光学式情報記録再生装置における記録密度は、光ヘッド装置が光記録媒体上に形成する集光スポットの径の2乗に反比例する。すなわち、集光スポットの径が小さいほど記録密度は高くなる。ところで、光ヘッド装置の光源から光記録媒体へ向かう光の往路において、対物レンズの縁を通る光の強度の、対物レンズの中心を通る光の強度に対する比をリム強度と呼ぶ。リム強度が大きいほど集光スポットの径は小さくなるが、往路における光学系の効率は低くなる。すなわち、集光スポットの径と往路における光学系の効率とはトレードオフの関係にある。
光記録媒体への情報の記録時には、集光スポットの中心部の強度が強い領域のみが記録マークの形成に寄与する。そのため、集光スポットの径が多少大きくても、集光スポットの径に比べて小さい記録マークを形成することができ、形成される記録マークの品質はそれほど劣化しない。すなわち、集光スポットの径は多少大きくとも構わない。一方、光記録媒体へは高いパワーの光を照射する必要があるため、往路における光学系の効率はできるだけ高いことが望ましい。これに対し、光記録媒体からの情報の再生時には、集光スポットの全体が信号の再生に寄与する。そのため、集光スポットの径が大きいと、再生すべき記録マークの周囲の記録マークからの信号が再生すべき記録マークからの信号に混入し、再生される信号の品質が劣化する。すなわち、集光スポットの径はできるだけ小さいことが望ましい。一方、光記録媒体へは低いパワーの光を照射すれば良いため、往路における光学系の効率は多少低くても構わない。
以上より、集光スポットの径と往路における光学系の効率のトレードオフの関係を打破し、光学式情報記録再生装置における記録密度を高めるには、光記録媒体への情報の記録時には、往路における光学系の効率をできるだけ高くし、光記録媒体からの情報の再生時には、集光スポットの径をできるだけ小さくすることが有効である。そのために、光ヘッド装置は、光記録媒体への情報の記録時と光記録媒体からの情報の再生時とで、対物レンズにおけるリム強度を切り替える機能を備えるとよい。すなわち、記録時にはリム強度を小さくして集光スポットの径を多少大きくして光学系の効率をできるだけ高くし、再生時にはリム強度を大きくして集光スポットの径をできるだけ小さくして光学系の効率をやや低くするとよい。
光記録媒体への情報の記録時と光記録媒体からの情報の再生時とで対物レンズにおけるリム強度を切り替える機能を有する光ヘッド装置は、例えば、特開2006−107650号公報に開示されている。図1にその光ヘッド装置の主要部分が示される。モジュール29に内蔵された半導体レーザからの出射光は、モジュール29の窓部に設けられた回折光学素子を一部が透過し、コリメータレンズ30で平行光化され、偏光方向切替素子31、偏光性レンズ32を通り、1/4波長板33で直線偏光から円偏光へ変換され、対物レンズ34でディスク35上に集光される。ディスク35からの反射光は、対物レンズ34を逆向きに通り、1/4波長板33で円偏光から往路の光と偏光方向が直交した直線偏光へ変換され、偏光性レンズ32、偏光方向切替素子31、コリメータレンズ30を逆向きに通り、モジュール29の窓部に設けられた回折光学素子で一部が回折され、モジュール29に内蔵された光検出器で受光される。偏光方向切替素子31は、入射光の偏光方向を変化させない全波長板としての働きと、入射光の偏光方向を90°変化させる1/2波長板としての働きを切り替える機能を有する。
図2A〜2Bは偏光性レンズ32の断面図である。偏光性レンズ32は、ガラス基板36aとガラス基板36bとの間に液晶高分子層37aと充填材38aとを挟み、ガラス基板36bとガラス基板36cとの間に液晶高分子層37bと充填材38bとを挟んだ構成である。液晶高分子層37aと充填材38aとの境界面には、液晶高分子層37aが凹形状、充填材38aが凸形状となるレンズが形成されている。液晶高分子層37bと充填材38bとの境界面には、液晶高分子層37bが凸形状、充填材38bが凹形状となるレンズが形成されている。液晶高分子層37a、37bは一軸の屈折率異方性を有し、その異常光成分に対する屈折率は常光成分に対する屈折率に比べて大きい。一方、充填材38a、38bの屈折率は、液晶高分子層37a、37bの常光成分に対する屈折率と等しい。
ディスク35への情報の記録時には、偏光方向切替素子31は入射光の偏光方向を変化させない。このとき、偏光性レンズ32へ平行光として入射する往路の光は、図2Aに示されるように、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光となり、液晶高分子層37a、37bに対しては常光となる。このため、液晶高分子層37aと充填材38aとの境界面および液晶高分子層37bと充填材38bとの境界面は、往路の光に対してレンズとして作用しない。その結果、往路の光は偏光性レンズ32においてビーム径が変化せず、偏光性レンズ32から平行光として出射する。従って、対物レンズ34におけるリム強度は小さくなる。これに対し、ディスク35からの情報の再生時には、偏光方向切替素子31は入射光の偏光方向を90°変化させる。このとき、偏光性レンズ32へ平行光として入射する往路の光は、図2Bに示されるように、偏光方向が紙面に平行な直線偏光となり、液晶高分子層37a、37bに対しては異常光となる。このため、液晶高分子層37aと充填材38aとの境界面は、往路の光に対して凹レンズとして作用し、液晶高分子層37bと充填材38bとの境界面は、往路の光に対して凸レンズとして作用する。その結果、往路の光は偏光性レンズ32においてビーム径が拡大され、偏光性レンズ32から平行光として出射する。従って、対物レンズ34におけるリム強度は大きくなる。このように、図1に示される光ヘッド装置は、レンズ作用を利用して往路の光のビーム径を変化させることにより対物レンズにおけるリム強度を切り替える。このような機能を有する光ヘッド装置の例としては、特表2006−500710号公報に記載の光ヘッド装置もある。
図1に示される光ヘッド装置によるディスク35からの情報の再生時に、偏光性レンズ32において往路の光のビーム径を大きく拡大するためには、偏光性レンズ32における、液晶高分子層37aと充填材38aとの境界面に形成されたレンズから、液晶高分子層37bと充填材38bとの境界面に形成されたレンズまでの距離を長くする必要がある。すなわち、この光ヘッド装置は、偏光性レンズ32の厚さを厚くする必要があるため、光ヘッド装置を小型化することが困難である。また、この光ヘッド装置によってディスク35から情報が再生される時に、偏光性レンズ32へ入射する往路の光の光軸に対して偏光性レンズ32が傾くと、この光軸に対して液晶高分子層37aと充填材38aとの境界面に形成されたレンズおよび液晶高分子層37bと充填材38bとの境界面に形成されたレンズの光軸が傾く。そのため、偏光性レンズ32から出射する往路の光に収差が発生し、ディスク35上に形成される集光スポットの形状が乱れる。すなわち、この光ヘッド装置は、偏光性レンズ32の傾きを高精度に調整する必要があるため、光ヘッド装置を低価格化することが困難である。特表2006−500710号公報に記載の光ヘッド装置にも同じことがいえる。
また、対物レンズにおけるリム強度を切り替える機能を有する従来の光ヘッド装置の別の例として、特開平11−316965号公報に記載の光ヘッド装置がある。この光ヘッド装置においては、光源から出射された往路の光の光路中に液晶光学素子が設けられている。液晶光学素子は、入射光の光軸を中心とする円形状の領域および複数の輪帯状の領域に分割されたパタン電極を有する。液晶光学素子のパタン電極の各領域に電圧を印加しない場合、各領域を通る光に対する液晶光学素子の透過率は、ほぼ100%である。従って、往路の光は液晶光学素子を透過することにより強度分布が変化しない。これに対し、液晶光学素子のパタン電極の各領域に電圧を印加する場合、各領域を通る光に対する液晶光学素子の透過率は、印加される電圧に依存する。入射光の光軸に近い領域には透過率が低くなるような電圧が印加され、入射光の光軸から遠い領域には透過率が高くなるような電圧が印加されると、往路の光の強度分布は、液晶光学素子を透過することによって、光軸に垂直な断面内における中心部の光の強度に対する周辺部の光の強度が相対的に高くなるように変化する。すなわち、液晶光学素子のパタン電極の各領域に適切な電圧を印加することにより、往路の光の対物レンズにおけるリム強度を大きくすることができる。
このような、パタン電極に印加される電圧に応じて透過率が変化する液晶光学素子を用いた光ヘッド装置においては、液晶光学素子のパタン電極の各領域に互いに異なる電圧が印加され、各領域を通る光に対する液晶光学素子の透過光の位相が互いに異なる。このような光ヘッド装置では、液晶光学素子の透過光に波面収差が発生して光記録媒体上に形成される集光スポットの形状が乱れ、再生される信号の品質が劣化する。
