JP5337506B2 - 熱可塑性樹脂粒子組成物、並びにこれを用いた熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
これに対し、特に特許文献1においては、ゴム製の成形型を用いて、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形品を真空注型法により成形する際に、成形型に対して熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができる樹脂成形方法が開示されている。この樹脂成形方法においては、成形型のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する際に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を、成形型を介して熱可塑性樹脂に照射し、成形型を構成するゴムと熱可塑性樹脂との物性の違いにより、ゴム製の成形型に比べて、熱可塑性樹脂を積極的に加熱することができる。
また、例えば、特許文献2においては、金型の型面に粉末状のパウダースラッシュ材料を所望の厚さで付着溶融させ、その後、この材料を冷却させて型面に樹脂成形品を付着成形するパウダースラッシュ成形法が開示されている。
粒子径が1〜100μmの小形熱可塑性樹脂粒子を0.1〜20質量%含有し、残部が該小形熱可塑性樹脂粒子よりも大きい大形熱可塑性樹脂粒子からなることを特徴とする熱可塑性樹脂粒子組成物にある(請求項1)。
具体的には、本発明の熱可塑性樹脂粒子組成物は、粒子径が1〜100μmの小形熱可塑性樹脂粒子と、それよりも大きい大形熱可塑性樹脂粒子とを含有してなる。これにより、熱可塑性樹脂粒子をゴム型のキャビティ内に充填する際には、小形熱可塑性樹脂粒子がキャビティの内壁面に付着し、大形熱可塑性樹脂粒子は、キャビティ内における小形熱可塑性樹脂粒子の内側を通過させることができる。そのため、キャビティ内への熱可塑性樹脂粒子の充填を円滑に行うことができる。
ここで、本発明のゴム型はゴム材料から形成されており、小形熱可塑性樹脂粒子は、その粒子径が1〜100μmの範囲内であることによって、ゴム材料からなるキャビティの内壁面に付着させることができる。
また、キャビティ内に充填した熱可塑性樹脂粒子組成物は、ゴム型を介して上記電磁波を照射して加熱溶融させ、その後、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して、熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。なお、キャビティ内の熱可塑性樹脂粒子組成物を加熱溶融させた後には、必要に応じて、加熱溶融によってキャビティ内に残された空間に、溶融状態の熱可塑性樹脂を充填(補充)することもできる。
それ故、本発明の熱可塑性樹脂成形品によれば、その外観、形状、表面精度等の品質及び機械的強度を向上させることができる。
上記ゴム型のキャビティ内に、上記熱可塑性樹脂粒子組成物を配置する配置工程と、
上記ゴム型を介して上記キャビティ内における上記熱可塑性樹脂粒子組成物に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、該熱可塑性樹脂粒子組成物を加熱して溶融させる粒子加熱工程と、
上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して熱可塑性樹脂成形品を得る冷却工程とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法にある(請求項6)。
具体的には、まず、配置工程として、ゴム型のキャビティ内に、熱可塑性樹脂粒子組成物を投入する。このとき、小形熱可塑性樹脂粒子がキャビティの内壁面に付着し、大形熱可塑性樹脂粒子は、キャビティ内における小形熱可塑性樹脂粒子の内側を通過させることができる。そのため、キャビティ内への熱可塑性樹脂粒子の充填を円滑に行うことができる。なお、熱可塑性樹脂粒子組成物は、キャビティのほぼ全体に充填することができ、またキャビティの一部に充填することもできる。
第1〜第3の発明において、上記小形熱可塑性樹脂粒子の粒子径を1μm未満とすることは製造上困難であり、小形熱可塑性樹脂粒子の粒子径が1μm未満である場合には、熱可塑性樹脂成形品の成形時における取り扱いが困難になる。一方、上記小形熱可塑性樹脂粒子の粒子径が100μm超過である場合には、小形熱可塑性樹脂粒子をキャビティの内壁面に付着させる作用を発揮することが困難になる。
すなわち、ゴム型の表面に照射された0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、ゴム型に吸収される割合に比べて、ゴム型を透過して熱可塑性樹脂に吸収される割合が多いと考える。そのため、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波による光のエネルギーが熱可塑性樹脂に優先的に吸収されて、熱可塑性樹脂を選択的に加熱することができると考える。
また、上記熱可塑性樹脂の加熱に、波長が0.78〜2μmの領域の電磁波を用いる理由は、この波長の領域の電磁波は、ゴム型を透過し易い性質を有する一方、熱可塑性樹脂に吸収され易い性質を有するためである。
上記ゴム型は、ゴム材料としての透明又は半透明のシリコーンゴムから形成することができる。このシリコーンゴムの硬度は、JIS−A規格測定において25〜80とすることができる。
