ところで、上記のように、スナップリングの装着を手作業で行う場合には、スナップリングのC字形状開口部をシャフトのリング溝に引っ掛けて開き入れる際に、スナップリングの弾性変形を利用している。このとき、スナップリングの開き量によっては、スナップリングの弾性変形限度を超えてしまう場合があり、この場合にはスナップリングの弾性復帰量にバラツキが生じる。また、作業者は、指でスナップリングを弾性変形させるため、作業者の指先に大きな負担が掛かっていた。
一方、上記の特許文献1に開示された組付用治具を用いてスナップリングを装着する場合には、伝動ワークに対して、ガイド治具の位置合わせガイド部材およびガイドテーパ部材を位置決めしセンタリングした状態で取り付ける工程、ガイドテーパ部材にスナップリングを嵌合させて設置する工程、押し込み治具でスナップリングを軸方向に押し込んでスナップリング溝に嵌合させる工程、押し込み治具およびガイド治具を伝動ワークから取り外す工程を順に行う必要がある。そのため、一連の作業工程数が多いことから、作業時間が長時間化するという問題があった。また、最初に行われる伝動ワークにガイド治具を取り付ける工程の作業は、位置決めおよびセンタリングをしなければならないため、手間が掛かり煩雑である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業者への負担が少なく、スナップリングの装着作業を簡易に行い得るようにしたスナップリング装着装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
軸部材に設けられたリング溝にC字形状のスナップリングを装着させるスナップリング装着装置であって、
拡大および縮小可能な挿通孔を形成する複数の可動板を有し、該可動板の前記挿通孔の周囲に載置される前記スナップリングを支持する可動支持部と、
前記挿通孔に挿通配置されて、前記可動板上に載置された前記スナップリングに対し軸方向に相対移動可能に設けられ、一端部に連結された前記軸部材と共に軸方向に相対移動し前記軸部材の一端部が前記スナップリングに接近するにつれて前記スナップリングを徐々に拡径させる倣い部を有する倣いセンタと、
を備え、
前記可動板は、前記倣いセンタにより前記スナップリングが拡径するのと同期して、前記軸部材の一端部が前記スナップリングに接近するにつれて前記挿通孔が徐々に拡大するように前記スナップリングの径方向へ移動可能に設けられていることである。
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記可動板上に載置された前記スナップリングに対して、軸方向に相対移動する前記倣いセンタと前記径方向に相対移動する前記可動板との間には、両者が接触しないよう所定の隙間が保持されていることである。
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記倣いセンタは、前記スナップリングを徐々に拡径させる第1倣い部と、前記挿通孔が徐々に拡大するように前記可動板を移動させる第2倣い部とを有することである。
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、前記第1倣い部と前記第2倣い部は、同軸状に配置されていることである。
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記挿通孔は、前記スナップリングが前記可動板上に載置される前において、前記スナップリングのC字形状開口部の開口幅よりも小さくされていることである。
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記倣いセンタは、前記倣い部で前記スナップリングを徐々に拡径させるように移動する方向と対向する方向に付勢する付勢部材を介して支持されていることである。
請求項7に係る発明の特徴は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記倣いセンタの一端部近傍部に設けられ、前記倣いセンタに連結される前記軸部材を前記倣いセンタの一端部に案内するラフガイドを備えていることである。
