JP5332742B2 - パーキングロック機構 - Google Patents
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[パーキングロック機構の締結動作について]
次に、パーキングロック機構6の締結動作について説明する。ドライバによりセレクトレバーがPレンジにセレクト操作されると、ポジションセンサからPレンジに対応する出力がACTコントローラ7に出力される。これに対し、ACTコントローラ7は、左右のパーキングロック機構6に締結の指令信号を出力する。これにより、パーキングロックアクチュエータ11が作動してパーキングロッド63をパーキングポール62側(前進側)へ移動させる。そうすると、カム63cがサポート10に乗り上げて、パーキングポール62の先端を下側から上側に向けて押し上げると同時に、パーキングポール62がポールシャフト64を中心に回転する。そして、図5に示すように、パーキングポール62の凸部62aが、歯溝61bの歯底面に当接する場合には、凸部62aが歯溝61bに噛合するので、パーキングロック機構6が締結状態となる。この結果、駆動モータ3のロータ軸33の回転、即ち、後輪9の回転が規制され、車両の停止状態が維持される。また、凸部62aが歯先面61cに当接する場合には、カム63cがコイルスプリング63dのバネ荷重に抗して基端側ロッド63bを後退側に向けて摺動し、パーキングロッド63のストロークに対する逃げを確保する。これにより、パーキングポール62の凸部62aが歯先面61cに無理に押し付けられることがなくなり、パーキングロック機構6の故障が防止される。即ち、凸部62aが歯先面61cに当接する場合は、パーキングロックギヤ61が僅かに回転して凸部62aと歯溝61bが噛合することで、パーキングロック機構6が締結状態となる。この結果、駆動モータ3のロータ軸33の回転、即ち、後輪9の回転が規制され、車両の停止状態が維持される。車両がある程度の速度以上で走行しておりパーキングロックギヤが高速回転している場合も、カム63cがコイルスプリング63dのバネ荷重に抗して基端側ロッド63bを後方側に向けて摺動するので、パーキングロック機構6の故障が防止される。
次に、パーキングロック機構6の解除動作について説明する。ドライバによりセレクトレバーがPレンジから他のレンジにセレクト操作されると、ポジションセンサからPレンジ以外に対応する出力がACTコントローラ7に出力される。これに対し、ACTコントローラ7は、左右のパーキングロック機構6に解除の指令信号を出力する。これにより、パーキングロックアクチュエータ11は、図5で説明したパーキングロック機構6の締結状態からパーキングロッド63を元位置に復帰させて凸部62aと歯溝61bの噛合を解除することにより、図4で説明したパーキングロック機構6を解除状態に移行させる。この結果、後輪9の回転が解除され、車両が移動可能となる。なお、パーキングロック機構6が締結状態から解除状態へ移行したかどうかは、その旨がパーキングロック位置センサ64aを介してACTコントローラ7に出力され、パーキングロック位置判定部7hで判定される。
図6に示すように、先ず、ステップS1では、ACTコントローラ7が、Pレンジから他のレンジへのセレクト操作が行われたかどうかを判定し、YESの場合には、ステップS2に移行し、NOの場合には処理を終了する。ステップS2では、ACTコントローラ7が、FLG1がONかどうかを判定し、YESの場合にはステップS3に移行し、NOの場合には処理を終了する。ステップS3では、ACTコントローラ7が、左右のパーキングロック機構6に解除の指令信号を出力してステップS4に移行する。ステップS4では、ACTコントローラ7(フェイル判定部7f)が、左右のパーキングロック機構6が締結状態から解除状態に移行できたかどうかを判定し、YESの場合には処理を終了し、NOの場合にはステップS5に移行する。
ここで、例えば、図7に示すような傾斜勾配の大きい(例えば傾斜勾配率30%等)の坂道や低μ路において停車中の電気自動車1が発進を行う場合を想定する。この際、図8(a)に示すように、Pレンジにセレクト操作されて停車中であるため、左右のパーキングロック機構6は締結(ロック)状態となっている。この状態からドライバによりフットブレーキが踏まれてPレンジからDレンジへのセレクト操作が行われると、ACTコントローラ7は、FLG1がONかどうかを判定した後、パーキングロック機構6に異常が無い場合には、左右のパーキングロック機構6に解除の指令信号を出力する(図6のステップS1→ステップS2→ステップS3)。これにより左右のパーキングロック機構6が締結状態から解除状態に移行しようとする。しかしながら、この際、図8(b)に示すように、左右一方のパーキングロック機構6(図8中では右のパーキングロック機構6)のみが何らかの不具合により締結状態から解除状態へ移行できない場合には、予期しない車両挙動が発生する虞がある。そこで、実施例1では、左右のパーキングロック機構6に解除の指令信号を出力した後に、左右のパーキングロック機構6が同時に解除されているかどうかを判定するようにしている(図6のステップS4)。そして、右のパーキングロック機構6が解除されず、左のパーキングロック機構6のみが解除された場合には、フェイルと判定して左のパーキングロック機構6が再締結される(ステップS4→ステップS5→ステップS7)。これにより、図8(c)に示すように、左右のパーキングロック機構6が再び締結状態となるため、停車状態を維持でき、予期しない車両挙動が発生を防止できる。同様に、左のパーキングロック機構6を解除できず、右のパーキングロック機構6のみが解除された場合には、フェイルと判定して右のパーキングロック機構6が再締結される(ステップS4→ステップS5→ステップS6)。これにより、左右のパーキングロック機構6が共に締結状態となるため、停車状態を維持でき、予期しない車両挙動の発生を防止できる。
