図1は、本発明の一の実施の形態に係る吸収性物品1を長手方向に広げた状態にて示す平面図である。吸収性物品1は、着用者が着用する外装物品である使い捨ておむつ等の内側に取り付けられ、着用者からの軟便等の排泄物を受ける補助吸収具である。図1では、着用者に接する面(すなわち、着用者側)を手前側にして吸収性物品1を描いている。
図1に示すように、吸収性物品1は、平面視において略矩形状である略シート状の本体部2、および、本体部2の左右方向(本体部2の幅方向であり、図1中の左右方向に一致する。)の両側において左右方向に垂直な長手方向(すなわち、図1中の上下方向)のおよそ全長に亘って設けられた一対のサイドシート3を備える。本体部2の図1中における上側の部位は着用者の前側(腹側)の肌に接する部位であり、下側の部位は着用者の後側(背側)の肌に接する部位である。
図2ないし図6はそれぞれ、図1中に示すA−AないしE−Eの位置にて、吸収性物品1を長手方向に垂直な面で切断した断面図である。また、図7は、吸収性物品1を図1中に示すF−Fの位置にて左右方向に垂直な面で切断した断面図である。図2ないし図6に示すように、一対のサイドシート3はそれぞれ、本体部2に接合される帯状の部位である接合部33、接合部33に連続するとともに少なくとも一部が起立する側壁部34、および、側壁部34に長手方向に沿って接合される側壁部弾性部材32を備える。本実施の形態では、側壁部弾性部材32は、図1ないし図6に示すように3本の弾性糸321を有し、3本の弾性糸321のうちの1本は側壁部34の着用者側の端部である自由端近傍に接合される。
吸収性物品1では、サイドシート3が、本体部2の上側(図2ないし図6中の上側に一致する。)にて左右方向の外側(すなわち、左右方向における吸収性物品1の中心線とは反対側)に折り返されることにより側壁部34が形成されており、側壁部34は、図2および図6に示すように、長手方向の両端部にて接合部33上に接合される。吸収性物品1では、側壁部34に設けられた側壁部弾性部材32が収縮することにより、図3ないし図5に示すように、側壁部34の長手方向の両端部を除く部位が本体部2の側方において着用者側に向かって起立し、着用時に着用者の足の付け根近傍に当接する立体ギャザーが形成される。また、側壁部34が接合部33の内側エッジから左右方向の外側へと広がるように折り返されることにより、立体ギャザーが左右方向において着用者の肌の広い範囲に亘って密着する。
サイドシート3は、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)を、長手方向に伸びる折り曲げ線にて2つ折りにし、折り重ねられた2つの部位の間に側壁部弾性部材32を挟むことにより形成される。側壁部弾性部材32としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が用いられ、本実施の形態では、弾性糸321としてポリウレタン糸が利用される。
本体部2は、図1ないし図7に示すように、バックシート部材23、および、バックシート部材23上(すなわち、バックシート部材23の着用者側)に重ねられてバックシート部材23に外縁部が接合される吸収性シート部材20を備える。吸収性シート部材20の長手方向のおよそ中央から後側(背側)には、図1、図3、図4および図7に示すように、着用者の股間部から臀部に至る部位に対向する開口25が形成されており、開口25の左右方向の幅は、吸収性物品1の幅よりも小さくされる。バックシート部材23は、吸収性シート部材20の開口25に重なって(すなわち、着用者の股間部から臀部に至る部位に対向する位置に設けられた開口25から露出して)着用者の股間部から臀部に至る部位に直接対向する露出領域234を有する。
吸収性シート部材20は、図1に示すように、開口25に隣接する吸収コア22を備え、吸収コア22は、吸収性物品1の着用時に着用者の前側(腹側)に配置される前部吸収コア221、開口25の左右方向の両側に配置される一対の側部吸収コア222、および、着用者の後側に配置される後部吸収コア223を含む。前部吸収コア221、側部吸収コア222および後部吸収コア223は、吸収性シート部材20の長手方向(バックシート部材23の長手方向でもある。)に連続して一体的に形成される。図1中では、図の理解を容易にするために、吸収コア22の輪郭を太い破線にて描くとともに吸収コア22に平行斜線を付す。また、吸収性シート部材20は、図7に示すように、前部吸収コア221、側部吸収コア222(図7では示されない。)および後部吸収コア223のそれぞれの上面および下面(すなわち、吸収コア22の着用者側およびバックシート部材23側の面)を被覆する透液性のコア被覆シート21を備える。
