図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム1の構造を説明するための、一方向の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム1の構造を説明するための、他方向の斜視図である。
図1および図2において、燃料電池システム1は、燃料電池2と、燃料給排部3と、酸素給排部4と、給排水部5とを備えている。
燃料電池2は、例えば、固体高分子型燃料電池であって、セルスタック6と、セルスタック6の積層方向(以下、この方向を単に「積層方向」と記述することがある。)において、セルスタック6を挟んでそれぞれ対向する、1対の集電板7、1対の絶縁板8および1対のエンドプレート9とを備えている。すなわち、燃料電池2は、セルスタック6の積層方向両側(正面側および背面側)に、集電板7、絶縁板8およびエンドプレート9が順次積層されることによって、全体としてスタック構造に形成されている。
セルスタック6は、水素と酸素との電気化学反応により発電する単位セル10を複数備えている。
各単位セル10は、それぞれ正面視略矩形状に形成されている。そして、これら複数の単位セル10がスタック(積層)されることにより、セルスタック6は、スタック構造に形成されている。各単位セル10には、単位セル10の温度を測定する検出手段としての温度センサ11が備えられている。
各温度センサ11は、例えば、サーミスタ、熱電対などの公知の温度センサであって、それぞれ後述するコントローラ22と電気的に接続されている。なお、各単位セル10における、温度センサ11の数や配置などについては、図3〜図5を参照して後に説明する。
集電板7は、例えば、銅などの導電性材料からなり、セルスタック6における積層方向一方側(以下、正面側とする。)に積層された一方の集電板7と、セルスタック6における積層方向他方側(以下、背面側とする。)に積層された他方の集電板7とからなる。各集電板7は、それぞれセルスタック6と正面視略同一形状に形成されている。各集電板7の上側周縁には、それぞれ端子12が設けられている。
端子12は、集電板7と一体的に形成され、集電板7の上側周縁から上方に向けて突出する略直方体形状に形成されている。燃料電池2では、セルスタック6で発生した起電力は、集電板7によって外部に取り出される。
絶縁板8は、例えば、ゴムや樹脂などの絶縁性材料からなり、一方の集電板7における正面側に積層された一方の絶縁板8と、他方の集電板7における背面側に積層された他方の絶縁板8とからなる。各絶縁板8は、それぞれセルスタック6と正面視略同一形状に形成されている。絶縁板8は、セルスタック6と、燃料電池2を収容するケーシング(図示せず)やエンドプレート9との間を絶縁している。
エンドプレート9は、例えば、鋼などの剛性の高い材料からなり、一方の絶縁板8における正面側に積層された一方のエンドプレート9と、他方の絶縁板8における背面側に積層された他方のエンドプレート9とからなる。各エンドプレート9は、それぞれセルスタック6と正面視略同一形状に形成されている。
そして、一方のエンドプレート9、一方の絶縁板8および一方の集電板7には、正面視上下方向に直交する幅方向(以下、この方向を単に「幅方向」と記述することがある。)の一方側端部における下角部に、セルスタック6から酸化ガスを排出するための酸素排出口13が形成されている。酸素排出口13は、正面視略円形に形成されている。
また、一方のエンドプレート9、一方の絶縁板8および一方の集電板7には、正面視幅方向一方側端部における酸素排出口13よりも内側に、セルスタック6に燃料ガスを供給するための3つの燃料供給口14が形成されている。
燃料供給口14は、正面視略円形に形成されている。また、燃料供給口14は、上下方向に互いに所定の間隔をあけて配置されており、上側の燃料供給口14Aと、上側の燃料供給口14Aよりも下方に配置される下側の燃料供給口14Cと、燃料供給口14Aと燃料供給口14Cとの間に配置される中間の燃料供給口14Bとに区別される。
また、一方のエンドプレート9、一方の絶縁板8および一方の集電板7には、正面視幅方向他方側端部における上角部に、セルスタック6に酸素を供給するための酸素供給口15が形成されている。
