このような管体の寸法測定装置として、図6に示すような管体の寸法測定装置(以下、「第1の管体の寸法測定装置」という。)が知られている(特許文献1参照)。図6は、第1の管体の寸法測定装置が備える回転ヘッド201、及び、第1の管体の寸法測定装置によって寸法が測定される管体100の断面図である。図6(a)は、回転ヘッド201と管体100とが離間している状態を示し、図6(b)は、回転ヘッド201の接触子203bが管体100の内側空間に挿入されている状態を示す。図6(a)に示すように、回転ヘッド201は、基台202と、2つの接触子203a、203bと、2つの押圧手段204a、204bとを備える。基台202は、水平方向と略平行な回転中心P12周りに回転可能とされている。基台202の管体100側の側面には、押圧手段204a、204bが、基台202の回転中心P12と直交する方向に沿って取り付けられている。接触子203aは、押圧手段204aの回転中心P12に向かう側に取り付けられ、基台202の回転中心P12に対して進退動可能であり、接触子203bは、押圧手段204bの回転中心P12から遠ざかる側に取り付けられ、基台202の回転中心P12に対して進退動可能になっている。尚、基台202の回転中心P12に対して進退動可能とは、該回転中心P12に向けて進行すること、及び、該回転中心P12から遠ざかる向きに進行する(退行する)ことが可能であることを意味する。
第1の管体の寸法測定装置を用いて、管体100の寸法を測定する場合、まず、図6(a)に示すように、管体100の軸心P11と基台202の回転中心P12とを一致させる。次に、接触子203aと接触子203bとの間隔を管体100の肉厚より大きくする。そして、軸心P11に沿って回転ヘッド201を移動させ、図6(b)に示すように、接触子203bを管体100の内側空間に挿入し、接触子203aと接触子203bとの間に管体100を位置させる。次に、押圧手段204aによって、接触子203aを基台202の回転中心P12(管体100の軸心P11)に向けて進行させ、該接触子203aを管体100の外周面101に所定の荷重で押圧する。これと同時に、押圧手段204bによって、接触子203bを基台202の回転中心P12(管体100の軸心P11)から退行させ、該接触子203bを管体100の内周面102に所定の荷重で押圧する。
次に、基台202を回転中心P12周りに回転させる。基台202が回転すると、接触子203aが外周面101を周方向に摺動し、接触子203bが内周面102を周方向に摺動する。接触子203aが外周面101を摺動すると、接触子203aの進退動可能な方向における該接触子203aの位置が外周面101の形状に応じて変動する。同様に、接触子203bが内周面102を摺動すると、接触子203bの進退動可能な方向における該接触子203bの位置が内周面102の形状に応じて変動する。
第1の管体の寸法測定装置は、各接触子203a、203bの進退動可能な方向における各接触子203a、203bの位置に基づいて、管体100の外径や内径などの管体100の寸法を算出する。
第1の管体の寸法測定装置を用いて、管体100の寸法を測定するには、図6(b)に示すように、軸心P11に沿って回転ヘッド201を移動させ、接触子203bを管体100の内側空間に挿入する必要がある。上述のように、接触子203bが、押圧手段204bの回転中心P12から遠ざかる側に取り付けられている。このため、内側空間が、軸心P11に沿って回転ヘッド201を移動させたときに、接触子203bと押圧手段204bとの両方を挿入できる大きさを有さなければ、接触子203bを内側空間に挿入することができない。従って、第1の管体の寸法測定装置は、接触子203bと押圧手段204bとの両方を内側空間に挿入できない内径の小さな管体100については、接触子203bを内側空間に挿入できないため、寸法を測定することができない。
このような問題を解決するための管体の寸法測定装置として、以下に説明する管体の寸法測定装置(以下、「第2の管体の寸法測定装置」という。)が考えられる。図7は、第2の管体の寸法測定装置が備える回転ヘッド201、及び、第2の管体の寸法測定装置によって寸法が測定される管体100の断面図である。図7に示すように、第2の管体の寸法測定装置の回転ヘッド201は、2つの接触体205a、205bを備えている。各接触体205a、205bは、接触子203a、203bと、台座206a、206bと、アーム207a、207bとを備える。台座206a、206bは、基台202の回転中心P12に対して進退動可能に基台202に取り付けられ、該進退動は、押圧手段204a、204bによって行われる。アーム207a、207bは、台座206a、206bから管体100側に延び、先端部に接触子203a、203bが取り付けられている。各接触体205a、205bにおいて、接触子203a、203b、台座206a、206b、及び、アーム207a、207bはそれぞれ一体的に進退動するように構成されている。