図1ないし図7に示す吸収性シート部材20の吸収コア22は、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維に粒状の吸水性ポリマー(例えば、SAP(Super Absorbent Polymer))を混合したものをティッシュペーパーや透液性不織布等により包み込んで形成され、コア被覆シート21を透過した水分を吸収して迅速に固定する。親水性繊維を包むティッシュペーパーや透液性不織布等は、親水性繊維および吸水性ポリマーとホットメルト接着剤により接合されて、親水性繊維の型崩れ、および、吸水性ポリマーの脱落(特に、吸水後における脱落)を防止する。本実施の形態では、吸収コア22はパルプ繊維およびSAPを含む。
図2ないし図7に示すコア被覆シート21は、透液性のシート材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布であり、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収コア22へと移動させる。コア被覆シート21として利用される不織布は、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンレース不織布であり、これらの不織布を形成する親水性繊維としては通常、セルロースやレーヨン、コットン等が用いられる。なお、コア被覆シート21として、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された透液性の不織布が利用されてもよい。
図1に示すように、前部吸収コア221の長手方向の長さは、一対の側部吸収コア222のそれぞれの長手方向の長さにおよそ等しく、後部吸収コア223の長手方向の長さは、前部吸収コア221の長手方向の長さよりも小さい。また、一対の側部吸収コア222の一方の外側縁から他方の外側縁までの左右方向の距離は、後部吸収コア223の左右方向の幅におよそ等しく、前部吸収コア221の左右方向の幅は、後部吸収コア223の左右方向の幅よりも小さい。吸収性物品1では、本体部2の前側の部位の左右方向の幅も、本体部2の後側の部位の左右方向の幅よりも小さい。
吸収性物品1では、前部吸収コア221の開口25近傍のコアエッジ、および、開口25の前部吸収コア221側のエッジは長手方向に関して凹状となっており、前部吸収コア221には、コアエッジから長手方向に沿って伸びるスリット2211が形成されている。また、後部吸収コア223の開口25近傍のコアエッジ、および、開口25の後部吸収コア223側のエッジは、左右方向におよそ平行とされる。図2ないし図7に示すように、コア被覆シート21は、吸収コア22(すなわち、前部吸収コア221、一対の側部吸収コア222および後部吸収コア223)の上面を覆う第1被覆シート211、並びに、吸収コア22の下面を覆う第2被覆シート212を備える。
吸収性物品1は、図1ないし図4に示すように、バックシート部材23と吸収性シート部材20との間にて開口25近傍に配置されるスペーサ24を備え、スペーサ24は、開口25の左右両側における開口25の側縁と吸収性物品1の側方エッジとの間に位置するとともに長手方向に伸びる一対のスペーサ部材241を有する。一対のスペーサ部材241は、その一部が開口25の左右両側において一対の側部吸収コア222に平面視にて重なっており、他の部位は、側部吸収コア222から後部吸収コア223に重なる位置まで(すなわち、後述する後部ポケット27内まで)伸びている。図1では、図の理解を容易にするために、スペーサ部材241を細実線にて描いている(図13においても同様)。
各スペーサ部材241は、比較的高い柔軟性を有するとともに圧力が加えられた場合に潰れにくい材料である軟質プラスチック等の樹脂により形成された螺旋状(すなわち、圧縮コイルバネの形状)の部材である。スペーサ部材241の吸収性シート部材20と対向する部位には、スペーサ部材241の幅(直径)よりも細い帯状の不織布(図示省略)がホットメルト接着剤等により接合されている。スペーサ部材241は、当該帯状の不織布を介して吸収性シート部材20の第2被覆シート212にホットメルト接着剤等により接合されており、バックシート部材23には非接合とされる。なお、スペーサ部材241の吸収性シート部材20への接合は、超音波接合や熱融着により行われてもよい。また、スペーサ部材241のバックシート部材23と対向する部位にも、上記と同様の、スペーサ部材241の幅よりも細い帯状の不織布がホットメルト接着剤等により接合されてもよい。このように、スペーサ部材241の上下に帯状の不織布が接合されることにより、スペーサ部材241の取り扱いが容易となる。