特開2001−134972号公報には、半導体レーザ光源と、半導体レーザ光源から出射し光学式情報記録媒体を反射したレーザ光を受光して所定の情報信号を検出する多分割光検出器とを同一筐体内に収納した半導体レーザモジュールが記載されている。この半導体レーザモジュールは、光学式情報記録媒体を反射したレーザ光を多分割光検出器に導く機能を有する直線回折格子またはホログラフィック回折格子が透明部材上に形成され、その透明部材が筐体の窓部に設けられている。これらの回折格子では、半導体レーザ光源から出射されて回折格子を通過するレーザ光束の中で中心部近傍の光束が通過する領域での格子溝幅もしくは格子溝深さと、外縁部近傍の光束が通過する領域での格子溝幅もしくは格子溝深さとが互いに異なっている。
特開2004−87098号公報には、中心軸線と、その中心軸線に対して横方向に延びる第1および第2の曲面表面と、第1の曲面表面と第2の曲面表面との間に延びる外周面とを有する光学素子が開示されている。光が第1の曲面表面に入射し、第2の曲面表面から出射するまでに受ける屈折により、第2の曲面表面から出射する出射光の光強度分布と第1の表面へ入射する入射光の光強度分布とが互いに異なる。この光学素子は、入射光の中心強度に対する周辺強度の比であるリム強度に対する出射光のリム強度の割合であるリム強度改善率Rが1.07以上1.5以下である。
特開平5−314572号公報には、案内溝を有する光磁気記録媒体と、直線偏光のレーザ光を出射する光源と、光検出部と、光路形成部とを備えている光ピックアップ装置が開示されている。光検出部は、上記光磁気記録媒体からの反射光を受光して各種信号を取り出す。光路形成部は、光源からの出射光を光磁気記録媒体に導く一方、その光磁気記録媒体からの反射光を光検出部に導く。そして、光路形成部は、光源からの出射光を光軸位置で高くその周辺部ほど低い伝達特性で光磁気記録媒体に導く手段と、光磁気記録媒体からの反射光を光軸位置で低くその周辺部ほど高い伝達特性で光検出部に導く手段とにより構成されている。
特許第2655747号公報には、光源からのガウス分布型の断面強度分布を有する光束を対物レンズにより集光して光スポットとして光ディスク上に照射し、光ディスクからの反射光を受光素子にて受光することにより光ディスク上の情報を読み取る光ピックアップが開示されている。この光ピックアップでは、光源からの光束の径よりも小さい回折格子を備えた回折素子が、光源と対物レンズとの間であって、光ディスクからの反射光を回折して受光素子へと導く位置に設けられている。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図3に、本発明の第一の実施の形態に係る光ヘッド装置の構成が示される。光ヘッド装置60は、半導体レーザ1、ビーム整形レンズ2、コリメータレンズ3、偏光方向制御素子4、偏光ビームスプリッタ5、1/4波長板6、対物レンズ7、円筒レンズ9、凸レンズ10、光検出器11を具備する。
光源である半導体レーザ1から出射される出射光は、ビーム整形レンズ2で断面形状が楕円形から円形へ変換され、コリメータレンズ3で平行光化される。平行光化された光は、偏光方向制御素子4を通り、光分離部である偏光ビームスプリッタ5へ入射してP偏光成分の殆んど全てが透過し、1/4波長板6で直線偏光から円偏光へ変換され、対物レンズ7で光記録媒体であるディスク8上へ集光される。ディスク8からの反射光は、対物レンズ7を逆向きに通り、1/4波長板6で円偏光から往路の光と偏光方向が直交した直線偏光へ変換され、偏光ビームスプリッタ5へS偏光として入射して殆んど全てが反射され、円筒レンズ9、凸レンズ10を通り、光検出器11で受光される。本実施の形態において、偏光方向制御素子4と偏光ビームスプリッタ5とは、強度分布切替部を構成する。偏光方向制御素子4は後に述べるように波長板を含んでいる。
光検出器11は、円筒レンズ9、凸レンズ10により形成される2つの焦線の中間に設けられており、ディスク8の半径方向に対応する分割線およびディスク8の接線方向に対応する分割線で隔てられた4つの受光部を有する。4つの受光部から出力される電圧信号に基づいて、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号、およびディスク8に記録されたマーク/スペース信号である再生信号が検出される。フォーカス誤差信号は公知の非点収差法により検出され、トラック誤差信号は公知のプッシュプル法により検出される。再生信号は4つの受光部から出力される電圧信号の和の高周波成分から検出される。
半導体レーザ1の活性層に平行な方向をX方向、活性層に垂直な方向をY方向とする。半導体レーザ1からの出射光は、X方向のビームの広がり角がY方向のビームの広がり角に比べて小さい。そのため、出射光の断面形状は、X方向を短軸、Y方向を長軸とする楕円形である。ビーム整形レンズ2は、X方向のビームの広がり角を拡大してY方向のビームの広がり角と等しくすることにより、往路の光の断面形状を楕円形から円形へ変換する。ここで、半導体レーザ1におけるX方向のビームの広がり角を8.5°(半値全角/HWHM:Half Width at Half Maximum)、Y方向のビームの広がり角を20.0°(半値全角)とし、ビーム整形レンズ2におけるX方向のビームの広がり角の拡大率を2.35倍とする。また、コリメータレンズ3の焦点距離を12.2mm、対物レンズ7の焦点距離を3.0mmとする。このとき、偏光方向制御素子4を用いない場合の、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向、Y方向とも0.55となる。
図4A〜4Bは、偏光方向制御素子4の断面図である。偏光方向制御素子4は、ガラス基板12aとガラス基板12bとの間に液晶高分子層14を挟んだ構成である。ガラス基板12a、12bの液晶高分子層14側の面には、液晶高分子層14に交流電圧を印加するための透明電極13a、13bがそれぞれ形成されている。図中の矢印は、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向を示している。液晶高分子層14は、光学軸の方向が液晶高分子の長手方向である一軸の屈折率異方性を有する。液晶高分子の長手方向に平行な方向の偏光成分(異常光成分)に対する屈折率をne、長手方向に垂直な方向の偏光成分(常光成分)に対する屈折率をnoとすると、neはnoに比べて大きい。
透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、図4Aに示されるように、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸にほぼ平行な方向となる。従って、入射光に対する液晶高分子層14の屈折率はnoとなる。このとき、偏光方向制御素子4は、入射光の偏光方向を変化させない全波長板として作用する。これに対し、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、図4Bに示されるように、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸にほぼ垂直な方向となる。従って、入射光に対する液晶高分子層14の屈折率は、異常光成分に対してはne、常光成分に対してはnoとなる。ここで、入射光の波長をλ、液晶高分子層14の厚さをtとしたとき、2π(ne−no)t/λ=πが成り立つように厚さtの値を定める。このとき、偏光方向制御素子4aは、入射光の偏光方向を所定の角度だけ変化させる1/2波長板として作用する。
図5は、偏光方向制御素子4の平面図である。第一の実施の形態に係る偏光方向制御素子4は、図5に示されるように、4領域に分割されて制御される偏光方向制御素子4aである。偏光方向制御素子4aにおける液晶高分子層14は、入射光の光軸を中心とする3つの同心円により、領域15a〜15dの4つの領域に分割されている。図中の矢印は、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合の、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向を示している。液晶高分子の長手方向は、領域15a〜15dの間で互いに異なっており、領域15dにおいてはX方向と一致しているが、領域15c、15b、15aの順にX方向に対する角度が大きくなる。