第2の管体の寸法測定装置を用いて、管体100の寸法を測定する場合、第1の管体の寸法測定装置で管体100の寸法を測定する場合と同様にして、管体100の軸心P11と基台202の回転中心P12とを一致させ、接触子203aと接触子203bとの間に管体100を位置させる。次に、押圧手段204aによって、台座206aを基台202の回転中心P12(管体100の軸心P11)に向けて進行させ、接触子203aが外周面101に接触した状態で、台座206aを基台202の回転中心P12に向けて所定の荷重で押圧する。これと同時に、押圧手段204bによって、台座206bを基台202の回転中心P12(管体100の軸心P11)から退行させ、接触子203bが内周面102に接触した状態で、台座206bを基台202の回転中心P12から退行する向きに所定の荷重で押圧する。これにより、接触子203aが管体100の外周面101に所定の荷重で押圧され、接触子203bが管体100の内周面102に所定の荷重で押圧される。
次に、基台202を回転中心P12周りに回転させる。これにより、接触子203aが外周面101を周方向に摺動し、接触子203bが内周面102を周方向に摺動する。接触子203aが外周面101を摺動すると、台座206aの進退動可能な方向における接触子203aの位置が外周面101の形状に応じて変動する。同様に、接触子203bが内周面102を摺動すると、台座206bの進退動可能な方向における接触子203bの位置が内周面102の形状に応じて変動する。接触子203aと台座206aとは、一体的に進退動するため、台座206aの進退動可能な方向における該台座206aの位置(以下、適宜「台座206aの位置」という。)は、外周面101の形状に応じて変動する。また、接触子203bと台座206bとは、一体的に進退動するため、台座206bの進退動可能な方向における該台座206bの位置(以下、適宜「台座206bの位置」という。)は、内周面102の形状に応じて変動する。第2の管体の寸法測定装置は、接触子203a、203bが外周面101及び内周面102を摺動しているときの各台座206a、206bの位置に基づいて、管体100の寸法を算出する。
前述の構成を有する第2の管体の寸法測定装置においては、図7に示すように、接触子203a、203bが、管体100側に延びるアーム207a、207bの先端部に取り付けられている。このため、軸心P11に沿って回転ヘッド201を移動させると、管体100の内側空間に押圧手段204bを挿入することなく、接触子203bを挿入することができる。このため、第2の管体の寸法測定装置は、第1の管体の寸法測定装置と異なり、内径が小さな管体100であっても、寸法を測定することができるという利点がある。しかし、近年、管体の寸法測定装置に要求される測定精度は高まっており、このことに鑑みれば、第2の管体の寸法測定装置の測定精度は、必ずしも充分でない場合があると考えられる。
本発明は、内径が小さな管体にも適用でき、且つ、より一層精度良く寸法を測定することができる管体の寸法測定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するべく、本発明の発明者は鋭意検討した結果、第2の管体の寸法測定装置の接触子203a、203bが外周面101及び内周面102を摺動しているとき(以下、適宜「摺動時」という。)には、各アーム部207a、207bが各台座206a、206bの進退動可能な方向に撓み、各台座206a、206bの位置が、該撓みの影響を受けることを見出した。
図8に示すように、摺動時においては、各アーム207a、207bの先端部は、各接触子203a、203bを介して管体100と接触している。一方、各アーム207a、207bの基端部(台座206a、206b側の端部)は、進退動可能な各台座206a、206bに取り付けられている。このため、図8に示すように、摺動時においては、各アーム207a、207bは、各台座206a、206bの進退動可能な方向に撓む。
このようなアーム207aの撓み量は、押圧手段204aが台座206aを押圧する荷重Fと、接触体205aに作用する重力のうち台座206aの進退動可能な方向の成分W’(以下、適宜「重力成分W’」という。)とを合成した合成力(以下、適宜「荷重Fと重力成分W’との合成力」という。)に応じて変動する。
図9は、荷重Fと重力成分W’との合成力を示す図である。上述のように、押圧手段204aが台座206aを押圧する荷重Fの向きは、基台202の回転中心P12に向けて進行する向きであり、該荷重Fの大きさは、略一定である(図9(a)及び図9(b)参照)。
一方、重力成分W’の向きは、図9(a)に示すように、台座206aが管体100の軸心P11より鉛直方向下方に位置しているときは、管体100の軸心P11から退行する向きとなる。また、図9(b)に示すように、台座206aが管体100の軸心P11より鉛直方向上方に位置しているときは、管体100の軸心P11に向けて進行する向きとなる。更に、重力成分W’の大きさは、接触体205aに作用する重力をWとし、管体100の軸心P11と台座206aとを結ぶ直線L11が水平方向と成す鋭角の角度をθ2とすると、Wsinθ2となる。
