JP5325438B2 - 非鉄金属管加工用潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、銅、銅合金及びアルミニウム管などの引き抜き加工などの加工工程で金属管の内外面に塗布して使用される非鉄金属管加工用潤滑油組成物に関する。
従来、自動車用エアコン等の冷凍システムには伝熱管を有する熱交換器が広く用いられており、その伝熱管としては軽量化の観点から銅、銅合金及びアルミニウム管を使用することが多い。
銅、銅合金及びアルミニウム管の製造方法としては、例えば、金属素管の内外面に潤滑油を供給して抽伸加工し、これをコイル状に巻き取った後、還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で加熱焼鈍する方法が挙げられる。
ここで、金属素管の抽伸加工工程に使用される潤滑油としては、焼鈍工程の熱により低分子量化して気化するものが望ましい。しかし、焼鈍工程における通常の加熱条件では、低分子量化が十分に進行しないことが多く、その結果、常温で気化しない成分が生成して金属管上に残留してしまうことがある。また、長尺の金属管をコイル状に巻き取った場合や金属管の管径が小さい場合には、低分子量化によりガス化した潤滑油成分をその体積膨張のみで管外に排出することは困難であり、冷却過程においてガス成分の一部が凝縮し、管内に残油又は残溢が生成してしまう。
更に、冷凍システムの熱交換器の組立作業時にはロウ付けが行われるが、管内残油が存在すると、ロウ付け作業時にガスが発生し、系内の空気と反応して炭化物となりロウ付け不良を引き起こす原因となる。また、このようにして生成した炭化物が残存した金属管を伝熱管として用いると、冷凍システム内で炭化物が冷凍機油に混入し、冷凍機油の劣化の原因となる。
このように管内に残油又は残溢(以下、これらを総括して「管内残油」という)が生成した金属管を伝熱管として用いると、熱交換器の効率が低下する原因となり得る。また、抽伸加工工程に使用される潤滑油には、従来、鉱油、ポリオレフィン、アルキルベンゼンあるいはイソパラフィンなどの炭化水素系潤滑油に由来するものであるが(例えば、特許文献1〜4を参照)、これらはハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒に対して相溶性を示さず、冷凍システム内で残油又は残溢が析出して膨張機構の目詰まり等の問題を引き起こすことがある。
また、HFC冷媒に対する相溶性を改善するために、ポリアルキレングリコールを基油とし、潤滑性を付与するために多価アルコールの部分エーテル化合物を配合する方法も行われている(例えば、特許文献5,6を参照)。
とくに、特許文献6では、ポリアルキレングリコールを基油として、アルコール油性剤を配合してなる、アルミニウム管加工用潤滑油が開示されているが、その実施例でのアルコールの配合量は10%もの多量の配合である(特許文献6、表1、実施例7および9(添加剤A3(ラウリルアルコール) 10%)。添加剤A3(ラウリルアルコール)は、他の基油でも10%を配合されており(実施例3および10)、いずれにしろ多量の配合である。
特開平11−071591号公報 特開2000−186291号公報 特開2007−154055号公報 特開2007−246725号公報 特開2000−169874号公報 特開2005−290160号公報
上記特許文献6の油性剤としてのアルコールは、具体的にはモノアルコールではあるが(特許文献6、段落0054)、多量の使用はコスト高を招き、低コストの潤滑油の開発が望まれる。
ここで、上記特許文献6では、一価アルコールの炭素数はより潤滑性に優れる点から6以上が好ましいとしており(特許文献6、段落0054)、この点から、その実施例でも前述のように炭素数12のラウリルアルコールを使用している。
しかしながら、このような従来の概念による基油と油性剤との組み合わせではその使用量の低減は難しいことが認識される。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、非鉄金属管の抽伸加工、転造加工等において優れた潤滑性を発揮し、また、焼鈍工程において管内残油を十分に低減することが可能な非鉄金属管加工用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
ここで、本発明者らは、低分子量のポリアルキレングリコールを油性剤として採用し、その分子量を低分子量とすることで、該油性剤の加工対象の金属への吸着が大となり、それから、その使用量が低減できることが判明した。これは単に低分子量油性剤の採用というよりも、油性剤発想の転換によるものである。
すなわち、前記課題を解決するために、本発明の非鉄金属管加工用潤滑油組成物は、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのアルキルエーテルからなる群から選択された少なくとも1種を基油とし、低分子量のポリアルキレングリコールから選択された少なくとも1種からなる油性剤を、組成物全量基準で、0.05質量%〜10質量%を含有することを特徴とする。