ここで、入射光の偏光方向はX方向と一致している。このとき、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向のX方向に対する角度をαとすると、偏光方向制御素子4aは、入射光の偏光方向を2αだけ変化させる1/2波長板として作用する。但し、αの値は領域15a〜15dの間で互いに異なる。ここで、対物レンズ7の開口数を0.65とすると、図5に一点鎖線で示されるように、対物レンズ7の有効半径は、3mm×0.65=1.95mmとなる。また、領域15aと領域15bとの境界の円の半径を0.86mm、領域15bと領域15cとの境界の円の半径を1.44mm、領域15cと領域15dとの境界の円の半径を1.81mmとする。さらに、領域15a、15b、15c、15dにおけるαの値をそれぞれ17.0°、13.6°、9.4°、0°とする。
偏光ビームスプリッタ5に対するP偏光の偏光方向は、X方向と一致している。偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、偏光ビームスプリッタ5への入射光はP偏光となり、偏光ビームスプリッタ5を殆んど全てが透過する。これに対し、偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、偏光ビームスプリッタ5への入射光は、P偏光に対して偏光方向が2αだけ変化した直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ5をcos22αの透過率で透過する。但し、αの値は領域15a〜15dの間で互いに異なる。
偏光方向制御素子4aと偏光ビームスプリッタ5とにより構成される強度分布切替部への入射光の強度分布、強度分布切替部の透過率分布、強度分布切替部からの出射光の強度分布の関係が、図6〜図8に示される。各図の横軸Rは、光軸に垂直な断面内における光軸からの距離を表しており、各図の縦軸は、それぞれ光軸を通る断面内における入射光の強度、透過率、出射光の強度を表している。
図6は、強度分布切替部への入射光の強度分布を示している。対物レンズ7の中心(R=0mm)を通る光の強度を1とすると、対物レンズ7の縁(R=1.95mm)を通る光の強度は0.55となる。偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率は、光軸からの距離Rによらず1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図6に示されるものと同じになる。従って、対物レンズ7におけるリム強度は0.55となる。これに対し、偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率分布は、図7の実線で示されるようになる。すなわち、0mm<R<0.86mmの範囲では透過率は0.69であり、0.86mm<R<1.44mmの範囲では透過率は0.79であり、1.44mm<R<1.81mmの範囲では透過率は0.90であり、1.81mm<R<1.95mmの範囲では透過率は1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図8の実線で示されるようになる。対物レンズ7の中心(R=0mm)を通る光の強度は0.69であり、対物レンズ7の縁(R=1.95mm)を通る光の強度は0.55である。従って、対物レンズ7におけるリム強度は0.80となる。
ここで、半導体レーザ1からの出射光の波長を405nmとする。ディスク8へ情報を記録する場合には、偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は0.55となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は0.529μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は45.0%となる。これに対し、ディスク8から情報を再生する場合には、偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は0.518μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は36.7%となる。すなわち、ディスク8への情報の記録時には、リム強度を小さくすることにより集光スポットの径を多少大きくすると共に往路における光学系の効率を高くし、ディスク8からの情報の再生時には、リム強度を大きくすることにより集光スポットの径を小さくすると共に往路における光学系の効率をやや低くすることができる。
本発明の第二の実施の形態に係る光ヘッド装置は、図3に示される光ヘッド装置60のビーム整形レンズ2が削除され、偏光方向制御素子4は偏光方向制御素子4bに置き換わる。ビーム整形レンズ2を削除することにより、往路の光の断面形状はX方向を短軸、Y方向を長軸とする楕円形になる。ここで、半導体レーザ1におけるX方向のビームの広がり角を8.5°(半値全角)、Y方向のビームの広がり角を20.0°(半値全角)とする。また、コリメータレンズ3の焦点距離を20.0mm、対物レンズ7の焦点距離を3.0mmとする。このとき、偏光方向制御素子4bを用いない場合の、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。
偏光方向制御素子4bの断面図は、図4A〜4Bに示されるものと同じである。透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、偏光方向制御素子4bは、入射光の偏光方向を変化させない全波長板として作用する。これに対し、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、偏光方向制御素子4bは、入射光の偏光方向を所定の角度だけ変化させる1/2波長板として作用する。
図9は、偏光方向制御素子4bの平面図である。偏光方向制御素子4bにおける液晶高分子層14は、光軸に関して対称でY方向に平行な6本の直線により7つの領域に分割されている。このうち、光軸を含む領域を領域15eとし、領域15eの両側に位置する2つの領域を領域15fとし、領域15fを挟んで領域15eの反対側に位置する2つの領域を領域15gとし、領域15gを挟んで領域15fの反対側に位置する2つの領域を領域15hとする。図中の矢印は、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合の、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向を示している。液晶高分子の長手方向は領域15e〜15hの間で互いに異なっており、領域15hにおいてはX方向と一致しているが、領域15g、15f、15eの順にX方向に対する角度が大きくなる。
ここで、入射光の偏光方向はX方向と一致している。このとき、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向のX方向に対する角度をαとすると、偏光方向制御素子4bは、入射光の偏光方向を2αだけ変化させる1/2波長板として作用する。但し、αの値は領域15e〜15hの間で互いに異なる。ここで、対物レンズ7の開口数を0.65とすると、図9に一点鎖線で示されるように、対物レンズ7の有効半径は、3mm×0.65=1.95mmとなる。また、領域15eと領域15fとの境界の直線の光軸からの距離を0.97mm、領域15fと領域15gとの境界の直線の光軸からの距離を1.53mm、領域15gと領域15hとの境界の直線の光軸からの距離を1.84mmとする。さらに、領域15e、15f、15g、15hにおけるαの値をそれぞれ26.1°、20.1°、13.6°、0°とする。
偏光方向制御素子4bと偏光ビームスプリッタ5とにより構成される強度分布切替部への入射光の強度分布、強度分布切替部の透過率分布、強度分布切替部からの出射光の強度分布の関係が、図10A/B〜図12A/Bに示される。図の横軸X、横軸Yは、それぞれ光軸に垂直な断面内における光軸からの距離のX方向、Y方向の成分を表しており、図10A/B〜図12A/Bの縦軸は、それぞれ光軸を通るX方向、Y方向の断面内における入射光の強度、透過率、出射光の強度を表している。
