本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、電気自動車や燃料電池自動車等の車両に搭載されており、歩行者等に接近を知らせるために、車両の走行音を擬似的に発生させる擬似走行音発生装置に関する。擬似走行音を運転状況および走行環境に応じて生成する場合、車両が低速で移動する状況では擬似走行音が大きく変化しないので、歩行者や自転車搭乗者が車両の動作に気づかない可能性がある。一方で、車両の動作音の静粛性を維持するために、擬似走行音の発生機会が必要な場合に限定されることが望ましい。これらに対応するため、本実施例に係る擬似走行音発生装置は、車両が道路上を走行しているか否かの情報および方向差分に応じて擬似走行音を制御する。その結果、歩行者や自転車搭乗者にとって車両の動作が予測しやすい擬似走行音を提供することができる。
本実施例に係る擬似走行音発生装置では、3つの場合での擬似音の発生を主に想定し、それらの場面において擬似走行音を制御する。ひとつ目は、車両が歩道を経由して、道路上から敷地内へ進入する等の場合である。擬似走行音発生装置は、車両の位置に関する情報(以下、「位置情報」という)と道路の位置情報とをもとに、車両が道路上に存在することを推定する。車両が道路上に存在する場合、擬似走行音発生装置は、車両の進行方向に関する情報(以下、「方向情報」という)と、道路の方向情報とをもとに、方向の差分(以下、「方向差分」という)を導出する。擬似走行音発生装置は、方向差分が大きければ、車両が、道路上から歩道を経由して敷地内へ進入しようとしていると推定する。つまり、擬似走行音発生装置は、方向差分に応じて擬似走行音の発生を制御する。
ふたつ目は、歩道や敷地等の道路外に車両が進入した状態において、車両が発進する場合である。擬似走行音発生装置は、車両の位置情報と道路の位置情報とをもとに、車両が道路外に存在することを推定する。車両が道路外に存在する場合、擬似走行音発生装置は、車両の走行状態をもとに、発進しているかを推定する。擬似走行音発生装置は、発進しているかに応じて、擬似走行音の発生を制御する。擬似走行音発生装置は、車両の位置情報と道路の位置情報とをもとに、車両が道路上に存在することを推定する。
3つ目は、道路上に駐車している車両が発進する場合である。擬似走行音発生装置は、車両の位置情報と道路の位置情報とをもとに、車両が道路内に存在することを推定する。車両が道路内に存在する場合、擬似走行音発生装置は、車両の走行状態をもとに、停止している期間(以下、「停止期間」という)を導出する。擬似走行音発生装置は、停止期間に応じて、擬似走行音の発生を制御する。さらに、擬似走行音発生装置は、一定期間以上の停止につづいて発進していることを検出した場合にも、擬似走行音の発生を制御する。
図1は、本発明の実施例に係る擬似走行音発生装置による処理の概要を示す。これは、本実施例において処理対象になる状況の一例を示す。第1車両1000a、第2車両1000b、第3車両1000cは、電気自動車や燃料電池自動車等であり、図示しない擬似走行音発生装置を搭載する。ここで、第1車両1000aから第3車両1000cは、車両1000と総称される。第1車両1000aは、道路上から逸れて駐車場等の敷地内へ進入しようとしている。進入の際に、歩道を横断するので、擬似走行音によって歩行者や自転車搭乗者へ注意を促す必要がある。
第2車両1000bは、既に車道から逸れ、道路外に存在する。第2車両1000bでは、歩道や駐車場等を低速で移動する場合、歩行者や自転車が通過するまで略停止状態にある場合、駐車場から発進しようとする場合等において、擬似走行音によって歩行者や自転車搭乗者へ注意を促す必要がある。第3車両1000cは、道路上において停車中であり、発進時において歩行者や自転車搭乗者へ注意を促す必要がある。ここで、第1車両1000aおよび第3車両1000cは、道路上に存在するが、第2車両1000bは、道路外に存在する。そのため、擬似走行音発生装置は、道路上に存在するか道路外に存在するかを判定し、それぞれの場合に応じて擬似音を制御する。
図2は、本発明の実施例に係る擬似走行音発生装置100の構成を示す。擬似走行音発生装置100は、図1の車両1000に搭載されている。擬似走行音発生装置100は、地図データベース10、GPS測位部12、角速度検出部14、速度検出部16、加速度検出部18、演算部20、走行状態検出部30、擬似走行音制御部40を含む。また、演算部20は、道路延伸方向導出部50、車両進行方向導出部52、方向差分導出部54、内外判定部56、距離導出部58を含み、走行状態検出部30は、略停止判定部32、発進判定部34、停止期間測定部36を含み、擬似走行音制御部40は、生成部42、音量調節部44を含む。さらに信号として、道路データ200、GPS測位データ202、旋回角速度データ204、速度データ206、加速度データ208、方向差分データ210、距離データ212、略停止判定結果220、発進判定結果222、停止期間224、擬似走行音230を含む。