上記のように構成した請求項1に係る発明のスナップリング装着装置によれば、装着すべきスナップリングを可動板上に載置する際には、複数の可動板により拡大および縮小可能に形成される挿通孔の大きさを最小にしておくことにより、スナップリングのC字形状開口端部が挿通孔に引っ掛かって可動板上の適正位置に載置されなかったり、挿通孔から脱落したりするのを防止することができる。
また、軸部材を倣いセンタの一端部に連結させた状態で軸方向に相対移動させる際には、可動板は、倣いセンタによりスナップリングが拡径するのと同期して、軸部材の一端部がスナップリングに接近するにつれて挿通孔が徐々に拡大するようにスナップリングの径方向へ移動する。このとき、可動板は、倣いセンタの倣い部の形状に倣って径方向へ移動し、挿通孔は、スナップリングが脱落することなく、軸部材が進入可能な大きさに拡大される。この可動板の径方向への移動は、倣いセンタの軸方向への移動を利用することができるので、可動板を移動させるための専用の駆動部を必要としない。そのため、簡素な構造のスナップリング装着装置を実現することができる。
また、本発明のスナップリング装着装置によれば、スナップリングは、倣いセンタの倣い部によって拡径させるようにしているため、スナップリングの拡径量や弾性復帰による縮径量を一律にすることができ、品質管理が容易になるとともに、作業者の指先への負担を無くすことができる。また、作業者は、軸部材を倣いセンタの一端部に連結させた状態で、可動板上に載置されたスナップリングに対して、軸方向に相対移動させる作業を行うのみでよいため、スナップリングの装着作業を簡易に行うことができる。さらに、作業者の手作業時間を短縮することができ、手作業時間のバラツキも無くすことができる。
請求項2に係る発明によれば、可動板上に載置されたスナップリングに対して、軸方向に相対移動する倣いセンタと径方向に相対移動する可動板との間には、両者が接触しないよう所定の隙間が保持されている。即ち、本発明では、倣いセンタの倣い部は、軸方向において凹凸となった外周面(倣い形状)を有することから、倣いセンタが軸方向に移動する際に、凸部が可動板と接触または摺動し易い。そのため、倣いセンタと可動板が相対移動する際に、互いに所定の隙間を保持しつつ移動するようにされていることで、倣いセンタが可動板と接触または摺動することなく円滑に移動することができる。
請求項3に係る発明によれば、倣いセンタは、スナップリングを徐々に拡径させる第1倣い部と、挿通孔が徐々に拡大するように可動板を移動させる第2倣い部とを有する。これにより、第2倣い部で可動板を移動させるので、可動板を移動させるための専用の駆動部を必要としない。そのため、簡素な構造のスナップリング装着装置を実現することができる。
請求項4に係る発明によれば、第1倣い部と第2倣い部は、同軸状に配置されている。そのため、第1倣い部および第2倣い部の芯出しを容易に行うことができる。また、第1倣い部および第2倣い部の倣い形状の精度を高めることができる。これにより、請求項2において、倣いセンタと可動板との間に設けられる所定の隙間を、より小さくして確実に形成することが可能となる。
請求項5に係る発明によれば、挿通孔は、スナップリングが可動板上に載置される前において、スナップリングのC字形状開口部の開口幅よりも小さくされている。これにより、装着すべきスナップリングを可動板上に載置する際に、スナップリングのC字形状開口端部が挿通孔に引っ掛かって可動板上の適正位置に載置されなかったり、挿通孔から脱落したりするのをより確実に防止することができる。
請求項6に係る発明によれば、倣いセンタは、倣い部でスナップリングを徐々に拡径させるように移動する方向と対向する方向に付勢する付勢部材を介して支持されている。これにより、軸部材を倣いセンタと共に軸方向に移動させて軸部材のリング溝にスナップリングを装着させた後、軸部材を軸方向に移動させて挿通孔から抜き取る抜る際に、付勢部材の付勢力を利用することによって、抜き取り作業を簡易に行うことができる。
請求項7に係る発明によれば、倣いセンタの一端部近傍部に設けられ、倣いセンタに連結される軸部材を倣いセンタの一端部に案内するラフガイドを備えている。これにより、軸部材を倣いセンタの一端部に連結させる際に、ラフガイドにより軸部材が適正位置に案内されるため、軸部材の位置合わせを簡単且つ容易に行うことができる。
以下、本発明の実施形態に係るスナップリング装着装置について図1〜図12を参照して説明する。
