JP5341439B2 - 液吸収体用繊維素材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インク、体液などの水性媒体との接触状態で使用される部材、例えば、インク吸収体、廃インク吸収体、体液吸収体などに好適な繊維素材およびその製造方法に関する。
インク記録装置用のインクタンクには、内部負圧によってインクを吸収保持し、必要に応じてヘッド部へ供給するための液吸収体と呼ばれる接液部材が一般に用いられている。同時に強い毛細管力によってヘッド部へのジョイント機能を有するジョイント部材や、フィルター機能を有するフィルター部材にも様々な材質および形態からなる繊維素材がインク吸収体の一部として用いられている。このような液吸収体としては、例えばウレタンポリマーからなるスポンジ体などが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂などからなる繊維素材が知られている。一方、マーキングや筆記器具用のインク貯蔵部要素、また、尿、経血などの排出体液を吸収するための吸収性物品や、体液吸引・移動媒体、吸収媒体、フィルターとしての機能を有する体液制御部材としても液吸収体が広く使用されている。
例えば、特許文献1には、インクジェット装置で用いるインクを貯蔵するインクカートリッジにおいて、負圧発生体としてポリオレフィン系樹脂からなる繊維素材を用い、インク供給不良やインク漏れなどの防止のため、インクタンク内で弾性的に曲がる範囲で変形し、複数の交差を異なる方向に形成させて充填した繊維素材が開示されており、この際に繊維長は直方体インクカートリッジの対角線の長さ以上であることが好ましいと提案されている。
また例えば、特許文献2には、インクジェット用インクの接液部材としての繊維素材の製造方法において、紡糸された糸にエチレンオキサイドを付加したグリコールで処理する工程を含む製造方法が開示されており、原料樹脂、製造工程、2次加工などにおいて繊維に混入する異種成分がインクに溶出することに起因する印字性能の不都合を解消できることが報告されている。
また例えば、特許文献3および4には、インクの多種多様化や印字の高速化に対応したインク供給性能を有するインク吸収体を得るための繊維素材表面の親水化処理方法について開示されており、負圧発生部材として、ポリプロピレンの表層に鞘材としてポリエチレンを被覆した二軸繊維体を用い、融点の低いポリエチレンが相互に融着固定した構造が好適であると報告されている。
また例えば、特許文献5には、鞘成分が低融点の熱可塑性樹脂、芯成分が高融点の熱可塑性樹脂からなる鞘芯型複合繊維から得られたウェブまたは不織布を加熱圧縮した板状態の多孔質圧縮繊維材が開示され、インクジェットプリンターノズル用廃液吸収部材として優れていることが報告されている。また、特許文献6には、特定の親水性繊維を含む繊維集合物からなる液吸収体が開示され、インクジェットプリンター用廃液吸収体として優れていることが報告されている。
また例えば、特許文献7には、鞘材がポリエチレンテレフタレートで、芯材がポリプロピレンから構成され、自己支持性のある3次元的多孔質要素を形成した2成分繊維、その製造法および得られる製品について開示されており、該繊維の毛細管作用、吸収性および濾過特性によって、マーキングや筆記器具用のインク貯蔵部要素、おむつや失禁パットなどの体液貯蔵部要素、タバコフィルター要素、体液を吸収・輸送する毛管ウィックなど様々な用途に利用できることが提案されている。
特開平8−20115号公報 特開平11−61637号公報 特開2001−162824号公報 特開2002−146661号公報 特開2002−339219号公報 特開2004−300620号公報 特表平11−507994号公報
しかしながら、特許文献1に示されている繊維長の長い繊維素材を液吸収体の接液部材として用いる場合には、インクタンクへの充填が難しく、インクの吸収や、ヘッドへの供給のばらつきが多く、生産性、品質安定性などの面での大幅な改良が必要である。また、特許文献2には、紡糸、延伸、捲縮および切断からなる接液部材用繊維素材の製造方法が詳細に記載されているが、特定の油剤処理に焦点が向けられ、液吸収体として好適な繊維素材の構造、特に捲縮率、捲縮数および繊維長についての記載がない。
また、特許文献3および4には、ポリエチレンが融着した構造を有するポリプロピレンとの二軸繊維体について記載されているが、異なる2種類の材料を用い、かつ融着工程を必要とするなど製造工程が煩雑となり、リサイクルしようとすれば、異種材料を使用していることが広範な利用を目指す場合には大きな障害となる。また2成分の異種繊維からなる繊維素材を用いる特許文献7には、捲縮率、捲縮数、繊維長などの好適な繊維素材についての記載がなく、かつ異種材料に基づく製造工程の煩雑さや、リサイクルにおける同様の問題が生じる。
さらに、特許文献5および6は、異種繊維を加熱溶融することにより、繊維の一部を融着固定させて得られた多孔質の圧縮繊維材や、不織布、織物、編物、紙等、繊維で構成された繊維集合体を液吸収体として用いるものであり、液吸収体の製造工程が複雑である上に、圧縮繊維材や繊維集合体を吸収体容器に装填する作業が加わり、生産性の悪いものとなる。
液吸収体用繊維素材は、インクジェットプリンター用のインク吸収体として用いられ、インクジェットプリンターが普及するにつれて、インクの多種多様化や印字の高速化、プリンターの小型化、低コスト化に対応するため、インクの吸収性能および保持特性、ヘッド部への供給性の向上、残インク量低減化のみならず、生産性、品質安定性、リサイクル性などの向上が求められており、またマーキング、筆記用具のインク貯蔵部要素や廃インク吸収体にも同様な傾向にあり、性能、品質安定性、生産性のより優れたものが求められている。特に、異形状容器や入り口が狭い容器への装填が可能で、空気や液体によって容易に移送および装填でき、かつ油剤の残存量の少ない液吸収体用繊維素材が強く求められている。一方、各種診断や体液医療機器に用いられる体液吸収体には、体液吸引・移動媒体、吸収媒体、フィルターとしての機能において、吸収性能と同様に、精密な制御、品質の安定性、生産性の向上が求められている。