吸収性シート部材20は、また、図1ないし図6に示すように、開口25の左右方向の両側にて一対のスペーサ部材241に沿って長手方向に伸びる一対のコア部弾性部材29を備える。コア部弾性部材29としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が用いられ、本実施の形態では、各コア部弾性部材29はポリウレタンにより形成された2本の弾性糸291を有する。
図1に示すように、一対のコア部弾性部材29は、平面視において一対の側部吸収コア222に重なっており、コア部弾性部材29の長手方向の前側の部位は、開口25の側方から前部吸収コア221の側部まで(すなわち、平面視において前部吸収コア221の両側端部におよそ重なる位置まで)伸びている。また、コア部弾性部材29の長手方向の後側の部位は、開口25の側方から後部吸収コア223に重なる位置まで伸びている。図1、図3および図4に示すように、開口25の側方では、コア部弾性部材29は、左右方向における側部吸収コア222の中央に、または、当該中央よりも開口25側(すなわち、内側)に偏って配置される。
一対のコア部弾性部材29は、図2ないし図6に示すように、吸収コア22のバックシート部材23に対向する面にて吸収コア22とコア被覆シート21の第2被覆シート212との間に配置され、伸張状態にて第2被覆シート212および吸収コア22に接合される。吸収性物品1では、一対のコア部弾性部材29が収縮することにより、長手方向において一対のスペーサ部材241、および、一対の側部吸収コア222に収縮力が作用する。これにより、側部吸収コア222が上側へと移動してバックシート部材23から離間するとともに、前部吸収コア221および後部吸収コア223が互いに他方に向かって引き寄せられ、吸収性物品1の前側および後側の部位が着用者に沿うように変形する。また、スペーサ部材241も側部吸収コア222と共に着用者に沿うように変形する。
吸収性物品1では、図3および図4に示すように、開口25の左右方向の両側において、側部吸収コア222がバックシート部材23と非接合とされることにより、一対の側部吸収コア222とバックシート部材23との間(すなわち、吸収性シート部材20の一対の側部吸収コア222に対応する部位とバックシート部材23との間)に、開口25から左右に広がる一対の側部ポケット28が形成される。側部ポケット28内には、一対のスペーサ部材241の一部が配置される。
バックシート部材23は、図2ないし図7に示すように、撥水性または不透液性の外装シート231、外装シート231上(すなわち、外装シート231の着用者側)に設けられた非常に薄い吸収シート233、並びに、外装シート231および吸収シート233上に積層された親水性シート232を備える。図2ないし図7では、図示の都合上、吸収シート233を太実線にて示している。
外装シート231としては、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルム、あるいは、これらの不織布とプラスチックフィルムとが積層された積層シートが利用され、バックシート部材23に到達した排泄物の水分等が、本体部2の外側にしみ出すのを防止する。外装シート231にプラスチックフィルムが利用される場合、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
吸収シート233は、2枚のシート、および、当該2枚のシートの間に設けられた高吸収性樹脂層を備え、高吸収性樹脂層は、SAP等の粒状の吸水性ポリマーをホットメルト接着剤により2枚のシートに固定することにより形成される。2枚のシートとしては、親水性繊維により形成される不織布、親水処理した疎水性繊維により形成される不織布、あるいは、ティッシュ等が利用される。高吸収性樹脂層(すなわち、粒状の吸水性ポリマー)は、上記2枚のシートの間で長手方向に伸びるストライプ状に配置される。換言すれば、長手方向に伸びる複数の高吸収性樹脂層のそれぞれの間に、吸水性ポリマーが存在しない領域が設けられる。そして、吸水性ポリマーが存在しない領域において2枚のシートが接合されることにより、複数の高吸収性樹脂層がそれぞれ封止される。
なお、吸収シート233に代えて、SAP等の粒状の吸水性ポリマーを外装シート231上に散布し、ホットメルト接着剤等により外装シート231に接着することにより、高吸収性樹脂層が外装シート231上に直接形成されてもよい。また、親水性シート232としては、好ましくは、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)、あるいは、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された透液性の不織布が利用される。