本実施形態のスナップリング装着装置は、等速ジョイントのシャフト(軸部材)1の一端部に設けられたリング溝1aに、C字形状のスナップリング2を装着させるものである。このスナップリング装着装置は、図1〜図7に示すように、基台10と、一対の可動板23上に載置されたスナップリング2を支持する可動支持部20と、倣いセンタ30と、倣いセンタ30を支持する支持部材40と、スナップリング2が収納されたカートリッジ50と、カートリッジ50のスナップリング2を可動板23上へ送り出す供給装置60とを備えている。
基台10は、所定の厚みを有する矩形の板状部材よりなり、スナップリング装着装置のほぼ中央部に水平方向に拡がるように設置されている。この基台10のほぼ中央部には、図4に示すように、基台10の厚み方向に貫通する円孔11が設けられている。この円孔11は、シャフト1および倣いセンタ30の外径よりも少し大きくされている。円孔11の両側(図4の上下方向両側)には、基台10の厚み方向に貫通するほぼ矩形の一対の矩形孔12、13が設けられている。この矩形孔12、13は、円孔11を挟んで対称となる位置に設けられている。
そして、基台10の上面の円孔11の一方側(図4の右側)には、スナップリングを円孔11の一方側(図4の右側)から円孔11の中心に向かって案内するガイド14が設けられている。また、ガイド14の両側(図4の上下方向両側)には、供給装置50の送り出し部63を案内する2本の案内部材15、16が、ガイド14と平行に設けられている。また、円孔11の周囲には、図1および図2に示すように、円孔11内に挿通配置される倣いセンタ30の上端に連結されるシャフト1を、倣いセンタ30の上端の所定位置に案内するラフガイド17が設けられている。なお、このラフガイド17は、基台10の上面に設けられるガイド14や案内部材15、16などの他の部材と干渉しないように設けられている。
可動支持部20は、図7に示すように、矩形ブロック形状の一対の固定基部21と、ほぼL字形状の一対の可動基部22と、一対の可動板23とを有する。固定基部21は、基台10の下面の矩形孔12、13の外側位置にそれぞれ固定されている。各固定基部21には、一対の固定基部21の対向方向に貫通する貫通孔21aが2個ずつ設けられている。そして、一対の固定基部21の内側(円孔11側)には、一対の可動基部22が配置されている。この可動基部22には、固定基部21の各貫通孔21a内にそれぞれの一端側が摺動可能に嵌挿された水平シャフト24のそれぞれの他端部が固着されている。これにより、可動基部22は、固定基部21に対してそれらの対向方向(図7の左右方向)に相対変位可能とされている。
そして、可動基部22は、固定基部21との間に配設されたコイルばね25により、可動基部22同士が接近する方向に常時付勢されている。可動基部22が互いに最も接近したときには、それぞれの矩形孔12、13のほぼ真下に位置している。可動基部22の下端部には、可動基部22同士が接近する方向に突出するようにしてそれぞれ一対のローラ26が取り付けられている。一対のローラ26は、回転軸26aが水平方向に平行に延びるようにして上下に並んで配置されている。可動基部22の上端の平坦部は、その厚み方向のほぼ半分が矩形孔12、13内に入り込んでいる。
そして、可動基部22のそれぞれの平坦部の上面には、図3および図7に示すように、一対の可動板23がねじ27によりそれぞれ固定されている。一対の可動板23の互いに対向する端面には、円弧状の凹部が形成されており、この円弧状の凹部によって挿通孔28を形成する。この挿通孔28は、円弧状の凹部の深さ方向の長さが最も短くなるように形成されている。即ち、挿通孔28の可動板23が対向する方向の長さは、スナップリング2が可動板23上に載置される前には、スナップリング2のC字形状開口部の開口幅よりも小さくされている。これにより、可動板23上に供給されるスナップリング2が、可動板23上の適正位置に載置されなかったり、挿通孔28から脱落したりするのをより確実に防止するようにされている。
この挿通孔28は、一対の可動板23が最も接近して互いに対向する端面同士が接触したときに最小の大きさになり、可動板23が互いに遠ざかるように径方向に移動するにつれて徐々に拡大する。なお、可動基部22のそれぞれの平坦部の外側端部には、矩形孔12、13から上方に突出する突出部22aを有する。
