JP5318713B2 - 水質調整システム - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、養液栽培の養液、飼育魚の水槽の水などの液体の水質を調整し、特に、pHの管理をおこなう場合に有効な水質調整システムに関する。
従来、養液栽培の養液や飼育魚の水などの液体のpHを適正な状態に維持する場合には、これらを交換したり、或は、液体中にpH調整剤を投入することで対処していた。
一方、この種のpHを制御するシステムとしては、例えば、特許文献1の水耕栽培の培養液流水殺菌システムがある。同文献1の培養液流水殺菌システムは、培養液のpHを一定の範囲に調節するものであり、このpHを調節するために酸溶液又はアルカリ溶液を用いている。この培養液流水殺菌システムでは、培養液のpH値をpHセンサーで検知し、その検知した値が6.0以上になった場合に酸溶液を供給することで培養液のpH値を低下させ、一方、検知した値が4.0以下になった場合にアルカリ溶液を供給することで培養液のpH値を上昇させている。
一方、特許文献2においては、廃水のpHを調整するようにした廃水処理装置が開示されている。この廃水処理装置では、廃水中に酸を供給することでpHを4以下にして高濃度でオゾンを溶解させるようにし、続いて、廃水中にアルカリを供給することでpHを4.5〜8の間にしてこの廃水に紫外線照射したときにオゾンのラジカル化を促進しようとしたものである。
特許第2543141号公報 特許第4040788号公報
しかしながら、養液栽培の養液や飼育魚の水などを交換する場合には手間がかかり、しかも、これらの液体の水質を維持し続けるためにはこの交換を頻繁におこなう必要があった。
一方、特許文献1や特許文献2は、酸やアルカリなどのpH調整剤が余分に必要になり、これらのpH調整剤を液体に混合させるために設備も複雑になっていた。しかも、pH調整剤は、通常pHのダウン剤とアップ剤とが必要になっており、ダウン剤の主成分はリン酸をベースにした薬剤、アップ剤は苛性カリを主成分とした薬剤からなっている。このため、これらの薬剤を利用すると液体のpHの変化が急激に発生して環境が激変し、液体を培養液として養液栽培の養液や飼育魚の水槽水に利用したときには、植物や魚などの生物に悪影響を与えることがあった。更には、これらのpH調整剤を投与しすぎると、植物が枯れたり魚が死んだりする可能性もあった。
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、液体を交換したりpH調整剤等の薬剤を用いたりすることなく、液体のpHを滑らかにコントロールして常時安定した状態に維持できる水質調整システムを提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、液体タンク内に収容した外部ラインを循環する養液等の液体を除菌浄化する水質調整システムであって、液体にオゾンを供給するオゾン供給部と紫外線を照射する紫外線照射部と光触媒を作用させる光触媒作用部とを有する除菌浄化ユニットと、液体のpHを測定するpHセンサとを有し、このpHセンサにより測定した液体のpHに基づいてオゾン供給部、紫外線照射部、光触媒作用部のうちの何れか1つ又は複数を動作させて液体のpHを予め設定した設定値に近づけるようにした水質調整システムである。
請求項2に係る発明は、pHセンサは、除菌浄化ユニットに制御信号を送受し、この制御信号は、液体が酸性のときにこの液体がアルカリ性に近づくまでオゾン供給部を停止させて紫外線照射部と光触媒作用部とを動作させる信号と、液体がアルカリ性のときにこの液体が酸性に近づくまで紫外線照射部と光触媒作用部とを停止させてオゾン供給部を動作させる信号とを有する水質調整システムである。
請求項3に係る発明は、pHセンサの制御信号は、設定したpH値に液体が近づいたときに、オゾン供給部と紫外線照射部と光触媒作用部とを併用する信号を有する水質調整システムである。
