移動通信端末によるデータ通信技術において、RNC(Radio Network Controller:無線制御装置)を2以上のコアネットワークと接続可能とした方式であるIu−Flexが、非特許文献1に規定されている。Iu−Flexでは、コアネットワークの1つが故障した場合でも他のコアネットワークに接続することで、故障したコアネットワークにおける通信の全断を回避することができる。
Iu−Flex導入後には、RNCからコアネットワークが複数認識できるようになるため、移動通信端末の呼制御において、当該端末の加入者情報(加入者プロファイル)を保持しており本来移動通信端末が接続すべきコアネットワークを、複数のコアネットワークの中から選択する必要がある。このため、Iu−Flexにおいては、移動通信端末の位置登録処理の際に、当該端末に割り当てられ、端末から払い出される、端末の一時的な識別情報であるTMSI(Temporary Mobile Subscriber Identity)/P−TMSI(Packet Temporary Mobile SubscriberIdentity)のビット列中に、接続すべきコアネットワークのアドレスが設定される。このアドレスのことを非特許文献1ではNRI(Network Resource Identifier)と定義されている。そして移動通信端末から発信される呼制御信号(位置登録、発信など)(具体的にはRRC_ConnectionRequest)がRNCにて受信されると、RNCはこの信号に含まれるTMSI/P−TMSIからNRIを抽出して、このNRIをみて接続すべきコアネットワークを選択し、選択したコアネットワークに呼制御信号を送信する。コアネットワークは、この呼制御信号に含まれるTMSI/P−TMSIを加入者プロファイルに格納して保持する。なお、TMSIは、回線交換サービス(CS)において移動通信端末に割り当てられる識別情報であり、P−TMSIは、パケット交換サービス(PS)において移動通信端末に割り当てられる識別情報である。
このようにコアネットワークに加入者プロファイルが保持された後に、Iu−Flexのもとで実行されるパケット交換サービス(PS)の着信制御について図4を参照して説明する。図4では、GPRS(General Packet Radio Service)を例示しており、GPRSでは、コアネットワークはSGSN(Serving GPRS Support Node)8’、GGSN(Gateway GPRS Support Node)7’、及びHLR(Home Location Register)6’を含んで構成される。なお、この処理の前提として、予め移動通信端末2からの回線交換サービス(CS)及びパケット交換サービス(PS)の双方への位置登録処理が行われており、移動通信端末2がTMSI及びP−TMSIの両方を予め保持しており、また、SGSN8’は、移動通信端末2のP−TMSIを含む加入者プロファイルを保持しているものとする。
まず、移動通信端末2に対する着呼をGGSN7’が受信すると、GGSN7’は、移動通信端末2が在圏するエリアのSGSN8’を特定する情報を要求する信号であるSRI For GPRSをHLR6’に送信する(S201)。HLR6’は、これに応じてSGSN8’を特定する情報であるSGSN Numberを付加したSRI For GPRS ackをGGSN7’に返送する(S202)。GGSN8’は、このSGSN Numberにより特定されるSGSN8’に対してPS着信信号を送信する(S203)。
SGSN8’は、PS着信信号を受信すると、着信先の移動通信端末2の加入者プロファイルを検索し、SGSN8’内に保持していること(加入者プロファイル有り)を確認し(S204)、この加入者プロファイルから移動通信端末2のP−TMSIを取得する(S205)。そして、この取得したP−TMSIと、G−CNID(SGSN8’自身を特定する情報。NRIを含む)とを引数として設定した、ページング実行指令(RANAP_PAGING)をRNC3’に送信する(S206)。
RNC3’は、RANAP_PAGINGを受信すると、P−TMSIとG−CNIDを関連付けて保持する(S207)と共に、P−TMSIを引数として設定したページング信号RRC_Pagingをエリア内の移動通信端末2に送信する(S208)。つまりRNC3’はP−TMSIでページングを実行する。
移動通信端末2は、RNC3’からRRC_Pagingを受信すると、この信号の引数に設定されるP−TMSIを保持している場合に、まずコアネットワークへの接続要求であるRRC_ConnectionRequestをRNC3’に送信する(S209)。