倣いセンタ30は、図6および図7に示すように、基台10の円孔11および挿通孔28に挿通された状態に配置されている。この倣いセンタ30は、可動板23上に載置されたスナップリング2を徐々に拡径させる第1倣い部31と、挿通孔28が徐々に拡大するように可動板23を移動させる第2倣い部32と、支持基部33とを有する。第1倣い部31は、下方に向かうにつれて小径となるテーパ形状に形成されて、倣いセンタ30の最上端に設けられている。第2倣い部32は、第1倣い部31と同様に、下方に向かうにつれて小径となるテーパ形状に形成されており、第1倣い部31の下方に連続するように設けられている。第1倣い部31と第2倣い部32は、同軸状に配置されている。この倣いセンタ30は、第1倣い部31の下方にある小径部が挿通孔28内に位置し、第2倣い部32の下方にある小径部に可動基部22のローラ26の外周面が当接する状態に配置されている。
なお、挿通孔28内に位置する第1倣い部31の下方にある小径部と、挿通孔28を形成している一対の可動板23との間には、所定の隙間が形成されている。この隙間は、可動板23上に載置されたスナップリング2に対して、倣いセンタ30が軸方向に相対移動するとともに可動板23が径方向に相対移動する際に、倣いセンタ30と可動板23が接触しないように常時保持されるようになっている。
倣いセンタ30の支持基部33は、一対の可動板23の対向方向と直交する方向に延びる一対の腕部33aと、第1および第2倣い部31、32の延伸方向に同軸状に延びる軸状部33bとを有する。倣いセンタ30は、下端側に設けられた支持基部33が支持部材40により弾性的に支持されている。なお、倣いセンタ30の上端面には、倣いセンタ30の上端に連結されるシャフト1との位置決めをするための芯だし凸部35が設けられている。また、シャフト1のリング溝1aが設けられている側の端面には、倣いセンタ30芯だし凸部35と嵌合する凹部1bが設けられている。芯だし凸部35と凹部1bが嵌合すると、シャフト1と倣いセンタ30は、同軸となる状態に連結される。
支持部材40は、倣いセンタ30の軸状部33bが軸方向に相対変位可能に嵌挿される嵌挿孔41aと、倣いセンタ30の一対の腕部33aにそれぞれ一端が連結固定された2本の支持バー42が軸方向に相対変位可能に嵌挿される一対の嵌挿孔41bとを有する本体部41を備える。各支持バー42の外周には、上端が腕部33aに当接し下端が嵌挿孔41bの底部に当接するコイルばね43がそれぞれ装着されている。これにより、倣いセンタ30は、コイルばね43の上方への付勢力によって弾性的に支持されている。本体部41は、スナップリング装着装置の骨格部材である側板18に、ブラケット44等を介して固定されている。
なお、倣いセンタ30の軸状部33bの下端には、被検出部34が取り付けられている。この被検出部34は、軸状部33bの下端が連結部材46に設置されたセンサ45の位置まで下降したときに、センサ45により検出される。センサ45の検出信号は、カートリッジ50内のスナップリング2の送り出しを制御する制御部に送られ、次に装着されるスナップリング2の準備をするようになっている。
カートリッジ50は、円筒状に形成されており、その内部には多数のスナップリング2が積層された状態で収納されている。このカートリッジ50は、基台10の上面に設けられたガイド14の始端側(図3、図4の右側)の所定位置に鉛直方向に立設されている。このカートリッジ50に収納されているスナップリング2は、センサ45の検出信号に基づいて、最下方に位置するものから順に1個ずつ供給装置60により可動板23上へ送り出される。
供給装置60は、図1および図2に示す用に、油圧シリンダ61と、油圧シリンダ61のシリンダロッド61aにより作動する作動部62と、作動部62に固定された送出し部63とを有する。油圧シリンダ61は、スナップリング装着装置の骨格部材である図示しない側板(図1の手前側にある)に固定されて、基台10の下方に配設されている。この油圧シリンダ61は、基台10に設けられたガイド14および案内部材15、16の延伸方向(図1の左右方向)に、シリンダロッド61aが伸縮動するように配設されている。作動部62は、シリンダロッド61aの先端に取り付けられており、シリンダロッド61aの伸縮動に伴って作動する。この作動部62は、シリンダロッド61aの伸縮ストローク間の距離Lだけ移動する。