請求項1に係る発明によると、pHセンサで測定した液体のpHに基づいて除菌浄化ユニットのオゾン供給部、紫外線照射部、光触媒作用部のうちの何れか1つ又は複数が動作して液体のpHを設定値に調整するため、液体を交換したり薬剤を用いたりすることなくpHを滑らかにコントロールでき、液体タンク内の液体を、常時安定したpHに維持できる。しかも、オゾンと紫外線と光触媒とを併用した除菌浄化により、機能性に優れた水質とすることができ、オゾンによる液体の酸性化を防ぎつつ栽培植物や飼育魚の生育促進を図り、更に、システム全体を簡単な配管系統で構成することもできる水質調整システムである。
請求項2に係る発明によると、オゾン供給部と、紫外線照射部と、光触媒作用部とを効率良く動作させて液体のpHを適正な状態に移行させることができ、この液体が酸性やアルカリ性に極端に傾くことを防いで安定した水質に維持することができる。
請求項3に係る発明によると、液体のpHが設定値に近づいた状態でこのpHを安定させることができ、オゾンと紫外線と光触媒とを併用した促進酸化で除菌浄化を効果的におこなうことが可能になる。
本発明の水質調整システムの要部を示した模式図である。 除菌浄化ユニットの一例を示した概略断面図である。 図2におけるオゾン供給ユニットの模式図である。 図2における紫外線・光触媒ユニットの模式図である。 本発明の水質調整システムを養液栽培システムに適用した例を示す模式図である。 図5の養液栽培システムにおけるpHの変化を示したグラフである。
以下に、本発明における水質調整システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1においては、本発明における水質調整システムの要部を示している。水質調整システム本体(以下、システム本体という)1は、液体タンク2と除菌浄化ユニット3とを有している。液体タンク2内には、外部ライン4を循環する養液等の液体5が収容されている。この液体タンク2は、液体供給管6と液体戻り管7とにより除菌浄化ユニット3に接続され、液体タンク2内の液体5は、図示しないポンプにより液体供給管6を介して除菌浄化ユニット3内に供給され、除菌浄化ユニット3により除菌浄化された後に液体戻り管7を介して液体タンク2内に戻される。
液体タンク2には接続ライン8を介してpHセンサ10が接続され、更に、このpHセンサ10は、制御ライン11を介して除菌浄化ユニット3に接続されている。外部ライン4は、供給ライン12と戻りライン13とからなり、これらは、液体タンク2内の除菌浄化された液体5を外部に循環させるように液体タンク2に接続されている。
図2、図3に示すように、除菌浄化ユニット3は、オゾン供給部15と、紫外線照射部16と、光触媒作用部17とを有しており、後述するように、オゾン供給部15は液体5にオゾンを供給し、紫外線照射部16は液体5に紫外線を照射し、光触媒作用部17は液体5に光触媒を作用させるようになっている。本実施形態においては、オゾン供給部15はオゾン供給ユニット18内、紫外線照射部16と光触媒作用部17とは紫外線・光触媒ユニット19内にそれぞれ設けられている。このように、オゾン供給ユニット18と紫外線・光触媒ユニット19とは別体に形成され、オゾン供給ユニット18の下流側に紫外線・光触媒ユニット19が接続されて除菌浄化ユニット3が構成されている。
除菌浄化ユニット3は、オゾン供給ユニット18と紫外線・光触媒ユニット19とを個別に動作させることが可能であり、オゾン供給部15、又は、紫外線照射部16・光触媒作用部17を必要に応じて単独で動作させることができる。これにより、液体5に対してオゾンの供給、紫外線の照射、光触媒の作用をそれぞれおこなうことができる。更に、除菌浄化ユニット3をオゾン供給ユニット18、紫外線・光触媒ユニット19からなる別体のユニットとしているため、各ユニットの内部構造を簡略化することも可能である。
図3において、オゾン供給部15(オゾン供給ユニット18)は、中央部に金属棒20を有し、この金属棒20の外周側に、約0.5mm程度の隙間21を介して略円筒状の誘電体22が配設されている。誘電体22は、例えば、ガラス、セラミック、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料からなり、この誘電体22の入口側、出口側には、それぞれ供給口23、吐出口24が形成されている。また、誘電体22の外周側には、この誘電体22と接地した状態で接地体25が設けられる。接地体25は、例えば、金属或は水等の液体であればよく、本例においては、円筒状の金属により形成されている。
