JP5320104B2 - セラミックスヒータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子装置の製造装置に用いるセラミックスヒータ及びその製造方法に関する。
半導体装置や液晶装置等の電子装置の製造工程において、基板加熱装置として、円盤状のセラミックス基体中に発熱体を埋設したセラミックスヒータが広く使用されている。又、発熱体とともに、基板を吸着固定するための静電チャック用電極を埋設した、静電チャック機能付セラミックスヒータ、或いはプラズマを発生させるためにRF電極を埋設したRF電極付セラミックヒータも使用されている。
このように発熱体をセラミックス基体中に埋設したセラミックスヒータは、基体が耐腐食性のセラミックスで形成されており、腐食性ガスを使用することが多い化学気相成長(CVD)装置やドライエッチング装置内で好適に使用されている。
電子装置の製造工程において、プロセス成膜性の向上や歩留の向上、製品品質の向上のために基板を面内で均一に加熱すること(均熱性)が求められていることから、セラミックスヒータをより高い均熱精度で作製する必要があり、これまでに発熱体位置度向上、変質防止等の試みがなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
均熱性には、セラミックス基体の寸法精度、セラミックス性状の均一性、発熱体の埋設位置状態、発熱体の炭化等の因子が関与しており、これらを厳しく制御することで均熱性を向上させている。
特開2003−288975号公報 特開2003−151729号公報 特開2005−303014号公報
しかしながら、例えば、モリブデン発熱体を埋設した窒化アルミニウムセラミックスヒータを得るには、例えば1800℃以上の高温での焼成が必要となるため、発熱体が炭化し、炭化のばらつきが均熱性に影響を与えるという問題がある。
これに対して、上記因子を制御することで、例えば700℃においてセラミックス基体表面の温度分布のばらつきが5℃以下の均熱性を満たすことはできるが、それ以下の高い均熱性を要求されると発熱体の炭化のばらつきの影響が顕著に現れ、高い均熱性を得ることは難しい。
本発明の目的は、高い均熱性を有するセラミックスヒータ及びその製造方法を提供することである。
本発明のセラミックスヒータは、
上面に基板を載置するセラミックス基体と、
前記セラミックス基体に埋設された金属製の発熱体と、
前記発熱体を取り囲むように配置され、前記セラミックス基体の焼成前に金属部材として存在していたものが前記セラミックス基体の焼成時に前記発熱体に優先して炭化又は酸化した金属炭化物又は金属酸化物を含む反応層と、
を備えるものである。
本発明のセラミックスヒータの製造方法は、
上述した本発明のセラミックスヒータを製造する方法であって、
(a)前記セラミックス基体の原料となるセラミックス原料粉中に、前記発熱体と該発熱体を取り囲む金属部材とを両者の間に前記セラミックス原料粉が介在するように埋設させて成形体を作製する工程と、
(b)前記金属部材が前記発熱体に優先して炭化又は酸化するように前記成形体を焼結させることにより前記セラミックス基体及び前記反応層を作製する工程と、
を含むものである。
本発明によれば、高い均熱性を有するセラミックスヒータ及びその製造方法を提供することができる。
第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの一例を示す平面図である。 図1に示したセラミックスヒータのA−A断面を示す概略図である。 第1の実施の形態に係る犠牲コイルを取り付けた発熱体の概略図である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの製造方法の一例を説明するための工程断面図(その1)である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの製造方法の一例を説明するための工程断面図(その2)である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの製造方法の一例を説明するための工程断面図(その3)である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの製造方法の一例を説明するための工程断面図(その4)である。 