JP5321904B2 - 余寿命推定方法、メンテナンス・更新計画作成方法、余寿命推定システム及びメンテナンス・更新計画作成システム - Google Patents
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Description
一般に、機器の状態把握は外観検査や特性試験等により、また、メンテナンスや更新は、稼動時間の管理等によって実現されている。
この従来技術によれば、機器を停止せずに汚損度を把握することができ、設置環境を含む広範囲な条件を考慮した汚損度推定値を用いてメンテナンスの方法を選択することにより、無駄のない効率的な機器管理やプラントの安定かつ安全な操業を可能にしている。
機器の汚損が機器の機能低下に与える影響の一つとして、汚損物質(以下、塵埃という)中に含まれる塩(酸と塩基との中和反応により生成される化合物)によるプリント基板のパターン間の短絡が挙げられる。すなわち、プリント基板上に堆積した塵埃中に塩が含まれる場合、水分の存在により塩は電離し、プリント基板上のパターン間の抵抗値は低下する。塵埃中に含まれる塩の濃度が増加するほどパターン間抵抗は低下することになり、ついにはパターン間が短絡して機器が故障に到ることになる。
上記の現象は、機器の汚損が機器の機能低下に与える影響の一つであるが、特許文献1記載の従来技術では、このような短絡故障がいつ発生するか等を予測することは不可能であった。
この従来技術によれば、導体間の絶縁抵抗と共に電子回路基板の余寿命を推定して表示出力することが可能になっている。
仮に、機器が寿命を迎えた際にメンテナンスを行うことで寿命が延びる場合には、更新せずにメンテナンスを行うべきであるが、その際に機器を更新してしまうと本来の余寿命より短い期間で機器を更新することになり、ユーザにとって、資源の有効活用、経費節減等の観点からは好ましくない結果を招いてしまう。
前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる塩成分と前記プリント基板の周囲湿度とをパラメータとして、前記プリント基板上のパターン間が短絡する条件を、前記パターン間が短絡するときの短絡湿度と前記塩成分の堆積量との関係を示すマスターカーブとして予め求め、
前記マスターカーブと、前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる前記塩成分の現時点の堆積量測定値と、前記周囲湿度の測定値と、前記プリント基板の清掃履歴または前記診断対象機器の導入時期に応じた前記塩成分の堆積速度と、を用いて、前記プリント基板の余寿命を推定演算するものである。
第1の時期が第2の時期に達しない時点では前記診断対象機器のメンテナンスを行い、第1の時期が第2の時期を超える時点では前記診断対象機器の更新を行う内容の計画を作成するものである。
前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる塩成分と前記プリント基板の周囲湿度とをパラメータとして、前記プリント基板上のパターン間が短絡する条件を、前記パターン間が短絡するときの短絡湿度と前記塩成分の堆積量との関係を示すマスターカーブとして記憶し、かつ、前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる前記塩成分の堆積量測定値と、前記周囲湿度の測定値と、前記プリント基板の清掃履歴と、前記診断対象機器の導入時期とを記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された現時点の前記塩成分の堆積量測定値と、前記清掃履歴または前記導入時期と、を用いて、前記塩成分の堆積速度を演算する塩成分堆積速度演算手段と、
前記記憶手段に記憶された前記マスターカーブと、現時点の前記塩成分の堆積量測定値と、前記周囲湿度の測定値と、前記塩成分堆積速度演算手段により演算された前記塩成分の堆積速度と、を用いて、前記プリント基板の余寿命を推定演算する余寿命計算手段と、を備えたものである。
前記記憶手段には、前記診断対象機器のメンテナンスが困難になる時期としての社会的寿命が更に記憶されており、
前記余寿命計算手段により推定演算した余寿命を現時点に加算して得た第1の時期と、前記社会的寿命を迎える第2の時期と、を比較し、第1の時期が第2の時期に達しない時点では前記診断対象機器のメンテナンスを行い、第1の時期が第2の時期を超える時点では前記診断対象機器の更新を行う内容の計画を作成するメンテナンス・更新計画作成手段を、更に備えたものである。
更に、本発明のメンテナンス・更新計画作成方法及び作成システムによれば、推定した余寿命を利用して診断対象機器の適切なメンテナンス・更新計画を容易に作成し、メンテナンスコストの低減を図ることができる。