バックシート部材23の外装シート231は、図2ないし図6に示すように、本体部2の左右方向の両側において吸収性シート部材20の第1被覆シート211の側端部に接合される。また、一対のサイドシート3は、バックシート部材23の外装シート231の外面(すなわち、着用者とは反対側の面)に接合される。
本体部2では、図1に示す吸収性シート部材20の前部吸収コア221の周囲が、開口25およびその周辺部を除いてバックシート部材23の着用者側の面と接合されることにより、図5ないし図7に示すように、前部吸収コア221とバックシート部材23との間(すなわち、吸収性シート部材20の前部吸収コア221に対応する部位とバックシート部材23との間)に開口25から長手方向の前方に広がる前部ポケット26が形成される。また、図2および図7に示すように、吸収性シート部材20の後部吸収コア223の周囲が、開口25およびその周辺部を除いてバックシート部材23の着用者側の面と接合されることにより、後部吸収コア223とバックシート部材23との間に後部ポケット27が形成される。図1に示す吸収性物品1では、前部ポケット26および後部ポケット27は、一対の側部ポケット28と連続しており、以下の説明では、前部ポケット26、一対の側部ポケット28および後部ポケット27をまとめて、単に「ポケット」ともいう。換言すれば、前部ポケット26、一対の側部ポケット28および後部ポケット27はそれぞれ、上記ポケットの一部である。
本実施の形態では、開口25が吸収性シート部材20の長手方向の中央部から後側の部位にかけて設けられており、上述のように、前部吸収コア221が後部吸収コア223よりも長くなっている。このため、前部ポケット26の長手方向の長さが後部ポケット27の長手方向の長さよりも大きくなる。
図6に示すように、吸収性物品1では、前部ポケット26の左右方向の両側において、バックシート部材23の側端部235が、コア被覆シート21およびサイドシート3と共に、着用者とは反対側にて左右方向の内側に向かって折り返され、バックシート部材23の側端部235と対向する部位上にホットメルト接着剤や熱圧着等により固定される。以下、ホットメルト接着剤等により固定されたバックシート部材23の左右方向の両側の側端部235を「折り返し部235」という。本実施の形態では、折り返し部235の左右方向の幅は、長手方向のおよそ全長に亘って一定とされる。
図8は、着用者とは反対側からバックシート部材23を見た底面図である。図8では、吸収性シート部材20の開口25(図1参照)と重なる露出領域234を二点鎖線にて囲んでおり、図8中において露出領域234よりも上側および下側にそれぞれ前部ポケット26および後部ポケット27が形成され、露出領域234の左右両側に側部ポケット28が形成されている。また、図8では、図の理解を容易にするために、折り返し部235に平行斜線を付す。
図5、図6および図8に示すように、長手方向に沿って伸びる一対の折り返し部235は、前部ポケット26に重なる位置からバックシート部材23の開口25内の露出領域234まで、または、露出領域234の近傍まで伸びる。本実施の形態では、各折り返し部235が、前部ポケット26の長手方向の前端部から露出領域234と前部ポケット26との間の境界近傍まで(すなわち、前部ポケット26の長手方向のおよそ全長に亘って)設けられる。さらに、露出領域234またはその側方において、バックシート部材23の着用者側とは反対側に折り返された側端部はバックシート部材23上には固定されず、図4に示すように、前部ポケット26から離れるに従って左右方向の外側へと広がる(すなわち、折り返しが漸次解消される)。そして、図4および図8に示すように、一対の折り返し部235から連続する一対の折り目236が露出領域234、または、露出領域234の左右方向の側方に形成される。
折り目236は、露出領域234と前部ポケット26との間の境界上、または、当該境界の左右方向への延長線上において、吸収性物品1の側部エッジ(すなわち、吸収性物品1の最も幅が大きい後側の部位におけるエッジ)よりも左右方向の内側に位置する。また、前部ポケット26内では、図6の左半分を拡大した図9に示すように、折り返し部235の着用者とは反対側の親水性シート232の面2351が、コア被覆シート21の第2被覆シート212により覆われるとともに、当該面2351に対向する第2被覆シート212の面213と非接合とされる。なお、折り返し部235の親水性シート232の面2351は、必ずしも第2被覆シート212により覆われる必要はなく、コア被覆シート21から連続する他の部材(例えば、サイドシート3)により覆われるとともに当該他の部材と非接合とされてもよい。