ここで、RRC_ConnectionRequestには、移動通信端末2に保持されているTMSI、P−TMSI、IMSIのいずれかが移動通信端末2の識別情報が引数パラメータとして設定される。これらの選択基準は、(1)TMSI、(2)P−TMSI、(3)IMSI(International Mobile Subscriber Identity)の順で優先度が設定されることが非特許文献2に規定されている。つまり、移動通信端末2がTMSIを保持しているならば、ページングの引数によらず常にTMSIが選択される。この例では、移動通信端末2がTMSIを保持しているので、P−TMSIでページングが行われているが、優先度の高いTMSIを引数として選択し、RNC3’に返す。
このような非特許文献2の規定のため、パケット交換サービスの着信制御においては、移動通信端末2にTMSIが保持されている場合、RRC_ConnectionRequestの引数にP−TMSIが選択されない。このとき、RNC3’が保持している移動通信端末2の識別情報であるP−TMSIと、RRC_ConnectionRequestの引数であるTMSIとが一致しないので、RNC3’はRRC_ConnectionRequestをRRC_Pagingに対する応答と認識することができない。
続いて、移動通信端末2は、ページング信号(RRC_PAGING)に付加されたP−TMSIからNRIを抽出する(S210)。そして、ページングに対する応答信号であるRRC_Initial Direct TransferにTMSIと、抽出したNRIと、「このNRIをP−TMSIから導出した旨」を引数として付加して、RNC3’に送信する。(S211)
そして、RNC3’が、移動通信端末2から受信したRRC_Initial Direct Transferから、「P−TMSIからNRIを抽出した旨」を認識すると、RNC3’に保持されているP−TMSIと照合できるので、RRC_Initial Direct TransferをRRC_Pagingに対する応答と認識することができる。そして、RNC3’は、このP−TMSIとくくりつけられてRNC3’に保持されているG−CNIDを抽出し、このG−CNID内のNRIで特定されるSGSN8’を選択する(S212)。そして、複数のSGSNから選択された適切なSGSN8’にRANAP_Initial UE Messageを送信し(S213)、以降既存処理を経て呼が確立する。
上述のように、非特許文献1及び2により規定されるIu−Flex導入後のPS着信制御では、コアネットワークのSGSNが加入者プロファイルを保持していることが前提となっている。しかし、例えばSGSNがリセットしたときや、SGSNが故障から回復したときなどに、SGSNに保持されていた加入者プロファイルが消失する場合がある。このような場合、非特許文献1及び2により規定されるIu−FlexにおけるPS着信制御では、呼を確立することができないという問題があった。この問題について図5を参照して具体的に説明する。
図5では、SGSN8’が保持していた加入者プロファイルが、故障回復やリセット処理などにより消失した状態である(S301)。
まず、ステップS201〜203と同様のステップS302〜304を経て、SGSN8’が、加入者プロファイルを検索し、SGSN8’に加入者プロファイルが保持されていないこと(加入者プロファイル無し)を認識する(S305)。SGSN8’は、加入者プロファイルが無い場合、着信先の移動通信端末2のP−TMSIを取得できないので、P−TMSIのかわりにIMSIでページングを実施する。つまり、IMSIとG−CNIDを引数として設定したRANAP_PAGINGをRNC3’に送信する(S306)
RNC3’は、RANAP_PAGINGを受信すると、G−CNIDを保持する(S307)と共に、P−TMSIの代わりにIMSIを引数として設定したページング信号RRC_Pagingをエリア内の移動通信端末2に送信する(S308)。つまりIMSIでページングを行う。
移動通信端末2は、RNC3’からRRC_Pagingを受信すると、この信号の引数に設定されるIMSIを保持している場合に、まずコアネットワークへの接続要求であるRRC_ConnectionRequestをRNC3’に送信する(S209)。ここで、ステップS209と同様に、RRC_ConnectionRequestには、移動通信端末2に保持されているTMSIが付加され、RNCに返される。
移動通信端末2は、ページング信号(RRC_PAGING)の引数がIMSIのため、NRIを抽出することができない(S310)。そこで、移動通信端末2は、RRC_Initial Direct TransferにはNRIを付加せず、IMSIページング応答の旨(Response to IMSI Paging)を付加して、RNC3’に送信する(S311)。
