<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る無線通信システムには、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を使用したWiMAX(Worldwide Interoperability for Micorwave Access)、LTE(Long Term Evolution)、および、次世代PHS(Personal Handyphone System)などの無線通信システムが該当する。本実施の形態に係る無線通信システムは、基地局1a〜1c(総称して「基地局1」と呼ぶこともある)と、通信端末2a〜2c(総称して「通信端末2」と呼ぶこともある)と、センタ3とを備える。センタ3は、基地局1a〜1cのそれぞれに接続されている。基地局1a〜1cは、通信範囲(カバレッジ)の一部が互いに重なるように、互いにある程度近くの位置に設けられている。基地局1a〜1cは、通信端末2a〜2cと無線信号をそれぞれ送受信する。基地局1は、通信端末2と無線信号を送受信することにより、通信端末2と無線通信を行う。基地局1は、この無線通信により、通信端末2から送信されたデータをセンタ3に送信し、センタ3から送信されたデータを通信端末2に送信する。
図2は、本実施の形態に係る基地局1の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、本実施の形態に係る基地局1は、高速通信用アンテナ群11、短距離通信用アンテナ群12、垂直偏波アンテナ群13、および、水平偏波アンテナ群14からなる4種類のアンテナ群と、破線で示される第1〜第4通信部35−1〜35−4と、RSSI(Received Signal Strength Indicator)検出部36と、コンピュータ装置37とを備える。
コンピュータ装置37は、CPU41と、ハードディスク42とを備えている。なお、本コンピュータ装置37には、図示していないが、一般的なコンピュータが備える他の構成要素、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等も設けられている。コンピュータ装置37は、センタ3と接続されている。
ハードディスク42にはCPU41が実行する動作プログラムPが記憶されている。CPU41がこの動作プログラムPを実行することによって、当該CPU41には、機能ブロックとして、QoS(Quality of Service)取得部43と、アンテナ情報取得部44と、アンテナ群選択部45と、無線リソース割当部46とが形成される。
4種類のアンテナ群を構成する高速通信用アンテナ群11、短距離通信用アンテナ群12、垂直偏波アンテナ群13、および、水平偏波アンテナ群14は、互いに異なる通信性能を有し、例えば、利得、偏波面、指向性のいずれかが異なる。本実施の形態に係る基地局1は、通信性能が異なる4種類のアンテナ群の中から、通信状況等に応じて、適切な1種類のアンテナ群を選択し、当該1種類のアンテナ群を使用して通信端末2と無線通信を行う。このような基地局1の構成について、以下、詳しく説明する。
図2において破線で示される第1通信部35−1は、アンテナ群選択部45が、高速通信用アンテナ群11を選択した場合に、高速通信用アンテナ群11を使用して通信端末2と無線通信を行う。同図において破線で示される第2通信部35−2は、アンテナ群選択部45が、短距離通信用アンテナ群12を選択した場合に、短距離通信用アンテナ群12を使用して通信端末2と無線通信を行う。同図において破線で示される第3通信部35−3は、アンテナ群選択部45が、垂直偏波アンテナ群13を選択した場合に、垂直偏波アンテナ群13を使用して通信端末2と無線通信を行う。同図において破線で示される第4通信部35−4は、アンテナ群選択部45が、水平偏波アンテナ群14を選択した場合に、水平偏波アンテナ群14を使用して通信端末2と無線通信を行う。
第1通信部35−1は、第1受信部15−1、第1送信部16−1、第1復調部25−1、および、第1変調部26−1から構成されている。第2通信部35−2は、第2受信部15−2、第2送信部16−2、第2復調部25−2、および、第2変調部26−2から構成されている。第3通信部35−3は、第3受信部15−3、第3送信部16−3、第3復調部25−3、および、第3変調部26−3から構成されている。第4通信部35−4は、第4受信部15−4、第4送信部16−4、第4復調部25−4、および、第4変調部26−4から構成されている。以下、第1〜第4受信部15−1〜15−4の総称を「受信部15」と呼ぶこともあり、第1〜第4復調部25−1〜25−4の総称を「復調部25」と呼ぶこともあり、第1〜第4変調部26−1〜26−4の総称を「変調部26」と呼ぶこともある。