本発明者らは、前記要求に対応した液吸収体用繊維素材を求めて鋭意研究を重ねた結果、特定の単糸繊度および繊維長を有する繊維素材がインク、体液などの水性媒体の接液部材として優れた性能を有することを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、特定の単糸繊度および繊維長を有する繊維素材を用いることで、繊維充填物の内部負圧形成に必要なヤング率および復元率を付与でき、インク、体液などの水性媒体の吸収性能および保持特性に優れた液吸収体用繊維素材を提供できるもので、また、特定の捲縮率および捲縮数を有する繊維素材が吸液性能にばらつきのない品質安定性に優れた効果を発揮し、特定のかさ密度を有するものが吸液性能、保液特性および経済的に優れていることを見出したもので、詳細については、以下の(1)〜(13)に示す。
(1)ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を溶融紡糸、延伸および切断する工程を経て得られる繊維であって、単糸繊度が1〜33デシテックスおよび繊維長が0.1〜30mmであり、繊維充填物のヤング率が0.02〜0.17MPaおよび復元率が0.10〜0.57となり、かつ繊維同士の融着のない単一または複合繊維材料であることを特徴とする液吸収体用繊維素材。
(2)前記延伸工程と切断工程の間に捲縮工程を含み、切断前の繊維の捲縮率が5〜80%および捲縮数が2〜75個/インチである前記(1)に記載の液吸収体用繊維素材。
(3)前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、前記繊維長が0.5〜10mmであり、かつ前記製造工程において使用される油剤の残存量が該繊維素材の重量を基にして0.005〜1.0重量%であり、また繊維充填物のかさ密度が0.05〜0.30となる前記(1)または(2)に記載の液吸収体用繊維素材。
(4)前記単糸繊度が2.5〜17デシテックス、捲縮率が15〜60%、捲縮数が7〜25個/インチおよび製造工程において使用される油剤がアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤である前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の液吸収体用繊維素材。
(5)前記製造工程において使用される油剤がノニオン系界面活性剤であり、油剤の残存量が繊維素材の重量を基にして0.01〜0.5重量%である前記(3)または(4)に記載の液吸収体用繊維素材。
(6)前記製造工程において使用される油剤がエチレンオキサイドを付加した三重結合を有するグリコールである前記(4)または(5)に記載の液吸収体用繊維素材。
(7)前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、前記ポリプロピレン樹脂は、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが10〜100g/10分である前記(3)ないし(6)のいずれかに記載の液吸収体用繊維素材。
(8)前記繊維充填物には、繊維同士の融着のない前記単一繊維材料以外に、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる少なくとも1種の熱可塑性樹脂から得られる繊維素材、親水化処理した該繊維素材および/または水吸収性高分子を含む前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の液吸収体用繊維素材。
(9)ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を溶融紡糸、延伸、捲縮および切断する工程を経て得られる繊維であって、単糸繊度が1〜33デシテックス、切断前の繊維の捲縮率が5〜80%および捲縮数が2〜75個/インチであり、かつ切断後の繊維長が0.1〜30mmであり、繊維充填物のヤング率が0.02〜0.17MPaおよび復元率が0.10〜0.57となり、かつ繊維同士の融着のない単一または複合繊維材料であることを特徴とする液吸収体用繊維素材の製造方法。
(10)前記捲縮工程における捲縮方法が物理的機械的捲縮方法であり、捲縮率が15〜60%、捲縮数が7〜25個/インチ、繊維長が0.5〜10mmである前記(9)に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
(11)前記捲縮工程において押し込みクリンパーを用い、ニップ圧が0.05〜0.85MPaであり、かつスタフィング圧が0.05〜0.85MPaである前記(9)または(10)に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
(12)前記捲縮工程における捲縮の発現が、熱収縮の異なる多成分繊維および中空繊維を用いる潜在的捲縮方法で、捲縮率が15〜60%、捲縮数が7〜25個/インチ、繊維長が0.5〜10mmである前記(9)に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
(13)前記溶融紡糸、延伸および捲縮する工程において、紡糸・延伸・捲縮直結型のBCF製造装置を用いる前記(9)、(10)または(12)に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
本発明の繊維素材は、インク、体液などの水性媒体の吸収性能および保持特性、ヘッド部への供給性、残液量の低減化のみならず、生産性、品質安定性、リサイクル性などに優れた液吸収体を複雑な製造工程を用いないで経済的に製造でき、かつ異形状容器や入り口が狭い容器への装填が可能で、空気や液体によって容易に移送および装填できる。また、吸液性能および保液性能の制御が容易に行えることから、インクジョットプリンター、マーキング、筆記用具のインク貯蔵部要素や廃インク吸収体、また尿、経血などの排出体液を吸収するための吸収性物品や、体液吸引・移動媒体、吸収媒体、フィルターとしての機能を有する体液制御部材として広範な用途に利用できる。