酸素供給口15は、正面視略円形に形成されている。
また、一方のエンドプレート9、一方の絶縁板8および一方の集電板7には、正面視幅方向他方側端部における下角部に、セルスタック6から冷却水を排出するための排水口16が形成されている。
排水口16は、正面視略円形に形成されている。
また、一方のエンドプレート9、一方の絶縁板8および一方の集電板7には、正面視幅方向他方側端部における、酸素供給口15および排水口16の内側に、セルスタック6から燃料を排出するための3つの燃料排出口17が形成されている。
燃料排出口17は、正面視略円形に形成されている。また、燃料排出口17は、上下方向に互いに所定の間隔をあけて配置されており、上側の燃料排出口17Aと、上側の燃料排出口17Aよりも下方に配置される下側の燃料排出口17Cと、燃料排出口17Aと燃料排出口17Cとの間に配置される中間の燃料排出口17Bとに区別される。
さらに、他方のエンドプレート、他方の絶縁板8および他方の集電板7には、背面視幅方向一方側端部(積層方向において、正面視一方側端部に対向する部分)における上角部に、セルスタック6に冷却水を供給するための給水口18が形成されている。
給水口18は、背面視略円形に形成されている。
燃料給排部3は、燃料タンク19と、燃料供給管20と、燃料排出管21と、制御手段としてのコントローラ22とを備えている。
燃料タンク19には、燃料が貯蔵される。貯蔵される燃料としては、少なくとも水素を含む化合物、例えば、水素、例えば、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ヒドラジン、水加ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジンなどのヒドラジン類、例えば、尿素、例えば、アンモニア、例えば、イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールなどの複素環類、例えば、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミンなどのヒドロキシルアミン類などが挙げられる。これらは、単独または2種類以上併用してもよい。
燃料供給管20は、その一方側端部が燃料タンク19に接続されている。燃料供給管20は、一方側端部よりも下流側において、上下方向上側の燃料供給管20Aと、上側の燃料供給管20Aよりも下方に配置される下側の燃料供給管20Cと、燃料供給管20Aと燃料供給管20Cとの間に配置される中間の燃料供給管20Bとに分岐している。これら燃料供給管20A〜20Cの他方側端部は、それぞれ燃料供給口14A〜14Cに接続されている。また、燃料供給管20には、供給弁23が介装されている。
供給弁23は、燃料供給管20A〜20Cのそれぞれに介装され、燃料供給管20Aに介装される供給弁23Aと、燃料供給管20Bに介装される供給弁23Bと、燃料供給管20Cに介装される供給弁23Cとに区別される。これら供給弁23A〜23Cは、それぞれ燃料供給管20A〜20Cを流れる燃料ガスの流量を調節することができる弁であって、例えば、絞り弁など、公知の流量制御弁が用いられる。
燃料排出管21は、上下方向上側の燃料排出管21Aと、上側の燃料排出管21Aよりも下方に配置される下側の燃料排出管21Cと、燃料排出管21Aと燃料排出管21Cとの間に配置される中間の燃料排出管21Bとに区別される。これら燃料排出管21A〜21Cの一方側端部は、例えば、セルスタック6から排出される未反応の燃料ガスや、水素と酸素との電気化学反応により生成する水などを処理するためのバッファタンク(図示せず)に接続されている。一方、燃料排出管21A〜21Cの他方側端部は、それぞれ燃料排出口17A〜17Cに接続されている。
コントローラ22は、例えば、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されており、温度センサ11および供給弁23と電気的に接続されている。燃料電池システム1では、コントローラ22から供給弁23に対して、所定の制御信号が入力されることによって、燃料供給管20を流れる燃料ガスの流量が制御される。
酸素給排部4は、酸素供給管24と、酸素排出管25とを備えている。