本発明の非鉄金属管加工用潤滑油組成物は、上記構成を有するために、抽伸加工、転造加工等において優れた潤滑性を発揮することができるものであり、また、焼鈍工程における加熱温度での十分な熱分解性及び気化特性を示すものである。したがって、本発明によれば、焼鈍炉内において長尺でコイル状の非鉄金属管にパージ等の特別な残油除去処理を施すことなく、低コストで管内残油を低減することができ、その結果、抽伸または転造時の焼付きの防止、非鉄金属管のロウ付性の向上、並びに、焼鈍後の管内残油又はその炭化物の冷凍システムへの混入の防止を十分に達成することができるようになる。
本発明によれば、非鉄金属管の抽伸加工、転造加工等において優れた潤滑性を発揮し、また、焼鈍工程において管内残油を十分に低減することが可能になると共に、低分子量のポリアルキレングリコール油性剤を採用することに起因して、低配合量により低コストとなる非鉄金属管加工用潤滑油組成物が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の非鉄金属管加工溶潤滑油組成物(以下、場合により単に「本発明の潤滑油組成物」という)は、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのアルキルエーテルからなる群から選択された少なくとも1種を基油とし、低分子量のポリアルキレングリコールからなる油性剤を、組成物全量基準で、0.05質量%〜10質量%含有するものである。
本発明で用いられる基油としてのポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのアルキルエーテル(以下、「PAG類」ともいう。)としては、下記一般式(1)で表される構造を有するものが好ましい。
1−O−(R2−O)−R3 (1)
(式中、R1,R3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を示し、R2は、アルキレン基を示し、mは10〜100の整数であり、m個のR2は同一でも異なっていてもよい。)
一般式(1)中、R又はRのいずれか一方あるいは双方がアルキル基である場合、このアルキル基の炭素数は任意に選択することができるが、炭素数が18を超えると、焼鈍後に潤滑油が管内に残存することがある。従って、アルキル基の炭素数は1〜18であることが好ましく、炭素数が1〜10であるとより一層好ましい。また、このアルキル基は直鎖状であっても、分枝状であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、scc−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖状又は分枝状のペンチル基、直鎖状又は分枝状のヘキシル基、直鎖状又は分枝状のへプチル基、直鎖状又は分枝状のオクチル基、直鎖状又は分枝状のノニル基、直鎖状又は分枝状のデシル基、直鎖状又は分枝状のウンデシル基、直鎖状又は分枝状のドデシル基、直鎖状又は分枝状のトリデシル基、直鎖状又は分枝状のテトラデシル基、直鎖状又は分枝状のペンタデシル基、直鎖状又は分枝状のヘキサデシル基、直鎖状又は分枝状のヘプタデシル基、及び直鎖状又は分枝状のオクタデシル基等が挙げられる。
また、一般式Rで示されるアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、一般的には炭素数を2〜10とすることが好ましい。炭素数が2〜10の2価のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基(1−メチルエチレン基及び2−メチルエチレン基を含む)、トリメチレン基、ブチレン基(1−エチルエチレン基及び2−エチルエチレン基を含む)、1,2−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基(1−ブチルエチレン基及び2−ブチルエチレン基を含む)、1−エチル−1−メチルエチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基、1,1,2−トリメチルエチレン基、1,2,2−トリメチルエチレン基、へキシレン基(1−ブチルエチレン基及び2−ブチルエチレン基を含む)、1−メチル−1−プロピルエチレン基、1−メチル−2−プロピルエチレン基、2−メチル−2−プロピルエチレン基、1,1−ジエチルエチレン基、1,2−ジエチルエチレン基、2,2−ジエチルエチレン基、1−エチル−1,2−ジメチルエチレン基、1−エチル−2,2−ジメチルエチレン基、2−エチル−1,1−ジメチルエチレン基、2−エチル−1,2−ジメチルエチレン基、1,1,2,2−テトラメチルエチレン基、ヘプチレン基(1−ペンチルエチレン基及び2−ペンチルエチレン基を含む)、オクチレン基(1−ヘキシルエチレン基及び2−ヘキシルエチレン基を含む)、ノニレン基(1−ヘプチルエチレン基及び2−ヘプチルエチレン基を含む)、デシレン基(1−オクチルエチレン基及び2−オクチルエチレン基を含む)等が挙げられる。
これらの中でも、Rとしては、吸湿性が低く、潤滑性が優れており、加水分解が起こりにくい等の点から、炭素数3以上のアルキレン基が好ましく、炭素数4以上のアルキレン基がより一層好ましい。なお、吸湿性が高いPAG類は、分解により蟻の巣状の腐食媒体である低級カルボン酸を生成し、非鉄金属管に付着した際に短時間でリークすることがある。
