JP5335182B2 - 巨視的探査理論に基づいたコンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法 - Google Patents

巨視的探査理論に基づいたコンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法 Download PDF

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この発明は、日本全国に数多く存在するコンクリート電柱の目視し得ない部分の割れの有無を、十分な知識や経験のない測定者でも、迅速にかつ高精度に探査可能な巨視的探査理論に基づいたコンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法に関する。
従来、電柱地中部の割れの探査を地上部より、探触子と斜角治具を用いて柱軸斜方向に超音波を入力し、この入力超音波による割れからの反射波を取り出す方法と装置として、特許文献1が存在する。
この方法の概要を図1に基づいて示せば、以下の様になる。
(1)探知妨害波の除去
図1の計測において、超音波を柱軸斜方向へ201の様に入力する時、柱軸直角方向へも202に示す成分の超音波が起生する。この超音波202の成分の電柱への超音波入力により、図1(b)に示す電柱円周方向へ伝達する203の超音波が起生する。この超音波203は、探査の精度を低下させる探査妨害波である。
この妨害波の振幅が大きくなる振動数は、肉厚に関する共振振動数(f)を示す下記数式で算定されるとしている(ここで、βは1.0及び0.59、はコンクリート縦波音速、dは電柱肉厚である。)。
電柱コンクリート音速を4500m/秒、肉厚40mmとした時、
縦波のf値は、β=1.0として56KHz
横波のf値は、β=0.59として33KHz
となるとしている。この33〜56KHz及びその前後の帯域の成分波では、超音波202の共振波が大きく生じるとしている。また、超音波202の共振波と共に生ずる妨害波203の振幅が小さくなる振動数fが下記数式で定義されていることが示されている(ここで、αは補正係数、φは探触子径である。)。
以上より、地中部割れ15の反射波を抽出するために、f値付近の帯域のスペクトルを除去し、f値より小さい振動数で狭帯域成分波を抽出することで割れ15からの反射波を取得できるとしている。
(2)探触子の柱軸方向移動によるリアルタイム計測
電柱の割れ探査では、一般のコンクリートの割れ探査と異なる超音波伝達状況がある。図2に電柱特有の超音波伝達状況が示されている。柱軸方向斜めに入力された超音波が肉厚部表面及び裏面で反射及びモード変換(縦波と横波とに周期的に変化する現象)を繰返し伝達する様子を示している。
図2(a)では、反射波が上手く受信されていない様子を示しており、図2(b)では反射波が上手く受信されている様子を示している。
ここで、図2において、
(a)図では、超音波入力位置から割れまでの距離をl
(b)図では、超音波入力位置から割れまでの距離をl
としている。
前記距離をlからlまで変化させていく経緯の中で、リアルタイムに前記(1)記述の処理が成されれば、図3(a)に示す成分波が序々に図3(b)に示す様に変化していき、304に示す割れ反射波が確認されるとしている。
そして、この確認時点で図3(b)の波形と図3(a)の波形を減算処理すれば、図1の203に示す探知妨害波(301及び302)が除去され、図3(c)に示す様に割れ15からの反射波のみが抽出できると論じている。
しかしながら、前記リアルタイム計測は、上記(1)(2)の処理を組み合わせ行うものであり、以下の繁雑な手順と問題点が生ずる。
(一)探触子の柱軸方向移動に伴い、電柱表面と探触子治具面間の超音波伝達媒質の付着状況が変化する。
(二)リアルタイム抽出波の算出に伴う探触子移動下での最適位置の選定には治具/電柱面の接着状況の確認、接触媒質の付着状況の確認、接着面の凹凸等の有無の確認、そして、抽出波の適正評価等々の工学的判断を必要とする。
(三)電柱地中部割れは、円周全面にあるとは限らない。円周の一部分にある場合が殆どである。これより、前記(1)(2)のチェックを探触子を円周上で移動する都度行わなければならず、測定時間が極めて長くなる場合がある。
(四)図1の計測で、電柱内超音波伝達状況を確認する方法として、特許文献1に記載の上記発明は優れている。しかしながら、分析波の評価に技術的判断を要するため、測定者に十分な知識や経験を要求せざるを得ない。
特許第3599672号公報
以上の(一)〜(四)の問題点を解消し、日本全国数百万本とも目される数多く存在するコンクリート電柱の割れ探査を、十分な知識や経験を持たない測定者でも、所定の計測手順の下、計測を行い、所定の順序の分析項目の指定で、迅速に且つ高精度に地中部割れの有無の探査を行うことができる広帯域超音波を用いる超音波探査方法の提供を目的とする。
この発明は、中空部を有するコンクリート電柱の地中部割れ探査を行うに当って、地中部より電柱軸斜方向に斜角治具を具備した発信探触子から広帯域超音波を発信させ、前記斜角治具と同一形状の治具を具備する受信探触子で広帯域受信波を収録し、該受信波を自動分析することでコンクリート電柱地中部の割れの探査を行う超音波探査方法であって、
電柱軸と直交する電柱円周上に前記探触子を具備した一対の斜角治具をその中心間距離をaとして配置し、測定点を前記中心間距離の中点と定義する計測で前記測定点を円周方向へ順次移動し、全測点数をnとして下記数式1を満足させて各測点jで広帯域受信波を受信するとき、
広帯域超音波を各測点での計測でn回発信し、該発信の都度、広帯域受信波Gjk(t)を受信して、下記数式2で以降の分析処理で用いる受信波G(t)(j=1〜n)波を求めて定義する第1の処理工程と、
あらかじめ前記G(t)(j=1〜n)を得たと同一外径Φの電柱に対応する割れ校正波Gw(t)をGnA+1(t)として用意し、以降の分析で用いるG(t)をj=1〜n+1とする第2の処理工程と、
前記G(t)(j=1〜n+1)の各測点jでの振幅の差を補正する第3の処理工程と、
該補正されたG(t)のフーリエ変換で得るスペクトルをF(f)として、前記計測対象電柱の外径Φに基づいて、あらかじめセットされているか又は外部から与えられて決まるfD1値を用い、fD1値を中心振動数として狭帯域波を抽出するためのフィルタ処理により挟帯域スペクトルFA(f)(j=1〜n+1)を求め対応する時系列GA(t)(j=1〜n+1)をフーリエの逆変換で求め、割れの有無を確認したい路程lを外部から与える都度、下記数式3でt値を計算する第4の処理工程と、
あらかじめ第2の処理工程で準備されている又は外部から与えられ探査対象電柱の外径Φに対応し、路程lminでの割れ反射波の振幅値に対する路程lでの割れ反射波の振幅値の比である振幅減衰率CG(l)関数(l=lminで1.0)を用いて、l=lminとしたときのtmin値、及び、路程lとしたときのt値として、下記数式43、44、45により修正されたGAnA+1(t)を用いて新たな分析用GA(t)(j=1〜n+1)を求める第5の処理工程と、
t=で0.0、t≧tで1.0であり、t=0〜t間を線形増加する関数をt=t毎にFiLT(t)と定義し、振幅を顕著化するためのnを1以上の自然数として下記数式4でGB(t)(j=1〜n+1)を求める第6の処理工程とを備え、
振幅を顕著化するためのnを1以上の自然数としてGBnA+1 nS(t)を時刻軸を中心に表示画面に最大表示し、且つGB nS(t)(j=1〜n)を比較表示し、あらかじめ指示され時刻軸に平行で該時刻軸を中心とする2本の評価線分と前記GB nS(t)の波とが交差するとき、その測定点jでt値に対応する路程l以降に割れがあると判断し、それらが交差しないとき、路程lに割れが無いと判断し、
前記l値をlminから徐々に大きくして前記GB nS(t)の比較表示を行うことで、割れの有無、並びに、割れまでの路程lを計測することができるコンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法であることを特徴とする。
この発明の第2処理工程は、探査対象電柱の外径Φ毎に、多数の電柱(n本)を用意し、探査可能な最小路程をlminとし、この位置(l=lmin)で、電柱軸直角方向に貫通割れを模擬し、この探査路程での受信波群G(t)(m=1〜n)に、第4の処理工程をjをm、n+1をnに置き換えて実施し、前記Φに基づいて決まる所定値fD1を中心振動数とする挟帯域成分波をGA(t)として求め、GA(t)のm=1〜nの比較で、前記最小路程lminで生ずるn個の割れ反射波の振幅比較で、平均的な振幅値を持つGA(t)のmを特定し、このGA(t)をGw(t)(l=lmin)とする工程と、所定のΔl値を用いて、探査路程lをl=l+Δlと変更する毎に前記処理を繰り返し、前記l値毎に前記Gw(t)を求め、l値毎に求めたGw(t)の最大振幅とl=lminでのGw(t)(l=lmin)の最大振幅の比をl値の関数として、計測対象の電柱外径Φ毎にCG(l)として求める工程とすることができる。