そして、RNC3’は、RRC_Initial Direct Transferを移動通信端末2から受信しても、この信号にNRIが含まれないので、どのSGSNに信号(RANAP_Initial UE Message)を返送すべきか認識することができない(S312)。このため、複数のSGSNから適切なSGSN8’にRANAP_Initial UE Messageを送信することができないので、PS着信処理を完了することができず、呼を確立することができない。
このように、非特許文献1及び2により規定されるIu−FlexにおけるPS着信制御では、移動通信端末の位置登録処理が実行されて、コアネットワーク(SGSN)に移動通信端末の加入者プロファイルが保持されていることが前提とされているので、コアネットワーク(SGSN)の加入者プロファイルが消失した場合については考慮されていなかった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、Iu−Flex導入後のパケット交換サービス(PS)の着信制御において、コアネットワークの加入者プロファイルが消失しても、呼を確立させることができる移動通信システム、パケット交換ノード及び着信制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る移動通信システムは、移動通信端末にパケット交換サービスを提供し、移動通信端末のパケット交換サービス用の加入者情報を保持するパケット交換ノードと、該パケット交換ノードと移動通信端末との間の通信を制御する無線制御装置と、移動通信端末に回線交換サービスを提供し、移動通信端末の回線交換サービス用の加入者情報を保持する回線交換ノードとを備え、パケット交換ノードの圏内の移動通信端末への着信処理を行う移動通信システムであって、パケット交換ノードが、移動通信端末への着信時に、該移動通信端末の加入者情報がパケット交換ノードに保持されているか否かを確認する確認手段と、確認手段により加入者情報がパケット交換ノードに保持されていないことが確認された場合に、移動通信端末の回線交換サービス用の一時的な識別情報を、前記回線交換ノードから取得する識別情報取得手段と、識別情報取得手段により取得された識別情報を移動通信端末へのページング指令に付加し、無線制御装置に送信するページング制御手段と、を備えることを特徴とする。
同様に、上記課題を解決するため、本発明に係る着信制御方法は、移動通信端末にパケット交換サービスを提供し、移動通信端末のパケット交換サービス用の加入者情報を保持するパケット交換ノードと、該パケット交換ノードと移動通信端末との間の通信を制御する無線制御装置と、移動通信端末に回線交換サービスを提供し、移動通信端末の回線交換サービス用の加入者情報を保持する回線交換ノードとを備え、パケット交換ノードの圏内の移動通信端末への着信処理を行う移動通信システムにおいて実行される着信制御方法であって、パケット交換ノードの確認手段が、移動通信端末への着信時に、該移動通信端末の前記加入者情報がパケット交換ノードに保持されているか否かを確認する確認ステップと、パケット交換ノードの識別情報取得手段が、確認ステップにおいて加入者情報がパケット交換ノードに保持されていないことが確認された場合に、移動通信端末の回線交換サービス用の一時的な識別情報を、回線交換ノードから取得する識別情報取得ステップと、パケット交換ノードのページング制御手段が、識別情報取得ステップにおいて取得された識別情報を移動通信端末へのページング指令に付加し、無線制御装置に送信するページング制御ステップと、を備えることを特徴とする。
同様に、上記課題を解決するため、本発明に係るパケット交換ノードは、移動通信端末にパケット交換サービスを提供し、該移動通信端末の加入者情報を保持するパケット交換ノードであって、移動通信端末への着信時に、該移動通信端末の加入者情報が当該パケット交換ノードに保持されているか否かを確認する確認手段と、確認手段により加入者情報がパケット交換ノードに保持されていないことが確認された場合に、移動通信端末の回線交換サービス用の一時的な識別情報を、移動通信端末に回線交換サービスを提供する回線交換ノードから取得する識別情報取得手段と、識別情報取得手段により取得された識別情報を移動通信端末へのページング指令に付加し、移動通信端末の無線通信を制御する無線制御装置に送信するページング制御手段と、を備えることを特徴とする。
このような移動通信システム及び着信制御方法、及びパケット交換ノードによれば、パケット交換ノードに、着信のあった移動通信端末の加入者情報が保持されていない場合に、移動通信端末の回線交換サービス用の一時的な識別情報(TMSI)を、回線交換ノードから取得する。そして、この取得した識別情報を、移動通信端末へのページング指令(RANAP_PAGING)に付加し、無線制御装置に送信する。この構成により、パケット交換ノードの保持されていた加入者情報が消失しても、回線交換ノードから代替的な情報を取得して、ページングを実行することができる。この結果、Iu−Flex導入後のパケット交換サービス(PS)の着信制御において、パケット交換ノードを含むコアネットワークの加入者プロファイルが消失しても、呼を確立させることができる。