本発明は、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を溶融紡糸、延伸および切断する工程を経て得られる繊維であって、単糸繊度が1〜33デシテックスおよび繊維長が0.1〜30mmであり、繊維充填物のヤング率が0.02〜0.17および復元率が0.10〜0.57で、かつかさ密度が0.05〜0.30であり、繊維同士の融着のない単一または複合繊維材料であることを特徴とする液吸収体用繊維素材であって、さらに前記延伸工程と切断工程の間に捲縮工程を含み、切断前の繊維の捲縮率が5〜80%および捲縮数が2〜75個/インチであり、かつ前記製造工程において使用される油剤の残存量が該繊維素材の重量を基にして0.005〜1.0重量%である液吸収体用繊維素材に関するものである。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、加熱により化学反応を起こすことなく軟化し、冷却することにより再び固化する。更に加熱と冷却を繰り返したとき可逆的に起こすことのできる樹脂のことである。例えば、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂ならびにポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸系樹脂などのポリエステル系樹脂があり、本発明の目的を阻害しない範囲内で、単独重合体を用いても、他の単量体との共重合体を用いてもよく、さらにこれらの樹脂の単純な組み合わせたものを用いてもよく、さらにリサイクル品を用いてもよい。しかしながら、リサイクル性が重視される用途では、周辺部材と同じもので、できるだけ単独重合体であるものを用いた方が、リサイクル用途が広がり好ましいが、さらに、インク、体液などの水性媒体への溶出物の少ないリサイクル品であることが好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、その使用目的に応じて、液吸収体用繊維素材に求められる要求特性、加工性、コストなどを考慮して決められるが、ポリプロピレン系樹脂を主体としたものが要求特性、加工性、コストの面から最も好ましい。ポリプロピレン系樹脂として用いられるポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンとの共重合体であってもよい。該α−オレフィンとしては、具体的に1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどを挙げることができる。
本発明に使用する、好ましいポリプロピレンとしては、高結晶性ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体などが例示できる。該プロピレン−エチレンランダム共重合体は、そのエチレン含量が1.5重量%以下、好ましくは1重量%以下のものを使用することが望ましい。すなわち、エチレン含量が1.5重量%を超えるプロピレン−エチレンランダム共重合体は、低結晶性となり、強度を低下させてしまうからである。また、これらのポリプロピレンは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。実際、プロピレン−エチレンブロック共重合体は、一般には「ブロックPP」とも呼ばれ、ポリプロピレンの単独重合とエチレン共重合の2段によりリアクター内により製造され、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンエラストマーで構成されるブレンド物と考えられており、エチレン含有量を5〜40重量%にまで増やしても、ホモポリプロピレンに類似した物性が得られることが知られている。
本発明で用いられる好適なポリプロピレン系樹脂とは、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下、「MFR」と略す。)が、10〜100g/10分、好ましくは20〜70g/10分である。MFRが10g/10分未満のものでは紡糸圧力が高くなりすぎることにより、紡糸が困難となる状況を生じる。一方、MFRが100g/10分を超えるものは、高流動性となることより、紡糸口金より吐出される溶融繊維群の安定性が損なわれ、紡糸が困難となる状況を生じる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、その使用目的に応じて、適宜、従来公知の樹脂添加剤を含有、または添加することができる。例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機カルボン酸、帯電防止剤(界面活性剤含む)、中和剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、顔料などである。該酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびビタミン類などが挙げられる。また、分散剤を兼ねた中和剤としては、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。これらの添加剤の配合量は、一般に、樹脂に対して、0.001〜2重量%程度、好ましくは0.01〜0.8重量%程度である。しかし、本発明の繊維素材が用いられるインク、体液などの水性媒体との接液部材には、インク、体液などの水性媒体の変色やヘッド目詰まりの原因となる場合があり、できるだけ添加剤を含まないもの、または必要最小限にコントロールされたものを用いることが推奨される。例えば、医療・食品用途向けグレードの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
