JP5342325B2 - インクジェット記録用インク及びインクジェット記録用インクの製造方法。 - Google Patents
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そこで、かかる特定原稿の複写等を抑制すべく、形成画像に対して肉眼では識別しにくい特定パターンを形成して、当該複写等が行われた画像形成装置を特定できるようにする技術が用いられている(例えば、特許文献1)。
すなわち、特許文献1には、出力画像信号に、人間の目には識別しにくい特定パターンを付加し、当該特定パターンを、特にイエローの色成分にて形成する画像処理装置が開示されている。
また、特許文献1の画像処理装置では、近年問題となっている使用済みのインクカートリッジに対する非純正インクの詰め替えに対して、何ら対応できないという問題があった。
すなわち、本発明の目的は、画像形成に用いられたインクの出所を、確実かつ容易に識別できるインクジェット記録用インク及びその製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明のインクジェット記録用インクであれば、識別用微粒子を含むことから、画像形成に用いられたインクの出所を、確実かつ容易に識別することができる。
また、このように構成することにより、形成画像の表面における識別用微粒子の存在量を増加させて、識別用微粒子の表面における標識の視認性を、さらに向上させることができる。
したがって、証券や紙幣の複写等に悪用されたインクの特定、ひいては、悪用した人物の特定に、効果的に寄与することができる。
また、使用済みのインクカートリッジに対する非純正インクの詰め替えが行われているか否かの判定にも、効果的に寄与することができる。
このように構成することにより、識別用微粒子の表面における標識の視認性を、より向上させることができる。
このように構成することにより、識別用微粒子の表面における標識の視認性を、さらに向上させることができる。
このように構成することにより、識別用微粒子による形成画像への影響を十分に抑制しつつ、識別性を効果的に発揮させることができる。
このように構成することにより、識別用微粒子による形成画像への影響を、さらに抑制することができる。
(a)顔料分散微粒子を作成する工程
(b)樹脂を主成分とする平板状物に対し、金型を用いて、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を、複数刻印する工程
(c)刻印がなされた平板状物を裁断して、複数の識別用微粒子を得る工程
(d)得られた顔料分散微粒子及び当該顔料分散微粒子より密度の小さい識別用微粒子を、分散媒に対して分散させ、インクジェット記録用インク(但し、光硬化可能化合物および光硬化促進剤を含まない)を得る工程
すなわち、本発明のインクジェット記録用インクの製造方法であれば、工程(b)及び(c)を含むことから、識別性に優れたインクジェット記録用インクを効率的に製造することができる。
このように実施することにより、特に熱可塑性樹脂を主成分とする平板状物に対する標識の刻印を、より安定的に行うことができる。
第1の実施形態は、インクジェット記録用インクであって、顔料分散微粒子と、識別用微粒子と、を含み、光硬化可能化合物および光硬化促進剤を含まず、識別用微粒子が、その表面に、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を刻印されてなり、識別用微粒子の密度を、顔料分散微粒子の密度よりも小さくすることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
以下、第1の実施形態としてのインクジェット記録用インクについて、構成要件ごとに具体的に説明する。
本発明のインクジェット記録用インクは、識別用微粒子を含むことを特徴とする。
この理由は、インクジェット記録用インクが、識別用微粒子を含むことにより、画像形成に用いられたインクの出所や品番を、確実かつ容易に識別することができるためである。
より具体的には、図1に示すように、マイクロスコープ顕微鏡等を用いて、形成画像中(ドット40´a〜c中)に存在している、例えば、標識51a等を有した識別用微粒子50aを直接的に確認することで、画像形成に用いられたインクの出所や品番を、確実かつ容易に識別することができるためである。
したがって、本発明のインクジェット記録用インクであれば、証券や紙幣の複製等に悪用されたインクの特定、ひいては、悪用した人物の特定に、効果的に寄与することができる。
また、使用済みのインクカートリッジに対する非純正インクの詰め替えが行われているか否かの判定にも、効果的に寄与することができる。
なお、本発明における「識別性」とは、通常の認識力をもって観察した場合に、特定の識別用微粒子と、その他の識別用微粒子と、が混同されることなく、互いに別の識別用微粒子であると認識される程度の識別性を意味する。
