JP5315563B2 - 焼結体の製造方法 - Google Patents

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この発明は、粉末冶金法による成形体の焼結体の製造方法に関し、特に、その成形体の肉厚が小さいものに有効な焼結体の製造方法に関する。
粉末の成形体を焼結する焼結処理法の一つに、例えば図5に示すように、成形体3を金網1の上に載置して、焼結炉にコンベアにより搬送する方法がある。この方法では、金網1が反ったり、変形していたりすると、その上で処理した焼結体に反りが生じ、その寸法精度の点で問題となる虞がある。この反り問題は、特に厚みの薄い製品で顕著に生じやすい。
そこで、例えば特許文献1が述べているように、金網上に耐火板を設け、この耐火板の上に成形体を載置する構成をとることがある。この耐火板は、十分な厚みが確保されているため、それ自体の変形が生じにくい。このため、その上に載置する成形体を安定的に支持することができる。
特開2004−18283号公報
この特許文献1に示す耐火板は、厚肉の焼結体の反りを抑制するには有効であるが、薄肉の成形体を焼結するときには、その反りを抑制できないことがあった。
それは、薄肉の成形体に生じる反りは、その下に敷く耐火板の表面形状にのみ起因するのではないからである。
すなわち、プレス機で成形する粉末の成形体には、金型に粉末を充填する際に、充填法や成形体の形状等に起因した粉末の密度不均一が生じることがあり、この密度不均一によって、成形体の位置ごとに収縮率に差が生じる。この収縮率の差はこの成形体の反りの原因となる。
このような収縮率の差による反りは肉厚の製品では起こりにくいが、薄肉の製品において顕著な問題となることが多い。
このように、特に薄肉の焼結体においては、収縮率の差等に起因する反りの問題に、成形体を載せている搬送板の工夫(搬送板の精度向上)のみをもって対処することが困難である。
そこで、この発明は、焼結処理の際に、この焼結体に生じる反りを抑制することを課題とする。
上記の課題を解決するため、この発明は、コンベアにより搬送する耐火板上に、粉末の成形体を載置し、前記耐火板とともに成形体を焼結炉に導入して焼結処理を行う焼結体の製造方法において、前記成形体の上に耐熱材からなる重石板を載せて焼結処理を行うようにした。
このように、成形体の上に重石板を設けることによって、その重石板の重みを利用して成形体を押さえ付けることができる。そうすると、成形体の各位置において密度不均一がある場合でも、焼結処理の際にその密度不均一に起因して生じる反りを強制的に修正することができる。
上記構成においては、耐火板を金網の上に載せるようにすると好ましい。
耐火板の厚みを薄くしてその熱容量を小さくすると、焼結炉への搬入の際における炉内温度の低下を抑制することができる。しかし、耐火板の厚みを薄くすると、耐火板の強度が弱くなり、搬送中に破損の虞がある。このため、耐火板を金網の上に載せると耐火板の強度が補強され、耐火板の破損による生産性の低下が防止される。
なお、前記耐火板はカーボンで構成することが好ましい。
カーボンは、アルミナ等の一般的なセラミックスと比較して、熱膨張率が小さく、かつ、高温領域(特に1000℃以上)における強度が高い。このため、焼結炉への搬入の際に急激な温度変化が生じても破損しにくく、この耐火板を薄肉化することができる。この薄肉化によって、耐火板の熱容量が小さくなるため、焼結炉への搬入の際における炉内温度の低下を抑制することができ、生産性の低下が防止される。
この下側に敷く耐火板として、カーボン以外に窒化珪素、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化珪素等からなる耐火板も適宜採用することができる。これらは、カーボンと同様に、十分な高温強度等の材料特性を有し、耐火板の薄肉化による熱容量の低減に寄与し得る。
また、前記重石板は、アルミナを構成材料に含むことが好ましい。