また、ページング指令には、移動通信端末が在圏するパケット交換ノードを特定する情報が含まれており、無線制御装置が、ページング制御手段からページング指令を受信すると、識別情報とパケット交換ノードを特定する情報とを関連づけて保持する情報保持手段と、ページング指令に応じて移動通信端末へ送信されるページング信号に対して移動通信端末から返される該移動通信端末の識別情報を受信する受信手段と、受信手段により受信された移動通信端末の識別情報に基づき、情報保持手段からパケット交換ノードを特定する情報を取得し、ページングに対する応答信号を送信すべきパケット交換ノードを特定する送信先特定手段と、を備えることが好適である。
この構成により、移動通信端末が在圏するパケット交換ノードを特定する情報と、移動通信端末の一時的な識別情報とが関連づけて無線制御装置に保持される。そして、移動通信端末へ送信されるページング信号に応じて移動通信端末から返される該移動通信端末の識別情報に基づき、無線制御装置に保持されている情報を参照して、パケット交換ノードを特定する情報を取得し、ページングに対する応答信号(RANAP_Initial UE Message)を送信すべきパケット交換ノードを特定することができる。このため、Iu−Flex導入後のパケット交換サービス(PS)の着信制御において、パケット交換ノードを含むコアネットワークの加入者情報が消失しても、呼を確立させることができる。
本発明に係る移動通信システム及び着信制御方法によれば、Iu−Flex導入後のパケット交換サービス(PS)の着信制御において、コアネットワークの加入者プロファイルが消失しても、呼を確立させることができる。
移動通信システム1は、移動通信端末2の無線通信を制御するRNC(Radio Network Controller:無線制御装置)3と、移動通信端末2の加入者プロファイル(加入者情報)を保持し、パケット交換(PS)又は回線交換(CS)方式で移動通信端末2の通信を実行するコアネットワーク4と、を含んで構成される。
コアネットワーク4は、PSドメインのコアネットワーク4aと、CSドメインのコアネットワーク4bとを含む。コアネットワーク4a,4bのそれぞれは、移動体通信網に含まれている。移動通信システム1には、Iu−Flexが導入されており、図1には図示しないが、移動体通信網には上述の移動通信端末の加入者プロファイルを保持するコアネットワーク4a,4bの他に複数のコアネットワークがRNCと接続可能に配置されている。そして、PSドメインのコアネットワーク4a、またはCSドメインのコアネットワーク4bが故障した際には、他のコアネットワークと接続するよう構成されている。
ここで、加入者プロファイルとは、移動通信端末2に係る加入者情報を含むデータのことをいい、PSドメインのコアネットワーク4aではこの加入者プロファイルに移動通信端末のP−TMSIが含まれ、一方、CSドメインのコアネットワーク4bではこの加入者プロファイルに移動通信端末のTMSIが含まれる。
特に本実施形態においては、この移動通信システム1は、PSドメインのコアネットワーク4aにおいて、移動通信端末2へのPS着信があったときに、この移動通信端末2の加入者プロファイルがPSドメインのコアネットワーク4a(より詳細にはSGSN8)から消失していた場合であっても、代替的にCSドメイン(より詳細にはMSC9)からTMSIを取得してページングを実行することによって、移動通信端末2への呼を確立することを特徴とするものである。
PSドメインのコアネットワーク4aは、HLR6,GGSN7、SGSN8を含んで構成されている。
HLR6は、移動通信端末2の電話番号や識別番号などの加入者情報を管理する装置(データベース)である。HLR6は、移動通信端末2からの位置登録に基づき、移動通信端末2の加入者プロファイルを保持しているSGSN8の情報などを保持している。HLR6は、GGSN7と接続されており、GGSN7から移動通信端末2への着信時にSRI For GPRSを受信すると、加入者プロファイルを保持しているSGSN8を特定するためのSGSN Numberと、さらに、SGSN8にプロファイルがない場合に本実施形態でTMSIを要求する、この移動通信端末2のCSドメインにおいてプロファイルを保持しているCSドメインのコアネットワーク(MSC)4bを特定するためのVLR Numberとを引数として設定し、SRI For GPRS ackを返信する。
GGSN7は、移動体通信網において、インターネット等の他のデータ通信網とのゲートウェイ機能を有するノードである。GGSN7は、HLR6とSGSN8とに接続されている。GGSN7は、移動通信端末2への着信信号を外部から受信すると、HLR6にSRI For GPRSを送信し、SGSN NumberとVLR Numberとを付加されたSRI For GPRS ackをHLR6から受信すると、VLR Numberを付加してPS着信信号をSGSN8に送信する。