高速通信用アンテナ群11は、少なくとも1つの水平偏波用アンテナと、少なくとも1つの垂直偏波用アンテナとを組み合わせた複数のアンテナ11aから構成される。なお、高速通信用アンテナ群11は、これに限ったものではなく、複数の交差偏波(cross polarized)アンテナから構成されるものであってもよい。高速通信用アンテナ群11には、データを高速に伝送するMIMOやSDMA(Space Division Multiple Access)などの空間多重方式を用いた通信に適したアンテナ群が適用される。本実施の形態では、MIMOが用いられるものとして説明する。MIMOでは、通信端末2の図示しないアンテナ群は、互いに異なる複数種類のデータがそれぞれ重畳された複数の無線信号を同一周波数でそれぞれ送信する。同様に、高速通信用アンテナ群11は、互いに異なる複数種類のデータがそれぞれ重畳された複数の無線信号を同一周波数でそれぞれ送信する。
このように、複数種類のデータが基地局1と通信端末2との間で同時に送受信されることにより、高速通信用アンテナ群11と通信端末2との間で送受信される単位時間当たりのデータ量を大きくすることができる。つまり、MIMOは、基地局1と通信端末2との間の通信を高速化することができる。その結果、基地局1は、空間多重方式を用いた通信に適した高速通信用アンテナ群11を用いれば、通信端末2との間の通信を高速化することができる。
本実施の形態では、短距離通信用アンテナ群12、垂直偏波アンテナ群13および水平偏波アンテナ群14には、ビームを希望波に向けることが可能なアダプティブアレイアンテナ方式が用いられる。一般的に、アダプティブアレイアンテナ方式は、MIMOよりも、通信範囲が広く、干渉に強い。
短距離通信用アンテナ群12は、少なくとも1つの水平偏波用アンテナと、少なくとも1つの垂直偏波用アンテナとを組み合わせた複数のアンテナ12aから構成される。短距離通信用アンテナ群12の利得は、高速通信用アンテナ群11、垂直偏波アンテナ群13および水平偏波アンテナ群14のそれぞれの利得よりも低く設定されている。したがって、短距離通信用アンテナ群12から送信される無線信号の信号レベルは、高速通信用アンテナ群11、垂直偏波アンテナ群13および水平偏波アンテナ群14のそれぞれから送信される無線信号の信号レベルよりも小さくなる。これにより、短距離通信用アンテナ群12の通信範囲は、高速通信用アンテナ群11、垂直偏波アンテナ群13、および、水平偏波アンテナ群14のそれぞれの通信範囲よりも狭くなる。その結果、基地局1は、短距離通信用アンテナ群12を用いれば、隣接する他の基地局1の通信範囲まで無線信号を送信する可能性を低くすることができる。
垂直偏波アンテナ群13は、複数の垂直偏波アンテナ13aから構成される。水平偏波アンテナ群14は、複数の水平偏波アンテナ14aから構成される。反射波が少ない田舎などの一般的な状況下において、基地局1は、垂直偏波アンテナ群13を用いれば、水平偏波アンテナ群14よりも、通信範囲が広くすることができる。一方、すでに垂直偏波の無線信号が多く使用され、垂直偏波の無線信号を用いた通信同士の干渉が多発している都会などの特殊な状況下において、基地局1は、水平偏波アンテナ群14を用いれば、垂直偏波の無線信号と水平偏波の無線信号とは互いに干渉しないので、通信干渉を低減することができる。
第1受信部15−1は、アンテナ群選択部45が高速通信用アンテナ群11を選択した場合に、高速通信用アンテナ群11を構成する複数のアンテナ11aでそれぞれ受信された複数の受信信号に対してそれぞれダウンコンバートを行い、ダウンコンバートが行われた複数の受信信号のそれぞれを第1ベースバンド信号として、第1復調部25−1、および、RSSI検出部36に出力する。同様に、第2受信部15−2は、アンテナ群選択部45が短距離通信用アンテナ群12を選択した場合に、短距離通信用アンテナ群12を構成する複数のアンテナ12aでそれぞれ受信された複数の受信信号に対してそれぞれダウンコンバートを行い、ダウンコンバートが行われた複数の受信信号のそれぞれを第2ベースバンド信号として第2復調部25−2、および、RSSI検出部36に出力する。
同様に、第3受信部15−3は、アンテナ群選択部45が垂直偏波アンテナ群13を選択した場合に、垂直偏波アンテナ群13を構成する複数の垂直偏波アンテナ13aでそれぞれ受信された複数の受信信号に対してそれぞれダウンコンバートを行い、ダウンコンバートが行われた複数の受信信号のそれぞれを第3ベースバンド信号として第3復調部25−3、および、RSSI検出部36に出力する。同様に、第4受信部15−4は、アンテナ群選択部45が水平偏波アンテナ群14を選択した場合に、水平偏波アンテナ群14を構成する複数の水平偏波アンテナ14aでそれぞれ受信された複数の受信信号に対してそれぞれダウンコンバートを行い、ダウンコンバートが行われた複数の受信信号のそれぞれを第4ベースバンド信号として第4復調部25−4、および、RSSI検出部36に出力する。こうして、第1〜第4受信部15−1〜15−4のうち、アンテナ群選択部45で選択されたアンテナ群に対応する受信部15から、受信信号がRSSI検出部36に出力される。