アルミナは、安価で容易に入手できる。また、焼結処理に耐え得る高温強度を有しており、その自重によって安定的に成形体を押さえ付けることができる。重石板の材質は、勿論これに限定されるものではない。重石としての作用を発揮するものであればよく、例えば前記耐火板と同じ材質のものを採用することもできる。
また、この発明の方法では、前記耐火板と重石板との間に、成形体を複数枚積み重ねた状態で挟み込むとより好ましい。
このようにすると、一度の焼結処理でより多くの焼結体を得ることができ、処理効率が高まる。しかも、積み重ねた成形体の表面同士が互いに当接して変形を抑制し合うため、反りの抑制効果が一層高まる。
また、この発明の方法では、複数枚積み重ねた成形体の一山あたりに負荷される重石板の重量が、成形体1個の重量の2倍以上であるとより好ましい。
複数枚積み重ねた成形体の一山あたりに負荷される重石板の重量が、成形体1個の重量の2倍未満であると反りの抑制効果が不十分となる。
さらに、この重量の上限は成形体1個の重量の3倍以下であるとより好ましい。複数枚積み重ねた成形体の一山あたりに負荷される重石板の重量が、成形体1個の重量の3倍を超えると焼結時に製品が結合してしまい、焼結工程後に焼結体同士を引き離す必要が生じる。これを3倍以下にすることにより、製品一山全体が結合してしまうのを防止できる。
このほか、複数の耐火板を横に並べ、それぞれの耐火板の上に、成形体を同じ高さになるように載置し、各成形体を跨ぐように1枚の前記重石板を設けるのも好ましい。
このように重石板を複数の成形体を跨ぐように設けることによって、この重石板の支持安定性が向上し、各成形体をまっすぐ下向きに押さえ付けることができる。そのために、重石板による焼結体の反り抑制効果が一層高まる。
また、前記耐火板と重石板を締結部材を介して接続し、前記成形体に前記締結部材による締付力を作用させて焼結を行うようにすることもできる。
このように締結部材による締付力を作用させることによって、この締付力で重石板の自重の一部を肩代わりすることができるので、この重石板の薄肉化による熱容量の低減を図ることができる。
この発明によると、成形体を耐火板と重石板とで挟み込むようにすることで、焼結処理の際に焼結体が反るのを抑制できる。このため、特に厚みの薄い製品であっても、高い寸法精度を確保することができる。
この発明に係る焼結体の製造方法の一実施形態を示す側面図 同実施形態を示す平面図 この発明に係る焼結体の製造方法の他の実施形態を示す側面図 同実施形態を示す平面図 従来技術の一実施形態を示す側面図
この発明に係る焼結体の製造方法の一実施形態を図1及び2に示す。この構成においては、焼結炉の炉内に引き通したメッシュベルトコンベア(図示せず)の金網1上に、複数枚の耐火板2を並べて敷き、各耐火板2の上に3枚重ねにした成形体3をそれぞれ一山ずつ載置する。そして、その積み重ねた2つの成形体3に跨るようにその上から重石板4を載せ、この成形体3を重石板4の自重で押さえ付ける。
この耐火板2はカーボン(比重:1.75g/cm、比熱:0.262cal/(g・K))からなり、この耐火板2の縦横サイズは、約100mm×200mmで、厚さは約6mmの長方形板状形状をしている。また、この耐火板2の質量は約210gで、その熱容量は約55cal/Kとなる。
重石板4はアルミナ−シリカ(Al:85%以上、SiO:14%以下、比重:3.96g/cm、比熱:0.195cal/(g・K))からなり、この重石板4のその縦横サイズは、一辺は約200mmで、厚さは約5.5mmの正方形板状形状をしている。また、この重石板4の質量は約1020gで、その熱容量は約199cal/Kとなる。
また、この成形体3は、鉄を主成分とする原料粉末を加圧成形したものであって、図2に示すように、長辺が約170mm、短辺が約80mm、厚さが約5.5mm、質量220gのほぼ平板形状をしている。上述した耐火板2のサイズは、この成形体3を載置できるように決定したものである。
この成形体3を焼結炉に搬入する際には、その搬送系の作動に伴う機械的振動が耐火板2に伝わるとともに、急激な温度上昇に伴う熱応力を受ける。さらにこの耐火板2には、その上に載置した成形体3及び重石板4の荷重も負荷されており、この耐火板2は過酷な応力環境下に晒されている。