第1の実施の形態に係る発熱体の線径及び犠牲コイルの線径と均熱性の関係を示す表である。 第1の実施の形態に係る発熱体の線径と犠牲コイルの線径の関係を示す表である。 第1の実施の形態に係る犠牲コイルを適用した発熱体周辺の断面を示す写真である。 犠牲コイルを適用しなかった発熱体周辺の断面を示す写真である。 第1の実施の形態に係る発熱体の炭化率もしくは酸化率を示す表である。 第1の実施の形態に係る犠牲コイルを一部に適用した発熱体の一例を示す写真である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの均熱性を示す表である。 第1の実施の形態に係る犠牲コイルを適用した焼結体の断面を示す写真である。 犠牲コイルを適用しなかった焼結体の断面を示す写真である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの他の一例を示す平面図である。 第1の実施の形態に係るセラミックスヒータの均熱性の評価結果を示す表である。 第2の実施の形態に係る成形体及びセラミックスヒータの断面図である。 メッシュパイプを利用した発熱体エレメントの斜視図である。 図20のB−B断面図である。 シースパイプを利用した発熱体エレメントの斜視図である。 第2の実施の形態に係るセラミックスヒータの評価結果を示す表である。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係るセラミックスヒータは、図1及び図2に示すように、上面に基板を載置するセラミックス基体11と、セラミックス基体11に埋設された発熱体12と、発熱体12に巻きつけた犠牲コイルが焼成により炭化もしくは酸化した反応層13を備える。発熱体12は、セラミックス基体11の上部側に埋め込まれる。セラミックス基体11の下面からセラミックス基体11の一部を貫通して電極端子16,17が発熱体12に接続される。
セラミックス基体11は、例えば200mm〜400mm程度の円盤形状である。セラミックス基体11の形状は円盤形状に限定されず、上面に載置する基板の形状に合わせて、矩形や多角形にすることができる。セラミックス基体11の上面は、平坦な面に限られず、凹凸加工を行ったり、基板の大きさにあわせた溝を形成したり、パージガス用の溝を形成しても良い。
セラミックス基体11の材料としては、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al23)、窒化珪素(SiNx)、炭化珪素(SiC)、窒化ホウ素(BN)等を使用できる。このうち、特に、AlNは、熱伝導効率が良好であり、上面での均熱性をより高めることができるため好ましい。
発熱体12は、例えば線状の導体を屈曲させ、巻回体に加工したものを使用可能である。発熱体12の線径は0.3mm〜0.5mm程度であり、コイル形状の場合には巻径は2mm〜4mm程度であり、ピッチは1mm〜7mm程度である。ここで「巻径」とは、発熱体12を構成するコイルの内径を意味する。
発熱体12の形状としては、コイル形状の他にも、リボン状、メッシュ状、コイルスプリング状、シート状、印刷電極等の種々の形態を採用することもできる。なお、リフトピン等やパージガス用に設けられた貫通孔に隣接する部分では、発熱体12を迂回させたりするなど、必要に応じてパターンの変形を行うことが望ましい。発熱体12の材料としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)等の高融点導電材料を好ましく使用できる。