図10A〜10Bは、強度分布切替部への入射光の強度分布を示している。対物レンズ7の中心(X=0mm、Y=0mm)を通る光の強度を1とすると、対物レンズ7のX方向の縁(X=1.95mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.30(図10A参照)、対物レンズ7のY方向の縁(X=0mm、Y=1.95mm)を通る光の強度は0.80(図10B参照)となる。偏光方向制御素子4bの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率は、X、Yによらず1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図10A〜10Bに示されるものと同じになる。従って、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。これに対し、偏光方向制御素子4bの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率分布は、X方向に関しては図11Aの実線、Y方向に関しては図11Bの実線で示されるようになる。すなわち、0mm<X<0.97mmの範囲での透過率は0.37であり、0.97mm<X<1.53mmの範囲での透過率は0.58であり、1.53mm<X<1.84mmの範囲での透過率は0.79であり、1.84mm<X<1.95mmの範囲での透過率は1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、X方向に関しては図12Aの実線、Y方向に関しては図12Bの実線で示されるようになる。すなわち、対物レンズ7の中心(X=0mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.37であり、対物レンズ7のX方向の縁(X=1.95mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.30であり、対物レンズ7のY方向の縁(X=0mm、Y=1.95mm)を通る光の強度は0.30である。従って、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.80、Y方向に関しては0.80となる。
ここで、半導体レーザ1からの出射光の波長を405nmとする。ディスク8へ情報を記録する場合には、偏光方向制御素子4bの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は、X方向に関しては0.557μm(1/e2全幅)、Y方向に関しては0.508μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は37.6%となる。これに対し、ディスク8から情報を再生する場合には、偏光方向制御素子4bの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.80、Y方向に関しては0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は、X方向に関しては0.515μm(1/e2全幅)、Y方向に関しては0.520μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は16.9%となる。すなわち、ディスク8への情報の記録時には、X方向に関するリム強度を小さくすることによりX方向に関する集光スポットの径を多少大きくすると共に往路における光学系の効率を高くし、ディスク8からの情報の再生時には、X方向に関するリム強度を大きくすることによりX方向に関する集光スポットの径を小さくすると共に往路における光学系の効率をやや低くすることができる。
第一の実施の形態における偏光方向制御素子4a、第二の実施の形態における偏光方向制御素子4bにおいては、複数の領域に分割された液晶高分子層とそれを挟む単一の領域から構成される透明電極13a、13bを用い、ディスク8からの情報の再生時には、液晶高分子層のそれぞれの領域に応じて長手方向を変化させることにより、入射光の偏光方向を変化させる。これに対し、偏光方向制御素子において、単一の領域から構成される液晶高分子層とそれを挟む複数の領域に分割された透明電極とを用い、ディスク8からの情報の再生時には、透明電極のそれぞれの領域に印加される交流電圧の実効値を変化させることにより、入射光の楕円率を変化させることも可能である。
その場合、ディスクへの情報の記録時には、透明電極に印加される交流電圧の実効値は3.5V〜5Vの範囲内とする。この場合、液晶高分子の長手方向は入射光の光軸にほぼ平行な方向となる。このとき、偏光方向制御素子は入射光の楕円率を変化させず、偏光ビームスプリッタへの入射光は偏光ビームスプリッタを殆んど全てが透過する。これに対し、ディスクからの情報の再生時には、透明電極に印加される交流電圧の実効値は1.5V〜3.5Vの範囲内とする。この場合、液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸を含み入射光の偏光方向に対して45°の角度をなす面内で、入射光の光軸に垂直な方向に対して所定の角度をなす。この角度は交流電圧の実効値に対してほぼ線形に変化する。このとき、偏光方向制御素子は交流電圧の実効値に応じて入射光の楕円率を変化させ、偏光ビームスプリッタへの入射光は偏光ビームスプリッタを交流電圧の実効値に応じた透過率で透過する。但し、交流電圧の実効値は透明電極の複数の領域の間で互いに異なっているため、偏光方向制御素子への入射光の楕円率の変化量、偏光ビームスプリッタの透過率は、透明電極の複数の領域の間で互いに異なる。
本発明の第三の実施の形態に係る光ヘッド装置は、図3に示される光ヘッド装置60の偏光方向制御素子4を偏光方向制御素子4cで置き換えたものである。ビーム整形レンズ2は、往路の光の断面形状を楕円形から円形へ変換する。ここで、半導体レーザ1におけるX方向のビームの広がり角を8.5°(半値全角)、Y方向のビームの広がり角を20.0°(半値全角)とし、ビーム整形レンズ2におけるX方向のビームの広がり角の拡大率を2.35倍とする。また、コリメータレンズ3の焦点距離を12.2mm、対物レンズ7の焦点距離を3.0mmとする。このとき、偏光方向制御素子4cを用いない場合の、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向、Y方向とも0.55となる。
偏光方向制御素子4cの断面図は、図4A〜4Bに示されるものと同じである。透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、偏光方向制御素子4cは、入射光の偏光方向を変化させない全波長板として作用する。これに対し、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、偏光方向制御素子4cは、入射光の偏光方向を所定の角度だけ変化させる1/2波長板として作用する。
図13は、偏光方向制御素子4cの平面図である。図中の矢印は、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合の、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向を示している。液晶高分子の長手方向は、光軸からの距離が対物レンズ7の有効半径と等しい位置においてはX方向と一致しているが、光軸からの距離が小さくなるに従ってX方向に対する角度が大きくなる。
ここで、入射光の偏光方向はX方向と一致している。このとき、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向のX方向に対する角度をαとすると、偏光方向制御素子4cは、入射光の偏光方向を2αだけ変化させる1/2波長板として作用する。但し、αの値は光軸からの距離によって異なる。ここで、対物レンズ7の開口数を0.65とすると、図13に一点鎖線で示されるように、対物レンズ7の有効半径は、3mm×0.65=1.95mmとなる。また、光軸からの距離をR(mm)としたとき、cos22α=0.55/0.80×exp[log(0.80/0.55)×(R/1.95)2]が成り立つようにαの値を定める。
偏光方向制御素子4cの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率は、光軸からの距離Rによらず1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図6に示されるものと同じになる。従って、対物レンズ7におけるリム強度は0.55となる。これに対し、偏光方向制御素子4cの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率分布は、図7に点線で示されるようになる。すなわち、光軸からの距離Rが増加するに従って透過率は単調に増加し、R=0mmでは透過率は0.69であり、R=1.95mmでは透過率は1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図8に点線で示されるようになる。対物レンズ7の中心(R=0mm)を通る光の強度は0.69であり、対物レンズ7の縁(R=1.95mm)を通る光の強度は0.55である。従って、対物レンズ7におけるリム強度は0.80となる。