そこで、本実施形態のように、熱膨張率が小さくかつ高温強度に優れるカーボンを採用し、金網の上に搭載することで、耐火板2の破損を防止しつつ、その耐火板2の薄肉化を図って、その耐火板2の熱容量を低減することができる。
例えば、本実施形態で採用するカーボンからなる耐火板2(サイズが約100mm×200mm×6mm)はその熱容量が約55cal/Kであるのに対し、これと同等の高温強度となるように設計したアルミナからなる耐火板2(サイズが約100mm×200mm×10mm)はその熱容量が約155cal/Kであって、素材をカーボンとすることでその熱容量を約65%も低減することができる。このように耐火板2の熱容量を小さくすることによって、焼結炉に成形体3を搬入する際における炉内温度の低下を最小限に抑制することができ、安定した焼結処理を行うことができる。
また、この耐火板2及び重石板4と成形体3との接触面は十分に平坦加工されていて、その平坦度は、最終製品である焼結体に要求される寸法精度よりも高いものとなっている。このため、両板2、4で挟んで焼結することによって、その処理の際における焼結体の反りを十分抑制し得る。
表1にこの成形体3を1130℃で所定時間焼結処理した際における、焼結体の反り量測定結果を示す。この焼結体の反り量許容範囲は、設計上の成形体厚さ(5.5mm)に対し±0.25mmの範囲内であって、焼結体の全数がこの許容範囲内に含まれていた。
一方、比較例として、この重石板4を取り除いて同条件で焼結処理を行ったところ、許容範囲内にある焼結体は約74%であった。
これらの実験結果から、成形体3の上に重石板4を設けることによって、焼結体の反り量を大幅に低減でき、製品の歩留まり向上に寄与できることが明らかとなった。
Figure 0005315563
この重石板4は、薄肉化(軽量化)するほど熱容量が小さくなるので、炉内熱環境の面では好ましいが、その際には、薄肉化(軽量化)しすぎて重石板4が有する反りの抑制作用を損なわないように留意する。
また、本実施形態のように重石板4を2枚の耐火板2に跨るように設ける代わりに、各耐火板2に1枚の重石板4を設ける構成としてもよいし、この重石板4を3枚以上の耐火板2に跨るように設ける構成としてもよい。いずれの場合においても、この重石板4がまっすぐ下向きに成形体3を押さえ付ける作用を発揮する。
この発明に係る焼結体の製造方法の他の実施形態を図3及び4に示す。この構成においては、前記実施形態と異なり、耐火板2と重石板4とを締結部材5で締結し、その締結力でもって成形体3を挟み込むようにしている。この実施形態では締結部材5としてボルトを用いている。この構成においては、上述した実施形態と同様に重石板4の自重によって焼結体の反りを抑制するとともに、前記締結力によってその反り抑制作用を一層確実なものとしている。
このように、焼結体の反り抑制効果が、重石板4の自重のみではなく前記締結力との相乗作用によって発揮されるようにすることで、この重石板4の更なる薄肉化(軽量化)を図ることができる。このため、重石板4の熱容量が小さくなって、焼結炉に成形体3を搬入する際における炉内温度の低下を最小限に抑制することができ、更に安定した焼結処理を行うことができる。
1 金網
2 耐火板
3 成形体
4 重石板
5 締結部材

Claims (2)

  1. コンベアで搬送する耐火板(2)上に、鉄基粉末の成形体(3)を載置し、前記耐火板(2)とともに成形体(3)を焼結炉に導入して焼結処理を行う焼結体の製造方法において、
    複数の前記耐火板(2)を横に並べ、それぞれの耐火板(2)の上に、前記成形体(3)を同じ高さになるように載置し、各成形体(3)を跨ぐように、前記成形体(3)の上に耐熱材からなる1枚の前記重石板(4)を載せて焼結処理を行うことを特徴とする焼結体の製造方法。
  2. 前記耐火板(2)と重石板(4)を締結部材(5)を介して接続し、前記成形体(3)に前記締結部材(5)による締付力を作用させて焼結を行うことを特徴とする請求項に記載の焼結体の製造方法。
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