例えば、上記大形熱可塑性樹脂粒子及び上記小形熱可塑性樹脂粒子としては、押出機によって得た熱可塑性樹脂のペレットを冷凍粉砕して作り出したものを用いることができる。冷凍粉砕によれば、種々の粒径の熱可塑性樹脂粒子を作り出すことができる。また、熱可塑性樹脂粒子としては、押出機の先端に細口径のダイスを取り付けて、いわゆる水中カット方式で作り出したものを用いることもできる。この押出水中カット方式によれば、0.5mm程度の粒子(熱可塑性樹脂粒子)を簡単かつ安価に作り出すことができる。
また、大形熱可塑性樹脂粒子及び小形熱可塑性樹脂粒子は、必要に応じて、分級、ふるい分け等を行って得ることもできる。
また、大形熱可塑性樹脂粒子と小形熱可塑性樹脂粒子とは、同じ組成を有する熱可塑性樹脂から構成することができる。また、大形熱可塑性樹脂粒子と小形熱可塑性樹脂粒子とは、互いに異なる組成を有する熱可塑性樹脂から構成することができる。ただし、この場合には、機械的強度を高くするため、相溶性の高い熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂粒子組成物における小形熱可塑性樹脂粒子の含有比率は、10質量%以下とすることが好ましく、7質量%以下とすることがより好ましい。
また、小形熱可塑性樹脂粒子及び大形熱可塑性樹脂粒子に用いる熱可塑性樹脂のメルトフローレート(220℃、10kg荷重)は、1〜100g/10minとすることが好ましく、5〜80g/10minとすることがより好ましく、15〜65g/10minとすることがさらに好ましい。
以下に、本発明に用いることができる熱可塑性樹脂について説明する。
上記熱可塑性樹脂のうち、成形品の形成に好適なものとして、ゴム強化樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ、ポリエステル系樹脂、ゴム強化樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ等が挙げられる。
ところで、熱可塑性樹脂の冷却速度は、ゴム型がゴム材料からなるため、金型の場合に比べて遅くなる。そのため、冷却中に熱可塑性樹脂の結晶性が高くなることがあり、これによって、樹脂成形品の寸法精度が低下したり、樹脂成形品の耐衝撃性が低下したりすることがある。これに対し、大形熱可塑性樹脂粒子及び小形熱可塑性樹脂粒子を非晶性にしたことにより、熱可塑性樹脂成形品の寸法精度の低下及び耐衝撃性の低下等を防止することができる。
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂は、ゴム質重合体(a1)の存在下に、芳香族モノビニル化合物を含むビニル系単量体(a2)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体に由来する構造単位を含む(共)重合体(A2)とを混合してなる混合物であることが好ましい(請求項4)。
従って、上記ビニル系単量体(a2)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上とを組み合わせた単量体を用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体(a1)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
なお、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
(1)芳香族ビニル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。(2)(メタ)アクリル酸エステル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。(3)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。(4)芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。(5)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。(6)芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物を除く他の化合物とを重合して得られた共重合体の1種以上。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
このオレフィン系樹脂は、炭素数が2以上のα−オレフィンからなる単量体単位を含む重合体であれば、特に限定されない。好ましいオレフィン系樹脂は、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位を含む重合体である。従って、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位の1種以上を主として含む(共)重合体、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位の1種以上と、このα−オレフィンと共重合可能な化合物からなる単量体単位の1種以上とを主として含む共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オレフィン系樹脂の融点(JIS K7121に準拠)は、好ましくは40℃以上である。
また、上記オレフィン系樹脂の分子量は特に限定されないが、成形性の観点から、メルトフローレート(JIS K7210に準拠。以下、「MFR」ともいう。)は、好ましくは0.01〜500g/10分であり、各値に相当する分子量を有するものが好ましい。