SGSN8は、移動通信端末2の位置管理、セキュリティ管理やアクセス制御を行うノードであり、移動通信端末2にパケット交換サービスを提供するパケット交換ノードである。SGSN8に位置管理される移動通信端末を、SGSNに在圏している移動通信端末とよび、SGSN8は在圏している移動通信端末の加入者プロファイルを保持している。SGSN8は、RNC3およびGGSN7と接続されている。
特に本実施形態では、SGSN8は、故障回復時やリセット時などに、保持していた加入者プロファイルを消失した場合に、CSドメインのコアネットワーク4bからTMSIを取得し、このTSMIを付加した上でページングを実行するよう構成される。より詳細には、SGSN8は、プロファイル検索部(確認手段)81と、TMSI取得部(識別情報取得手段)82と、ページング制御部(ページング制御手段)83と、プロファイル記憶部84とを含んで構成される。
プロファイル検索部81は、GGSN7からPS着信信号を受信したときに、SGSN8内でこの着信信号に係る移動通信端末2の加入者プロファイルをプロファイル記憶部84から検索し、SGSN8にこの着信信号に係る移動通信端末2の加入者プロファイルが保持されているかを確認する。プロファイル記憶部84から加入者プロファイルを検索することができず、SGSNにプロファイルがないと判定した場合には、その旨をTMSI取得部82に送信する。なお、プロファイル記憶部84にプロファイルが保持されていた場合には、加入者プロファイルからP−TMSIを抽出してページング制御部に送信し、従来の非特許文献1に記載されるとおりP−TMSIでページングを実行する。
TMSI取得部82は、プロファイル検索部81によりSGSN8に移動通信端末2の加入者プロファイルがないと判定された場合、CSドメインのコアネットワーク4bからTMSIを取得する。より詳細には、GGSN7からのPS着信信号に付加されているVLR Numberで特定されるCSドメインのコアネットワーク4b内のMSC(Mobile Switching Center)9にTMSI取得要求を送信し、MSC9からTMSIが付加されたTMSI取得応答を受け取る。TMSI取得部82は、MSC9から受け取ったTMSIをページング制御部83に送信する。
ページング制御部83は、RNC3にページング指令(RANAP_PAGING)を送信する。プロファイル検索部81によりSGSN8に加入者プロファイルがないと判定された場合、TMSI取得部82から受信したTMSIを付加した上で、IMSI及びG−CNIDを引数とするRANAP_PAGINGをRNC9に送信し、IMSIページングを実行する。なお、G−CNIDは、移動通信端末2が在圏するパケット交換サービス(PS)に関するコアネットワーク4a(より詳細にはSGSN8)を特定する情報であり、NRIが含まれる。
一方、SGSN8に加入者プロファイルがあった場合には、ページング制御部83は、加入者プロファイルから取得したP−TMSIを用いて、従来の非特許文献1に記載されるとおりP−TMSIでページングを実行する。
プロファイル記憶部84は、在圏する移動通信端末2の加入者プロファイルを記憶する。移動通信端末2の位置登録処理や発信処理が実行されたときに、当該移動通信端末2の加入者プロファイルがプロファイル記憶部84に保持される。
RNC3は、移動通信端末2による無線通信を制御する無線制御装置であり、コアネットワーク4a,4bとのデータ通信を中継する装置である。特に本実施形態では、RNC3は、SGSN8に加入者プロファイルが無くIMSIページングの指令があった場合に、移動体通信網の複数のSGSNの中から、ページング指令に対する応答(RANAP_Initial UE Message)を返すSGSN8を特定する。RNC3は、記憶部(情報保持手段)31と、通信部(受信手段)32と、送信先特定部(送信先特定手段)33とを備えている。
記憶部31は、SGSN8から送信されたページング信号RANAP_Pagingに含まれるTMSIとG−CNIDとを関連付けて記憶する。
通信部32は、ページング信号RANAP_Pagingに含まれるIMSIを用いて圏内の通信端末にページングを実行する。そして、このIMSIを保持する移動通信端末2から応答を受信すると、これを送信先特定部33に送信する。
送信先特定部33は、RANAP_Initial UE Messageを送信するSGSN8を特定する。より詳細には、送信先特定部33は、ページング信号に応じて移動通信端末2から受信したRRC_ConnectionRequestに含まれるTMSIを用いて、記憶部31にこのTMSIと関連付けて記憶されているG−CNIDを抽出し、このG−CNIDに含まれるNRIを抽出する。そして、NRIで特定されるSGSN8へRANAP_Initial UE Messageを送信する。