本発明の繊維素材は、原料樹脂の溶融混練、紡糸、延伸、捲縮および短繊維への切断などの一連の工程を連続または不連続的に行うことにより製造されるもので、必要に応じて熱セット工程を含めてもよい。これらの工程は、一般的に用いられている方法により行うことができる。例えば、通常公知な紡糸工程で製糸すればよく、1軸あるいは2軸押出機により溶融混練された原料樹脂をノズルから押出し、給水付与または必要に応じて紡糸油剤を給油付与し、糸条を巻き取ることより未延伸糸が得えられる。その際の断面形状は任意であり、丸断面繊維、異形断面繊維、中空繊維いずれであってもよい。未延伸糸はそのまま連続工程で延伸をおこなってもよく、あるいは一旦巻取った後、エージングを行ってから延伸しても良い。延伸工程は1段あるいは2段以上の多段であっても良く、多段延伸における延伸倍率比の設定も特に限定されない。また延伸工程では接触あるいは非接触型の熱源を用いても何ら問題はない。また延伸を円滑に行うために、繊維素材に悪影響を及ぼさない範囲で、油剤を付与することもできる。
延伸時の延伸ローラー温度は、用いる樹脂によって異なるが、例えば、ポリプロピレン系樹脂の場合には、室温〜155℃、特に40〜100℃の範囲が好ましい。延伸ローラー温度が40℃未満の場合は、延伸時に単糸切れが多発するために好ましくない。一方、ローラー温度が155℃を超える場合には、断糸が発生しローラーに原糸が巻きついた時など、ローラー上で原糸が融解し、製糸工程の管理面で不都合が生じる。延伸倍率についても溶融紡糸された繊維の許容される破断伸度の範囲内で任意に設定できる。
このようにして得られた延伸糸の太さは単糸繊度で表し、1.0〜33デシテックスであることが好ましく、好ましくは2.5〜17デシテックスである。1.0デシテックス未満の太さにすると糸切れが生じる場合があり、その一方33デシテックスを越えると、微細孔、空隙率および表面積の低下に基づき吸液速度、吸液性能、保液特性などの低下が起こり好ましくない。
本発明の繊維素材は、上述の延伸糸を、そのまま切断、または捲縮および切断して得られるもので、切断後の繊維長は0.1〜30mm、好ましくは0.5〜10mmであり、該繊維充填物のヤング率は0.02〜0.17MPaおよび復元率は0.10〜0.57で、かつかさ密度は0.05〜0.30となるものである。また、前記切断前の繊維の捲縮率は5〜80%、好ましくは15〜60%および捲縮数は2〜75個/インチ、好ましくは7〜25個/インチである。
荷重下に求められる繊維充填物のヤング率は、該繊維素材の繊維長と共に増加し、また荷重を除去したのち求められる復元率も、繊維長と共に増加するが、特定の繊維長以上ではヤング率および復元率増加の変化度合は低下する。ヤング率は繊維充填物の硬さ柔らかさ、復元力は繊維充填物の弾性力を表すものであり、装填のし易さ、充填物の均一性および安定性に大きく関わり、かつ吸液性能、保液特性および品質安定性に著しい影響を及ぼすものである。繊維充填物のヤング率および復元率が、それぞれ0.02MPaおよび0.10未満であると、該充填物の形状を均一にばらつき無く安定的に維持することが困難となる。また、ヤング率および復元率がそれぞれ0.17MPaおよび0.57を越えると、一定の形状にし、かつその形状を維持するのに過大な力が必要となるだけでなく、吸液特性のばらつきが大きくなり、かつ品質が不安定となり好ましくない。
さらに、前記繊維長が0.1mm未満であると繊維の融着が起こり、繊維長30mmを超えると様々な問題が生じる。例えば、繊維同士や容器と繊維間での凝集力が強くなり、容器への装填の際に強い力を必要とし、かつ均一な充填物が得られず、吸液性能にばらつきが生じ安定した品質の製品を得ることが困難となる。異形状容器や入り口が狭い容器への装填は著しく困難なものとなる。また、特に捲縮繊維の場合には、十分に開繊をしないと安定した吸液特性が得られないなどの不具合が生じる。
また、捲縮率および捲縮数がそれぞれ5%および2個/インチ未満であると充填物として必要な弾性力や、毛細管力に基づく十分な内部負圧が得られず、液吸液性能および保液特性が著しく低下し、かつ保液特性の制御が困難となり、ヘッド部への適切な供給能力が低下する。一方、捲縮率が80%を超えると、単繊維間の凝集力が強くなり過ぎて、品質が不安定化し、適度なバランスのとれた内部負圧を維持できなくなり、また、捲縮数が75個/インチを超える繊維を製造するには、高度な技術を必要し高コストとなり好ましくない。
捲縮率は、繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、繊維素材の弾性度合を表すものである。また捲縮数は、繊維1インチ当たり捲縮(山)の数によって表される。これらは、繊維素材を、例えば、容器に詰め充填物にしたとき、毛細管力に基づく充填物の内部負圧に大きな影響を与える主要な要因となるもので、均一で微細な、かつ連続的な空隙を形成するものほど液吸収体として好適である。本発明では、さらに微小な短繊維にすることで、空隙と接する表面積を増大させ、空隙領域の連続化と繊維方向性の自由度を高めることにより、液吸収体としての性能および品質の安定性を著しく向上させたものである。
充填物のかさ密度は、繊維素材の単糸繊度、繊維長、捲縮率、捲縮数および装填方法に依存する潜在的な液吸収能力を示すものであり、0.05〜0.30g/cmの範囲内、好ましくは0.08〜0.25g/cmである。かさ密度が0.05g/cm未満であると、吸液速度および保液性能が著しく低下し、かつ吸液ばらつきが大きくなり好ましくない。一方、0.30g/cmを超えると装填に強い力を必要とするだけでなく、保液性能が著しく大きくなり、吸液と保液のバランスの良く品質の安定した繊維充填物が得られないだけでなく、繊維素材重量当たりの潜在的液吸収能力は小さくなり経済的にも好ましくない。