したがって、本発明における識別用微粒子は、インクの出所や品番を特定することができる微粒子を意味する。
まず、本発明における識別用微粒子は、識別性を有する必要がある。
より具体的には、マイクロスコープ顕微鏡を用いて、倍率1000〜2000倍の範囲にて形成画像を観察した場合に、好適に発揮される識別性を有する必要がある。
かかる識別性を発揮させる態様としては、識別用微粒子が、その表面に、文字、記号及び図形(模様を含む)からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を刻印された態様であることを特徴とする。
この理由は、かかる態様であれば、画像形成に用いられたインクの出所を、より確実かつ容易に識別することができるためである。
すなわち、図2に例示するように、文字、記号及び図形51aであれば、単独でも、あるいは、これらの組み合わせであっても、識別性を有する標識を容易に構成することができるためである。
また、かかる標識を付するにあたり、図2に示すように、刻印という態様を採ることにより、最大径がマイクロメートルオーダーである識別用微粒子に対して、効率的に標識を付することができるためである。
なお、標識のサイズとしては、識別用微粒子に対して付すことができる範囲であり、かつ、マイクロスコープ顕微鏡を用いて確認できる範囲であれば、特に限定されるものではない。
また、識別性を発揮させるその他の態様としては、例えば、識別用微粒子の立体形状自体を標識とする態様や、識別用微粒子の表面に、文字、記号及び図形等を印字する方法等が挙げられる。
また、識別用微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平板状、直方体状、球状及び多面体状等とすることができる。
また、その最大径は、標識の視認性と、形成画像への影響等と、のバランスを両立させる観点から、5〜15μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、最大径とは、識別用微粒子に外接する円の直径を意味し、かかる最大径は、マイクロスコープ顕微鏡と、画像処理装置と、を用いて測定することができる。
この理由は、識別用微粒子の形状が平板状であれば、識別用微粒子の表面における標識の視認性を、より向上させることができるためである。
すなわち、平板状であれば、識別性を有する標識を、その平面部分に対し、より効率的に付することができ、かつ、標識が付された平面部分を選択的に形成画像の表面側に配向させることができるためである。
また、表裏の平面部分の両方に対して識別性を有する標識を付することにより、標識が付された平面部分を、さらに確実に、形成画像の表面側に配向させることができるためである。
また、識別用微粒子の形状を平板状とした場合、平面部分の面積を25〜225μm2の範囲内の値とするとともに、厚さを2〜30μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、平面部分の面積が25μm2未満の値となると、当該平面部分に対し、識別性のある標識を付することが困難となる場合があるためである。一方、平面部分の面積が225μm2を超えた値となると、インクジェットヘッドにおける目詰まりの原因となったり、形成画像への影響が過度に大きくなったりする場合があるためである。
また、厚さが2μm未満の値となると、識別性のある標識を刻印等によって付することが困難となったり、インク中で過度に変形しやすくなったりする場合あるためである。一方、厚さが30μmを超えた値となると、標識が付された平面部分を選択的に形成画像の表面側に配向させることが困難となるとなる場合があるためである。
したがって、識別性微粒子の形状を平板状とした場合、平面部分の面積を25〜150μm2の範囲内の値とし、厚さを2.5〜20μmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜100μm2の範囲内の値とし、3〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、識別用微粒子の形状を平板状とした場合におけるその平面形状は、特に限定されるものではなく、図3(a)〜(b)に示すように、長方形50a´及びひし形50a´´等、種々の形状を採ることができる。
(3)−1 主成分
また、識別用微粒子の構成材料における主成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂等を用いることができる。
この中でも、特に熱可塑性樹脂とすることが好ましいく、より具体的には、ポリエステル樹脂またはスチレン−アクリル樹脂とすることが好ましい。
この理由は、これらの樹脂であれば、識別性微粒子の表面における視認性を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、これらの樹脂であれば、熱可塑性樹脂であることから、加熱した金型等を用いることにより、識別性を有する標識を明確かつ容易に刻印することができるためである。