第1受信部15−1から出力される複数の第1ベースバンド信号のそれぞれは、通信端末2から送信された複数の送信信号が伝搬空間上で混ざり合ったものとなっている。通信端末2からの各送信信号に重畳されたデータを復元するためには、各送信信号の伝送路での特性を推定する必要がある。そこで、通信端末2では、当該伝送路の特性を推定するために各送信信号に既知信号が挿入される。第1復調部25−1は、各第1ベースバンド信号に挿入された既知信号に基づいて、各送信信号が伝搬する、基地局1と通信端末2との間の伝搬路の特性を推定する。そして、第1復調部25−1は、推定した伝送路の特性を用いて、第1ベースバンド信号に含まれる重畳された複数の送信信号を分離し、得られた複数の送信信号のそれぞれに対して復調処理を行って、通信端末2からの複数種類の送信データを取得する。第1復調部25−1で取得された複数種類の送信データは、コンピュータ装置37に出力される。
なお、通信端末2が、図示しない水平偏波アンテナ群を使用している場合には、当該通信端末2は、自機が使用している水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報を無線信号に重畳させて送信する。そのため、通信端末2が、水平偏波アンテナ群を使用している場合には、第1復調部25−1からコンピュータ装置37に出力される送信データには、水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報が含まれることになる。このようにして、WiMAX、LTE、および、次世代PHSなどの無線通信システムではあまり使用されない水平偏波アンテナ群が、通信端末2で使用される時には、その旨を基地局1に通知することができる。
第2復調部25−2は、第2受信部15−2から出力された複数の第2ベースバンド信号に対して、後述する受信用ウェイトを設定して(重み付けを行って)、各第2ベースバンド信号の位相および振幅を制御する。そして、第2復調部25−2は、受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号を合成する。これにより、短距離通信用アンテナ群12のビームを希望波に向けることができ、妨害波を除外することができる。そして、第2復調部25−2は、複数の第2ベースバンド信号を合成することにより得られた信号に対して復調処理を行って、既知信号等のデータを取得する。第2復調部25−2において復調処理を行うことにより取得されたデータは、コンピュータ装置37に出力される。
なお、通信端末2が、図示しない水平偏波アンテナ群を使用している場合には、当該通信端末2は、自機が水平偏波アンテナ群を使用していることを示す使用アンテナ情報を無線信号に重畳させて送信する。そのため、通信端末2が、水平偏波アンテナ群を使用している場合には、第2復調部25−2からコンピュータ装置37に出力される送信データには、水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報が含まれることになる。
第2復調部25−2は、複数の第2ベースバンド信号を合成することにより得られた信号に対して復調処理を行って取得した既知信号に基づいて、受信用ウェイトを算出する。第2復調部25−2は、算出した受信用ウェイトに基づいて、送信用ウェイトを算出し、コンピュータ装置37を介して、当該送信用ウェイトを第2変調部26−2に出力する。
第3復調部25−3は、第3受信部15−3から出力された複数の第3ベースバンド信号のそれぞれに対して、第2復調部25−2が第2受信部15−2から出力された複数の第2ベースバンド信号のそれぞれに対して行った処理と同様の処理を行う。ただし、第3復調部25−3は、求めた送信用ウェイトを第3変調部26−3に出力する。第4復調部25−4は、第4受信部15−4から出力された複数の第4ベースバンド信号のそれぞれに対して、第2復調部25−2が第2受信部15−2から出力された複数の第2ベースバンド信号のそれぞれに対して行った処理と同様の処理を行う。ただし、第4復調部25−4は、求めた送信用ウェイトを第4変調部26−4に出力する。こうして、第1〜第4復調部25−1〜25−4のうち、アンテナ群選択部45で選択されたアンテナ群に対応する復調部25から、コンピュータ装置37にデータが出力される。