ここで、半導体レーザ1からの出射光の波長を405nmとする。ディスク8へ情報を記録する場合には、偏光方向制御素子4cの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は0.55となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は0.529μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は45.0%となる。これに対し、ディスク8から情報を再生する場合には、偏光方向制御素子4cの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は0.519μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は36.8%となる。すなわち、ディスク8への情報の記録時には、リム強度を小さくすることにより集光スポットの径を多少大きくすると共に往路における光学系の効率を高くし、ディスク8からの情報の再生時には、リム強度を大きくすることにより集光スポットの径を小さくすると共に往路における光学系の効率をやや低くすることができる。
本発明の第四の実施の形態に係る光ヘッド装置は、図3に示される光ヘッド装置60のビーム整形レンズ2が削除され、偏光方向制御素子4は偏光方向制御素子4dに置き換わる。ビーム整形レンズ2を削除することにより、往路の光の断面形状は、X方向を短軸、Y方向を長軸とする楕円形になる。ここで、半導体レーザ1におけるX方向のビームの広がり角を8.5°(半値全角)、Y方向のビームの広がり角を20.0°(半値全角)とする。また、コリメータレンズ3の焦点距離を20.0mm、対物レンズ7の焦点距離を3.0mmとする。このとき、偏光方向制御素子4dを用いない場合の、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。
偏光方向制御素子4dの断面図は、図4A〜4Bに示されるものと同じである。透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、偏光方向制御素子4dは、入射光の偏光方向を変化させない全波長板として作用する。これに対し、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、偏光方向制御素子4dは、入射光の偏光方向を所定の角度だけ変化させる1/2波長板として作用する。
図14は、偏光方向制御素子4dの平面図である。図中の矢印は、透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合の、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向を示している。液晶高分子の長手方向は、光軸からの距離のX方向の成分が対物レンズ7の有効半径と等しい位置においてはX方向と一致しているが、光軸からの距離のX方向の成分が小さくなるに従ってX方向に対する角度が大きくなる。
ここで、入射光の偏光方向はX方向と一致している。このとき、液晶高分子層14の液晶高分子の長手方向のX方向に対する角度をαとすると、偏光方向制御素子4dは、入射光の偏光方向を2αだけ変化させる1/2波長板として作用する。但し、αの値は光軸からの距離のX方向の成分によって異なる。ここで、対物レンズ7の開口数を0.65とすると、対物レンズ7の有効半径は、図14に一点鎖線で示されるように、3mm×0.65=1.95mmとなる。また、光軸からの距離のX方向、Y方向の成分をX(mm)、Y(mm)としたとき、cos22α=0.30/0.80×exp[log(0.80/0.30)×(X/1.95)2]が成り立つようにαの値を定める。
偏光方向制御素子4dの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率は、X、Yによらず1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図10A〜10Bに示されるものと同じになる。従って、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。これに対し、偏光方向制御素子4dの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、強度分布切替部の透過率分布は、X方向に関しては図11Aに点線で示されるようになり、Y方向に関しては図11Bに実線で示されるようになる。すなわち、Xが増加するに従って透過率は単調に増加し、X=0mmでは透過率は0.37、X=1.95mmでは透過率は1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、X方向に関しては図12Aに点線で示されるようになり、Y方向に関しては図12Bに実線で示されるようになる。対物レンズ7の中心(X=0mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.37、対物レンズ7のX方向の縁(X=1.95mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.30、対物レンズ7のY方向の縁(X=0mm、Y=1.95mm)を通る光の強度は0.30である。従って、対物レンズ7におけるリム強度はX方向に関しては0.80、Y方向に関しては0.80となる。
ここで、半導体レーザ1からの出射光の波長を405nmとする。ディスク8へ情報を記録する場合には、偏光方向制御素子4dの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は、X方向に関しては0.557μm(1/e2全幅)、Y方向に関しては0.508μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は37.6%となる。これに対し、ディスク8から情報を再生する場合には、偏光方向制御素子4dの透明電極13aと透明電極13bとの間に印加される交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.80、Y方向に関しては0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は、X方向に関しては0.519μm(1/e2全幅)、Y方向に関しては0.519μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は17.4%となる。すなわち、ディスク8への情報の記録時には、X方向に関するリム強度を小さくすることによりX方向に関する集光スポットの径を多少大きくすると共に往路における光学系の効率を高くし、ディスク8からの情報の再生時には、X方向に関するリム強度を大きくすることによりX方向に関する集光スポットの径を小さくすると共に往路における光学系の効率をやや低くすることができる。
本発明の第五の実施の形態に係る光ヘッド装置は、図3に示される光ヘッド装置60の偏光方向制御素子4を透過率制御素子16aに置き換えたものである。本実施の形態においては、強度分布切替部は、透過率制御素子16aにより構成される。透過率制御素子16aは、後に述べるように回折格子を含んでいる。ビーム整形レンズ2は、往路の光の断面形状を楕円形から円形へ変換する。ここで、半導体レーザ1におけるX方向のビームの広がり角を8.5°(半値全角)、Y方向のビームの広がり角を20.0°(半値全角)とし、ビーム整形レンズ2におけるX方向のビームの広がり角の拡大率を2.35倍とする。また、コリメータレンズ3の焦点距離を12.2mm、対物レンズ7の焦点距離を3.0mmとする。このとき、透過率制御素子16aを用いない場合の、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向、Y方向とも0.55となる。
