JP5316026B2 - 熱間打抜き性に優れたダイクエンチ用鋼板 - Google Patents

熱間打抜き性に優れたダイクエンチ用鋼板 Download PDF

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本発明は、自動車部品等向けの高強度鋼板に係り、とくに、鋼板を加熱したのち、プレス加工しながら焼入れて、高強度化を図るダイクエンチ工法(ホットプレス工法ともいう)の適用に好適なダイクエンチ用鋼板における熱間打抜き性の向上に関する。
従来から、自動車の車体構造部品、足回り部品等の多くは、所定の強度を有する鋼板をプレス加工して製造されてきた。近年、地球環境の保全という観点から、自動車車体の軽量化が熱望され、使用する鋼板の高強度化が求められている。しかし、鋼板の高強度に伴う加工性(成形性)の低下により、鋼板を所望の部品形状に加工することが困難になる場合が多い。例えば、延性が低下して加工量の多い部位で破断が生じたり、スプリングバックが大きくなり寸法精度が低下するなど、複雑な形状へのプレス加工時や、引張強さ980MPaを超える高強度鋼板の冷間プレス加工時には、プレス割れや形状凍結性の不足などの問題が生じやすく、所望の高強度化を達成できていない部品がまだ残されている。
このような問題に対し、自動車部品等を高強度化する方法の一つとして、ダイクエンチ工法(ホットプレス工法ともいう)と称される技術が実用化されている。ダイクエンチ工法では、素材(鋼板)をオーステナイト単相域まで加熱し軟質化させたのち、水冷等により冷却された金型を用いて、所望の形状にプレス加工する。これにより、所望の加工形状に成形すると同時に焼入れ硬化して、所望の寸法精度と高強度とを兼備する成形品(部品)とする工法であり、加工性(成形性)と高強度化を両立させることができる。
このようなダイクエンチ工法に適した鋼板として、例えば特許文献1には、スポット溶接部の接合強度および熱間成形性に優れた熱間成形用鋼板が提案されている。特許文献1に記載された技術では、鋼板を、質量%で、C:0.1〜0.35%、Si:0.7〜2.5%、Mn:0.5〜5%、Al:0.01〜0.5%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.003〜0.005%、N:0.001〜0.01%を含有し、TiおよびNが、{(Ti/47.9)×14.0−N}≧0を満足する組成を有する鋼板としている。特許文献1に記載された技術では、鋼板に比較的多量のSiを含有させて、スポット溶接部の強度を向上させるとともに、Bを含有させてSiの多量含有による熱間成形性の劣化を抑制し、熱間成形時の割れ、破断を防止でき、さらにTiを、原子濃度でN含有量より多量に含有させてBNの形成を抑制し、焼入れ性に及ぼすBの効果を確保できる鋼板組成とすることにより、該鋼板をホットスタンプ成形(ダイクエンチ成形)した後に、所定の高強度(高硬度)を有し、かつ品質の良好な成形品(ホットスタンプ成形品)とすることができるとしている。
また、特許文献2には、ダイクエンチ用高強度鋼板が提案されている。特許文献2に記載された鋼板は、質量%で、C:0.1〜0.5%、Si:1%以下、Mn:0.1〜2.5%、Ti:0.01〜0.05%、N:0.0010〜0.0030%、Ce:0.0020〜0.02%を含み、P,S,Alを所定量以下に規制した組成を有し、表面から極僅か内部の位置にCe酸化物を含み粒径2μm以下の微細粒子が4個/mm以上を含む組織を有する鋼板である。Ce酸化物を含み粒径2μm以下の微細粒子を鋼板表面近傍に存在させることにより、ダイクエンチ時の表面近傍の軟質化を防止でき、ダイクエンチ後の疲労特性が向上するとしている。
ここで、一般に、成形品(部品)には、他部品を取付けるための穴を必要とする場合が多い。しかし、このダイクエンチ工法を施される鋼板においては、ダイクエンチ後の強度が980MPaを大きく超えるため、成形品に穴をあけることが困難であるか、あけることができたとしても、残留応力が大きくなるため、遅れ破壊の発生が懸念される。