また、この発明の第3の処理工程は、
[方法1]
外部から与えられる又はあらかじめセットされたt値(0以上の整数)及び、m、m値(1.0〜1.2の値)を用いて、t=0〜t間でのG(t)(j=1〜n)波の最大振幅を各々A(j=1〜n)とし、GnA+1(t)波の最大振幅をAと表現し、
を計算し、下記数式25でGG(t)(j=1〜n)を計算し、前記j=1〜nにおけるG(t)をGG(t)と置き換える処理工程とすることができる。
又は、[方法2]として、
外部から与えられる又はあらかじめセットされたf、f値(0以上の実数)を用いて、受信波G(t)に対応するスペクトルF(f)のスペクトル曲線とf、f軸(縦軸)と、振動数f軸で囲まれた面積ARj(j=1〜n)を各々計算し、健全校正波GnA+1(t)(対応するスペクトルはFnA+1(f))の場合のARjに対応する面積Aを計算し、j=1〜nにおいて、外部から与えられる又はあらかじめセットされているm、m値(1.0〜1.2の値)を用いて、
を計算し、前記j=1〜nにおけるF(f)をFF(f)と取り替え、この変更されたF(f)のフーリエの逆変換で新たなG(t)(j=1〜n
を作成する工程とすることができる。
若しくは、[方法3]として、
前記[方法2]による振幅補正の後、前記[方法1]による振幅補正を続けて行う工程とすることができる。
また、この発明の第4の処理工程は、前記G(t)(j=1〜n+1)に対応するスペクトルをF(f)としたとき、前記fD1値を用いて、f=0で0.0、f=0〜2fD1でSin関数、f=fD1で1.0、f≧2fD1で0.0となる周波数関数A(f)を用いて、nを1以上の自然数として、数式20、21でFA(f)及び、GA(t)を求める工程とすることができる。
他の方法として、バンド幅2Δfを所定値または外部から与えられる値とし、f=0〜(fD1−Δf)で0.0、F=(fD1−Δf)〜(fD1+Δf)で1.0、f>(fD1+Δf)で0.0となる周波数関数AB(f)を定義し、数式22と数式21を用いてFA(f)及び、GA(t)を求める工程とすることもできる。
また、この発明の第5の処理工程は、あらかじめ第2の処理工程で求められている電柱外径Φに対応するGw(t)波、及びCG(l)関数を用いて、分析したい探査路程lが外部から指示される毎に前記数式3を用いて、対応する時刻tを計算し、数式6乃至数式8の計算でGA(t)を求め、
前記割れ構成波GAnA+1(t)をGAB(t)と置き換える工程とすることができる。
また、この発明は、中空部を有するコンクリート電柱の地中部割れ探査を行うに当って、地中部より電柱軸斜方向に斜角治具を具備した発信探触子から広帯域超音波を発信させ、前記斜角治具と同一形状の治具を具備する受信探触子で広帯域受信波を収録し、該受信波を自動分析することでコンクリート電柱地中部の割れの探査を行う超音波探査方法であって、
電柱軸と直交する電柱円周上に前記探触子を具備した一対の斜角治具をその中心間距離をaとして配置し、測定点を前記中心間距離の中点と定義する計測で前記測定点を円周方向へ順次移動し、全測点数をnとして下記数式1を満足させて各測点jで広帯域受信波を受信するとき、
広帯域超音波を各測点での計測でn回発信し、該発信の都度、広帯域受信波Gjk(t)を受信して、下記数式2で以降の分析処理で用いる受信波G(t)(j=1〜n)波を求めて定義する第1の処理工程と、
前記G(t)(j=1〜n)を得たと同一外径Φの健全電柱からの多数の健全柱受信波を用いた健全校正波GnA+1(t)として用意し、以降の分析で用いるG(t)をj=1〜n+1とする第2の処理工程と、
前記G(t)(j=1〜n+1)の各測点jでの振幅の差を補正する第3の処理工程と、
該補正されたG (t)のフーリエ変換で得るスペクトルをF (f)として、前記計測対象電柱の外径Φに基づいて、あらかじめセットされているか又は外部から与えられて決まるfD1値を用い、fD1値を中心振動数として狭帯域波を抽出するためのフィルタ処理により挟帯域スペクトルFA(f)(j=1〜n+1)を求め対応する時系列GA(t)(j=1〜n+1)を逆フーリエ変換で求め、割れの有無を確認したい路程lを外部から与える都度、下記数式3でt値を計算する第4の処理工程と、
t=で0.0、t≧tで1.0であり、t=0〜t間を線形増加する関数をFiLT(t)と定義し、振幅を顕著化するためのを1以上の自然数として下記数式4でGB(t)(j=1〜n+1)を求める第5の処理工程とを備え、
振幅を顕著化するためのn を1以上の自然数としてGB nS (t)(j=1〜n+1)を比較検討するとき、j=1〜n毎に表示される時刻軸を中心として、その幅C15が波の最大表示幅の0〜50%の範囲であらかじめ指定された時刻軸に平行な左右の基準線と電柱外周径Φ毎に準備されている所定のA(l)、及び、A(lmin)を用いて下記数式5の計算で算出し得るGC(t)(j=1〜n+1)とを重ねて表示し、前記基準線と前記GC(t)(j=1〜n+1)が交差するとき、その交差位置の路程に割れがあると判断し、それらが交差しないとき、路程lには割れが無いと判断する処理を、探査路程lを変化させる都度繰り返し行い、割れの有無、並びに、割れまでの路程lを計測することができる
コンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法であることを特徴とする。
この発明の第2処理工程は、多数の健全柱受信波を比較検討し、平均的振幅を持ち、及び時刻の推移に関して平均的減衰状態を示す受信波を選定し、これを健全校正波GnA+1(t)とする工程とすることができる。
また、この発明の第3の処理工程は、前記特許請求の範囲の請求項1に記載の発明についての第3の処理工程と同様の工程とすることができる。
この発明によれば、十分な知識と経験のない測定者であっても、容易に中空部を有する電柱の地中部の割れを視覚的に探査し、判定することが可能となる。
この発明の実施形態における装置を以下図面に基づいて説明する。
図4は本発明の実施形態にかかる超音波装置を示すブロック図である。
被探知体30の表面に、発信探触子111と受信探触子112が接触するように配置される。そして、発信探触子111には、超音波発信装置の電流供給回路33から電流が供給され、発信探触子111から超音波(広域超音波)が発信し、被探知体30内に入射する。受信探触子112が受信した超音波信号は、解析装置34に入力されて、後述のようにして解析される。
この解析装置34においては、受信探触子112の受信信号がアンプ回路35により増幅されて、フィルタ回路36により後述の如くしてフィルタリングを受けた信号が、AD変換回路(アナログデジタル変換回路)37によりデジタル信号に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU(中央演算装置)40に入力される。
HD(ハードディスク)39には、解析処理アプリケーションソフトウェアとCPU40により演算処理された時系列データが保存される。
解析装置34による解析結果は、表示装置41にも入力されて表示される。更に、必要な情報がキーボード42からCPU40に入力されるようになっている。
メモリ43は、CPU40が演算する際にデータを一時的に格納するために使用される。また、CPU40からコントロール回路44に制御信号が出力され、コントロール回路44はアンプ回路35、フィルタ回路36、AD変換回路37、ゲートアレイ38及び電流供給回路33に作動指令信号を出力する。
電流供給回路33は同軸ケーブル45を介して発信探触子111に接続されている。
図5に示すように、発信探触子111には、基盤化したステップ型電圧発生器46と振動子47とが内蔵されている。
ステップ型電圧発生器46には、図6に示すように、ステップ電圧駆動回路462及びステップ電圧発生回路461が設けられており、ステップ電圧駆動回路462で発生するステップ関数型電圧を振動子47(図5)に印加する。
超音波を被探知体30に入力する都度、受信探触子112で受信波を得る。この受信波は同軸ケーブル49を介して、解析装置34のアンプ回路35へ、電圧の時間変動データとして送られる。
アンプ回路35へ送られた前記時間変動データはフィルタ回路36を経由して、AD変換回路37に達する。電圧のアナログ量がAD変換回路37によりデジタル量に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に転送され、前記電圧デジタル値(AD変換回路37によりデジタル量に変換された電圧値)の時刻歴が表示装置41に表示される。