以上のことから、台座206aが管体100の軸心P11より鉛直方向下方に位置しているときは、荷重Fと重力成分W’との合成力の大きさは、(F−Wsinθ2)となる。また、台座206aが管体100の軸心P11より鉛直方向上方に位置しているときは、荷重Fと重力成分W’との合成力の大きさは、(F+Wsinθ2)となる。
このため、荷重Fと重力成分W’との合成力は、台座206aが外周面101の最も鉛直方向上方の部位に近づけば近づくほど、基台202の回転中心P2に向けて進行する向きに大きくなる。このように管体100の周方向における台座206aの位置に応じて、荷重Fと重力成分W’との合成力が変動するために、摺動時には、アーム207aの撓み量が変動する。
以上のように、台座206aの位置はアーム207aの撓みの影響を受け、該アーム207aの撓み量は摺動時に変動するため、例えば、断面が完全に真円の管体の外周面に接触子203aを摺動させた場合であっても、台座206aの位置の軌跡は真円にはならない。このため、台座206aの位置に基づいて管体100の寸法を算出すると、誤差が生じる。
同様の理由により、台座206bの位置に基づいて管体100の寸法を算出すると、誤差が生じる。
そこで、本発明の発明者は、荷重Fと重力成分W’との合成力を変動させる重力成分W’と相殺させる荷重を各台座206a、206bに付加することで、摺動時において、各アーム207a、207bの撓みが一定になり、各台座206a、206bの位置に基づいて管体100の寸法を精度良く算出できるとの知見を得た。本発明の発明者は、これらの新しい知見に基づき、本発明を完成させた。
本発明は、軸心が水平方向と略平行となるように配置された管体に対し、前記軸心方向に対向して配置される回転ヘッドと、前記管体の寸法を算出する寸法算出手段とを備える管体の寸法測定装置であって、前記回転ヘッドは、水平方向と略平行な回転中心周りに回転する基台と、前記基台の回転中心に対して進退動可能に前記基台に取り付けられる接触体と、前記接触体を進退動させて、前記管体の周面に前記接触体を押圧するための伸縮可能な押圧手段と、前記接触体の進退動可能な方向の荷重を前記接触体に加える荷重調整手段とを有し、前記接触体は、前記基台の回転中心に対して進退動可能に前記基台に取り付けられる台座と、前記台座から水平方向と略平行に前記管体側に延び、前記台座と一体的に進退動するアームと、前記管体の周面に接触可能なように前記アームの先端部に取り付けられ、前記アームと一体的に進退動する接触子とを具備し、前記押圧手段は、前記台座に接続されており、伸縮することで、前記接触子が前記管体の周面に接触するまで前記台座を進退動させると共に、前記接触子が前記管体の周面に接触した状態で、前記基台の回転角度に関わらず、前記台座の進退動可能な方向に略一定の荷重を前記台座に付加し、前記荷重調整手段は、前記接触体に作用する重力のうち前記台座の進退動可能な方向の成分と向きが反対で、且つ、該成分と大きさが略同じ荷重を前記台座に付加することで、前記基台の回転角度に関わらず前記アームの撓み量を略一定にし、前記寸法算出手段は、前記基台の回転によって前記管体の周面を前記接触子が摺動しているときの、前記台座の進退動可能な方向における前記台座の位置に基づいて前記管体の寸法を算出することを特徴とする管体の寸法測定装置を提供する。
本発明に係る管体の寸法測定装置は、接触体に作用する重力のうち台座の進退動可能な方向の成分(以下、適宜「重力成分」という。)と向きが反対で、且つ、該重力成分と大きさが略同じ荷重(以下、適宜「調整荷重」という。)を台座に付加する荷重調整手段を備える。このような調整荷重を台座に付加することによって、重力成分と、調整荷重とが略相殺される。これにより、接触子が管体の周面を摺動しているときのアームの撓み量が略一定になり、台座の進退動可能な方向における該台座の位置に基づいて管体の寸法を精度良く算出することができる。よって、本発明に係る管体の寸法測定装置は、より一層精度良く寸法を測定することができる。
また、本発明に係る管体の寸法測定装置においては、第2の管体の寸法測定装置と同様に、接触子が管体側に延びるアームの先端部に取り付けられている。このため、管体の内側空間に押圧手段を挿入することなく、管体の内側空間に接触子を挿入することができるので、本発明に係る管体の寸法測定装置は、内径が小さな管体であっても、寸法を測定することができる。
