添付図面を参照して、本発明の穿刺デバイスならびにそれを構成するランセットアッセンブリおよびインジェクターを詳細に説明する。尚、図1A〜図26に示す態様と図29〜図31Eに示す態様とが僅かに相違しているが、図29〜図31Eはより好ましい態様を示しているにすぎず、どちらであっても本発明の範囲に含まれるものである。
まず、本発明に係るランセットアッセンブリ、インジェクターおよび穿刺デバイスの基本構成および基本的機能について説明し、その後、本発明の特徴について説明を行う。
本明細書において「前方」とは、穿刺に際して穿刺部材(又は穿刺部材の先端部が露出したランセットボディ)が発射される方向の穿刺方向を実質的に意味しており、「後方」とは、かかる前方と逆の方向を実質的に意味している。換言すれば、穿刺に際してランセットが移動する「穿刺方向」(即ち、穿刺部位への穿刺に際して穿刺部材が移動する方向)を「前」方向とし、その反対の方向を「後」方向としている。かかる「穿刺方向」は、ランセットホルダーの開口端から穿刺開口部へと向かう方向に相当するものである。これらの方向および本明細書で用いる「横断方向」については図面に示している。尚、「横断方向」は、穿刺方向に対して直交する方向を実質的に意味している。
また、本明細書において「穿刺軌道から逸れる(または外れる)」とは、ランセットボディ(より具体的には「穿刺部材の先端部が露出したランセットボディ」)が前方(即ち「穿刺方向」)に発射されて穿刺部材が所定箇所を穿刺するに際して、ランセットキャップがそのような発射および穿刺を阻害しないことを実質的に意味している。尚、一般的には、ランセットボディが、分離したランセットキャップに接しないことになるものの、ランセットキャップの側部に上述の又は後述する直進性促進凸部が設けられている場合では、穿刺部材の先端部が直進性促進凸部に一時的に接触することになる。
更に、本明細書で用いる「バネ」および「スプリング」は、特に明記しない限り、両者とも実質的に同様の要素を意味するものである。
本発明に係るランセットアッセンブリは、図1Aで示すランセットホルダー102内に、図2Aで示すランセット150が固定された状態で用いられる。図3にランセットアッセンブリ100の模式図を示す。尚、図3では、ランセットアッセンブリ100の構造が容易に理解できるように、ランセットホルダー102を、その長手方向に沿って半分切除した形態で示している。
ランセットホルダー102は、図1Aに示すように、例えば全体として角筒の形態である。かかるランセットホルダー102のサイズは小さく、例えば図1Aに示される長さ(L、H1、H2、W1、W2)は、L=23.4〜31.4mm、H1=6.9〜10.4mm、H2=8.6〜12.4mm、W1=4.2〜7.9mm、W2=4.7〜8.5mmとすることができる。但し、ランセットホルダー102の形状は必ずしも角筒の形態に限定されるものではなく、例えば円筒の形態であってもよい。尚、図面においては、ランセットホルダー102の外面に連続突起109が設けられているが、これは、主として、ランセットアッセンブリ100をインジェクター200に挿入する際に生じ得るガタを防止するためのものである(但し、このような連続突起109は、ガタ防止の機能を有するだけでなく、ランセットホルダー102自体の強度を増加させる機能も有しており、更には、図示するように同じ面に略平行に2つ連続突起109を設けた場合などでは、その連続突起109を下にして配置すると、かかる連続突起109が足部として機能し得る利点も有している)。特に、インジェクター内壁に穿刺方向に沿った長尺溝部(好ましくは連続突起109と相補的な形状を有する溝部)を設けると、連続突起109が長尺溝部に嵌り込むような状態でランセットホルダー102がインジェクター内部へと挿入されることになり得る。この場合、連続突起109が長尺溝部に嵌り込まないとランセットホルダーの挿入が不可能または不自然(例えば、挿入に際して必要以上の抵抗が生じてしまう)になるので、ランセットホルダーの向き(その長手方向軸を中心にした回転方向の向き)を間違えることなく、インジェクターにランセットホルダー102を挿入することを可能ならしめる効果が奏される。ランセットホルダー102は、一般的なランセットに用いられる樹脂材料であれば、いずれの種類の樹脂材料から形成してもよい。ランセットホルダー102は開口端103を有すると共にそれに対向する面104に穿刺開口部105を有している。穿刺開口部105は、穿刺すべき所定の部位(例えば指先)にあてがわれる部分である。本発明に係るランセットアッセンブリ100は、ランセット150を開口端103からランセットホルダー102内に挿入し、ランセット150をランセットホルダー102内で固定することによって構成されるものである。特に本発明に係るランセットアッセンブリのランセットホルダー102の開口端側103の端部(即ち、開口端のホルダー壁部)には、ホルダーの長手方向にスリット状に設けられた切欠き部113が形成されている。図示するように2つの切欠き部113が平行して形成されると共に、それら2つの切欠き部113の間のホルダー壁部113aが更に部分的に切り取られている形態が好ましい。また、ランセットホルダー102の開口端103に隣接する外壁面にはロック用突起部116が形成されている。ランセットホルダーの側面の前方側中央付近には、ホルダーの長手方向に沿って延在するスリット部118が設けられている。図4には、ランセットアッセンブリ100を構成する際の態様が模式的に示されている。図示するように、ランセットキャップ152の部分を先端にして開口端103からランセットホルダー102内にランセット150が挿入される。
次に、ランセットアッセンブリ100の使用について説明する。ランセットアッセンブリ100の使用に際しては、ランセットホルダー102の開口端103を介してランセットキャップ取外し部材(穿刺部材を発射させるインジェクター200に設けられている部材であって、図7Bまたは図8(b)において符号206で示す部材)がランセットホルダー102内に挿入される。尚、ランセットアッセンブリ100をインジェクターに装填する際には、図6Aに示すように、穿刺開口部105が前方を向き、開口端103が後方を向く方向でランセットホルダー102をインジェクター200の前端開口部202から挿入するので、ランセットホルダー102の開口端103からランセットキャップ取外し部材206がランセットホルダー102内に入り込むことができる(例えば図28B参照)。また、例えばランセットアッセンブリ100の経時変化を示した図5A〜図5Eなどから理解できることであるが、穿刺に際して穿刺部材153(又はランセットボディ151)が移動する穿刺方向は、開口端103から穿刺開口部105へと向かう方向に相当し得る。尚、図5Aは、穿刺前の未使用ランセットアッセンブリ100の態様を示し、図5Bは、ランセットキャップ152がランセットボディ151から分離した態様を示し、図5Cは、分離したランセットキャップ152が穿刺部材153の穿刺軌道から逸れる位置にまで移動した態様を示し、図5Dは、穿刺部材153の先端部が露出したランセットボディ151が発射された態様を示し、図5Eは、穿刺後のランセットアッセンブリ100の態様を示している。
上述したように、ランセットホルダー102に設けられている穿刺開口部105は、穿刺に際して穿刺部位(例えば指先)にあてがわれる部分である。穿刺に際して被採血者の血液がホルダー外壁面104(図1A参照)に付着すると、ランセットホルダーを廃棄する際に身体(例えば手や指)が血液に触れてしまい、感染症に罹ってしまう危険性があるが、本発明では、そのような危険性の低減に資する穿刺開口部サイズとなっている。例えば、穿刺開口部105の直径は、好ましくは0.5〜4.0mmであり、より好ましくは1.0〜3.5mmであり、例えば3.0mmである。本明細書において「直径」とは、穿刺開口部の形状が円形である場合を指している。しかしながら、穿刺開口部105の形状は特に限定されず、円形以外の形状であってもよい。穿刺開口部105の形状が円形以外の場合、穿刺開口部105は、上記の「直径」に相当する相当直径を有していることが好ましい。ここで「相当直径」とは、穿刺開口部の面積(より詳細には「穿刺方向に直交する方向における穿刺開口部の断面積」)を変えずに穿刺開口部の形状を円形にした場合に想定される直径を意味している。尚、上記「直径」は、図1Aに示すように穿刺開口部105に切欠きが存在する場合には、そのような切欠きが存在しない状態を仮定した穿刺開口部を前提とすることに留意されたい。
ランセットホルダー102の内部構造が分かるように、長手方向に半分切除した形態のランセットホルダー102を図1Bに示すと共に、ランセットホルダー102の長手方向断面図を図1Cに示す。ランセットホルダー102は、その向かい合う内壁106(より具体的には、開口端103と穿刺開口部105とが相互に対向する方向に対して直交する方向で向かい合う内壁)において、固定溝120に2つの凸部121a,121bを有している。一方、ランセット150のランセットボディ151には、固定溝120内に嵌り込む被固定突起部158を有している(「被固定突起部158」については図2A参照)。ランセットホルダー102の2つの固定凸部121a,121bがランセットボディ151の被固定突起部158を挟み込むように固定凸部121a,121bと被固定突起部158とが互いに当接することによって、ランセットボディ151がランセットホルダー102に固定されることになる。図1Cの点線内の模式図参照のこと(尚、点線内の模式図は、図3のU方向から見た図(図示するランセットアッセンブリの上方向から見た図)であり、固定凸部121a,121bと被固定突起部158との当接状態を示している)。また、ランセットホルダー102は、その向かい合う内壁106に、ランセット150のランセットボディ151を穿刺方向に沿って案内するガイド107、好ましくは2本のガイドチャンネル107を有している。一方、ランセットボディ151には、図2Aに示すように、ガイドチャンネル107内に嵌り込むことができる一対の被ガイド突起部157aおよび一対の被ガイド突起部157b(図2Aでは対を成す被ガイド突起部の片方のみが主として示されている)が設けられている。従って、ランセットボディ151の一対の被ガイド突起部157aおよび一対の被ガイド突起部157bが、ランセットホルダー102のそれぞれのガイドチャンネル107に嵌り込むように設けられることによって、穿刺に際してランセットボディ151が穿刺方向に移動できるようになっている。このように本発明に係るランセットアッセンブリ100は、ランセットボディ151をランセットホルダー102に固定するための突起部(即ち、突起部158)と、ランセットボディをガイドするための突起部(即ち、157a,157b)とが別個に設けられている。
ランセット150は図2Aで斜視図にて示されている。図2Bは、ランセット150をそれぞれ異なる側方から見た図である。かかるランセット150のサイズも、ランセットホルダー102と同様に小さく、ランセットホルダー102内に収容される大きさを有している。ランセット150は、図示するように、ランセットボディ151、ランセットキャップ152および穿刺部材153を有して成る(穿刺部材153に関しては図2C参照のこと)。穿刺部材153は、例えば金属製の針である。穿刺部材153は、図2Cに示すように、樹脂製のランセットボディ151およびランセットキャップ152にまたがってこれらの中に存在しており、穿刺部材153の先端部153aがランセットキャップ152によってカバーされている。このため、図2Aでは、穿刺部材153が表されていない。図2Aに示すように、ランセットキャップ152とランセットボディ151とはブリッジ部材154を介して一体に結合している。このランセット150は、穿刺部分153を金型にインサートして樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)を成型するいわゆるインサート成形によって製造することができ、ブリッジ部材154は、このインサート成形の際に併せて製造することができる。従って、ブリッジ部材154は、ランセットキャップ152およびランセットボディ151と同じ樹脂材料から形成され得る。ブリッジ部材154は、破壊され易い形態であることが好ましい(それゆえ、ブリッジ部材を「弱化部分」または「易破壊部分」と呼ぶこともできる)。例えば、図2Aに示すように、ブリッジ部材154は、小径の棒状部材であってよく、この棒状部材がランセットキャップ152とランセットボディ151とを橋渡しするような形態で設けられることが好ましい。図2Aに示すように、ランセット150の中心軸線(または穿刺部材153)を中心にして対称にブリッジ部材154が2つ設けられることが特に好ましい。尚、ブリッジ部材154がより容易に破壊されるように、ブリッジ部材154にノッチ(例えば、V字形の刻み目)を設けてもよい。場合によっては、ブリッジ部材154が予め切断されている形態、更にはブリッジ部材154が存在しない形態であってもよく、後述するようなランセットキャップ152の押圧操作によって、ランセットキャップ152とランセットボディ151とが相対的に引き離され、その結果、ランセットキャップ152が穿刺部材153から分離して、穿刺部材153の先端部が露出したランセットボディ151が得られるのであれば特に問題はない。