自動的に、又はキーボード42を用いた外部からの指示により、電圧の増幅又は減幅及びローパス/ハイパスフィルタ処理の指令がCPU40に伝達され、CPU40はコントロール回路44を介してアンプ回路35及びフィルタ回路36を制御する。
図7に示すように、受信探触子112には、100KHz〜300KHzの範囲の特性の振動数における漸減型ハイパスフィルタ50、アンプ回路51及び振動子52が内蔵されている。
電流供給回路33はコントロール回路44により制御されて、所定の時間間隔で動作する。これにより、発信探触子111(図5)に内蔵された振動子47から、前記所定の時間間隔で超音波が被探知体30に入射される。受信探触子112(図7)に内蔵された振動子52は、超音波が入力する都度、被探知体30の音圧変化に伴い振動が励起する。この振動励起で振動子52に生じる電圧の時間変化が受信探触子112内のフィルタ回路50及びアンプ回路51で1次処理される。
アンプ回路51及びフィルタ回路50の制御が終了した段階で、CPU40(図4)の指示でコントロール回路44が動作し、ゲートアレイ38に受信波の加算処理を命令する。ゲートアレイ38は、AD変換回路37で得られる電圧に関する時刻歴デジタル量を、前記時刻歴を得る都度、指定回数加算する。そして、CPU40のコントロールにより加算平均時刻歴を作成し、表示装置41にその時刻歴をリアルタイムに表示する。
ハイパスフィルタ及びアンプ回路は夫々受信探触子112と解析装置34の双方に内蔵されている。受信探触子112に内蔵されているハイパスフィルタ50及びアンプ回路51は受信波に対し、前述の如く、1次処理を行うものである。これに対して、解析装置34に内蔵されるアンプ回路35とフィルタ回路36は、1次処理された受信波に対し、CPU40のコントロール下で微調整するものである。この微調整は装置機能の高度化のために必要とされるものであり、解析装置34内のアンプ回路35とフィルタ回路36は必須のものではない。
図4の超音波装置は、一対の発信探触子111と受信探触子112を装備する二探触子の場合を示している。しかし、発信探触子111と受信探触子112を一緒にした一探触子としても構わない。
発信探触子111と受信探触子112を一緒にした一探触子の場合、発信/受信共用探触子の中にステップ型電圧発生器と漸減型ハイパスフィルタとアンプ回路を共存させ、振動子を超音波の発信/受信の双方の用途で使用することになる。
ここで、図8を参照して、発信探触子111から発信される広帯域超音波について説明する。
パルス型電圧が印加されるセラミック振動子から発信される超音波は、図8(a)で示すように、比較的狭い帯域のスペクトルを持つので、本発明の計測では使用に適さない。
これに対して、図示の実施形態及び実施例で発信探触子111から発信される広帯域超音波(例えば、ステップ型電圧が印加されるセラミック振動子)は、図8(b)で示すように、広い帯域のスペクトルを持つ超音波が得られる。この様な、広い帯域のスペクトルを持つものが広帯域超音波である。
[電柱柱軸方向への超音波斜入力]
図9に示す計測は、発信探触子111から発信する広帯域超音波をアクリル製の発信探触子用の斜角治具113を介して、電柱柱軸方向へ入力している。この時、電柱肉厚内に発生する超音波1101が、地中部割れ115で反射し、この反射波が受信探触子用の斜角治具114を介して、受信探触子112で受信される。
本発明における計測は、探知妨害波1103の強度を極力小さくするために、柱軸直角方向に自然発生する直角方向超音波1102の強度が小さくなる様に発信探触子111からの超音波発信方向と柱軸直角方向との角度θが極力大きくなる様な斜角治具113を用いている。
このθの値が大きくなる様にする斜角治具113の形状の変更のみでは何ら新規性、進歩性を有するものでは無いが、後記分析処理による割れ探査を高精度に行う上で効力を発揮する。
本計測は、図9に示す様に発信探触子111を装着した治具113と受信探触子112を装着した治具114の電柱円周上の距離をaとして、発信探触子111より広帯域超音波を発信し、受信探触子112で広帯域超音波を受信する計測を図10に示す如く多点(nヶ所)で行い、G(t),G(t),・・・GnA(t)を収録する。
(t)波の収録は、2つの治具の中心間距離をaとして行う。探触子111と112を装着する2つの探触子治具位置の真中が測点1となる様にして行い、G(t)波の収録は前記aの値を保ったまま探触子111と112の探触子治具を円周方向で所定値Δlだけ移動し、測点2位置が前記両探触子治具位置の真中になる様にして行い、前記G(t)波の収録と同様にして、測点3乃至8の受信波を順次収録してG(t)(j=1〜8)の受信波を取得する。
前記記述及び図10は測点の数nを8として説明したが、8ではなく4又は6でも構わない。電柱の外径(直径)をΦとし、測点の数nを用いてΔlは下記数式12で算定される。
なお、前記G(t)波は加算平均波である。所定値(外部から与えられる)nを用い、kの1乃至nの変化の都度、広帯域超音波を発信して得る受信超音波をGjk(t)と表現した時、G(t)は下記数式13で示される。
[割れ反射波の卓越する振動数]
電柱は、工場生産されるものであり、共架柱と呼ばれる外径(地盤面付近で直径40cm程度)のもの、及び単独柱と呼ばれる外径(直径が地盤面付近で20cmから30cm程度)のものがある。
構造は全て中空部を有し、その肉厚dは共架柱で4cm前後、単独柱で4〜6cmである。工場生産で使用するコンクリートの材質管理が注意深く成される事より、コンクリート強度もその変動が殆ど無い。
この様な材質管理下で製造されたコンクリート電柱の場合、図9及び図10の計測を行って得る広帯域受信波では、割れ115からの反射波が大きく卓越する振動数が特定の値となる。典型的な事例を図11に示す。
図11の受信波G(t)及びフーリエ変換で求めたスペクトルF(f)は、図9の計測で計測点から割れ115までの距離lを20cmとし、割れ深さを肉厚d=4cmとする完全割れ(以下、「貫通割れ」という。)共架柱(外径40cm)を用いて得たものである。
同図右下に示す受信波G(t)に3本のカーソル131、132、133を重ね描きしている。柱軸方向縦波の等価音速を3000m/秒とするとカーソル131が最初に大きく起生する波の起生時刻t(l≒20cm)と合致する。
カーソル132、133は、モード変換波の起生位置を示す。カーソル132は往路を縦波、復路を横波又は往路を横波、復路を縦波とする反射波の起生時刻tを示し、カーソル133は往路・復路共、横波とする反射波の起生時刻tである。
前記t、t、tの算定式は、前記l値(図9参照)を用い柱軸方向縦波等価音速をV、横波と縦波の音速比をε、発信探触子治具113と受信探触子治具114の電柱円周上中心間距離をaとして、それぞれ下記数式14、数式15、数式16で表される。
図11のF(f)スペクトルで、スペクトル値の大きい2つのスペクトルが確認できる。この2つのスペクトルの中心振動数がfD1=53.8KHz及びfD2=84.0KHzと読み取れる。このfD1及びfD2が割れ反射波の卓越する振動数である。
D1、fD2が割れ反射波の卓越振動数であることを説明しておく。図11の受信波は、路程20cmに貫通割れが有る場合のものである。これより、20cm以降に割れ反射波が生じている。この部分の波のみをt=157μ秒((5)式を用いて算定)として、t=0で0、t=0から2t1でt=tの時1.0となるSin関数、t>2tで0.0となる時系列フィルタをFiLT(t)と定義し、
を算定し、GA(t)と、GA(t)をフーリエ変換して得たFA(f)を図12に示す。
(8)式を用いて、割れ反射波のみを抽出して得たFA(f)スペクトルで、前記fD1、fD2の値が図11の場合と全く異なることなく、それぞれ53.8KHz、84.0KHzとなっている。これより、fD1、fD2が割れ反射波の卓越振動数であると判断できる。
[割れ反射波の卓越振動数fD1値の分布]
共架柱(外径40cm)、肉厚4cmで路程l=20cm前後の反射波の振動数fD1が53.8KHzとなったことを前記した。反射波の振動数はコンクリート材質、路程等で変化する。しかしながら、電柱製造時に材質管理が密になされることよりコンクリート材質の変化による反射波の振動数の変化は小さい故、径が同程度であれば、電柱個々のfD1値の差は無視できる。
また、電柱地中部の割れは一部の例外を除いて、地盤面下0〜60cm以内にあることが、多数の電柱引抜で判明している。この程度の範囲による路程lの変化(0〜60cm)では、反射波の振動数の変化は微小である。
複数の設置された共架柱(外径40cm)の計測で得た受信波において、割れ電柱と判明した電柱での前記振動数fD1の頻度分布図を図13に示す。53KHz〜55KHzを中心に、±10KHz以内の帯域に前記fD1値が分布していると判断できる。