酸素供給管24は、その一方側端部が、例えば、コンプレッサ(図示せず)などに接続されている。一方、酸素供給管24の他方側端部は、酸素供給口15に接続されている。
酸素排出管25は、その一方側端部が、排気とされる。一方、酸素排出管25の他方側端部は、酸素排出口13に接続されている。
給排水部5は、給水管26と、排水管27とを備えている。
給水管26は、その一方側端部が給水口18に接続されている。給水管26の他方側端部は、例えば、給水装置(図示せず)などに接続されている。
排水管27は、その一方側端部が、例えば、ドレインとされるか、あるいは、排水管27からの排水を再度給水管26に供給する場合には、例えば、排水を給水管26へ送るためのポンプ(図示せず)などに接続される。一方、排水管27の他方側端部は、排水口16に接続されている。
図3は、図1に示すセルスタック6を、L−Lで示される切断線で切断したときの要部断面図である。図4は、図1に示すセルスタック6の一方向要部分解図である。図5は、図1に示すセルスタック6の他方向要部分解図である。
まず、主として図3を参照して、セルスタック6の構造を説明する。
セルスタック6は、上記したように、複数の単位セル10が積層されたスタック構造に形成されている。
各単位セル10は、電解質層31と、電解質層31を挟んで対向配置される燃料側電極32および酸素側電極33と、燃料側電極32に隣接配置された燃料側セパレータ34と、酸素側電極33に隣接配置された酸素側セパレータ35とを備えている。
電解質層31は、正面視略矩形状に形成されている(図4および図5参照。)。電解質層31の積層方向の厚みは、例えば、10〜100μmである。電解質層31としては、例えば、プロトン交換膜やアニオン交換膜などの固体高分子膜が挙げられる。
プロトン交換膜としては、その内部をプロトンが移動できる膜であれば、特に制限され
ず、例えば、パーフルオロスルホン酸膜が挙げられる。
一方、アニオン交換膜としては、その内部をアニオン(とりわけ、水酸化物イオン(O
H−))が移動できる膜であれば、特に制限されず、例えば、4級アンモニウム基、ピリ
ジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられ
る。
燃料側電極32は、正面視において、電解質層31よりも面積の小さい略矩形状に形成されている(図4および図5参照。)。
燃料側電極32の材料としては、特に制限されず、例えば、触媒が担持された多孔質担体などが挙げられる。
多孔質担体としては、特に制限されず、例えば、カーボンなどの撥水性担体が挙げられる。
触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)などの周期表第8〜10(VIII)族元素や、例えば、Cu、Ag、Auなどの周期表第11(IB)族元素など、さらには、これらの組み合わせなどが挙げられる。また、燃料の種類によって一酸化炭素(CO)が副生する場合には、上記例示の元素とともに、ルテニウム(Ru)を用いることで、触媒の被毒を防止することができる。
酸素側電極33は、正面視において、燃料側電極32と略同一形状に形成されている(図4および図5参照。)。
酸素側電極33の材料としては、特に制限されず、例えば、燃料側電極32の材料として例示した、触媒が担持された多孔質担体などが挙げられる。
そして、燃料側電極32および酸素側電極33は、電解質層31を、積層方向両側から挟みこむように、電解質層31の表面に接触形成されている。具体的には、燃料側電極32は、電解質層31の正面側の一方面略中央に形成されており、燃料側電極32の周囲には、電解質層31の一方面が露出している。一方、酸素側電極33は、電解質層31の背面側の他方面略中央に形成されており、酸素側電極33の周囲には、電解質層31の他方面が露出している。
燃料側セパレータ34は、電解質層31と正面視略同一形状に形成されており(図4および図5参照。)、例えば、ガス不透過性の導電性部材を用いて形成されている。
燃料側セパレータ34には、燃料側電極32と接触する背面側の他方面に、燃料側電極32を受け入れるための略矩形状の凹部36が形成されている。