実施例1の車両のパーキングロック機構では、車両挙動を抑制するために液圧ブレーキを用いないため、従来の発明に比べて、複雑な機械構造、油圧回路、及び制御を追加する必要がなく、製造・開発コストを低く抑えることができる。また、パーキングロック機構6が解除できたかどうかを判定して、フェイルと判断した場合には、解除可能な他のパーキングロック機構6を再締結するという簡単な制御でもって、車両挙動を抑制できる。
(1)複数のパーキングロック機構6と、複数のパーキングロック機構6のうちの少なくとも1つのパーキングロック機構6が解除できない場合には、フェイルと判定するフェイル判定手段(フェイル判定部7f)と、フェイル判定手段(フェイル判定部7f)によりフェイルと判断した場合には、解除可能な他のパーキングロック機構6を締結状態とする再締結手段(再締結部7g)と、を備えることとした。これにより、予期しない車両挙動を安価に抑制できる。
(2)フェイル判定手段(フェイル判定部7f)は、パーキングロック機構6に解除指令がなされてから所定時間(時点t3)内に締結状態から解除状態へ移行できなかった場合にフェイルと判定することとした。これにより、パーキングロック機構6の解除に要する時間に上限を定めることで予期しない車両挙動を許容範囲内に抑制できる。
(3)フェイル判定手段(フェイル判定部7f)は、左右のパーキングロック機構6のうち、解除に要する時間の推定値が最も長いものを所定時間(時点t3)とすることとした。これにより、車両状況に応じてフェイル判定を行えるため、フェイル判定までの時間を短縮できる。
(4)ACTコントローラ7(フェイル判定部7f)は、所定時間範囲L1で締結状態から解除状態へ移動できなかった場合にフェイルと判断することとした。これにより、ドライバのPレンジ解除操作から実際に解除されるまでの時間に大きな差異を与えることがなく、また、左右のパーキングロック機構6に解除タイミングの差が大きくなりすぎないようにフェイル判定することで、違和感無く、予期しない車両挙動を抑制できる。
(5)ACTコントローラ7(フェイル判定部7f)は、所定のパーキングロック機構6が解除された時間から所定時間L2以上経っても他のパーキングロック機構6が解除されない場合にフェイルと判断することとした。これにより、最初に解除された時間からフェイル判定までの時間が大きくなりすぎないようにフェイル判定することで予期しない車両挙動を抑制できる。
(6)ACTコントローラ7(フェイル判定部7f)は、パーキングロック機構6へのこもりトルクの大きさに応じて所定時間(所定時間範囲共)を決めることとした。これにより、より正確なフェイル判定ができる。
(9)ACTコントローラ7(フェイル判定部7f)は、決められた所定時間が、予めまたは他の方法により設定された所定時間よりも長い場合にフェイルと判断することとした。これにより、パーキングロック機構6を作動させる前に予め定めた所定時間、または車両の傾斜等に応じて定められた時間でパーキングロック機構6の解除開始前にフェイル判定することで、車両挙動の変化を抑制できる。
(10)ACTコントローラ7(フェイル判定部7f)は、車両の左右の後輪9の回転位置または回転角度を検出し、左右の後輪9の回転位置または回転角度の間に所定値以上の差が発生した場合には、フェイルと判断することとした。これにより、実際の左右の後輪9の移動量から車両挙動を推定することにより、予期しない車両挙動を抑制できる。
(12)再締結手段(再締結部7g)は、パーキングロック機構6に解除指令がなされてからパーキングロック機構6が解除される前に、フェイル判定手段(フェイル判定部7f)によりパーキングロック機構6が解除できないと判断された場合には、解除可能なパーキングロック機構6の解除動作を中断して、締結動作を行うこととした。これにより、パーキングロック機構6の解除完了前にフェイル判定を行うことで、車両挙動の変化を抑制できる。
(13)再締結手段(再締結部7g)は、パーキングロック機構6のフェイル時に車両挙動が発生した際に、該車両挙動が最も小さくなる位置にあるパーキングロック機構6を作動させることとした。これにより、同じ車輪2の転がり量でも車両挙動を抑える効果が高い車輪2を判断してパーキングロック機構9を作動させることにより予期しない車両挙動を最小限に抑制できる。
(16)フェイル判定手段(フェイル判定部7f)は、パーキングロック機構6のパーキングロックアクチュエータ11が動き出した時点からの時間に基づいてフェイル判定することとした。これにより、ドライバの操作からパーキングロックアクチュエータ11の作動までのばらつきを排除でき、フェイル判定をより正確にできる。
例えば、車輪、駆動モータ、及びパーキングロック機構等の設置数、設置位置、及び具体的な機械的構造及び機械的動作はこの実施例に限定されるものではなく、適宜設定できる。また、パーキングロック機構が3つ以上ある場合に再締結させる解除可能なパーキングロック機構の選択方法についても適宜設定できる。さらに、車輪2の内側に駆動モータ3を収容した所謂インホイールモータを採用しても良い。