荷重調整手段の具体的な構成として、前記荷重調整手段は、前記台座の進退動可能な方向に沿って前記基台に取り付けられる複数のローラからなるローラ群と、前記ローラ群の一方の端部に位置するローラに巻き掛けられ、一端が前記台座に結合される第1巻き掛け部と、前記ローラ群の他方の端部に位置するローラに巻き掛けられ、一端が前記台座に結合される第2巻き掛け部と、前記第1巻き掛け部及び前記第2巻き掛け部の他端に結合され、前記接触体の重量と略同じ重量のカウンターウエイトとを備え、前記第1巻き掛け部と、前記カウンターウエイトと、前記第2巻き掛け部と、前記台座と、前記ローラ群とでループを構成するようにした構成を挙げることができる。
好ましくは、本発明に係る管体の寸法測定装置は、前記接触体を2つ備え、前記押圧手段は、一方の前記接触体の前記接触子が前記管体の外周面に接触するまで一方の前記接触体の前記台座を前記基台の回転中心に向けて進行させ、一方の前記接触体の前記接触子が前記管体の外周面に接触した状態で、前記基台の回転角度に関わらず、前記基台の回転中心に向けて略一定の荷重を一方の前記接触体の前記台座に付加し、他方の前記接触体の前記接触子が前記管体の内周面に接触するまで他方の前記接触体の前記台座を前記基台の回転中心から退行させ、他方の前記接触体の前記接触子が前記管体の内周面に接触した状態で、前記基台の回転角度に関わらず、前記基台の回転中心から退行する向きに略一定の荷重を他方の前記接触体の前記台座に付加し、前記荷重調整手段は、一方の前記接触体に作用する重力のうち一方の前記接触体の前記台座の進退動可能な方向の成分と向きが反対で、且つ、該成分と大きさが略同じ荷重を一方の前記接触体の前記台座に付加し、他方の前記接触体に作用する重力のうち他方の前記接触体の前記台座の進退動可能な方向の成分と向きが反対で、且つ、該成分と大きさが略同じ荷重を他方の前記接触体の前記台座に付加し、前記寸法算出手段は、前記基台の回転によって、前記管体の外周面を一方の前記接触体の前記接触子が摺動し、前記管体の内周面を他方の前記接触体の前記接触子が摺動しているときの、一方の前記接触体の前記台座の進退動可能な方向における該台座の位置に基づいて前記管体の外径を算出すると共に、他方の前記接触体の前記台座の進退動可能な方向における該台座の位置に基づいて前記管体の内径を算出し、算出した前記管体の外径及び内径を出力する、又は、算出した前記管体の外径及び内径に基づいて算出した前記管体の肉厚を出力する構成とされる。
かかる好ましい構成においては、2つの接触体が備えられている。一方の接触体及び他方の接触体の各台座は、基台の回転中心に向けて進行または該回転中心から退行する向きに押圧され、これにより、一方の接触体の接触子が外周面に押圧され、他方の接触体の接触子が内周面に押圧される。従って、基台を回転中心周りに回転させると、一方の接触体の接触子が外周面を摺動し、他方の接触体の接触子が内周面を摺動する。また、各接触体の台座には、各接触体に作用する重力のうち各台座の進退動可能な方向の成分と向きが反対で、且つ、該成分と大きさが略同じ調整荷重が荷重調整手段によって付加される。よって、かかる好ましい構成によれば、一方の接触体の台座の進退動可能な方向における該台座の位置に基づいて管体の外径を精度良く算出でき、他方の接触体の台座の進退動可能な方向における該台座の位置に基づいて管体の内径を精度良く算出できる。
また、好ましくは、前記2つの接触体は、進退動可能な方向が一致するように取り付けられ、前記押圧手段は、一方の前記接触体の前記台座と他方の前記接触体の前記台座とを連結する構成とされる。
一方及び他方の各接触体の台座の進退動可能な方向が一致すると、一方の接触体の接触子が管体の外周面に接触するまで一方の接触体の台座を基台の回転中心に向けて進行させる向きと、他方の接触体の接触子が管体の内周面に接触するまで他方の接触体の台座を基台の回転中心から退行させる向きとが反対となる。また、一方の接触体の接触子が管体の外周面に接触した状態で、基台の回転中心に向けて一方の接触体の台座を押圧する向きと、他方の接触体の接触子が管体の内周面に接触した状態で、基台の回転中心から退行する向きに他方の接触体の台座を押圧する向きとが反対となる。このような一方及び他方の各接触体の台座間で、台座を進退動、及び、押圧する向きが反対となることで、これらの進退動、及び、押圧を、例えば、一軸方向に伸縮可能な1つの部材で行うことができる。このため、かかる好ましい構成によれば、押圧手段を1つの部材で構成することができ、本発明に係る管体の寸法測定装置の部品数を抑えることができる。
本発明は、内径が小さな管体にも適用でき、且つ、より一層精度良く寸法を測定することができる管体の寸法測定装置を提供することができる。
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明に係る管体の寸法測定装置の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態の管体の寸法測定装置1と、本実施形態の管体の寸法測定装置1によって寸法が測定される管体10の側面図である。図1(a)は、管体の寸法測定装置1と管体10とが離間している状態を示す。図1(b)は、管体の寸法測定装置1の接触子63aが管体10の内側空間に挿入された状態における、管体の寸法測定装置1の一部分と、管体10との側面を示す。尚、管体10は、軸心P1が水平方向と略平行となるように配置されている。