また、焼鈍時の残渣分をより一層低減することができ、焼鈍後の残留物が冷凍システムに及ぼす悪影響を低減させることができる等の点から、Rとしては炭素数8以下のアルキレン基を使用することが好ましく、炭素数が6以下のアルキレン基を使用することがより一層好ましい。
なお、一般式(1)で表されるPAG類は、m個のRが同一のアルキレン基である単独重合体であっても、2種以上のRを含んでポリオキシアルキレン鎖−(R−O)−が構成された共重合体であってもよい。共重合体とする場合には、その共重合体を構成するモノマー比及びモノマーの配列は限定するものではなく、ランダム共重合体、交互共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。
また、一般式(1)で表されるPAG類が共重合体である場合のRとしては、吸湿性が低く、潤滑性が優れており、加水分解が起こりにくく、焼鈍時の残渣分をより一層低減することができ、焼鈍後の残留物が冷凍システムに及ぼす悪影響を低減させることができる等の点から、炭素数3〜6のアルキレン基であることが好ましく、中でもプロピレン基及びブチレン基がより一層好ましい。更に、炭素数4〜6のアルキレン基であることが好ましく、中でもブチレン基は原料の入手容易性の点からより一層好ましい。
更に、本発明において、上記一般式(1)中のmが10未満であると、沸点が低下することによりエーテル結合部での分解性が低下するおそれがある。一方、mが100を超えると、基油が分解しやすい構造を有している場合であっても、残油成分として残る確率が高くなる傾向にある。また、焼鈍後の残留物が冷凍システムに及ぼす悪影響が増大する可能性がある。従って、mは10〜100であることが好ましい。
本発明においては、上記のPAG類のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられるPAG類は、十分な熱分解性を有しており、焼鈍工程における加熱温度でモノマー又はオリゴマー等に分解して気化する。これらの分解物は比較的沸点が低く、炉内で冷却した後においても凝縮しないので、焼鈍後に管内をパージしたときに、潤滑油成分は管外に放出される。従って、潤滑油の基油として、PAG類から選ばれる少なくとも1種を使用することにより、焼鈍後に管内に残留する油分を低減することができる。また、この基油を使用することにより、焼鈍後の残留物が冷凍システムに及ぼす悪影響を低減することができる。
なお、本発明の潤滑油組成物は、その優れた特性を損なわない限り、上記のPAG類以外の基油を更に含有してもよい。かかる基油としては、ポリブテン、鉱油、炭化水素系合成油(ポリブテン以外のオレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等)、PAG類以外のエーテル油(ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル等)、エステル油(芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル等)、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどが挙げられる。中でも、ポリブテンは基油として好ましく含有しても良い。
PAG類以外の基油の含有量は、焼鈍後の管内残留油分量をより一層低減することができると共に、焼鈍後の残留物が冷凍システムに及ぼす悪影響をより一層低減することができる点から、組成物全量を基準として、ポリブテンを除いて、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。そして、本発明の冷凍機油組成物においては、ポリブテン及びPAG類以外の基油が含まれないことが最も好ましい。
次に、配合剤として、油性剤成分であるアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール(以下、「PAG系油性剤」ともいう。)について詳述する。
本発明で用いられるPAG系油性剤は、下記一般式(2)で表される構造を有する。
HO−(R4−O)−H (2)
(但し、R4は、アルキレン基を示し、nは1〜6の整数であり、n個のRは同一でも異なっていてもよい。)
一般式(2)中、R4で示されるアルキレン基の炭素数は2〜4とすることが好ましい。炭素数が2〜4のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基(1−メチルエチレン基及び2−メチルエチレン基を含む)、トリメチレン基、ブチレン基(1−エチルエチレン基及び2−エチルエチレン基を含む)、1,2−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、R4としては、吸湿性が低く、潤滑性が優れており、加水分解が起こりにくい等の点から、炭素数3以上のアルキレン基が好ましく、炭素数4のアルキレン基がより一層好ましい。