図1に示す吸収性物品1では、着用者から排泄された軟便等の排泄物が、開口25を介してバックシート部材23へと向かい、バックシート部材23の露出領域234にて受けられる。露出領域234にて受けられた排泄物は、前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27の内部空間へと移動して収容される。
吸収性物品1では、開口25近傍に配置されたスペーサ24により吸収性シート部材20の開口25近傍の部位が支持される。これにより、開口25近傍における吸収性シート部材20とバックシート部材23との間の厚さ方向の距離を大きく維持し、前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27の内部空間を開口25近傍において維持することができる。その結果、排泄物を前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27に確実に収容して保持することができ、排泄物が着用者の肌に広範囲に亘って付着することが防止される。
また、上述のように、スペーサ24のスペーサ部材241が螺旋状とされることにより、スペーサ24とバックシート部材23との間、および、スペーサ24と吸収性シート部材20との間にて軟便等の排泄物が通過可能な通路が形成され、スペーサ24を当該排泄物が通過可能とされる。これにより、内部空間にスペーサ24が配置されるポケット(本実施の形態では、側部ポケット28および後部ポケット27)において、排泄物の収容がスペーサ24により阻害されることが防止され、当該ポケットの排泄物の収容力低下を抑制することができる。
このように、吸収性物品1は、着用者の肌の比較的狭い範囲のみを覆うにも関わらず排泄物を確実に収容して保持することができるため、使い捨ておむつ等の外装物品の内側に取り付けられて容易に交換可能な補助吸収具に特に適している。
吸収性物品1では、スペーサ24が開口25の左右に位置する一対のスペーサ部材241を含むことにより、着用者の体圧により側部ポケット28の内部空間が押し潰されてしまうことが防止される。また、一対のスペーサ部材241が開口25の左右から後部ポケット27内まで伸びることにより、着用者の体圧により後部ポケット27の内部空間が押し潰されてしまうことが防止される。その結果、側部ポケット28および後部ポケット27に軟便等の排泄物を確実に収容することができるとともに、排泄物が側部ポケット28および後部ポケット27内に収容された後に側部ポケット28および後部ポケット27に体圧が加わった場合においても、排泄物が側部ポケット28および後部ポケット27から押し出されて着用者の肌に付着することを抑制することができる。
また、開口25の左右両側に設けられた一対のスペーサ部材241により、吸収性物品1の開口25の左右両側の部位の剛性が向上される。その結果、コア部弾性部材29や側壁部弾性部材32の収縮により吸収性シート部材20の開口25が長手方向に収縮することが抑制され、開口25の長手方向の大きさを大きく維持することができる。
上述のように、吸収性物品1では、前部ポケット26の左右方向の両側において、バックシート部材23の側端部が着用者側とは反対側に折り返されてバックシート部材23上に固定されることにより、長手方向に沿って伸びる一対の折り返し部235が形成され、一対の折り返し部235が、前部ポケット26から露出領域234まで、または、露出領域234の近傍まで伸びる。これにより、前部ポケット26から露出領域234にかけてのバックシート部材23の長手方向の剛性を向上することができる。その結果、コア部弾性部材29や側壁部弾性部材32の収縮により吸収性シート部材20の開口25が長手方向に収縮することがより一層抑制され、開口25の長手方向の大きさがより確実に大きく維持される。
吸収性物品1では、スペーサ24が吸収性シート部材20に接合されるとともにバックシート部材23に非接合とされることにより、スペーサ24の厚さ(すなわち、スペーサ部材241の径)以上に吸収性シート部材20とバックシート部材23とを離間させることができるため、側部ポケット28および後部ポケット27の容量を大きくすることができる。ただし、側部ポケット28および後部ポケット27の容量が十分に確保できるのであれば、スペーサ24は吸収性シート部材20およびバックシート部材23の双方に、例えば、上述の帯状の不織布を介してホットメルト接着剤により接合されてもよい。