管体の寸法測定装置1は、本体部2と、回転ヘッド3と、寸法算出手段(図示しない)とを備える。
本体部2は、管体10の軸心P1と平行な走行軸20に沿って移動可能に配置されている。本体部2は、回転ヘッド3が管体10に対して軸心P1方向に対向して配置されるように該回転ヘッド3を支持している。更に、本体部2は、鉛直方向に延びる昇降軸21を備える。昇降軸21は、スクリューネジで構成することができる。
図2は、管体の寸法測定装置1の基台5の先端部52(後述する)近傍の構成を示す図である。図2(a)は図1の矢視Gにおける基台5の先端部52近傍の拡大側面図であり、図2(b)は基台5の先端部52近傍の拡大平面図であり、図2(c)は図2(a)のX―X端面図であり、図2(d)は図2(a)のY―Y端面図である。図1及び図2に示すように、回転ヘッド3は、駆動モータ4と、基台5と、2つの接触体6a、6bと、押圧手段7と、2つの荷重調整手段8a、8bとを備える。
図1(a)に示すように、基台5は、水平方向と略平行な回転中心P2周りに回転可能である。基台5は、基端部51と先端部52とを備える。基端部51は、駆動モータ4によって回転駆動され、基端部51が回転すると、基台5は回転中心P2周りに回転する。基端部51は、昇降軸21に取り付けられている。基端部51は、昇降軸21を回転させることで昇降(鉛直方向に移動)し、基端部51を昇降させることで、基台5の回転中心P2の鉛直方向の位置を調整することができる。基端部51は、回転中心P2に対して進退動可能な方向に延びる半径調整軸53を備える。半径調整軸53は、スクリューネジで構成することができる。
先端部52は、基端部51の管体10側に位置し、半径調整軸53に取り付けられている。先端部52は、半径調整軸53を回転させることで基台5の回転中心P2に対して進退動する。基台5の回転中心P2に対して進退動可能とは、基台5の回転中心P2に向けて進行すること、及び、基台5の回転中心P2から退行することが可能であることを意味する。図2(b)に示すように、先端部52は、平面視コの字状に形成されている。
図1(a)に示すように、2つの接触体6a、6bは、基台5の先端部52に取り付けられている。接触体6a、6bは、台座61a、61bと、アーム62a、62bと、接触子63a、63bとを備える。
図2(a)及び図2(b)に示すように、各台座61a、61bは、基台5の回転中心P2に対して略垂直に進退動可能となるように、基台5の先端部52の側壁521に取り付けられている。ここでは、2つの台座61a、61bの進退動可能な方向(図2(a)の矢印J方向)が一致している。即ち、基台5の回転中心P2から接触体6aに向かう向きと、基台5の回転中心P2から接触体6bに向かう向きとが一致している。各台座61a、61bが基台5の回転中心P2に対して進退動することで、各接触体6a、6b全体が基台の回転中心P2に対して進退動する。図1(a)に示すように、各アーム62a、62bは、各台座61a、61bから管体10側に延びている。接触子63aは、管体10の外周面11に接触可能なようにアーム62aの先端部に取り付けられており、接触子63bは、管体10の内周面12に接触可能なようにアーム62bの先端部に取り付けられている。各接触体6a、6bにおいて、台座61a、61bと、アーム62a、62bと、接触子63a、63bとはそれぞれ一体的に進退動する。
図1(b)、図2(a)及び図2(b)に示すように、押圧手段7は、一端が接触体6aの台座61aと接続され、他端が接触体6bの台座61bと接続されている。押圧手段7は、基台5の回転中心P2に対して進退動する方向に沿って伸縮可能であり、伸縮することで、各台座61a、61bを基台5の回転中心P2に対して進退動させる。押圧手段7は図示しない支持部材によって先端部52に取り付けられている。押圧手段7は、エアシリンダ等の一軸方向に伸縮可能な部材で構成することができる。
荷重調整手段8a(図2(c)参照)、荷重調整手段8b(図2(d)参照)は、複数のローラから構成されるローラ群と、第1巻き掛け部83a、83bと、第2巻き掛け部84a、84bと、カウンターウエイト85a、85bとを備える。