ランセットキャップ152は一対の第1ウイング部155を有して成る。図2Aに示すように、一対の第1ウイング部155では、ランセット150の中心軸線(即ち、ランセット150の長手方向の中央軸または穿刺部材153)を中心にして対称となるようにプレート状部分155aが延在すると共に、プレート状部分155aの側部が後方に向かって突き出ていることが好ましい。特に、図示するように、後方に向かって突き出ている部分156は、ランセットの中心軸線と略平行となっていることが好ましい。ランセットキャップ152は、ランセットキャップ取外し部材206が当接できる構造を有しているので、ランセットアッセンブリ100をインジェクター200に装填するに際してランセットキャップ取外し部材206がランセットホルダー102内に入り込むと(図28B参照)、ランセットキャップ取外し部材206とランセットキャップ152(より具体的には156の部分)とが相互に当接することになる。
ランセットボディ151は、前記で説明したとおり、ランセットホルダー102のガイドチャンネル107内に嵌り込むように構成された一対の被ガイド突起部157aおよび一対の被ガイド突起部157bを有している。図2B(a)および(b)に示すように、一対の被ガイド突起部(157a,157b)は、ランセットの中心軸線を中心にして対称に外側に突出している。また、一対の被ガイド突起部157a,157bは、例えば図2Aに示すように、第1ウイング部155の一対の突出し部分156が相互に対向する方向に対して直交する方向に延在していることが好ましい。図2Aならびに図2B(c)および(d)に示すように、一対の被ガイド突起部157aと一対の被ガイド突起部157bとは、ランセットの中心軸線を挟んで対向するように設けられていることが好ましい。尚、固定凸部121a,121bがランセットボディ151の被固定突起部158を挟み込むように固定凸部121a,121bと被固定突起部158とが互いに当接することによって、ランセットボディ151がランセットホルダー102に固定されるが、ランセットホルダー102とランセットボディ151との間に働く力が所定の閾値を超えると、ランセットホルダー102の前方側の固定凸部(即ち固定凸部A)121aがランセットボディ151の被固定突起部158を乗り越えることになり(つまり、見方を変えれば、被固定突起部158が固定凸部121aを乗り越えることになり)、被固定突起部158と固定凸部121a,121bとの当接状態が解除される。これにより、ランセットボディ151が穿刺方向およびそれと反対の方向に移動できる状態が得られる(この場合、一対の被ガイド突起部157aおよび一対の被ガイド突起部157bが、それぞれガイドチャンネル107内に沿って移動することになる)。従って、ランセットアッセンブリ100をインジェクター200に装填するに際して、ランセットボディ151の更なる挿入が阻止された状態でランセットホルダー102を更に挿入方向に移動させると、ランセットホルダー102とランセットボディ151とが相対的に遠ざかる力が発生し、ランセットホルダー102の前方側の固定凸部121aがランセットボディ151の被固定突起部158を乗り越えることになる(つまり、見方を変えれば、被固定突起部158が固定凸部121aを乗り越えることになる)。尚、被固定突起部158が固定凸部121aを乗り越えるとみた場合、図1Bおよび図1Cに示すように、乗り越え易いように固定凸部121aの後方側面121a2が滑らかに斜めに形成されていると共に、一旦乗り越えると、ランセット150がランセットホルダー102から抜け落ちないように、かかる固定凸部121aの前方側面121a1は、ホルダー横断方向へとまっすぐ延在する平面(より具体的には、穿刺方向に対して垂直な方向へとホルダー内側に延在する平面121a1)を成している(換言すれば、固定凸部121aの後方側面は曲線状に形成されている一方、固定凸部121aの前面側面は直線状に形成されている)。このように固定凸部121aの前方側面121a1が平面を成している場合、使用済みランセットボディ151がランセットホルダー102内で後方へと移動したとしても、被固定突起部158が、かかる平面121a1で確実に係止するようになり、使用済みランセットボディ151がランセットホルダー102内から脱落しなくなる。
図2Aならびに図2B(c)および(d)に示すように、ランセットボディ151には、ランセット150の中心軸線(即ち、ランセット150の長手方向の中央軸または穿刺部材153)を中心に対称となるように後方に向かって徐々に外向きに広がる一対の第2ウイング部159が設けられている。一対の第2ウイング部159は、穿刺後において穿刺開口部105から穿刺部材153の先端部153aが露出することのないように機能する(つまり、ランセットホルダー102の穿刺開口部105から穿刺部材153の先端部153aに容易に触れることが極力防止される)。具体的には、穿刺後にインジェクター200から取り外された使用済みランセットアッセンブリ100では、穿刺開口部105から穿刺部材153の先端部153aが露出することのないように、一対の第2ウイング部159が、ランセットホルダー102内部に設けられたストッパー面(図1Bにおいて符号180で示す)に当接または衝突することができ、穿刺部材153の穿刺方向への移動が制限されている(特に図5Eの態様を参照のこと)。ここで、一対の第2ウイング部159は、第2ウイング部159とストッパー面180とが確実に当接できるように、先端に当接部159aを有している。
尚、ランセットキャップ取外し部材206には、第2ウイング部159を収容できる弓形状溝部(図8(b)において符号206dで示すような弓形に連続的に窪んだ部分または連続的に切り欠いた部分)が形成されているので、ランセットアッセンブリ100のインジェクター200への装填操作でランセットキャップ取外し部材206がランセットホルダー102内に入り込んだ際、一対の第2ウイング部159が略変形することなく弓形状溝部206dに配置される。つまり、穿刺部材153の発射準備が完了した状態では、第2ウイング部159は、ランセットキャップ取外し部材206の弓形状溝部206dに起因して略変形することなく保持され、好ましくは全く変形することなく保持される(即ち、クリープ現象に起因して変形状態が保持されることはない)。このように第2ウイング部159が変形することなく保持されるので、穿刺後にランセットキャップ取外し部材206がランセットホルダー102から抜かれた際、一対の第2ウイング部159が、当初の形状をそのまま維持することになり、ランセットホルダー102内部に設けられたストッパー面180に対して確実に当接または衝突することができる。尚、図8(b)に示した弓形状溝部206dについては、実際には紙面奧側に位置する弓形状溝部(図8(b)にて206d1で示す弓形状溝部)が第2ウイング部159を収容するように機能する。第2ウイング部159を実際に収容する弓形状溝部206dが紙面奥側に位置する弓形状溝部であることは、例えば図28Aおよび図28Bなどを参照すると、第2ウイング部159がランセットホルダー102内で紙面奥側に位置していることから理解できるであろう。
図3には、ランセットホルダー102内にランセット150が固定された状態が示されている(理解を容易にするために、ランセットホルダー102を、その長手方向に沿って半分切除した形態で示している)。図示するように、ランセットキャップ152がランセットホルダー102の穿刺開口部105側に位置する一方、ランセットボディ151がランセットホルダー102の開口端103側に位置している。尚、上記で説明したように、ランセットホルダー102の2つの固定凸部121a,121bがランセットボディ151の被固定突起部158を挟み込むように固定凸部121a,121bと被固定突起部158とが互いに当接することによって、ランセット150がランセットホルダー102内に固定されている(図1Cの点線内を参照のこと)。つまり、ランセットボディ151はランセットホルダー102に固定されている一方、ランセットキャップ152自体はランセットホルダー102に固定されていない。従って、穿刺方向にランセットキャップ152のみを押圧すると、ランセットキャップ152とランセットボディ151とが相対的に遠ざかる力が作用するため、ブリッジ部材154が破壊されることになり、結果的に、ランセットキャップ152とランセットボディ151とが分離し、穿刺部材153の先端部が露出した状態が得られることになる(図5B参照)。
分離したランセットキャップ152は、引き続いて穿刺方向に押圧されると、前方へと移動する。ここで、ランセットホルダー102内の穿刺開口部105付近には、分離したランセットキャップ152を穿刺軌道から逸れる位置にまで案内するスロープ部材170が設けられていると共に、ランセットキャップ152にはスロープ部材170に対応する形状の被スロープ部171が設けられている(より具体的には、スロープ部材170および被スロープ部171は、それぞれ互いに相補的に当接できる平面を有している)。スロープ部材170は図3だけでなく図5A〜5Cなどにも明確に表されており、被スロープ部171は図2Aおよび図5Aに明確に表されている。このようなスロープ部材170および被スロープ部171が設けられているので、分離したランセットキャップ152が前方へと引き続いて移動する際、ランセットキャップ152の被スロープ部171が、ランセットホルダー102内のスロープ部材170に当接した状態でスライドすることになり(別の表現をすれば、被スロープ部171がスロープ部材170上を摺動することになり)、結果的に、穿刺軌道から逸れる位置までランセットキャップ152が移動することができる。図5Dおよび図5Eは、分離したランセットキャップ152が穿刺軌道から逸れる位置にまで移動した状態を示している。
より具体的に、ランセットキャップ152の移動について説明する。ランセットホルダー102内のスロープ部材170は、穿刺方向に対して角度を成すスロープ面170a(図3に示す)を有しており、一方、ランセットキャップ152の被スロープ部171は、スロープ面170aと相補的に当接できるような面を有している。従って、ランセットキャップ152が穿刺方向に押圧されると、それらの面が相互に当接した状態でランセットキャップ152が前方へとスライドすることになり、結果的に斜め前方へと移動することになる。例えば図5Aおよび図5Cは、ランセットキャップ152が移動する前後の態様を示しており、図5Aに示す位置から図5Cに示す位置までランセットキャップ152が移動したことを考慮すると、ランセットキャップ152が穿刺軌道から逸れる位置まで移動することが理解できよう。尚、図5Aの上側には、U方向(上側)から見たランセットキャップ152の移動軌道を示す。この移動軌道からも、ランセットキャップ152が最終的には穿刺部材153の穿刺軌道から逸れた位置まで移動することが理解できる。尚、スロープ面170aが穿刺方向と成す角度(即ち図5Aに示された移動軌道の角度α)は、好ましくは30°〜60°であり、より好ましくは40°〜50°である。
上述のようにランセットキャップ152が斜め前方へと穿刺軌道から逸れる位置にまで移動する結果、穿刺部材153(具体的には穿刺部材153が露出したランセットボディ151)が、穿刺に際して、ランセットキャップ152に邪魔されずに前方へと発射される。尚、図5Dには、穿刺時(即ち、穿刺部材が発射された時)のランセットアッセンブリ100の状態を模式的に示しており、穿刺部材の先端153aがランセットキャップ152に邪魔されずに穿刺開口部105から露出している状態が示されている。
使用時にランセットアッセンブリ100をインジェクター200に装填する際には、アッセンブリ100を、図6Aに示すように、インジェクター200の前端開口部202から後方に挿入する。かかる装填は、ランセットホルダー102を一方の手の指先でつまみ、インジェクター200を他方の手で保持した状態で、ランセットホルダー102をインジェクター200の前端開口部202へと挿入する。そして、通常の人が加えることができる力で更に挿入できない状態となった時点をもって装填が完了する。装填が完了した態様を図6Bに示す。尚、このような装填操作に際しては、インジェクター200内のプランジャーが後退して穿刺部材153の発射に必要な力が徐々にプランジャーに蓄えられることになるが、そのプランジャーの後退と並行して、