また、これらの樹脂であれば、インクジェット記録用インクの分散媒に対する分散性に優れる一方で、分散媒に対して難溶性を示すためである。
なお、かかる熱可塑性樹脂のガラス転移点としては、40〜60℃の範囲内の値とすることが好ましく、45〜50℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかる熱可塑性樹脂の融点としては、100〜150℃の範囲内の値とすることが好ましく、120〜140℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、ガラス転移点及び融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
また、熱硬化性樹脂を使用する場合は、例えば、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
すなわち、エポキシ樹脂であれば、プレポリマー及び硬化剤を混合した状態で、識別性を有する標識を容易に刻印することができる一方で、その後、熱硬化することで、優れた耐熱性を発揮させることができるためである。
また、識別用微粒子が、後述する顔料分散微粒子に含有されている顔料と、種類が同一の顔料を含有することが好ましい。また、さらに顔料の粒径についても同一とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、識別用微粒子による形成画像への影響を、さらに抑制することができるためである。
すなわち、インクの色と、識別用微粒子の色と、を同一にすることで、肉眼にて形成画像を見た場合における識別用微粒子による形成画像への影響を、さらに抑制することができるためである。
また、かかる顔料の含有量は、識別用微粒子の全体量100重量%に対して、3〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましく、4〜7重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、顔料の種類については、顔料分散微粒子の項において記載する。
なお、顔料のほかに、帯電制御剤などの導電性物質を加えることも好ましい。
また、識別用微粒子の密度を、顔料分散微粒子の密度よりも小さくすることを特徴とする。
この理由は、このように構成することにより、形成画像の表面における識別用微粒子の存在量を増加させて、識別用微粒子の表面における標識の視認性を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、図4(a)〜(c)に示すように、識別用微粒子の密度が、顔料分散微粒子の密度よりも大きくなると、記録媒体1に対してインク40が吐出された際に、かかる吐出されたインク40の中で、識別用微粒子50aが顔料分散微粒子41に埋もれやすくなり、ひいては、識別用微粒子50aの表面における標識の視認性が過度に低下する場合があるためである。一方、識別用微粒子の密度が過度に小さくなると、識別用微粒子をインク中に均一に分散させることが困難となる場合がある。
したがって、顔料分散微粒子の密度にもよるが、一般的には、識別用微粒子の密度を0.5〜1.5g/cm3の範囲内の値とすることが好ましく、0.8〜1.2g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、識別用微粒子の含有量を、インクジェット記録用インクの全体量100重量%に対して、0.1〜8重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、識別用微粒子の含有量をかかる範囲とすることにより、識別用微粒子による形成画像への影響を十分に抑制しつつ、識別性を効果的に発揮させることができるためである。
すなわち、識別用微粒子の含有量が0.1重量%未満の値となると、形成画像の表面における識別用微粒子の存在量が過度に少なくなって、十分な識別性を発揮させることが困難となる場合があるためである。一方、識別用微粒子の含有量が8重量%を超えた値となると、形成画像の表面における識別用微粒子の存在量が過剰となって、識別用微粒子による形成画像への影響を十分に抑制することが困難となる場合があるためである。
したがって、識別用微粒子の含有量を、インクジェット記録用インクの全体量100重量%に対して、0.5〜6重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(1)顔料
顔料分散微粒子に含有される顔料としては、従来公知のインクジェット記録用インクにおいて使用される種々の無機顔料及び有機顔料を使用することができる。