凹部36内には、燃料側電極32に向かって開口される燃料側溝37が形成されており、この燃料側溝37と燃料側電極32との間に、気化された燃料(例えば、水素ガス、メタノールガス、ヒドラジンガス、アンモニアガスなど)からなる燃料ガスを流すための燃料供給路38が形成されている。
また、燃料側セパレータ34には、隣接する単位セル10の酸素側セパレータ35と接触する正面側の一方面に、当該酸素側セパレータ35に向かって開口される通水溝39が、燃料側溝37と平行に(燃料側溝37に沿って)形成されている。この通水溝39と後述する通水溝44との間には、加湿のための冷却水を流すための冷却水路としての通水路40が形成されている。すなわち、通水路40は、燃料供給路38と平行に形成されており、燃料側セパレータ34を挟んで燃料供給路38に対向している。
酸素側セパレータ35は、電解質層31と正面視略同一形状に形成されており(図4および図5参照。)、例えば、ガス不透過性の導電性部材を用いて形成されている。
酸素側セパレータ35には、酸素側電極33と接触する正面側の一方面に、酸素側電極33を受け入れるための略矩形状の凹部41が形成されている。
凹部41内には、酸素側電極33に向かって開口される酸素側溝42が形成されており、この酸素側溝42と酸素側電極33との間に、酸化ガス(例えば、空気などの酸素を含むガスなど)を流すための酸素供給路43が形成されている。
また、酸素側セパレータ35には、隣接する単位セル10の燃料側セパレータ34と接触する背面側の他方面に、当該燃料側セパレータ34に向かって開口される通水溝44が、酸素側溝42と平行に(酸素側溝42に沿って)形成されている。上記したように、この通水溝44と通水溝39との間には、加湿のための冷却水を流すための通水路40が形成されている。すなわち、通水路40は、酸素供給路43と平行に形成されており、酸素側セパレータ35を挟んで酸素供給路43に対向している。
次に、主として図4および図5を参照して、セルスタック6の構造を説明する。
セルスタック6の各単位セル10において、燃料側セパレータ34、電解質層31および酸素側セパレータ35には、正面視幅方向一方側端部における下角部および他方側端部における上角部に、正面視略円形の2つの酸素孔45が形成されている。
一方側端部および他方側端部の酸素孔45は、積層状態において、各単位セル10を積層方向に貫通する酸化ガスの流路を形成し、酸素供給路43を介して互いに連通している。また、積層状態において、一方側端部の酸素孔45は酸素排出口13に連通しており、他方側端部の酸素孔45は酸素供給口15に連通している。
また、各単位セル10において、燃料側セパレータ34、電解質層31および酸素側セパレータ35には、正面視幅方向両端部における酸素孔45よりも内側に、正面視略円形の6つの燃料孔46が形成されている。
燃料孔46は、一方側端部および他方側端部にそれぞれ3つずつ、それぞれ上下方向に互いに所定の間隔をあけて配置されている。一方側端部および他方側端部の燃料孔46は、積層状態において、各単位セル10を積層方向に貫通する燃料ガスの流路を形成し、幅方向に対向する1対の燃料孔46は、燃料供給路38を介して互いに連通している。また、積層状態において、一方側端部の燃料孔46は燃料供給口14に連通しており、他方側端部の燃料孔46は燃料排出口17に連通している。また、燃料孔46は、燃料供給口14Aおよび燃料排出口17Aに連通する上下方向上側の燃料孔46Aと、上側の燃料孔46Aよりも下方に配置され、燃料供給口14Cおよび燃料排出口17Cに連通する下側の燃料孔46Cと、燃料孔46Aと燃料孔46Cとの間に配置され、燃料供給口14Bおよび燃料排出口17Bに連通する中間の燃料孔46Bとに区別されている。
さらに、各単位セル10において、燃料側セパレータ34、電解質層31および酸素側セパレータ35には、正面視幅方向一方側端部における上角部および他方側端部における下角部に、正面視略円形の2つの通水孔47が形成されている。
一方側端部および他方側端部の通水孔47は、積層状態において、各単位セル10を積層方向に貫通する冷却水の流路を形成し、通水路40を介して互いに連通している。また、積層状態において、一方側端部の通水孔47は給水口18に連通しており、他方側端部の通水孔47は排水口16に連通している。