各荷重調整手段8a、8bは構成が同一であるので、ここでは、荷重調整手段8aの構成のみ詳述する。図2(c)に示すように、ローラ群は、台座61aの進退動可能な方向に沿って基台5の先端部52に取り付けられる2つのローラ81a、82aから構成されている。第1巻き掛け部83aは、ローラ群の一方の端部に位置する一方のローラ81aに巻き掛けられ、一端が台座61aに結合され、他端がカウンターウエイト85aに結合されている。第2巻き掛け部84aは、ローラ群の他方の端部に位置する他方のローラ82aに巻き掛けられ、一端が台座61aに結合され、他端がカウンターウエイト85aに結合されている。第1巻き掛け部83aと第2巻き掛け部84aとには、例えば、ベルト状のものや、線状のワイヤ等を用いることができる。カウンターウエイト85aは、基台5の回転中心P2に対して進退動可能な方向に延びる基台5の先端部52に形成されたガイド(図示しない)に沿って、移動することが可能とされている。カウンターウエイト85aの重量は、接触体61aの重量と略同じである。前述の第1巻き掛け部83aと、カウンターウエイト85aと、第2巻き掛け部84aと、台座61aと、ローラ群とで、第1巻き掛け部83aと、カウンターウエイト85aと、第2巻き掛け部84aと、台座61aとからなるループが構成されている。
このような構成の荷重調整手段8aは、各接触体6aに作用する重力のうち台座61aの進退動可能な方向の成分(以下、適宜「接触体6aの重力成分T’」という。)と大きさが略同じで、向きが反対の接触体6aに対する調整荷重V’を接触体6aの台座61aに付加する。同様に、荷重調整手段8bは、各接触体6bに作用する重力のうち台座61bの進退動可能な方向の成分(以下、適宜「接触体6bの重力成分T’」という。)と大きさが略同じで、向きが反対の接触体6bに対する調整荷重V’を接触体6bの台座61bに付加する。
次に、以上において構成を説明した管体の寸法測定装置1による管体10の寸法測定について説明する。
まず、図1に示すように、昇降軸21を回転させて、管体10の軸心P1と基台5の回転中心P2とを一致させる。次に、押圧手段7を延伸させ、台座61aを基台5の回転中心P2(管体10の軸心P1)から退行させ、台座61bを基台5の回転中心P2(管体10の軸心P1)に向けて進行させて、接触子63aと接触子63bとの間隔を管体10の肉厚より大きくする。
次に、半径調整軸53を回転させて、接触子63aを管体10の外周面11の外側に移動させ、接触子63bを管体10の内周面12の内側に移動させる。
次に、図1(b)に示すように、軸心P1に沿って回転ヘッド2を移動させ、接触子63bを管体10の内側空間に挿入して、接触子63aと接触子63bとの間に管体10を位置させる。
次に、押圧手段7を収縮させ、接触子63aが外周面11に接触するまで、台座61aを基台5の回転中心P2に向けて進行させると共に、接触子63bが内周面11に接触するまで、台座61bを基台5の回転中心P2から退行させる。接触子63aが外周面11に接触し、接触子63aが内周面12に接触すると、更に押圧手段7を収縮させ、基台5の回転中心P2に向けて、所定の荷重を台座61aに付加し、基台5の回転中心P2から退行する向きに、所定の荷重を台座61bに付加する。これにより、接触子63aが管体10の外周面11に押圧され、接触子63bが管体10の内周面12に押圧される。尚、押圧手段7が各台座61a、61bに付加する荷重は、基台5の回転角度に関わらず、大きさが略一定である。
次に、基台5を回転中心P2周りに回転させる。これにより、接触子63aが外周面11を周方向に摺動し、接触子63bが内周面12を周方向に摺動する。接触子63aが外周面12を摺動すると、台座61aの進退動可能な方向における接触子63aの位置が外周面11の形状に応じて変動する。同様に、接触子63bが内周面12を摺動すると、台座61bの進退動可能な方向における接触子63bの位置が内周面12の形状に応じて変動する。
台座61aには、荷重調整手段8aによって、接触体6aの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じである接触体6aに対する調整荷重V’が付加されている。このため、接触体6aに作用する接触体6aの重力成分T’と、調整荷重V’とは略相殺される。従って、台座61aの進退動可能な方向におけるアーム62aの撓み量に影響を及ぼす力は、実質、押圧手段7が台座61aに付加する荷重となる。押圧手段7が台座61aに付加する荷重は、向きが基台5の回転中心P2に向けて進行する向きであり、大きさが略一定である。このため、台座61aの進退動可能な方向におけるアーム62aの撓み量に影響を及ぼす力は一定となる。このため、摺動時において、アーム62aの撓み量が略一定になる。
また、台座61bには、荷重調整手段8bによって、接触体6bの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じである接触体6bに対する調整荷重V’が付加されている。このため、アーム62aの撓み量と同様に、摺動時において、アーム62bの撓み量も略一定になる。