なお、径の細い単独柱(外径25cm前後)では、fD1値の値が若干大きく57KHz付近となっている(図示せず)。
[貫通割れ反射波との対比による分析法]
図9の計測で割れの路程lが15cmと判明している電柱受信波(図14)を用いて説明する。但し、外径40cmの共架柱での検討である。
図14におけるF(f)とG(t)とは下記数式18のフーリエ変換及び下記数式10のフーリエの逆変換に対応する数式で関係づけられる。
路程15cmより後方の波を含む時系列(割れ反射波が多量に含まれる)の波のみを、図14の受信波より切り出し、この切り出し波のスペクトルをフーリエ変換で求め、比較表示したのが図15である。測点7が路程d=20cmに完全割れのある校正波(以下、「割れ校正波」という。)及び測点1〜6の電柱同一円周上の各測点の受信波より切り出した時系列を同図右に示している。対応するスペクトル比較図が同図左ということになる。
割れ校正波(測点7)のfD1値が53.8KHzであることを前記[[割れ反射波の卓越する振動数]で記載し、対応する図として、図11及び図12が示されている。
図15のスペクトル比較図によれば、測点1、6以外の測点2〜5のスペクトルが前記fD1値の近傍で大きく生じている。割れ反射波スペクトルと判断できる。図15を求めた図14の受信波G(t)(j=1〜7)比較図に立ち返り、このfD1=53.8KHzのスペクトルをバンドパスフィルタ処理又は後述する周波数フィルタ処理で抽出し、対応する時系列をフーリエの逆変換で求め、割れ校正波(測点7)との対比で比較表示すると図16に示す分析波を得ることができる。図16によれば測点2〜5に割れ反射波を明確に確認できる。
なお、前記fD1=53.8KHz狭帯域波を周波数フィルタを用いて抽出する方法は、f=0で0.0、f=0〜2fD1でSin関数、但し、f=fD1で1.0及びf≧2fD1で0.0となる周波数関数をA(f)と定義し、受信波をG(t)、G(t)のフーリエ変換で得るスペクトルをF(f)とした時、FA(f)を下記数式20で演算し、
GA(t)を下記数式21で演算して求める。
また前記fD1=53.8KHz狭帯域波を一般的バンドパスフィルタ処理で抽出する方法についても説明しておく。バンド幅を2Δfとして指定し、f=0〜(fD1−Δf)で0.0、f=(fD1−Δf)〜(fD1+Δf)で1.0、f>(fD1+Δf)で0.0となる周波数関数をAB(f)と定義し、受信波をG(t)、G(t)のフーリエ変換で得るスペクトルをF(f)とした時、FA(f)を下記数式22で演算し、
GA(t)を数式21で求めればよい。なお、図16の比較図は狭帯域成分波をfD1=53.8KHzとするA(f)フィルタを用いて数式20、数式21の演算で得たGA(t)をGA (t)表示している。また数式20でn=5としている。分析例として示さないがバンドパスフィルタ処理の数式22でFA(f)を求め、数式21でGA(t)を求めてGA (t)表示しても図16と概略同一の比較図を得ることができる。
[健全/割れ電柱評価用A(l)曲線を用いた分析法]
前記[貫通割れ反射波との対比による分析法]をそのまま用いた場合、以下の2つの問題点がある。
[1]校正波が貫通割れの反射波により評価された振幅の大きい波であることより、割れ背の小さい時(例えば10mm)、割れ柱を健全柱と誤計測する場合がある。
[2]受信波の振幅は後述する種々の要因で計測の都度、大きく変動する。受信波取得時、この変動要因を可能な限り排除する対処を十分な知識と経験の無い計測者に求めることは至難である。結果として誤計測率が増大する。
この様な問題点を排除した計測分析法を以下説明する。
[受信波の振幅調整]
前記[1][2]の問題点を排除する方法を説明する。健全と判明している多数の電柱の受信波群を比較し、平均的な振幅及び時刻歴において平均的な減衰状況を持つ代表的な受信波を1波選定し、これを校正波G(t)(以下、「健全校正波」という。)とする。そして、分析で用いる受信波G(t)(j=1〜n)と、この健全校正波G(t)との対比で、受信波G(t)の振幅をj=1〜n毎に調整する。なお、受信波振幅に差違の生ずる要因(以下、「受信波振幅の変動要因」という。)は以下の4点である。
<1>電柱表面が円滑で無く、治具曲面と電柱面との密着状況に差異が生じる場合がある。
<2>電柱の経年変化に伴うコンクリート材質の変化で、電柱設置後の年数が長いと受信波振幅が小さくなる場合がある。
<3>治具と電柱表面間に塗る超音波伝達媒質の超音波伝達能力は、温度差に大きく影響される。夏場と冬場の計測で、受信波振幅で前者の方が後者の1/2程度となる場合がある。
<4>同一電柱で取得するG(t)(加算平均波)でも、前記<1><2>が原因し、測点位置jが変わる毎に当該するG(t)波の振幅が大きく変動する場合がある。
前記<1>乃至<4>が原因して生じるG(t)波の振幅の変動を調整し、個々の受信波で生じる振幅の差違を除去した受信波を作成し、割れの有無の分析を高精度化する必要がある。2つの方法に関して説明する。
[第1] [受信波の起生時刻近傍の時系列を用いる方法]
図9及び図10の計測で得られる受信波を模式的に示す図17を用いて説明する。
図17では測点A、Bの2つの測点の受信波を示している。A1、B1領域の波は、図9のコンクリート表面を探触子治具間で伝達する表面波1103と電柱の肉厚に関して重複反射する1104の波との重畳波である。A2、B2の波が割れ反射波を模擬したものである。
ところで、A1、B1の重畳波は、それぞれ図10の計測で得られることより、本来その振幅は同一となるはずである。また、校正波との比較においても校正波に含まれる該当波の振幅とも同一となるはずである。これより、前記1103と1104の重畳波の振幅が校正波の該当重畳波と概略等しくなる様な振幅補正処理を、受信波G(t)に対して行い、何らかの要因で生じる個々の受信波間での振幅のばらつきを補正する機能を考える。
具体的には、受信波をG(t)(j=1〜n)とし、校正波をGnA+1(t)とした時、t=0〜t(あらかじめセットされている又は外部から与えられる値)間でのG(t)波の最大振幅を各々A(j=1〜n)とし、GnA+1(t)波の最大振幅をAとした時、m、mを1.0〜1.2の範囲の係数として、
なる演算を行った後、下記数式25でGG(t)を算定し(j=1〜n)、
前記j=1〜nにおけるG(t)をGG(t)と置き換える受信波の振幅調整法である。
[第2] [F(f)の各スペクトルと校正波スペクトルとの振動数軸とで囲まれる面積を同一とする方法]
図18に校正波と受信波G(t)の1つであるG(t)波とのスペクトルの比較図を示す。
外部から指定される又はあらかじめ定められたf、fライン(縦線)とf軸(横軸)と、スペクトルで囲まれる面積を健全校正波のスペクトルの場合でA、受信波G(t)のスペクトルF(f)の場合でAとした時、受信波スペクトルF(f)のA値をARjとして求め、補正係数m、mを定義し、j=1〜nにおいて、下記数式26及び数式27を計算し、
前記j=1〜nにおけるF(f)をFF(f)と取り変える。
そして、変更されたF(f)を用いたフーリエの逆変換(数式19)で、各測点の新たなG(t)波(j=1〜n)を作成するという受信波の振幅調整である。
なお、m、mは1.0〜1.2の値である。受信波G(t)の振幅を縮小する時、割れ電柱を健全電柱と誤分析する危険性がある。m、mはこの危険性を極力小さくするための係数である。m、mの値を大きくすれば、この危険性が緩和される。
なお、以降の実施例では、前記第1、第2の2つの方法について示すが、第2の補正を行った後、第1の補正を連続的に行ってもよい。但し、重複した説明となる故、実施例では示さない。
以下受信波の振幅調整機能を校正波を健全柱受信波に選んだ場合で示した。説明を省略したが、この振幅調整機能は種々の要因で生ずる受信波の強弱を、割れの有無を分析する前に、補正するものである。
これより、校正波を割れ柱受信波に選ぼうと又は健全柱受信波に選ぼうと、いずれの場合にも適用できる。これより、この振幅調整を行った実施例は、校正波を健全柱校正波に選んだ実施例4のみで示し、説明が重複する故、実施例1〜3の校正波を割れ柱受信波に選んだ場合では説明を省略している。
[健全/割れ電柱評価用A曲線を用いた分析法]
多数の健全柱、及び多数の割れ摸擬電柱(割れ背8mm、15mm、30mm、40mm(貫通))を用いて、各路程毎に受信波(加算平均波)G(t)(k=1〜n)を収録し、受信波の振幅調整を前記[受信波の振幅調整]で説明した、
[第1] [受信波の起生時刻近傍の時系列を用いる方法]
[第2] [F(f)の各スペクトルと校正波スペクトルとの振動数軸とで囲まれる面積を同一とする方法]