オゾン供給部15は、収納容器26に収納され、この収納容器26には、乾燥空気の入口である空気入口ポート27と、オゾンガスの出口であるガス出口ポート28と、高圧の液体の入口である液体入口ポート29と、高圧の液体の出口である液体出口ポート30とが形成されている。このうち、空気入口ポート27は供給口23と、ガス出口ポート28は吐出口24と連通し、空気入口ポート27は、オゾン供給部15の内部を介してガス出口ポート28と連通している。一方、液体入口ポート29と液体出口ポート30は、収納容器26とオゾン供給ユニット18との空間を介して連通している。
この構成により、オゾン供給ユニット18は、空気又は空気よりも酸素濃度の高い気体を原料としてオゾンを生成し、このオゾンを溶存酸素と共に液体に気泡状態で混合させるエジェクター41に接続されている。
一方、図4に示すように、紫外線・光触媒ユニット19は、中央部に紫外線光源31を有し、この紫外線光源31の外周側に保護用の保護筒32が設けられている。紫外線光源31は、紫外線を照射可能に設けられ、後述する光触媒33から正孔および電子を効率良く生じさせるために、例えば、波長が410nm以下の紫外線を多く含む特性とするのがよい。紫外線光源31としては、例えば、紫外線ランプや低圧又は高圧水銀ランプを用いることが好ましい。更に、紫外線光源は、400nmの波長を有する蛍光ランプや、紫外光を照射するLEDを複数個並べたのものであってもよい。紫外線光源がLEDランプのときには、この光源本体の寿命を延ばすことと小型化が可能になり、更には、発熱量も抑えられて効率の良い浄化が可能になる。更に、図示しないが、紫外線光源の形状は、直線(ストレート)形、円筒(サークル)形、螺旋形、波形などであればよく、何れかの形状を選択することで光触媒33を効率的に機能させることが可能になる。
紫外線光源31の外周の保護筒32は、例えば、石英ガラスやホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスなどから形成される。このうち、特に、ホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスは、比較的安価であり、材料をそのまま使用することができるが、紫外線透過率、耐熱性、強度等の点を考慮した場合、石英ガラスを材料とすることが最も好ましい。保護筒32の外周側には所定の内径を有する外筒34が設けられ、この外筒34と保護筒32との間に液体5の流路35が形成されている。この流路35内には、光触媒33が配設されている。
光触媒33は、例えば、二酸化チタンからなっており、図示しない網やチタン線、繊維状チタン材料の集合体、その他多孔性チタン材料等からなるチタン又はチタン合金などの材料の表面側に形成されている。この材料は、細状に形成することで反応面積が大きくなり、オゾンとの反応性が良くなる。材料は、チタンやチタン合金以外であってもよく、例えば、ガラスやシリカゲル等を材料とし、この材料の表面に光触媒を形成するようにしてもよい。
本例においては、紫外線・光触媒ユニット19の中央部に紫外線光源31を配置した構造としているため、ユニット全体のコンパクト化を図ることができ、かつ、液体5に対して効率的に紫外線を照射することができる。図示しないが、紫外線・光触媒ユニットは、保護筒の外側に紫外線光源、内側に光触媒をそれぞれ設けた構造としてもよい。この場合、液体5は保護筒の内部を流れることになる。
図2において、紫外線・光触媒ユニット19には、入口側接続口36、出口側接続口37が設けられ、この接続口36、37には、前述した液体供給管6、液体戻り管7がそれぞれ接続されている。更に、液体供給管6には分岐流路38が設けられている。分岐流路38は、二次側が液体入口ポート29に接続されている。この分岐流路38の途中には加圧ポンプ39が設けられ、この加圧ポンプ39により分岐流路38からオゾン供給ユニット18に液体供給管6を流れる液体の一部が供給される。
