によって若干流れ断面が狭められる。尚、これら連通孔17、18は低圧水の流れの偏りを解消するための第3の整流手段となっている。通孔の長さは穴径の2倍以上であり、穴径の断面積の合計は低圧水供給口面積の75パーセント以上である。
フランジ部16の下端部にはノズル部30を保持するホルダ部19が装着されている。このホルダ部19においても、高圧水は流れ断面を狭められる。ホルダ部19の軸中心部は高圧水供給導管11に沿って下端方向に延設されこの延設部を覆うように高圧水ノズルホルダ部31が装着される。
高圧水ノズルホルダ部31は、図2のd図に示す通り、ホルダ部19の延設部を中心とした同心円状に配列した8つの連通孔35が穿設され、低圧水も若干流れ断面が狭められる。尚、この8つの連通孔35が低圧水の流れの偏りを解消するための第4の整流手段となっている。連通孔の長さは穴径の2倍以上であり、穴径の断面積の合計は低圧水供給口面積の75パーセント以上である。
高圧水ノズルホルダ部31においても軸中心部は高圧水供給導管11に沿って下端方向に延設されこの延設部を覆うように高圧水ノズル32が装着されている。高圧水ノズル32の先端部の高圧水噴射口33には高圧水の流れ断面を更に狭めるオリフィス34が装着されている。最終部の整流手段は図2のE図に示す通り、高圧水ノズル外周の単なる空間であり、空間部の長さは高圧水ノズル外径の5倍以上あり、整流させて定圧水を噴射口に導く。また、空間部の断面積は低圧水供給口面積の60パーセント以上である。
高圧水ノズルホルダ部31の外殻部には低圧水ノズル部36が装着されている。低圧水ノズル部36の先端部はテーパー状に縮径し、先端の低圧水噴射口38から低圧水を高圧水を中心とした同心円状に低圧水を噴射する。低圧水ノズル部36には、高圧水ノズルホルダ部31の外殻部を入れ子式に装着可能な座ぐり穴状のガイド孔37が備わり、入れ子式に装着した後で固定保持手段としての締め付けボルト39を緊締してガイド孔37の内径を縮径して固定される。Z軸マニホールド23とフランジ部16は整流機能と同時に高圧水供給導管11を低圧水供給導管内で保持する。
高圧水ノズルホルダ部31の下端縁とガイド孔37の座部41との間には高圧水噴射口の端縁に対して低圧水噴射口の端縁を出入り可能とするリング部40が配される。リング部40はガイド孔37の内形に装着可能な外形と高圧水ノズルホルダ部31の低圧水供給導管と面一となる内形と予め定められた幅長とを備える。
任意の幅長のリング部40を選択してこれを装着し、リング部40を高圧水ノズルホルダ部31の低圧水供給導管端縁面とガイド孔37の座部41とに突き合わせて締め付けボルト39を緊締して固定することにより、図1のノズル先端部の一点鎖線で示したように高圧水噴射口33の端縁に対して低圧水噴射口38の端縁を出入り可能に保持することができる。
以上のように、高圧水及び低圧水は高低圧水供給部20で各々供給されるため、高圧水及び低圧水を供給する配管やパイプは本発明の気中キャビテーションジェットノズルを2次元、3次元移動させる移動装置に付随して取付けることができる。このため、ノズルと被加工物とが対峙する噴射空間(改質室、洗浄室、処理室等)内で低圧水導入用配管がなくなり、ノズル周りがコンパクトになり、ノズルが移動する際の低圧水配管の取り回しが不要になり、噴射空間を大きく確保する必要がなくなる。
図3は両出口面の差を変えた場合のアルミ板の壊食量を示す線図である。尚、差が0は両出口面が同一面であり、ノズル面の差は高圧水の出口であるオリフィスの出口面に対して低圧ノズルの出口面が突出した距離の差を示し、差の増加は低圧ノズル出口面が前方(アルミ板方向)に位置することを意味する。図4に示す通り、高圧水と低圧水との合流点が変化するとキャビテーションによる壊食量、即ち、威力が変わることが判る。
本発明の気中キャビテーションジェットノズルの一実施例の構成を示す説明図であり、a図は縦断面図、b図は側面図である。 図1のノズルの各横断面図であり、a図はA−A断面図、b図はB−B断面図、c図はC−C断面図、d図はD−D断面図、e図はE−E断面図である。 両出口面の差を変えた場合のアルミ板の壊食量を示す線図である。 従来の気中キャビテーションジェットノズルのノズル構成を示す説明図である。
符号の説明
10…本体部、
11…高圧水供給導管、
12…低圧水供給導管、
13…円管、
14…突き合わせ部、
15…連通孔、
16…フランジ部、
17…連通孔
18…連通孔、
19…ホルダ部、
20…高低圧水供給部、
21…低圧水供給口、
22…高圧水供給口、
23…Z軸マニホールド、
24…穿設孔、
25…連通孔、
30…ノズル部、
31…高圧水ノズルホルダ部、
32…高圧水ノズル、
33…高圧水噴射口、
34…オリフィス、
35…連通孔、
36…低圧水ノズル部、
37…ガイド孔、
38…低圧水噴射口、
39…締め付けボルト、
40…リング部、
41…座部、

Claims (3)

  1. 高圧水を噴射する高圧水噴射口を先端部に設けた高圧水供給導管と、この高圧水噴射口の周囲に配されて高圧水を中心とした同心円状に低圧水を噴射する低圧水噴射口を先端部に設けた低圧水供給導管とを備え、気中でキャビテーションを発生させる気中キャビテーションジェットノズルにおいて、
    前記低圧水供給導管が、前記高圧水供給導管の軸線に沿って設けられており、
    前記高圧水噴射口の端縁に対して低圧水噴射口の端縁を出入り可能に保持する高低圧水噴射口保持手段を更に備え、
    前記高低圧水噴射口保持手段は、
    前記低圧水供給導管の端縁部を入れ子式に装着可能な座ぐり穴状のガイド孔と前記低圧水噴射口とを備えたノズル部と、
    前記ガイド孔の内形に装着可能な外形と前記低圧水供給導管と面一となる内形と予め定められた幅長とを備えたリング部と、
    前記ノズル部を前記低圧水供給導管に対して固定保持する固定保持手段とを備え、
    前記リング部を前記低圧水供給導管端縁面と前記ガイド孔の座部とに突き合わせることを特徴とする気中キャビテーションジェットノズル。
  2. 前記低圧水供給導管には、供給される低圧水を前記高圧水供給導管の軸線に沿った偏りの少ない流れとする1つ以上の整流手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の気中キャビテーションジェットノズル。
  3. 前記低圧水供給導管が前記高圧水供給導管の後端末よりも後端側から前記高圧水供給導管の軸線に沿って供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の気中キャビテーションジェットノズル。
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