(1)ブリッジ部材154が破壊されてランセットキャップ152がランセットボディ151から分離し、
(2)分離したランセットキャップ152が穿刺軌道から逸れるように移動する、
ことになる。
図7A〜図7Cに、本発明に係るインジェクター200を示す。図7Aは、インジェクター200の外観図であり、図7Bおよび7Cは、インジェクター200の内部を示した図である。図7Bおよび図7Cに示すように、インジェクター200は、プランジャー204およびランセットキャップ取外し部材206を有して成り、その他、トリガーレバー230、エジェクター270(後述するようにエジェクター270には外側プレート部材450が設けられている)、ホルダーロック部材280、ホルダーロック部材用スプリング280a、トリガーロック部材290、トリガーロック部材用スプリング290d、プランジャー204のフランジ部204b(後述するようにフランジ部204bには内側プレート部材460が設けられている)、射出用スプリング205a、リターン用スプリング205b、穿刺深さ調節機構300などを有して成る。プランジャー204、ランセットキャップ取外し部材206、トリガーレバー230、エジェクター270、ホルダーロック部材280およびプランジャー204のフランジ部204bについては、それぞれ図8(a)〜図8(f)に模式的な斜視図で示す。
インジェクター200のハウジング201は、二分割した部材から構成されることが好ましく、例えば図9Aに示す部材201aと図9Bに示す部材201bとを一体に組み合わせて構成される。
プランジャー204は、インジェクター200の長手方向軸に沿うように配置されているものであって、ランセットボディ151を穿刺方向に発射させる機能を有している。図7Cまたは図8(a)に示されるように、プランジャー204の先端部204aは、ランセットボディ151の後端部と係合できるようになっている(ランセットボディの後端部の係合部は図2Aにおいて符号165で示される)。インジェクター200へのランセットアッセンブリ100の装填に際してランセットボディ151がインジェクター200内に挿入されることによって、プランジャー204の先端部204aとランセットボディ151の後端部165とが係合し、その後、後方へと更にランセットボディ151が挿入されることによって、プランジャー204が後方へと押し込まれることになる。その結果、プランジャー204に設けられたスプリング205aが圧縮され、穿刺部材153の発射に必要な力がプランジャー204に蓄えられることになる。
ランセットキャップ取外し部材206は、ランセットキャップ152と当接することができ、ランセットアッセンブリ100のインジェクター200への装填に際してランセットキャップ152を取り外すように機能する。図8(b)に示すように、ランセットキャップ取外し部材206は、2本の長尺部材206aおよび206bが前方へと突き出た形態を有しており(それゆえ、ランセットキャップ取外し部材206を「突出し棒」とも呼ぶことができる)、長尺部材206aおよび206bのそれぞれの先端部206a1、206b1が、ランセットキャップ152の一対の第1ウイング部155の後方突き出し部分156の先端156aと当接するように構成されている。尚、ランセットアッセンブリ100の装填に際してランセットキャップ152とランセットキャップ取外し部材206とが当接するように、ランセットキャップ取外し部材206の先端部206a1,206b1がインジェクター200の前端開口部202側に位置し、キャップ取外し部材206のベース部分206cがインジェクター200の後端側に位置するように、ランセットキャップ取外し部材206がインジェクター200内に設けられている(図7Bおよび図8(b)参照)。ランセットキャップ取外し部材206の先端部206a1および206b1と、ランセットキャップ152の後方突き出し部分156の先端156aとは、より確実に当接できるように、相互に相補的な形状を有していてもよい。
インジェクター200は、穿刺後にランセットホルダー102をインジェクター200から取り外すために用いられるエジェクター270を有している。図8(d)に示すようなエジェクター270は、そのスライド部270aの一部270bのみがインジェクター・ハウジング201から露出するようにインジェクター200内に設けられており、ランセットホルダー102がインジェクター200に装填された状態では、エジェクター270の押圧部材274(より具体的には、その部材の一対のウイング部)の先端部分275が、ランセットホルダー102の開口端103の縁およびランセットボディ151の後端部領域165aと接触することになる(図10参照)。従って、270bの部分を前方へと押圧してスライドさせると、エジェクター270の押圧部材274がランセットホルダー102およびランセットボディ151を押し出すように作用し、使用済みランセットアッセンブリ100がインジェクター200から取り外されることになる。尚、スライド部の270bの部分は、指(特に親指)で前方へとスライドさせやすいように、穿刺方向に向かって徐々に高さを増すように形成されている(特に好ましくは親指が触れる面が湾曲状に形成されている)ことが好ましい(例えば図7A、図8(d)および図10参照)。
尚、穿刺後において、エジェクター270によってインジェクター200から取り外されたランセットホルダー102内には、分離したランセットキャップ152および穿刺部材153の先端が露出したランセットボディ151が収納されているが、上述したように、ランセットボディ151の一対の第2ウイング部159がランセットホルダー102内部に設けられたストッパー面180に対して当接または衝突するようになっているので、穿刺開口部105から穿刺部材153が露出することはない。従って、使用済みのランセットアッセンブリ100を安全に処理することができる。
以下では、本発明の特徴について詳細に説明していく。本発明に係る穿刺デバイスは「インジケーター機能」を備えている。かかるインジケーター機能に寄与する部材・部分は、主として、「インジェクターのハウジングに設けられた窓部(=インジケーター窓部)」と、インジェクターのハウジング内部に設けられた「外側プレート部材および内側プレート部材」である。インジケーター窓部440は、例えば図7A、図9Aおよび図9Bに示されているように、インジェクターのハウジングの側面の中央付近に設けられていることが好ましい(窓の形態は、特に制限されるわけではないが、矩形状、正方形または円形状であることが好ましい)。外側プレート部材450および内側プレート部材460は、それぞれ図8(d)および図8(f)に示されている。図示する態様は、外側プレート部材および内側プレート部材が、それぞれ2個のプレート部材で対を成しているものの、以下では、便宜的に、それぞれ1つのプレート部材が設けられている態様を前提として説明を行う。図示するように、外側プレート450は、エジェクター270に設けられていることが好ましく、内側プレート部材460は、プランジャーのフランジ部204bに対して設けられていることが好ましい。外側プレート部材450および内側プレート部材460は、例えば図11(a)、図12(a)および図14に示すように、インジェクターのハウジング内に隣接するように収容されている(「インジェクターのハウジング」を以下では「インジェクター・ハウジング」とも称す)。本明細書にいう「隣接する」とは、外側プレート部材および内側プレート部材が実質的に相互に平行に隣り合っている態様を意味している(より具体的には、外側プレート部材の主面と内側プレート部材の主面とが互いに平行な関係で隣り合っている態様を意味している)。外側プレート部材および内側プレート部材は、例えば0.5mm〜3mm程度、好ましくは0.5mm〜1mm程度相互に間隔を空けて実質的に相互に平行な位置関係で隣り合って配置されている。ここで、外側プレート部材450は、ハウジング内において内側プレート部材460よりも外側に位置するように収容されている。換言すれば、内側プレート部材460は、ハウジング内において外側プレート部材450よりも内側に位置するように収容されている(例えば、図14参照)。外側プレート部材450および内側プレート部材460は、外力が加えられると、穿刺方向に沿って前後に動くことができるようになっている。
エジェクターに設けられている外側プレート部材450は、エジェクター押圧部材(より具体的には「ランセットホルダーおよびランセットボディの前方への移動を可能とするエジェクターの一対のウイング部」)に対して設けられていることが好ましい。これにより、外側プレート部材450が前後にスライドするように可動状態で設けられることになる。これについて具体的に説明すると次のようになる。図15(a)および15(b)に示すように、外側プレート部材450は、ウイング形状を成したエジェクター押圧部材274(尚、「エジェクター押圧部材」は、その有する形状から「ウイング部」とも称することができる)に設けられており、かかるエジェクター押圧部材274が穿刺方向に沿って前後に移動できるようになっているので、それに伴って、外側プレート部材450も穿刺方向に沿って前後に移動できる。エジェクター押圧部材274は、図15(a)および15(b)に示すように、エジェクタースライド部材270aと相互に前後に可動な状態で組み合わされている。ここで、エジェクター押圧部材274とエジェクタースライド部材270aの後端部との間には図示するようなバネ部材452が取り付けられており、エジェクター押圧部材274には穿刺方向の前方へと力が作用している(尚、エジェクター押圧部材274の前方への移動は、エジェクタースライド部材270aとの係合との兼合いで或る位置までに制限されている)。従って、エジェクター押圧部材274に力が働いていない初期状態(即ち、後述する「未装填状態」または「未使用状態」)では、エジェクター押圧部材274に設けられた外側プレート部材450が或る一定の位置に維持されているのに対し、エジェクター押圧部材274に対して後方に力が加えられると、バネ部材452の力に抗する形態で、エジェクター押圧部材274が後方へと移動し、外側プレート部材450が後方へと移動することになる。その一方、エジェクター押圧部材274に加えられる力が解除されると、エジェクター押圧部材274が前方へと移動し、外側プレート部材450が元の初期状態の位置に戻ることになる。尚、外側プレート部材450の寸法について、図15(b)を参照して説明すると、高さHは、好ましくは7.5〜9.8mm、より好ましくは7.5〜7.9mmであり、幅Wは、好ましくは3.9〜5.1mm、より好ましくは3.9〜4.1mmであり、厚さTh(平均厚さTh(図示せず))は、好ましくは0.65〜0.95mm、より好ましくは0.65〜0.75mmである。外側プレート部材450は、一般的なランセットに用いられる樹脂材料であれば、いずれの種類の樹脂材料から形成してもよく、図15(a)および15(b)に示すように、エジェクターのウイング部274と一体成形により形成してよい。
内側プレート部材460は、プランジャー204の中間部分に対して設けられることが好ましい。より具体的には、プランジャー204の中間部分に取り付けられたフランジ部204bに設けられることが好ましい(例えば図8(f)および図14を参照のこと)。従って、プランジャーに力が作用していない初期状態(即ち、後述する「未装填状態」または「未使用状態」)では、内側プレート部材460は或る一定の位置に維持されており、ランセットアッセンブリのインジェクターへの装填に際してプランジャーが後退すると、それに伴って、内側プレート部材460が後方へと移動することになる一方、穿刺部材の発射に際して、プランジャーが前方へと移動すると、それに伴って、内側プレート部材も前方へと移動することになる。尚、内側プレート部材460の寸法について、図8(f)を参照して説明すると、高さHは、好ましくは6.4〜8.3mm、より好ましくは6.4〜6.6mmであり、幅Wは、好ましくは10.4〜13.3mm、より好ましくは10.4〜10.6mmであり、厚さTh(平均厚さTh)は、好ましくは0.6〜2.7mm、より好ましくは0.6〜2.1mmである。このように又は図示するように、内側プレート部材の幅寸法Wは、外側プレート部材の幅寸法Wよりも大きく形成されていることが好ましい(この理由については後述する)。内側プレート部材460は、一般的なランセットに用いられる樹脂材料であれば、いずれの種類の樹脂材料から形成してもよく、図8(f)に示すように、プランジャーのフランジ部204bと一体成形により形成してよい。