繊維充填物の液吸収体としての吸液性能および保液特性は、毛細管力に基づく吸液負圧(mmHO)および保液負圧(mmHO)として一般的な数値で表すことができ、吸液高さ、吸液量および保液量を測定することによって求められる。吸液高さとは、繊維素材が装填された容器の底部に液体を浸し、一定時間後の飽和状態での液面の高さを示し、そのときの液量が吸液量である。また、保液量とは、繊維素材が装填された容器に十分な液を吸収させた後、容器を垂直に持ち上げ、底部から液が一定時間の間連続して滴下しなくなるまで放置して得られる液量のことである。これらの吸液負圧および保液負圧は、繊維素材間の空隙を微小半径とする毛細管現象として捉えることができ、容器を無視すれば、繊維素材と空気、繊維素材と液体、および液体と空気との間の界面張力によって主に支配される。従って、吸液性能および保液特性には繊維素材間の微小空隙、液体の表面張力および密度、繊維素材の表面張力が重要な因子となり、インク吸収体として用いる場合には、繊維素材の形状および表面親水度、インクの親水性および密度、ならびに繊維充填物のかさ密度、均一性など装填方法が重要な要因となる。
また、必要に応じて、充填された繊維素材を加熱することにより、公知の方法により、融着や、部分架橋を起こし、切断した繊維素材同士を固定することができる。例えば、融着する方法としては、鞘成分に低融点材料を用いた芯−鞘短繊維を加熱する方法、繊維素材に接着剤や架橋剤を添加して加熱する方法などがある。
本発明の繊維素材を得るための捲縮および切断には、従来公知の方法を利用できる。例えば、繊維の捲縮には、2つの歯車間を通過させる方法、押し込みクリンパーを用いて充填させる方法、ナイフエッジに当て曲げながら擦過させる方法、空気噴射させる方法、撚糸させる方法などの物理的機械的捲縮方法や、熱収縮の異なる多成分繊維や中空繊維などを用いる潜在的捲縮方法、これらを併用する方法などがある。また、繊維の切断には、回転式カッターを用いる方法、繊維を長手方向に固定し幅方向で垂直に切断する方法などがある。捲縮には、繊維に対して広範囲に亘って安定した捲縮を施すことのできる物理的機械的方法がより好ましい。例えば、押し込みクリンパーを用いる方法では、ニップ圧およびスタフィング圧の調整や蒸気の付与などにより、繊維に適切な捲縮率および捲縮数を付与することができる。更に、これらの工程では、最終製品に用いる繊維素材に悪影響を及ぼさない範囲で、散布油剤および仕上げ油剤を付与することができる。
本発明の各製造工程における作業を円滑に行うため、また繊維素材に親水性を付与する目的で、本発明の効果を損なわない範囲において、それぞれの目的に応じた公知の各種油剤を使用できる。油剤としては、繊維製造において一般に使用されているアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン系界面活性剤がある。捲縮および切断工程で用いる散布および仕上げ油剤については、残存油剤の接液部材への悪影響が心配されるため、使用目的に応じて適切な油剤を選択する必要がある。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルフォスフェート、アルキルスルホネート、そのエチレンオキサイド付加体などが挙げられ、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルエステル、そのエチレンオキサイド付加体、ノニルフェノールのようなアルキルフェノールのエチレンオキサイド付加体、第一級または第二級アルコールのエチレンオキサイド付加体などが挙げられ、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインのようなベタイン化合物などを挙げることができる。
本発明の繊維素材をインク吸収体として用いる場合には、使用する油剤の悪影響が懸念されるため、アニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤が好ましく、より好ましくはノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤のなかでも、エチレンオキサイドを付加したグリコール、例えば、3重結合を有するアセチレングリコールであって、少なくとも1つの側鎖を直線状の主鎖の中央部にもち、この側鎖部分にエチレンオキサイドを付加してなるもの、具体的には、商品名:アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製)や商品名:サーフィノール465(エアープロダツ&ケミカルズ社製)が最も好ましい例として挙げられる。
本発明の繊維素材に含まれる油剤は、吸液性能と印字特性に著しい影響を及ぼすためにその種類だけでなく、残存油材量が重要な因子となる。繊維素材の重量を基にして残存油剤量が0.05〜1.0重量%、特に0.1〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。残存油剤量が0.05重量%未満であると繊維の親水性付与への貢献度が認められず、1.0重量%を超えると印字特性への影響が著しくなるため好ましくない。なお、本発明では特別な洗浄工程を用いないで、適切な残存油剤量を維持できるものである。
本発明の繊維素材は、表面積が大きく、かつ固定されていないため自由度が高く、極めてインク吸収性能に優れたものであり、特別な処理をすることなく、そのまま使用することで、極少量の界面活性剤を含有するインク吸収体として使用することができる。また、使用する前に、前記界面活性剤の水溶液に浸すだけで、簡単に表面の親水化を達成でき、インクなどの水溶性媒体の吸液性能および保液特性を著しく高めることができる。
さらに、繊維素材に親水性を付与する目的で、前記界面活性剤以外に、本発明の目的を損なわない範囲において、繊維素材にポリオキシエチレン−ポリジメチルシロキサンブロックポリマーのようなポリオキシアルキレン基を有する高分子化合物、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンリンから得られる高分子化合物などで表面を処理、ポリアクリル酸ナトリウム、その架橋物、アクリル酸−ビニルアルコール共重合体などの吸収性高分子を添加、あるいはセルロース系樹脂、ポリ乳酸などの親水性樹脂からなる繊維素材を混合して親水性を高めることができる。