例えば、C.I.ピグメントイエロー93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、193、C.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、71、C.I.ピグメントレッド122、202、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントバイオレット19、23、33、C.I.ピグメントブラック7等を挙げることができる。
また、顔料分散微粒子における顔料の含有量は、顔料分散微粒子の全体量100重量%に対して、40〜60重量%の範囲内の値とすることが好ましく、45〜50重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、顔料の替わりに染料を使用することもできる。
かかる染料としては、直接染料、酸性染料、反応染料、分散染料、建染染料等が挙げられる。
また、顔料分散微粒子の結着樹脂としては、従来公知のインクジェット記録用インクにおいて使用される種々の結着樹脂を使用することができる。
例えば、スチレン−アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びビニル系樹脂等が挙げられる。
また、顔料分散微粒子の体積平均粒径としては、インクの色濃度、色相、インク安定性などの観点から、50〜200nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、顔料分散微粒子の体積平均粒径が50nm未満の値となると、インク中において、顔料分散微粒子同士が過度に凝集しやすくなる場合があるためである。一方、顔料分散微粒子の体積平均粒径が200nmを超えた値となると、特にノズル及びノズル供給用の流路部での目詰まりが生じやすくなる場合があるためである。
したがって、顔料分散微粒子の体積平均粒径を70〜170nmの範囲内の値とすることがより好ましく、80〜110nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、顔料分散微粒子の体積平均粒径は、例えば、動的光散乱粒度分布測定装置(シスメックス(株)製)等を用いて測定することができる。
また、識別用微粒子の項において既に説明したように、顔料分散微粒子の密度を、識別用微粒子の密度よりも大きくすることが好ましい。
より具体的には、識別用微粒子の密度にもよるが、一般的には、顔料分散微粒子の密度を0.7〜1.5g/cm3の範囲内の値とすることが好ましく、0.8〜1.2g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、顔料分散微粒子の含有量としては、インクジェット記録用インクの全体量100重量%に対して、5〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、顔料分散微粒子の含有量が5重量%未満の値となると、インクの色濃度が過度に低下する場合があるためである。一方、顔料分散微粒子の含有量が30重量%を超えた値となると、インク粘度や流動性の面で、ノズルからのインクの吐出が困難となる場合があるためである。
したがって、顔料分散微粒子の含有量を、インクジェット記録用インクの全体量100重量%に対して、6〜25重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、7〜20重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、識別用微粒子及び顔料分散微粒子を分散させるための分散媒としては、水と、従来公知のインクジェット記録用インクにおいて使用される種々の水溶性有機溶剤と、の混合液を用いることができる。
ここで、水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、そしてエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルフォキサイド等が挙げられる。
なお、水と、水溶性有機溶媒と、の混合比(重量)は、水:水溶性有機溶媒=50:50〜95:5の範囲内の値とすることが好ましく、60:40〜70:30の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、インクジェット記録用インクに対し、界面活性剤を含有させることも好ましい。
この理由は、界面活性剤を含有させることで、インク中における識別用微粒子及び顔料分散微粒子の分散性を、容易に調節することができるためである。