地図データベース10は、道路データ200を格納する。道路データ200は、地図データ等のデジタルデータであるので、地図データベース10は、ハードディスク等の記憶媒体として構成される。道路データ200は、道路の所定区間に対応する情報で構成されており、経緯度、道路幅、方位等を含む。なお、道路データ200には、これらの値以外にも、歩道有無、車線数等の属性情報が含まれていてもよい。そのため、道路データ200は、道路の位置に関する情報ともいえる。地図データベース10は、道路データ200を演算部20へ逐次出力する。
GPS測位部12は、図示しないGPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して、GPS測位データ202を算出する。GPS測位データ202には、経緯度、車両の方位であるGPS方位等が含まれる。また、GPS測位データ202の算出は、公知の技術によってなされればよいので、ここでは説明を省略する。GPS測位部12は、GPS測位データ202をサンプリング間隔ごとに、つまり周期的に算出する。GPS測位部12は、GPS測位データ202を演算部20へ逐次出力する。
角速度検出部14は、例えば、振動ジャイロ等のジャイロ装置に相当し、旋回角速度データ204を検出する。旋回角速度データ204は、サンプリング間隔ごとに、車両の進行方向の変化を車両の相対的な角度変化として検出した値である。ジャイロ装置から車両の角度変化を精度よく算出する方法に関しては、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。角速度検出部14は、旋回角速度データ204を演算部20へ逐次出力する。
速度検出部16は、図示しない速度センサに接続されており、速度センサは、ドライブシャフトの回転に伴ったパルス信号を出力する。速度検出部16は、車両の移動に伴って出力されるパルス信号を所定の期間ごとに計数し、ドライブシャフトの回転に対する距離を表す距離変換係数を使用して、車両の速度データ206を検出する。速度検出部16は、速度データ206を演算部20、走行状態検出部30へ逐次出力する。
加速度検出部18は、例えば、多軸加速度センサ等であり、加速度検出軸のひとつは車両の進行方向となるように配置されている。加速度検出部18は、サンプリング間隔ごとに、車両の進行方向の加速度データ208を検出する。また、他の加速度検出軸を車両の進行方向と直行する上下方向に配置し、加速度データ208に対して重力加速度成分を補正し、水平成分を算出するようにしてもよい。加速度検出部18は、加速度データ208を走行状態検出部30へ逐次出力する。
演算部20は、地図データベース10からの道路データ200、GPS測位部12からのGPS測位データ202、角速度検出部14からの旋回角速度データ204、速度検出部16からの速度データ206を入力する。演算部20は、GPS測位データ202、旋回角速度データ204、速度データ206をもとに、本擬似走行音発生装置100が搭載された車両1000の位置を推定する。つまり、演算部20は、車両1000の位置に関する情報を取得する。位置の推定方法としては、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、演算部20は、車両1000の寸法情報を備え、推定した車両1000の位置に関する情報を二次元の情報として補正するようにしてもよい。また、演算部20は、道路データ200のうち、車両1000の位置近傍の道路の位置に関する情報を取得する。近傍とは、例えば、車両1000の位置を中心として半径1kmの円のように規定される。
車両進行方向導出部52は、演算部20において推定した車両1000の位置に関する情報をもとに、車両1000の進行方向を推定する。車両進行方向導出部52は、例えば、車両1000の位置に関する情報を所定期間にわたって記憶することによって、車両1000の位置の履歴を取得する。また、車両進行方向導出部52は、車両1000の位置の履歴をベクトルによって近似することによって、車両1000の進行方向を推定する。なお、車両進行方向導出部52は、GPS測位データ202に含まれたGPS方位を取得し、これを車両1000の進行方向としてもよい。車両進行方向導出部52は、車両1000の進行方向に関する情報を方向差分導出部54へ出力する。