また、液体供給管6の分岐流路38よりも二次側には戻り流路40が設けられている。戻り流路40は、液体供給管6と液体出口ポート30とを接続している。更に、戻り流路40の途中にはエジェクター41が設けられ、このエジェクター41は、逆止弁42を介してガス供給路43によってガス出口ポート28と繋がっている。
逆止弁42は、適宜の態様に設けられ、オゾン供給ユニット18から供給されるオゾンや溶存酸素の逆流を防ぐために設けられている。また、エジェクター41は、例えば、セラミックや金属を材料としてリング状に形成され、戻り流路40から流れる液体と、ガス供給路43から流れるオゾン(及び溶存酸素)とを混合させることにより微細気泡状の混合液(オゾン水)をつくるようになっている。このとき、逆止弁42を通過したオゾンと溶存酸素は、エジェクター41内部の図示しない溢路により流速が早められて液体供給管6に供給されて気泡状態で液体中に溶け込んだ状態になる。
また、前記した図1におけるpHセンサ10は、制御ライン11を介して除菌浄化ユニット3に制御信号を送受可能になっている。更に、pHセンサ10は、接続ライン8を介して液体タンク2内の液体5のpHを測定可能になっており、この測定したpHの値に基づいて除菌浄化ユニット3のオゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17のうちの何れか1つ又は複数を動作させて、液体5のpHをこのpHセンサ10で予め設定したpHの設定値に近づけることが可能になっている。
この場合、pHセンサ10の制御信号は、液体5が酸性のときにアルカリ性に近づくまでオゾン供給部15を停止させ、かつ、紫外線照射部16と光触媒作用部17とを動作させる信号を有し、一方、液体5がアルカリ性のときに酸性に近づくまで紫外線照射部16と光触媒部17とを停止させ、かつ、オゾン供給部15を動作させる信号とを有している。
更に、pHセンサ10の制御信号は、液体タンク2内の液体5が設定したpHに近づいたときに、オゾン供給部15と紫外線照射部16と光触媒作用部17とを併用する信号を有し、この信号を発することでオゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17の動作による促進酸化によって除菌浄化をおこなう。この場合、オゾン供給部15の単独、或は、紫外線照射部16と光触媒作用部17とによる動作でもそれぞれ除菌浄化効果を発揮することもでき、この場合でも常に液体5の清浄化が図られる。
pHセンサ10の制御信号としては、上記以外にも、予め設定したpHの設定値を除菌浄化ユニット3に送る信号などがある。
また、システム本体1の液体供給管6の一次側には逆止バルブ45が設けられている。逆止バルブ45は、液体供給管6から液体タンク2への逆流を防いでいる。また、図示しないが、逆止バルブ45の一次側にゴミなどの混入を防ぐためのフィルタを設けるようにしてもよい。
システム本体1において、液体5が液体供給管6から流れると、この液体5は、入口側接続口36から紫外線・光触媒ユニット16内に供給される。このとき、液体5の一部は、図2において分岐流路38を介して液体入口ポート29よりオゾン供給ユニット18内に流入される。
液体タンク2内の液体5はpHセンサ10でpHが測定され、このpHの値に基づいてオゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17がpHセンサ10の制御信号により制御される。その際、光触媒作用部17は、紫外線照射部16の紫外線光源31の点灯によりその機能を発揮し、紫外線光源31の消灯時には機能しないため、動作を制御する必要はない。
オゾン供給ユニット18が動作すると、オゾン供給部15において図示しない高圧電源から電圧が印加されて金属棒20が高圧に帯電された状態で空気入口ポート27より空気、又は、空気よりも酸素濃度の高い気体が原料として供給されてこの気体が隙間21を流れる。このとき、金属棒20と誘電体22・接地体25とによって隙間21が放電空間となってこの隙間21内にオゾンが生成される。このオゾンは、吐出口24を介してガス出口ポート28から吐出され、エジェクター41の働きによって溶存酸素とともに戻り流路40から液体供給管6を流れる液内中に混入される。