かかる界面活性剤としては、例えば、多環フェノールエトキシレート等の特殊フェノール型非イオン界面活性剤、または、グリセライトのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールオレート、ポリオキシアルキレンタロエート、ソルビタンラウリルエステル、ソルビタンオレイルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエステル等のエステル型非イオン界面活性剤、または、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアマイド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアマイド等のアマイド型非イオン界面活性剤、または、アセチレングリコール及びそのエチレンオキサイド付加物、または、アルコールサルフェートナトリウム塩、高級アルコールサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム塩等の陰イオン界面活性剤、または、モノ長鎖アルキルカチオン、ジ長鎖アルキルカチオン、アルキルアミンオキサイド等の陽イオン界面活性剤、または、ラウリルアミドプロピル酢酸ベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤等を挙げることができ、これらの界面活性剤を単独或いは混合したものを用いることができる。
なお、これらの界面活性剤の添加量としては、インクジェット記録用インクの全体量100重量%に対して、0.1〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.2〜1重量%の範囲内とすることがより好ましい。
また、インクジェット記録用インクに対し、酸化防止剤を含有させることも好ましい。
この理由は、酸化防止剤を含有させることで、インクの保存安定性及び吐出安定性をより向上させることができるためである。
かかる酸化防止剤としては、例えば、アルキルフェノール系化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物は長期保存を目的とした酸化防止剤として優れ、酸化生成物がさして着色しないことからジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が好ましい。また、重合禁止剤として用いられ、急速短期の酸化防止機能に優れるフェノール系化合物のうちハイドロキノン、ガレート等のフェノール性OHを持った化合物等を用いても良い。またそれらを適宜、併用することも可能である。
なお、酸化防止剤の添加量は使用する酸化防止剤、使用環境によって異なるが、インクジェット記録用インクの全体量100重量%に対して、0.01〜1重量%添加することが好ましい。
また、上述した組成以外にも、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等の各種添加剤を含有させることができる。
なお、インクのpHとしては、5〜9の範囲内の値とすることが好ましい。
第2の実施形態は、インクジェット記録用インクの製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法である。
(a)顔料分散微粒子を作成する工程
(b)樹脂を主成分とする平板状物に対し、金型を用いて、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を、複数刻印する工程
(c)刻印がなされた平板状物を裁断して、複数の識別用微粒子を得る工程
(d)得られた顔料分散微粒子及び当該顔料分散微粒子より密度の小さい識別用微粒子を、分散媒に対して分散させ、インクジェット記録用インク(但し、光硬化可能化合物および光硬化促進剤を含まない)を得る工程
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に、第2の実施形態としてのインクジェット記録用インクの製造方法について、具体的に説明する。
工程(a)は、顔料分散微粒子を作成する工程である。
かかる工程は、顔料分散微粒子を作成することができる工程であれば、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す工程を行うことが好ましい。
すなわち、まず、スチレン−アクリル系樹脂等の結着樹脂と、C.I.ピグメントブルー15等の顔料と、メチルエチルケトン等の有機溶剤と、水とを、ディスパー等を用いて混合・分散させた後、3本ロールミル等を用いて、さらに混合・分散させ、顔料分散微粒子が分散された分散液を得る。
次いで、得られた分散液から、減圧蒸留等により有機溶剤を除去して、分散液を濃縮した後、濾過し、高濃度の顔料分散微粒子液を得ることができる。
次いで、工程(b)は、樹脂を主成分とする平板状物に対し、金型を用いて、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を、複数刻印する工程である。
すなわち、工程(b)では、まず、押し出し成型等により、樹脂を主成分とする平板状物を作成する。かかる平板状物は、厚さを2〜30μmの範囲内の値とすることが好ましく、上述した顔料分散微粒子に含有されているのと同一の顔料を加えて溶融混練してあることが、より好ましい。