図3に示すように、セラミックス基体11は、セラミックス基体11の焼結時において、発熱体12にコイル形状の犠牲材(犠牲コイル)13xを巻きつけた成形体を焼結させることにより形成されている。このため、図2に示すように、発熱体12の周囲には、犠牲コイル13xが炭化もしくは酸化した金属の炭化物もしくは酸化物からなる反応層13が形成されている。窒化物セラミックス中では主として炭化が生じ、酸化物セラミックス中では主として酸化が生じるが、犠牲コイル13xの炭化と酸化が同時に起こっても良い。
犠牲コイル13xの線径は0.05mm〜0.20mm程度である。犠牲コイル13xの巻径は発熱体12の線径より大きければ良く、1.0mm〜1.5mm程度である。ここで「巻径」とは、犠牲コイル13xの内径を意味する。犠牲コイル13xのピッチP2は、発熱体12のピッチP1より小さければ良く、0.1mm〜1mm程度である。犠牲コイル13xの材料としては、W、Mo、Nb等の高融点金属が使用可能である。
セラミックス基体11の焼結時には、成形体中に存在する炭素元素ないし酸素元素が犠牲コイル13xを構成する金属と反応して、犠牲コイル13xの方に吸収される。この犠牲コイル13xが犠牲材としての役割を果たし、結果として、発熱体12の炭化/酸化を防ぐことができる。これにより、発熱体12の炭化/酸化のばらつきを抑え、発熱体12の抵抗値の変化を抑制することができるので、高い均熱性を得ることができる。発熱体12と反応層13とが密に接触してしまうと、発熱体12に電流を流したとき反応層13にも導通してしまい、高い均熱性が得られないため好ましくない。但し、反応槽13に実質的に導通しない程度であれば、反応槽13が発熱体12の一部と接していてもよい。
なお、セラミックス基体11中には、発熱体12とともに、静電チャック用の面状電極を埋設し、静電チャック機能付セラミックスヒータ、またはRF電極付きヒータとしても良い。
次に、図1及び図2に示したセラミックスヒータの製造方法の一例を説明する。
(a1)まず、セラミックス原料粉として、AlN、Al23、SiNx、SiC、BN、等を主原料として使用する。必要に応じてこのセラミックス原料粉とイットリア(Y23)等の希土類酸化物焼結助剤とを混合・攪拌する。引き続きスプレードライヤーで造粒した粉体を金型に充填し、加圧成形することで、図4に示すように予備成形体11aを作製する。
(a2)図3に示すように、コイル形状等の発熱体12に、犠牲コイル13xを巻きつける。図5に示すように、犠牲コイル13xを巻きつけた発熱体12を予備成形体11aに載せる。金型にセラミックス粉体を充填してプレス成形を行うことで、図6に示すように予備成形体11a,11bに犠牲コイル13xを巻きつけた発熱体12が埋設された成形体11cを作製する。なお、発熱体12を載置する際には、予備成形体11aの発熱体12を載置する位置に予め溝を形成しても良い。
(a3)続いて、成形体11cをホットプレス焼成法又は常圧焼結法により焼成する。焼成は、セラミックス原料粉としてAlNを使用した場合には、窒素雰囲気中、1700℃〜2000℃で1時間〜10時間焼成する。ホットプレス時の圧力は、約20kg/cm2〜1000kg/cm2程度、より好ましくは100kg/cm2〜400kg/cm2程度である。ホットプレス法を用いた場合は焼結時に一軸方向に圧力がかかるため、発熱体12と周囲のセラミックス基体11との密着性を良好にできる。この焼成時に、上述したように、成形体11c中に存在する炭素元素が犠牲コイル13xを構成する金属と反応して、犠牲コイル13xの方に吸収される。この結果、犠牲コイル13xが炭化もしくは酸化した犠牲材層(反応層)13が発熱体12の周囲に形成される。このように、犠牲コイル13xが犠牲材としての役割を果たし、結果として、発熱体12の炭化を防ぐことができる。こうして、図7に示すようにセラミックス基体11を得る。