この場合、鉄分やMnを液体5中に補充するようにし、例えば、鉄分を含ませた液体5にオゾン供給部15によりオゾンを投与した場合には、一般的なオゾン処理により鉄は、
2Fe2++O+HO→2Fe3++O+2(OH)
2Fe3++3HO→Fe(OH)↓+3H
の2段階の変化を経る。この時に生じる水素イオンが液体5のpHを下げて酸性にする要因となっている。ここで、Fe2+は第一鉄イオン、Fe3+は第二鉄イオンであり、↓は沈殿を表している。
このときのオゾンによる殺菌効果は、通常CT値と呼ばれる値で表される。CT値とは、オゾン濃度とオゾンが液体に接触するときの接触時間の積であり、例えば、オゾン濃度が高い場合にはオゾンの接触時間が短くても殺菌が可能になっている。
また、pHとオゾン濃度には、明確な関係があり、pHが高くなれば、より多くのオゾンを投入しなければこのときのオゾン濃度を確保できなくなる。その際、pHが8を越えるとオゾン濃度の維持が困難になり、pHが9を越えるとオゾンの投入を増やしてもオゾン濃度が上昇しにくくなる。よって、中性域から酸性域では、殺菌力が高くpH8を越えると殺菌力が弱くなる。
続いて、液体5は、分岐流路38に流れない液体とともに紫外線・光触媒ユニット19内に流入する。このとき、紫外線・光触媒ユニット19が動作していると、このユニット内に流入した液体5は、流路35内の紫外線光源31と光触媒33とを通過して、紫外線照射部16と光触媒作用部17とにより除菌浄化される。
この場合、オゾンが溶け込んだ液体5に紫外線照射部16より紫外線を照射すると、・OH(ヒドロキシラジカル又はOHラジカル)といわれるラジカル(不対電子を持つ化学種で活性化が強い物質)が生成される。この・OHは、活性化が強いため、水中の炭酸イオンや、炭酸水素イオンと反応し、急速に過酸化水素水や水酸イオンや水になる。このとき発生する水酸イオンはアルカリ基であり、これにより促進酸化させると液体がアルカリ性に移行する。
更に、紫外線光源31からの紫外線が光触媒33に照射され、この光触媒33の表面でも・OHが生成される。これらの作用により、液体5がアルカリ性に移行する。
液体5がオゾン供給ユニット18、紫外線・光触媒ユニット19を通過するときには、上述したように、pHセンサ10により測定したpHの値によって、各ユニット18、19にpHセンサ10から制御信号が送られて液体5が設定したpHに近づけられる。
このときの動作例を具体的に説明する。例えば、液体5のpHが設定値よりも高くなった場合、この液体5を酸性側に近づけるために紫外線光源31を消灯してオゾン供給部15のみを動作させて除菌浄化する。その際、液体5のpHを6〜6.5の範囲内に調整する場合、pHが6.5を越えたときに紫外線光源31を消灯してオゾン供給部15を1日〜10日程度運転させるようにpHセンサ10を制御する。そして、この運転中に液体5のpHが6を切ったときに紫外線光源31を点灯させて、オゾン供給部15と紫外線照射部16と光触媒作用部17とによる通常の運転を行うようにする。
そして、再度、液体5のpHが6を切った場合には、オゾン供給部15を間欠的に動作させるか、或は動作を停止させて紫外線照射部16と光触媒作用部17とを1日〜10日程度動作させる。更に、この動作中にpHが6.5を越えたときには、オゾン供給部15を再度動作させて通常運転を行うようにすればよい。
この場合、オゾンの発生量が多いことは、植物や養殖魚などへの悪影響が大きくなるため望ましいことではない。液体5のpHが上昇したときには、紫外線光源31を消灯してオゾン供給部15のみを動作させて徐々にpHを酸性側に移行させる。続いて、液体5が酸性に傾こうとしたときには、紫外線光源31を点灯してpHをアルカリ性に傾けるようにするが、このときオゾン供給部15を停止して紫外線照射部16と光触媒作用部17とを動作させることにより速くアルカリ性に移行させることが可能となる。
なお、上記実施形態において説明した除菌浄化ユニット3は、あくまでも一例であって、その構造にこだわることはない。例えば、上記の除菌浄化ユニット3は、オゾン供給ユニット18と紫外線・光触媒ユニット19とが分割して構成されているが、オゾン供給部と紫外線照射部と光触媒作用部とを有し、これらを個別に動作可能であれば、全体を一体化した除菌浄化ユニットとしてもよい。