ランセットアッセンブリがインジェクターに挿入されていない未装填状態または未使用状態では、インジェクター・ハウジングに設けられたインジケーター窓部の設置位置に、外側プレート部材450および内側プレート部材460が位置している(図11(a)参照)。「インジケーター窓部の設置位置」については図13を参照のこと。未装填状態または未使用状態では、図11(a)に示すように、外側プレート部材450は内側プレート部材460よりも外側に位置しているので、インジケーター窓部440からは外側プレート部材450が露出しており、インジケーター窓部440を外部から見ると、外側プレート部材450が見えるようになっている。尚、インジケーター窓部440の寸法は、図7Aを参照して説明すると、高さHが、好ましくは4.95〜6.30mm、より好ましくは4.95〜5.05mmであり、幅Wが、好ましくは2.95〜3.80mm、より好ましくは2.95〜3.05mmであり、厚さTh(即ち、実質的にはハウジング壁部の厚さ(図7Aに示さず))が、好ましくは1.45〜1.55mmとなっている。つまり、インジケーター窓部の高さおよび幅の寸法は、外側プレート部材および内側プレート部材の高さおよび幅の寸法よりも全体的に小さくなっており、未装填状態では外側プレート部材(および内側プレート部材)が適所に位置することによって、外側プレート部材がインジケーター窓部の全領域を占めるようにインジケーター窓部から露出することになる。
ここで、ランセットアッセンブリのインジェクターへの装填に際して、ランセットホルダーがインジェクター内部に挿入されると、ランセットホルダー102の開口端側103の端部がエジェクターのウイング部274(即ち、上述した又は後述する「エジェクター押圧部材」)の先端に当接するので(図10参照)、ランセットホルダーの挿入に伴ってウイング部材274が後方へと押圧されることになる。ウイング部274が後方へと押圧されることによって、ウイング部274に設けられている外側プレート部材が、インジケーター窓部の設置位置より後方に移動することになる。そして、穿刺部材の発射が可能な状態(以下では「穿刺可能状態」とも称す)となるまでランセットホルダーがインジェクター内部に挿入されると、外側プレート部材450がインジケーター窓部440の設置位置から後方へずれた位置にまで移動することなる(図11(b)参照)。つまり、外側プレート部材450はインジケーター窓部440から露出しない位置にまで移動する。その結果、穿刺デバイスが穿刺可能状態となると、外側プレート部材450の遮りがなくなることに起因して、内側プレート部材460がインジケーター窓部440から露出することになり、インジケーター窓部440から内側プレート部材460が見えるようになる。
尚、ランセットアッセンブリのインジェクターへの装填に際してはプランジャーが後退するので、かかるプランジャーに設けられている内側プレート部材も後方へと移動することになるが、内側プレート部材460は、かかる移動があっても、その一部がインジケーター窓部440の設置位置に依然位置できるような大きな寸法を有している。従って、内側プレート部材が後方へと移動したとしても、内側プレート部材の一部、より具体的には「内側プレート部材の前方側半分」がインジケーター窓部の設置位置に位置することになるので、外側プレートの遮りがなくなると、インジケーター窓部から内側プレートが露出することなる。換言すれば、未装填状態または未使用状態では、内側プレート部材の後方側半分がインジケーター窓部の設置位置に位置しているのに対して、穿刺可能状態では、内側プレート部材の前方側半分がインジケーター窓部の設置位置に位置することになる。かかる内側プレート部材の設置位置の変化の態様を模式的に図12(a)および図12(b)に示す。図12(a)は、ランセットアッセンブリがインジェクターに挿入されていない未装填状態または未使用状態における2枚のプレート部材と窓部との位置関係を模式的に示しており、図12(b)は、穿刺可能状態における2枚のプレート部材と窓部との位置関係を模式的に示している。図12(a)および図12(b)を参照すると、未装填状態または未使用状態から穿刺可能状態への遷移に際しては、外側プレート部材450の遮りがなくなることに起因して、内側プレート部材460がインジケーター窓部440から見えるようになると共に、インジケーター窓部450に後方側半分が位置していた内側プレート部材460が、その前方側半分がインジケーター窓部に位置するように後方へとずれる態様が理解できるであろう。尚、ランセットアッセンブリのインジェクターへの装填に際して、プランジャーのフランジ部204bがトリガーレバーの前方段差部(未使用時または未装填時の係止部)230cからトリガーレバーの後方段差部(穿刺可能状態の係止部)230aまで後方へと移動することになり(図28Aおよび図28B参照)、このフランジ部204bの移動距離に相当する分だけ、内側プレート部材も後方へと移動することになる。従って、かかる移動距離を想定して、未装填状態または未使用状態から穿刺可能状態へと遷移しても内側プレート部材の一部(特に前方側半分)がインジケーター窓部の設置位置に位置できるように、内側プレートの寸法を決定することが好ましい。
このように、本発明に係る穿刺デバイスは、未装填状態または未使用状態では、インジケーター窓部から外側プレート部材が見える一方、穿刺可能状態となるまでランセットホルダーがインジェクター内部に挿入されると、インジケーター窓部から内側プレート部材が見えることになり、穿刺デバイスの使用者は、ランセットアッセンブリがインジェクターに正確に装填されたか否かを、インジケーター窓部の状況の変化から視覚的に確実に把握できる。
図15(a)および図15(b)に示すように、「外側プレート部材が設けられている一対のウイング部274」の各ウイングは、エジェクター本体部270aから上方向に延在してから前方方向へと延在するように直角に折れ曲がって形成されていることが好ましい。また、ランセットホルダー102の開口端103の縁が各ウイングの先端部分を押圧できるように、各ウイングの先端部分275が内側へと折れ曲がっていることが好ましい。特に、図10に示すように、ランセットホルダーの開口端103の縁が「各ウイングの先端部分のより外側部分275b」に当接するように構成されていることが好ましい(尚、当接が確実となるように、外側部分275bは、図15(a)および図15(b)に示すような凹形状を有していることが好ましい)。このような当接が起こるために、ランセットホルダーが挿入されると、ランセットホルダー102が一対のウイング部274を確実に押圧でき、外側プレート部材がインジェクター内で後方に移動することになる。
また、ウイング部274の後方(または前方)へのスライド移動が安定するように、即ち、外側プレート部材の後方(または前方)への移動が安定するように、ウイング部274の側部に長尺凸部276が設けられ(図15(a)参照)、インジェクター・ハウジングの内壁には、かかる長尺凸部276が嵌まり込むことができるガイドチャンネル446(例えばインジェクター・ハウジングの内壁に設けた2本の平行に離隔したレール)が設けられることが好ましい(図9Aおよび図9B参照)。この場合、ウイング部274が後方(または前方)へと移動するに際して、ウイング部の長尺凸部がガイドチャンネル446に沿って案内されることになるので、ウイング部274の後方(または前方)へのスライド移動が安定し、しいては、外側プレート部材の後方(または前方)への移動が安定する。
更には、ウイング部274とエジェクター本体部270aの後端部との間に設けられているバネ部材452(図15(a)および図28B参照)は、望ましくは、適度なバネ力(即ち、穿刺方向にウイング部材274を押圧する適度な力)を有している。これについて具体的に説明すると次のようになる。ランセットアッセンブリ100のインジェクター200への装填に際しては、ランセットボディ151の後端部165aが、プランジャー204の先端部204aと係合するが、或る程度挿入されると(具体的には、ランセットホルダー102とランセット150との固定状態が解除される直前の状態にまで挿入されると)、ランセットボディ151の後端部165aは、エジェクター270のウイング部274の「先端部分のより内側部分275a」(図15参照)に当接することになる。そして、ランセットボディ151とランセットホルダー102との固定状態を解除すべく、ランセットホルダーが更に挿入されると、ウイング部材274が後方へと押しやられることになる。ここで、ランセットボディ151とランセットホルダー102との固定状態が依然解除されていない段階で、ウイング部材274が後方へと押しやられてしまうと、外側プレート部材450が後方へと移動してしまうことになり、インジケーター窓部440から内側プレート部材460が部分的に見えてしまう。換言すれば、ランセットボディ151とランセットホルダー102との固定状態が解除されていない段階(=「穿刺可能状態となっていない段階」)で、ウイング部材274が後方へと押しやられると、外側プレート部材450がやや後方へとずれてしまい、穿刺可能状態となっていないのに、インジケーター窓部の状況が変化してしまうことになる。従って、このような不都合を回避すべく、上記固定状態の解除に際してランセットホルダーが更に挿入され、ウイング部材274に対して後方への力が働いたとしても、それに抗する力がウイング部材274に作用していることが望ましく、それをバネ部材452のバネ力で担保することが望ましい。総括的にいうと、バネ部材452のバネ力が弱いと、上記固定状態が解除されていないのに外側プレート部材450が後方へとずれてしまうことになり得るが、バネ部材452のバネ力が或る程度強いものであると、『上記固定状態が解除されていないのに外側プレート部材450が後方へとずれてしまう』という不都合は生じなくなるので、そのような不都合が生じない程度のバネ力がバネ部材452に備わっていることが望ましい。
次に、穿刺可能状態から穿刺後の使用済み状態に至るまでのインジケーター機構の機能について説明する。穿刺可能状態では、上述したように、外側プレート部材がインジケーター窓部の設置位置から後方へとずれ、インジケーター窓部から露出しない位置に保持されている一方、内側プレート部材は、その前方側半分がインジケーター窓部の設置位置に位置し、インジケーター窓部から露出している。ここで、穿刺に際してトリガーレバーの前方部分を内向きに押し込むと、トリガーレバーの後方段差部230aのフランジに対する係止状態が解除されることになる。その結果、圧縮されたプランジャー用スプリング205aが元の形状に向かって伸びる力に起因して、プランジャーが元の位置に戻るように前方へと移動し、穿刺部材(即ち、「ランセットボディ」、より具体的には「穿刺部材の先端部が露出したランセットボディ」)が前方へと発射されることになる。ここで、穿刺部材の発射に際して、プランジャーが前方へと移動すると、インジケーター窓部の設置位置に前方側半分が位置していた内側プレート部材が前方へとずれて移動することになり、穿刺部材を発射させた後の使用済み穿刺部材では、内側プレート部材の後方側半分がインジケーター窓部の設置位置に位置することになる。つまり、使用済み状態では、内側プレート部材の後方側半分がインジケーター窓部から見えるようになる。尚、外側プレート部材は、ランセットホルダーが依然挿入されたままの状態であるので、後方へと押圧されインジケーター窓部からずれた状態に維持されており、内側プレート部材が外側プレート部材によって遮られることはない。換言すれば、挿入可能状態にまで挿入されたランセットホルダーは、穿刺デバイスに備わっている「ホルダーロック機構」によって、所定の位置に保持されているので、エジェクターのウイング部材が前方へと移動することが阻止され、外側プレート部材がインジケーター窓部からずれた状態に維持される。ここで、この「ホルダーロック機能」について簡単に説明する。この機能は、ランセットアッセンブリのインジェクターへの挿入に際して、ランセットアッセンブリが挿入方向と逆の方向に力を受けたとしても、ランセットアッセンブリがインジェクターから抜け落ちることなく保持される機能である。かかるホルダーロック機能に寄与する部材・部分は、主として、インジェクターの「ホルダーロック部材280」と、ランセットホルダーに設けられた「ロック用突起部116」である。図7Bおよび図7Cに示すように、ホルダーロック部材280は、インジェクター200の前端開口部202に隣接してハウジング内壁に設けられている。また、図1Aに示すように、ロック用突起部116は、ランセットホルダー102の開口端103に隣接してホルダー外壁に設けられている。ホルダーロック部材280自体は、図8(e)に単体として示されている。かかる図8(e)から分かるように、ホルダーロック部材280は、その表面Sにストッパー部A282およびストッパー部B284を有して成る。図7Cおよび図14に示すように、ホルダーロック部材280の前方端部280bが、インジェクターのハウジング内壁に対して枢設されている(即ち、回動自在に取り付けられている)。ここで、図14に示すように、ホルダーロック部材280とインジェクターのハウジング側壁面212との間にバネ280aが設けられているので、ホルダーロック部材280にはインジェクター内部方向(図8(e)でいえば矢印Fの示す方向)に向かって力が作用している。このようなホルダーロック部材280を備えたインジェクター200に対して、ランセットアッセンブリ100を挿入すると、ランセットホルダー102のロック用突起部116がホルダーロック部材280上を摺動することになる。そして、そのまま挿入が続けられると、ロック用突起部116がストッパー部A282を乗り越えることになる。ホルダーロック部材280には、バネ280aにより内向きに力が働いているので、ストッパー部Aの乗り越えに際しては、ロック用突起部116がホルダーロック部材280をその前方端部を中心に円運動するように外側へと可動させるものの、一旦乗り越えてしまうと、ホルダーロック部材280は再度元の位置へと戻されることになる。そして同様に、そのまま挿入が続けられると、ロック用突起部116がストッパー部B284を乗り越えることになり、穿刺可能状態が得られる。この状態では、ロック用突起部116とストッパー部B284とが当接できる状態となっている。換言すれば、ロック用突起部116のP面(図1A参照)と、ストッパー部B284のT面(図8(e)参照)とが当接できるので、ランセットホルダーがインジェクターから抜け落ちることなく所定の位置に保持される。