(a4)その後、研削加工によりセラミックス基体11の裏面に貫通孔を開口する。ロウ材を用いて電極端子16,17を発熱体12に接合する。このようにして、図1及び図2に示したセラミックスヒータを作製する。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るセラミックスヒータは、第1の実施の形態と概ね同じ構造であるが、発熱体12に巻きつけた犠牲コイル13xが焼成により炭化もしくは酸化した反応層13を備える代わりに、図19に示すように発熱体22を挿通するメッシュパイプ23xが焼成により炭化もしくは酸化した反応層23を備えたものである。ここで、発熱体22は、第1実施形態の発熱体12と同様のものが使用可能なため、その説明を省略する。また、セラミックス基体21は、絶縁体であるセラミックス原料粉が内部に充填された金属製のメッシュパイプ23xの中に発熱体22を挿通してなる発熱体エレメント24(図20,図21参照)をコイル状に加工し、その後コイル状の発熱体エレメント24をセラミックス原料粉の中に埋設して成形体21cとし、その成形体21cを焼結することにより作製される。このため、発熱体22の周囲には、メッシュパイプ23xが炭化もしくは酸化した金属の炭化物もしくは酸化物からなる反応層23が形成されている。窒化物セラミックス中では主として炭化が生じ、酸化物セラミックス中では主として酸化が生じるが、メッシュパイプ23xの炭化と酸化が同時に起こっても良い。
発熱体エレメント24は、上述したとおり、絶縁体であるセラミックス原料粉が内部に充填された金属製のメッシュパイプ23xの中に発熱体22が挿通されたものである。例えば、発熱体22の外径を0.4mm程度、メッシュパイプ23xの外径を1.2mm程度、肉厚0.06mm程度としてもよい。この発熱体エレメント24は、例えばφ0.02mm程度の細い金属線を編んだ金属メッシュを所定の幅と厚み(例えば幅4.0mm、厚み0.06mm)の大きさに切り出し、切り出した金属メッシュと発熱体22としての金属素線とを引張絞り成形機によってセラミックス原料粉を充填しながら引張パイプ成形することで作製することができる。引張パイプ成形後、パイプ状に丸められた金属メッシュの長手方向の合わせ部は、端部同士を突き合わせた状態としてもよいし、重なり合うようにしてもよい。この合わせ部は、電子ビーム溶接等により接合してもよいが、接合しなくてもよい。合わせ部を接合しない場合、発熱体エレメント24をコイル状に加工する段階で、合わせ部の向きが長手方向でねじれる方向になるので、若干のパイプの変形が生じ、合わせ部が開くこともあるが、本発明の目的上、特に問題とはならない。メッシュパイプ23xは柔軟性を有するため、発熱体エレメント24をコイル状に加工する際の加工性に優れる。また、メッシュパイプ23xは、発熱体22の長手方向の略全域にわたって発熱体22を取り囲むように配置してもよいが、発熱体22のうちヒータの温度分布が生じる部分だけを取り囲むように配置してもよい。メッシュパイプ23xの材料としては、発熱体22と同様、W、Mo、Nb等の高融点金属材料が挙げられるが、発熱体22と同じ金属材料を用いるのが好ましい。
成形体21cを焼結してセラミックス基体21とする際、成形体21c中に存在する炭素元素ないし酸素元素がメッシュパイプ23xを構成する金属と反応して、メッシュパイプ23xの方に吸収される。このメッシュパイプ23xが犠牲材としての役割を果たし、結果として、発熱体22の炭化/酸化を防ぐことができる。これにより、発熱体22の炭化/酸化のばらつきを抑え、発熱体22の抵抗値の変化を抑制することができるので、高い均熱性を得ることができる。つまり、発熱体22の電気抵抗が焼成によって変化しにくくなり、設計どおりの抵抗分布を有することで、設計どおりの発熱分布を有するヒータを得ることができる。反応層23は、発熱体22の一部に接するように設けられていても良い。また、メッシュパイプ23yは、メッシュの目開きにセラミックス原料粉が入り込み、パイプの内外で焼結によりセラミックス原料粉がつながりやすいため、発熱体22を埋設したセラミックス基体21の強度が高くなる効果も得られる。これは、熱サイクルによる破損を防止するのに極めて有効に役立つ。
なお、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様、セラミックス基体21中には、発熱体22とともに、静電チャック用の面状電極を埋設し、静電チャック機能付セラミックスヒータ、またはRF電極付きヒータとしても良い。