本発明の第二は、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を溶融紡糸、延伸、捲縮および切断する工程を経て得られる繊維であって、単糸繊度が1〜33デシテックス、切断前の繊維の捲縮率が5〜80%および捲縮数が2〜75個/インチであり、かつ切断後の繊維長が0.1〜30mmであり、繊維充填物のヤング率が0.02〜0.17および復元率が0.10〜0.57、かつ繊維同士の融着のない単一または複合繊維材料であることを特徴とする液吸収体用繊維素材の製造方法である。
捲縮には繊維に対して長期間安定的形状を維持できる捲縮方法が好ましく、物理的機械的捲縮方法が一般に良く用いられている。特に押し込みクリンパーを用いる方法では、ニップ圧を0.05〜0.85MPa、特に0.10〜0.55MPaおよびスタフィング圧を0.05〜0.85MPa、特に0.10〜0.45MPaにすることにより安定した捲縮を施すことができ好ましい。捲縮率および捲縮数は、両者の微妙な調整によって決まり、ニップ圧およびスタフィング圧がそれぞれ0.05MPa未満であると捲縮率および捲縮数が著しく低下し、0.85MPaを超えると捲縮率および捲縮率が大きくなり製品の品質が不安定となる。また、熱収縮の異なる多成分繊維や中空繊維を用いる潜在的捲縮方法は、捲縮に特別な設備を必要しないなど、製造工程が単純な経済的な製造プロセスにすることができる。このようにして得られた繊維素材を接液部材として用いた場合には、安定した形状を維持でき、耐久性に優れた液吸収体を提供できる。
また、本発明の溶融紡糸、延伸および捲縮する工程を紡糸・延伸・捲縮直結型のBCF(Bulked Continuous Filament:略称BCF)製造装置で実施することができる。当該BCF製造設備は、通常、紡糸、延伸および捲縮の3工程を連続的に行うことができる設備である。例えば、熱可塑性樹脂を紡糸後、直ちに熱ロールにて3〜4.5倍程度に延伸後、直ちに圧縮空気または加圧蒸気による流体押し込み加工などにて捲縮を施し、リラックス冷却後、製品ボビンに巻き取り、捲縮されたBCFプライ糸を得ることができる。得られた繊維の捲縮率および捲縮数は、圧縮空気または加圧蒸気による押し込みの程度、押し込み加工する際の捲縮機の形状(例えば、針の数、形状、間隔など)によって自由に制御することができる。その後、得られた繊維を切断することにより、簡素化された装置によって効率よく液吸収体用繊維素材を製造することが可能となる。
以下、本発明の実施例および比較例により具体的に説明する。なお、各特性値の測定方法は以下の通りである。
(1)単糸繊度(デシテックス)
繊維の糸の太さを表す単位で、10000m当りのグラム数である。紡糸の際の吐出量(g/分)、巻取速度(m/分)およびノズルのホール数、ならびに延伸倍率から次式によって求められる。
(2)繊維長(mm)
繊維長は、切断工程で得られた短繊維試料を、2箇所からサンプリングし、自然状態にしたときの短繊維の長さを測定し、それぞれのサンプリング箇所における試料5個、合計10個の測定値の平均値(単位:mm)として求める。
(3)捲縮率(%)
捲縮率は、繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、下記の式から算出し求める。
元の繊維の長さとは、幅約4mmの繊維が自然状態において、繊維の両端部を直線で結んだ長さ(約5cm)をいう。自然状態とは、繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重レベル(端部に約0.001mN/デシテックスの荷重)で下方に垂らした状態をいう。繊維を引き伸ばしたときの長さとは、繊維の捲縮がなくなるまで伸ばしたときの最小荷重時(端部に約1mN/デシテックスの荷重)の長さをいう。捲縮後、切断工程前の繊維試料を、2箇所からサンプリングし、7cmに切断して得られる短繊維試料5個、合計10個の試料について、AおよびBを正確に測定し求め、その平均値を捲縮率(%)とする。
(4)捲縮数(個/インチ)
捲縮後、切断工程前の繊維試料を、2箇所からサンプリングし、7cmに切断して得られた短繊維試料5個、合計の10個試料について、幅約4mmの繊維の自然状態(端部に約0.001mN/デシテックスの荷重)において両端部を直線で結んだときの中央部5cm当りの捲縮(山)の数を数え、捲縮数(個/インチ)を求め、その平均値を捲縮数とする。
(5)油剤残存量(重量%)
残存油剤量の測定は、迅速残脂抽出装置(東海計器株式会社製R−II型)を用いて行った。切断工程後の短繊維試料約2gを正確に秤量し容器に入れ、10mlのメタノールを加え含浸させて油剤を溶解させる。圧縮空気を数回噴射させて油剤を含むメタノール溶液を取り出し、加熱蒸発乾固して油剤残存量を測定し、溶出した油剤残存量を短繊維試料に対する百分率として求める。2箇所からサンプリングして、5回測定を行ない、その平均値を油剤残存量(重量%)とする。
(6)繊維充填物のヤング率(MPa)および復元率
内径18mm、高さ70mmおよび厚さ1.5mmのアクリル樹脂円柱容器の底端部を縦横16×18メッシュのプラスチック製網目織シートで密閉した円柱容器を作成し、短繊維試料約1gを前記円柱容器に装填し正確な重量を測定する。前記円柱容器の上部から0.03、0.14および0.25kgf/cmの荷重を順次かけ、それぞれの短繊維装填高さを求めた。該装填高さ−荷重プロットからは直線が得られ、交点よりゼロ荷重装填高さを求める。ゼロ荷重装填高さ(外挿値)と該荷重装填高さとの差からゼロ荷重装填高さ(外挿値)に対するそれぞれの荷重下における圧縮ひずみを求め、下記の式で表される荷重−ひずみプロットの傾きよりヤング率(MPa)を求める。
ヤング率を測定する際の最大荷重である0.25kgf/cm荷重のときの装填高さ(最大荷重下装填高さ)と、その最大荷重を取り除いた直後の復元装填高さを求め、装填高さ−荷重プロットから求めたゼロ荷重装填高さ(外挿値)とから下記の式より復元率を求める。復元率は荷重下で生じた圧縮ひずみに対する復元し易さの尺度となる。
(6)かさ密度(g/cm