RSSI検出部36は、アンテナ群選択部45で選択されたアンテナ群で受信された受信信号の信号レベルを検出する。例えば、アンテナ群選択部45が高速通信用アンテナ群11を選択した場合には、RSSI検出部36には、第1受信部15−1から、高速通信用アンテナ群11を構成する複数のアンテナ11aがそれぞれ受信した複数の受信信号が出力される。この場合に、本実施の形態に係るRSSI検出部36は、複数のアンテナ11aでそれぞれ受信された複数の受信信号の信号レベルの平均値を求め、当該平均値を高速通信用アンテナ群11で受信された受信信号の信号レベルとする。そして、RSSI検出部36は、検出した信号レベルをコンピュータ装置37に出力する。
センタ3からコンピュータ装置37に送信されるデータには、当該データの送信対象となる通信端末2に設定されたQoS(Quality of Service)が付加されている。QoSとは、通信対象となる通信端末2についての通信の優先度である。つまり、通信端末2に設定されたQoSが高いことは、基地局1と当該通信端末2との間でデータが高速に送受信される必要性が高いことを意味する場合が多い。基地局1は、QoSが高い通信端末2と優先的に通信を行う。QoSの設定値は、UGS(Unsolicited Grant Service)や、rtPS(real-time Polling Service)などのサービス特性によって異なる。QoS取得部43は、センタ3から送信されるデータなどから、通信対象となる通信端末2のQoSを取得する。
アンテナ情報取得部44は、使用アンテナ情報が、アンテナ群選択部45が選択したアンテナ群に対応する復調部25から出力されるデータに含まれている場合に、当該データから使用アンテナ情報を取得する。
アンテナ群選択部45は、4種類のアンテナ群の中から、通信対象となる通信端末2との通信に使用する1種類のアンテナ群を選択する。アンテナ群選択部45は、例えば、この選択動作を一定時間内に複数回行う。図3は、アンテナ群選択部45が、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群を選択する動作を示すフローチャートである。
まず、アンテナ群選択部45は、QoS取得部43で取得したQoSが閾値以上であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、アンテナ群選択部45は、QoSが閾値以上であると判定した場合には、4種類のアンテナ群のうち、多重空間方式を用いた通信に最も適した高速通信用アンテナ群11を、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群として選択する(ステップS2)。
ステップS1において、アンテナ群選択部45は、QoSが閾値未満であると判定した場合には、アンテナ群選択部45は、アンテナ情報取得部44が、水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報を取得したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3において、アンテナ群選択部45は、アンテナ情報取得部44が、水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報を取得したと判定した場合には、4種類のアンテナ群のうち、特殊な状況下で通信干渉を低減する水平偏波アンテナ群14を、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群として選択する(ステップS4)。これにより、通信対象の通信端末2が、水平偏波アンテナ群を使用している場合には、アンテナ情報取得部44は、当該通信端末2が使用しているアンテナ群と同じ種類のアンテナ群を選択することになる。
ステップS3において、アンテナ群選択部45は、アンテナ情報取得部44が、水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報を取得しなかったと判定した場合には、RSSI検出部36で検出された信号レベルが第1閾値、例えば、50dBμV以上であるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、アンテナ群選択部45は、信号レベルが第1閾値以上であると判定した場合には、4種類のアンテナ群のうち、通信範囲が最も狭い短距離通信用アンテナ群12を、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群として選択する(ステップS6)。これにより、通信対象の通信端末2が、基地局1の周辺にあり、当該通信端末2からの受信信号の信号レベルが大きいときには、アンテナ群選択部45は、短距離通信用アンテナ群12を選択することになる。