なお、一般式(2)で表されるPAG系油性剤は、n個のR4が同一のアルキレン基である単独重合体であっても、2種以上のR4を含んでポリオキシアルキレン鎖−(R4−O)−が構成された共重合体であってもよい。共重合体とする場合には、その共重合体を構成するモノマー比及びモノマーの配列は限定するものではなく、ランダム共重合体、交互共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。
更に、本発明において、上記一般式(2)中のnが6を超えると、加工金属への吸着能が低下して油性剤としての効果が低減することからnは1〜6であることが好ましい。
本発明におけるPAG系油性剤としては、抽伸工程、転造工程等においてより高水準の潤滑性が得られる点から、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの2〜6量体)、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの2〜6量体);並びにこれらの混合物が好ましく、その数平均分子量は80〜340であり、好ましくは100〜300であり、さらに好ましくは150〜250である。
本発明においては、上記のPAG系油性剤のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
PAG系油性剤の含有量は、組成物全量基準で、0.05質量%〜10質量%であり、好ましくは0.1質量%〜5質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜5質量%である。当該含有量が0.05質量%未満であると油性剤としての効果が小さくなって十分な潤滑性が得られなくなり、当該含有量が10質量%を超えると油性剤としての効果が半減してしまい好ましくない。
本発明の潤滑油組成物においては、その優れた効果をより一層向上させるため、必要に応じて極圧添加剤、酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の添加剤を単独で又は2種以上を組み合わせて更に含有してもよい。
極圧添加剤としては、トリクレジルフォスフェート等のリン系化合物、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛等の有機金属化合物が挙げられる。酸化防止剤としては、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール(DBPC)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン及びジアルキルジチオリン酸亜鉛等の有機金属化合物が挙げられる。さび止め剤としては、オレイン酸等の脂肪酸の塩、ジノニルナフタレンスルホネート等のスルホン酸塩、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、アミン及びその誘導体、リン酸エステル及びその誘導体が挙げられる。腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン系のものが挙げられる。
上記添加剤の合計含有量は、組成物全量基準で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
本発明の潤滑油組成物の動粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは30〜2000mm/s、より好ましくは50〜1000mm/s、更に好ましくは80〜900mm/s、特に好ましくは100〜800mm/sである。当該動粘度が30mm/s未満であると、焼鈍後に管内に残留する油分量が増加する傾向にあり、また、潤滑性が低下する傾向にある。一方、当該動粘度が3000mm/sを超えるような高粘度である場合には、焼鈍後の管内残油量が増加することがある。
上記構成を有する本発明の非鉄金属管加工用潤滑油組成物は、組成物としてのコストが安価であり、抽伸加工、転造加工等において優れた潤滑性を発揮することができるものであり、また、焼鈍工程における加熱温度での十分な熱分解性及び気化特性を示すものである。したがって、本発明によれば、焼鈍炉内において長尺でコイル状の非鉄金属管にパージ等の特別な残油除去処理を施すことなく、低コストで管内残油を低減することができ、その結果、抽伸または転造時の焼付きの防止、非鉄金属管のロウ付性の向上、並びに、焼鈍後の管内残油又はその炭化物の冷凍システムへの混入の防止を十分に達成することができるようになる。
本発明の非鉄金属管加工用潤滑油組成物が適用される冷凍システムの熱交換器等に関し、使用される冷媒としては、HFC系冷媒及びHFC系冷媒と炭化水素(HC冷媒)との混合冷媒あるいは二酸化炭素冷媒等が挙げられる。
HFC系冷媒としては、炭素数が1〜3であるフッ化アルカン(HFC)フッ化アルケン(HFC)が公知であり、具体的には、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、及び1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロプロペン(1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペンおよび3,3,3−トリフルオロプロペン)等のハイドロフルオロカーボン(HFC)、並びにこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