吸収性シート部材20では、開口25の左右方向の両側にて一対のスペーサ部材241に沿って長手方向に伸びる一対のコア部弾性部材29が設けられる。そして、コア部弾性部材29の収縮によりスペーサ24の一対のスペーサ部材241に収縮力が与えられることにより、吸収性物品1を着用者の身体に沿うように容易に変形することができる。
スペーサ24では、スペーサ部材241の形状が螺旋状とされることにより、軟便等の排泄物がスペーサ24を容易に通過することができる。また、スペーサ部材241が着用者の姿勢に合わせて様々な方向に容易に変形するため、着用者の姿勢に関わらず吸収性物品1を着用者に密着させることができる。
吸収性物品1では、スペーサ24が比較的高い柔軟性を有するとともに圧力が加えられた場合に潰れにくい材料である軟質プラスチック等の樹脂により形成されることにより、スペーサ24により着用者の肌が強く圧迫されることが防止される。また、一対のスペーサ部材241と着用者との間に一対の側部吸収コア222が設けられることにより、スペーサ24により着用者の肌が強く圧迫されることをより一層防止することができる。その結果、吸収性物品1の着用感を向上することができる。
吸収性物品1では、吸収性シート部材20の左右両側部上において長手方向に伸びる一対の側壁部34が設けられ、側壁部弾性部材32により側壁部34が収縮して立体ギャザーが形成されることにより、排泄物の一部が、前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27に収容されなかった場合であっても、当該排泄物の一部が着用者の脚周りから漏出することを抑制することができる。吸収性物品1では、上述のように、一対のスペーサ部材241および一対の側部吸収コア222により開口25の左右両側の部位の剛性が向上され、開口25の長手方向の大きさを大きく維持することができる。このため、吸収性物品1の構造は、開口25の左右両側において長手方向に収縮する側壁部34を備える吸収性物品に特に適している。
図10.Aないし図10.Fは、スペーサ部材の他の好ましい例を示す平面図である。図10.Aないし図10.Fに示すスペーサ部材241a〜241fはそれぞれ、側面に複数の穴が形成された円筒部材である。本実施の形態では、比較的高い柔軟性を有するとともに圧力が加えられた場合に潰れにくいテフロン(登録商標)にて形成されたチューブ等がスペーサ部材241a〜241fとして利用される。図10.Aに示すスペーサ部材241aの側面には円形の穴242aが形成されており、図10.Bに示すスペーサ部材241bの側面には、穴242aよりも大きい円形の穴242bが形成されている。図10.Cに示すスペーサ部材241cの側面には菱形の穴242cが形成されており、図10.Dに示すスペーサ部材241dの側面には、穴242cよりも大きい菱形の穴242dが形成されている。図10.Eに示すスペーサ部材241eの側面には長方形の穴242eが形成されており、図10.Fに示すスペーサ部材241fの側面には楕円形の穴242fが形成されている。
図10.Aに示すスペーサ部材241aを含むスペーサ24では、スペーサ部材241aが軟便等の排泄物が通過可能な複数の穴242aを有するため、排泄物をスペーサ24の内部空間(すなわち、円筒部材であるスペーサ部材241aの内部空間)へと導くことが可能とされ、また、各スペーサ部材241の一方側の側面からスペーサ部材241の内部空間に導かれた排泄物をスペーサ部材241の他方側の側面からスペーサ部材241の外部へと導くことが可能とされる(すなわち、排泄物がスペーサ24を通過可能とされる。)。
一対のスペーサ部材241(図1参照)に代えて一対のスペーサ部材241aがスペーサ24として設けられた吸収性物品1では、上記と同様に、スペーサ24により図1に示す吸収性シート部材20の開口25近傍の部位が支持される。これにより、開口25近傍における吸収性シート部材20とバックシート部材23との間の厚さ方向の距離を大きく維持し、前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27の内部空間を開口25近傍において維持することができる。また、当該吸収性物品1では、排泄物をスペーサ24の内部空間へと導くことが可能とされ、または、排泄物がスペーサ24を通過可能とされることにより、スペーサ24が配置されるポケット(本実施の形態では、側部ポケット28および後部ポケット27)において、排泄物の収容がスペーサ24により阻害されることが防止され、当該ポケットの排泄物の収容力低下を抑制することができる。さらに、スペーサ部材241aが着用者の姿勢に合わせて様々な方向に容易に変形するため、着用者の姿勢に関わらず吸収性物品1を着用者に密着させることができる。