図15A〜15Bは、透過率制御素子16aの断面図である。透過率制御素子16aは、ガラス基板12cとガラス基板12dとの間に液晶高分子層17aを挟み、ガラス基板12dとガラス基板12eとの間に液晶高分子層18と充填材19とを挟み、ガラス基板12eとガラス基板12fとの間に液晶高分子層17bを挟んだ構成である。ガラス基板12c、12dの液晶高分子層17a側の面には、液晶高分子層17aに交流電圧を印加するための透明電極13c、13dがそれぞれ形成されており、ガラス基板12e、12fの液晶高分子層17b側の面には、液晶高分子層17bに交流電圧を印加するための透明電極13e、13fがそれぞれ形成されている。図中の矢印は、液晶高分子層17a、17bの液晶高分子の長手方向を示している。また、液晶高分子層18と充填材19との境界面には回折格子が形成されている。液晶高分子層17a、17b、18は、光学軸の方向が液晶高分子の長手方向である一軸の屈折率異方性を有する。液晶高分子の長手方向に平行な方向の偏光成分(異常光成分)に対する屈折率をne、長手方向に垂直な方向の偏光成分(常光成分)に対する屈折率をnoとすると、neはnoに比べて大きい。一方、充填材19の屈折率は、液晶高分子層17a、17b、18の常光成分に対する屈折率noと等しい。
透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、図15Aに示されるように、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bの液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸にほぼ平行な方向となる。従って、入射光に対する液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bの屈折率はnoとなる。このとき、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bは、入射光の偏光方向を変化させない全波長板として作用する。これに対し、透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、図15Bに示されるように、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bの液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸にほぼ垂直な方向となる。従って、入射光に対する液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bの屈折率は、異常光成分に対してはne、常光成分に対してはnoとなる。なお、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bの液晶高分子の長手方向の、光軸に垂直な断面内における紙面に平行な方向および紙面に垂直な方向に対する角度は45°である。ここで、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bへの入射光の波長をλ、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bの厚さをtとしたとき、2π(ne−no)t/λ=πが成り立つように厚さtの値を定める。また、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bへの入射光の偏光方向は、紙面に平行な方向または紙面に垂直な方向であるとする。このとき、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bは、入射光の偏光方向を90°変化させる1/2波長板として作用する。
液晶高分子層18の液晶高分子の長手方向は、紙面に垂直な方向である。従って、光軸に垂直な断面内において、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光をTE偏光、偏光方向が紙面に平行な直線偏光をTM偏光とすると、TE偏光は液晶高分子層18に対する異常光、TM偏光は液晶高分子層18に対する常光となる。液晶高分子層18と充填材19との境界面に形成された回折格子の断面形状は、液晶高分子部の幅と充填材部の幅が等しい矩形状である。ここで、回折格子への入射光の波長をλ、回折格子の液晶高分子部および充填材部の厚さをt、回折格子の液晶高分子部と充填材部の間に生じる位相差をφとすると、TE偏光に対してはφ=2π(ne−no)t/λ、TM偏光に対してはφ=0が成り立つ。このとき、回折格子における透過率はcos2(φ/2)で与えられる。
図16は、透過率制御素子16aの平面図である。透過率制御素子16aにおける液晶高分子層18および充填材19は、入射光の光軸を中心とする3つの同心円により、領域15a〜15dの4つの領域に分割されている。回折格子の液晶高分子部および充填材部の厚さtは、領域15a〜15dの間で互いに異なっており、領域15dにおいてはt=0nmであるが、領域15c、15b、15aの順に厚さtは大きくなる。ここで、対物レンズ7の開口数を0.65とすると、対物レンズ7の有効半径は、図16に一点鎖線で示されるように、3mm×0.65=1.95mmとなる。また、領域15aと領域15bとの境界の円の半径を0.86mm、領域15bと領域15cとの境界の円の半径を1.44mm、領域15cと領域15dとの境界の円の半径を1.81mmとする。さらに、λ=405nm、ne−no=0.25とし、領域15a、15b、15c、15dにおける厚さtの値をそれぞれ306nm、244nm、170nm、0nmとする。このとき、TE偏光に対しては、領域15a、15b、15c、15dにおける位相差φの値はそれぞれ68.0°、54.3°、37.7°、0°となり、TM偏光に対しては、領域15a、15b、15c、15dにおける位相差φの値はいずれも0°となる。
透過率制御素子16aの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、透過率制御素子16aへ偏光方向がX方向である直線偏光として入射した光は、液晶高分子層17aにおいて偏光方向が変化せず、液晶高分子層18と充填材19との境界面に形成された回折格子へTM偏光として入射する。この光は、回折格子を殆んど全てが透過し、液晶高分子層17bへ偏光方向がX方向である直線偏光として入射する。この光は、液晶高分子層17bにおいて偏光方向が変化せず、透過率制御素子16aから出射する。透過率制御素子16aにより構成される強度分布切替部の透過率は、回折効率の透過率と一致し、光軸からの距離であるRによらず1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図6に示されるものと同じになる。従って、対物レンズ7におけるリム強度は0.55となる。
これに対し、透過率制御素子16aの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、透過率制御素子16aへ偏光方向がX方向である直線偏光として入射した光は、液晶高分子層17aにおいて偏光方向が90°変化し、液晶高分子層18と充填材19との境界面に形成された回折格子へTE偏光として入射する。この光は、回折格子をcos2(φ/2)の透過率で透過し、液晶高分子層17bへ偏光方向がY方向である直線偏光として入射する。但し、位相差φの値は領域15a〜15dの間で互いに異なる。この光は、液晶高分子層17bにおいて偏光方向が90°変化し、透過率制御素子16aから出射する。透過率制御素子16aにより構成される強度分布切替部の透過率分布は、回折効率の透過率分布と一致し、図7に実線で示されるようになる。すなわち、0mm<R<0.86mmの範囲では透過率は0.69であり、0.86mm<R<1.44mmの範囲では透過率は0.79であり、1.44mm<R<1.81mmの範囲では透過率は0.90であり、1.81mm<R<1.95mmの範囲では透過率は1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図8に実線で示されるようになる。対物レンズ7の中心(R=0mm)を通る光の強度は0.69、対物レンズ7の縁(R=1.95mm)を通る光の強度は0.55である。従って、対物レンズ7におけるリム強度は0.80となる。
透過率制御素子16aから出射した光は、透過率制御素子16aの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値によらず、偏光ビームスプリッタ5へP偏光として入射する。従って、この光は偏光ビームスプリッタ5を殆んど全てが透過する。