のいずれかで行い、この振幅補正された受信波を新たなG(t)とする。そして、前記[割れ反射波の卓越する振動数]で記述された割れ反射波卓越振動数の平均値fD1=54KHzを中心振動数とする狭帯域成分波GA(t)のjをkと読み換えた数式20及び数式21で演算して得る図19の比較図(模式図)を用いてこの分析法を説明する。
但し、健全柱本数をnc1、割れ柱本数をnc2として、n=nc1+nc2としている。
図19の比較図は数式14で時刻t(路程lに対応する)を演算し、t=0で0.0、t=tで1.0、t=0〜t間を線形増加関数、t>tで1.0とする時系列関数FiLT(t)を用い、数式28の演算を行い、GB ns(t)を比較表示したものである。
各GB ns(t)で前記t以降の時刻で生じている波の振幅の最大値の分布状況を整理すると、図20の様な横軸を振幅値とする頻度分布を得ることができる。健全柱であれば左側に、割れ柱であれば右側に、その頻度が分布し、健全と割れの境界が線分231で示す振幅値A(l)として特定される。
図20の頻度分布図は路程(l=15cm、25cm、35cm、45cm、55cm)毎に求めることができ、各路程毎に健全柱とその路程での割れ柱を区分できる231線分(振幅値A(l)の値)を決定することができる。
図20の頻度分布図を具体的に求めた事例で再度説明する。図21は路程l=15cmで、健全柱計測受信波12本、割れ柱受信波20本(割れ背8mm4本、15mm4本、30mm4本、貫通40mm8本)の計32本を用いて頻度分布を作成したものである。
前記32本の受信波G(t)と前記校正波G(t)において、0〜t秒(t=106μ秒とした。)の間での最大振幅をG(t)波毎に求めAとし、G(t)波のそれをAとし、下記数式29、数式30を演算し、前記受信波G(t)をGG(t)と取替え、振幅調整のなされた新たな受信波G(t)を求める。
次に、前記[割れ反射波の卓越振動数fD1値の分布]で図13に示した共架柱割れ反射波の卓越振動数の平均値fD1=54KHzを中心振動数とする狭帯域スペクトルFA(f)をG(t)のフーリエの逆変換で得るスペクトルF(f)より、数式20でjをkに置き換えて求めた。
次に数式21でjをkに置き換えて、GA(t)を求めた。図19の路程lを15cm、柱軸方向縦波等価音速Vを3.0mm/μ秒として、数式14よりカーソル221の時刻tを計算し、
このt値で定義されるFiLT(t)を用いた数式28でn=5としてGB(t)を求め、t≧tの時刻領域におけるGB ns(t)の個々の波の振幅最大値を求め、図20に示す路程lに対応するGB ns(t)波(n=4)の振幅の頻度分布図を作成すると、図21を得ることができる。横軸は振幅をlog表示、縦軸が頻度である。A(15cm)=14.75とするカーソル241でl=15cm位置での健全柱と割れ摸擬電柱との振幅が明解に区分されている。なお、割れ背が15mm→30mm→40mmと大きくなるに従い、振幅が増大していく様子を確認できる。
しかしながら、図21を得た分析は割れ摸擬電柱20本、健全電柱12本と数が少ない。これより、架設された多数の共架柱で受信波G(t)を収録し、図21を得たのとまったく同様の分析を行い、図21の頻度分布にその分析結果を重畳したところ図22を得た。×印が架設健全柱のl=15cmでの分析結果であり、○印が架設電柱で路程l=15cmに割れのある場合の分析結果である。多数の健全柱と多数の割れ柱の振幅がA(15cm)で明解に区分されている。前記割れ柱は引き抜かれl=15cm位置の割れの存在が当然確認されている。
同様の分析をl=15cm以外のl=25cm、35cm、45cm、55cmで行い、図22と同様の各路程毎の頻度分布図(図示せず)を作成し、各路程毎の健全柱と割れ柱とを分離するA(l)値を求め、A(l)値の路程lに関する変化を検討することで、図23を得た。これより、前記l=15,25,35,45,55cmの図22に相当する頻度分析を得たのとまったく同一の分析を計測対象電柱の振幅調整された受信波G(t)に対して行い、j=1〜8(又は1〜6、又は1〜4)の分析波GB ns(t)のjのいずれかで、路程lに相当する下記数式32の時刻t秒以降で生ずる波の振幅が図23の横軸lをよぎる垂直線と、A(l)の路程lに関する変化曲線との交点の縦軸(波の振幅)の値(図23では13.8)より大きい時、割れ波形と認識し、小さい時割れ無し(健全)と認識する。実施例4に具体的分析例を示す。但し、実施例4では前記A(l)を用いた分析を十分な知識と経験のない測定者の誰でもが容易に誤計測することなく、分析可能となるように、基準線Aなる線分を定義して、前記分析法を発展させた手法を示している。
図9及び図10の円周上6点計測の受信波(測点1〜6)と貫通割れ(l=20cm)で得た受信波(測点7 以下、「割れ校正波」という。)とを比較表示した波より、前記図13のfD1の平均値54KHz前後で狭帯域成分波を抽出すると、分析結果として図16が得られ、カーソル100位置(路程15cm)より、電柱地中部割れ反射波が得られることを示した。
本分析は架設電柱(外径40cm)での受信波を用いて行っており、この分析結果より当該電柱の引き抜きを行ったところ、l=15cm位置に割れの存在が確認された。
以上よりこの計測分析法を更に、詳細に説明する。
電柱地中部の割れの探査において、割れがあったとしたとき、その位置(図9のl値)によっては図16の校正波の起生時刻及びその振幅を変更する必要がある。図16の分析はl=15cm位置に割れのある電柱故、l=20cm位置に割れのある校正波と受信波との対比を54KHz狭帯域成分波で行うことで測点2〜5に割れ反射波を視認できた。
しかしながら、若し、割れの位置lが45cm、55cmなどと深い場合、割れ反射波の振幅は前記l=15cm位置の割れ反射波振幅に比し小さくなり、前記l=20cm位置に割れのある校正波との対比では、l=45cmあるいは55cmの割れ波形振幅は極端に小さく表示され、割れ電柱と認識できなくなる。
これより、探査対象電柱の径Φ毎に、多数の電柱(n本)を用意し、探査可能な最小路程をlmin=15cmとし、この位置で電柱軸直角方向に貫通割れを模擬し、この探査路程での受信波群G(t)(m=1〜n)にfD1=54KHzを用いて、f=0で0.0、f=0〜2fD1でSin関数、f=fD1で1.0、f≧2fD1で0.0となる振動数関数A(f)を用いて、nを1以上の自然数、F(f)をG(t)に対応するスペクトルとして、
を計算し、GA(t)波のl=lmin=15cmの割れ波形振幅の比較検討で平均的な振幅値を持つGA(t)を特定し、この特定されたGA(t)をGw(t)(l=lmin)とし、l値を徐々に大きくした時(具体的には、l=15cm、25cm、35cm、45cm、55cmなど)、前記と同様の処理で得られる各路程毎のGw(t)をGw(t)と表現し、Gw(t)とGw(t)(l=lmin)との割れ反射波振幅比がCG(l)(路程lに関する減衰率)として図24に示すように特定することができた。
但し、図24はl=lmin=15cmの振幅を1.0に規律化して作成している。ところで、図示しないが、前記GA(t)波の作成を一般的なバンドパスフィルタ処理を用いて行っても、概略同一のGw(t)(l=lmin)及びCG(l)関数(図示せず)を得ることができる。
具体的分析法は、バンド幅2×Δfを所定値又は、外部から与える値とし、f=0〜(fD1−Δf)で0.0、f=(fD1−Δf)〜(fD1+Δf)で1.0、f>(fD1+Δf)で0.0となる。振動数関数AB(f)を定義し、前記のFA(f)及びGA(t)の算出を
に置き換えればよい。
min=15cmでの割れ校正波を用い、かつ前記図24の割れ校正波の減衰率を適用した分析法による割れ探査法に関して以下詳細に説明する。図26は実共架柱の探査結果の一例である。n=8とした8測点計測で、割れ校正波が最右に示されている。
図26は以下の≪1≫≪2≫の連続した処理で得たものである。
≪1≫ 図9及び10の8測点計測で受信波G(t)(j=1〜8)を収録した一例を図25に示す。j=n+1=9は割れ校正波であり、G(t)=Gw(t)(l=lmin)としている。
収録条件:G(t)はn=300の加算平均波
θ=45°の超音波斜入力治具使用
a=160mm
探触子振動子径40mm
≪2≫ 図26は図25のG(t)(j=1〜9)波を分析してカーソル位置(l=15cm)で、測点2,3に割れ有りとする結果を示している。具体的には図13に示した割れ反射波の平均的な卓越振動数fD1(分析では54KHzを用いた。)で狭帯域スペクトルFA(f)を数式20を用いて抽出し、対応するGA(t)波をフーリエの逆変換により数式21で求め、
GB(t)を下記数式37で計算し、GB ns(t)を割れ校正波GB ns(t)の最大振幅を表示領域に最大表示して比較表示している。なお数式37の右辺の時系列関数FiLT(t)をt=0で0.0、t=0〜tで線形増加関数、t≧tで1.0と定義している。