セルスタック6の各単位セル10において、燃料側セパレータ34には、上記したように、背面側の他方面に燃料側溝37が形成され、正面側の一方面に通水溝39が形成されている。
燃料側溝37は、凹部36内において、互いに幅方向に対向する一方側端部の燃料孔46と他方側端部の燃料孔46との間を連絡し、上下方向に互いに間隔をあけて配置される9つの分岐溝48を備えている。
各分岐溝48は、それぞれ幅方向に延び、9つの分岐溝48のうち、上側3つの分岐溝48は、その両端部において合流し、1つの溝ユニット(上側溝ユニット)として一方側端部および他方側端部の燃料孔46Aに連通している。また、9つの分岐溝48のうち、下側3つの分岐溝48は、その両端部において合流し、1つの溝ユニット(下側溝ユニット)として一方側端部および他方側端部の燃料孔46Cに連通している。さらに、9つの分岐溝48のうち、上側3つの分岐溝48と下側3つの分岐溝48との間の中間3つの分岐溝48は、その両端部において合流し、1つの溝ユニット(中間溝ユニット)として一方側端部および他方側端部の燃料孔46Bに連通している。これにより、燃料側溝37は、上側3つの分岐溝48で構成される上側溝ユニット37Aと、中間3つの分岐溝48で構成される中間溝ユニット37Bと、下側3つの分岐溝48で構成される下側溝ユニット37Cとに区別される。すなわち、各単位セル10では、積層状態において、これら上側溝ユニット37A、中間溝ユニット37Bおよび下側溝ユニット37Cは、燃料側電極32との間において、互いに独立した3つ(複数)の燃料供給路として、上側燃料供給路38A、中間燃料供給路38Bおよび下側燃料供給路38Cを形成する。
通水溝39は、互いに単位セル10の対角に対向する各通水孔47の間を連絡する、幅方向に延びる9つの直線溝49と略コ字状の折返溝50とが交互に連続する葛折状に形成されている。
9つの直線溝49は、それぞれ燃料側セパレータ34を挟んで分岐溝48と平行に(分岐溝48に沿って)形成されている。そのため、各単位セル10の積層状態においては、通水溝39と通水溝44とで形成される通水路40は、上記したように、燃料側溝37と燃料側電極32とで形成される燃料供給路38と平行に形成される。
また、セルスタック6の各単位セル10において、酸素側セパレータ35には、上記したように、正面側の一方面に酸素側溝42が形成され、背面側の他方面に通水溝44が形成されている。
酸素側溝42は、互いに単位セル10の対角に対向する各酸素孔45の間を連絡する、幅方向に延びる直線溝51と略コ字状の折返溝52とが交互に連続する葛折状に形成されている。直線溝51は、上下方向に互いに間隔をあけて配置されており、それぞれが酸素側セパレータ35を挟んで後述する直線溝53に対向するように形成されている。そして、この酸素側溝42は、各単位セル10の積層状態において、上記したように、酸素側電極33との間において酸素供給路43を形成する。
通水溝44は、互いに単位セル10の対角に対向する各通水孔47の間を連絡する、幅方向に延びる直線溝53と略コ字状の折返溝54とが交互に連続する葛折状に形成されている。直線溝53および折返溝54は、それぞれ酸素側セパレータ35を挟んで、直線溝51および折返溝52と平行に形成されている。そして、この通水溝44は、各単位セル10の積層状態において、上記したように、隣接する単位セル10の燃料側セパレータ34に形成された通水溝39との間において通水路40を形成する。
各単位セル10は、上下方向3つのセクションに区画される。具体的には、例えば、上側溝ユニット37Aの下端やや下方から単位セル10の上端に至る上側セクション55と、下側溝ユニット37Cの上端やや上方から単位セル10の下端に至る下側セクション57と、中間溝ユニット37Bを全部含み、上側セクション55と下側セクション57とで挟まれる中間セクション56とに区画される。
そして、図1に示した温度センサ11は、各単位セル10において、上側セクション55、中間セクション56および下側セクション57のそれぞれに1つずつ設けられる。すなわち、各単位セル10には、上側セクション55の温度を測定する温度センサ11A、中間セクション56の温度を測定する温度センサ11Bおよび下側セクション57の温度を測定する温度センサ11Cの合計3つの温度センサが設けられる。