このような問題に対し、例えば特許文献3には、熱間プレス用鋼板が提案されている。特許文献3に記載された鋼板は、質量%で、C:0.15〜0.3%、Si:0.005〜1.0%、Mn:0.01〜3.0%、P:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、Al:0.01〜3.0%、N:0.01%以下、Cr:0.02〜0.5%、V:0.002〜0.5%、B:0.0002〜0.01%、Mg:0.0002〜0.01%を含む組成と、平均粒径が0.01〜5.0μmの範囲にあるMgの酸化物、硫化物、複合晶出物および複合析出物のいずれか1種もしくは2種以上の複合酸化物を、1平方mm当たり、1×102個〜1×107個含むことを特徴とする鋼板であり、熱間プレス焼入れ後の、打抜き部の遅れ破壊特性に優れ、スポット溶接性に優れた鋼板であるとしている。特許文献3に記載された技術では、Mgを添加することで、打抜き断面に発生するクラックを微細均一化でき、鋼板中に存在する酸化物と、これらを核として複合晶出物・析出物を均一分散させて、打抜き時の粗大クラック発生を抑制するとともに、これら酸化物等が水素のトラップサイトとなり遅れ破壊を抑制するとしている。
特開2007−169679号公報 特開2007−247001号公報 特開2006−9116号公報公報
ところで、他部品を取付けるための穴を、ダイクエンチ後の高強度化した成形品に加工することに代えて、素材(鋼板)を加熱した後でダイクエンチを施す前に、素材(鋼板)に打抜き加工を施し所定の穴を形成し、しかる後にダイクエンチする方法が考えられる。しかしこの方法では、加熱により軟質化した素材(鋼板)に打抜き加工を施すため、打抜き端面に大きなバリが発生する場合が多い。このバリは、ダイクエンチ後にも残留し、部品形状を劣化させるうえ、ダイクエンチ時に硬質化するため、成形品(部品)搬送時に引っかかりやすくトラブルの原因となり、さらに場合によっては、プレス金型を傷めるという問題がある。
しかも、上記した特許文献1〜3に記載された技術で得られる鋼板は、このような問題を回避するために十分な、優れた熱間打抜き性を有するまでに至っていないという問題がある。
例えば、特許文献1に記載された鋼板を素材として、加熱し、打抜き加工を施し、所定の穴を形成すると、打抜き時にバリが発生しやすい。というのは、特許文献1に記載された鋼板は、比較的多量のSiを含有し、高温での粘りを有し、優れた熱間成形性を有しているためである。また、特許文献2に記載された鋼板を素材としても、鋼板中に分散するCe酸化物を含み粒径2μm以下の微細粒子は、ダイクエンチ後の表層軟化を防止するためのものであり、ダイクエンチ前の加熱時の熱間打抜き性に影響を及ぼすものではない。また、特許文献3に記載された鋼板を素材とした場合には、熱間打抜き時の、加熱により基地組織が結晶系の異なるオーステナイト組織となるため、鋼板中に多数分散する微細なMg酸化物、硫化物、複合晶出物および複合析出物のいずれかもが打抜き性を向上させるまでの効果を有しなくなると考えられる。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、ダイクエンチ工法を適用する鋼板であって、熱間打抜き性に優れ、ダイクエンチ後の引張強さが1200MPa以上好ましくは1500MPa未満程度の高強度となる、ダイクエンチ用鋼板を提供することを目的とする。ここでいう「熱間打抜き性に優れる」とは、素材(鋼板)をオーステナイト単相となる温度域に加熱したのち、直径10mmのポンチで打ち抜き、室温まで放冷したのちの、バリの最高高さが40μm以下の場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、熱間打抜き性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、熱間打抜き性を向上させるためには、高温で安定な析出物を積極的に活用することが有効であることに想到した。
従来、高強度鋼板を冷間プレスで加工する場合には、粗大な硫化物などの介在物や析出物は、端面での割れの起点や亀裂進展経路となりやすく、極力低減すべきと考えられていた。しかし、冷間プレス加工とは異なり、ダイクエンチ工法では、加熱により軟質化した鋼板を成形加工するため、亀裂や割れの発生が軽減でき、粗大な介在物や析出物の悪影響はほとんど無視できることに思い至った。そして、ダイクエンチでは、通常、鋼板をオーステナイト単相域の温度まで加熱するため、オーステナイト域で安定な析出物を利用することが、熱間打抜き性を向上させるために肝要となることに思い至った。そして、本発明者らは、例えばMnSが高温(オーステナイト域)で析出し、ある程度の大きさまで成長することから、Mnを含む硫化物に着目した。