道路延伸方向導出部50は、演算部20において抽出した道路の位置に関する情報をもとに、道路の延伸方向に関する情報を推定する。例えば、道路延伸方向導出部50は、演算部20において推定した車両1000の位置から、車両進行方向導出部52において推定した車両1000の進行方向に近い方向へ、所定区間にわたって、道路の位置に関する情報を複数取得する。道路延伸方向導出部50は、複数の情報の履歴をベクトルによって近似することによって、道路の延伸方向を推定する。なお、道路延伸方向導出部50は、道路データ200に含まれた方位を取得し、これを道路の延伸方向としてもよい。道路延伸方向導出部50は、道路の延伸方向に関する情報を方向差分導出部54へ出力する。
方向差分導出部54は、道路延伸方向導出部50から、道路の延伸方向に関する情報を入力し、車両進行方向導出部52から、車両1000の進行方向に関する情報を入力する。方向差分導出部54は、道路の延伸方向と車両1000の進行方向との差分(以下、前述の「方向差分データ210」という)を算出する。方向差分導出部54は、算出した方向差分データ210を擬似走行音制御部40へ出力する。
内外判定部56は、演算部20において推定した車両1000の位置と、演算部20において抽出した道路の位置とをもとに、車両1000が道路上に存在するか、あるいは道路外に存在するかを推定する。内外判定部56は、道路の位置と、道路データ200に含まれた道路幅をもとに、道路の範囲を特定する。内外判定部56は、道路の範囲に車両1000の位置が含まれていれば、車両1000が道路上に存在すると推定し、道路の範囲に車両1000の位置が含まれていなければ、車両1000が道路外に存在すると推定する。内外判定部56は、推定結果を距離導出部58へ出力する。
距離導出部58は、内外判定部56において、車両1000が道路上に存在すると推定された場合に、演算部20において推定した車両1000の位置と、内外判定部56において特定した道路の範囲とをもとに、道路の端と車両1000との間の距離を導出する。例えば、距離導出部58は、道路の端と車両1000との間の最短距離を導出する。距離導出部58は、導出した距離と、内外判定部56での推定結果との組合せを距離データ212として擬似走行音制御部40へ出力する。
走行状態検出部30は、速度データ206と、加速度データ208とを入力する。走行状態検出部30は、速度データ206と、加速度データ208をもとに、車両の走行状態を検出する。以下では、詳細を説明する。略停止判定部32は、入力された速度データ206をもとに、車両が略停止状態であるか否かを判定する。ここでは、略停止判定方法の一例を説明するために、図3を使用する。図3は、略停止判定部32による処理結果のデータ構造を示す。図示のごとく、時刻欄310、速度欄320、略停止判定欄330が示される。時刻欄310は、速度データ206の入力タイミングを時刻T(n)として示す。ここでは、入力タイミングの間隔が1秒であるとする。
速度欄320は、入力された速度データ206の値をVとして示す。略停止判定部32は、速度欄320に示された速度データ206が、所定の期間においてしきい値以下である場合に、略停止状態であると判定する。図3では、所定の期間が時刻T(n)の前後1秒である計3秒間、速度データ206に対するしきい値が3km/hであるとする。そのため、T(4)からT(8)までの略停止判定はTRUEとなる。このような略停止判定結果は、略停止判定欄330に示される。図2に戻る。略停止判定部32は、略停止判定結果をフラグで表した略停止判定結果220を発進判定部34へ出力する。
発進判定部34は、入力された加速度データ208と、走行状態検出部30からの略停止判定結果220をもとに、車両の発進状態を判定する。発進判定部34は、略停止判定結果220がTRUEであり、かつ入力された加速度データ208の値がしきい値以上となった場合、または、略停止判定結果220がTRUEからFALSEに変化した場合に、発進状態であると判定する。しきい値は、例えば、加速度データ208の入力タイミングが100[msec]の場合に、加速度データ208が0.4[m/sec2]以上のように設定される。
発進判定部34が加速度データ208を入力するタイミングは、略停止判定部32が速度データ206を入力するタイミングよりも間隔が短い。そのため、発進判定部34は、速度データ206から加速度を算出して発進を判定するよりも早く、車両の発進状態を判定可能である。発進判定部34は、発進と判定してから所定の期間、例えば5秒間、車両1000の発進状態をフラグで表した発進判定結果222を擬似走行音制御部40へ出力する。
停止期間測定部36は、入力された速度データ206をもとに、車両が停車している期間を算出する。停止期間測定部36は、速度データ206が所定の期間、例えば3秒以上にわたって、連続して「0」である場合に、その状態を停車と判定して期間のカウントを開始する。停止期間測定部36は、停車している期間を停止期間224として擬似走行音制御部40へ出力する。ここで、発進判定結果222および停止期間224が、車両1000の走行状態に関する情報に相当する。