寸法算出手段は、接触子63a、63bが外周面11及び内周面12を摺動しているとき(以下、適宜「摺動時」という。)の、台座61aの進退動可能な方向における台座61aの位置(軸心P1から台座61aまでの距離d)に基づいて、管体10の周方向における軸心P1から外周面11までの距離の分布(以下、適宜「外周面の周方向分布」という。)を求める。図3(a)に示すように、この距離dは、台座61aと管体10の軸心P1とを結ぶ直線L1上に位置する先端部52の所定の位置(以下、適宜「基準位置522」という。)から軸心P1までの第1距離d1と、該基準位置522から台座61aまでの第2距離d2とを合計することで算出される。第1距離d1は、半径調整軸53の回転量に基づいて算出することができ、第2距離d2は、先端部52に取り付けられた光学式の非接触距離計やマグネスケール(登録商標)などによって測定することができる。距離dは、寸法算出手段が算出しても、寸法算出手段と異なる手段が算出してもよい。
寸法算出手段は、摺動時における、台座61bの進退動可能な方向における台座61bの位置(軸心P1から台座61bまでの距離)に基づいて、管体10の周方向における軸心P1から内周面12までの距離の分布(以下、適宜「内周面の周方向分布」という。)を求める。内周面の周方向分布は、外周面の周方向分布と同様にして求められる。
寸法算出手段は、外周面の周方向分布から管体10の外径を、内周面の周方向分布から管体10の内径を算出し、算出した外径と内径とをモニタ等に出力する。また、寸法測定手段は、算出した外径と算出した内径との差分に基づいて、管体10の肉厚を算出し、該肉厚を出力してもよい。また、管体の寸法算出手段は、接触子63a、63bが外周面11及び内周面12を摺動しているときに、接触子63a、63bが軸心P1に対して所定角度摺動する度に、軸心P1から台座61aまでの距離と軸心P1から台座61bまでの距離との差分を算出させ、該差分に基づいて管体100の肉厚を算出してもよい。このような方法によれば、外周面の周方向分布及び内周面の周方向分布を求めることなく肉厚を算出することができる。
以上のように、各アーム62a、62bの撓み量が略一定であるため、寸法算出手段は、より一層精度良く外径及び内径を算出することができる。
また、押圧手段7は、台座61aを基台5の回転中心P2に対して進退動させる第1押圧部材と、台座61bを基台5の回転中心P2に対して進退動させる第2押圧部材との2つの部材から構成されてもよい。
また、接触体6a、6bは、進退動可能な方向が異なるように、基台5の先端部52に取り付けられてもよい。即ち、基台5の回転中心P2から接触体6aに向かう向きと、基台5の回転中心P2から接触体6bに向かう向きとが異なるように、接触体6a、6bが基台5の先端部52に取り付けられてもよい。このような構成においては、管体10の周方向における接触体6aの位置と接触体6bの位置とがずれた状態で、接触子63aを外周面11に、接触子61bを内周面12に摺動させることになる。このようにずれた状態で摺動させる場合であっても、外周面の周方向分布と、内周面の周方向分布に基づいて肉厚を算出することができる。
接触体6aに対する調整荷重V’が接触体6aの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになることについて説明する。尚、接触体6a、接触体6bに対する調整荷重V’が接触体6a、接触体6bの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになる原理は同一であるので、ここでは、接触体6bに対する調整荷重V’が接触体6bの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになるとについては説明を省略する。
図3は、接触体6aに対する調整荷重V’が接触体6aの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになることを説明するための模式図である。図3(a)は、台座61aが管体10の軸心P1より鉛直方向下方に位置しているときの接触体6aの重力成分T’を表す模式図であり、図3(b)は、図3(a)の管体の寸法測定装置1の部分の拡大図である。図3(a)に示すように、台座61aの進退動可能な方向(台座61aと管体10の軸心P1とを結ぶ直線L1の方向)が水平方向と成す鋭角の角度をθ1とし、接触子6aに作用する重力をTとすると、接触体6aの重力成分T’は、向きが管体10の軸心P1から退行する向きであり、大きさがTsinθ1である。
一方、図3(b)に示すように、荷重調整手段8aを構成する2つのローラ81a、82aは、台座61aの進退動可能な方向に沿って取り付けられており、第1巻き掛け部83a及び第2巻き掛け部84aの向きは、基台5の回転角度に関わらず、台座61aの進退動可能な方向となっている。
このため、カウンターウエイト85aと結合される第1巻き掛け部83a及び第2巻き掛け部84aの他端には、カウンターウエイト85aに作用する重力Uのうち台座61aの進退動可能な方向の成分U’(以下、適宜「カウンターウエイト85aの重力成分U’」という。)が作用する。カウンターウエイト85aの重力成分U’は、向きが管体10の軸心P1から退行する方向であり、大きさがUsinθ1である。