そして、更なる考究の結果、鋼板中に、短径が0.10μm以上となる大きさのMnを含む硫化物を分散させることにより、鋼板をダイクエンチ工法で加熱し熱間で打抜く際に、該Mnを含む硫化物が最適な大きさと最適な量と、さらに最適な分散状態となり、熱間打抜き性が顕著に向上することを新規に見出した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.10%以上0.19%未満、Si:0.15〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.020〜0.050%、Al:0.015〜0.07%、N:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼板であって、該鋼板中のMnを含む硫化物の短径の平均が0.10μm以上であることを特徴とする熱間打抜き性に優れたダイクエンチ用鋼板。
(2)(1)において、短径が0.10μm以上である大きさのMnを含む硫化物を、鋼板断面1mmあたり、平均で30個以上有することを特徴とするダイクエンチ用鋼板。
(3)(1)または(2)において、短径が0.10μm以上である大きさのMnを含む硫化物が、鋼板板厚方向断面において最表面から深さ方向に100μmまでで、かつ板面に平行に5mm長さの範囲内に、平均で10個以上存在することを特徴とするダイクエンチ用鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.15〜1%、B:0.0008〜0.0030%、Mo:0.1〜0.5%、W:0.05〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするダイクエンチ用鋼板。
本発明によれば、熱間打抜き性に優れ、ダイクエンチ後に引張強さ1200MPa以上好ましくは1500MPa未満程度の範囲の高強度が得られるダイクエンチ用鋼板を容易にかつ安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、熱間打抜き時にバリの発生を抑制できるため、ダイクエンチ工法における加熱後でダイクエンチ前に熱間打抜き加工により所望の穴加工が可能となり、穴付き高強度成形品を安価でかつ容易に製造できるという効果がある。
本発明のダイクエンチ用鋼板は、熱延鋼板、冷延鋼板がいずれも好適であり、とくに限定されない。
まず、本発明鋼板の組成の限定理由について説明する。以下、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。
C:0.10%以上0.19%未満
Cは,焼入れ性向上に寄与し、ダイクエンチ(加工焼入)後の強度向上に有効な本発明で最も重要な元素である。このような効果を利用してダイクエンチ後の成形品(製品)強度を、目標の引張強さTS:1200MPa以上の高強度とするには、0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.19%以上含有すると、ダイクエンチ後の強度が目標の強度範囲を超えて高くなりすぎる。このため、Cは0.10%以上0.19%未満の範囲に限定した。
Si:0.15〜0.5%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、焼戻軟化抵抗を高める作用を有する元素であり、本発明では0.15%以上の含有を必要とする。Si含有量が0.15%未満では、焼戻軟化抵抗が低く、ダイクエンチ時に生成したマルテンサイト相が焼戻されやすくなり、また生じた炭化物が粗大で、靭性が低下しやすくなる。一方、0.5%を超えて含有すると、冷却中にフェライト相が析出を開始し、所望の高強度を確保できなくなる。このため、Siは0.15〜0.5%の範囲に限定した。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、鋼の焼入れ性の向上を介して鋼の強度を向上させるとともに、オーステナイト域で安定な硫化物を形成する元素であり、本発明で最も重要な元素の一つである。このような効果は、1.0%以上の含有で顕著となる。含有量が1.0%未満では、焼入れ時にパーライトが生じて引張強さが著しく低下する。一方、1.8%を超える含有は、板厚中央部に偏析を形成しやすくなり、プレス加工時に偏析起因の欠陥を生じやすくなる。このため、Mnは1.0〜1.8%の範囲に限定した。
P:0.03%以下
Pは、通常の高強度鋼板では、固溶して強度を増加させる作用を有する元素であるが、0.03%を超える多量の含有は、ダイクエンチ後の溶接時に溶接部の強度が不足するという問題を発生しやすくする。このため、本発明ではPは0.03%以下に限定した。
S:0.020〜0.050%