これら温度センサ11A〜11Cは、各単位セル10において、具体的には、積層状態において、燃料側セパレータ34と電解質層31との界面、かつ、正面視幅方向一方側端部において、燃料孔46よりもやや外側に設けられる。また、これら温度センサ11A〜11Cは、図4および図5では図示されていないが、それぞれ独立してコントローラ22と電気的に接続されている。
そして、このような各単位セル10が複数積層(スタック)されてセルスタック6が構成され、セルスタック6の積層方向両側に、集電板7、絶縁板8およびエンドプレート9が順次積層されることによって燃料電池2が構成される。
燃料電池2は、図示しないケーシングに納められ、各給排部、すなわち、燃料給排部3、酸素給排部4および給排水部5が取り付けられることにより、図1に示す燃料電池システム1が構成される。
燃料電池システム1において、燃料供給口14には、燃料タンク19からの燃料ガスが供給されるとともに、酸素供給口15には、例えば、コンプレッサなどからの酸化ガスが供給される。また、給水口18には、例えば、給水装置からの加湿のための冷却水が供給される。
そして、燃料ガスは、燃料供給口14から、スタック構造とされたセルスタック6内に供給され、各単位セル10の燃料孔46および燃料供給路38を順次通過した後、燃料排出口17から排出される。また、酸化ガスは、酸素供給口15から、スタック構造とされたセルスタック6内に供給され、各単位セル10の酸素孔45および酸素供給路43を順次通過した後、酸素排出口13から排出される。また、冷却水は、給水口18からスタック構造とされたセルスタック6内に供給され、各単位セル10の通水孔47および通水路40を順次通過した後、排水口16から排出される。
電解質層31がアニオン交換膜である場合、各単位セル10では、下記のように発電が行なわれる。すなわち、燃料ガスが供給された燃料側電極32では、燃料ガスから水素(H2)が生成し、この水素(H2)の酸化反応によって、水素(H2)から電子(e−)が解放され、プロトン(H+)が生成する。
水素(H2)から解放された電子(e−)は、図示しない外部回路を経由して酸素側電極33に到達する。つまり、この外部回路を通過する電子(e−)が、電流となる。
一方、酸素側電極33では、電子(e−)と、外部からの供給もしくは単位セル10における反応で生成した水(H2O)と、酸素供給路43を流れる空気中の酸素(O2)とが反応して、水酸化物イオン(OH−)が生成する(下記反応式(2)参照。)。
そして、生成した水酸化物イオン(OH−)は、電解質層31を通過して燃料側電極32に到達する。水酸化物イオン(OH−)が燃料側電極32に到達すると、燃料側電極32では、水酸化物イオン(OH−)と、燃料中の水素(H2)とが反応して、電子(e−)と水(H2O)が生成する(下記反応式(1)参照。)。生成した電子(e−)は、図示しない外部回路を経由して酸素側電極33へ供給される。
このような燃料側電極32および酸素側電極33における電気化学的反応が連続的に行なわれることによって、単位セル10内に閉回路が形成されて起電力が生じ、発電が行なわれる。
(1) 2H2+4OH−→4H2O+4e− (燃料側電極32における反応)
(2) O2+2H2O+4e−→4OH− (酸素側電極33における反応)
(3) 2H2+O2→2H2O (単位セル10全体としての反応)
そして、以上説明した燃料電池システム1では、コントローラ22によって、燃料タンク19からの燃料ガスの流量制御が行なわれる。
図6は、コントローラ22において実行される供給弁23に対する制御処理の流れ示すフローチャートである。
燃料ガスの流量制御では、具体的には、発電中、まず、単位セル10の平均温度T0の測定処理が行なわれる(S1)。この平均温度T0の測定処理は、例えば、各単位セル10の温度センサ11で測定された温度がコントローラ22で検出され、この検出された温度の平均値を計算することにより行なわれる。算出された平均温度T0は、後述する乾燥状態を判別するための基準としてコントローラ22に記憶される。