次いで、得られた平板状物の表面に対し、金型を用いて、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を、複数刻印する。このとき用いる金型には、同一もしくは異なった複数の標識が、凸状あるいは凹状に形成してあることが好ましい。かかる凸状あるいは凹状部分の高さ(あるいは深さ)は、1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜6μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、金型の材質としては、銅、鉄及びアルミ等を用いることが好ましい。
また、平板状物に対して、複数の標識を一度に刻印することが好ましく、このとき、一度に刻印される標識の数としては、15000〜120000個の範囲内の値とすることが好ましい。より具体的には、図5(a)に例示するように、縦方向10〜300個及び横方向150〜400個に標識の型61を並べた長方形型の金型60を用いて刻印し、複数の標識51aが刻印された平板状物52a´を得ることが、後の裁断工程の効率化に寄与することから好ましい。
さらに、金型による刻印を行う際に、金型を加熱することが好ましい。
この理由は、金型を加熱することにより、特に熱可塑性樹脂を主成分とする平板状物に対する標識の刻印を、より安定的に行うことができるためである。
次いで、工程(c)は、刻印がなされた平板状物を裁断して、複数の識別用微粒子を得る工程である。
すなわち、工程(c)は、図5(c)に示すように、工程(b)で得られた複数の標識が刻印されている平板状物52a´を、一つ一つの標識51aごとに裁断して、複数の識別用微粒子50aを得る工程である。
このとき用いる裁断方法としては、カッター、ソニックカッター、レーザー及び水等を用いた従来公知の裁断方法を用いることができる。
中でも、特に好ましい裁断方法としては、カッターが挙げられる。
最後の工程(d)は、得られた顔料分散微粒子及び識別用微粒子を、分散媒に対して分散させ、インクジェット記録用インクを得る工程である。
すなわち、工程(d)は、得られた顔料分散微粒子液と、識別用微粒子と、水と、グリセリン等の水溶性溶剤と、アセチレングリコール・ポリエチレンオキサイド付加物等の界面活性剤等とを、混合した後、濾過等を行い、インクジェット記録用インクを得る工程である。
なお、本発明のインクジェット記録用インクの製造方法であれば、工程(b)及び(c)を含むことから、識別性に優れたインクジェット記録用インクを効率的に製造することができる。
第3の実施形態は、第1の実施形態において説明したインクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録装置である。
以下、第3の実施形態としてのインクジェット記録装置について、主要な構成要件である給紙トレイ、搬送ベルト、インクジェットヘッド及び搬送ローラに分けて、具体的に説明する。
図6に示すように、インクジェット記録装置20の右側部には記録媒体1を収容する給紙トレイ(図示せず)が設けられている。
かかる給紙トレイの一端部には収容された記録媒体1を、最上位の記録媒体から順に、一枚ずつ搬送ベルト6へと搬送給紙するための給紙ローラ2が設けられている。
給紙ローラ2の記録媒体搬送方向下流側(図6において左側)には、搬送ベルト6が回転自在に配設されている。
かかる搬送ベルト6は、記録媒体搬送方向下流側に配置されたベルト駆動ローラ10と、上流側に配置され搬送ベルト6を介してベルト駆動ローラ10に従動回転するベルトローラ11とに掛け渡されており、ベルト駆動ローラ10が反時計方向に回転駆動されることにより、記録媒体1が矢印Xの方向に搬送される。
なお、搬送ベルト6には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルト等が好適に用いられる。
また、搬送ベルト6の上方には、搬送ベルト6上を搬送される記録用紙1に対して第1の実施形態において説明した所定のインクジェット記録用インクの吐出を行うインクジェットヘッド5が配設されている。
かかるインクジェットヘッド5は、単色のインクのみを吐出するものであっても良いし、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等、複数色のインクを吐出するものであっても良い。
また、インクジェットヘッド5の種類としては、記録媒体の幅方向に往復動作するシリアル型インクジェットヘッドであっても良いし、固定された長尺インクジェットヘッドであっても良い。
なお、インクジェットヘッド5における個々のドット形成部の具体例として、ピエゾ方式のドット形成部の一例を、図7(a)〜(b)に示す。