図26を計測者(オペレータ)が視認しながら、計測者の指示でカーソル251をt=0から徐々に時刻軸(縦軸)後方へ移動していった時t=162μ秒で、測点2,3に割れ反射波が出現している。同図の校正波は前記図24の割れ校正波の減衰率を得た時のl=15cm貫通割れの反射成分波(割れ校正波)である。この校正波の振幅を表示領域に最大表示したときの比較図が図26として求められたわけである。
なお、前記54KHz狭帯域波の抽出の具体的処理はfD1=54KHzとしてf=0〜2fD1間をSin関数、但し、f=fD1で1.0及びf≧2fD1で0.0とするフィルタ関数A(f)を用いて数式20で演算している。
なお図26の成分波比較は前記n、n、nの値をn=5、n=5、n=4として行った。実施例として示さないが前記狭帯域成分波の抽出を数式20を用いるのではなく、バンドパスなる一般的抽出法(数式22)で行っても、精度が若干劣るが図26と略同一の分析結果を得ることができる。
数式22はf<(fD1−Δf)で0.0、f=(fD1−Δf)〜(fD1+Δf)で1.0、f>(fD1+Δf)で0.0なる周波数関数AB(f)を用いて
と定義される。
実施例1は架設された実共架柱(径40cm)の路程15cm位置に割れ有りとする測点数nを8とする分析結果である。引き抜いた所、路程15cm位置に割れの存在が確認された。浅い路程に割れのある分析結果である。これより路程の長い、地中部深い位置に割れのある電柱の場合の実施例を以下に詳述する。
図27は図26を得たのとまったく同一の分析処理の結果である。実施例1の≪1≫≪2≫の処理が成されたものである。カーソルが106μ秒(l=15cm路程位置)にセットされている。割れ反射波の起生は確認できない。
カーソル251を時刻軸後方へ移動させる経緯の中で、その移動の都度数式37が適用され新たなGB(t)が求められ図27の波の起生状況が変化していく。図28は計測者(オペレータ)が、カーソル251の位置を時刻軸237μ秒(l=35cm路程位置)に移動した時のものである。
図27と図28の分析波の比較において、図28の割れ校正波起生時刻がカーソル移動に伴い、カーソル位置と一致して移動している様子に注目してほしい。図27の校正波は路程l=15cmの貫通割れ反射波であることを実施例1で前記した。図28の校正波は、この図28の校正波をカーソル251の時刻軸後方への移動に連動して移動させている。そして、実施例1で説明した路程lにともない、割れ校正波の振幅減衰率表(図24)より前記251カーソルの位置(l)に相当するCG(l)値(減衰率)をカーソル移動の都度、読み取り、この読み取り値をカーソル位置にその起生時刻を移動させたl=lmin=15cm割れ校正波に乗じるという演算を数式38乃至数式40を用いて行っている。
換言すれば図24の割れ校正波の振幅減衰率CG(l)を用いて、GAnA+1(t)の校正波を変更演算(起生時刻、振幅の変更)するために、数式38と数式39と数式40の演算を行い、前記校正波GAnA+1(t)をGAB(t)と置き換える。
これより、カーソル251を時刻軸後方(t=t)へ移動する毎に変更されるGAnA+1(t)を含むGA(t)(j=1〜n+1)をt=t毎に定義されるFiLT(t)を用いた数式37(実施例1<<2>>参照。)の演算に適用し、GB(t)を求めGB ns(t)の比較表示において、GBnA+1 ns(t)を表示領域に最大表示する形で示した一例が図28というわけである。
なお、数式38乃至数式40におけるカーソル251のt値とl値との関係は数式14で示される(ここで、aは発信探触子治具と受信探触子治具の電柱円周上中心間距離(mm)、Vは電柱柱軸方向等価縦波音速(mm/μ秒))。
この様な処理で路程lの長い位置にある割れの有無の探査も可能となる。本計測例(図28)ではl=35cm深さに割れがあると確認できる。なお、前述説明によれば、図28のl=35cm割れ校正波の振幅はl=15cm校正波振幅に図24の路程l=35cmの減衰率0.594を乗じ作成されていることになる。
本分析で用いられた他の係数はn=5、n=5、n=4である。ところで、図27、図28のGB ns(t)比較表示で各波の時刻軸に平行に110、120に示す線分が表示されている。110と120の線分の直中が時刻軸である。この110,120の線分表示の意味するところを説明しておく。
分析波GB ns(t)がこの110、120の線と交差した時には割れ有り、交差しない時には割れ無しとする評価線分である。200本以上の共架柱計測分析結果と電柱引き抜きによる割れ有り/無しの目視結果との対比で110と120の線分の間隔を波の表示領域252の1/10と特定している。
実施例1、2の共架柱は分析結果で地中部に割れがある場合であった。
割れのない健全電柱の場合の分析事例を実施例3(測点n=8)として示す。
図29は計測分析後引き抜かれて割れなしと目視された電柱の分析結果の1つである。
実施例1、2とまったく同一の分析がなされている。図29でカーソル251を実施例1と同じt=106μ秒位置において、GB ns(t)(j=1〜8受信波、j=9割れ校正波、n=4)を比較表示している。
実施例2で示した割れ/健全評価線110,120と交差する波がGB ns(t)(j=1〜8、n=4)のいずれでも生じていない。l=15cm路程付近に割れがないことを示している。実施例2にならって、数式38と数式39と数式40の演算を行うことで、l=15cm割れ校正波の起生時刻を時刻後方へ移動した251カーソル位置に変更すると共に図24の路程lに関する減衰率CG(l)でその振幅を縮小して比較表示している。
カーソル251を時刻軸後方へ移動させる処理を106μ秒から800μ秒まで行っても、いずれの路程でも、割れ波形の出現を確認できない。図30にt=369μ秒(路程l=55cm、数式14で計算)の分析結果を示す。割れ波形の出現はなく健全電柱と評価される。
[分析法]
実施例1〜3は受信波G(t)(j=1〜n)と割れ校正波GAnA+1(t)より、割れ反射波のfD1値で、数式20又は数式22を用い、狭帯域スペクトルFA(f)(j=1〜n+1)を抽出した後、数式21でGA(t)を求め(狭帯域成分波を抽出し)、各路程l毎に得るFiLT(t)関数を用いた数式28でkをjに置き換えて計算されるGB ns(t)(j=1〜n、n=4又は6又は8)波とその路程に対応する割れ校正波GB ns(t)(j=n+1)波との対比で電柱地中部割れの有無の探査を行うものであった。
この方法における問題点は再述すれば、校正波が貫通割れの反射波により評価された振幅の大きい波であることより、割れ背の小さい時(例えば10mm)、割れ柱を健全柱と誤計測する場合があることである。
本実施例は、前記[健全/割れ電柱評価用A(l)曲線を用いた分析法]によるものである。
<第4の実施例で行われる1番目の処理>
図31は図9及び図10の計測で得た受信波(j=1〜4)と[健全/割れ電柱評価用A(l)曲線を用いた分析法]で述べた健全校正波G(t)をG(t)として、比較表示したものである。G(t)〜G(t)受信波の振幅がG(t)のそれに比し大きい場合の事例である。
前記[健全/割れ電柱評価用A(l)曲線を用いた分析法]で説明した2つの受信波振幅補正機能の1つであるG(t)(j=1〜5)の各スペクトルと振動数軸(f軸(よこ)、f軸(たて)、f軸(たて))で囲まれる面積を同一とする補正法による処理をG(t)波に加えると、G(t)波の振幅及び時間軸における減衰状況が概略同一となる振幅補正された受信波を校正波との対比で図32に示すように得ることができる。
具体的には、前記[受信波の振幅調整]の[第2][F(f)の各スペクトルと校正波スペクトルとの振動数軸とで囲まれる面積を同一とする方法]で説明しているが、再掲すれば、健全校正波スペクトルF(f)(図31のG(t)に対応するスペクトル)と受信波スペクトルF(f)〜F(f)(図31のG(t)〜G(t)に対応するスペクトル)とで、図16に示すf軸(横軸),f及びf軸(縦線)、当該スペクトルで囲まれる面積を各々積分計算し、
健全校正波スペクトルの場合でA
受信波スペクトルの場合でARj(j=1〜4)を求め、数式26,27を用いて、FF(f)を求め、
ここで、m、mはあらかじめセットされた又は外部から与えられる値である。
前記F(f)をFF(f)と取替え、変更されたF(f)を用いたフーリエの逆変換(数式19)で、各測点の新たなG(t)波を作成して図32の振幅補正された受信波G(t)の比較図を得ている。なお、前記振幅補正を前記[受信波の振幅調整]の[第1][受信波の起生時刻近傍の時系列を用いる方法]でおこなってもよい(図示せず)。
また、より振幅補正の精度を向上させるために、前記[第2]の振幅補正後、[第1]の振幅補正処理を続けて行なっても良い(図示せず)。