上記オレフィン系樹脂としては、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等を用いることもできる。
このポリエステル系樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する樹脂であれば、特に限定されず、飽和ポリエステル樹脂であってよいし、不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。これらのうち、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。また、単独重合ポリエステルであってよいし、共重合ポリエステルであってもよい。更に、結晶性樹脂であってよいし、非晶性樹脂であってもよい。
このポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。なお、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
上記ポリカーボネート樹脂は、上述のように、ポリエステル系樹脂と、あるいは、ゴム強化樹脂及びポリエステル系樹脂と組み合わせて、アロイとして用いることもできる。
このポリアミド系樹脂は、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有する樹脂であれば、特に限定されない。
上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が挙げられる。
なお、ポリアミド系樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
上記熱安定剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
上記酸化防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.05〜2質量部である。
上記帯電防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
上記可塑剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
上記滑剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
上記難燃剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜30質量部である。
なお、本発明の熱可塑性樹脂粒子組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び染料のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
無機顔料としては、亜鉛華、二酸化チタン、べんがら、酸化クロム、鉄黒等の酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド等の硫化物、黄鉛、亜鉛黄、クロムバーミリオン等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、群青等の珪酸塩、カーボンブラック、金属粉等の無機系色剤が挙げられる。
有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、縮合多環系顔料等が挙げられる。
上記着色剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂粒子組成物の量を100質量部とした場合に、通常、10質量部以下、好ましくは0.0005〜5質量部、より好ましくは0.001〜2質量部である。
上記光触媒系防汚剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等が挙げられる。
上記衝撃改質剤としては、グラフトゴム等が挙げられる。
この場合には、粒子加熱工程を行った後に、熱可塑性樹脂粒子組成物が溶融することによってキャビティ内に残された空間には、充填工程として、溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する。このとき、粒子加熱工程の前にゴム型のキャビティ内において熱可塑性樹脂粒子組成物が存在していた部分、ゴム型のキャビティ内の鉛直方向下側に位置する部分、あるいはゴム型のキャビティの表面等には、上記熱可塑性樹脂粒子組成物を溶融させた熱可塑性樹脂が充填されており、新たに充填する溶融状態の熱可塑性樹脂の充填量を少なくすることができる。
また、上記大形熱可塑性樹脂粒子と、上記小形熱可塑性樹脂粒子と、上記溶融状態の熱可塑性樹脂とは、同じ組成を有する熱可塑性樹脂から構成することができる。
この場合には、射出圧力が適切であり、上記所定の射出圧力でキャビティ内へ熱可塑性樹脂の充填を行う際においても、ゴム型の変形及び開きを効果的に抑制して、外観、形状、表面精度等の品質を向上させた熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。なお、ゴム型のキャビティの全体にほぼ均一に熱可塑性樹脂を充填するためには、射出圧力が0.1MPa以上であることが好ましく、ゴム型の変形及びゴム型のキャビティからの樹脂漏れを防ぐためには、射出圧力は5MPa以下であることが好ましい。
この場合には、配置工程において、キャビティの内壁面に小形熱可塑性樹脂粒子を効果的に付着させた後、キャビティ内における小形熱可塑性樹脂粒子の内側に大形熱可塑性樹脂粒子を通過させることができる。そのため、キャビティ内への熱可塑性樹脂粒子の充填をより円滑に行うことができる。