次いで、各単位セル10の各部分の温度Tiが測定される(S2)。ここで、iは、1〜nの正の整数で示され、各単位セル10において温度が測定されるセクションの数である。この燃料電池システム1では、各単位セル10は、上側セクション55、中間セクション56および下側セクション57の3つのセクションに区別されているため、i=1〜3(すなわち、n=3)として燃料ガスの流量制御が行なわれる。
そして、まず、各単位セル10における最初のセクション(i=1)、例えば、上側セクション55の温度T1が温度センサ11Aで測定される。
測定温度T1とセル平均温度T0との差が、予め定める上限温度Tupper(例えば、3〜20℃)よりも大きければ(S3:YES)、すなわち、Ti−T0>Tupperであれば、コントローラ22では、上側セクション55が乾燥状態にある乾燥部分であると判断される。この乾燥状態とは、例えば、上側セクション55の含水量が低下することにより、上側セクション55の内部抵抗が増加するなど、いわゆるドライアウトが発生するおそれがある状態のことである。
上側セクション55が乾燥部分である判断されると、供給弁23Aの開度が小さくされる、down処理が行なわれて(S4)、燃料供給管20Aから燃料孔46を通って上側燃料供給路38Aに流入する燃料ガスの流量が減少する。
一方、測定温度T1とセル平均温度T0との差が、上限温度Tupper以下(S3:NO)、かつ、予め定める下限温度Tlower(例えば、−10〜−3℃)よりも小さければ(S5:YES)、すなわち、Ti−T0≦TupperかつTi−T0<Tlowコントローラ22では、上側セクション55が湿潤状態にある湿潤部分であると判断される。この湿潤状態とは、例えば、上側セクション55の含水量が過剰になることにより、上側セクション55における燃料側電極32への燃料ガスの拡散が妨げられるなど、いわゆるフラッディングが発生するおそれがある状態のことである。
上側セクション55が湿潤状態であると判断されると、供給弁23Aの開度が大きくされる、up処理が行なわれて(S6)、燃料供給管20Aから燃料孔46を通って上側燃料供給路38Aに流入する燃料ガスの流量が増加する。
そして、供給弁23Aの開度が制御処理されるか(S4およびS6)、あるいは、Ti−T0≦Tupper(S3:NO)かつTi−T0≧Tlowと判断されると(S5:NO)、再度上側セクション55の温度が温度センサ11Aで測定される(S7)。
測定温度T1とセル平均温度T0との差の絶対値が、予め定める許容温度Txよりも大きければ(S8:NO)、再度上側セクション55の温度が温度センサ11Aで測定され(S2)、上記と同様に、上限温度Tupperおよび/または下限温度Tlowerとの比較(S3およびS5)、および、供給弁23の開度制御処理(S4およびS6)が行なわれる。
そして、測定温度T1とセル平均温度T0との差の絶対値が、許容温度Tx以下(すなわち、|Ti−T0|≦Txになると(S8:YES)、コントローラ22では、上側セクション55が適切な加湿状態であると判断される。
次いで、温度が測定されたセクションの数iが、iの最大値imaxと等しいか否か判別される。この燃料電池システム1では、上側セクション55の他に、温度が測定されるセクションとして、中間セクション56および下側セクション57が設定されているため、i=imaxでないと判断され(S9:NO)、各単位セル10における第2のセクション(i=1+1=2)として、例えば、中間セクション56がロードされる(S10)。
そして、中間セクション56および下側セクション57に対して、上記した上側セクション55に対する燃料ガスの流量制御処理と同様の処理が行なわれると、i=imaxと判別されて(S9:YES)、当該単位セル10に対する燃料ガスの流量制御処理が終了となる。
その後は、例えば、燃料ガスの流量制御処理が終了した単位セル10に隣接する単位セル10に対して、上記した制御処理が行なわれ、このような処理が、燃料電池2の発電中継続される。
以上のように、本発明の燃料電池システム1では、温度センサ11A、温度センサ11Bおよび温度センサ11Cにより、各単位セル10における上側セクション55、中間セクション56および下側セクション57それぞれの温度が測定される。
そして、その測定温度に基づいて、コントローラ22により、各セクション55〜57が乾燥状態、湿潤状態あるいは適切な加湿状態であるか否かが判別され、供給弁23A〜23Cの開度が適切に制御される。