ステップS5において、アンテナ群選択部45は、信号レベルが第1閾値未満であると判定した場合には、RSSI検出部36で検出された信号レベルが第2閾値、例えば、30dBμV未満か否かを判定する(ステップS7)。ステップS7において、アンテナ群選択部45は、信号レベルが第2閾値未満であると判定した場合には、4種類のアンテナ群のうち、一般的な状況下で通信範囲が最も広い垂直偏波アンテナ群13を、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群として選択する(ステップS8)。これにより、通信対象の通信端末2が、基地局1から遠い地点にあり、当該通信端末2からの受信信号の信号レベルが小さいときには、アンテナ群選択部45は、垂直偏波アンテナ群13を選択することになる。
ステップS7において、信号レベルが第2閾値以上であると判定した場合には、4種類のアンテナ群のうち、デフォルトのアンテナ群を、通信端末2との通信に使用するアンテナ群として選択する(ステップS9)。アンテナ群選択部45は、基地局1が新たな通信端末2と通信を行うたびに、ステップS9において使用される、デフォルトのアンテナ群を変更する。
図2に示されるコンピュータ装置37は、第1〜第4変調部26−1〜26−4のうち、アンテナ群選択部45により選択されたアンテナ群に対応する変調部26に対して、センタ3からのデータを出力する。
無線リソース割当部46は、通信対象となる通信端末2に対して無線リソースを割り当てる。ここで、無線リソースは、周波数軸と時間軸との2次元で表現される。図4は、無線リソース割当部46の動作を示すフローチャートである。まず、無線リソース割当部46は、アンテナ群選択部45が、短距離通信用アンテナ群12を選択したか否かを判定する(ステップS11)。
ステップS11において、無線リソース割当部46は、短距離通信用アンテナ群12が選択されていると判定した場合に、一フレームにおいて予め定められたゾーンを、短距離通信用アンテナ群12に専用の無線リソース(以下、「短距離専用の無線リソース」と呼ぶ)として割り当てる(ステップS12)。
図5は、基地局1と通信端末2との通信で使用される一フレーム51を示す図である。図5(a)〜(c)には、基地局1a〜1cのフレーム51がそれぞれ示されている。本実施の形態では、一フレーム51は、複数のゾーン52−1〜52−6(以下、「ゾーン52」と呼ぶこともある)に分けられている。本実施の形態では、複数のゾーン52−1〜52−6のうち、ゾーン52−1が、短距離専用の無線リソースとして使用される。
図5(a)〜(c)のそれぞれには、短距離専用の無線リソースに相当するゾーン52−1が斜線のハッチングで示されている。基地局1a〜1cの間では、ステップS12が行われる際には、一フレーム51内の同一のゾーン52−1が、短距離専用の無線リソースとして、無線リソース割当部46により割り当てられる。
ステップS11において、無線リソース割当部46は、短距離通信用アンテナ群12が選択されていないと判定した場合には、ゾーン52−1と少なくとも時間帯または周波数帯が異なるゾーン52−2〜52−6の一つを割り当てる(ステップS13)。
図2に示される第1変調部26−1は、アンテナ群選択部45が高速通信用アンテナ群11を選択した場合にコンピュータ装置37から出力されるデータに基づいて、無線リソース割当部46で割り当てられた無線リソースで特定される周波数帯の搬送波を変調して、ベースバンド信号を生成する。このベースバンド信号は、高速通信用アンテナ群11を構成する複数のアンテナ11aの数だけ準備される。ただし、通信部35−1は、MIMOで通信するため、ここで準備される複数のベースバンド信号には、互いに異なる種類のデータがそれぞれ重畳される。そして、第1変調部26−1は、自己が生成した複数のベースバンド信号を第1送信部16−1に出力する。
第1送信部16−1は、入力された複数のベースバンド信号をアップコンバートおよび増幅処理を行った後、複数のアンテナ11aにそれぞれ出力する。これにより、アンテナ群選択部45が高速通信用アンテナ群11を選択した場合に、高速通信用アンテナ群11からは、複数の無線信号が送信される。
第2変調部26−2は、アンテナ群選択部45が短距離通信用アンテナ群12を選択した場合にコンピュータ装置37から出力されるデータに基づいて、無線リソース割当部46で割り当てられた無線リソースで特定される周波数帯の搬送波を変調して、ベースバンド信号を生成する。このベースバンド信号は、短距離通信用アンテナ群12を構成する複数のアンテナ12aの数だけ準備される。ここで準備される複数のベースバンド信号には、同一のデータが重畳される。そして、第2変調部26−2は、第2復調部25−2で算出された送信用ウェイトを、自己が生成した複数のベースバンド信号に設定し、送信用ウェイト設定後の複数のベースバンド信号を第2送信部16−2に出力する。