擬似走行音制御部40は、方向差分データ210、距離データ212、発進判定結果222、停止期間224を入力する。擬似走行音制御部40は、方向差分データ210、距離データ212、発進判定結果222、停止期間224をもとに、擬似走行音の特性と音量を制御する。以下では、詳細を説明する。擬似走行音制御部40は、距離データ212から、内外判定部56での推定結果を抽出する。推定結果において、車両1000が道路上に存在すると推定されている場合、擬似走行音制御部40は、距離データ212から、距離に関する情報を抽出する。さらに、擬似走行音制御部40は、予め保持したテーブルと距離とを比較することによって、以降の処理を続行するか否かを決定する。なお、距離に関する処理は省略されてもよい。
図4は、擬似走行音制御部40に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、距離欄510、処理欄520が含まれている。距離欄510に示されているように、0m以上1.5m未満の場合と、1.5m以上の場合とが規定されている。ここで、「1.5m」がしきい値に相当する。また、処理欄520では、以降の処理を続行する場合が「○」として示され、以降の処理を中止する場合が「×」として示されている。図2に戻る。擬似走行音制御部40は、図4に示されたテーブルをもとに、以降の処理の中止を決定した場合、処理を中止する。一方、擬似走行音制御部40は、図4に示されたテーブルをもとに、以降の処理の続行を決定した場合、つまり車両1000が道路上に存在し、かつ距離がしきい値よりも小さい場合、方向差分データ210を別のテーブルと比較する。
図5は、擬似走行音制御部40に記憶された別のテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、方向差分欄610、音色欄620、音量欄630が含まれている。方向差分欄610には、方向差分データ210を分類すべき範囲が示されている。ここでは、0度以上10度未満、10度以上45度未満、45度以上のように3つの範囲が規定されている。また、音色欄620には、生成部42において生成すべき音色の種別が示されており、音量欄630には、音量調節部44において出力すべき音量が示されている。ここでは、level1<level2である。また、音色の種別であるtone1とtone2については、後述する。図2に戻る。
擬似走行音制御部40は、方向差分データ210が0度以上10度未満である場合、音色としてtone1を選択し、音量としてlevel1を選択する。なお、0度以上10度未満である場合とは、車両1000が道路を走行中であるときと想定される。一方、擬似走行音制御部40は、方向差分データ210が10度以上45度未満である場合、音色としてtone1とtone2の合成音を選択する。その際、擬似走行音制御部40は、方向差分データ210が増大するほど、音色におけるtone2の合成比率が大きくなるように生成部42を制御する。また、擬似走行音制御部40は、方向差分データ210が増大するほど、音量がlevel2へ近づくように音量調節部44を制御する。なお、10度以上45度未満である場合とは、車両1000が道路を逸れる方向に走行しているときと想定される。
擬似走行音制御部40は、方向差分データ210が45度以上である場合、音色としてtone2を選択し、音量としてlevel2を選択する。なお、方向差分データ210が45度以上である場合とは、車両1000の進行方向が道路方向から大きく逸れているときと想定される。このような場合、歩行者や自転車搭乗者へ注意を特に促す必要がある。このような処理は、図1の第1車両1000aを想定した処理といえる。つまり、そのような場合、擬似走行音制御部40は、方向差分データ210に応じて、生成部42および音量調節部44における擬似走行音の出力を制御する。
生成部42は、ROM等の記憶媒体を含み、記憶媒体に、ガソリン自動車等のエンジン音を擬似的に合成した音声信号等、車両1000の走行に関する複数の擬似音データを記憶する。また、生成部42は、擬似走行音制御部40からの指示をもとに、複数の擬似音データのうち、少なくともひとつを合成する。図6は、生成部42に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。これは、生成部42において記憶される擬似音データの一例を示す。図示のごとく、番号欄410、音色欄420が含まれる。番号欄410には、音色の種別が示されている。ここでは、音色の種別がtone1、tone2、tone3であるとする。