また、炭化水素系冷媒としては、炭素数が1〜6であるアルカン、シクロアルカン及びアルケン並びにこれらの混合冷媒を使用することができる。具体的には、例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、シクロブタン及びメチルシクロプロパン、並びにこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
更に、本発明において、冷凍システムに使用される冷凍機油、即ち、冷凍システム中のコンプレッサオイルとしては、鉱油及び合成油からなる群から選択された少なくとも1種に、必要に応じて各種の添加剤を添加したものを使用することができる。
冷凍機油として使用される鉱油としては、具体的には、例えば原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうち、1種又は2種以上の精製手段を組み合わせて得られるパラフィン系又はナフテン系の鉱油を使用することができる。
また、冷凍機油として使用される合成油としては、具体的には、例えばポリオレフィン、アルキルベンゼン、エステル、エーテル、シリケート及びポリシロキサン等の合成含酸素油を使用することができるが、特に、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、エステル及びエーテル等を使用することが好ましい。
冷凍機油として使用される合成油のうち、ポリオレフィンとは、炭素数が2〜16、好ましくは炭素数が2〜12のオレフィンの単独重合体及び共重合体、並びにこれらの水素化物をいう。このポリオレフィンが、構造が異なるオレフィンの共重合体である場合には、その共重合体におけるモノマー比及びモノマー配列には特別な制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
また、ポリオレフィンを形成するオレフィンモノマーは、α−オレフィンであっても、内部オレフィンであってもよく、更に、直鎖状オレフィンであっても分枝状オレフィンであってもよい。
なお、潤滑油用の基油として市販されているエチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン及びポリ−α−オレフィン等の合成油は、通常、その二重結合が既に水素化されているものであり、これらの市販品についても、冷凍機油の成分として使用することができる。
また、冷凍機油として使用される合成油のうち、アルキルベンゼンとしては、任意のものを使用することができるが、例えば、炭素数が1〜40であるアルキル基を1〜4個有するアルキルベンゼンを使用することができる。
アルキルベンゼンのアルキル基としては、直鎖状であっても、分枝状であってもよいが、安定性及び粘度特性等の点から、分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを合成油として使用することが好ましい。この中でも、特に、プロピレン、ブテン及びイソブチレン等のオレフィンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基を有するアルキルベンゼンは、入手が容易であるので冷凍機油として使用することが好ましい。
また、アルキルベンゼンのアルキル基の個数は、1〜4個であることが好ましいが、安定性及び入手可能性の点から、1個のアルキル基を有するモノアルキルベンゼン及び2個のアルキル基を有するジアルキルベンゼン並びにこれらの混合物を冷凍機油として使用することができる。なお、アルキルベンゼンとしては、単一の構造のアルキルベンゼンのみでなく、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物であってもよい。
冷凍機油として使用される合成油のうち、エステルとしては、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル及び炭酸エステル等がある。なお、冷凍機油の成分として使用することができるエステルとは、エステルを構成する酸及びアルコールとして、二塩基酸等の多塩基酸及び多価アルコールを使用した場合には、実質的に全てがエステル化されたもののみを示し、カルボキシル基及び水酸基等がエステル化されずに残存している部分エステルは含まない。
二塩基酸エステルとしては、炭素数が5〜10である二塩基酸と、直鎖状又は分枝状のアルキル基を有する炭素数が1〜20の一価アルコールとのエステル、並びにこれらの混合物を使用することができ、具体的には、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート及びジ2−エチルヘキシルセバゲート、並びにこれらの混合物等を使用することができる。
ポリオールエステルとしては、ジオール又は水酸基を3〜20個有するポリオールと、炭素数が6〜20である脂肪酸とのエステルを使用することが好ましい。
ジオールとして、具体的には、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、及び1,12−ドデカンジオール等がある。