第2送信部16−2は、入力された複数のベースバンド信号をアップコンバートおよび増幅処理を行った後、複数のアンテナ12aにそれぞれ出力する。これにより、アンテナ群選択部45が短距離通信用アンテナ群12を選択した場合に、短距離通信用アンテナ群12からは、通信端末2に向かって無線信号が送信される。
第3変調部26−3は、アンテナ群選択部45が垂直偏波アンテナ群13を選択した場合にコンピュータ装置37から出力されるデータに基づいて、無線リソース割当部46で割り当てられた無線リソースで特定される周波数帯の搬送波を変調して、ベースバンド信号を生成する。このベースバンド信号は、垂直偏波アンテナ群13を構成する複数の垂直偏波アンテナ13aの数だけ準備される。ここで準備される複数のベースバンド信号には、同一のデータが重畳される。第4変調部26−4は、アンテナ群選択部45が水平偏波アンテナ群14を選択した場合にコンピュータ装置37から出力されるデータに基づいて、無線リソース割当部46で割り当てられた無線リソースで特定される周波数帯の搬送波を変調して、ベースバンド信号を生成する。このベースバンド信号は、水平偏波アンテナ群14を構成する複数の水平偏波アンテナ14aの数だけ準備される。ここで準備される複数のベースバンド信号には、同一のデータが重畳される。
ベースバンド信号を生成した以降、第3変調部26−3、および、第4変調部26−4のそれぞれは、第2変調部26−2がベースバンド信号を生成した以降の処理と同様の処理を行う。そして、第3送信部16−3、および、第4送信部16−4のそれぞれは、第2送信部16−2と同様の処理を行う。
以上のような本実施の形態に係る基地局1は、少なくともQoSに基づいて、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群を選択する。これにより、基地局1は、適切なアンテナ群を通信端末2との無線通信に使用することができるので、基地局1の通信性能を向上させることができる。例えば、通信対象の通信端末2に設定されたQoSが高く、通信対象の通信端末2と高速に通信する必要がある場合には、本実施の形態のように、高速通信可能な多重空間方式に最適な高速通信用アンテナ群11を選択することにより、QoSに応じた最適なアンテナ群を使用して通信することができる。
また、本実施の形態に係る基地局1は、QoSと受信信号の信号レベルとに基づいて、通信対象となる通信端末2との通信に使用するアンテナ群を選択する。これにより、基地局1は、QoSだけでなく信号レベルにも応じた適切なアンテナ群を通信端末2との無線通信に使用することができるので、基地局1の通信性能をさらに向上させることができる。例えば、基地局1は、通信対象の通信端末2からの受信信号の信号レベルが大きい場合に、本実施の形態のように、短距離通信用アンテナ群12を選択することによって、他の基地局1との通信干渉を抑えつつ、近い場所に位置する通信対象の通信端末2と適切に通信することができる。また、基地局1は、通信対象の通信端末2からの受信信号の信号レベルが小さい場合に、一般的な状況下で通信範囲が最も広い垂直偏波アンテナ群13を選択することによって、遠い場所に位置する通信対象の通信端末2と適切に通信することができる。
また、本実施の形態に係る基地局1は、アンテナ情報取得部44が、使用アンテナ情報を取得した場合に、使用アンテナ情報により示されるアンテナ群を選択するため、通信端末2が使用するアンテナ群と同じ種類のアンテナ群を使用して、通信端末2と無線通信することができる。よって、基地局1の通信性能をさらに向上させることができる。例えば、基地局1は、通信対象の通信端末2から、水平偏波アンテナ群を示す使用アンテナ情報を取得した場合に、本実施の形態のように、水平偏波アンテナ群14を選択することによって、都会などの特殊な状況下で、他の基地局1との通信干渉および通信端末2との通信干渉を抑えることができる。
また、本実施の形態に係る無線通信システムによれば、複数の基地局1a〜1cの間では、アンテナ群選択部45により短距離通信用アンテナ群12が選択される際に、無線リソース割当部46により通信対象となる通信端末2に対して割り当てられる無線リソースがフレーム51内で占めるゾーン52−1が同一である。そのため、無線通信システム全体の無線リソースの利用効率を向上させることができる。また、この場合には、基地局1a〜1cのそれぞれが使用する短距離通信用アンテナ群12の通信範囲が狭いため、基地局1a〜1cが同じ時間帯のフレーム51で短距離通信用アンテナ群12を使用して通信したとしても、基地局1a〜1cのそれぞれから送信される無線信号同士の干渉を低減することができる。