ディスク8へ情報を記録する場合には、透過率制御素子16aの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は0.55となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は0.529μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は45.0%となる。これに対し、ディスク8から情報を再生する場合には、透過率制御素子16aの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は0.518μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は36.7%となる。すなわち、ディスク8への情報の記録時には、リム強度を小さくすることにより集光スポットの径を多少大きくすると共に往路における光学系の効率を高くし、ディスク8からの情報の再生時には、リム強度を大きくすることにより集光スポットの径を小さくすると共に往路における光学系の効率をやや低くすることができる。
本発明の第六の実施の形態に係る光ヘッド装置は、第五の実施の形態における透過率制御素子16aを透過率制御素子16bに置き換えると共に、ビーム整形レンズ2を削除したものである。ビーム整形レンズ2を削除することにより、往路の光の断面形状は、X方向を短軸、Y方向を長軸とする楕円形になる。ここで、半導体レーザ1におけるX方向のビームの広がり角を8.5°(半値全角)、Y方向のビームの広がり角を20.0°(半値全角)とする。また、コリメータレンズ3の焦点距離を20.0mm、対物レンズ7の焦点距離を3.0mmとする。このとき、透過率制御素子16bを用いない場合の、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。
透過率制御素子16bの断面図は、図15A〜15Bに示されるものと同じである。透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bは、入射光の偏光方向を変化させない全波長板として作用する。これに対し、透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、液晶高分子層17aおよび液晶高分子層17bは、入射光の偏光方向を90°変化させる1/2波長板として作用する。また、液晶高分子層18と充填材19との境界面に形成された回折格子への入射光の波長をλ、回折格子の液晶高分子部および充填材部の厚さをt、回折格子の液晶高分子部と充填材部の間に生じる位相差をφとすると、TE偏光に対してはφ=2π(ne−no)t/λ、TM偏光に対してはφ=0が成り立つ。このとき、回折格子における透過率はcos2(φ/2)で与えられる。
図17は、透過率制御素子16bの平面図である。透過率制御素子16bにおける液晶高分子層18および充填材19は、光軸に関して対称でY方向に平行な6本の直線により7つの領域に分割されている。このうち、光軸を含む領域を領域15eとし、領域15eの両側に位置する2つの領域を領域15fとし、領域15fを挟んで領域15eの反対側に位置する2つの領域を領域15gとし、領域15gを挟んで領域15fの反対側に位置する2つの領域を領域15hとする。回折格子の液晶高分子部および充填材部の厚さtは、領域15e〜15hの間で互いに異なっており、領域15hにおいてはt=0nmであるが、領域15g、15f、15eの順に厚さtは大きくなる。
ここで、対物レンズ7の開口数を0.65とすると、対物レンズ7の有効半径は、図17に一点鎖線で示されるように、3mm×0.65=1.95mmとなる。また、領域15eと領域15fとの境界の直線の光軸からの距離を0.97mm、領域15fと領域15gとの境界の直線の光軸からの距離を1.53mm、領域15gと領域15hとの境界の直線の光軸からの距離を1.84mmとする。さらに、λ=405nm、ne−no=0.25とし、領域15e、15f、15g、15hにおける厚さtの値をそれぞれ470nm、362nm、244nm、0nmとする。このとき、TE偏光に対しては、領域15e、15f、15g、15hにおける位相差φの値は、それぞれ104.5°、80.4°、54.3°、0°となり、TM偏光に対しては、領域15e、15f、15g、15hにおける位相差φの値はいずれも0°となる。
透過率制御素子16bの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が3.5V〜5Vの範囲内にある場合、透過率制御素子16bへ偏光方向がX方向である直線偏光として入射した光は、液晶高分子層17aにおいて偏光方向が変化せず、液晶高分子層18と充填材19との境界面に形成された回折格子へTM偏光として入射する。この光は、回折格子を殆んど全てが透過し、液晶高分子層17bへ偏光方向がX方向である直線偏光として入射する。この光は、液晶高分子層17bにおいて偏光方向が変化せず、透過率制御素子16bから出射する。透過率制御素子16bにより構成される強度分布切替部の透過率は、回折効率の透過率と一致し、光軸からの距離のX方向、Y方向の成分であるX、Yによらず1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、図10A〜10Bに示されるものと同じになる。従って、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。
これに対し、透過率制御素子16bの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値が0V〜1.5Vの範囲内にある場合、透過率制御素子16bへ偏光方向がX方向である直線偏光として入射した光は、液晶高分子層17aにおいて偏光方向が90°変化し、液晶高分子層18と充填材19との境界面に形成された回折格子へTE偏光として入射する。この光は、回折格子をcos2(φ/2)の透過率で透過し、液晶高分子層17bへ偏光方向がY方向である直線偏光として入射する。但し、位相差φの値は領域15e〜15hの間で互いに異なる。この光は、液晶高分子層17bにおいて偏光方向が90°変化し、透過率制御素子16bから出射する。
透過率制御素子16bにより構成される強度分布切替部の透過率分布は、回折効率の透過率分布と一致し、X方向に関しては図11Aに実線で示されるように、Y方向に関しては図11Bに実線で示されるようになる。すなわち、0mm<X<0.97mmの範囲では透過率は0.37であり、0.97mm<X<1.53mmの範囲では透過率は0.58であり、1.53mm<X<1.84mmの範囲では透過率は0.79であり、1.84mm<X<1.95mmの範囲では透過率は1である。このとき、強度分布切替部からの出射光の強度分布は、X方向に関しては図12Aに実線で示されるように、Y方向に関しては図12Bに実線で示されるようになる。対物レンズ7の中心(X=0mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.37、対物レンズ7のX方向の縁(X=1.95mm、Y=0mm)を通る光の強度は0.30、対物レンズ7のY方向の縁(X=0mm、Y=1.95mm)を通る光の強度は0.30である。従って、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.80、Y方向に関しては0.80となる。
透過率制御素子16bから出射した光は、透過率制御素子16bの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値によらず、偏光ビームスプリッタ5へP偏光として入射する。従って、この光は偏光ビームスプリッタ5を殆んど全てが透過する。
ディスク8へ情報を記録する場合には、透過率制御素子16bの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.30、Y方向に関しては0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は、X方向に関しては0.557μm(1/e2全幅)、Y方向に関しては0.508μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は37.6%となる。これに対し、ディスク8から情報を再生する場合には、透過率制御素子16bの透明電極13cと透明電極13dとの間に印加される交流電圧の実効値および透明電極13eと透明電極13fとの間に印加される交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。これにより、対物レンズ7におけるリム強度は、X方向に関しては0.80、Y方向に関しては0.80となる。このとき、ディスク8上に形成される集光スポットの径は、X方向に関しては0.515μm(1/e2全幅)、Y方向に関しては0.520μm(1/e2全幅)となり、往路における光学系の効率は16.9%となる。すなわち、ディスク8への情報の記録時には、X方向に関するリム強度を小さくすることによりX方向に関する集光スポットの径を多少大きくすると共に往路における光学系の効率を高くし、ディスク8からの情報の再生時には、X方向に関するリム強度を大きくすることによりX方向に関する集光スポットの径を小さくすると共に往路における光学系の効率をやや低くすることができる。