<第4の実施例で行われる2番目の処理>
前記[割れ反射波の卓越する振動数]及び[割れ反射波の卓越振動数fD1値の分布]の図13で、図9及び図10の共架電柱地中部探査計測で得る受信波に含まれる割れ反射波の平均的卓越振動数fD1が54KHzであることを示した。前記振幅補正されたG(t)波(j=1〜n+1)の一例を用いて前記[貫通割れ反射波との対比による分析法]で定義した周波数関数A(f)を含む数式20を用いて、fD1=54KHzを中心周波数とする狭帯域スペクトルFA(f)を求め、数式21を用いて対応する狭帯域成分波GA(t)を求める。
<第4の実施例で行われる3番目の処理>
[健全/割れ電柱評価用A(l)曲線を用いた分析法]で、数式28のkをjに置き換えた演算で得るGB(t)波(j=1〜n+1)において、数式28のFiLT(t)関数を定義する時刻t毎のGB(t)波のt時刻以降での最大振幅を図23のA(l)値の路程lによる変化曲線と対比して、t時刻に対応する路程lを数式14を用いて計算し、l位置の262ライン(図23参照)上で、このt時刻以降での最大振幅がA(l)値を超えると割れがあり、超えないと健全であるとの判断が行えることを前記した。
この判断を十分な知識と経験の無い計測者が誰でも、容易に行える分析手段とオペレーションを、前記GB(t)(j=1〜8受信波、j=9健全校正波)をGBns(t)表示した1つの分析例である図33(n=4)の表示画面を視認しながら行えるようにしている。
なお、前記tとlとの関係を再掲すれば、aを電柱円周上での一対の探触子治具の中心間距離、Vを電柱柱軸方向での等価縦波音速として数式14で示される。
図33は測点2,3で路程15cmに割れの有る電柱のブラインド分析結果である。分析波GB ns(t)(j=1〜8)の各々に時刻軸と平行な321、322の線分を表示している。321と322線分の真中が時刻軸である。この線分の意味するところをまず説明する。
図23の路程lによるA(l)値の変化曲線をGB ns(t)の時刻軸上で離散的に表現すれば図34の(a)の様になる。
図34(a)で各路程のA(l)値が点線で時刻軸に平行に描かれている。前記GA(t)をGA ns(t)でこの上に重ね描きし、各路程lでGA ns(t)の波がこのA(l)値を示す点線をよぎればその路程に割れがあるわけだが、このような比較表示では例えば、l=lmin=15cmとl=55cmとのA値に大きな差があることより、視認結果として割れの有無を判断するのが現実的に難しい。これより、これ等各路程のA(l)値を路程l=15cmのA値を基準値とする基準化表示(321、322線分の幅をC15とする)を行い図34(b)のように、このA値ラインを時間軸に平行な321、322の直線ラインとすることを考える。なお、この321、322ラインを基準線Aと名付ける。
基準線Aと重ね描きするGB ns(t)との関連について以降説明する。
図35は前記t値で定義されるFiLT(t)を用いて、数式26のkをjに置き換えた数式で算定されるGB(t)と、表示係数C15を用いて数式41で算定されるGC(t)を示したものである。
15は図33の波の表示領域を1.0と規準化した時、l=15cmのA(l)値をさらに規準化して1.0とした後、この表示を表示領域(1.0)の何%とするかを外部から指示(0≦C15≦0.5)している。図33のGB ns(t)(j=1〜9)の表示ではC15を表示領域幅の20%としている。
オペレータの指示でtを序々に時刻軸後方へ図35の(a)→(b)→(c)の如く移動していった時、得られるGC(t)の1つの測点(j=j)での変化の様子を(a)t小、(b)t中、(c)t大で示している。
図35のGC(t)波の模式図によれば、(a)図のt値が小さい場合及び(b)図のt値が中程度の場合、出現する波の振幅が基準線Aの幅を下回っており、この路程には割れがないと判断する。(c)図のt値が大きい場合、出現する波の振幅が基準線の幅を越えている。この路程に割れがあると判断する。
以上、t値を時刻軸後方へ移動するオペレーションの経緯の中で、起生波が基準線Aの幅を下回るか、基準線Aの321、322線分のいずれかと交差するかを視認することで電柱地中部の割れの有無を探査できる。
[分析事例]
図36〜図38は、引き抜き目視の結果、測点2〜3に微細な斜め割れが確認された共架柱のブラインド分析結果である。
<第1の分析処理>
前記[分析法]で説明した分析法を振幅調整の方法を除いてそのまま適用している。8測点計測でG(t)波をn=300回の加算平均波として求め、受信波の振幅調整を前記[分析法]の<第4の実施例で行われる1番目の処理>で述べたスペクトル面積を健全校正波(G(t))と受信波G(t)(j=1〜8)とで同一とする方法によらず、[受信波の振幅調整]の<1>に示す受信波の早い時刻での最大振幅を校正波G(t)と受信波G(t)(j=1〜8)とで同一とする方法を採用した。
具体的には受信波G(t)(j=1〜8)及び健全校正波G(t)において、t=0〜tμ秒の間の最大振幅をそれぞれA(j=1〜8)、Aとし、
なる演算を行った後、GG(t)を下記25式で演算し、
前記G(t)(j=1〜9)をGG(t)(j=1〜9)と取り替える受信波の振幅調整を第1の処理として行った。なお前記tは106μ秒とした。またm=1.0、m=1.0とした。図25に示す超音波入力点と地盤面までの間に割れがないと視認した上で、その距離l(本計測例ではl=156mm)と柱軸方向縦波音速V(=3000m/秒)より数式42で算定している。
<第2の分析処理>
前記振幅調整したG(t)波(j=1〜8受信波、j=9健全校正波)に対応するスペクトルF(f)をフーリエ変換で求め、fD1=54KHzを中心周波数とする狭帯域スペクトルを前記周波数関数A(f)を用いて数式20により、FA(f)を求める(j=1〜9)。ここで係数nの値を5とした。
前記[分析法]の<第4の実施例で行われる3番目の処理>で説明した分析法による、引き抜きで割れが視認された電柱での分析結果を図36〜図38に示す。
具体的には[健全/割れ電柱評価用A(l)曲線を用いた分析法]で説明した、オペレータの指示によるカーソル311の時刻tで定義されるFiLT(t)関数を用いて数式28のkをjと置き換えた計算
でGB(t)を求める処理を行う時、オペレータが、t=171μ秒(l=25cm)としたとき数式41で算定されたGC(t)波を比較表示したものが図36である。前記GB(t)は、n=5として算定されている。重複した説明になるが、図35に示す割れ/健全判定用A(l)値を基準化表示した基準線Aと、n=4として数式41で算定されるGC(t)とが重ね描きされている。
図36では測点2でl=25cm位置に基準線Aと交差する波の起生を確認できる。この位置に割れがあると判断する。
図37は図36の311カーソル(t及びl値)をオペレータがさらに下側(時刻軸後方)へ移動していった時、l=35cmで生じた波である。図36と図37との対比で、この電柱は測点2〜4に斜め割れが生じていると判断できる。
図38はカーソル311を更に時刻軸後方(l=65cm)へ移動した時の波の起生である。測点1のt値(カーソル311)より後方の路程位置に割れ波形が生じている。
以上、割れ/健全評価用基準線Aを用いて、割れ電柱の分析結果を示した。
最後に健全電柱の場合、どの様な分析結果になるかを説明する。
図39〜図40は健全柱の分析結果である。
割れ柱分析結果図36〜図38を得たのとまったく同一の分析を8測点受信波で行っている。図39はカーソル311位置をt=106μ秒(l=15cm)とした時の分析結果である。基準線Aと交差する波は生じていない、オペレーション処理でカーソル311を時刻軸後方へ移動していっても、波の起生を確認できない。誰がオペレーションしても、健全柱と容易に判断できる。
分析事例の1つをl=55cmの場合で、図40に示す。
以上、実施例1〜3の割れ校正波を用いた割れ探査法及び実施例4の健全校正波を用いた割れ探査法は、コンクリート電柱地中部割れ探査のみならず、一般的コンクリート構造物の内部探査(内部割れ、ジャンカ、版厚など)にも適用できる。斜角治具を使用せず、直接、探触子をコンクリート表面に接触する計測で、G(t)波を収録し、実施例1〜3又は実施例4に示す方法で分析すればよい。
またこの発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