図2(c)に示すように、第1巻き掛け部83a及び第2巻き掛け部84aの他端にカウンターウエイト85aの重力成分U’が作用すると、第1巻き掛け部83a及び第2巻き掛け部84aの一端には、該重力成分U’と向きが反対で大きさが同じである接触体6aに対する調整荷重V’が作用する。
よって、接触体6aに対する調整荷重V’の向きは、管体10の軸心P1向けて進行する向きであり、大きさは、Usinθ1である。
以上のことから、台座61aが管体10の軸心P1より鉛直方向下方に位置しているときは、接触体6aに対する調整荷重V’が接触体6aの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになる。
また、図3(c)は、台座61aが管体10の軸心P1より鉛直方向上方に位置しているときの接触体6aの重力成分T’を表す模式図であり、図3(d)は、図3(c)の荷重調整手段8a、8bの部分の拡大図である。図3(c)、及び、図3(d)に示すように、台座61aが管体10の軸心P1より鉛直方向上方に位置している場合、接触体6aの重力成分T’及びカウンターウエイト85aの重力成分U’の大きさは、Tsinθ1、Usinθ1となる。また、重力成分T’及び重力成分U’の向きは、管体10の軸心P1に向けて進行する向きとなる。
従って、接触体6aの重力成分T’は、向きが管体10の軸心P1に向けて進行する向きであり、大きさがTsinθ1である。
一方、カウンターウエイト85aの重力成分U’は、向きが管体10の軸心P1に向けて進行する向きであり、大きさがUsinθ1である。このため、接触体6aに対する調整荷重V’の向きは、管体10の軸心P1から退行する向きであり、大きさがUsinθ1である。
以上のように、Tsinθ1とUsinθ1とは略同一であるため、台座61aが管体10の軸心P1より鉛直方向上方に位置しているときも、接触体6aに対する調整荷重V’が接触体6aの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになる。
よって、台座61aが管体10の軸心P1より鉛直方向下方及び上方の何れに位置していても、接触体6aに対する調整荷重V’が接触体6aの重力成分T’と向きが反対で大きさが略同じになる。
本実施形態においては、各台座61a、61bの進退動可能な方向は一致している(図2(a)、(c)、(d)の矢印J方向で一致している。)。このため、押圧手段7を基台5の回転中心P2に対して進退動する方向に沿って収縮させることで、接触子63aが外周面11に接触するまで、台座61aを管体10の軸心P1に向けて進行させ、接触子63bが内周面11に接触するまで、台座61bを管体10の軸心P1から退行させることができる。また、接触子63aが外周面11に接触し、接触子63bが内周面12に接触した状態で、更に押圧手段7を基台5の回転中心P2に対して進退動する方向に沿って収縮させることで、管体10の軸心P1に向けて、所定の荷重を台座61aに加え、管体10の軸心P1から退行する向きに、所定の荷重を台座61bに加えることができる。従って、本実施形態の管体の寸法測定装置1においては、押圧手段7を、一軸方向に伸縮可能な1つの部材で構成することができる。押圧手段7を、1つの部材で構成することで、管体の寸法測定装置1の部品数を抑えることができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。
図4に示すように、本実施形態の管体の寸法測定装置の接触子63aを管体20の外周面21に摺動させ、管体20の外周面の周方向分布を求めた。尚、管体20の外径は、814mmである。
比較例
前述の第2の管体の寸法測定装置の接触子203aを管体20の外周面21に摺動させ、管体20の外周面の周方向分布を求めた。尚、実施例において外周面の周方向分布が求められた管体と、比較例において外周面の周方向分布が求められた管体とは、同一の管体である。
実施例及び比較例で求めた外周面の周方向分布、実際の外周面の周方向分布との偏差を図5に示す。図5に示すグラフの横軸の角度は、図4に示すように、外周面21の周方向の位置を表し、最も鉛直方向下方の部位21aを0°とするものである。
図5に示すように、実施例で求めた外周面の周方向分布と、実際の外周面の周方向分布との偏差は、どの角度においても非常に小さかった。一方、比較例で求めた外周面の周方向分布は、実施例で求めた外周面の周方向分布に比べて、実際の外周面の周方向分布との偏差が大きく、角度が110°〜240°の範囲においては、軸心P20から外周面20までの距離が著しく小さく測定されている。これは、アーム207aの撓みに影響を及ぼす荷重Fと重力成分W’との合成力が、台座206aが外周面21の最も鉛直方向上方の部位(180°対応する部位)に近づけば近づくほど、基台202の回転中心P2(軸心20)に向けて進行する向きに大きくなり、アーム207aが軸心20に向けて大きく撓むためと考えられる。以上のことから、比較例に比べ、実施例では精度良く管体の寸法を測定することができた。