液体タンク2内には、養液栽培の養液や飼育魚の水以外の液体を収容してもよく、除菌浄化ユニット3で除菌浄化が必要な各種の循環用の液体を収容し、この液体を除菌浄化しながらpHのコントロールをおこなうことができる。
また、pHセンサは、図1に示したように除菌浄化ユニットと別体に設ける以外にも、除菌浄化ユニットに内蔵してもよい。
次に、本発明の水質調整システムの上記実施形態における作用を説明する。
本発明の水質調整システムは、除菌浄化ユニット3と、液体5のpHを測定するpHセンサ10とを有し、pHセンサ10により液体タンク2内の液体5の測定し、このpHに基づいて除菌浄化ユニット3のオゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17のうちの何れか1つ又は複数を動作させて液体5のpHを予め設定した設定値に近づけるようにしているので、pH調整剤を用いることなく液体5のpH調整をおこなうことができる。
このとき、オゾン供給部15によるオゾンの供給又は停止と、紫外線照射部16による紫外線の照射又は停止と、光触媒作用部17による光触媒33の作用又は停止とにより液体5のpHを調整しているので、長い時間をかけて徐々にこのpHを変化させるように調整でき、植物や魚等の生物に与える影響を極僅かに抑えることができる。しかも、pHを一定に保った状態に調整することもできるため、効果的な生物の生育促進を図ることができ、更に、pH調整剤を投入する必要もないため、液体の成分変化を防いで生物に与える悪影響を最小限に抑えることができる。
更に、システム本体1は、pHをコントロールする以外にも、オゾンの供給と紫外線の照射と光触媒の作用とによる特有の除菌浄化作用によって、養液栽培や飼育魚などの育成に有効な水質に調整することができる。
続いて、本発明の水質調整システムを養液栽培システムの一部に適用した例を述べる。図5においては、養液栽培システムの一例を示しており、この養液栽培システム50は、前述したシステム本体1の外部ライン4(供給ライン12・戻りライン13)に栽培ベッド51を接続して外部ラインとして循環ライン52を構成し、この循環ライン52にシステム本体1の液体タンク2に収容した培養液53を循環させたものである。
栽培ベッド51には、例えば、イチゴ等の図示しない植物が植えられている。システム本体1でpHのコントロールと除菌浄化された培養液53は、図示しないポンプにより液体タンク2から汲み上げられて供給ライン12から栽培ベッド51に供給され、植物に供給されたのちに戻りライン13から戻るようになっている。
このように、本発明の水質調整システムを養液栽培システムの一部に組み込んで養液栽培をおこなった場合にも、薬品(pH調整剤)をほとんど使用することなくpH管理できるため環境に優しい養液栽培システムを構築することができる。更に、この養液栽培システムは、pHを徐々に変化させることができるため、他の植物や養殖魚などに利用することもでき、この場合にも、生物に悪影響を与えることを防ぎ、環境負荷も大幅に減らすことができる。
しかも、栽培ベッド51で植物を生育させる場合、適正なpHの範囲が植物により異なり、例えば、イチゴではpH6〜6.5、トマトではpH5〜6などのように概ね適正なpHの範囲は決まっているが、本発明のシステム本体1を養液栽培システム50に組み込むことにより、pHセンサ10でpHを適宜の値に設定し、このpHを一定に調整した培養液53を植物に供給できる。このため、植物ごとに適正なpHの培養液51を供給でき、生育の促進を向上させることができる。
また、除菌浄化ユニット3からのオゾンの発生量を少なく抑えることができるため、オゾンを常時供給しながら培養液53を浄化することができる。これにより、pH調整も容易になり、植物等のオゾン障害も防ぐことができる。更に、配管系統の腐食や植物の育成不良を防止でき、定期的な養分補給を行なうだけで多くの植物の収穫を得ることができる。しかも、微量のオゾンを常時供給できることにより、配管系の内壁の菌類の成長を抑制でき、バイオフィルムの発生も防がれる。