CSドメインのコアネットワーク4bは、MSC9を含んで構成されている。なお、図1には図示しないが、CSドメインのコアネットワーク4bには、回線交換サービスを実現するためのMSC9以外の周知の構成要素も含まれている。
MSC9は、CSドメインにおいて移動通信端末2の位置管理、セキュリティ管理やアクセス制御を行うノードであり、移動通信端末2に回線交換サービスを提供する回線交換ノードである。MSC9は在圏している移動通信端末の加入者プロファイルを保持している。本実施形態では、SGSN8からTMSI取得要求を受け取ると、この要求の引数のIMSIに基づき加入者プロファイルを検索し、移動通信端末2の加入者プロファイルからTMSIを取得してSGSN8に返す。
移動通信端末2は、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant:個人情報端末)、パーソナルコンピュータなど、通信機能を有する装置を含むものであり、移動体通信網を介して他の移動通信端末やサーバコンピュータなどに通信可能な状態で接続される。
図2は、SGSN8のハードウェア構成図である。SGSN8は、物理的には、図2に示すように、CPU(CentralProcessing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、ハードディスク装置等の補助記憶装置104、入力デバイスである入力キー等の入力装置105、ディスプレイ等の出力装置106、通信モジュール107などを有するコンピュータとして構成されている。図1に示すSGSN8の各機能は、CPU101、RAM102、ROM103等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置105、出力装置106、通信モジュール107を動作させるとともに、RAM102やROM103、補助記憶装置104におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。なお、図1に示したHLR6,GGSN7、MSC9,RNC3の各機能も、SGSN8について説明したことと同様に、ハードウェア上で実現されるものである。
次に、図3を参照して、本実施形態の移動通信システム1において実行される処理を説明すると共に、本実施形態に係る着信制御方法について説明する。
図3は、移動通信システム1において実行される処理を示すシーケンスである。なお、この処理の前提として、予め移動通信端末2からの回線交換サービス(CS)及びパケット交換サービス(PS)の双方への位置登録処理が行われており、移動通信端末2がTMSI及びP−TMSIの両方を予め保持しているものとする。
そして、図3では、図5と同様に、SGSN8がプロファイル記憶部84に保持していた加入者プロファイルが、故障回復やリセット処理などにより消失した状態である(S101)。
まず、移動通信端末2に対するPS着信をGGSN7が受信すると、GGSN7は、図4のステップS201と同様に、移動通信端末2が在圏するエリアのSGSN8を特定する情報を要求する信号であるSRI For GPRSをHLRに送信する(S102)。
HLR6は、これに応じて、SGSN8を特定する情報であるSGSN Numberと、CSドメインでこの移動通信端末2の加入者プロファイルを保持しているコアネットワーク(MSC9)を特定する情報であるVLR numberを引数として設定したSRI For GPRS ackをGGSN7に返送する(S103)。
GGSN7は、このSGSN Numberにより特定されるSGSN8に対して、引数としてVLR numberを付加したPS着信信号を送信する(S104)。
次に、SGSN8において、PS着信信号がGGSN7から受信するのに応じて、プロファイル検索部81により、SGSN8のプロファイル記憶部84内の加入者プロファイルが検索され、PS着信の宛先である移動通信端末2の加入者プロファイルがプロファイル記憶部84に保持されていないこと(加入者プロファイル無し)が認識されると(S105:確認ステップ)、TMSI取得部82にその旨が送信される。
図5を参照して上述したとおり、SGSN8は、加入者プロファイルが無い場合、着信先の移動通信端末2のP−TMSIを取得できない。そこで、TMSI取得部82により、この移動通信端末2がCSドメインで位置登録を行い加入者プロファイルが保持されているMSC9に対して、TMSI取得要求(引数は着信先の通信端末のIMSI)が送信される(S106)。TMSI取得部82は、GGSN7から受信したPS受信信号に付加されたVLR numberに基づいて、TMSI取得要求を送信するMSC9を特定する。