図1はプリント基板上に塩成分を含む塵埃を堆積させ、プリント基板の周囲湿度を変化させたときのパターン間抵抗の変化を示す結果の一例である。プリント基板上に塩成分を含む塵埃が存在する場合、図1に示すように、パターン間抵抗は湿度の上昇と共に低下していく。これは、プリント基板上に堆積した塵埃中に、湿度上昇に伴う水分量増加によって塩成分が電離(イオン化)し、これがプリント基板上のパターン間の導電率を上昇させるためである。また、塵埃中に含まれる塩成分の堆積量が増加するほどパターン間の導電率は上昇するので、パターン間抵抗は低下することになる。
なお、図1中に記載した塩成分堆積量は、以下の数式1により定義される。
図2に示す塩成分堆積量と短絡湿度との関係はマスターカーブとして予め求めておくことが可能であり、両者の関係は近似式により関数fとして数式2のように定義することができる。なお、近似式の作成には、例えば最小二乗法を用いればよい。
図3では、プリント基板上の塩成分堆積量測定結果をinow、プリント基板の周囲湿度測定結果をRHとして表してある。また、塩成分堆積量と短絡湿度との関係を示すマスターカーブと、プリント基板の周囲湿度測定結果との交点の塩成分堆積量をiRHとして表してある。
ここで、iRHは、数式3のRHsをRHと置き換えることにより数式4によって求められる。
塩成分堆積速度:Vi(mg/mm2・年)、
現在の塩成分堆積量inowがiRHとなるまでの時間(つまり余寿命):Δt(年)
と定義すると、数式5が成立する。
まず、プリント基板の清掃履歴がある場合には、最新の清掃履歴(清掃を行った年月日)を用いて、数式7により塩成分堆積速度Viを求める。
すなわち、塩成分堆積量と短絡湿度との関係を示すマスターカーブと、診断対象機器のプリント基板上の塵埃中に含まれる塩成分堆積量inowと、プリント基板の周囲湿度RHと、塩成分堆積速度Viとを用いて、プリント基板の余寿命を推定することが可能である。
tlimit=tini+Δt
この場合は、パターン間の短絡が推定される西暦年tlimitが社会的寿命の西暦年tslimitより短いので、西暦年tlimitに(または、安全を見込んで西暦年tlimitより少し前に)、プリント基板のメンテナンス(具体的には清掃)を行うように計画を作成する。次に、数式6において現在の塩成分堆積量inow=0として再びプリント基板のパターン間が短絡するまでの時間(余寿命)Δtを求め、数式9におけるtini=tlimitとして、新たにパターン間の短絡が推定される西暦年tlimitを求める。ここで、再びtslimitとtlimitとの比較を行い、以上の処理をtslimit<tlimitとなるまで繰り返す。
この場合は、パターン間の短絡が推定される西暦年tlimitが社会的寿命の西暦年tslimitを超えており、西暦年tlimitの時点ではメンテナンスのために部品を供給できなくなっていることから、西暦年tlimitにメンテナンスではなく機器の更新を行うように計画を作成する。
図4は、横軸に西暦年を、縦軸に塩成分堆積量をとったグラフであり、西暦年tiniの現時点でプリント基板の余寿命診断を行った結果、現在の塩成分堆積量inowがしきい値であるiRHになるまでの時間(余寿命)がΔtとなった場合を示している。なお、前記同様に塩成分堆積速度をVi、社会的寿命の西暦年をtslimitとする。
西暦年tlimit1にて清掃を行うため、その時点での塩成分堆積量は0になる。
この西暦年tlimit2でも清掃を行うため、その時点での塩成分堆積量は0になる。
同様にして、更に新たな西暦年tlimitを求め、社会的寿命の西暦年tslimitと比較すると、この場合にはtslimit<tlimitとなるため、この西暦年tlimitでは機器の更新を行う。このときの西暦年をtlimit3と表記する。
ここで、余寿命推定システムは、短絡条件データベース10、現場環境測定結果データベース20、診断対象機器データベース30、塩成分堆積速度計算手段40、余寿命計算手段50、統括制御手段100、入出力インタフェース70、入力手段80及び出力手段90によって構成され、メンテナンス・更新計画作成システムは、上記すべての構成要素とメンテナンス・更新計画作成手段60とによって構成されている。
短絡条件データベース10、現場環境測定結果データベース20、診断対象機器データベース30は、ハードディスク装置や各種のメモリデバイス等の外部記憶装置からなるものである。統括制御手段100、塩成分堆積速度計算手段40、余寿命計算手段50、入出力インタフェース70は、主としてコンピュータ本体のCPUからなる演算処理装置と、データベース制御用ソフトウェア、塩成分堆積速度及び余寿命計算用ソフトウェア、メンテナンス・更新計画作成用ソフトウェア等により構成されている。
また、統括制御手段100は、システム全体の動作を統括的に制御するためのものであり、ネットワーク等によって更に上位のコンピュータシステムに接続しても良い。
・現場環境測定年月日
・塩成分堆積量
・湿度
このデータベース20の記憶データの構成例を、表2に示す。
清掃履歴がある場合のデータベース30の記憶データの構成例を表3に、清掃履歴がない場合の記憶データの構成例を表4に示す。