Sは,硫化物を形成して、熱間打抜き性の向上に有効に寄与する、本発明において最も重要な元素の一つである。オーステナイト域で安定な硫化物を、適正な大きさで十分な量析出させ、熱間打抜き性を向上させるために、本発明ではSは0.020%以上の含有を必要とする。一方、0.050%を超えて多量に含有すると、効果が飽和するばかりでなく、熱間延性が大きく低下し、さらに鋼板表面に欠陥を生じやすくなる。このため、Sは0.020〜0.050%の範囲に限定した。
Al:0.015〜0.07%
Alは、脱酸剤として作用し、溶鋼の脱酸のために必要な元素である。このような効果を得るためには、0.015%以上の含有を必要とする。一方、0.07%を超えて多量に含有しても、上記した効果が飽和するうえ、酸化物量が増大し清浄度が低下する。このため、Alは0.015〜0.07%の範囲に限定した。
N:0.005%以下
Nは、本発明におけるようなC含有量範囲では、連続鋳造時に鋳片表面に割れを発生しやすくするため、できるだけ低減することが好ましいが、0.005%までは許容できる。このため、Nは0.005%以下に限定した。
上記した成分が基本の組成であるが、基本組成に加えてさらに、選択元素として、Cr、B、Mo、Wのうちから選ばれた1種または2種以上を含有できる。
Cr:0.15〜1%、B:0.0008〜0.0030%、Mo:0.1〜0.5%、W:0.05〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cr、B、Mo、Wはいずれも、焼入れ性向上に有効に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、Cr:0.15%以上、B:0.0008%以上、Mo:0.1%以上、W:0.05%以上を、それぞれ含有することが望ましいが、Cr:1%、B:0.0030%、Mo:0.5%、W:1%をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、含有する場合には、それぞれ、Cr:0.15〜1%、B:0.0008〜0.0030%、Mo:0.1〜0.5%、W:0.05〜1%に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、例えば、O:0.01%以下、Sb:0.02%以下、Sn:0.01%以下が許容できる。
本発明鋼板は、上記した組成を有する鋼板であって、該鋼板中には、Mnを含む硫化物が分散して存在し、これらMnを含む硫化物の短径の平均が0.10μm以上、好ましくは1.0μm以下である。
Mnを含む硫化物としては、主として、MnSが挙げられる。MnSは、オーステナイト域のような比較的高温でも安定な析出物であるが、オーステナイト域で長時間保持されると、再固溶し、析出物径が小さくなり熱間打抜き性向上効果が小さくなる。
本発明鋼板は、ダイクエンチの加熱時にオーステナイト域に加熱され、所定形状の穴を打抜く、熱間打抜き加工を施される。そのため本発明では、優れた熱間打抜き性を保持させるために、鋼板中に、短径で0.10μm以上の大きさを有する、Mnを含む硫化物を分散させる。Mnを含む硫化物の短径が0.10μm以上であれば、打抜き穴全周でバリ高さを低減でき、優れた熱間打抜き性を安定して確保できる。一方、Mnを含む硫化物の短径が0.10μm未満では、加熱時に高温に加熱された際に再固溶し、析出物径が小さくなりすぎて熱間打抜き性向上効果が小さくなるため、所望の優れた熱間打抜き性を確保できなくなる。そこで、鋼板中に分散するMnを含む硫化物の短径を平均で0.10μm以上とする。Mnを含む硫化物の短径の平均が0.10μm未満では、ダイクエンチの加熱時に再固溶して消失するMnを含む硫化物が多くなり、優れた熱間打抜き性を安定して得ることが困難となる。なお、Mnを含む硫化物の短径の平均の上限はとくに限定する必要はないが、大きくなりすぎると、硫化物の個数が減少し、所望のMnを含む硫化物による熱間打抜き性の向上効果が得にくくなる。このため、Mnを含む硫化物の短径の平均は1.0μm以下とすることが好ましい。
なお、ここでいう「短径」とは、圧延方向に直交する断面(C方向断面)で観察した場合の硫化物径をいうものとする。Mnを含む硫化物は、一般に比較的軟質であり、圧延前は球形を呈しているが、圧延により伸展し、圧延方向に細長く伸びた状態を呈する。このため、圧延方向に直交する方向(C方向)では、圧延方向に比べて、熱間打抜き性向上効果が実質的に小さくなる。このようなことから、本発明では、硫化物の大きさを硫化物の短径で限定した。