短繊維試料を前記円柱容器に高さ60mmになるように均一に(必要に応じ開繊する)装填し、上部端面を前記網目織シートで覆い針金で作った輪を挿入し固定する。装填した該試料の重量と体積からかさ密度(g/cm)を求める。5箇所からサンプリングし、5個試料の平均値をかさ密度とする。
(7)装填のし易さ
かさ密度の測定において、短繊維を円柱容器に装填する際の、装填のし易さを目視で観察する。○:すばやく、ばらつきも少なく装填できる。△:すばやく装填できるが装填ばらつきが見られるか、または、装填ばらつきは少ないが装填に時間がかかる。×:装填に時間がかかり、かつ装填ばらつきも大きい。
(8)吸液負圧(mmHO)および保液負圧(mmHO)
脱イオン水に1重量%のアセチノールE100および20重量%のイソプロパノールを加え、水溶液を作製する。かさ密度を測定した円柱容器に、上端部を口径2mmの空気抜け孔を設けたアクリル樹脂シートで密閉し、底部から20mmの距離まで水溶液に浸して、液面上昇の先端部分と下端部分を経時的に求める。上昇面の高さが飽和状態になっていることを確認し、30分後の上昇面(先端部分と下端部分)の液面の平均高さ(cm)を求め、保液負圧(H)(mmHO)とし、かつ先端部分と下端部分のばらつきを±で表す。
この飽和状態に吸液した円柱容器の重量を測定し水溶液の吸液量(W1)を求め、それから該円柱容器を繊維充填物の上端部(60mm)まで水溶液に20分間浸け、該円柱容器の重量を測定し、水溶液の全吸液量(W2)を求める。その後、直ちに円柱容器を垂直に持ち上げ、底部から液が10分間連続して滴下しなくなるまで放置し、残存吸液量(W3)を測定し、下記の式より液面下の吸液量(W4)を差し引いて求められる吸液負圧(W)(mmHO)および保液負圧(W)(mmHO)を算出する。
(実施例1〜6)
ポリプロピレン樹脂(三井化学工業株式会社製S119、MFR:60g/10分)をエクストルーダーで混練、次いで200ホールのノズル2個を用い、乾式法で、吐出量472g/分および巻取速度515m/分、温度170〜240℃で溶融紡糸し未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を、約0.1重量%のアセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製)を含む湯槽において接触加熱しながら延伸倍率3.75で延伸し、次いで、押し込みクリンパーを用い、ニップ圧0.3MPaおよびスタフィング圧0.2MPaにおいて捲縮を付与し、単糸繊度6.1デシテックス、捲縮率41%、および捲縮数12.5個/インチの延伸糸を得た。その後、脱イオン水を付与しながら回転式カーターで切断し、繊維長1.5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維の油剤残存量、繊維充填物のヤング率、復元率およびかさ密度、容器への装填のし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を前述の方法に従って求め、その結果を表1に実施例1として示した。また、実施例1により得られた捲縮糸を各種繊維長になるように実施例1に準じて切断し、表1に示す繊維長の短繊維を得た。前述の方法に従って、油剤残存量、繊維充填物のヤング率、復元率およびかさ密度、容器への装填のし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を表1に示し、実施例2〜6とした。
(比較例1および2)
実施例1により得られた捲縮糸を繊維長を実施例1に準じて切断し、繊維長が35.5および40.7mmの短繊維を得た。前述の方法に従って、油剤残存量、繊維充填物のヤング率、復元率およびかさ密度、容器への装填のし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を表1に示し、比較例1および2とした。
表1の実施例1〜6および比較例1および2ないし図1より、繊維長が長くなると共に、ヤング率および復元率は増加し、短繊維の装填および形状維持に大きな力を必要とし、また繊維長が短くなりすぎるとヤング率および復元率が著しく低下し、吸液に必要な空隙率を維持するのが難しくなることが示唆される。また、繊維長が長くなると短繊維を容器に装填するのが難しくなり、吸液のばらつきも大きくなり安定した吸液特性が得られないことがわかり、液吸収体用繊維素材には適切な繊維長範囲の存在することがわかる。
(実施例7〜10)
実施例2において得られた繊維長3.1mmの短繊維を用いて、表2に示すかさ密度の繊維充填物を作製し、前述の方法に従って、かさ密度、装填のし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を求め、また吸液した充填短繊維重量当たりの吸液量を吸液効率として表し、実施例7〜10として表2に示した。
表2より、かさ密度が高くなると共に、吸液負圧および保液負圧が高くなり、かつ吸液負圧のばらつきも少なくなるが、吸液効率がわるくなることがわかる。また、図2より、吸液負圧はかさ密度と共に直線的に増加するが、保液負圧は低密度では極端に低下、また高密度では頭打ちになり、装填のし易さおよび吸液効率からみても、最適なかさ密度の存在することがわかる。
(実施例11〜19)
表3のニップ圧およびスタフィン圧で捲縮を付与し、同表の繊維長になるように捲縮糸の切断をする以外は、実施例1に準じて、溶融紡糸、延伸および切断を行ない、前述の方法に従って計算または測定を行ない、表3に示す単糸繊度、繊維長、捲縮率、捲縮数および油剤残存量を得た。得られた短繊維を前述の方法に従って、該円柱容器に装填し、かさ密度、装填にし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を求め、その結果を実施例11〜19として表3に示した。
(実施例20〜21)