なお、本実施の形態では、通信の優先度が閾値以上であるか否か、使用アンテナ情報を取得したか否か、信号レベルが第1閾値以上であるか否か、信号レベルが第2閾値未満であるかの4項目について、この順番で判定した。しかし、4項目を判定する順番はこれに限ったものではなく、4項目をすべて重複なく並べた順番であれば、他の順番であっても良い。
<実施の形態2>
本実施の形態に係る無線通信システムのブロック構成は、図1に示される実施の形態1に係る無線通信システムのブロック構成と同じである。基地局1a〜1cの構成は、図2に示される基地局1の構成のうち、無線リソース割当部46を省いた構成と同じである。基地局1a〜1cは、通信端末2a〜2cとそれぞれ無線通信を行っている。以下、本実施の形態に係る無線通信システムの構成のうち、実施の形態1に係る無線システムの構成と異なる構成について説明する。
基地局1は、アンテナ群選択部45がアンテナ群を選択したときに、当該選択されたアンテナ群の種類を特定する情報(以下、「選択アンテナ情報」と呼ぶ)をセンタ3に出力する。
センタ3は、基地局1a〜1cの選択アンテナ情報に基づいて、基地局1a〜1cのそれぞれについて、通信端末2に送信する無線信号に使用すべき無線リソースを決定し、決定した無線リソースを特定する情報(以下、「無線リソース情報」と呼ぶ)を、基地局1a〜1cのそれぞれに出力する。基地局1に入力された無線リソース情報は、コンピュータ装置37を介して、第1〜第4変調部26−1〜26−4のうち、アンテナ群選択部45に選択されたアンテナ群に対応する変調部26に入力される。変調部26は、コンピュータ装置37から出力されるデータに基づいて、センタ3で割り当てられた無線リソースで特定される周波数帯の搬送波を変調する。こうして、センタ3は、各基地局1に対して、通信対象となる通信端末2と通信する際に使用する無線リソースを割り当てる。
図6は、本実施の形態に係るセンタ3の動作を示すフローチャートである。以下、基地局1aから通信端末2aに送信される無線信号の無線リソースを「無線リソースA」、基地局1bから通信端末2bに送信される無線信号の無線リソースを「無線リソースB」、基地局1cから通信端末2cに送信される無線信号の無線リソースを「無線リソースC」と呼ぶ。
まず、センタ3は、基地局1aからの選択アンテナ情報と、基地局1bからの選択アンテナ情報を調べ、基地局1aおよび基地局1bの少なくとも一方が短距離通信用アンテナ群12を使用するか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21において、センタ3は、基地局1aおよび基地局1bのいずれも短距離通信用アンテナ群12を使用しないと判定した場合には、無線リソースAと無線リソースBとを互いに異ならせる(ステップS22)。
ステップS22の後、センタ3は、基地局1cからの選択アンテナ情報を調べ、基地局1cが短距離通信用アンテナ群12を使用するか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23において、センタ3は、基地局1cが短距離通信用アンテナ群12を使用しないと判定した場合には、無線リソースAと無線リソースBと無線リソースCとを互いに異ならせる(ステップS24)。図7(a)〜(c)には、ステップS24により基地局1a〜1cにそれぞれ割り当てられる無線リソースA〜Cに相当するゾーン52が、斜線のハッチングでそれぞれ示されている。つまり、ステップS24では、無線リソースAとして、ゾーン52−1と、ゾーン52−5が割り当てられ、無線リソースBとして、ゾーン52−3と、ゾーン52−4が割り当てられ、無線リソースCとして、ゾーン52−2と、ゾーン52−6が割り当てられる。
ステップS23において、センタ3は、基地局1cが短距離通信用アンテナ群12を使用すると判定した場合には、無線リソースAおよび無線リソースBのいずれか一方のみと、無線リソースCとを一致させる(ステップS25)。図8(a)〜(c)には、ステップS25により基地局1a〜1cにそれぞれ割り当てられる無線リソースA〜Cに相当するゾーン52が、斜線のハッチングでそれぞれ示されている。この図では、センタ3が、無線リソースAと無線リソースCとを一致させたときの一例が示されている。
図8に示すように、センタ3は、無線リソースAと無線リソースCに同じゾーン52−1,52−5を割り当てることにより、ステップS24では無線リソースCに割り当てられていたゾーン52−2,52−6を、短距離通信用アンテナ群12以外のアンテナ群を使用する際に、無線リソースCとして用いることができる。こうして、ステップS25では、無線通信システム全体での無線リソースの利用効率を向上させることができる。また、この場合には、基地局1cが使用する短距離通信用アンテナ群12の通信範囲が狭いため、基地局1cから送信される無線信号と基地局1aから送信される無線信号との干渉を低減することができる。なお、ここでは、センタ3が、無線リソースAと無線リソースCとを一致させる場合について説明したが、無線リソースBと無線リソースCとを一致させるときも、同様の効果を得ることができる。