また、小形熱可塑性樹脂粒子は、開いた状態のゴム型のキャビティの表面にまぶす(振り掛ける)ことによって容易に配置することができる。
この場合には、大形熱可塑性樹脂粒子がキャビティ内に充填され難くなることを防止することができる。
また、大形熱可塑性樹脂粒子の粒子径は、キャビティにおける最小幅寸法に対して、0.7倍以下となるよう選定することがより好ましい。
この場合には、真空工程を行うことによって、キャビティ内への溶融状態の熱可塑性樹脂粒子の充填を一層容易に行うことができると共に、気泡のない外観に優れた熱可塑性樹脂成形品を容易に得ることができる。
なお、真空工程は、配置工程中、配置工程の前後、粒子加熱工程中、粒子加熱工程の前後、上記充填工程中、又は充填工程の前の少なくともいずれかのタイミングで行うことができる。
また、真空状態とは、絶対真空の状態のみを意味するのではなく、大気圧状態に対する減圧状態のこともいう。
本例の熱可塑性樹脂粒子組成物6Aは、ゴム材料からなるゴム型2のキャビティ22内に充填し、ゴム型2を介して0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して加熱溶融させる用途に用いる。この熱可塑性樹脂粒子組成物6Aは、粒子径が1〜100μmの範囲内の小形熱可塑性樹脂粒子62を0.1〜20質量%含有し、残部が粒子径が200〜3000μmの範囲内の大形熱可塑性樹脂粒子61からなる。
本例において用いる熱可塑性樹脂6(大形熱可塑性樹脂粒子61、小形熱可塑性樹脂粒子62、溶融状態の熱可塑性樹脂粒子6B)は、非晶性を有するゴム強化スチレン系樹脂であるABS樹脂とする。
また、本例のゴム型2は、透明又は半透明のシリコーンゴムからなる。このゴム型2は、成形する熱可塑性樹脂成形品60のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムを切り開いて、このシリコーンゴムからマスターモデルを取り出すことによって作製することができる。
なお、図2、図3において、電磁波発生手段4から出射する電磁波を矢印Xで示す。
本例の熱可塑性樹脂成形品60の製造方法においては、ゴム型2に熱可塑性樹脂6を充填して熱可塑性樹脂成形品60を成形するに当たり、熱可塑性樹脂粒子組成物6Aと溶融状態の熱可塑性樹脂6Bとを用いる。本例においては、熱可塑性樹脂粒子組成物6Aと溶融状態の熱可塑性樹脂6Bとには、同じ組成を有するABS樹脂を用いる。
次いで、同図に示すごとく、粒子加熱工程として、電磁波発生手段4から出射させた0.78〜4μmの波長領域を含む電磁波をフィルター43を透過させ、フィルター43を透過させた後の透過電磁波を、ゴム型2を介してキャビティ22内における熱可塑性樹脂粒子組成物6Aに照射する。このとき、ゴム型2を構成するゴム材料と熱可塑性樹脂粒子組成物6Aとの物性の違いにより、ゴム型2に比べて、熱可塑性樹脂粒子組成物6Aを選択的に加熱することができる(熱可塑性樹脂粒子組成物6Aの加熱量を多くすることができる)。これにより、ゴム型2の温度上昇を抑制して、熱可塑性樹脂粒子組成物6Aを溶融させることができる。そして、キャビティ22内には、熱可塑性樹脂粒子組成物6Aが溶融することによって、新たに熱可塑性樹脂6を充填するための空間220が形成される。
これにより、充填圧力(射出圧力)をあまり高くすることなくキャビティ22の全体へ熱可塑性樹脂6を充填することができ、ゴム型2の変形及び開きを効果的に抑制することができる。そのため、ゴム型2における分割面(パーティング面)20からの樹脂漏れを防止することができ、冷却工程を行って熱可塑性樹脂成形品60を得たときには、この熱可塑性樹脂成形品60の外観、形状、表面精度等の品質及び機械的強度を効果的に向上させることができる。
また、熱可塑性樹脂粒子組成物6Aと溶融状態の熱可塑性樹脂6Bとには、同じ組成の熱可塑性樹脂6を用いているため、成形後の熱可塑性樹脂成形品60において樹脂の境界面が形成されることを防止することができる。
図5、図6には、ゴム型2のキャビティ22内に熱可塑性樹脂粒子61、62を充填する状態を拡大して示す。図5は、上記大形熱可塑性樹脂粒子61及び小形熱可塑性樹脂粒子62をキャビティ22内に充填する場合を示し、図6は、大形熱可塑性樹脂粒子61のみをキャビティ22内に充填する場合を示す。
図6に示すごとく、キャビティ22内に大形熱可塑性樹脂粒子61のみを充填しようとすると、大形熱可塑性樹脂粒子61がキャビティ22の内壁面221に付着し、大形熱可塑性樹脂粒子61の内側をさらに別の大形熱可塑性樹脂粒子61が通過(落下)(矢印Tで示す。)することが困難であると考えられる。
本確認試験においては、上記実施例に示した熱可塑性樹脂粒子組成物6Aを用いて熱可塑性成形品を成形することによる品質(表面外観)、機械的強度(耐衝撃性)を向上させる効果について確認を行った。
本確認試験においては、5種類の熱可塑性樹脂粒子(粒子A、B、C、D、E)を準備した。
(粒子B) 上記黒色の熱可塑性樹脂粒子を原料とし、冷凍粉砕機(井元製作所社製)を用いて数平均粒子径55μmの粒子Bを得た。なお、粒子Bの粒子径は、1〜100μmの範囲内にある。
(粒子C) 上記黒色の熱可塑性樹脂粒子をそのまま用いて数平均粒子径3500μmの粒子Cを得た。
(粒子D) 上記黒色の熱可塑性樹脂粒子を原料とし、上記冷凍粉砕機(井元製作所製)を用いて冷凍粉砕した後、ふるい分けを行って数平均粒子径1300μmの粒子Dを得た。
(粒子E) 上記黒色の熱可塑性樹脂粒子を原料とし、上記冷凍粉砕機(井元製作所製)を用いて冷凍粉砕した後、ふるい分けを行って数平均粒子径460μmの粒子Eを得た。