水酸基を3〜20個有するポリオールとしては、具体的には、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等がある。なお、ポリオールとして特に好ましくは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、及びトリ−(ペンタエリスリトール)等である。
炭素数が6〜20である脂肪酸としては、具体的には、例えばペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸及びオレイン酸等の直鎖状又は分枝状のもの、並びにα炭素原子が4級であるネオ酸等がある。更に具体的には、吉草酸、イソペンタン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ノルマルノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等がある。
ポリオールエステルの具体例としては、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサノエート、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート、並びにこれらの混合物等がある。
冷凍機油として使用されるエステルのうち、コンプレックスエステルとは、脂肪酸及び二塩基酸と、一価アルコール及びポリオールとのエステルのことであり、脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール及びポリオールとしては、二塩基酸エステル及びポリオールエステルについて例示したものと同様のものを使用することができる。
また、炭酸エステルとは、炭酸と一価アルコール及びポリオールとのエステルのことであり、一価アルコール及びポリオールとしては、前述のものと同様のものの他、アルキレンオキサイドを単独重合又は共重合したポリグリコール、及び前述のポリオールにポリグリコールを付加したもの等を使用することができる。
冷凍機油として使用することができるエーテルとしては、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、環状エーテル及びパーフルオロエーテル等があるが、これらのエーテルのうち、ポリグリコール及びポリビニルエーテル等を使用することが好ましい。
ポリグリコールとしては、ポリアルキレングリコール及びそのエーテル化物、並びにこれらの変性化合物等を使用することが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを単独重合又は共重合したものを使用することができる。なお、ポリアルキレングリコールにおいて、異なる構造を有するアルキレンオキシドが共重合している場合に、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していても、ブロック共重合していてもよい。
ポリアルキレングリコールのエーテル化物とは、上述のポリアルキレングリコールの水酸基をエーテル化したものである。ポリアルキレングリコールのエーテル化物として、具体的には、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノペンチルエーテル、モノヘキシルエーテル、モノへプチルエーテル、モノオクチルエーテル、モノノニルエーテル、モノデシルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジへプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル及びジデシルエーテル等がある。
また、ポリグリコールの変性化合物としては、ポリオールのアルキレンオキシド付加物、及びそのエーテル化物等がある。このポリオールとしては、ポリオールエステルについて例示したものと同様のポリオールを使用することができる。
更に、ポリビニルエーテルとしては、下記一般式(3)で表される構成単位を有するものを使用することができる。
Figure 0005325438
一般式(3)中、R、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を示し、pは分子全体の平均値が0〜10となるような整数を示す。R〜Rは構成単位毎に同一であっても異なったものであってもよい。更に、R−Oが複数存在する場合、即ち、pが2以上である場合には、複数のR−Oは互いに同一であっても異なったものであってもよい。
これらの冷凍機油のうち、たとえば、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステルおよび炭酸エステル等のエステル;ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、環状エーテルおよびパーフルオロエーテル等のエーテル等の含酸素合成油を使用した場合には、非鉄金属管の焼鈍後の管内残留物が冷凍システムに及ぼす影響が大きいので、本発明に係る非鉄金属管加工用潤滑油を使用すると、顕著な効果を得ることができる。