穿刺可能状態から使用済み状態に至るまでの内側プレート部材の設置位置の変化の態様を、模式的に図12(b)および図12(c)に示す。図12(b)は、上述したように、穿刺可能状態における2枚のプレート部材と窓部との位置関係を模式的に示しており。図12(c)は、穿刺後の使用済み状態における2枚のプレート部材と窓部との位置関係を模式的に示している。図12(b)および図12(c)を参照すると、穿刺可能状態から使用済み状態への遷移に際しては、インジケーター窓部440に前方側半分が位置していた内側プレート部材460が、その後方側半分がインジケーター窓部440に位置するように前方へとずれる態様が理解できるであろう。
このように、本発明に係る穿刺デバイスは、穿刺可能状態では、インジケーター窓部から内側プレート部材の前方側半分が見える一方、穿刺部材(より具体的には「穿刺部材の先端部が露出したランセットボディ」)を発射させた後の使用済み状態では、インジケーター窓部から内側プレート部材の後方側半分が見えることになり、穿刺デバイスの使用者は、穿刺デバイスが穿刺部材の発射された“使用済”であるか否かを、インジケーター窓部のかかる状況の変化から視覚的に確実に把握することができる。
「インジケーター機構」の好ましい態様では、使用者または被採血者がインジケーター窓部の変化をより容易に視覚的に把握できるように、外側プレート部材と内側プレート部材とが相互に異なる色を有している。これにより、使用者または被採血者は穿刺可能状態をより容易に把握することができる。換言すれば、「未装填状態または未使用状態」から「穿刺可能状態」への遷移に際して、インジケーター窓部から見えるプレート部材が「外側プレート部材」から「内側プレート部材」へと変わるが、外側プレート部材と内側プレート部材とが相互に異なる色を有していると、「インジケーター窓部から見えるプレート部材の変化」が視覚的に明確となる。かかるインジケーター機構では、プレート部材の成形時に、外側プレート部材と内側プレート部材とを全体的に別個の色となるようにしてもよい(例えば、成形時に使用する着色剤を変えることによって外側プレート部材と内側プレート部材とをそれぞれ異なる色にすることができる)。別法にて、インジケーター窓部から露出する面(以下では「露出面」とも称す)に対して、色シールを貼り付けたり、あるいは、着色塗料などでペイントしたりすることによって、外側プレート部材の露出面と内側プレート部材の露出面とをそれぞれ異なる色にしてもよい。尚、場合によっては、外側プレート部材と内側プレート部材とのいずれか一方は、プレート部材の成形に用いる樹脂材料が有する色をそのまま用い、その他方にのみ色シールを貼り付けたり、着色塗料でペイントしたりしてもよい(つまり、この場合、外側プレート部材と内側プレート部材とのいずれか一方は、色シールを貼り付けたり、着色塗料でペイントしたりしなくてもよい)。
外側プレート部材と内側プレート部材とが相互に異なる色を有する場合、外側プレート部材(または外側プレート部材の露出面)は、好ましくは、インジェクターのハウジングの色(以下では、「ハウジングのボディー色」とも称す)と同じ色を有している。ここで、ハウジングのボディー色としては、白色、灰色(グレー色)および水色などを挙げることができるので、その場合、外側プレート部材は、白色、灰色(グレー色)または水色を有していることが好ましいといえる。一方、内側プレート部材(または内側プレート部材の露出面)は、外側プレート部材とは異なる色である、例えば赤色または黄色を有していることが好ましい。あくまでも一例にすぎないが、外側プレート部材の色と内側プレート部材の色との組合せとしては、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材:赤色」、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材:黄色」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材:赤色」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材:黄色」などを挙げることができる。
また、外側プレート部材と内側プレート部材とが相互に異なる色を有することに加えて、内側プレート部材の前方側半分と後方側半分とが相互に異なる色を有していることが更に好ましい。これにより、使用者または被採血者は、ランセットアッセンブリがインジェクター内に既に挿入されている穿刺デバイスが使用済みなのか否かをより容易に把握することができる。換言すれば、「穿刺可能状態」から「使用済み状態」の遷移に際しては、インジケーター窓部から見えるプレート部材が「内側プレート部材の前方側半分」から「内側プレート部材の後方側半分」へと変わるが、「内側プレート部材の前方側半分」と「内側プレート部材の後方側半分」とが相互に異なる色を有していると、「インジケーター窓部から見える内側プレート部材の変化」が明確となる。かかるインジケーター機構では、内側プレート部材の成形に際して、前方側半分と後方側半分とを別個の色となるようにしてもよい(例えば、成形時に使用する着色剤を変えることによって前方側半分と後方側半分とをそれぞれ異なる色にすることができる)。簡易的には、前方側半分と後方側半分とにそれぞれ異なる色シールを貼り付けたり、あるいは、前方側半分と後方側半分とをそれぞれ異なる色の着色塗料などでペイントしたりしてもよい。特に、前方側半分と後方側半分とのいずれか一方にのみ色シールを貼り付けたり、あるいは、着色塗料などでペイントし、その他方は樹脂材料の色をそのまま用いてもよい(即ち、「前方側半分にのみ着色処理を施し、後方側半分には特に着色処理を施さなくてもよい」あるいは「後方側半分にのみ着色処理を施し、前方側半分には特に着色処理を施さなくてもよい」)。
外側プレート部材と内側プレート部材とが相互に異なる色を有することに加えて、内側プレート部材の前方側半分と後方側半分とが相互に異なる色を有する場合、あくまでも例示にすぎないが、外側プレート部材(または外側プレート部材の露出面)は、好ましくは、ハウジング・ボディー色と同じ色を有している。ここで、ハウジング・ボディー色としては、白色、灰色(グレー色)および水色などを挙げることができるので、その場合には、外側プレート部材は、白色、灰色(グレー色)または水色を有していることが好ましいといえる。一方、内側プレート部材(または内側プレート部材の露出面)の前方側半分が黄色または緑色を有し、その後方側半分が緑色または黄色を有していることが好ましい。あくまでも一例にすぎないが、外側プレート部材の色と、内側プレート部材の前方側半分の色と、外側プレート部材の後半側半分の色との組合せとしては、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材の前方側半分:黄色、内側プレート部材の後方側半分:緑色」、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材の前方側半分:緑色、内側プレート部材の後方側半分:黄色」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材の前方側半分:黄色、内側プレート部材の後方側半分:緑色」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材の前方側半分:緑色、内側プレート部材の後方側半分:黄色」などを挙げることができる。更には、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材の前方側半分:赤色、内側プレート部材の後方側半分:黄色」、「外側プレート部材:青色、内側プレート部材の前方側半分:赤色、内側プレート部材の後方側半分:黄色」または「外側プレート部材:緑色、内側プレート部材の前方側半分:赤色、内側プレート部材の後方側半分:黄色」などの種々の色の組合せを挙げることができる。
尚、外側プレート部材と内側プレート部材の後方側半分とが同じ色(「A色」と称す)を有し、かつ、内側プレート部材の前方側半分がA色と異なる色(「B色」と称す)を有する態様であってもかまわない。かかる場合、「未装填状態または未使用状態」および「穿刺後の使用済み状態」では、インジケーター窓部からA色が見えている一方、「穿刺可能状態」では、インジケーター窓部からB色が見えることになる。つまり、かかる態様では、穿刺デバイスが穿刺可能状態であるか否かをA色およびB色と単に2色で判別することができ、よりシンプルなインジケーター機能となり得る。例えば、「A色」としては、ハウジング・ボディー色(例えば、白色または灰色(グレー色))、「B色」として赤色、黄色または緑色を採用してよい。より具体的に説明すると、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材の前方側半分:黄色、内側プレート部材の後方側半分:白色」、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材の前方側半分:緑色、内側プレート部材の後方側半分:白色」、「外側プレート部材:白色、内側プレート部材の前方側半分:赤色、内側プレート部材の後方側半分:白色」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材の前方側半分:黄色、内側プレート部材の後方側半分:灰色(グレー色)」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材の前方側半分:緑色、内側プレート部材の後方側半分:灰色(グレー色)」、「外側プレート部材:灰色(グレー色)、内側プレート部材の前方側半分:赤色、内側プレート部材の後方側半分:灰色(グレー色)」などの色の組合せが可能である。
次に、以下では、図16〜図21を参照しながら、ランセットアッセンブリ100の装填操作に始まり、装填の完了、穿刺、そして、穿刺後のランセットアッセンブリ100の取外しに至るまでのインジケーター窓部の変化を総括的に説明する。