次に、本実施の形態のセラミックスヒータの製造方法の一例を説明する。このセラミックスヒータは、第1の実施の形態と概ね同様にして製造することができる。
(b1)まず、第1の実施の形態の予備成形体11aと同様にして、予備成形体21aを作製する。
(b2)発熱体エレメント24をコイル状に加工し、これを予備成形体21aに載せ、金型にセラミックス粉体21bを充填してプレス成形を行うことで、コイル状の発熱体エレメント24がセラミックス原料粉の中に埋設された成形体21cを作製する。なお、発熱体エレメント24を載置する際には、予備成形体21aの発熱体エレメント24を載置する位置に予め溝を形成しても良い。こうすれば、発熱体エレメント24を正確に位置決めすることができる。
(b3)続いて、成形体21cをホットプレス焼成法又は常圧焼結法により焼成する。焼成条件については、第1の実施の形態と同様のため、ここではその説明を省略する。この焼成時に、上述したように、成形体21c中に存在する炭素元素がメッシュパイプ23xを構成する金属と反応して、メッシュパイプ23xの方に吸収される。この結果、メッシュパイプ23xが炭化もしくは酸化した反応層23が発熱体22の周囲に形成される。このようにメッシュパイプ23が犠牲材としての役割を果たし、結果として、発熱体22の炭化や酸化を防ぐことができる。こうして、図19に示すように成形体21cが焼結してセラミックス基体21となる。
(b4)その後、研削加工によりセラミックス基体21の裏面に貫通孔を開口する。ロウ材を用いて電極端子26,27を発熱体22に接合する。このようにして、図19に示したセラミックスヒータが完成する。このセラミックスヒータによれば、発熱体22の電気抵抗が焼成したあともほとんど変化せず、設計どおりの抵抗分布を有するため、設計どおりの発熱分布を有するヒーターとなる。
なお、上述した説明では、発熱体エレメント24としてメッシュパイプ23xを用いたが、その代わりに図22に示すシースパイプ23yを用いてもよい。この場合、金属メッシュの代わりに金属板を用い、メッシュパイプ23xを作製するときと同様に引張絞り成形によって金属板をパイプ状とし、そのパイプの中にセラミックス原料粉が充填され、そのセラミックス原料粉を金属素線である発熱体22が軸方向に挿通した発熱体エレメント24を得ることができる。
[試験例1〜12、従来例1,2]
図8には、第1の実施の形態に係るセラミックスヒータである試料として試験例1〜12並びに従来例1及び2のそれぞれの抵抗値及び均熱性の評価結果が示されている。セラミックス基体11の原料としては、AlN及びAl23を使用した。発熱体12の線径(素線径)は抵抗値、焼結体本体への負荷を考慮して、0.3mm〜0.5mmとした。発熱体12は単位体積あたりの発熱量を増すためにコイル形状に加工してある。又、犠牲コイル13xの線径は、製作の都合上0.05mmを下限とした。犠牲コイル13xの巻径は発熱体12の線径より大きい。又、犠牲コイル13xのピッチP2は発熱体12のピッチP1より小さければよい。以下の試験例ではピッチP1は3.0〜5.6mmであり、P2は0.3mmである。いずれの試験例でも同じピッチ分布の発熱体を用いて、温度分布が発熱体の差によらないようにした。また、いずれの試験例の試料も、上述した(a1)〜(a4)の工程にしたがって作製した。なお、成形体の焼結はホットプレス焼成法を用いた。焼成条件は、プレス圧力150kg/cm2で窒素雰囲気中、Al23では1520℃で4時間、AlNでは1820℃で6時間焼成した。
試験例1〜4では、セラミックス基体11の原料としてAlNを使用し、発熱体12及び犠牲コイル13xの材料としてはMoを用いた。発熱体12の線径は0.3mmとし、犠牲コイル13xの線径をそれぞれ0.05mm、0.12mm、0.15mm、0.20mmと変化させて抵抗値及び均熱性(面内の最高温度と最低温度との差)を評価した。試験例1〜3では、セラミックス基体11表面の温度分布のばらつきが2℃の高い均熱性を示すことが分かる。一方、試験例4では、均熱性が10℃と悪化しているのが分かる。犠牲コイル13xの巻径が0.9mmと小さいため犠牲コイル13xにも導通してしまうと考えられる。