更に、除菌浄化ユニット3は、有機物の処理を常時行うことができるため、栽培ベッド51の有機物による詰まり、腐食、ぬめり等が防がれ、根の成長が促されることで植物の生育が向上する。例えば、植物Vがイチゴである場合、このイチゴは根が腐食すると収穫回数が減少するが、このような根腐れが防止されることにより長期に渡る安定した収穫が可能となる。また、有機物の発生が少なくなることで、収穫後における栽培ベッド51の清掃も容易になる。
この場合、培養液中の鉄分やMn成分を定期的に補充するのが望ましい。ただし、鉄分やMn成分は植物の栄養素としては微量元素の部類であり、育成に急激な変化を与えることは無いため、およそ1週間から2週間に1度程度の補給で対応可能である。
なお、図示しないが、養液栽培システム50に、EC調整器や補給水ラインを設けるようにしてもよい。EC調整器は、液体タンク内の培養液のEC(電気伝導度)を調整可能であり、一般に使用されているものを利用できる。EC調整器により培養液のECを調整する場合、例えば、イチゴではEC=0.5、トマトではEC=1.0などの適宜の値とすればよい。また、補給水ラインは、液体タンク内に培養液を補給するために設けられる。
図6のグラフにおいては、図5の養液栽培システム50を養液栽培の圃場に利用し、そのpHを測定した結果を表したものである。この場合、栽培ベッド51をトマト栽培するベッドとし、この栽培ベッド51に液体タンク2から源水を循環させ、この源水と補給水とを同じ養液とした循環式の循環ラインを構成した。図においては、本発明の水質調整システムを利用したライン(これを試験区という)と、水質調整システムを利用しないライン(これを比較区という)のpHの測定結果を示している。このときの試験区の条件としては、オゾン供給部、紫外線照射部、光触媒作用部を常に動作させた状態とし、オゾン供給部からのオゾンの発生量を抑えるようにpHセンサからの制御信号を設定した。
図の結果より、比較区に比べて試験区のpHが全体的に高くなっている。このように、水質調整システムにより、圃場をアルカリ性に傾けることができ、オゾンの発生量を多くした場合に起こりうる植物への悪影響を回避できる。
次に、紫外線光源を停止し、オゾン供給部の動作のみにより養液の循環を続けると、グラフに示すように、約1週間程度で試験区のpHはおよそ6程度まで低下する。この状態から、紫外線光源を再点灯させるとpHが徐々に上昇し、pH7を超える水準となる。このように、本発明の水質調整システムを養液栽培システムの一部に利用した場合、圃場のpHを任意の状態にコントロールできる。この実験は、トマトの養液栽培ベッドでおこなったが、イチゴ等の他の果物や、或は、野菜を含む他の植物の栽培等においても同様の効果を発揮できるのは勿論である。
1 システム本体
2 液体タンク
3 除菌浄化ユニット
4 外部ライン
5 液体
10 pHセンサ
15 オゾン供給部
16 紫外線照射部
17 光触媒作用部

Claims (3)

  1. 液体タンク内に収容した外部ラインを循環する養液等の液体を除菌浄化する水質調整システムであって、前記液体にオゾンを供給するオゾン供給部と紫外線を照射する紫外線照射部と光触媒を作用させる光触媒作用部とを有する除菌浄化ユニットと、前記液体のpHを測定するpHセンサとを有し、このpHセンサにより測定した前記液体のpHに基づいて前記オゾン供給部、紫外線照射部、光触媒作用部のうちの何れか1つ又は複数を動作させて前記液体のpHを予め設定した設定値に近づけるようにしたことを特徴とする水質調整システム。
  2. 前記pHセンサは、前記除菌浄化ユニットに制御信号を送受し、この制御信号は、前記液体が酸性のときにこの液体がアルカリ性に近づくまで前記オゾン供給部を停止させて前記紫外線照射部と光触媒作用部とを動作させる信号と、前記液体がアルカリ性のときにこの液体が酸性に近づくまで前記紫外線照射部と光触媒作用部とを停止させて前記オゾン供給部を動作させる信号とを有する請求項1に記載の水質調整システム。
  3. 前記pHセンサの制御信号は、設定したpH値に前記液体が近づいたときに、前記オゾン供給部と紫外線照射部と光触媒作用部とを併用する信号を有する請求項2に記載の水質調整システム。
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