紡糸工程において、400ホールおよび200ホールのノズル2個を用い、吐出量を614g/分および796g/分、巻取速度を642m/分および455m/分にし、捲縮工程におけるニップ圧およびスタフィング圧を表3の数値にする以外は実施例1に準じて、溶融紡糸、延伸、捲縮および切断を行ない、単糸繊度が、それぞれ3.3および11デシテックスの短繊維を得た。前述の方法に従い、捲縮率、捲縮数、繊維長、かさ密度、装填し易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を求め、その結果を表3に示し、実施例20および21とした。
(比較例3〜5)
ニップ圧およびスタフィング圧を表4の値にする以外は実施例1に準じて、溶融紡糸、延伸、捲縮および切断を行ない、単糸繊度6.1デシテックスの短繊維を得て、前述の方法に従って、捲縮率、捲縮数、繊維長、かさ密度、装填のし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を求め、その結果を表5に示し、比較例3および4とした。
また、紡糸工程において、120ホールのノズル2個を用い、吐出量を850g/分、巻取速度を350mにし、捲縮工程におけるニップ圧およびスタフィング圧を表4の数値にする以外は実施例1に準じて、溶融紡糸、延伸、捲縮および切断を行ない、単糸繊度44デシテックスの短繊維を得た。前述の方法に従って、捲縮率、捲縮数、繊維長、かさ密度、装填のし易さ、吸液負圧(HおよびW)および保液負圧(W)を求め、その結果を表4に示し、比較例5とした。
短繊維繊維長に対する繊維充填物のヤング率および復元率の関係 繊維充填物のかさ密度に対する吸液負圧、保液負圧および吸液効率の関係

Claims (13)

  1. ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を溶融紡糸、延伸および切断する工程を経て得られる繊維であって、単糸繊度が1〜33デシテックスおよび繊維長が0.1〜30mmであり、繊維充填物のヤング率が0.02〜0.17MPaおよび復元率が0.10〜0.57となり、かつ繊維同士の融着のない単一または複合繊維材料であることを特徴とする液吸収体用繊維素材。
  2. 前記延伸工程と切断工程の間に捲縮工程を含み、切断前の繊維の捲縮率が5〜80%および捲縮数が2〜75個/インチである請求項1に記載の液吸収体用繊維素材。
  3. 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、前記繊維長が0.5〜10mmであり、かつ前記製造工程において使用される油剤の残存量が該繊維素材の重量を基にして0.005〜1.0重量%であり、また繊維充填物のかさ密度が0.05〜0.30となる請求項1または2に記載の液吸収体用繊維素材。
  4. 前記単糸繊度が2.5〜17デシテックス、捲縮率が15〜60%、捲縮数が7〜25個/インチおよび製造工程において使用される油剤がアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤である請求項1ないし3のいずれかに記載の液吸収体用繊維素材。
  5. 前記製造工程において使用される油剤がノニオン系界面活性剤であり、油剤の残存量が繊維素材の重量を基にして0.01〜0.5重量%である請求項3または4に記載の液吸収体用繊維素材。
  6. 前記製造工程において使用される油剤がエチレンオキサイドを付加した三重結合を有するグリコールである請求項4または5に記載の液吸収体用繊維素材。
  7. 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、
    前記ポリプロピレン樹脂は、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが10〜100g/10分である請求項3ないし6のいずれかに記載の液吸収体用繊維素材。
  8. 前記繊維充填物には、繊維同士の融着のない前記単一繊維材料以外に、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる少なくとも1種の熱可塑性樹脂から得られる繊維素材、親水化処理した該繊維素材および/または水吸収性高分子を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の液吸収体用繊維素材。
  9. ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂を溶融紡糸、延伸、捲縮および切断する工程を経て得られる繊維であって、単糸繊度が1〜33デシテックス、切断前の繊維の捲縮率が5〜80%および捲縮数が2〜75個/インチであり、かつ切断後の繊維長が0.1〜30mmであり、繊維充填物のヤング率が0.02〜0.17MPaおよび復元率が0.10〜0.57となり、かつ繊維同士の融着のない単一または複合繊維材料であることを特徴とする液吸収体用繊維素材の製造方法。
  10. 前記捲縮工程における捲縮方法が物理的機械的捲縮方法であり、捲縮率が15〜60%、捲縮数が7〜25個/インチ、繊維長が0.5〜10mmである請求項9に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
  11. 前記捲縮工程において押し込みクリンパーを用い、ニップ圧が0.05〜0.85MPaであり、かつスタフィング圧が0.05〜0.85MPaである請求項9または10に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
  12. 前記捲縮工程における捲縮の発現が、熱収縮の異なる多成分繊維および中空繊維を用いる潜在的捲縮方法で、捲縮率が15〜60%、捲縮数が7〜25個/インチ、繊維長が0.5〜10mmである請求項9に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
  13. 前記溶融紡糸、延伸および捲縮する工程において、紡糸・延伸・捲縮直結型のBCF製造装置を用いる請求項9、10または12に記載の液吸収体用繊維素材の製造方法。
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