試験例5〜8では、セラミックス基体11の原料としてAlNを使用し、発熱体12及び犠牲コイル13xの材料としてはMoを用いた。発熱体12の線径を0.5mmに変更し、犠牲コイル13xの線径をそれぞれ0.05mm、0.12mm、0.15mm、0.20mmと変化させている。試験例5〜7では、セラミックス基体11表面の温度分布のばらつきが2℃の高い均熱性を示すことが分かる。一方、試験例8では、均熱性が10℃と悪化しているのが分かる。犠牲コイル13xの線径が0.25mmになると犠牲コイル13xにも導通してしまうと考えられる。
試験例9及び10では、セラミックス基体11の原料としてAl23、発熱体12及び犠牲コイル13xの材料としてはNbを用いた。発熱体12の線径を0.3mmとし、犠牲コイル13xの線径をそれぞれ0.12mm、0.20mmと変化させている。試験例9及び10では、セラミックス基体11表面の温度分布のばらつきが4℃の高い均熱性を示すことが分かる。
試験例11及び12では、セラミックス基体11の原料としてAl23、発熱体12及び犠牲コイル13xの材料としてはNbを用いた。発熱体12の線径を0.5mmと変更し、犠牲コイル13xの線径をそれぞれ0.12mm、0.25mmと変化させている。試験例11では、セラミックス基体11表面の温度分布のばらつきが4℃の高い均熱性を示すことが分かる。一方、試験例12では、均熱性が13℃と悪化しているのが分かる。犠牲コイル13xの線径が0.25mmになると犠牲コイル13xにも導通してしまうと考えられる。
従来例1は犠牲コイル13xを適用しない例であり、セラミックス基体11の原料としてAlNを使用し、Moからなる発熱体12の線径は0.5mmである。従来例1では、均熱性が5℃であり高い均熱性が得られていない。従来例2は犠牲コイル13xを適用しない例であり、セラミックス基体11の原料としてAl23を使用し、Nbからなる発熱体12の線径は0.5mmである。従来例2では、セラミックス基体11表面の温度分布のばらつきが5℃であり高い均熱性が得られていない。
図8の結果から、セラミックス基体11の原料としてAlN及びAl23をそれぞれ用いた場合の発熱体および犠牲コイルの線径ならびに巻径の最適値をまとめると図9のようになる。発熱体12の線径が0.3mm〜0.5mm、犠牲コイル13xの線径が0.05mm〜0.20mm、巻径が1.0〜1.5mmの場合に発熱体12の炭化を抑制でき、AlN及びAl23でそれぞれセラミックス基体11表面の温度分布のばらつきが2℃、4℃の高い均熱性を示す焼結体が得られる。犠牲コイル13xの巻径は発熱体12の線径より大きいため、発熱体12と部分的に接触している部分はあるものの、発熱体12と犠牲コイル13xの間にはセラミックスが充填されている。そのため、発熱体12および犠牲コイル13xの周囲にあるセラミックス中に含まれる過剰な炭素原子や酸素原子が発熱体12に到達する前に犠牲コイル13xが吸収し、発熱体12の炭化や酸化を効果的に抑制しているものと考えられる。
図10及び図11はそれぞれ、試験例6に相当する犠牲コイルを適用した発熱体の断面SEM写真、従来例1に相当する犠牲コイルを適用していない発熱体の断面SEM写真を示す。それぞれのSEM写真は反射電子像である。図11において発熱体の周囲に暗く見える炭化Moの層が、図10に示した炭化Moの層よりも少なくなっており、犠牲コイルを適用したことにより発熱体の炭化が抑制されていることが分かる。なお、それぞれ発熱体の周囲の黒い部分がAlNセラミックスに相当している。