すなわち、例えば、加圧室32の底面積が0.2mm2、幅が200μm、深さが100μm、ノズル流路34の直径が30μm及びノズル33の開口部40の半径が10μmのドット形成部30を用いることができる。
また、例えば、かかるドット形成部30を、1列につき166個、4列に並べ、合計664個を配列させて、長尺インクジェットヘッドとすることができる。
さらに、例えば、同一列内のドット形成部30のピッチを150dpiとし、また、隣り合う各列を順次1/4ピッチずらすことで、最終的に600dpiの長尺インクジェットヘッドとすることができる。
また、搬送ベルト6の記録媒体搬送方向下流側には、画像が記録された記録媒体1を装置本体外へと搬送する搬送ローラ7、及び搬送ローラ7に圧接され従動回転する加圧ローラ8が設けられており、装置本体外には搬送ローラ7及び加圧ローラ8の下流に、装置本体外へと排出された記録用紙1が積載される排紙トレイ(図示せず)が設けられている。
1.インクの調製
(1)顔料分散微粒子の作成
以下に示す組成の各材料を、ディスパーを用いて、温度:25℃の条件下で60分間混合・分散させ、粘度が2000mPa・s(温度:25℃)の混合物を得た。
次いで、得られた混合物を、3本ロールミル(ノリタケカンパニー(株)製、NR−84A)を用いて、ロール周速度差:6m/s、ロール間クリアランス:10μm、処理回数:5パスの条件下で、剪断応力1.2×106Paにて分散させ、顔料分散微粒子が分散された分散液を得た。
このとき、顔料分散微粒子の体積平均粒径を、動的光散乱式粒径分布装置(シメックス(株)製、zeta sister nanoZS)を用いて測定したところ、0.15μmであった。また、粒径分布もシャープであり、凝集物もなく、長期間にわたって安定な分散性を示すことが確認された。
次いで、減圧蒸留により、得られた分散液からメチルエチルケトンを除去して、分散液における顔料分散微粒子の濃度を25重量%に調整した後、平均孔径5μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、高濃度の顔料分散微粒子液を得た(顔料分散微粒子の密度:1g/cm3)。
・スチレン−アクリル系樹脂のメチルエチルケトン溶液 900g
(樹脂固形分量:50重量%)
・B−15:3(β型銅フタロシアニン)
(大日精化(株)製、クロモファインブルー4920) 450g
・メチルエチルケトン 500g
・イオン交換水 900g
・スチレン 35.7重量%
・ラウリルメタクリレート 7.1重量%
・メトキシポリエチレングリコールメタクリレート 42.9重量%
(新中村化学(株)、NKエステルM−40G)
・スチレン−アクリロニトリル共重合体マクロマー 14.3重量%
(東亜合成(株)製、AN−6)
スチレン含量:70重量%
数平均分子量:6000
重合性官能基:メタクリロイルオキシ基
容器内に、ポリエステル樹脂(ガラス転移点:55℃、融点:125℃)100重量部と、B−15:3(β型銅フタロシアニン)(大日精化(株)製、クロモファインブルー4920)4重量部と、を収容した後、ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、FM−10C型)を用いて、2分間混合し、さらに、2軸押出機を用いて溶融混練して、混練物を得るとともに、かかる混練物を厚さ2μmの平板状物に成形した。
次いで、大きさが約0.8×0.8μmの文字からなる標識「あいうえお」が反転したものを凸状(高さ1μm)に、複数設けてある銅製の金型を用いて、得られた平板状物に対して標識を刻印した。刻印の際には、金型の温度が100℃となるように加熱を行った。
また、使用した金型は、図5に例示するような態様であり、より具体的には、標識「あいうえお」が反転したものが、縦方向に100個、横方向に150個設けてあるものであった。
次いで、以下に示す組成の各材料を撹拌機にて撹拌した後、平均孔径0.5μmのメンブランフィルターを用いて濾過して粗大粒子を除去し、識別性を有さないインクジェット記録用インクを得た。
・顔料分散微粒子液 20重量%
(顔料分散微粒子 5重量%)
・グリセリン 6重量%
・アセチレングリコール・ポリエチレンオキサイド付加物 1重量%
(日信化学工業(株)製、オルフィンE1010)
・イオン交換水 73重量%
(1)識別性の評価
識別性の評価を行った。
すなわち、京セラミタ(株)製評価用インクジェットプリンタのインクタンクに対し、調製したシアンインクを充填した後、長尺インクジェットヘッドにより、コピー用紙に対して横帯100%ベタ画像を印刷して、印刷画像を得た。
このときの画像形成条件としては、長尺インクジェットヘッドのノズル面と、記録媒体と、の距離が1mmとなるように設置するとともに、ヘッド駆動周波数を20kHz、記録媒体搬送速度を847mm/secとした。
次いで、得られたベタ画像をマイクロスコープ顕微鏡(キーエンス(株)製、VHX−1000)(倍率:1500倍)にて観察し、その識別性を、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:ベタ画像中における識別用微粒子の表面の標識を読み取ることができる。