また、本発明鋼板では、短径が0.10μm以上の大きさのMnを含む硫化物を、鋼板断面1mmあたり平均で30個以上分散させることが好ましい。分散する短径が0.10μm以上の大きさのMn を含む硫化物の個数が、鋼板断面1mmあたり平均で30個未満では、熱間打抜き時に生成される破断端面のバリ高さが不均一になりやすい。このため、Mn を含む硫化物による熱間打抜き性向上効果が不十分となる。このようなことから、短径が0.10μm以上の大きさのMn を含む硫化物の分散個数を、鋼板圧延方向に直交する断面での平均で、鋼板断面1mmあたり30個以上とすることが好ましい。
また、本発明鋼板では、熱間打抜き時に、破断を均一に進行させ、バリ高さを低減するためには、鋼板の最表層付近に短径が0.10μm以上の大きさのMn を含む硫化物を存在させることが好ましく、少なくとも鋼板の片方の面(片面)で、鋼板板厚方向断面において鋼板最表面(板面)から深さ方向に100μmまでで、かつ板面に平行に5mm長さの領域内に、短径が0.10μm以上の大きさのMn を含む硫化物が平均で10個以上存在することが好ましい。なお、このようなMn を含む硫化物の分散状態を鋼板両面の最表層で確保することがさらに好ましいのは言うまでもない。
上記した組成、上記したMn を含む硫化物を有する本発明鋼板の製造方法は、通常公知の熱延鋼板の製造方法、あるいは通常公知の冷延鋼板の製造方法がいずれも適用でき、とくに限定されないが、以下に、より好ましい製造方法について説明する。
上記した組成の溶鋼を、転炉等の、常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造方法等の常用の鋳造法で、スラブ等の鋳片とすることが好ましい。ついで、これら鋳片を熱間圧延し、熱延鋼板とするか、あるいはさらに、熱延鋼板を酸洗し、ついで冷間圧延を施し、さらに必要に応じて焼鈍を施して冷延鋼板としてもよい。
熱間圧延では、鋳片を好ましくは1050〜1300℃に加熱し、あるいは加熱することなく鋳造後連続して、総圧下率:95%以上で、仕上圧延終了温度:800〜950℃とする熱間圧延を施し、必要に応じて、熱間圧延終了後、好ましくは20℃/s以上の冷却速度で加速冷却を施したのち、巻取温度:200〜700℃で巻取り、所望の板厚の熱延鋼板とすることが好ましい。なお、加速冷却の冷却速度、巻取温度は、その後の酸洗工程、冷延工程への負荷等を考慮して適宜調整することが好ましい。酸洗工程の負荷を軽減するには、加速冷却の冷却速度を高めに巻取温度を低めに、また冷延工程の負荷を軽減するには、加速冷却の冷却速度を低めに巻取温度を高めに設定することが好ましい。
冷延鋼板とする場合には、酸洗工程を経た熱延鋼板に、好ましくは40%以上の圧下率の冷間圧延を施し、所望の板厚の冷延鋼板とすることが好ましく、あるいはさらに該冷延鋼板に焼鈍温度:550〜900℃の焼鈍工程を施すことが好ましい。
好ましくは上記した製造方法で得られた本発明鋼板は、ダイクエンチ法を適用して、所定寸法形状のダイクエンチ成形品に加工され、製品とされる。なお、本発明鋼板が熱延鋼板である場合には、一般的には、酸洗処理等により表層に形成されたスケールを除去することが好ましいのは言うまでもない。
以下に、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法で鋳片(スラブ:肉厚260mm)とした後、該鋳片を加熱温度:1200℃で加熱したのち、仕上圧延終了温度:850℃とする熱間圧延を施し、ついで冷却を施し熱延板とし、巻取り温度:600℃で巻き取った。得られた熱延板(板厚:2.8mm)を酸洗した後、冷間圧延を施し、板厚1.4mmの冷延板とした。
得られた鋼板について、熱間打抜き試験を実施し、熱間打抜き性を評価した。また、得られた鋼板について、析出物観察を行った。また、得られた鋼板について、ダイクエンチ試験を実施し、ダイクエンチ後の成形品の強度を測定した。試験方法は次のとおりとした。
(1)熱間打抜き試験
得られた鋼板から、試験板(大きさ:板厚×100mm×100mm)を採取し、大気雰囲気中で加熱保持(900℃×15min)した後、直径10mmのポンチで打抜く、熱間打抜き試験を実施した。打抜き温度は750℃〜500℃の間に制御した。なお、打抜き時のクリアランスは板厚の12%とした。打抜き後、室温まで放冷し、バリ高さを測定した。バリ高さは、打抜き穴から2mm離れた位置の表面を基準にし、バリの一番高い頂点の高さを、その鋼板のバリ高さとした。なお、一部では、加熱保持を大気雰囲気に代えて、Arガス雰囲気とした。
(2)析出物観察