吸収性物品1では、スペーサ24が、図10.Bないし図10.Fに示すスペーサ部材241b〜241fを含む場合も同様に、ポケットの収容力低下を抑制しつつポケットの内部空間を維持することができるとともに、スペーサ部材241b〜241fが着用者の姿勢に合わせて様々な方向に容易に変形するため、着用者の姿勢に関わらず吸収性物品1を着用者に密着させることができる。また、図1に示すスペーサ部材241、並びに、図10.Aないし図10.Fに示すスペーサ部材241a〜241fは製造が容易であるため、これらのスペーサ部材を含むスペーサ24を備える吸収性物品1の製造を簡素化することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、吸収コア22は必ずしもパルプを含む必要はなく、透液性の不織布やプラスチックフィルム上にホットメルト接着剤等によりSAPが直接接合されたものが吸収コア22として利用されてもよい。吸収性物品1では、必ずしもバックシート部材23の側端部が折り返されて折り返し部が形成される必要はなく、また、前部吸収コア221の左右方向の幅は、後部吸収コア223の左右方向の幅とおよそ等しくされてもよい。
上記実施の形態に係る吸収性物品1では、前部吸収コア221、側部吸収コア222および後部吸収コア223が一体的に形成されているが、例えば、前部吸収コア221、一対の側部吸収コア222および後部吸収コア223がそれぞれ個別に形成され、開口25を形成するように隣接して配置されて(すなわち、コア被覆シート21の開口の周囲に配置されて)コア被覆シート21により被覆されてもよい。
スペーサ24は、軟便等の排泄物が通過可能な複数の穴を有し、または、バックシート部材23もしくは吸収性シート部材20との間にて排泄物が通過可能な通路を形成する構造を有し、排泄物をスペーサ24の内部空間へと導くことが可能とされる、または、スペーサ24を排泄物が通過可能とされるのであれば、必ずしも上述の形状を有する必要はない。
例えば、図11に断面にて示すように、吸収性物品1の厚さ方向における凹凸が長手方向に交互に繰り返される板状部材(いわゆる、波板)が、スペーサ部材241gとして利用されてもよい。スペーサ部材241gは、平面視において長手方向に伸びるとともに螺旋状のスペーサ部材241(図1参照)におよそ等しい幅を有する帯状の部材であり、好ましくは、開口25の左右両側に配置される。この場合、スペーサ部材241gの凸部(すなわち、吸収性シート部材20に向けて突出する部位)の下面とバックシート部材23との間、および、スペーサ部材241gの凹部(すなわち、バックシート部材23に向けて突出する部位)の上面と吸収性シート部材20との間に、排泄物が通過可能な通路が形成される。
また、図12に断面にて示すように、吸収性シート部材20に接合される長手方向に伸びる帯状の平板部243、および、平板部243の下面からバックシート部材23に向けて突出するとともに長手方向に配列された複数の櫛歯(すなわち、長手方向に間欠的に配列された複数の棒状部)を有する櫛歯部244を備える部材が、スペーサ部材241hとして利用されてもよい。この場合、スペーサ部材241hの複数の櫛歯の間の空間が、排泄物が通過可能な通路となる。換言すれば、スペーサ部材241g,241hが、吸収性シート部材20および/またはバックシート部材23に長手方向において間欠的に当接することにより、スペーサ部材241g,241hと吸収性シート部材20および/またはバックシート部材23との間に、排泄物が通過可能な通路が形成される。なお、スペーサ部材241hでは、櫛歯部244に代えて、複数の穴が形成された平板が設けられてもよい。
吸収性シート部材20では、着用者の身体に沿うように吸収性物品1を容易に変形することができる場合は、開口25の左右方向の両側にて一対のスペーサ部材に沿って長手方向に伸びる一対のコア部弾性部材29は省略されてもよい。スペーサ24は、開口25の左右両側に位置する一対のスペーサ部材に加えて、例えば、前部ポケット26または後部ポケット27の内部空間の開口25近傍にておよそ左右方向に伸びるスペーサ部材を含んでいてもよく、これらのスペーサ部材が連続してU字型の1つの部材として一体的に形成されてもよい。また、開口25の全周を取り囲む略円環状の部材がスペーサ24として利用されてもよい。開口25の長手方向の大きさを大きく維持するという観点からは、開口25の左右両側に位置する一対のスペーサ部材がスペーサ24に含まれることが好ましいが、開口25の大きさが十分に維持できるのであれば、当該一対のスペーサ部材は省略され、前部ポケット26および/または後部ポケット27の内部空間において、少なくとも一部が開口25近傍に位置するスペーサ24が設けられてもよい。