×:ベタ画像中における識別用微粒子の表面の標識を読み取ることができない。
また、画像濃度の評価を行った。
すなわち、まず、識別性の評価の場合と同様に、ベタ画像を形成した(ベタ画像I)。
次いで、識別用微粒子を添加する前の、識別性を有さないインクジェット記録用インクを用いて、同様にベタ画像を形成した(ベタ画像II)。
次いで、それぞれのベタ画像における画像濃度を、反射濃度計(GretagMacbeth(株)製、RD−900シリーズ)を用いて測定するとともに、その差の絶対値を算出し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:画像濃度の差の絶対値が0.05未満の値である。
×:画像濃度の差の絶対値が0.05以上の値である。
また、外観の評価を行った。
すなわち、画像濃度の評価において形成したベタ画像Iと、ベタ画像IIとを、それぞれ10人のモニターを用いて、目視観察をさせ、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:両画像の外観に違いがあると認識したモニターが4人以下であった。
×:両画像の外観に違いがあると認識したモニターが5人以上であった。
参考例2では、識別用微粒子として、平面部分の形状が正方形であって、サイズが10×10×5μm(刻印面の面積:100μm2、厚さ:5μm)である識別用微粒子を用いたほかは、参考例1と同様に識別性を有するインクジェット記録用インクを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
参考例3では、識別用微粒子として、平面部分の形状が正方形であって、サイズが5×5×10μm(刻印面の面積:25μm2、厚さ:10μm)である識別用微粒子を用いたほかは、参考例1と同様に識別性を有するインクジェット記録用インクを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
したがって、本発明に係るインクジェット記録用インク及びインクジェット記録用インクの製造方法は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置の悪用、及び使用済みのインクカートリッジの詰め替え等の抑止に著しく寄与することが期待される。
Claims (7)
- インクジェット記録用インクであって、
顔料分散微粒子と、識別用微粒子と、
を含み、光硬化可能化合物および光硬化促進剤を含まず、
前記識別用微粒子が、その表面に、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を刻印されてなり、
前記識別用微粒子の密度を、前記顔料分散微粒子の密度よりも小さくすることを特徴とするインクジェット記録用インク。 - 前記識別用微粒子の主成分が、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂及びエポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記識別用微粒子の形状を平板状とするとともに、平面積を25〜225μm2の範囲内の値とし、厚さを2〜30μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記識別用微粒子の含有量を、インクジェット記録用インクの全体量に対して、0.1〜8重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記識別用微粒子が、前記顔料分散微粒子に含有されている顔料と同一の顔料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク。
- インクジェット記録用インクの製造方法であって、
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクの製造方法。
(a)顔料分散微粒子を作成する工程
(b)樹脂を主成分とする平板状物に対し、金型を用いて、文字、記号及び図形からなる群より選択される少なくとも一つを含む標識を、複数刻印する工程
(c)前記刻印がなされた平板状物を裁断して、複数の識別用微粒子を得る工程
(d)得られた顔料分散微粒子及び当該顔料分散微粒子より密度の小さい識別用微粒子を、分散媒に対して分散させ、インクジェット記録用インク(但し、光硬化可能化合物および光硬化促進剤を含まない)を得る工程 - 前記工程(b)を実施する際に、前記金型を加熱することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録用インクの製造方法。
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