なお、粒子A、C、D、Eは、100μm以下の粒子径の熱可塑性樹脂粒子を含んでいない。
本確認試験においては、シリコーンゴムによって、125mm×12.5mm×3.2mmのサイズの直方形状のキャビティ22を形成した。キャビティ22の最小幅寸法は3.2mmとした。そして、上記実施例に示した成形装置によって、キャビティ22内に上記各粒子A、B、C、D、Eを充填し、加熱溶融を行い、溶融状態の熱可塑性樹脂6Bを追加充填し、その後冷却して、熱可塑性樹脂成形品60のサンプルを得た。
また、機械的強度(耐衝撃性)については、シャルピー衝撃強度を、ISO179に準じて測定した(ノッチ付き、厚さ3.2mm)。
この結果より、上記実施例に示した大形熱可塑性樹脂粒子61及び小形熱可塑性樹脂粒子62を含有する熱可塑性樹脂粒子組成物6Aを用いることにより、品質及び機械的強度に優れた熱可塑性樹脂成形品60を成形できることがわかった。
2 ゴム型
22 キャビティ
4 電磁波発生手段
6 熱可塑性樹脂
60 熱可塑性樹脂成形品
6A 熱可塑性樹脂粒子組成物
61 大形熱可塑性樹脂粒子
62 小形熱可塑性樹脂粒子
6B 溶融状態の熱可塑性樹脂
Claims (11)
- ゴム材料からなるゴム型のキャビティ内に充填し、該ゴム型を介して0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して加熱溶融させるための熱可塑性樹脂粒子組成物であって、
粒子径が1〜100μmの小形熱可塑性樹脂粒子を0.1〜20質量%含有し、残部が該小形熱可塑性樹脂粒子よりも大きい大形熱可塑性樹脂粒子からなることを特徴とする熱可塑性樹脂粒子組成物。 - 請求項1において、上記大形熱可塑性樹脂粒子と上記小形熱可塑性樹脂粒子とは、非晶性であることを特徴とする熱可塑性樹脂粒子組成物。
- 請求項1又は2において、上記大形熱可塑性樹脂粒子と上記小形熱可塑性樹脂粒子とは、ゴム強化ビニル系樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂粒子組成物。
- 請求項3において、上記ゴム強化ビニル系樹脂は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族モノビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体に由来する構造単位を含む(共)重合体(A2)とを混合してなる混合物であることを特徴とする熱可塑性樹脂粒子組成物。
- 請求項1〜4に記載の熱可塑性樹脂粒子組成物を、上記ゴム型のキャビティ内に充填し、該ゴム型を介して0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射して加熱溶融させた後、冷却して得られることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品。
- 請求項1〜4に記載の熱可塑性樹脂粒子組成物を用いて熱可塑性樹脂成形品を製造する方法であって、
上記ゴム型のキャビティ内に、上記熱可塑性樹脂粒子組成物を配置する配置工程と、
上記ゴム型を介して上記キャビティ内における上記熱可塑性樹脂粒子組成物に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、該熱可塑性樹脂粒子組成物を加熱して溶融させる粒子加熱工程と、
上記キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却して熱可塑性樹脂成形品を得る冷却工程とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。 - 請求項6において、上記粒子加熱工程を行った後、上記冷却工程を行う前には、上記キャビティにおいて残された空間に、溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する充填工程を行うことを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
- 請求項7において、上記充填工程においては、上記溶融状態の熱可塑性樹脂を0.1〜5MPaの射出圧力で、上記キャビティにおいて残された空間に充填することを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
- 請求項6〜8のいずれか一項において、上記配置工程においては、上記小形熱可塑性樹脂粒子を、開いた状態又は閉じた状態の上記ゴム型のキャビティに先に配置した後、上記大形熱可塑性樹脂粒子を上記ゴム型のキャビティ内に投入することを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
- 請求項6〜9のいずれか一項において、上記大形熱可塑性樹脂粒子の最大粒子径は、上記キャビティにおける最小幅寸法に対して、0.8倍以下となるよう選定することを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
- 請求項6〜10のいずれか一項において、上記配置工程前から上記粒子加熱工程前までの少なくともいずれかのタイミングには、上記キャビティ又は該キャビティにおいて残された空間を真空状態にする真空工程を行うことを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
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