CSドメインのMSC9は、PSドメインのSGSN8からTMSI取得要求を受信すると、引数のIMSIに対応する移動通信端末2の加入者プロファイルからTMSIを取得し、これを引数として設定したTMSI取得応答をSGSN8に返す(S107:識別情報取得ステップ)。
次に、SGSN8において、TMSI取得部82によりMSC9からTMSI取得応答が受信されると、この応答に含まれるTMSIがページング制御部83に送信される。そして、ページング制御部83により、図5のステップS306と同様に、P−TMSIがプロファイルから取得できなかったため、P−TMSIのかわりにIMSIでページングが実施される。また本実施形態では、さらにTMSIがページング指令(RANAP_PAGING)に付加される。つまり、ページング制御部83により、IMSIおよびG−CNIDを引数として設定し、さらにMSC9から取得したTMSIを付加したRANAP_PAGINGがRNC3に送信される(S108:ページング制御ステップ)
RNC3において、通信部32によりRANAP_PAGINが受信されると、この信号に含まれるTMSIとG−CNIDを関連付けて記憶部31に保持される(S109)。そして、通信部32により、IMSIを引数として設定したページング信号RRC_Pagingがエリア内の移動通信端末に送信される(S110)。つまりIMSIでページングが行われる。
移動通信端末2は、RNC3からRRC_Pagingを受信すると、この信号の引数に設定されるIMSIを保持している場合に、まずコアネットワークへの接続要求であるRRC_ConnectionRequestをRNC3に送信する(S111)。ここで、図4のステップS209や図5のステップS309と同様に、RRC_ConnectionRequestには、移動通信端末2に保持されているTMSIが付加され、RNCに返される。
移動通信端末2は、ページング信号(RRC_PAGING)の引数がIMSIのため、NRIを抽出することができない(S112)。そこで、移動通信端末2は、RRC_Initial Direct TransferにはNRIを付加せず、IMSIページング応答の旨(Response to IMSI Paging)を付加して、RNC3に送信する(S113)。
RNC3において、送信先特定部33により、信号を返すべきSGSN8が特定される(S114)。具体的には、RRC_ConnectionRequestに付加されるTMSIを用いて、記憶部31からこのTMSIと関連付けてられて記憶されているG−CNIDを抽出する。このC−CNIDに含まれるNRIを抽出し、このNRIによりSGSNを特定する。
そして、送信先特定部33により複数のSGSNから選択された適切なSGSN8に対して、通信部32により、RANAP_Initial UE Messageが送信され(S115)、以降既存処理を経て呼が確立する。
このような移動通信システム1及び着信制御方法によれば、SGSN8のプロファイル検索部81が、SGSN8のプロファイル記憶部84に、着信のあった移動通信端末2の加入者プロファイルが保持されていないと判定すると、SGSN8のTMSI取得部82が、移動通信端末2の回線交換サービス用の一時的な識別情報(TMSI)を、移動通信端末2に回線交換サービスを提供するMSC9から取得する。そして、この取得したTMSIを、移動通信端末2へのページング指令(RANAP_PAGING)に付加し、RNC3に送信する。この構成により、SGSN8の加入者プロファイルが消失しても、MSC9から代替的な情報(TMSI)を取得して、ページングを実行することができる。この結果、Iu−Flex導入後のパケット交換サービス(PS)の着信制御において、SGSN8を含むコアネットワーク4aの加入者プロファイルが消失しても、呼を確立させることができる。
また、RNC3の記憶部31が、移動通信端末2が在圏するSGSN8を特定する情報(G−CNID)と、移動通信端末2の一時的な識別情報(TMSI)とが関連づけて保持する。そして、RNC3の通信部32が、ページング指令(RANAP_PAGING)に応じて移動通信端末2へ送信されるページング信号に対して移動通信端末2から返される信号(RRC_ConnectionRequest)を受信すると、送信先特定部33が、この信号に含まれる該移動通信端末の識別情報 (TMSI)に基づき、記憶部31を参照して、このTMSIに関連づけられるG−CNIDを取得し、このG−CNIDに含まれるNRIに基づいて、ページングに対する応答信号(RANAP_Initial UE Message)を送信すべきコアネットワーク4aのSGSN8を特定することができる。
以上、本発明に係る移動通信システム1及びガイダンス送出方法について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。