本発明の潤滑油は、銅、銅合金及びアルミニウム管などの引き抜き加工などの加工工程で金属管の内外面に塗布して使用される非鉄金属管加工用潤滑油組成物として利用され得る。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜8、比較例1〜3]
実施例1〜8及び比較例1〜3においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて表1に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
(基油)
基油1:ポリブチレングリコール(40℃における動粘度:580mm/s、数平均分子量:4800)
基油2:ポリプロピレングリコール(40℃における動粘度:470mm/s,数平均分子量:4000)
基油3:ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(40℃における動粘度:620mm/s,数平均分子量:3000)
基油4:鉱油(40℃における動粘度:460mm/s)
(添加剤)
A1:ポリプロピレングリコール(数平均分子量:200)
A2:ポリエチレングリコール(数平均分子量:200)
A3:グリセリンモノオクチルエーテル
次に、実施例1〜8及び比較例1〜3の潤滑油組成物について以下の試験を行った。
(潤滑性:バウデン試験)
以下の試験条件でボール・オン・プレート往復動摺動試験(バウデン試験)を実施し、摩擦係数を測定した。得られた結果を表1に示す。
試験条件
送り速度:50mm/min
荷重:500gf
ボール(上側試験球):5/32inch鋼球(SUJ−2)
プレート(下側試験板):A5052材板(アルミニウム)
試験温度:室温。
(焼鈍性)
示差熱天秤装置を用いて窒素雰囲気下で試験し、試料油の熱分解時の残渣物の質量を元試料に対する残分(質量%)として測定すると共に、残渣物の外観を観察した。外観は、変化ないものを「○」、スラッジ化するものを「×」として評価した。
試験条件
元試料:0.025g
昇温速度:10℃/min
窒素流量:50mL/min
(焼鈍残渣安定性)
金属管加工用潤滑油の焼鈍残渣物の冷凍機油に対する安定性を評価するため、以下の試験を実施した。まず、JIS K 2211「冷凍機油」の附属書2「冷媒との化学安定性試験方法(シールドグラスチューブ試験)」に準拠した触媒(太さ1.6mm、長さ50mmの鉄線、銅線及びアルミニウム線)を準備した。その触媒を金属管加工用潤滑油の試料油に浸漬して触媒表面に試料油を付着させ、300℃の恒温槽に入れて30分間保持して焼鈍した。この焼鈍した触媒を、内径10mm、肉厚1mmのガラス管に入れ、冷凍機油(ポリプロピレングリコール、40℃における動粘度:46mm/s)1mL、試料油1mL及び冷媒(HFC−134a)1mLを採取して、ガラス管を溶融して密閉した。この密閉したガラス管を175℃で14日保持した後、触媒の外観及びスラッジの有無を観察した。得られた結果を表1に示す。表1の「触媒外観」の欄中、Aは「変化なし」、Bは「変色が認められた」、Cは「腐食した」をそれぞれ意味する。また、試験後の油剤の外観を観察した。表1の「油剤の外観」の欄中、Aは「変化なし」、Bは「沈殿が認められた」を意味する。
組成物コスト比は、比較例1の全材料コストを100として、各実施例および比較例のコスト比を算出した。また、添加剤コスト比は、比較例1の添加剤(A3)のコストを100として、各実施例および比較例の添加剤のコスト比を算出した。
表1から明らかなように、比較例1に比べて実施例1〜8は、組成物コスト及び添加剤コストが非常に小さく、経済性に優れていることが分かる。また、比較例2は、添加剤A1の配合量が過剰なため潤滑性が劣っている。また、比較例3は、基油が鉱油であるためコストを小さいものの、潤滑性、焼鈍性、焼鈍残渣安定性のいずれも劣っていることが分かる。
Figure 0005325438

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)で示されるポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのアルキルエーテルからなる群から選択された少なくとも1種を基油とし、下記一般式(2)で表されるアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールからなる油性剤を、組成物全量基準で、0.05質量%〜10質量%を含有することを特徴とする非鉄金属管加工用潤滑油組成物。
    1−O−(R2−O)−R3 (1)
    (但し、R1,R3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を示し、R2は、アルキレン基を示し、mは10〜100の整数であり、m個のR2は同一でも異なっていてもよい。)
    HO−(R4−O)−H (2)
    (但し、R4は、アルキレン基を示し、nは1〜6の整数であり、n個のR 4 は同一でも異なっていてもよい。)
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