7f フェイル判定部
7g 再締結部
Claims (12)
- パーキングロックギヤと、前記パーキングロックギヤに噛合う噛合い部材とを有する複数のパーキングロック機構と、
前記パーキングロックギヤと前記噛合い部材との噛合いが解除されたことを検出可能なパーキングロック位置センサと、
前記複数のパーキングロック機構のうちの少なくとも1つのパーキングロック機構が解除できない場合には、フェイルと判定するフェイル判定手段と、
前記フェイル判定手段によりフェイルと判定された場合には、解除可能な他のパーキングロック機構を締結状態とする再締結手段と、を備え、
前記フェイル判定手段は、前記パーキングロック機構に解除指令がなされてから所定時間内に、前記パーキングロック位置センサにより前記パーキングロックギヤと前記噛合い部材との噛合い解除が検出されなかった場合に、フェイルと判定し、
前記所定時間は路面勾配の条件を考慮して予め設定されていることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記複数のパーキングロック機構のうち、解除に要する時間の推定値が最も長いものを前記所定時間とすることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1または2に記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記パーキングロック機構に解除指令がなされてからの前記所定時間内に代えて、前記所定時間からの所定時間範囲で、前記パーキングロック位置センサにより前記パーキングロックギヤと前記噛合い部材との噛合い解除が検出されなかった場合に、フェイルと判定することを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜3のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記パーキングロック機構へのこもりトルクの大きさに応じて前記所定時間を決めることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜4のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記パーキングロック機構の締結時の前記パーキングロックギヤの反力の大きさに応じて前記所定時間を決めることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜5のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記パーキングロック機構の締結時の前記噛合い部材またはサポートの歪み量に応じて前記所定時間を決めることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項4〜6のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記決められた所定時間が、予めまたは他の方法により設定された前記所定時間よりも長い場合にフェイルと判定することを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜7のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記再締結手段は、前記パーキングロック機構に解除指令がなされてから前記パーキングロック機構が解除される前に、前記フェイル判定手段によりフェイルと判定された場合には、前記解除可能な他のパーキングロック機構の解除動作を中断して、締結動作を行うことを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜8のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記再締結手段は、前記パーキングロック機構のフェイル時に車両挙動が発生した際に、該車両挙動が最も小さくなる位置にあるパーキングロック機構を作動させることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜8のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記再締結手段は、前記解除できなかったパーキングロック機構を回転中心としてヨー方向の車両の動きを抑制する位置にある前記パーキングロック機構を作動させることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜8のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記再締結手段は、前記解除できなかったパーキングロック機構に対して、最も遠い位置にある前記パーキングロック機構を作動させることを特徴とする車両のパーキングロック機構。 - 請求項1〜11のうちのいずれかに記載の車両のパーキングロック機構において、
前記フェイル判定手段は、前記パーキングロック機構のパーキングロックアクチュエータが動き出した時点からの時間に基づいてフェイルかどうかを判定することを特徴とする車両のパーキングロック機構。
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