これによって、各セクション55〜57が乾燥状態や湿潤状態である場合でも、上側燃料供給路38A、中間燃料供給路38Bおよび下側燃料供給路38Cに対して、各セクション55〜57を適切な加湿状態にするために、適切な流量の燃料ガスを供給することができるので、各セクション55〜57のさらなる乾燥および湿潤を抑制することができる。したがって、各単位セル10の加湿状態を適切な状態に保つことができる。
また、各単位セル10が、上側セクション55、中間セクション56および下側セクション57に区別され、さらに、3つの燃料供給路38(上側燃料供給路38A、中間燃料供給路38Bおよび下側燃料供給路38C)が、これら各セクションそれぞれに振り分けられて設けられている。そのため、各単位セル10の加湿状態を均一化することができる。したがって、例えば、燃料側セパレータ34の幅方向の長さを短くすることなどによって、各単位セル10の面積を小さくして、燃料供給路38の流路長を短くする必要がない。
そのため、各単位セル10の出力量を幅広くカバーすることができる。その結果、各単位セル10の面積を大きくして、セル積層数を低減することができるので、燃料電池2の構造を簡略にすることができる。
また、燃料供給路38が複数(この実施形態では、3つ)設けられていることにより、燃料側電極32で生成する水を、各単位セル10において部分的にパージすることができる。そのため、パージに必要なエネルギーを低減することができる。その結果、ランニングコストを低減することができる。
さらに、通水路40が、燃料供給路38と平行に(燃料供給路38に沿って)形成されており、燃料側セパレータ34を挟んで燃料供給路38に対向している。
例えば、通水路40を流れる冷却水は、発電により加熱された単位セル10を冷却すると、当該単位セル10との熱交換により、その温度が上昇する。それゆえ、セルスタック6において、通水孔47の下流側(排水口16により近い側)の単位セル10では、冷却水の温度が上流側(給水口18により近い側)の単位セル10に比べて高くなり、単位セル10全体が乾燥状態になりやすくなる。
しかし、この燃料電池システム1では、燃料電池2における通水路40が、燃料側セパレータ34を挟んで燃料供給路38に対向している。そのため、各単位セル10の乾燥状態に応じて燃料ガスの流量を制御することによって、セルスタック6の加湿状態を全体的に適切な状態に保つことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
本発明の燃料電池システム1の用途としては、例えば、電動車両、鉄道、船舶、航空機などが挙げられる。
また、前述の実施形態では、燃料側溝37のみを、3つの上側溝ユニット37A、中間溝ユニット37Bおよび下側溝ユニット37Cに区別される溝として形成し、これによって、互いに独立した3つ(複数)の燃料供給路として、上側燃料供給路38A、中間燃料供給路38Bおよび下側燃料供給路38Cを形成したが、例えば、酸素側溝42についても同様に、3つの溝ユニットに区別される溝として形成し、互いに独立した3つの酸素供給路43を形成することができる。この場合には、さらに、3つの酸素供給路43に沿って、通水溝44を形成することもできる。
また、前述の実施形態では、各単位セル10を上側セクション55、中間セクション56および下側セクション57の3つのセクションに区別したが、各単位セル10のセクションは、さらに細分化することもできる。
また、前述の実施形態では、各単位セル10の乾燥状態および湿潤状態を、温度センサ11を用いて検出したが、例えば、各単位セル10に参照電極を設け、当該参照電極から交流を印加することにより行なうインピーダンス法により検出することもできる。また、各単位セル10に圧電素子を設け、各単位セル10の温度変化に伴う単位セル10面内の荷重変化を検出し、これによって各単位セルの温度を検出する方法によって検出することもできる。
また、前述の実施形態では、単位セル10のセル平均温度T0は、温度センサ11の測定値に基づいて算出したが、例えば、給水口18付近の冷却水温度と排水口16付近の冷却水温度との差から、単位セル10を通過する冷却水の温度上昇率に基づいて算出することもできる。