送出し部63は、コ字形状の支持枠63aと、支持枠63aに周縁部を保持されたV形プレート63bとからなる。V形プレート63bは、スナップリング2の厚みよりも薄い金属プレートにより形成されている。このV形プレート63bは、支持枠63aのコ字形状開口部側の端面がV字形状に形成されており、このV字形状部でスナップリング2を保持しつつ押し出すようにされている。この送出し部材63は、支持枠63aのコ字形状中央部が作動部62の上端面に固定され、支持枠63aのコ字形状両側の平行部が基台10の上面に設けられた案内部材15、16により案内されるようになっている。これにより、送出し部材63は、シリンダロッド61aの伸縮動に伴って、案内部材15、16に沿ってスライドするように構成されている。
以上のように構成された本実施形態のスナップリング装着装置を用いて、シャフト1の一端部に設けられたリング溝1aにスナップリング2を装着するには、先ず、供給装置60を作動させてカートリッジ50から装着すべき1個のスナップリング2を送り出して、可動板23の挿通孔28の周囲に載置する(図8および図9参照)。その後、供給装置60は、初期位置(図10および図11参照)に戻る。そして、作業者が、挿通孔28に挿通配置された倣いセンタ30の上端面に、リング溝1aが設けられているシャフト1の一端面を、ラフガイド17を利用して連結させた状態にする。このとき、シャフト1の一端部は、ラフガイド17に案内されることにより、倣いセンタ30の芯だし凸部35とシャフト1の凹部1bが嵌合し、シャフト1と倣いセンタ30は、同軸状態に連結される。
この状態で、シャフト1をさらに押し込んで、可動板23上に載置されたスナップリング2に対して、シャフト1を倣いセンタ30と共に軸方向に相対移動させる。これにより、シャフト1および倣いセンタ30が移動するにつれて、倣いセンタ30の第1倣い部31が可動板23上に載置されたスナップリング2を徐々に拡径させる。これと同期して、可動板23上に載置されたスナップリング2にシャフト1の一端部が接近するにつれて、倣いセンタ30の第2倣い部32により可動板23がスナップリング2の径方向の一方(図3、図4の上下方向)に移動し、挿通孔28が徐々に拡大する。これにより、挿通孔28は、挿通孔28の位置まで到達したシャフト1の一端部が挿通孔28内に進入可能な大きさに拡大する。
これと同時に、軸方向に移動するシャフト1の一端部が、倣いセンタ30の第1倣い部31により拡径したスナップリング2の内側を通過して挿通孔28内に進入する。そして、シャフト1の一端部のリング溝1aが、可動板23上に載置されたスナップリング2に到達すると、スナップリング2が弾性復帰により縮径してリング溝1a内に装着される(図12参照)。このとき、シャフト1のリング溝1aが可動板23上に載置されたスナップリング2に到達すると、倣いセンタ30の軸状部33bの下端に取り付けられた被検出部34がセンサ45により検出される。このセンサ45の検出信号は、カートリッジ50内のスナップリング2の送り出しを制御する制御部に送られ、次に装着されるべきスナップリング2を、供給装置60でカートリッジ50から送り出し可能な状態に準備して待機する。
その後、シャフト1を押し込み方向と逆方向の上方側に相対移動させて、スナップリング2が装着されたシャフト1を挿通孔28から抜き取る。このとき、倣いセンタは30は、支持部材40に設けられたコイルばね43の付勢力のより軸方向の上方側へ移動し、図7に示す初期位置に戻されることにより、スナップリングの装着作業が終了する。
以上のように、本実施形態のスナップリング装着装置によれば、装着すべきスナップリング2を可動板23上に載置する際には、複数の可動板23により形成される挿通孔28の大きさを最小にしておくことにより、スナップリング2のC字形状開口端部が挿通孔28に引っ掛かって可動板23上の適正位置に載置されなかったり、挿通孔28から脱落したりするのを防止することができる。
また、シャフト1を倣いセンタ30の一端部に連結させた状態で軸方向に相対移動させる際には、可動板23は、倣いセンタ30によりスナップリング2が拡径するのと同期して、シャフト1の一端部がスナップリング2に接近するにつれて挿通孔28が徐々に拡大するようにスナップリング2の径方向へ移動する。このとき、可動板23は、倣いセンタ30の第2倣い部32の形状に倣って径方向へ移動し、挿通孔28は、スナップリング2が脱落することなく、シャフト1が進入可能な大きさに拡大される。この可動板23の径方向への移動は、倣いセンタ30の軸方向への移動を利用することができるので、可動板23を移動させるための専用の駆動部を必要としない。そのため、簡素な構造のスナップリング装着装置を実現することができる。