上記実施の形態に係るスペーサ24は軟質プラスチック等の樹脂により形成されるが、スペーサ24により着用者の肌が強く圧迫されないのであれば、他の材料により形成された部材(例えば、金属により形成されたコイルバネ)がスペーサ24として利用されてもよい。また、スペーサ24により着用者の肌が強く圧迫されないのであれば、吸収性シート部材20から側部吸収コア222が省略されてもよい。
図13は、吸収性物品の他の好ましい例を示す平面図である。図13に示す吸収性物品1aでは、開口25aの長手方向の大きさが、吸収性物品1の開口25(図1参照)よりも小さく、後部吸収コア223aおよび後部ポケット27aの長手方向の大きさが、吸収性物品1の後部吸収コア223および後部ポケット27(図1参照)よりも大きい。また、開口25aの左右方向の幅は吸収性物品1の開口25よりも大きく、開口25aの左右に側部吸収コアは設けられない。
吸収性物品1aでは、スペーサ24の一対のスペーサ部材241(すなわち、螺旋状の部材)が、開口25の左右両側の側部ポケット28a内から後部ポケット27a内まで伸びており、これにより、側部ポケット28aおよび後部ポケット27aの収容力低下を抑制しつつ側部ポケット28aおよび後部ポケット27aの内部空間を維持することができる。
吸収性物品1では、排泄物の収容力を大きくするためには、吸収性シート部材20とバックシート部材23との間に前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27が設けられることが好ましい。ただし、排泄物の収容力が十分確保されるのであれば、例えば、前部ポケット26および側部ポケット28のみが吸収性シート部材20とバックシート部材23との間に設けられ、後部ポケット27は省略されてもよい。後部ポケット27が設けられない場合、スペーサ24は開口25よりも後側には設けられず、開口25の左右両側のみ、あるいは、開口25の左右両側から前部ポケット26内まで設けられる。また、吸収性シート部材20の開口25よりも後側の部位は、およそ全面に亘ってバックシート部材23に接合される。なお、この場合、吸収性シート部材20から後部吸収コア223が省略されてもよい。
吸収性物品1では、例えば、後部ポケット27および側部ポケット28のみが設けられ、前部ポケット26および前部吸収コア221が省略されてもよい。あるいは、側部ポケット28も省略されて後部ポケット27のみが設けられてもよく、前部ポケット26および後部ポケット27が省略されて側部ポケット28のみが設けられてもよい。換言すれば、吸収性物品1において、開口25に隣接する吸収コア22とバックシート部材23との間にて開口25から広がるポケットは、前部ポケット26、一対の側部ポケット28および後部ポケット27の少なくとも1つであればよく、スペーサ24は当該ポケットの内部空間において開口25近傍に配置される。
吸収性物品1では、バックシート部材23と吸収性シート部材20との間に配置されるとともに開口25の左右においてバックシート部材23の長手方向に伸びる一対のスペーサ部材を含むスペーサ、および、当該一対のスペーサ部材に沿ってコア被覆シート21に接合されてスペーサに収縮力を与える一対のコア部弾性部材29を備えることにより、ポケットの内部空間を維持しつつ吸収性物品1を着用者の身体に沿うように容易に変形することができる。
吸収性シート部材20では、コア被覆シート21は1枚のシート部材とされてもよく、この場合、当該シート部材の吸収コア22の着用者側を覆う部位が第1被覆シート211に相当し、吸収コア22のバックシート部材23側を覆う部位が第2被覆シート212に相当する。また、コア被覆シート21は、少なくとも吸収コア22の着用者側を覆っていればよい。バックシート部材23は、少なくとも撥水性または不透液性の外装シート231を備えていればよく、親水性シート232および吸収シート233のいずれか一方または両方が省略されてもよい。
上述の吸収性物品の構造は、外装物品の内側に取り付けられる補助吸収具以外にも、例えば、上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつや、着用者の腹側に当接する部位と背側に当接する部位とを腰回りで止着して着用するオープンタイプの使い捨ておむつに適用されてよい。