まず、図16に示すように、ランセットアッセンブリ100がインジェクター200に挿入されていない未装填状態または未使用状態では、インジェクター・ハウジングに設けられたインジケーター窓部440の設置位置に、外側プレート部材450および内側プレート部材460が位置している。この場合、外側プレート部材450が内側プレート部材460を遮るようになっているので、外側プレート部材450がインジケーター窓部440から見えている。図17では、ランセットホルダー100がインジェクター200内部に挿入され始めた態様が示されている。ランセットホルダー102がインジェクター200内部に挿入されることによって、ランセットボディの後端部とプランジャーの前端部とが係合し、プランジャーが後退するので、内側プレート部材460が後方へとずれて移動することになる。図18では、穿刺可能状態に至るまでランセットホルダー102がインジェクター200内部に挿入された態様が示されている。穿刺可能状態に至るまでランセットホルダー102が挿入されるに際し、ランセットホルダー102の開口端側の端部がエジェクターのウイング部274の先端に当接してウイング部材を押圧することになるので、ウイング部に設けられている外側プレート部材450がインジケーター窓部440の設置位置より後方に移動することになる。また、穿刺可能状態に至るまでランセットホルダー102が挿入されるに際しては、プランジャーの後退に伴って、内側プレート部材460は、その前方側半分がインジケーター窓部440の設置位置に位置するまで後方へと移動することになる。つまり、穿刺可能状態となるまでランセットホルダー102がインジェクター200内部に挿入されると、外側プレート部材450がインジケーター窓部440の設置位置より後方へとずれると共に、後方側半分がインジケーター窓部440に位置していた内側プレート部材460が、その前方側半分がインジケーター窓部440に位置するように後方へとずれるので、インジケーター窓部440から内側プレート部材が見えることになり、穿刺デバイスの使用者は、ランセットアッセンブリが正確にインジェクターに装填されたか否かを、インジケーター窓部440のかかる変化から視覚的に把握することができる。図19では、穿刺後の使用済み状態の穿刺デバイス400の態様が示されている。穿刺部材の発射に際しては、プランジャーが前方へと移動するので、インジケーター窓部の設置位置に前方側半分が位置していた内側プレート部材460が前方へとずれて移動することになり、穿刺部材を発射させた後の使用済み穿刺部材では、内側プレート部材460の後方側半分がインジケーター窓部440の設置位置に位置する。従って、使用済み状態では、インジケーター窓部から内側プレート部材の後方側半分が見えることになる。これにより、穿刺デバイスの使用者は、ランセットアッセンブリが使用済みか否かを、インジケーター窓部440の状況のかかる変化から視覚的に把握できる。図20は、穿刺後にてランセットホルダー102(即ち、使用済みのランセットアッセンブリ)を排出する途中の態様を示している。かかるランセットアッセンブリ100の排出に伴ってエジェクター270を前方へとスライドさせるので、それに伴って、外側プレート部材450が前方へと移動している。図21は、ランセットホルダー102(即ち、使用済みのランセットアッセンブリ100)が排出された後の態様を示している。かかる態様は、初期の未使用状態または未装填状態と同様であるので、外側プレート部材450および内側プレート部材460は、元の位置に戻って待機することになる。つまり、インジケーター窓部440の設置位置に、外側プレート部材450および内側プレート部材460が位置することになり、インジケーター窓部440から外側プレート部材450が見えることになる。
以上で「インジケーター機構」の説明を終了するが、好ましい態様では、インジケーター機能は、インジェクターの一方の側面側にのみ設けられているのではなく、本願にて図示するようにインジェクターの対向する両側に設けられている。この場合、ハウジング壁部にて対向するように2つのインジケーター窓部が設けられていると共に、図8(d)および図8(f)に示すように、「外側プレート部材」および「内側プレート部材」がそれぞれ2つ対向するように対を成して形成されている。「インジェクターの一方の側面側にのみ設けられている態様」および「インジェクターの対向する両側に設けられている態様」のいずれの態様であっても、インジケーター機構について上述した説明が同様に適用されることに留意されたい。
次に、本発明に係るランセットアッセンブリの「穿刺部材の穿刺軌道の直線性を促進させる機構(以下では「直進性促進機構」とも称す)」について説明する。かかる機構に寄与する部材・部分は、主として、ランセットキャップの側部に設けられた凸部(以下では「直進性促進凸部」とも称す)である。かかる直進性促進凸部600は、例えば図2Dに最も良く示されている。
かかる直進性促進凸部600は、図2Dに示すように、キャップ部材の側面(より具体的には「ランセットキャップの分離に際してランセットホルダーのスロープ部材と接することになる側面側」)に設けられている。穿刺時において「穿刺部材の先端部が露出したランセットボディ」が発射された又は移動した際、穿刺部材が直進性促進凸部600に接触する(例えば一時的に接触する)ことになる。尚、穿刺部材が直進性促進部材に接することは、図5A〜図5Eに示す態様を参照すると理解できるであろう。
好ましくは、穿刺方向に発射された穿刺部材が穿刺方向とは逆の方向に向かって戻る際に、穿刺部材が直進性促進凸部に接触する。つまり、穿刺に際してランセットホルダーの穿刺開口部から露出した穿刺部材が、身体等の所定の箇所を穿刺した後、穿刺開口部に戻る過程で直進性促進凸部に接触することが好ましい(より具体的には、穿刺部材が穿刺方向とは逆の方向へと移動している間で直進性促進凸部に接触することが好ましい)。また、穿刺部材は、その先端部分が直進性促進凸部と接触することが好ましい。穿刺部材が直進性促進凸部と接触すると、穿刺時の穿刺部材の直進性が増すことになる。換言すれば、直進性促進凸部によって、穿刺部材の穿刺軌道ができる限り直線的な軌道となるように矯正される。これにより、穿刺時に被穿刺者(例えば被採血者)が感じる痛みが低減する効果が奏されることになる(尚、特定の理論/考えに拘束されるわけではないが、「穿刺箇所が穿刺部材によって “えぐられる”現象」が減じられることに起因して、感じる痛みが低減し得るものと考えられる)。
好ましくは、図2Dに示すように、直進性促進凸部600が穿刺方向に沿って長尺状に形成されており、直進性促進凸部の後側部分610が、穿刺方向に向かって次第に高くなるスロープ形状を有していることが好ましい。この場合、図2Dの下側の図を参照して説明すると、高さH(キャップ側面に対して法線方向の高さ)または最大高さHは、好ましくは0.45〜0.70mm、より好ましくは0.45〜0.55mmであり、穿刺方向に沿った長さLは、好ましくは4.7〜6.1mm、より好ましくは4.7〜4.9mmである。また、直進性促進凸部の幅W(上記長さLと直交する方向の長さ)は、好ましくは0.7〜1.1mm、より好ましくは0.7〜0.9mmである。また、図2Dの下側の図に示すように、ランセットキャップの側面を基準にしたスロープ形状部分の傾斜角度βは、好ましくは9°〜11°である。
ランセットキャップの側面における直進性促進凸部の設置位置は、穿刺時に穿刺部材が接触できるような位置であれば特に制限はないが、一般的には、図2Dに示すようにランセットキャップの側面の中央付近である。また、穿刺部材の直進性にとって大きく影響しない限り、直進性促進凸部は、後方側のスロープ形状部分を除いて、部分的に一部欠けている形態であってもよい。更に、直進性促進凸部の形成方法は、特に制限はなく、ランセットキャップまたはランセットの成形に際して一体的に成形してもよく、あるいは、ランセットキャップの側面に別個の部材を設けることによって形成してもよい。
次に、本発明に係る「穿刺深さ調節機構」について説明する。かかる穿刺深さ調節機構300はインジェクターの後方側に設けられている(図7B参照)。穿刺深さ調節機構に寄与する部材は、主として、「プランジャーの後端に設けられ、プランジャーからその横断方向に外側へと突出する突出部310」、「端部の高さが階段状にそれぞれ異なるように形成されたステップ部を有する円筒部材320」、および、「円筒部材と一体的に回転できるように円筒部材と係合するドラム部材340,350」である。かかる穿刺深さ調節機構300に用いられる部材の展開図を図22に示す。
突出部310は、プランジャー204の後端に設けられており、プランジャー204からその横断方向に外側へと突出している。かかる態様は、図8(a)および図25に最も良く示されている。尚、突出部310は、プランジャー204の後端に、別個の突出キャップを取り付けることによって設けてもよい。
円筒部材320は、図23に最もよく示されている。図23に示すように、円筒部材320は、その端部の高さが階段状にそれぞれ異なるように形成されているステップ部325(325a,325b,325c,325d,325e,325f)を有している。図23から分かるように、円筒部材320は、端部に段差が設けられたリング形態を有している。
ドラム部材345は、図24に示すように、内側ドラム340と外側ドラム350とから構成されていることが好ましい。この場合、内側ドラム340と外側ドラム350とは一体的に回転できるように係合している。インジェクターでは、外側ドラム350が、インジェクター・ハウジングから後方へと突出するように設けられるため、外側ドラム350を指などで回転させることができるようになっている(例えば図7A参照)。
このような穿刺深さ調節機構では、穿刺に際してプランジャー204が前方に移動した際、プランジャーの突出部310が、図25に示すように、矢印bに示すように移動して円筒部材320のステップ部325に最終的に衝突することで、プランジャー204がそれ以上の前方へと移動できないようになっている。その結果、円筒部材320をその軸中心にて回転させ、突出部310が衝突することになるステップ部325を異なる高さのステップ部へと変更(例えばステップ部325aから325bへの変更)することによって、穿刺に際してプランジャー204が前方へと移動することのできる距離を変更できる。つまり、穿刺深さの調節が可能になる。尚、一対の突出部310a,310bが同じ高さのステップ部325に衝突できるように、円筒部材320のステップ325は、その軸を中心にして点対称に形成されていることが好ましい(図23参照)。尚、円筒部材320は、内側ドラム340の内壁(より好ましくは「内壁に設けられた環状溝340a」)に嵌まり込むように設けられているので(図22参照)、外側ドラム350を例えば指を用いて回転させることによって、円筒部材320を間接的に回転させることができるようになっている。
ここで、本発明におけるインジェクター機構では、図24に示すように、外側ドラム350の外周面には環状方向に沿った溝部355が形成されている一方、図9Bに示すように、インジェクターのハウジングの内壁には前記溝部に嵌り込む凸部218が形成されている。そして、外側ドラム350が回転すると、凸部218が溝部355内に沿って案内されることになり、凸部218と溝部355の端部(例えば図24に示すような355aの箇所)とが相互に当接することによって、外側ドラム350の回転が制限されている。従って、ドラム部材の回転が必要以上に回転することはなく、一定の範囲内でドラム部材を回転させることができる。これは、穿刺深さの調節がその外側ドラムの回転できる範囲内で適切に行えることを意味している。
好ましい態様では、図9Aおよび図9Bに示すように、インジェクターのハウジングの後方端部に切欠き部250が形成されている一方、図26に示すように、外側ドラム350の外周面Aには目盛りが環状方向(または周方向)に沿って記されている。この場合、切欠き部250とドラム部材(より具体的には外側ドラム350)の目盛りとが相互に重なり合うように、ドラム部材がインジェクターのハウジングの後方端部の内側に嵌まり込んでおり、切欠き部250から露出する目盛りの数値がドラム部材の回転に伴って変わるようになっている(例えば図7A参照)。切欠き部250は、インジェクターのハウジング側部に形成された開口部の形態であってもよい。この目盛りの数値は、穿刺深さに対応しており、例えば目盛りの数値が「1,2,3,4,5,6」と付されている場合では、この各数値に対応して、穿刺深さが段階的に6段階変わるようになっている。例えば、目盛りの数値を「1」に合わせた場合、即ち、目盛りの数値の「1」が切欠き部250から露出するように外側ドラム350を回転させた場合では、穿刺時に円筒部材320の最も高いステップ部(ステップ部325f)と突出部310とが衝突するように円筒部材320が回転することになり、穿刺深さが最も浅くなる。その一方、例えば、目盛りの数値を「6」に合わせた場合、即ち、目盛りの数値の「6」が切欠き部250から露出するように外側ドラム350を回転させた場合では、穿刺時に円筒部材320の最も低いステップ部(ステップ部325a)と突出部310とが衝突するように円筒部材320が回転することになり、穿刺深さが最も深くなる。このように、目盛り数値を「1」から「6」まで段階的に変化させることによって、穿刺深さを段階的に6段階で変えることができる。尚、隣接するステップ部の高さの差は、好ましくは0.2〜0.3mm、より好ましくは約0.25mmであるので、目盛り数値を1段階変えることによって(例えば目盛り数値を「2」から「3」へと変えると)、穿刺深さが、好ましくは0.2〜0.3mm、より好ましくは約0.25mmの割合で変わることになる。尚、特に好ましい態様では、外側ドラムの溝部355に隣接する箇所に目盛りが環状方向に記されていると共に(図26(a)参照)、溝部355が設けられていない側にも同様の目盛りが環状方向に記されていること(図26(b)参照)が好ましい。これにより、ハウジングの側部の対向する位置に形成された2つの切欠き部250から同じ目盛りの数値を露出させることができ、インジェクターの2つの側面側から穿刺深さの設定を把握することができる(つまり、穿刺深さの目盛りは、インジェクターの2つの側面において見ることができる)。