清掃履歴がある場合は、表3における最新の清掃履歴(清掃履歴2)を用いて、前述した数式7により塩成分堆積速度Viを計算する。また、清掃履歴がない場合には、表4における導入年月日を用いて、前述した数式8により塩成分堆積速度Viを計算する。
最初に余寿命計算手段50は、塩成分堆積量と短絡湿度との関係を示す近似式に湿度測定結果RHを代入し、プリント基板の周囲湿度がRHのまま持続した場合にプリント基板のパターン間が短絡する塩成分堆積量iRHを求める。なお、iRHの計算には、前述した数式4を用いる。
こうして余寿命Δtを計算したら、コンピュータシステムのディスプレイ等からなる出力手段90に、図6に示す如く余寿命Δtを含む各種のデータ、グラフ等を表示すればよい。
すなわち、数式6により計算されている余寿命Δt及び現在の西暦年tiniを用いて前述の数式9によりパターン間の短絡が推定される西暦年tlimitを算出し、前述した如く、社会的寿命の西暦年tslimitと西暦年tlimitとの比較によって図4に示したようなメンテナンス・更新計画を作成する。
こうして作成されたメンテナンス・更新計画に基づき、図7に示す如く、清掃及び機器更新をいつ行うかを示した一覧表形式の計画を作成し、この計画をディスプレイ等の出力手段90に表示すればよい。
20:現場環境測定結果データベース
30:診断対象機器データベース
40:塩成分堆積速度計算手段
50:余寿命計算手段
60:メンテナンス・更新計画作成手段
70:入出力インタフェース
80:入力手段
90:出力手段
100:統括制御手段
Claims (4)
- コンピュータシステムにより、診断対象機器内のプリント基板の余寿命を前記診断対象機器の余寿命として推定演算する余寿命推定方法において、
前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる塩成分と前記プリント基板の周囲湿度とをパラメータとして、前記プリント基板上のパターン間が短絡する条件を、前記パターン間が短絡するときの短絡湿度と前記塩成分の堆積量との関係を示すマスターカーブとして予め求め、
前記マスターカーブと、前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる前記塩成分の現時点の堆積量測定値と、前記周囲湿度の測定値と、前記プリント基板の清掃履歴または前記診断対象機器の導入時期に応じた前記塩成分の堆積速度と、を用いて、前記プリント基板の余寿命を推定演算することを特徴とする余寿命推定方法。 - コンピュータシステムにより、
請求項1記載の余寿命推定方法により推定演算した余寿命を現時点に加算して得た第1の時期と、予め定められた前記診断対象機器のメンテナンスが困難になり社会的寿命を迎える第2の時期と、を比較し、
第1の時期が第2の時期に達しない時点では前記診断対象機器のメンテナンスを行い、第1の時期が第2の時期を超える時点では前記診断対象機器の更新を行う内容の計画を作成することを特徴とするメンテナンス・更新計画作成方法。 - コンピュータシステムにより、診断対象機器内のプリント基板の余寿命を前記診断対象機器の余寿命として推定演算する余寿命推定システムにおいて、
前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる塩成分と前記プリント基板の周囲湿度とをパラメータとして、前記プリント基板上のパターン間が短絡する条件を、前記パターン間が短絡するときの短絡湿度と前記塩成分の堆積量との関係を示すマスターカーブとして記憶し、かつ、前記プリント基板上に堆積した塵埃に含まれる前記塩成分の堆積量測定値と、前記周囲湿度の測定値と、前記プリント基板の清掃履歴と、前記診断対象機器の導入時期とを記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された現時点の前記塩成分の堆積量測定値と、前記清掃履歴または前記導入時期と、を用いて、前記塩成分の堆積速度を演算する塩成分堆積速度演算手段と、
前記記憶手段に記憶された前記マスターカーブと、現時点の前記塩成分の堆積量測定値と、前記周囲湿度の測定値と、前記塩成分堆積速度演算手段により演算された前記塩成分の堆積速度と、を用いて、前記プリント基板の余寿命を推定演算する余寿命計算手段と、
を備えたことを特徴とする余寿命推定システム。 - 請求項3記載の余寿命推定システムにおいて、
前記記憶手段には、前記診断対象機器のメンテナンスが困難になる時期としての社会的寿命が更に記憶されており、
前記余寿命計算手段により推定演算した余寿命を現時点に加算して得た第1の時期と、前記社会的寿命を迎える第2の時期と、を比較し、第1の時期が第2の時期に達しない時点では前記診断対象機器のメンテナンスを行い、第1の時期が第2の時期を超える時点では前記診断対象機器の更新を行う内容の計画を作成するメンテナンス・更新計画作成手段を、更に備えたことを特徴とするメンテナンス・更新計画作成システム。
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