音色欄420には、各音色の特性が示される。tone1は、車両1000の周辺の人にとって耳障りではないような騒音性の低い音色に相当する。また、tone2は、ガソリン車が低速時に発するエンジン音を擬似的に合成したような騒音性が中程度の音色に相当する。tone3は、ガソリン車が加速時や発進時に発するエンジン回転数が上昇する音を擬似的に合成したような騒音性の高い音色である。図2に戻る。前述のごとく、生成部42は、ひとつの擬似音、あるいは、複数の擬似音を合成した音声信号(以下、合成された音声信号も「擬似音」という)を音量調節部44へ出力する。
音量調節部44は、生成部42からの擬似音を入力する。音量調節部44は、擬似走行音制御部40において決定された音量にもとづいて、擬似音の音量を調節する。擬似走行音制御部40は、音量を調節した擬似音(以下、前述の「擬似走行音230」という)を図示しないスピーカへ出力する。
これまで、擬似走行音制御部40の処理として、図1の第1車両1000aを想定した処理を説明した。以下では、図1の第2車両1000b、第3車両1000cを想定した処理を説明する。まず、図1の第2車両1000bを説明の対象にする。擬似走行音制御部40は、距離データ212から、内外判定部56での推定結果を抽出する。推定結果において、車両1000が道路外に存在すると推定されている場合、擬似走行音制御部40は、発進判定結果222をもとに、車両1000の走行状態に関する情報を確認する。擬似走行音制御部40は、走行状態に関する情報が発進を示しているかに応じて、車両1000の擬似走行音230の出力を制御する。具体的に説明すると、擬似走行音制御部40は、予め別のテーブルを記憶し、発進判定結果222をもとに別のテーブルから制御内容を選択する。
図7は、擬似走行音制御部40に記憶されたさらに別のテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、発進判定欄720、音色欄730、音量欄740が含まれる。発進判定欄720は、走行状態に相当し、これは、発進判定部34での判定結果のフラグに相当する。また、音色欄730は、生成部42に生成させる音色を示し、音量欄740は、音量調節部44に調節させる音量(level2<level3)である。図2に戻る。
擬似走行音制御部40は、車両1000が道路内から道路外へ移動したときに、音色をtone2に維持し、かつ音量をleve2に維持するよう制御を実行する。また、擬似走行音制御部40は、走行状態がTRUEの状態、つまり発進状態において、tone2とtone3の合成音の生成を生成部42へ指示する。また、擬似走行音制御部40は、level3への音量の増大を音量調節部44へ指示する。さらに、擬似走行音制御部40は、時間の経過とともに、level3からleve2への音量の減少を音量調節部44へ指示してもよい。このような制御によって、発進に応じて擬似走行音230を変化させ、歩行者や自転車搭乗者へ注意を促すことができる。
次に、図1の第3車両1000cを説明の対象にする。擬似走行音制御部40は、距離データ212から、内外判定部56での推定結果を抽出する。推定結果において、車両1000が道路上に存在すると推定されている場合、発進判定結果222、停止期間224をもとに、擬似走行音230の出力を制御する。具体的に説明すると、擬似走行音制御部40は、発進判定結果222における走行状態に関する情報が停止を示していれば、停止期間224に応じて、擬似走行音230の出力を制御する。例えば、擬似走行音制御部40は、停止期間224が長くなるほど、騒音性が高く、かつ音量が大きくなるように、擬似走行音230を制御する。さらに、擬似走行音制御部40は、発進判定結果222における走行状態に関する情報が、一定期間以上の停止から発進へ変化しているかに応じても、擬似走行音230の出力を制御する。例えば、停止期間224が一定期間以上長くなった後に、走行状態が停止から発進に変化するときに、擬似走行音制御部40は、騒音性が高く、かつ音量が大きくなるように、擬似走行音230を制御する。このような処理は、さらに別のテーブルにもとづいてなされる。
図8は、擬似走行音制御部40に記憶されたさらに別のテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、停止期間欄820、発進判定欄830、音色欄840、音量欄850が含まれる。停止期間欄820には、停止期間224に対する判定条件が示される。ここでは、「停止期間224がしきい値未満の場合」と、「停止期間224がしきい値以上の場合」とに分類される。発進判定欄830は、走行状態に相当し、これは、図7と同様に、発進判定部34での判定結果に相当する。また、音色欄730は、生成部42に生成させる音色を示し、音量欄740は、音量調節部44に調節させる音量(level1<level2<level3)である。図2に戻る。