更に好ましい態様では、例えば図16、図24または図30に示すように、外側ドラムの胴部の外周面が凹凸形状348を有する一方(この場合、凸部の断面は図示するように、略半円形状または波型形状であることが好ましい)、かかる凹凸形状348に接するように、インジェクター・ハウジング内に板バネ部材357が設けられている(例えば図16参照)。これにより、ドラム部材が目盛りの数値に対応して段階的(ステップ的)に回転できるようになる。つまり、外側ドラム350の目盛りの数値が切欠き部250からステップ的に露出するように、外側ドラムを回転させることができる。
このような穿刺深さ調節の設定は、未装填状態から穿刺可能状態に至るまでのいずれの時点で行ってもよい。即ち、未使用ランセットアッセンブリを装填するに先立って穿刺深さを調節/設定してもよいし、あるいは、穿刺可能状態が得られた後において穿刺深さを調節/設定してもよい。
次に、本発明の1つの好適な態様である「使用者が穿刺操作をよりスムーズに行える機能を備えた穿刺デバイス」について説明する。かかる機能によって、穿刺時にてトリガーレバーを押圧する際の押圧力および押込距離が適度なものとなるので使用者が穿刺操作を容易に行うことができる。かかる機能に関連する部材・部分は、主として、「トリガーレバー」および「トリガーレバーとインジェクター・ハウジングとの間に設けられたバネ部材」である。
図29には、上記機能に係る「トリガーレバー」の具体的態様を符号230で示す。図示するように、トリガーレバー230は、インジェクターの前方側のハウジング内部に設けられるものである。穿刺部材の発射に際して、ハウジング側部の開口部から一部露出した部分が押圧されると(具体的には「トリガーレバー230の前方側部分230gの上面がインジェクター内部へと押し込まれると」)、穿刺部材の発射が引き起こされる。
かかるトリガーレバー230は、その中間部分230fがインジェクターのハウジング内壁に対して枢設されている(即ち、中間部分230fを中心にして回動自在に取り付けられている)。トリガーレバー230の前方側部分230gにハウジング外側方向に向かって力Aが作用する一方、トリガーレバー230の後方側部分230hにハウジング内側方向に向かって力Bが作用するように、トリガーレバー230の後方側部分230hとインジェクターのハウジング側壁面255との間にバネ部材230eが設けられている。図29には「トリガーレバー230の前方側部分230gに作用するハウジング外側方向の力A」および「トリガーレバー230の後方側部分230hに作用するハウジング内側方向B」が矢印で示されている。
図29は、穿刺可能状態におけるトリガーレバーの態様を示している。かかる態様では、かかる穿刺可能状態では、トリガーレバーの後端部がプランジャーのフランジと当接状態にある(より具体的には、後端段差部230aとプランジャー204のフランジ部204bとの当接状態にある)一方、トリガーレバーの前端部が「インジェクター・ハウジングの前方側部に設けられた開口部の周縁部220」と当接状態にある。穿刺に際しては、トリガーレバー230の前方側部分230gをインジェクターの内部に向かって押し込む。かかる押し込みによって、トリガーレバー230の後方側部分230hがハウジング外側方向に向かって動くので、トリガーレバー230の後端段差部230aとプランジャー204のフランジ部204bとの当接状態(係止状態)が解除される。その結果、圧縮されていたスプリング205aが瞬間的に伸びることになり、穿刺部材が前方の穿刺方向に向かって発射される。
このようなトリガーレバー230は、例えば図18に示すトリガーレバー230の態様よりもトリガーレバーを押圧する際の押圧力および押込距離が適度なものとなっている。なぜなら、図18に示すようなトリガーレバー230では、その後方側に長く延在する部分230iの撓みを利用して、トリガーレバーに力を作用させるのに対して、図29に示すトリガーレバー230は、そのような撓みではなく、バネ部材230eによってトリガーレバーに力を作用させているからである。つまり、バネ部材230eのバネ力および長さなどを適度に調整することによって、「穿刺時にトリガーレバーを押圧する際の押圧力および押込距離」が適度なものとなる。これにより、特に、使用者が必要以上に大きな力を加えることなくトリガーレバーを軽く押すことで穿刺を行うことができる。
トリガーレバー自体は樹脂製であることが好ましい。トリガーレバーの中間部分に凸部を設ける一方、インジェクターのハウジング内壁に凹部を設け、それらを相互に嵌め合うことによって、トリガーレバーの中間部分をインジェクターのハウジング内壁に対して枢設することができる。トリガーレバーの中間部分に凹部を設け、インジェクターのハウジング内壁に凸部を設けても同様に枢設できる。バネ部材230eは金属製であることが好ましく、例えば金属製のコイルバネである。図29に示すように、トリガーレバーの後方側部分230hの上面に凹部を設けると共に、インジェクターのハウジング側壁面255にも凹部を設け、それら2つの凹部で挟み込む形態でバネ部材230eを設けることができる。
次に、本発明の別の好適な態様である「使用済みとなった後で再度穿刺に供することができない再穿刺防止機能を備えた穿刺デバイス」について説明する。かかる機能は、一旦発射させて穿刺に供した使用済み穿刺部材を再度の穿刺に供することがないようにした機能である。より具体的には、「穿刺部材を一旦発射させたものの、依然としてランセットアッセンブリがインジェクターに装填された状態にある穿刺デバイス」が再び穿刺可能状態(穿刺部材の発射準備が完了した状態)とならないようにした機能である。換言すれば、「穿刺部材がインジェクターに装填された状態で2度穿刺できない」機能ともいえる。これにより、『ある患者に一旦使用した穿刺デバイスを別の患者に使用する』ということができなくなるので、病院での採血用途において血液感染の未然防止を図ることができる。かかる再穿刺防止機能に寄与する部材・部分は、主として、「ドラム部材の外周面に設けられたフランジ部材」および「インジェクターのハウジング内壁に設けられた狭窄部分または凸部」である。
図30(a)および図30(b)は、「ドラム部材の外周面に設けられたフランジ部材」の具体的態様を符号370で示す。図示するように、フランジ部材370は、ドラム部材の外周面に環状方向(または周方向)に設けられており、ドラム部材から外側に突き出た形態を有している。好ましくは、フランジ部材370は、ドラム外周面に設けられた凹凸部348の直ぐ後方側に設けられていることが好ましい。また、好ましくは、フランジ部材370はゴム材料などの弾性材料から成ることが好ましい。フランジ部材370は、接着などの手段で外周面に設けてもよいものの、場合によってはドラム部材の成形に際して一体的に形成してもよい(かかる場合「フランジ部材」を「フランジ部」とも呼ぶことができる)。
「インジェクターのハウジング内壁に設けられた狭窄部分または凸部」の具体的態様は図30(a)または図30(b)において符号253で示す。図30(a)は「インジェクターのハウジング内壁に設けられた狭窄部分253」を示し、図30(b)は「インジェクターのハウジング内壁に設けられた凸部253」」を示している。どちらの態様であっても再穿刺防止の効果の点では変わりはなく、穿刺デバイスの個々の設計に応じて適宜選択される。図30(a)に示す狭窄部分253は、インジェクターのハウジング内壁に環状方向(周方向)に設けられており、ハウジング内壁から内側に突き出た形態を有している。また、図30(b)に示す凸部253は、インジェクターのハウジングの内壁面から横断方向内側へと隆起した形態を有している。図示するように、狭窄部分または凸部253は、好ましくはインジェクターのハウジングの後方部分に設けられている。例えば、狭窄部分253はインジェクターのハウジングの後端開口部に隣接して設けられていてよく、凸部253はハウジングの後端開口部よりも前方側のハウジング内部に設けられていてよい。狭窄部分または凸部253は、ハウジングの成形に際してハウジング材料から一体的に形成してもよいものの、環状リング部材などを用いることによって別途設けてもよい。
フランジ部材370は、図30(a)および図30(b)に示すように、狭窄部分または凸部253よりも相対的に前方側に位置する必要がある。また、フランジ部材370と狭窄部分または凸部253とは相互に隣接して設けられている必要があり、場合によっては相互に接触していてもよい。より具体的には「フランジ部370の後方側の側面370a」と「狭窄部分または凸部253の前方側の側面253a」とが相互に隣接するように又は接触するように、ドラム部材がインジェクターのハウジングに対して設けられていることが好ましい。このような態様では、ドラム部材に対して後方の力が作用した場合、フランジ部材370と狭窄部分または凸部253とが相互に当接することになるので、ドラム部材をハウジングに対して相対的に後方へと動かすことができない。つまり、ドラム部材を指で摘んで後方へと引っ張ろうと試みても、引っ張ることができない。ここで、仮に『穿刺部材を一旦発射させた後に、ドラム部材を後方へと引っ張ることができる』とすると、プランジャーを後退させることができるので、それによって穿刺可能状態を再度得ることができるのだが、そのように後方へとドラム部材を引っ張ることができないので、穿刺後に穿刺可能状態を再度得ることができない。その点で、より衛生的な穿刺デバイスが供されているといえる。
尚、ドラム部材の外周面には、図30(a)および図30(b)に示すように、フランジ部材370と同様のフランジ部材375を更に設けてもよい。この場合、フランジ部材370およびフランジ部材375で狭窄部分または凸部253を挟み込む形態となっていることが好ましい。これにより、ドラム部材に対して後方だけでなく前方の力が作用した場合であっても、フランジ部材370と狭窄部分253とが相互に当接することになり、ドラム部材がハウジングに対して相対的に前方へと動くことができなくなる。換言すれば、ドラム部材がインジェクターのハウジングに対してより安定して設けられることになる。
ドラム部材に2つのフランジ部材370および375を設ける態様というのは、それらフランジの間に環状方向溝部377を設ける態様に実質的に等しいといえる。従って、ドラム部材の外周面にフランジ部材を設ける代わりに、環状方向溝部377を設け、かかる環状方向溝部377に嵌り込むように狭窄部分または凸部253を設ける態様であっても、再穿刺防止機能を備えた穿刺デバイスを得ることができる。
次に、「使用済みランセットアッセンブリをインジェクターからよりスムーズに排出できる機能を備えた穿刺デバイス」について説明する。かかる機能は、穿刺後の使用済みランセットアッセンブリをより手際よくインジェクターから取り外せる機能である。特に、かかる機能によって、使用済みランセットアッセンブリをある程度の勢いでインジェクターから排出させることができるので、穿刺デバイスがどのような向きであっても(例えば、インジェクターの前端開口部が上方を向いた場合であっても)ランセットアッセンブリを確実に排出できる。かかる機能に寄与する部材・部分は、主として、「エジェクター押圧部材とエジェクタースライド部材とから構成されるエジェクター」および「前方への力をエジェクター押圧部材に作用させることが可能なバネ部材」である。
図15に、エジェクター押圧部材274とエジェクタースライド部材270aとから構成されるエジェクター270を示す。図示するように、エジェクター押圧部材274の脚部274aがエジェクタースライド部材270aの開口部270a1に嵌まり込むことによって、エジェクター押圧部材274とエジェクタースライド部材270aとが組み合わされている。より具体的には、エジェクター押圧部材274がエジェクタースライド部材270aに対して前後可動な状態となるように、エジェクター押圧部材274の脚部274aがエジェクタースライド部材270aの開口部270a1に対して嵌り込んでいる。「前方への力をエジェクター押圧部材に作用させることが可能なバネ部材」は、図15(b)および図31Aにて符号454で表されるスプリング部材である。図示するように、バネ部材454は、排出時に指を置くことになる突出部270a2の内部に設けられている。特に、「エジェクター押圧部材274の脚部の後方側面274a1」と「突出部270a2の内部の後方内壁面270a3」との間にバネ部材454が設けられている。これにより、バネ部材454のバネ力をエジェクター押圧部材274に作用させることができ、エジェクター押圧部材274の前方への移動が助力される。使用済みランセットアッセンブリの排出時には、エジェクター270を全体として前方へとスライド移動させるために、エジェクター押圧部材274が前方へと移動し、ランセットホルダーおよびランセットボディが押されることになるが、その際、バネ部材454のバネ力(より具体的には「圧縮されたバネが元に戻る際に生じる復元力」)を付加的にエジェクター押圧部材274に作用させることができる。その結果、ランセットホルダーおよびランセットボディがより強く前方へ押されることなり、使用済みランセットアッセンブリのスムーズな排出が助力される。