また、本実施形態のスナップリング装着装置によれば、スナップリング2は、倣いセンタ30の第1倣い部31によって拡径させるようにしているため、スナップリング2の拡径量や弾性復帰による縮径量を一律にすることができ、品質管理が容易になるとともに、作業者の指先への負担を無くすことができる。また、作業者は、シャフト1を倣いセンタ30の一端部に連結させた状態で、可動板23上に載置されたスナップリング2に対して、軸方向に相対移動させる作業を行うのみでよいため、スナップリング2の装着作業を簡易に行うことができる。さらに、作業者の手作業時間を短縮することができ、手作業時間のバラツキも無くすことができる。
また、本実施形態では、可動板23上に載置されたスナップリング2に対して、軸方向に相対移動する倣いセンタ30と径方向に相対移動する可動板23との間に、所定の隙間が保持されている。そのため、倣いセンタ30と可動板23が相対移動する際に、互いに所定の隙間を保持しつつ移動するようにされているので、倣いセンタ30が可動板23と接触または摺動することなく円滑に移動することができる。
また、本実施形態では、倣いセンタ30は、スナップリング2を徐々に拡径させる第1倣い部31と、挿通孔28が徐々に拡大するように可動板23を移動させる第2倣い部32とを有する。これにより、第2倣い部32で可動板23を移動させるので、可動板23を移動させるための専用の駆動部を必要としない。そのため、簡素な構造のスナップリング装着装置を実現することができる。
さらに、第1倣い部31と第2倣い部32は、同軸状に配置されているため、第1倣い部31および第2倣い部32の芯出しを容易に行うことができる。また、第1倣い部31および第2倣い部32の倣い形状の精度を高めることができるので、倣いセンタ30と可動板23との間に設けられる所定の隙間を、より小さくして確実に形成することが可能となる。
そして、本実施形態では、挿通孔28は、スナップリング2が可動板23上に載置される前において、スナップリング2のC字形状開口部の開口幅よりも小さくされている。これにより、装着すべきスナップリング2を可動板23上に載置する際に、スナップリング2のC字形状開口端部が挿通孔28に引っ掛かって可動板23上の適正位置に載置されなかったり、挿通孔28から脱落したりするのをより確実に防止することができる。
さらに、本実施形態では、倣いセンタ30は、支持部材40に設けられたコイルばね43によって、シャフト1の押し込み方向と逆方向の上方側に付勢されている。そのため、シャフト1を倣いセンタ30と共に軸方向に移動させてシャフト1のリング溝1aにスナップリング2を装着させた後、シャフト1を軸方向に移動させて挿通孔28から抜き取る抜る際に、コイルばね43の付勢力を利用することによって、抜き取り作業を簡易に行うことができる。
また、本実施形態では、倣いセンタの上端部近傍に、倣いセンタ30に連結されるシャフト1を倣いセンタ30の一端部に案内するラフガイド17を備えている。これにより、シャフト1を倣いセンタ30の一端部に連結させる際に、ラフガイド17によりシャフト1が適正位置に案内されるため、シャフト1の位置合わせを簡単且つ容易に行うことができる。
なお、上記実施形態においては、倣いセンタ30によりスナップリング2が拡径するのと同期して、シャフト1の一端部がスナップリング2に接近するにつれて挿通孔28が徐々に拡大するように可動板23を移動させる際に、倣いセンタ30の第2倣い部32を利用するようにしているが、倣いセンタ30の第2倣い部32に代えて、例えばサーボモータなどの駆動部材を用いて、可動板23を移動させるようにしてもよい。但し、この場合には、スナップリング装着装置の構造の簡素化は困難となる。
また、上記実施形態においては、倣いセンタ30が、スナップリング2を徐々に拡径させる第1倣い部31と、挿通孔28が徐々に拡大するように可動板23を移動させる第2倣い部32と有するように構成されているが、第1倣い部31と第2倣い部32を一つの倣い部で共用するようにしてもよい。但し、この場合には、倣い部と可動板23が摺動することとなるため、倣い部による可動板23の径方向への移動を円滑に行うことが困難になり、トラブルが発生し易くなる。
なお、本発明のスナップリング装着装置は、等速ジョイント以外の機器に採用される回転軸やロッド等の部品に対してスナップリングを装着する場合にも適用可能である。