ステップS21において、センタ3は、基地局1aおよび基地局1bのいずれか一方のみが、短距離通信用アンテナ群12を使用すると判定した場合には、センタ3は、基地局1cからの選択アンテナ情報を調べ、基地局1cが短距離通信用アンテナ群12を使用するか否かを判定する(ステップS26)。
センタ3が、ステップS21において、基地局1aが、短距離通信用アンテナ群12を使用すると判定し、かつ、ステップS26において、基地局1cが、短距離通信用アンテナ群12を使用しないと判定した場合には、無線リソースBおよび無線リソースCのいずれか一方のみと、無線リソースAとを一致させる(ステップS27)。この割り当て動作により、ステップS27では、ステップS25と同様、無線通信システム全体での無線リソースの利用効率を向上させることができ、かつ、基地局1bから送信される無線信号、および、基地局1cから送信される無線信号のいずれか一方と、基地局1aから送信される無線信号との干渉を低減することができる。
また、センタ3が、ステップS21において、基地局1bが、短距離通信用アンテナ群12を使用すると判定し、かつ、ステップS26において、基地局1cが、短距離通信用アンテナ群12を使用しないと判定した場合には、無線リソースCおよび無線リソースAのいずれか一方のみと、無線リソースBとを一致させる(同ステップS27)。この割り当て動作により、ステップS27では、ステップS25と同様、無線通信システム全体での無線リソースの利用効率を向上させることができ、かつ、基地局1cから送信される無線信号、および、基地局1aから送信される無線信号のいずれか一方と、基地局1bから送信される無線信号との干渉を低減することができる。
センタ3が、ステップS26において、基地局1cが、短距離通信用アンテナ群12を使用すると判定した場合には、無線リソースAと、無線リソースBと、無線リソースCとを互いに一致させる(ステップS28)。図9(a)〜(c)には、ステップS28により基地局1a〜1cにそれぞれ割り当てられる無線リソースA〜Cに相当するゾーン52が、斜線のハッチングでそれぞれ示されている。
図9に示すように、センタ3は、無線リソースAと、無線リソースBおよび無線リソースCに対して同一のゾーン52−1,52−5を割り当てることにより、ステップS24では、無線リソースCに割り当てられていたゾーン52−2,52−6を、短距離通信用アンテナ群12以外のアンテナ群を使用する際に、無線リソースCとして用いることができる。また、ステップS24では、無線リソースBに割り当てられていたゾーン52−3,52−4を、短距離通信用アンテナ群12以外のアンテナ群を使用する際に、無線リソースBとして用いることができる。こうして、ステップS28では、ステップS25、S27よりも、無線通信システム全体での無線リソースの利用効率を向上させることができる。また、基地局1a〜1cのそれぞれから送信される無線信号同士の干渉を低減することができる。
センタ3は、基地局1aおよび基地局1bのいずれも、短距離通信用アンテナ群12を使用すると判定した場合には、無線リソースAと、無線リソースBと、無線リソースCとを互いに一致させる(ステップS29)。この割り当て動作により、ステップS28と同様の効果を得ることができる。
以上のような本実施の形態に係る無線通信システムによれば、3つの基地局1a〜1cのうち、短距離通信用アンテナ群12を使用する基地局1がある場合、当該基地局1から短距離通信用アンテナ群12を介して送信される無線信号の無線リソースと、他の基地局1から送信される無線信号の無線リソースとが一致する。これにより、無線通信システム全体での無線リソースの利用効率を向上させることができる。また、短距離通信用アンテナ群12を使用する基地局1がある場合に、その基地局1の無線リソースと他の基地局1の無線リソースとを同じにしているため、それら基地局1の間での干渉を抑制することができる。
なお、垂直偏波アンテナ群13から出力される無線信号と、水平偏波アンテナ群14から出力される無線信号は、互いに偏波面が異なるため、互いに干渉しない。そこで、例えば、センタ3は、基地局1aが、垂直偏波アンテナ群13を使用して通信端末2と無線通信を行い、かつ、基地局1bが、水平偏波アンテナ群14を使用して通信端末2と無線通信を行う場合には、基地局1aに割り当てる無線リソースと、基地局1bに割り当てる無線リソースとを同一にするものであってもよい。このようにすることで、無線リソースの利用効率を向上させることができるとともに、基地局1aと基地局1bの間での干渉を抑制することができる。