特に、使用済みランセットアッセンブリの排出時において、バネ部材454が一旦圧縮し、そのバネ部材454の圧縮状態が瞬時に解放するように穿刺デバイスが構成されている。バネ部材454が一旦圧縮し、その圧縮したバネ部材454が解放されることによって、使用済みランセットアッセンブリを勢いよくインジェクターから排出させることができる。より具体的には、使用済みランセットアッセンブリの排出時において、「ランセットホルダーのロック用突起部116(図1A参照)」と「インジェクターに設けられたホルダーロック部材280のストッパー部A282またはストッパー部B284(図7Cおよび図8(e)参照)」とが相互に当接することができ、その結果、バネ部材454を一旦圧縮させることができる。そして、引き続いて排出操作を行うと、かかる当接状態が瞬間的に解除されることになり、その結果、バネ部材454の圧縮状態が瞬時に解放され、バネ部材454の復元力によって、使用済みランセットアッセンブリが勢いよく押されて排出される。
より詳細な説明を行うために、本発明の穿刺デバイスに備わっている「ホルダーロック解除機能」について説明しておく。かかる「ホルダーロック解除機能」は、上述した「ホルダーロック機能」と対応する形で存在するものである。ホルダーロック解除機能は、穿刺後の使用済みのランセットアッセンブリをインジェクターから排出する際に、ホルダーロック機能を解除して、使用済みのランセットアッセンブリをスムーズに排出する機能である。かかる「ホルダーロック解除機能」に寄与する部材・部分は、主として、ホルダーロック部材280に設けられた「リリース部Aおよび/またはリリースB」と、エジェクターに設けられた「被リリース部」である。図8(e)に示すように、リリース部A286および/またはリリースB288は、ホルダーロック部材280の側面部に設けられている。尚、図示するように、ホルダーロック部材280においては、リリース部A286がストッパー部A282に隣接するように設けられていることが好ましく(即ち、リリース部A286およびストッパー部A282は、ホルダーロック部材280の短手方向/横断方向に沿って隣り合うように配置されていることが好ましく)、リリース部B288がストッパー部B284に隣接するように設けられていることが好ましい(即ち、リリース部B288およびストッパー部B284は、ホルダーロック部材280の短手方向/横断方向に沿って隣り合うように配置されていることが好ましい)。より具体的には、リリース部A286が、ストッパー部A282が設けられている位置に隣接するホルダーロック部材側面からホルダーロック部材の横断方向へと突出するように設けられていることが好ましく、リリース部B288が、ストッパー部B284が設けられている位置に隣接するホルダーロック部材側面からホルダーロック部材の横断方向へと突出するように設けられていることが好ましい。このようなリリース部Aによってストッパー部Aが関連するロックを好適に解除できる共に、リリース部Bによってストッパー部Bが関連するロックを好適に解除できるようになる。尚、被リリース部272は、図15に示すように、エジェクター270の前方側部分に設けられている。
このような「リリース部」および「被リリース部」は、穿刺後にてエジェクターをスライドさせて使用済みのランセットアッセンブリを排出させる際に機能を発揮する。具体的には、エジェクターを前方へとスライドさせると、被リリース部272がリリース部A286および/またはリリース部B288上を摺動することになり、ホルダーロック部材280が、その前方端部280bを中心にして円運動するように外側へと動かされる。その結果、ランセットホルダーのロック用突起部116とホルダーロック部材280のストッパー部A282および/またはストッパー部B284との当接可能状態が解除されることになる。これにより、インジェクター200からランセットホルダー102をスムーズに排出させることができる。ホルダーロック部材280にストッパー部A282およびストッパー部B284の双方が設けられている場合では、まず、エジェクター270の被リリース部272がリリース部B288上を摺動して移動した後、引き続いて、リリース部A286上を摺動することになるので、ロック用突起部116とストッパー部B284との当接可能状態が解除された後、ロック用突起部116とストッパー部A282との当接可能状態が解除されることになる。
尚、ホルダーロック部材280のリリース部B288上をエジェクター270の被リリース部272がスムーズに当接して移動するように、リリース部B288の形状と被リリース部272の形状とがそれぞれ互いに関連性をもって設計されている。同様に、ホルダーロック部材280のリリース部A286上をエジェクターの被リリース部272がスムーズに当接して移動するように、リリース部A286の形状と被リリース部272の形状とが、それぞれ互いに関連性をもって設計されている。
特に、図8(d)に示すように、エジェクターの被リリース部272は逆三角形状に形成されていることが好ましい。この場合、図8(e)に示すように、ホルダーロック部材280のリリース部B288は半円形状に形成されていることが好ましく、ホルダーロック部材280のリリース部A286は、連続形状を有するように形成されていることが好ましい。この場合、被リリース部272がリリース部B288上を当接して移動する際に、ホルダーロック部材280が一旦外側へと動かされた後で元の位置に戻ることになる一方、被リリース部272がリリース部A286上を当接して移動する際には、リリースA286が連続して形成されているので、ホルダーロック部材280は外側へと動かされたまま保持されることになる。
以上「ホルダーロック解除機能」について説明してきたが、かかるホルダーロック解除機能と連動するようにバネ部材454が効果的に作用することになる。つまり、排出時に、ランセットホルダーのロック用突起部116とホルダーロック部材280のストッパー部A282および/またはストッパー部B284との当接状態が解除される際に、かかる当接に起因して、圧縮したバネ部材454がその圧縮を解放されるので、バネ部材454に復元力が生じることになる。尚、バネ部材454が圧縮される原理は、次のように説明される。排出時においては、排出時に指を置くことになる突出部270a2には前方へと移動する力が働くことになるが、「ランセットホルダーのロック用突起部116」と「ホルダーロック部材280のストッパー部A282および/またはストッパー部B284」とが当接すると、エジェクター押圧部材274の前方への移動が一時的に阻止されることになる。この場合、バネ部材454は、その前方端部が「エジェクター押圧部材274の脚部の後方側面274a1」にて固定されるのに対して、その後方端部が「突出部270a2の内部の後方内壁面270a3」により押され続けることになり、バネ部材454を圧縮する力が働くことになる。
以下では、図31A〜図31Eを参照しながら、使用済みランセットアッセンブリの排出時の態様を経時的に説明していく。図31A〜図31Eは、そのアルファベット順に使用済みランセットアッセンブリ100およびインジェクター200の経時変化を示している。
図31Aは、穿刺後の使用済み状態にある穿刺デバイスであって、エジェクター操作を行う前の状態の穿刺デバイスの態様を示している。かかる態様では、ランセットホルダーのロック用突起部116とホルダーロック部材のストッパー部B284とが接触可能状態にあるものの、エジェクター270が前方へと押圧されていないので、バネ部材454が圧縮されていない。この状態からエジェクター270の突出部270a2に指(例えば親指)を当てて突出部270a2を前方へとスライド移動させると、ロック用突起部116とストッパー部B284とが一時的に当接することになり、エジェクター押圧部材274の前方への移動が一時的に阻止される。つまり、エジェクター押圧部材274の脚部の後方側面274a1が一時的に固定された状態となる。この時、突出部270a2は継続的に前方へと押圧され続けているので、バネ部材454が突出部270a2の後方内壁面270a3によって前方へと押される形態となり、バネ部材454が一時的に圧縮されることになる(図31Aの下側に「一時的に圧縮されたバネ部材454」を部分的に示す)。
引き続いて突出部270a2を継続的に前方へと押圧すると、上述のホルダーロック解除機能に起因して、ランセットホルダーのロック用突起部116とホルダーロック部材280のストッパー部B284との当接状態が解除されることになり、その瞬間、エジェクター押圧部材274の脚部の後方側面274a1が前方へと素早く移動するため、バネ部材454の圧縮状態が瞬時に解放されることになる。それゆえ、バネ部材454の復元力に起因して、エジェクター押圧部材274が押圧され、使用済みランセットアッセンブリが付加的に押されて勢いよく排出方向へと移動する。このようにロック用突起部116とストッパー部B284との当接状態が解除されることに起因して、バネ部材454の圧縮状態が瞬時に解放されて一時的に伸びる態様を図31Bに示す。
引き続いて突出部270a2を継続的に前方へと押圧すると、ランセットホルダーおよびランセットボディが前方へと更に押圧される。この際、ランセットボディはエジェクターから前方向に直接的な力を受けている一方、プランジャーはエジェクターから直接的な力を受けていない。従って、ランセットボディの後端部とプランジャーの前端部との間には相対的に離れる力が作用し、最終的には、それらの係合状態が解除されることになる。この解除に際しては、押圧部材274の前方への移動が一時的に阻止されることになるので、上述と同様に、バネ部材454に対して圧縮力が一時的に働くことになる。ランセットボディの後端部とプランジャーの前端部との係合状態が解除される際にバネ部材454が一時的に圧縮される態様は図31Cに示す。そして、かかる係合状態が解除されると、バネ部材454の圧縮状態が瞬時に解放されて一時的に伸びることになり、上述と同様に、エジェクター押圧部材274が押圧され、使用済みランセットアッセンブリが付加的に押されて勢いよく排出方向へ移動する。
更に引き続いて突出部270a2を継続的に前方へと押圧すると、ホルダーロック部材280のストッパー部A282とランセットホルダーのロック用突起部116とが当接することになり(ストッパー部A282とロック用突起部116との相互の当接状態は図31Dに示される)、エジェクター押圧部材274の前方への移動が一時的に阻止される。つまり、エジェクター押圧部材274の脚部の後方側面274a1が一時的に固定された状態となる。この時、突出部270a2は継続的に前方へと押圧され続けているので、バネ部材454が突出部270a2の後方内壁面270a3によって前方へと押される形態となり、バネ部材454が一時的に圧縮される(図31Dの下側に「一時的に圧縮されたバネ部材454」を部分的に示す)。
引き続いて突出部270a2を継続的に前方へと押圧すると、上述のホルダーロック解除機能に起因して、ランセットホルダーのロック用突起部116とホルダーロック部材280のストッパー部A282との当接状態が解除されることになる。当接状態が解除されると、エジェクター押圧部材274の脚部の後方側面274a1が前方へと素早く移動するために、バネ部材454の圧縮状態が瞬時に解放される。それゆえ、圧縮されていたバネ部材454の復元力に起因して、エジェクター押圧部材274が押圧される。その結果、使用済みランセットアッセンブリが付加的に勢いよく押されて排出方向へ移動し、最終的にはインジェクターから排出される(使用済みランセットアッセンブリ100がインジェクター200から排出された態様は図31Eに示す)。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。例えば、本発明に係る穿刺部材のインジケーター機構に用いる「外側プレート部材」/「内側プレート部材」は、必ずしもその外観が「プレート形状」を有するものに限定されず、例えば、プレートよりも厚みが増した「角柱形状部材」、「円柱形状部材」または「棒形状」など種々の形態を有するものであってもよい。
本出願は、日本国特許出願第2007−254369号(出願日:平成19年9月28日、発明の名称:「ランセットアッセンブリおよび穿刺デバイス」)に基づくパリ条約上の優先権を主張する。当該出願に開示された内容は全て、この引用により、本明細書に含まれるものとする。