得られた鋼板から、析出物観察用の試験片を採取し、圧延方向に直交する断面(C断面)を研磨して、走査型電子顕微鏡(倍率:5000倍)を利用し、析出物を観察した。観察位置は、表層(最表面から深さ方向に100μmまでで、板面に平行に5mm長さの範囲内)、および板厚中央位置とした。
各位置で各10視野観察し、組織を撮像し画像解析装置を用いて、Mnを含む硫化物(MnS)の大きさ、分散個数を算出した。Mnを含む硫化物の大きさ(短径)は、C断面における各粒子の面積を求め、円相当直径に換算し、各粒子の短径とした。そして、さらに測定した各粒子(析出物)の短径について、平均値をもとめ、その鋼板のMnを含む硫化物の短径の平均とした。
また、Mnを含む硫化物(MnS)の分散密度は、短径が0.10μm以上の大きさのMnを含む硫化物について、観察した各位置、各視野内の粒子個数を測定し、平均してその位置、その視野の分散密度(単位面積(1mm)当たりの個数)とし、各視野の分散密度の平均値をその鋼板の各位置における分散密度とした。なお、表層は、板厚方向断面において最表面から深さ方向に100μmまでで、板面に平行に5mm長さの範囲内における個数とした。また、析出物の種類は、走査型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により定性分析し、構成する元素から、Mnを含む硫化物(MnS)と決定した。
(3)ダイクエンチ試験
得られた鋼板から、試験板(大きさ:板厚×200mm×300mm)を採取し、大気雰囲気中で加熱保持(900℃×15min)した後、平板状の水冷された金型で挟み込み、冷却するダイクエンチを行い、試験品とした。得られた試験品から、JIS Z 2201の規定に準拠して、JIS 5号試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、ダイクエンチ後の引張強さTSを求めた。なお、一部では、加熱保持を大気雰囲気に代えて、Arガス雰囲気とした。
得られた結果を表2に併記する。
Figure 0005316026
Figure 0005316026
本発明例はいずれも、バリ高さは40μm以下であり、熱間打抜き性に優れた鋼板となっており、また本発明例はいずれも、ダイクエンチ後に、1500MPa以上1800MPa未満の引張強さTSを有する高強度の試験品となっている。なお、ダイクエンチの加熱雰囲気をArガス雰囲気とすることにより、鋼板表面の酸化が抑制され表面状態がさらに良好となる。
一方、本発明範囲から外れる比較例は、熱間打抜き性が低下しているか、ダイクエンチ後に、所望の高強度(1200MPa)を確保できていない。S含有量が本発明範囲を低く外れる比較例(鋼板No. 13〜No.15)は、バリ高さがいずれも40μmを超えて大きく、熱間打抜き性が低下していた。S含有量が本発明範囲を高く外れる比較例(鋼板No.16)は、表面欠陥を有していた。C含有量が本発明範囲を低く外れる比較例(鋼板No.17)、およびMn含有量が本発明範囲を低く外れる比較例(鋼板No.18)は、ダイクエンチ後の引張強さが所望の引張強さを下回り、強度不足となっている。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.10%以上0.19%未満、 Si:0.15〜0.5%、
    Mn:1.0〜1.8%、 P:0.03%以下、
    S:0.020〜0.050%、 Al:0.015〜0.07%、
    N:0.005%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼板であって、該鋼板中のMnを含む硫化物の短径の平均が0.10μm以上であることを特徴とする熱間打抜き性に優れたダイクエンチ用鋼板。
  2. 短径が0.10μm以上の大きさのMnを含む硫化物を、鋼板断面1mmあたり、平均で30個以上有することを特徴とする請求項1に記載のダイクエンチ用鋼板
  3. 短径が0.10μm以上の大きさのMnを含む硫化物が、鋼板板厚方向断面において最表面から深さ方向に100μmまでで、かつ板面に平行に5mm長さの範囲内に、平均で10個以上存在することを特徴とする請求項1または2に記載のダイクエンチ用鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.15〜1%、B:0.0008〜0.0030%、Mo:0.1〜0.5%、W:0.05〜1%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のダイクエンチ用鋼板。
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