断面SEM写真を明暗に基づいて二値化し、発熱体の暗い部分の面積を発熱体全体の面積で除して炭化率を求めた例を図12に示す。セラミックス基体11の原料としてAlN、発熱体12及び犠牲コイル13xの材料としてMoを用いた場合、犠牲コイル13xを適用しない発熱体12の炭化率が2.12%に対して、犠牲コイル13xを適用した発熱体12の炭化率は1.13%であった。また、セラミックス基体11の原料としてAl23、発熱体12及び犠牲コイル13xの材料としてNbを用いた場合、発熱体12の表面が酸化する。犠牲コイル13xを適用しない発熱体12の酸化率が2.05%に対して、犠牲コイル13xを適用した発熱体12の酸化率は1.11%であった。このように、犠牲コイル13xを適用しない発熱体12の炭化率又は酸化率が2%〜2.2%に対して、犠牲コイル13xを適用した発熱体12の炭化率又は酸化率は1%〜1.2%となり、犠牲コイル13xを適用した発熱体12の炭化もしくは酸化が抑えられることが分かる。
図13は、試験例6に相当するセラミックヒータの発熱体の例であり、発熱体はコイルであり、略同心円状に折り返しつつヒータ全面に均等に配置される形状をしている。図13は部分的に犠牲コイルを巻きつけてある。図13は、犠牲コイルのない発熱体で予めセラミックスヒータを作製し、その均熱性を測定した結果に基づいて、均熱性の悪い発熱体の一部に犠牲コイルを巻きつけたものである。犠牲コイルを巻きつける位置は、温度分布から適宜設定する。図13の発熱体から得られたセラミックスヒータは、図14に示すように、均熱性が犠牲コイルのない場合の5℃から2℃に向上した。このように、犠牲コイルのないヒータの温度分布から均熱性の悪い部分のみに犠牲コイルを適用し、部分的に均熱性を改善することも可能となる。
図15及び図16はそれぞれ、犠牲コイルを適用した場合、犠牲コイルを適用しない場合の焼結体の断面図を示す。図15に示すように犠牲コイルを適用すると発熱体周辺の灰色の層が図16に示す犠牲コイルを適用していない場合よりも大きくなり、連なっているように見えている。灰色の層はAlN中の残留カーボンによると思われ、このため、発熱体自体の炭化が抑制されているものと思われる。
図17は、試験例11に係るAl23を用いたセラミックスヒータの一例である。発熱体12のうち、直線的なジャンパー線部分12xは、コイル形状の他の部分と比して均熱性を悪化させる要因となり得る。そこで、このジャンパー線部分12xに犠牲コイルを適用した。図18に示すように、犠牲コイルを適用しない場合よりも、均熱性が6℃から4℃に向上した。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るセラミックスヒータ及びその製造方法によれば、発熱体12に犠牲コイル13xを巻いて焼成することで、犠牲コイル13xが犠牲材としての役割を果たし、発熱体12の炭化もしくは酸化を防ぐことができる。これにより、発熱体12の炭化もしくは酸化のばらつきを抑え、安定した均熱性を示すセラミックスヒータを得ることができる。
更に、過去の履歴、すなわち犠牲コイルのないヒータの温度分布から均熱性の悪い部分のみに犠牲コイル13xを適用し、部分的に均熱性を改善することも可能となる。
[試験例13]
メッシュ密度360本/cm(1cmあたりの線の数が360本)、素線径0.02mm、厚み0.06mmのMoメッシュから、レーザ加工により幅4.2mmの帯状のMoメッシュを切り出した。切り出したMoメッシュと発熱体としてのMo素線(径0.5mm)とを引張絞り成形機によってセラミックス原料粉を充填しながら引張パイプ成形することにより、直径1.3mm、長さ7mの発熱体エレメント(図20及び図21参照)を作製した。ここでは、セラミックス原料粉として、AlN粉末(純度96wt%、焼結助剤Y23を4wt%含有:セラミックス基体を作製するAlN造粒粉と同じだが、バインダーを含まない)を使用した。なお、発熱体エレメントの合わせ部は溶接しなかった。作製した発熱体エレメントをコイル加工機でコイル状に加工したのち、図13と同様のパターンに成形し、真空中アニールを施してくせ付けした。この発熱体エレメントを用いて、上述した(b1)〜(b4)の工程にしたがってセラミックスヒータを作製した。なお、成形体の焼結はホットプレス焼成法を用いた。焼成条件は、プレス圧力150kg/cm2で窒素雰囲気中、1820℃で6時間焼成した。比較のために、メッシュパイプを有さないMo素線を発熱体として用いたセラミックス基体(従来例3)も作製した。試験例13及び従来例3のセラミックス基体につき、先の試験例と同様にして、特性を調査した。その結果を図23に示す。図23に示すように、従来例3では均熱性がΔ5℃であったのに対して、試験例13では均熱性がΔ2℃であり、メッシュパイプを犠牲材として用いた場合には均熱性が向上することがわかった。