擬似走行音制御部40は、停止期間224がしきい値未満の場合に、tone2とlevel1を選択し、生成部42および音量調節部44を制御する。ここで、しきい値は、例えば、300秒のように設定される。また、擬似走行音制御部40は、停止期間224がしきい値P1以上になった場合に、tone2およびlevel2を選択し、生成部42および音量調節部44を制御する。なお、擬似走行音制御部40は、level1からlevel2へ音量が増大するように音量調節部44を制御してもよい。さらに、発進判定がTRUEになると、擬似走行音制御部40は、tone2とtone3の合成音の生成を生成部42に指示するとともに、level3へ音量を増大させるように音量調節部44に指示する。なお、擬似走行音制御部40は、時間の経過とともにlevel3から減少するように音量を制御させてもよい。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
以上の構成による擬似走行音発生装置100の動作を説明する。図9は、擬似走行音発生装置100による発生手順を示すフローチャートである。車両1000が道路上に存在し(S10のY)、道路外へ移動する場合(S12のY)、擬似走行音制御部40は、方向差分に応じて擬似走行音230を制御する(S14)。道路外へ移動せず(S12のN)、路上駐車である場合(S16のY)、擬似走行音制御部40は、擬似走行音230を制御する(S18)。路上駐車でない場合(S16のN)、ステップ18はスキップされる。車両1000が道路上に存在せず(S10のN)、発進する場合(S20のY)、擬似走行音制御部40は、擬似走行音230を制御する(S22)。発進しない場合(S20のN)、ステップ22はスキップされる。
本発明の実施例によれば、車両が道路上に存在しているか、車両が道路外に存在しているかに応じて、車両の擬似走行音の出力を制御するので、車両の周囲の状況に応じた制御を実行できる。また、車両の周囲の状況に応じた制御が実行されるので、擬似走行音の発生が必要とされる場合に擬似走行音の出力を適切に制御できる。また、道路上に存在する場合に、方向差分をもとに、道路上から道路外へ移動する場合を推定するので、推定精度を向上できる。また、車両が道路上に存在することを推定した場合、道路の端と車両との間の距離が小さいかを検出するので、道路上から道路外へ移動する場合と、道路上において方向転換する場合とを分離できる。また、道路上から道路外へ移動する場合と、道路上において方向転換する場合とが分離されるので、道路上から道路外へ移動する場合をより高精度に推定できる。また、道路上から道路外へ移動する場合がより高精度に推定されるので、歩道において人等に接近しやすい状況に擬似走行音を出力できる。
また、車両が道路外に存在することを推定した場合、駐車場等での車両の発進に応じて擬似走行音の出力を制御するので、人等に接近しやすい状況に擬似走行音を出力できる。また、車両が道路上に存在する場合よりも、車両が道路外に存在する場合に、擬似走行音を出力しやすくするので、人等に対して車両の存在の通知を容易にできる。また、車両が低速で移動する状況であっても車両の動作を判定でき、車両の動作に応じて擬似走行音の制御を行うことにより、歩行者や自転車搭乗者の安全性を向上させることができる。
また、車両が道路上に存在することを推定した場合、停止の期間に応じて、車両の擬似走行音の出力を制御するので、道路上の停止であっても、路上駐車している場合と、赤信号や渋滞等で一旦停止している場合とを分離できる。また、赤信号や渋滞等で一旦停止している場合に、擬似走行音の出力を抑制するので、低騒音性を維持できる。また、路上駐車している場合に擬似走行音を出力するので、車両の存在を通知できる。また、一定期間以上の停止から発進へ変化しているかに応じて、車両の擬似走行音の出力を制御するので、路上駐車から発進する場合に車両の擬似走行音を増大できる。また、歩行者や自転車搭乗者に電気自動車や燃料電池自動車の存在を認識させることができる。また、車両の動作を予測し得る擬似走行音を生成できる。
また、車両が道路上に存在するか道路外に存在するかに応じて、制御を変えるので、車両の周囲の状況に応じた詳細な制御を実現できる。また、車両が道路上に存在する場合、道路外に進行しようとしているか、路上駐車をしているかに応じて、制御を変えるので、車両の周囲の状況に応じた詳細な制御を実現できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、報知音として車両の擬似走行音を例示している。しかしながらこれに限らず例えば、報知音が車両の擬似走行音以外の音であってもよい。ようは、歩行者や自転車搭乗者に注意を喚起することができる音であればよい。本変形例によれば、さまざまな報知音に本発明を適用できる。