第五の実施の形態における透過率制御素子16a、第六の実施の形態における透過率制御素子16bは、透過率制御素子が含む回折格子への入射光の偏光方向を切り替えることにより、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差を切り替え、回折格子における透過率を切り替える。これに対し、回折格子を構成する液晶高分子層および充填材として、複数の領域に分割された液晶高分子層および充填材を用いると共に、それらを挟む単一の領域から構成される透明電極を用い、透明電極に印加される交流電圧の実効値を切り替えることにより、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差を切り替え、回折格子における透過率を切り替える実施の形態も可能である。この実施の形態においては、ディスクからの情報の再生時には、液晶高分子層および充填材のそれぞれの領域に応じて液晶高分子部および充填材部の厚さを変化させることにより、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差を変化させる。
すなわち、ディスクへの情報の記録時には、透明電極に印加される交流電圧の実効値は3.5V〜5Vの範囲内とする。この場合、液晶高分子の長手方向は入射光の光軸にほぼ平行な方向となる。このとき、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差は0となり、回折格子への入射光は回折格子を殆んど全てが透過する。これに対し、ディスクからの情報の再生時には、透明電極に印加される交流電圧の実効値は0V〜1.5Vの範囲内とする。この場合、液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸にほぼ垂直で入射光の偏光方向に平行な方向となる。このとき、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差は、液晶高分子部および充填材部の厚さに応じて変化する。従って、回折格子への入射光は、回折格子を液晶高分子部および充填材部の厚さに応じた透過率で透過する。但し、液晶高分子部および充填材部の厚さは、液晶高分子層および充填材の複数の領域の間で互いに異なっているため、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差、回折格子の透過率は、液晶高分子層および充填材の複数の領域の間で互いに異なる。
また、回折格子を構成する液晶高分子および充填材として、単一の領域から構成される液晶高分子層および充填材を用いると共に、それらを挟む複数の領域に分割された透明電極を用い、透明電極に印加される交流電圧の実効値を切り替えることにより、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差を切り替え、回折格子における透過率を切り替える実施の形態も可能である。この実施の形態においては、ディスクからの情報の再生時には、透明電極のそれぞれの領域に応じて印加する交流電圧の実効値を変化させることにより、回折格子の液晶高分子部と充填材部の間に生じる位相差を変化させる。
すなわち、ディスクへの情報の記録時には、透明電極に印加される交流電圧の実効値は3.5V〜5Vの範囲内とする。この場合、液晶高分子の長手方向は入射光の光軸にほぼ平行な方向となる。このとき、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差は0となり、回折格子への入射光は、回折格子を殆んど全てが透過する。これに対し、ディスクからの情報の再生時には、透明電極に印加される交流電圧の実効値は1.5V〜3.5Vの範囲内とする。この場合、液晶高分子の長手方向は、入射光の光軸を含み入射光の偏光方向に平行な面内で、入射光の光軸に垂直な方向に対して所定の角度をなす。この角度は交流電圧の実効値に対してほぼ線形に変化する。このとき、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差は、交流電圧の実効値に応じて変化する。従って、回折格子への入射光は、回折格子を交流電圧の実効値に応じた透過率で透過する。但し、交流電圧の実効値は透明電極の複数の領域の間で互いに異なっているため、回折格子の液晶高分子部と充填材部との間に生じる位相差、回折格子の透過率は、透明電極の複数の領域の間で互いに異なる。
図18に、本発明の第七の実施の形態に係る光学式情報記録再生装置の構成が示される。光学式情報記録再生装置は、光ヘッド装置60、変調回路20、記録信号生成回路21、半導体レーザ駆動回路22、増幅回路23、再生信号処理回路24、復調回路25、誤差信号生成回路26、対物レンズ駆動回路27、偏光方向制御素子駆動回路28を具備する。本実施の形態の光ヘッド装置60は、第一の実施の形態において説明された光ヘッド装置である。これらの回路は、図示されないコントローラにより制御される。
ディスク8へデータを記録する場合、変調回路20は、ディスク8へ記録すべきデータを変調規則に従って変調する。記録信号生成回路21は、変調回路20で変調された信号に基づいて、記録ストラテジに従って半導体レーザ1を駆動するための記録信号を生成する。半導体レーザ駆動回路22は、記録信号生成回路21で生成された記録信号に基づいて、半導体レーザ1へ記録信号に応じた電流を供給して半導体レーザ1を駆動する。これに対し、ディスク8からデータを再生する場合、半導体レーザ駆動回路22は、半導体レーザ1からの出射光のパワーが一定になるように、半導体レーザ1へ一定の電流を供給して半導体レーザ1を駆動する。
増幅回路23は、光検出器11の各受光部から出力される電圧信号を増幅する。ディスク8からデータを再生する場合、再生信号処理回路24は、増幅回路23で増幅された電圧信号に基づいて、ディスク8に記録されたマーク/スペース信号である再生信号の生成、波形等化、2値化を行う。復調回路25は、再生信号処理回路24で2値化された信号を復調規則に従って復調する。誤差信号生成回路26は、増幅回路23で増幅された電圧信号に基づいて、対物レンズ7を駆動するためのフォーカス誤差信号およびトラック誤差信号を生成する。対物レンズ駆動回路27は、誤差信号生成回路26で生成されたフォーカス誤差信号およびトラック誤差信号に基づいて、図示されないアクチュエータへフォーカス誤差信号およびトラック誤差信号に応じた電流を供給して対物レンズ7を駆動する。
さらに、光ヘッド装置60は、図示されないポジショナによりディスク8の半径方向へ駆動され、ディスク8は、図示されないスピンドルにより回転駆動される。偏光方向制御素子駆動回路28は、偏光方向制御素子4aの透明電極13aと透明電極13bとの間に交流電圧を印加して偏光方向制御素子4aを駆動する。偏光方向制御素子駆動回路28は、ディスク8へデータを記録する場合は交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とし、ディスク8からデータを再生する場合は交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。なお、このような光学式情報記録再生装置において、光ヘッド装置60は、第二〜第四の実施の形態において説明された光ヘッド装置でもよい。
本発明の第八の実施の形態に係る光学式情報記録再生装置は、第七の実施の形態において説明された光学式情報記録再生装置の光ヘッド装置60として第五の実施の形態において説明された光ヘッド装置と、偏光方向制御素子駆動回路28の代わりに透過率制御素子駆動回路を具備する。透過率制御素子駆動回路は、透過率制御素子16aの透明電極13cと透明電極13dとの間および透明電極13eと透明電極13fとの間に交流電圧を印加して透過率制御素子16aを駆動する。透過率制御素子駆動回路は、ディスク8へデータを記録する場合は交流電圧の実効値を3.5V〜5Vの範囲内とし、ディスク8からデータを再生する場合は交流電圧の実効値を0V〜1.5Vの範囲内とする。なお、このような光学式情報記録再生装置において、光ヘッド装置60は、第六の実施の形態において説明された光ヘッド装置でもよい。
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。