従来の中空電柱の探査説明図。 電柱特有の超音波伝達状況説明図。 探知反射波説明図。 本発明の超音波探査装置のブロック図。 発信探触子の説明図。 発信探触子のステップ型電圧発生器の説明図。 受信探触子の説明図。 広帯域超音波の説明図。 本発明の中空電柱の探査説明図。 本発明の測定方法説明図。 l=20cmのときの受信波G(t)とスペクトルF(f)の波形図。 l=20cmのときのGA(t)とFA(f)の波形図。 割れ電柱の探査振動数fD1の頻度分布図。 l=15cmのときの電柱受信波図。 図14からl>15cmの波を切り出し、スペクトルを比較表示した図。 各測点での受信波の分析比較図。 受信波の模式図。 校正波と受信波GA(t)とのスペクトル比較図。 本発明の分析法の説明図。 振幅値A(l)の説明図。 (15cm)のときのGB (t)の振幅分布図。 図21に更に多くの分析結果を重畳した図。 (l)値の路程lに関する変化表示図。 割れ校正波の振幅減衰率表。 8測点計測で収録された受信波G(t)を示す図。 図25のG(t)波を実施例1で分析した図。 地中部深い位置に割れのある電柱の場合の受信波G(t)を示す図。 カーソル251をl=35cmに移動したときの表示図。 割れがない電柱の場合の受信波G(t)を示す図。 カーソル251をl=55cmに移動したときの表示図。 受信波G(t)〜G(t)と健全校正波G(t)の比較表示図。 振幅補正された受信波と校正波との対比表示図。 測点2,3でl=15cmに割れのある分析結果図。 各路程毎A(l)値の時間軸上基準化表示図。 GB(t)とGC(t)の表示図。 l=25cmとしたときのGC(t)の比較表示図。 図36のカーソル311をl=35cmにしたときの表示図。 図36のカーソル311をl=65cmにしたときの表示図。 健全柱の分析結果図(l=15cm)。 健全柱の分析結果図(l=55cm)。
11,111…発信探触子
12,112…受信探触子
30…被探知体
14,116…電柱
15,115…割れ
251,311…カーソル
A,110,120,321,322…基準線

Claims (3)

  1. 中空部を有するコンクリート電柱の地中部割れ探査を行うに当って、地中部より電柱軸斜方向に斜角治具を具備した発信探触子から広帯域超音波を発信させ、前記斜角治具と同一形状の治具を具備する受信探触子で広帯域受信波を収録し、該受信波を自動分析することでコンクリート電柱地中部の割れの探査を行う超音波探査方法であって、
    電柱軸と直交する電柱円周上に前記探触子を具備した一対の斜角治具をその中心間距離をaとして配置し、測定点を前記中心間距離の中点と定義する計測で前記測定点を円周方向へ順次移動し、全測点数をnとして下記数式1を満足させて各測点jで広帯域受信波を受信するとき、

    広帯域超音波を各測点での計測でn回発信し、該発信の都度、広帯域受信波Gjk(t)を受信して、下記数式13で以降の分析処理で用いる受信波G(t)(j=1〜n)波を求めて定義する第1の処理工程と、
    あらかじめ前記G(t)(j=1〜n)を得たと同一外径Φの電柱に対応する割れ校正波Gw(t)をGnA+1(t)として用意し、以降の分析で用いるG(t)をj=1〜n+1とする第2の処理工程と、
    前記G(t)(j=1〜n+1)の各測点jでの振幅の差を補正する第3の処理工程と、
    該補正されたG(t)のフーリエ変換で得るスペクトルをF(f)として、前記計測対象電柱の外径Φに基づいて、あらかじめセットされているか又は外部から与えられて決まるfD1値を用い、fD1値を中心振動数として狭帯域波を抽出するためのフィルタ処理により挟帯域スペクトルFA(f)(j=1〜n+1)を求め対応する時系列GA(t)(j=1〜n+1)をフーリエの逆変換で求め、割れの有無を確認したい路程lを外部から与える都度、下記数式3でt値を計算する第4の処理工程と、
    あらかじめ第2の処理工程で準備されている又は外部から与えられ探査対象電柱の外径Φに対応し、路程lminでの割れ反射波の振幅値に対する路程lでの割れ反射波の振幅値の比である振幅減衰率CG(l)関数(l=lminで1.0)を用いて、l=lminとしたときのtmin値、及び、路程lとしたときのt値として、下記数式43、44、45により修正されたGAnA+1(t)を用いて新たな分析用GA(t)(j=1〜n+1)を求める第5の処理工程と、
    t=で0.0、t≧tで1.0であり、t=0〜t間を線形増加する関数をt=t毎にFiLT(t)と定義し、振幅を顕著化するためのnを1以上の自然数として下記数式4でGB(t)(j=1〜n+1)を求める第6の処理工程とを備え、
    振幅を顕著化するためのnを1以上の自然数としてGBnA+1 nS(t)を時刻軸を中心に表示画面に最大表示し、且つGB nS(t)(j=1〜n)を比較表示し、あらかじめ指示され時刻軸に平行で該時刻軸を中心とする2本の評価線分と前記GB nS(t)の波とが交差するとき、その測定点jでt値に対応する路程l以降に割れがあると判断し、それらが交差しないとき、路程lに割れが無いと判断し、
    前記l値をlminから徐々に大きくして前記GB nS(t)の比較表示を行うことで、割れの有無、並びに、割れまでの路程lを計測することができる
    コンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法。
  2. 中空部を有するコンクリート電柱の地中部割れ探査を行うに当って、地中部より電柱軸斜方向に斜角治具を具備した発信探触子から広帯域超音波を発信させ、前記斜角治具と同一形状の治具を具備する受信探触子で広帯域受信波を収録し、該受信波を自動分析することでコンクリート電柱地中部の割れの探査を行う超音波探査方法であって、
    電柱軸と直交する電柱円周上に前記探触子を具備した一対の斜角治具をその中心間距離をaとして配置し、測定点を前記中心間距離の中点と定義する計測で前記測定点を円周方向へ順次移動し、全測点数をnとして下記数式1を満足させて各測点jで広帯域受信波を受信するとき、
    広帯域超音波を各測点での計測でn回発信し、該発信の都度、広帯域受信波Gjk(t)を受信して、下記数式13で以降の分析処理で用いる受信波G(t)(j=1〜n)波を求めて定義する第1の処理工程と、
    前記G(t)(j=1〜n)を得たと同一外径Φの健全電柱からの多数の健全柱受信波を用いた健全校正波GnA+1(t)として用意し、以降の分析で用いるG(t)をj=1〜n+1とする第2の処理工程と、
    前記G(t)(j=1〜n+1)の各測点jでの振幅の差を補正する第3の処理工程と、
    該補正されたG(t)のフーリエ変換で得るスペクトルをF(f)として、前記計測対象電柱の外径Φに基づいて、あらかじめセットされているか又は外部から与えられて決まるfD1値を用い、fD1値を中心振動数として狭帯域波を抽出するためのフィルタ処理により挟帯域スペクトルFA(f)(j=1〜n+1)を求め対応する時系列GA(t)(j=1〜n+1)をフーリエの逆変換で求め、割れの有無を確認したい路程lを外部から与える都度、下記数式3でt値を計算する第4の処理工程と、
    t=で0.0、t≧tで1.0であり、t=0〜t間を線形増加する関数をFiLT(t)と定義し、振幅を顕著化するためのnを1以上の自然数として下記数式4でGB(t)(j=1〜n+1)を求める第5の処理工程とを備え、
    振幅を顕著化するためのnを1以上の自然数としてGB nS(t)(j=1〜n+1)を比較検討するとき、j=1〜n毎に表示される時刻軸を中心として、その幅C15が波の最大表示幅の0〜50%の範囲であらかじめ指定された時刻軸に平行な左右の基準線と電柱外周径Φ毎に準備されている所定のA(l)、及び、A(lmin)を用いて下記数式5の計算で算出し得るGC(t)(j=1〜n+1)とを重ねて表示し、前記基準線と前記GC(t)(j=1〜n+1)が交差するとき、その交差位置の路程に割れがあると判断し、それらが交差しないとき、路程lには割れが無いと判断する処理を、探査路程lを変化させる都度繰り返し行い、割れの有無、並びに、割れまでの路程lを計測することができる
    コンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法。
  3. 前記電柱外周径Φ毎に準備されている所定のA(l)及びA(lmin)は、同一径の多数の健全柱(nc1本)、及び路程lに割れのある多数の電柱(nc2本)において、前記第1から第5の処理工程を連続して行い得られた多数のGB nS(t)(j=1〜(nc1+nc2))を用いて、GB nS(t)波の路程lでの最大振幅値の頻度分布を横軸を振幅として求め、割れ柱と健全柱を区分する前記最大振幅値の境界をA値として特定する処理を前記路程l毎に行い、得られる各A値をA(l)と表現し、特にl値が探査最小路程lminのときA(lmin)とする処理で、電柱外周径Φ毎に前記A(l)、A(lmin)を準備する
    請求項2に記載のコンクリート電柱地中部の広帯域超音波探査方法。
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