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
11,21 セラミックス基体、11a,11b 予備成形体、11c,21c成形体、12,22 発熱体、13,23 反応層、13x 犠牲コイル、16,17,26,27 電極端子、23x メッシュパイプ、23y シースパイプ、24 発熱体エレメント

Claims (10)

  1. 上面に基板を載置するセラミックス基体と、
    前記セラミックス基体に埋設された金属製の発熱体と、
    前記発熱体と非導通の状態で該発熱体を取り囲み、前記セラミックス基体の焼成前に金属部材として存在していたものが前記セラミックス基体の焼成時に前記発熱体に優先して炭化又は酸化した金属炭化物又は金属酸化物を含む反応層と、
    を備え
    前記反応層は、前記セラミックス基体の焼成前に前記発熱体に巻きつけた金属製の犠牲コイルとして存在していたものであるか、前記セラミックス基体の焼成前に前記発熱体を挿通する金属製のメッシュパイプ又はシースパイプとして存在していたものであるか、のうちのいずれかである、セラミックスヒータ。
  2. 前記セラミックス基体が窒化アルミニウムからなり、前記発熱体及び前記金属部材のそれぞれがモリブデンからなる、
    請求項1に記載のセラミックスヒータ。
  3. 前記セラミックス基体がアルミナからなり、前記発熱体及び前記金属部材のそれぞれがニオブからなる、
    請求項1に記載のセラミックスヒータ。
  4. 前記発熱体がコイル形状である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックスヒータ。
  5. 前記発熱体は、断面SEM写真を明暗に基づいて二値化したときの前記発熱体の全体面積に対する暗い部分の面積の比である炭化率又は酸化率が1.2%以下である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックスヒータ。
  6. 前記犠牲コイルのピッチが0.1mm〜1mmである、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックスヒータ。
  7. 前記発熱体の線径が0.3mm〜0.5mmであり、前記犠牲コイルの線径が0.05mm〜0.2mmである、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックスヒータ。
  8. 前記発熱体の線径が0.3mm〜0.5mmであり、前記犠牲コイルの巻径が1.0mm〜1.5mmである、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックスヒータ。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のセラミックスヒータを製造する方法であって、
    (a)前記セラミックス基体の原料となるセラミックス原料粉中に、前記発熱体と該発熱体を取り囲む金属部材とを両者の間に前記セラミックス原料粉と主成分が同じ原料粉が介在するように埋設させて成形体を作製する工程と、
    (b)前記金属部材が前記発熱体に優先して炭化又は酸化するように前記成形体を焼結させることにより前記セラミックス基体及び前記反応層を作製する工程と、
    を含むセラミックスヒータの製造方法。
  10. 前記工程(a)では、前記発熱体を取り囲むように前記金属部材を配置するにあたり、前記発熱体のうちヒータの温度分布が生じる部分を取り囲むように前記金属部材を配置する、
    請求項に記載のセラミックスヒータの製造方法。
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